キューティーハニー


秋田書店チャンピオンコミックス(全2巻)
「週刊少年チャンピオン」(秋田書店)1973/10/1号〜1974/4/1号連載。 上の新書判単行本は当時以来、今に至るまで再版が続くロングセラー。 (判型違いで中公愛蔵版・全1巻、中公文庫・全2巻、秋田セレクト版 ・全1巻、アクションコミックス・全1巻もある)

まあとにかくあちこちで発表されているので、簡単に。『デビルマン』 『マジンガーZ』の成功を受けて、永井豪とダイナミックプロに依頼さ れたのが、妖怪モノとヒロインモノ。で前者は『ドロロンえん魔くん』 であり、後者がこの『キューティーハニー』だ。

師匠・石ノ森章太郎がマンガを担当した、変装の名人探偵『多羅尾伴内』 を女の子に移植、当時の少女の憧れの職業を持つ姿に七変化、という コンセプトだった。

で、だ。
『オモライくん』〜『デビルマン』(講談社)
『ハレンチ学園』〜『マジンガーZ』(集英社)
『がんばれスポコンくん』〜『えん魔くん』(小学館)
と来たためか、この作品は秋田書店連載となった。 これまた過激なことでは、恐らく豪ちゃん作品中最先端を行っていた 『あばしり一家』の後釜というポストに来たのだ。この時期は既に最 も先鋭化していた「菊の助の悪夢」などは終了していたが、悪乗りと シュールとナンセンス、ギャグともストーリーともつかない荒唐無稽 さは継続中。

更には豪ちゃん自身確信的にヒロインモノをやっていた作品だけあって、 本人も、アニメの企画サイドも、『あばしり』キャラをトレースしな がら『ハニー』の世界固めをしたことは間違いないと思う。

マンガでは団兵衛、順平は『あばしり一家』の悪馬尻駄ヱ門と吉三が そのまま移行。青児がいる関係で次男・直次郎は出ないのか…と思ったら、 そのまま女にしたという凄まじさでギャグにしてしまっての登場。 残念ながら流石に痴漢の達人の長男・五ヱ門は出られなかったが。 (アニメには五ヱ門と直次郎も登場)

いずれにしても、団兵衛と順平がそのまま、というだけで、『あばしり』 からの地続き感は醸される。その上、こと早見一家に対する時ほど、 ハニーの性格や振舞いも、菊の助に準じている。


双葉社アクションコミックス(全1巻)

『デビルマン』の原作−アニメ間が全く噛み合わなかった「反省」 から、『マジンガーZ』はかなりアニメ寄りに描かれたそうだが、 この『ハニー』も例外でない。ハニー誕生から全寮制・聖チャペル 学園入学辺りや、早見一家とのカラミ、衝撃の親友・秋夏子の死、 ジルとの決戦など、大まかな展開はそうアニメと変わらない。 (連載期間はほぼ同一ながら、アニメより各エピソードが伸びて いるため、アニメにある聖チャペル学園崩壊後の展開はオミット)

変わらないが、そこはそれ「なーんたるハレンチ、なーんたる永井豪!」 (c・辻真先)だ。

詳しいところはもう、マンガ読んでくれとしか言いようがないし、 冒頭の誕生シーン始め、「公園の銅像」シーン、それに続く 「おじさんの弁当窃盗」シーンや、親友・夏子ガラミでも体罰 受けた治療シーン、夏子の焼死シーンなどなどこの作品を読んだ 誰しもが「俺燃えどころ」を持っているだろう。

で、個人的燃え所は…といえば、やはりジルとの最終決戦の一コマ。

名探偵・イボ痔小五郎とポール玉玉氏のヤリトリから始まる ラストエピソードは、豪ちゃん悪乗りとしか言いようのないギャグの 応酬。二人の漫才もさることながら、冷奴顔のチビ警官が騒ぐだけで 結局役に立たない、というナンセンスを経て、パンサー標的のポール 氏蔵・黄金仏にハニーが化けて潜入しているところから核心へ。

ポール邸占拠を果たしたパンサー。だが黄金仏が消える。慌てるジル の傍にいた部下タランチュラ・パンサーがニヤリと笑うと…ハニーが その正体を現す。高らかな名乗りとともにキューティーハニー登場か、 と思いきや。ジルが叫ぶ。「おおーっ!」

「ハニーフラッシュ!」と声掛けるもスッポンポンである。そらもう 丸見えである。1ページの沈黙を経て、「驚いて声も出ないようね」と ハニー。いつもの目でなく羞恥心丸出しの女の目をしたジル。その異様 に気付いたハニーが下を向くと、次のページへ。

「キャーッ!」と叫ぶハニー、
思わず丸くしゃがみこみ、上目遣いに頬を赤らめ、
バック黒のコマにポンと寄って、

「ちょっ ちょっと待ってね」

…このリズム。わざわざ3コマ掛けてこの展開を用意している 手間の掛け方が余りにも素晴らしい!や、マジで読まんと分か らんのだけど。

メインの「原作」連載に対し、その他各誌でのタイアップ連載が存在する。
70's版では…

石川賢「冒険王」「映画テレビマガジン(別冊冒険王)」(秋田書店)
・岡崎優「なかよし」「テレビマガジン」(講談社)
・中島昌利「テレビランド」

…などなど。石川版以外は単行本化に恵まれないのが残念。ことに 岡崎版は、このハニーと『UFOロボグレンダイザー』という2大荒木作品を 得意の少女マンガチックな繊細な線で描いているので、目に触れる機会が ないのは残念。


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