韓国のFM放送は日本のFM放送の周波数とは違って89MHz〜108MHzを使用しています。これは日本ではテレビの1から3チャンネルに相当します。また北朝鮮でも同様の周波数帯を使用してFM放送を行っています。
FM放送に使用している周波数は大変高いためにその性質は光に近く、直線距離で見えないところにはなかなか届きにくいという特徴があります。
特殊な状況でない限り本来は遠距離の放送は受信できないため、朝鮮半島のFM放送を日本で愉しむことは
通常の状態では難しいといえます。
特殊な状況とは何かというと、対流圏反射とスポラディックE層による反射が挙げられます。対流圏反射とは日本では九州の北部で観察できるもので、電離層によらない大気中での電波の反射を言います。KDDが以前散乱通信という独特な通信方法を使っていたといいますが、中距離での
電離層を伴わない反射現象です。
もう一つのスポラディックE層の方は実はその現象のいたずらを経験している人が多いといえます。この電離層は夏の昼間に突然発生して高い周波数の電波も反射するのが特徴です。夏の甲子園中継のときに「一部地域で外国電波により見えにくくなっています」などといった字幕スーパーが出ることがありかと思います。
「ああ、あれか」とお思いになる方も多いでしょう。NHKは低いチャンネル、すなわち1から3チャンネルを使用している地域が多く、朝鮮半島
など、多くの外国のFM放送の周波数と同じということで、朝鮮半島を始めとした近隣諸国からの電波がこの電離層で反射して日本まで届き影響を与えているのです。
実際、初夏から夏の終わりまでの間、昼間にFMラジオを聴くといつもとは違う聞きなれない放送が聞こえることが良くあるのです。日本国内でも東京であれば九州や沖縄のFM放送が聞こえたりするわけで、朝鮮半島の放送はよく聞こえます。ただ、この電離層は突然発生し、時間とともに移動する上、広さや反射可能な周波数の上限が異なり、おまけに一様ではないので、安定的に聞くということは難しいといえます。多くの場合には数分から数時間程度で、聞こえる地域も時間とともに変化していく
のが普通です。