キューティーハニー天女伝説
2001年夏、新たな『キューティーハニー』の物語が幕を開けた。


双葉社・アクションコミックス(1〜8巻・2003/11/12現在)
1巻・2002/1/19初版発行   2巻・5/12初版発行   3巻・8/12初版発行
4巻・10/28初版発行  5巻・2003/1/23初版発行  6巻・4/28初版発行  7巻・8/28初版発行

尚、単行本以外に2002年12月 B5判中綴じにて「『キューティーハニー 天女伝説』総集編」(双葉社・「WEEKLY漫画アクション」 1月13日増刊号)が出た。

「WEEKLY漫画アクション」(双葉社)2001/8/21・28合併号〜2003/7/29号連載。

週刊連載で約100回続いた新シリーズ、豪ちゃんのコメントによ れば「この作品はハニーシリーズの決定版になるであろう」との コトだったが、実際の内容は「ハニー」というフォーマットを 使いながら、新規キャラクターによる作品を起こしたの感アリ。

…というのも、一応キューティーハニーとパンサークローの戦い をメインの骨子に据えていたものの、連載半年ほど経った頃から、 明らかに主人公として立って来たのが早見青子。豪ちゃん キャラでいうと、ちイ子先生(『スポコンくん』など)や リッキー(『手天童子』など)のような豪快女と、その 変種である女蛮千代(『おいら女蛮』)の系統に属する。豪快エロ 系の筋肉美女がこれほど飛ばすのは久しぶり。


「印象の残らんSEXはしなかったと同じ!」
「皆殺しだ! 皆殺しだァー てめえら死ね!!」
「混乱と狂気が 青子さんに 活躍の場を呼ぶ!」
「平和なんてクソくらえだ!」

のよーな、筆で大書して床の間に飾りたい<爆言>とでも言える セリフが心地よかった。

一方、「SPA!」版(90's)でハニーの相棒だった轟わたる刑事の 血を引く轟兵太刑事が青子といいコンビで漫才していた。真剣振り 回すシリアルキラー捜査の際には、懐に入れたブツで一人ボケ、 「ア〜ッ ダメだ!ヨウカンじゃ勝てない! 日本刀に勝てない!」 と大いにずれた発言振りで味を出し、青子を「黄金の公衆便所」と 褒めるくだりなど、名シーンを連発。

しかしながら、「主役」ハニーは、その変身前である如月ハニーの姿 すら封印、青子の探偵事務所に勤める羽生久士(久ちゃん)と いう仮の姿で普段過ごしている。たまに青子・轟に危険が及びそうな 時に(?)アメリカで探偵をしている、という設定で如月ハニー登場。

結局のところ、如月ハニーすら、キューティーハニーなみにそれだけ で立ってしまうスーパーヒロインなんすよね。もはやお約束という。 70年代の怨念背負ってないと光らない部分もあるワケで。

『ジャック』や『SPA!版ハニー』を通り越して、ハニー全体が何だか 完全無欠美女になったのが、面白くなかったんすよね、俺。優等生に なったハニーは、どうも豪ちゃん美女としてそう面白くない。新作と してマンガを起こす際に、そこいらが意識された結果が久ちゃんであり 新主人公の青子になったんではないかと。

なので俺は、この作品は『ハニー』ではあるけれど、一方で「早見探偵 捕物控」が本来の姿なんだろうな、と思うですよ。落語の長屋話に通じる、 与太郎が事件を持ち込み、長屋の大家か大工の大将が解決に向かって 一肌脱ぐ、というプロットが炎天下冷奴先生らしかったというか。

縦筋としてはもちろん、シスタージルとの戦いがあるのだが、 途中からジルを押さえて、海のパンサー一族を率いるマーメドゥーサ が登場。初作よりハニーとの同性愛的愛憎を感じさせていた ジルに対して容赦ない攻撃を見せていた。これも、ややもすれば「馴れ合い」 に陥りがちな物語を引き締める役目だったのか。

その傍ら、パンサーとは全く関係がない推理モノエピソード や、パンサーとは別種の獣人登場編、テンマ博士率いるロボッ トの世界などなど、風呂敷だけは拡がったが、雑誌休刊に伴い、 色々と未消化になったようだ。特に、賛否両論のデーモン界 とくっつきそうなエピソードでは、『デビルマンレディー』で 提示された、暴力による進化で人間は獣性を獲得、デーモンに なる、といった未来像が描かれ、ダンテやアモン?なども登場、 青子さんが遠のきそうなイキオイだった。良かったよ、行かなくて

その他プロットで割合目立つのが、時事ネタ。石原慎太郎東京都知事 が提唱するカジノ問題や、極端な右傾化時代を思わせる 子供だけの特攻軍隊や、おたく青年の暴走などなど、今日的な アプローチもされている。

その他…

「90's」の筆のようなタッチから こちらはもう少し節度感の高い線になり、昔に近い絵柄へ回帰した カンジがする。コトに青子がこなれてきた頃以降がヨシ。グルグル 目玉で暴力の限りを尽くすシーンは泣かせる。

また、豪ちゃんお得意の客演キャラクター・他作品とのクロスオー バーも結構あって、同時期不定期発表されていた海洋バトルマンガ 『サラーキア』のおおもと話がある。また、ツッコミどころ なのかどうなのかすら分からない、マジンガーハニーも登場。 コレはこの時期OVA『マジンカイザー』(シリーズ全7巻+1)がリリース 中だったからか。

忘れてはいけないのが、『ラブリーエンジェル』の主人公が設定も そのままラブリー如月として登場、ハニーのメンテナンス を行なうというエピソード。その存在の謎は明かされなかったが、 ハニー世界がこういう広がりを見せたのは意外だ。


永井豪の部屋へ

[TOP]