当時は気づかなかったのですが、同じ1988年に映画『仮面の中のアリア(Le Maitre de
Musique)』が公開されました。ライバルだった二人のオペラ歌手が、それぞれの弟子同士を対決させ、オチはヴェルディの『椿姫』で歌われるヴィオレッタの有名なアリアで舞台裏からアルフレードが合いの手を入れるシーンを引っ掛けるという他愛のないストーリーではあります。しかし、映像の美しさと使われているマーラーの音楽が実に素晴らしい。年老いた主人公が美貌の若い女弟子と美しい田園地帯を馬車に乗り、急に土砂降りに見舞われるというシーンでこのマーラーの4番第3楽章アダージョが使われています。この映画のことは『大地の歌』の章でも触れます。