あらすじ&解説

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あらすじ

生物科学者・来留間源三博士はこの地球のあらゆる生物と合体できる方法を 編み出す。そして自らの体を改造、「魔獣」となる。それは人類の新たな 「力の進化」を生み出す時代の幕開けであった。彼はその研究をより完全な モノにするため、知己の科学者を自宅研究所に集め、息子・慎一と動物たち の合体実験を行う。だが...。

その実験は失敗、慎一は特殊液で満たされた水槽の中で、意志を集中している 間だけその姿を保てる細胞の化け物と化してしまうのだ!(うわああっ!) あまつさえ、博士は次に妻を魔獣へと生まれ変わらせる!外気の元では生きられぬ 息子に死を宣告、水槽に電流を流し、細胞の全てを焼き殺そうとするが、目覚 めた妻が水槽を叩き破る。とってかえして源三へ!源三も変身、魔獣がぶつ かった!科学者の一人が銃を発射、妻の息の根を止める。続いて慎一へ。 怒れる慎一は母を抱き、父と科学者らに復讐を宣言する!

「いまのうちに殺せ 体をバラバラにして殺せ... 細胞一つでも生かしておくなよ」
「でないと...おれは生き返りきさまたちに復讐する」
「ここで生き残れたならば かならずや!! きさまたちを
八つ裂きにしてやる!!」

...八つ裂きですよ、八つ裂き。殺人犯の中でも、死体を切り刻むタイプは 相手への憎悪を爆発させているヒトらしいですが、普段の生活でヒトを殺し たいと思っても、八つ裂きにしようとは中々思いませんよねえ...。

ストーリーへ戻ろう。来留間博士が息子にトドメをささんと、銃を向けたその時、 研究所に落雷!異常が生じ、研究所の機器が暴走、科学者たちは母子を置いて 脱出する。その時奇蹟が...!漏電した電流が母と慎一に流れる。母子の細胞は 混じり合い、一つになって行く...。

まさに崩れんとする研究所からはばたいてゆく一人の魔獣。母を抱きながら涙を流し、 背の翼を大きく拡げている...。

そして数年。未来予言をする天外老人とその孫・真理阿と富三郎の三人が追われて いる。追いすがるやつらの前に現れた、ぼろぼろのコートに身を包んだ獣の目をし た男。彼こそは...成長した来留間慎一!...とここで1巻終わり!

簡単に2巻以降のストーリーをまとめよう。実は来留間博士以下13人の科学者たちは、 現代のイエスの使徒であり、来るべき神の時代に備えて人類進化の任務を負っていた のだ。預言者・天外の村は、イエスが没した地であり、ソコへ来た使徒のため村は 一変(謎その1...具体的には描いてないんだな)、彼は真理阿と富三郎とともに脱出 したのだ。その経緯とともに語られる黙示録の時代。神の恐怖の力の前に一人立ち 向かう「獣」の姿。が、その最中、天外は村の追手に殺される。

最期に真理阿に語った言葉、「おまえは...聖母マリア...!」

そして同じ復讐の相手のために、慎一は真理阿・富三郎とともに戦いに出る。 襲い来る魔獣たちとの戦いの中、猿を自在に操る魔獣の前に危機に陥った慎一。 だが、真理阿が「奇蹟」を起こし、助け出す。更に進む一行は謎の「箱船」を 製造中だった使徒の一人・バルビア博士と遭遇。慎一は彼の命を奪って、最初 の復讐を遂げる。

続いては、「洪水」を起こす実験をしているシャフト博士の元へ!彼の息子たち は兄弟全員が合体しているという魔獣。彼らとの戦いの中、瀕死の重傷を負った 慎一を救ったのは...裏切りの使徒、ユダ博士。彼の息子たちは実験に失敗し、 全身を包帯に包み、霧のように変質した体で生きていた。更にユダに明かされた 慎一の能力。それは、彼が出会う、全ての特殊能力を吸収するというモノだった! ともに闘いたいと申し出るユダに慎一は...。が、その時シャフトの「洪水」が作動、 全ては水の中へ!

(この辺りで雑誌休刊が確定したのかな?)

離ればなれになった慎一と真理阿。裏切り者と反逆者を狩りに迫る追手によって 傷つけられる真理阿。が、彼女が聖母と知らない魔獣の暴走だった!一方その瞬間 母の声が響き、慎一は真理阿の名を叫び「黙示録の獣」にになり魔獣を倒して テレポート!と同時に、地球を地震が見舞い、神の尖兵が発動した。涙ながらに 語る慎一。

「お前は俺の全てだ! 俺のお袋であり!俺の体であり!俺の血、目、鼻、耳だ!」

今際に真理阿が語る自分自身の正体。それは神が生まれるために欠かせない 「スイッチ」であり、育つための「糧」なのだと...。そして最期の頼みを 慎一に託す...それは...?

無限の吸収能力。自分の力とマリアの愛を信じて慎一は真理阿の亡骸を喰う。 真理阿と一つになるために。そして、神に戦いを挑むために。


解説・来留間慎一の魅力

これは石川賢自身もインタビューで応えていることだが、『魔獣戦線』は 『デビルマン』の圧倒的な影響の下で生まれた作品である。神と魔の相克、 獣性を帯びた主人公、聖書のモチーフ。ともすれば読者は思わせぶりな伏線と、 神話的ロジックの作品への置き換えに終始してしまうコトが多い。しかし、 サブテキストを理解する労力や、設定のバックグラウンドを説明するセリフ、 といったモノがこの作品の魅力ではないのではないか。

『魔獣戦線』は、とにかくハイテンションな慎一のキャラクターで一気に読ませる。 いかんせん休刊のため、使徒一人一人を倒す展開にならず、最後がやたらめったら 駆け足になっているコトや、真理阿との愛を深める描写に欠けるコト、神の正体が 朧気に過ぎるなど、まあ多少の問題はある。あるが、とにかく慎一! ...魔獣になったキッカケこそオヤジのせいであるが、以降は復讐をバネに、 ちぎれた腕をくっつけ、倒した相手の血を全身に浴び、残酷な殺しをも楽しみ、 予定調和を叩き崩しながら、全てを巻き込んでいく!

そう。確かに影響こそあれ、ここが永井豪との違いなのではないか。かの 『デビルマン』にしろ、『魔王ダンテ』『手天童子』『凄ノ王』『マジンガーZ』 ...と、豪キャラたちはどちらかと言えば、本質的に「巻き込まれている」のである。 慎一には、飛鳥了もDr.ヘルも瓜生麗もいない。基本的に何かを守るという「防戦」 ではないのだ。無論どちらがどう、というものでなくあくまで比較ではある。

だがやはり、設定さえ説明されれば、己が闘うこと自体が動機となり、その動き 自体がストーリーとなるキャラクター、それこそ石川漫画の魅力と言えるだろう。


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