また、放送録音も頑なに拒んでいたことでも知られています。『ルプーは語らない』では、「放送録音はできませんでした。録音をかたくなに拒むのは、ラドゥとクリスチャン・ツィメルマン、この二人ですね。(p46)」と書かれています。しかし、YouTube
には放送録音がいくつかアップされていますから徹底的に拒否していたわけではないようです。1981年オルデンスザールでのマレー・ペライアとの連弾のコンサートの放送録音をFM放送からエアチェックしたテープが手元にあり、独奏のコンサートではないもののよく聴いたものでした。Ateş
TANIN
氏のウエブサイトには、所有されているルプーのライブ音源のリストが掲載されています。その数は結構ありまして、例えばベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番だけでも7種類のライブ録音のテープがリスト・アップされています。
RADU LUPU Recorded Concerts & Recitals Compiled by Ateş TANIN
この箇所は第4楽章の266小節と361小節のことと思われ、エミール・フォン・ザウアーの版では(*)が記され、欄外にその簡略例が書かれています。右手が7連符で上昇する重音のうち下の音5個を省略する、つまり指のポジションを変えた先の音だけを重音にすることでスムーズに弾けるようにしてあります。なお「
etc. 」とありますから、フィンガリングによって略し方は奏者に任せていると考えられます。
ルプーが弾くガーシュイン
ルプーが弾くガーシュインのライブ録音をYouTubeで見つけて、そのまさかの曲目『ヘ調のピアノ協奏曲』と『ラプソディー・イン・ブルー』(1973年3月2日放送録音)に正直驚かされました。「千人に一人のリリシスト」として売り込んでいる若いピアニストに対して、レコード会社や音楽事務所としては相応しくない作曲家だったのかもしれません。米国の黒人指揮者ディーン・ディクソンがフランクフルト放送交響楽団を指揮したもので、1961年から数年間音楽監督だったディクソンがその亡くなる3年前に客演した時のソリストがルプーだったということになります。
Radu Lupu plays Gershwin Concerto in F and Rhapsody in Blue - 1973