NUCLEUS (Ian Carr)

カンタベリー・ミュージックを語る上で60年代のイギリス・ジャズ・シーンは避けては通れない……ということで、ニュークリアスです。
ニュークリアスはソフトマシーンと共にイギリス・ジャズ・ロック界を代表するグループで、カンタベリー・シーンとも密接な関係にありました。リーダーでもあるイアン・カーは60年代中頃からドン・レンデルとの双頭クインテットを結成し活動していましたが、69年にそのクインテットを解散し、新たに結成したエレクトリック・ジャズ・ロックバンドがニュークリアスで、翌70年にヴァーティゴから「Elastic Rock」でアルバム・デビューを果たした。その時のメンバーが、イアン・カー(tp)、カール・ジェンキンス(bs,ob,p)、ブライアン・スミス(s,fl)、クリス・スペディング(g)、ジェフ・クライン(b)、ジョン・マーシャル(ds)で、その後、多くのメンバーがソフトマシーンやギルガメッシュに参加することになるのだが、同年早くも2作目「We'll Talk About It Later」を出し、翌71年、ケニー・ホイーラーやハリー・ベケット等多数のゲストにを迎えイアン・カー・ウィズ・ニュークリアス・プラスとして3作目「Solar Plexus」を発表。その後、一時的にニュークリアスを解散させ、72年ソロ名義(とは言っても実質ニュークリアスと言ってよい)でロイ・バビントン、デイブ・マクレエにアラン・ホールズワース等が参加して「Belladonna」を発表。翌73年、再びイアン・カー・ウィズ・ニュークリアス・プラスとしてA.ホールズワースを除く前作参加のメンバーにノーマ・ウィンストン等のゲストを迎え、「LABYRINTH」を発表。時代の流れかサウンドも徐々にファンキーなフュージョン風へと変化させ、同年「Roots」、その後もメンバーを入れ替えながらも74年「Under The Sun」、75年「Snake Hips Etcetera」「Alley Cat」、77年「In Flagrante Delicto」、79年「Out Of The Long Dark」、80年「Awakening」と順調にアルバムを発表するも、80年代にはいってからは、85年にライブ盤の「Live At The Theaterhaus」と88年にソロ名義で「Old Heartland」を発表したのに留まっている。その間、イアン・カーは音楽評論家として執筆や講師などで多忙な生活をしていたらしい。しかし、近年再びニュークリアスとしてライブ活動をしているらしく、過去の音源等の発掘作業も進められCD化され始めている。

NUCLEUS / ELASTIC ROCK

ニュークリアスの1作目。短めの曲を組曲風にまとめた構成は初期マシーンのようでもあり、エレクトリック・サウンドと美しいブラス・ハーモニーの調和がみごとなブリティッシュ・ジャズ・ロックの傑作。
[1970 VERTIGO]

NUCLEUS / We'll Talk About It Later

1作目と同一メンバーで録音された2作目。1曲目はマシーンの「Bundlles」収録の「Hazard Profile Pt.1」の原曲で、ジェンキンスの曲の良さが際立ち、バンド・サウンドに一層の磨きがかかっている。
[1970 VERTIGO]

IAN CARR with NUCLEUS plus / SOLAR PLEXUS

前作のメンバーにケニー・ホイーラーやハリー・ベケット等多数のゲストにを迎え制作されたイアン・カー作曲によるコンセプト・サウンドに仕上げられた傑作。
[1971 VERTIGO]

IAN CARR / Belladonna

一度バンドを解散させ新たなメンバーを集めて録音されたソロ名義の作品だが、実質新生ニュークリアスです。電化マイルスの影響も感じさせつつ洗練されたサウンドへと変化し次作へと引き継がれていく。
[1972 VERTIGO]

IAN CARR with NUCLEUS plus / LABYRINTH

前作「Belladonna」のメンバーにケニー・ホイーラーとノーマ・ウインストンがゲスト参加し激しくも洗練されたサウンドに透明感をあたえている。
[1973 VERTIGO]

IAN CARR'S NUCLEUS / ROOTS

R.バビントンに代わってロジャー・サットンが加入し前作の延長線上にあるも、よりタイトなリズムでコンセプト指向のクロス・オーバー・サウンドを展開。
[1973 VERTIGO]

NUCLEUS / Under The Sun

前作「ROOTS」を最後に創設メンバーのブライアン・スミスも脱退、大幅なメンバー・チェンジによりファンキー路線を強化されたサウンドへと変化しはじめた。B面はリフを強調した大作組曲。
[1974 VERTIGO/BGO Records]

NUCLEUS / SNAKEHIPS ETCETERA

プロデュースにジョン・ハイズマンを迎え、エンジニアにスティーブ・リーリーホワイトを起用、ファンキー路線をさらに押し進めタイトで洗練されたサウンドを聴かせる。12stアコギがソロをとるラストが秀逸。
[1975 VERTIGO/BGO Records]

NUCLEUS / Alleycat

前作と同メンバー、スタッフによる延長線上サウンド、タイトル曲が凝っていて面白い、最後の曲が熱くかっこいい。ゲストにトレバー・トムキンス参加。
[1975 VERTIGO/BGO Records]

NUCLEUS / In Flagrante Delicto

ブライアン・スミスが復帰し、洗練されたサウンドの中にも熱いソロを聴かせる、タイトル曲の抑制を利きながらも熱く盛り上がっていくさまがすばらしいライブ・アルバム。
[1977 Capitol/BGO Records]

IAN CARR'S NUCLEUS / OUT OF THE LONG DARK

キャピトル移籍後の第2弾。ブライアン・スミスも参加しゲストにニール・アードレイを加えて、タイトなクロスオーバー・サウンドを聴かせる。
[1979 Capitol/BGO Records]

IAN CARR / Old Heartland

音楽活動を休止してしまう80年代最後のソロ名義による作品。オーケストラを率いた組曲作品とジョン・マーシャルも復帰したニュークリアスらしい洗練されたフュージョン風楽曲を3曲収録。
[1988 EMI/BGO Records]

NUCLEUS / HEMISPHERES

オリジナル・メンバーによる70年3月と71年2月のヨーロッパ公演のライブを収録。初期メンバーによるジャズ色の濃い活気溢れる熱い演奏を聴くことが出来る。
[2006 Hux Records]

NUCLEUS / LIVE IN BREMEN

71年5月25日ドイツでのライブ。1st & 2nd セット全てを収録した2枚組。C.スペディング、G.クラインが抜けレイ・ラッセル(G)とロイ・バビントン(B)が加わり後期マシーンの3人が顔を揃えている貴重なライブ音源。
[2003 CUNEIFORM RECORDS]

[ SOFT MACHINE | GILGAMESH ]