禍-MAGA-


 
〜 ビッグスピリッツコミックス(小学館)全2巻 〜

中国・タクラマカン砂漠の地下1600mに、2000年もの間閉じこめられていた バケモノが甦った!引きちぎられた傷ついた肉体。しかしその目にはまっすぐ な光が宿り、2000年振りに訪れた言葉を喋る生き物を、軽蔑とも不敵とも取れ る微笑みで迎えていた...。そのバケモノの名は禍-MAGA-

少女は復讐に燃えていた。かつてある研究に係わったが為に、まるで虫けら のように殺されていった両親。全てを捨てて父の研究を受け継ぎ、人智の及ばぬ バケモノを掘り起こしてまで、「敵」の血を搾り取ろうというのだ!少女・楓 は己の復讐を成し遂げると共に何を見るのか!

「復讐」というキーワード。
「西遊記」を材に取ったキャラクター設定。
「三蔵」という妖しい<敵>。
禍の肉体を実験だ不老不死だと己の欲望に使う魑魅魍魎。
謎の病院に閉じこめられたフリークス達。

まさに石川賢フルコースの設定と物語。ドアタマからノンストップでヤクザ・ 傭兵・謎の科学者と闘いを交え、エスカレートし続ける暴力の百花繚乱。 ナニがかっこいいって、1巻の表紙にも見えてるが、ヒトの背丈ほどもある 巨大なバタフライナイフ振り回しての、血まみれ対決。更には、不老不死を求める ヤツラに切り刻まれ持って行かれた禍の肉体。隙間はメカで埋められている! どてっ腹にはトビラがあって、何と少女楓が武器持って隠れることまで。

中国系ヤクザの密入国シンジケートなんていう非常に現代的なモチーフを 取り入れつつ描かれるこのいかにも妖しい復讐劇。 ライフ ワーク『虚無戦記』に果たしてつながるのか?本質はつまびらかにならぬとも、 そのダイナミズムに恍惚を覚えれば良し!ヒマなら今まで撃たれた弾の数でも 数えろっ!


さて、ライフワーク『虚無戦記』に近い言葉が 楓の父の研究の中に見える(「虚空戦記」)。また、禍は猿の妖怪である。一方、 『虚無戦記』でも描き下ろし部分の展開は「猿羅神」という重要な攻撃の要が失 われたことに端を発しており、その「後継者」がキーを握っている。その後継者 は500年もの間、岩に挟まれており、ある「坊さん」のよって閉じこめられたらしい。

また、猿羅神軍の戦艦の一つが「マカ」という名で呼ばれていることも何か関係が? というわけで、『虚無戦記』と『禍-MAGA-』を併せて読めば、また拡がる拡がる。読め。

ところで1巻だが連載に対して、文字訂正3カ所。描き下ろし166〜167、177〜178の4ページ。 セリフ変更は1カ所・p40の「私は父の仇を討ちたい!」が「討つ!」という断定に 変わってることくらい。楓のキャラクターや展開を鑑みてのことだろう。それにしても あのピンク色の背表紙はちとびっくり。


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