USヘビー級選手権

 東京プロレス時代、猪木の最大のライバルはジョニー・バレンタインで、数々の名勝負を展開している。1964年10月12日、蔵前国技館での旗揚げ戦のメインでリングアウト勝ちを飾った猪木は10月25日、宮城県スポーツセンターでバレンタインの保持するUSヘビー級選手権に挑戦している。このときは1−1で60分時間切れ引き分けに終わったが、11月19日、大阪球場で再び挑戦、熱戦の末、見事王座を獲得した。その後、バレンタイン、スタン・スタージャック、スティーブ・スタンレー、ミステリアス・メディコ、エディ・グラハムを相手に7度の防衛に成功したが、東京プロレス崩壊、日プロ復帰を期にベルトは消滅した。
 USはユナイテッド・ステイツ(合衆国)の略であり、同名のタイトルは米国マットに乱立している。その中で最も権威のあるのはサンフランシスコ版NWA・USヘビー級とデトロイト版NWA・USヘビー級である。バレンタインが歴代王者に名をつらねているのはデトロイト版で、初代王者がバーン・ガニア、ディック・ザ・ブルーザー、ボボ・ブラジル、フィリッツ・フォン・エリックらを経て、バレンタインが第22代王者となっている。しかし、猪木が挑戦した時期とは一致せず、歴代王者に猪木の名は記録されていない。
 このベルトは以降、ザ・シークを中心に防衛戦が展開され、通算13度も王座に就き、シークの個人タイトルと化している。1993年1月18日、FMWに参戦したシークは大仁田厚に敗れ、タイトルを明け渡したが、翌日、大仁田は「これはシークのベルトだ」として返還している。
 もし猪木がバレンタインから獲得したのがデトロイト版のUSヘビー級だとすると26年後、大仁田も同じベルトを巻いたことになる。

1966年(昭和41年)10月25日 宮城県スポーツセンター *初挑戦
 アントニオ猪木(1−1)ジョニー・バレンタイン
  1.猪木(30分15秒 コブラツイスト)バレンタイン
  2.バレンタイン(23分30秒 リングアウト)猪木
  3.60分時間切れ引き分け
1966年(昭和41年)11月19日 大阪球場特設リング *王座奪取
 アントニオ猪木(2−1)ジョニー・バレンタイン
  1.猪木(0分15秒 体固め)バレンタイン
  2.バレンタイン(17分50秒 腕固め)猪木
  3.猪木(7分55秒 コブラツイスト)バレンタイン
1966年(昭和41年)11月22日 大田区体育館 *初防衛
 アントニオ猪木(2−1)ジョニー・バレンタイン
  1.バレンタイン(19分55秒 腕固め)猪木
  2.猪木(8分55秒 コブラツイスト)バレンタイン
  3.猪木(9分20秒 体固め)バレンタイン
1966年(昭和41年)11月24日 宮城県スポーツセンター *V2
 アントニオ猪木(0−0)スタン・スタージャック
  1.猪木(26分30秒 両者リングアウト)スタージャック
  2.猪木(11分26秒 両者リングアウト)スタージャック
1966年(昭和41年)12月15日 広島県営体育館 *V3
 アントニオ猪木(2−0)スティーブ・スタンレー
  1.猪木(14分30秒 体固め)スタンレー
  2.猪木(1分55秒 コブラツイスト)スタンレー
1966年(昭和41年)12月18日 大阪府立体育会館 *V4
 アントニオ猪木(2−1)ミステリアス・メディコ
  1.猪木(22分55秒 両者リングアウト)メディコ
  2.猪木(0分45秒 コブラツイスト)メディコ
1966年(昭和41年)12月19日 東京体育館 *V5
 アントニオ猪木(2−0)スタン・スタージャック
  1.猪木(22分40秒 体固め)スタージャック
  2.猪木(9分10秒 コブラツイスト)スタージャック
1967年(昭和42年) 1月10日 福岡九電記念体育館 *V6
 アントニオ猪木(2−1)エディ・グラハム
  1.グラハム(3分0秒 足四の字固め)スタージャック
  2.猪木(5分20秒 コブラツイスト)グラハム
  3.猪木(3分45秒 体固め)グラハム
1967年(昭和42年) 1月30日 横浜文化体育館 *V7
 アントニオ猪木(2−0)ジョニー・バレンタイン
  1.猪木(16分7秒 反則)バレンタイン
  2.猪木(5分15秒 体固め)バレンタイン
*東京プロレス崩壊により消滅