秋の日に
寂れゆく風景を 秋がいくつも心に運ぶから 人恋しさにまた とめどもなく迷い始める朝 優しい夕べを迎えるために 誰かの名前を呼びながら 枯れ葉の道を独り歩けば 枝を組み合わせた街路樹は 灰色の空の寒々しい廃屋 誰にも出会えずに さまよい疲れた体は すくわれずにあった夕べの 赤い血潮に蝕まれてゆく 壊れたテーブルに 寂しさに濡れた気持ちを置いて 鉛のような物思いにふける 明かりも点さない 街角の忘れられた部屋 青空の下の山並みに はるかに憩う故郷が 脳裏に鮮やかに蘇る ―そこはすべてが穏やかにあるところだ 張りつめた心は 今にも割れそうなシャボン玉 目に残る人の群れは氷のような 冷たさをなすりつける 眠れない夜の後には 残酷にもまた朝が来る 誰かを呼びながら また さまよい歩く街 その人の温もりに 寂しい心を鎮めて この秋を過ごしたくて