石川賢自ら「ライフワーク」だと語る遠大にして いつ果てるとも知れない宇宙空間の戦争。
その抽象的な世界観は、未だ我々の前にその全貌を現してはいないようだ。
今までの中・長編を錯綜させながら、描き下ろしをくわえ伝説は膨れ続けた。


虚無戦記
〜双葉社アクションコミックス〜


1、2巻「弥勒王編」<壱><弐>
1999.1/5(1巻)1999.3/13(2巻)初版発行


3、4巻「虎空王編」<壱><弐>
1999.7/28(3巻)1999.10/10(4巻)初版発行


5、6、7巻「羅王編」<壱><弐><参>
2000.2/20(5巻)2000.6/12(6巻) 2000.8/12(7巻)初版発行

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現在のところ、『虚無戦史MIROKU』がその長さからタテ筋として機能している。 が、虚無戦争は時空間を越えて展開されているかのようであり、間にエピソードが 挟み込まれつつある。

表紙イラストの遊びが楽しい。3、4巻はつなげると虎で。5〜7巻は虚無絵巻って感じ。

1巻冒頭はラ・グース宇宙(?)の闘い描き下ろし。 続いて『新羅生門』 『忍法・本能寺 果心居士の妖術』が多少の加筆訂正で収録。 続いて『虚無戦史MIROKU』 がスタート。

2巻もラ・グース戦描き下ろし+『MIROKU』。

3巻「虎空王編」はその名の通り『5000光年の虎』 が8割がた収録。だが、冒頭に描き下ろし・猿羅王(?)の姿が描かれる。 この『西遊記』モチーフの登場人物は「禍」?

4巻は『虎』の描き下ろし+後半の一部。未だ、『虎』の全ては収録されていないぞ。 加えて、『MIROKU』がクライマックスへ突入している。

5巻は「羅王編」と銘打たれているが、『MIROKU』の続きと描き下ろし渾身の90ページ! 今まであちこちに名前だけ出てきた「羅王」の戦争が徐々に明らかになる?

6巻、オビで謳うは「80ページ描下ろし!!」。 詳しくは、冒頭13ページトビラまで、羅王編分の描き下ろし。一部「ああ、竜神様のお怒りじゃあ」の コマが挿入されていることから、ラ・オウ戦と『MIROKU』戦のリンクが示唆されている?

それに続いて『MIROKU』に描き下ろしでページが足されているが、コレは旧作と新作を混在 させるのを好まない賢ちゃんにしては、珍しい事例。おそらく途中、ラ・オウ軍側が主に描き足され ていることから、弥勒が見たビジョンが、時を隔てたラ・グースの戦いであるコトを分からせる必要 があったのだろう。

68ページの描き下ろし1ページを挟んで、舞台は現代へ。更に69、70と描き足し2ページで 新章。110ページまでが読みきりで掲載された『次元生物奇ドグラ』

111〜114ページまでの描き下ろしで、『ドグラ戦記』に突入。146ページまで。数ヶ所の加筆がある。 実は、この形式の「ドグラ」モノ『新兵衛解体記 妄霊変化』があるのだが、今回の『虚無戦記』には 収められず残念。

147〜268ページが『邪鬼王爆烈』の前半。ほぼ描き足しなし。

270ページからラストまで、羅王の戦い。その限界とは…てなところで続く。

7巻のオビでは「圧倒的描下し160Pを加え第一期完結!」…無念。

「虎」が自らの正体を知り、相手を吹き飛ばした時のようなラ・オウの一閃で物語開幕。 続いてラ・グースサイドの「マカ」が坊主どもを蹴散らそうと登場。この「マカ」はやはり 『禍』でしょうな。おなつかしや『5000光年の虎』の敵役の 鋲打ちハゲや謎の女などの方々出演があったりなんかして、105ページまで描き下ろし。

106ページから110ページがラ・オウのマクロな戦いに対置するカタチで、『5000光年の虎』 から、ニッキたちの戦い。実は「デュパ」って大きい宇宙の消滅と連携していた、という設定が 加わる。ニッキが虎と出会う一連は『5000光年の虎』。1ページ「その男の目は…野獣だった」 加筆。129ページの1コマめまではオリジナル『虎』。2コマめは顔が角川版で描き直された。 元の形では続く1ページにて「虎だ!」と叫ぶ声が響く宇宙の絵で終わり。

142ページから、231ページまでが、多少加筆されているが、『邪鬼王爆烈』の後半。続くページで 爆烈が弥勒の転生であることが明かされた。以下、描き下ろし(ごく一部に『虎』の再利用アリ) 296ページには描き下ろしページながら、誰もが待っていた「いよろけん座」が無事登場(笑) 更に301ページでの爆烈の呼びかけに応じ、なんとなんと、『スカルキラー邪鬼王』より ジャッキ登場!作品自体が、諸事情により「虚無戦記」に編入されなかった恨みがココで晴ら されたというべきか(笑)

そして最終ページ…愛犬ロボの前に転がる石川賢大先生のメッセージ…。様々な感慨と共に ファンは涙しよう。いつかマジで再開されるコトを願って。

※付記 なお、文庫版には『スカルキラー邪鬼王』が編入された。


などと、誠しやかに出典明記してる俺だが、実際のトコロ見たいのは 「ラ・グース宇宙」の全貌ではなかったりする。 ケン・イシカワイズム...つまり「復讐」などの、動かずに入られない 衝動でとにかく暴力を奮わざるを得ない連中 のアクションであり、想像を絶するスケールの物体と いうか空間が絵になるという快感、あるいはダイナミズムだったりする! 恐らくソレが奔放に湧き出てる空間こそ、「虚無」の舞台なのだ。つまり、俺的 には「儒生暦」もラ・グース宇宙の全貌とやらも興味としては二の次だぜ! とにかく暴れて頂きたい!...のだ。


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