貝殻も積もれば

15号住居跡貝層断面

 貝塚の断面をよくみると、斜めにいくつもの層が重なっていることがわかります。シジミの層がほとんどですが、カキ、ハマグリ等の層や土の層もはさまります。この多くの層はどのように積み上げられていったのでしょうか?

 それぞれの層について貝の種類やサイズ、変化、土の混じる割合を調べると、いくつかの周期があることが読み取れます。これは何の周期でしょうか?

 木に年輪が有るように貝殻には日輪というものが有ります。干潟に棲む貝は、潮の満ち干にしたがって一日に1本の成長線を残していくのです。日輪の幅は季節によって異なり、冬には狭く密集し夏には幅広くなります。出土した貝殻をスライスし顕微鏡で見るとその貝が何月頃に採られたものか分かります。

 水子貝塚から出土した貝殻をこのように分析した結果、貝の種類やサイズの周期は1年間の四季の変化に相当し、土の層は貝をほとんど取らなかった季節にたまったものと分かりました。住居跡を埋め切るのに周期の数と同じ年数がかかったことになります。

 貝殻の総量は10〜15m3(3〜5t)で、採取期間が年に100日として、1日当たり十数kg(約2000Cal)。貝だけを食べたとすると一人しか養えない、意外に少ない栄養量です。

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