縮刷版98年11月下旬号


【11月30日】 「ペンペントライアイスロン」を同時発売の4本の中で最高ランクに挙げる人の多さに思わずホワイ? と両の手のひらを上に向けて小首を傾げてみたくもなるけど、いわゆる「レーシングゲーム」として楽しむなんて全くもって筋違いな捉え方で、仲間でワイワイと楽しむ「パーティーゲーム」として捉えれば光明が開けるのかもしれないなー、などと既にプレイした人々の意見を読みながら考える。

 イライラ感はつまり相手がコンピューターだった時に、そのあまりの速さについていけない自分に対して募るものであって、これが人の操作するキャラクターを相手にした対戦だったら、同じよーによたよたと歩いたりベタベタと滑ったりしている相手を邪魔して楽しむことも、十分に可能だということに気が付いた。ただし生憎とコンピューターしか相手に出来ない事情(友だちがいない)(家族もいない)がある身にとって、このままだと「ペンペン」は宝じゃないけど持ち腐れって事になりかねない。こうなれば「DC」を持ちながらも、「ペンペン」は買ってないってお宅にソフトとコントローラー持参で伺い、ともにその優雅なレースを楽しみたいところだけど、呼びかけても虚しいからポリゴン酔いによる吐き気も目眩も我慢して、対コンピューター戦での勝利を目指すことにしよー。

 会社に着くと12月20日に横浜パシフィコで開かれる鈴木裕さん入魂のRPG「シェンムー(莎木)」の発表会への招待状が届いていて、年末の忙しい時にやってくれるわ、とはお首にも出さず期待のソフトだけに見逃せませんねえ、などと表面上はにこやかに来場する大勢のマスコミ人たちの姿が今から想像できる。ただし綿密な日程の上にたてたこの発表会を、危機に落とし入れかねないもう1本の発表会が東京で開かれるとあって、雑誌社とかは当日のやりくりをどうするのかが、これも今からちょっぴり気になっている。

 あの「シェンムー(莎木)」に匹敵する発表会とは、って全員がそう思っているかは定かじゃないけれど、そう思っている人間がここに約1名存在する事実を告げた上で、明らかにしようその発表会とはあの「ときめきメモリアル」アニメ化の製作発表なのだぁぁぁぁ、参ったか。「ときメモ」の映像化といえば、コナミがリリースで「『ときメモ』が映像化されるのはこれが初めて」ってな感じの文言を盛り込んでいたよーに、歴史から抹殺しようとしている東映が作った実写版「ときめきメモリアル」の存在を忘れることはできないけれど、本編のゲームの世界をまんま採り入れた映像化という点では、初と言って良いんだろー。

 担当する人間の少ない某社では、果たしてどっちに行くべきかすでに迷いと葛藤が始まっていたりするけれど、「D2」のローラ人形に「ソニック」のTシャツと、ここんとこ発表会DNEO大盤振舞が目立つセガだけに、パシフィコでもきっとすっっげーお土産が付くはず(だよなセガ?)だろーから、遠くても地の果てでも海の向こうの展示場でも行ってみよーかって気になってる。とはいえ泣く子と「ときメモ」には勝てないとゆー格言もあるから、案外ひょろっとそっちに出没しているかもしれない。当日どっちに行くかでバリューを客観視できるじゃあなりすととしての眼をまだ持ち得ているのか解るかも。ところで「シェンムー」ってギャルゲーなの?

 四谷でホリプロのアイドルが会見するってんで何を置いてもかけつける。HIPってゆーホリプロの若手アイドルが集まった団体さんの情報を、電波の隙間を利用してデータを流す「ビットキャスト」ってゆー技術を利用してTBSが流すってゆー内容がメインで、ほかにバンダイの「プリネーム」ってゆー名刺作りの技術をトレカに応用した「プリネームプチ」にHIPが登場するとか、似ているけどこっちはネット決済の技術「ビットキャッシュ」でHIPの画像写真を購入できるとかいった、まるでHIPづくしの発表があった。

 HIPって誰がいるの? と言われて真っ先に上がるのが「ゼルダ」のCMで谷間も鮮やかな深田恭子ちゃん。もはやメジャーの域に達している存在感だけど、会見場でも5人いるアイドルのうちで1番何ってゆーかマーベラスな雰囲気を漂わせていた。それからアニメな人にはお馴染みすぎる超音波ボイスな大森玲子ちゃん。実は1番喋っていたのがこいつで、子ども口調にアニメ声は間近で見るとなおいっそうの迫力がありました。

 他には新山千春ちゃんと優香ちゃんともう1人は誰だったっけ? そうそう酒井彩名ちゃんだ思い出せないくらいに印象が薄かったりするのは5人が決してユニットではなく、ピンで活躍するホリプロの若手アイドルをとりあえずまとめただけって事の現れで、だから深田恭子と大森玲子が同じ場所で会見したりもする。とはいえ彩名ちゃんだって「新宿少年探偵団」に出てたり「おはスタ」に出てたりとツボな活動をしているし、何ってったって「昭和60年生まれ」とゆー歳75センチとゆーBに魅力が大(僕的に)なので今後応援していこーと決める。「おはスタ」ってことはもしかして前に吉川ひなの人形の会見で初リポートしてたあの娘がそうだったのかな?


【11月29日】 「ガサラキ」はユウシロウの口が割と横に長めに描かれていて、なんだか「時空転抄ナスカ」の恭資くんに似ていて、戦闘の最中にいきなり全身タイツ姿になってやっぱり全身タイツのミハルと「時空をこえて云々」やら、「魂人がどうたら」とかやり始めやしないかと、半分期待したけどそういった演出はなく粛々と話は進む。検校と言うから音楽の時間に習ったよーに、多分目の見えない人なんだろーと思ったら、「アキラ」めいた施設の中を割と平気でスタスタ歩き、風体に似合わずセキュリティーの番号をペコペコと押していたのがちょっと不思議。あれって心眼?

 そして登場した御蔵の最奥に眠るあれが「ガサラキ」かあ、まさか動きはしないだろーと思ったら、次回予告ではシャコシャコと立ち上がってミハルたちと戦闘するみたいなシーンがあって吃驚。リアルでハードな戦闘描写技術描写社会描写と非科学な伝奇的描写とのぶつかりが、違和感にならないよーにうまくお話を進めていって欲しいですね。剣道場で突如全身タイツになってチャンバラするとかいった違和感はなしに。

 とはいえコミック版の「ガサラキ」(角川書店)は、冒頭から羅生門っぽい鬼退治の描写があって、伝奇っぽい要素を盛り込んだ作品であることがバラされているから、先にこっちを読んでおけばごくごく当たり前に「鬼」の登場だって受け入れられるかも。描いているのは最近単行本がバリバリ出ているMEIMUさんだけど、原作アニメのテイストを採り入れつつも女性の顔とかタッチなんかでMEIMUの雰囲気をちゃんと出していてどちらのファンにも有り難い。ストーリーはほとんど一切の脚色もなく、まんま原作アニメをなぞっていく感じで第1巻では異国でミハルと手を取り合って逃げて結局離れて、日本へと戻る先々週の放映分までが描かれる。アニメを見られない人はとりあえずこっちを追っかけていれば、世間の話題にはついて行けるでしょう。だから「EVA」みたく途中でストップさせるなよ角川。

 新宿へ。今週月曜日に続いて昼間の「ロフト・プラスワン」をのぞくのが目的で、時間があったのでいつもの通りに「さくらやホビー館」へ向かい、2階のフィギュア売場をウロウロ。いよいよ発売なったのがコナミの「かってに桃天使」のフィギュアだけど、端的に言えばこれが最低最悪の品物で、何が最低最悪かと言えばスカートの下が平らになってそこからニョッキリと脚が生えている造形で、当然のことならが「白」は見えないどころか作られてすらおらず、期待していた(どれだけいたかは知らないけれど)ユーザーの純真な心を、ものの見事に裏切ってくれている。

 おまけにブリスターパックの高さが足りないために、巨大なバスト(この再現はまあ誉めてやってもよい)の先っぽが、透明なパックに擦れてしまっていて、たいていのパックに塗料が付着してしまっている。酷いものになるとポッチの部分の色が白く禿げているから情けない。生乾きでパックに放り込んだんじゃないかとすら思えてくる。これで値段が3800円はねえぜよコナミ。あまりの不人気にきっと間もなく1000円以下くらいに値引きされるだろーから、待ってそれから買おう、って買うのかそれでも。

 すでに値下がりしていた商品から、某所の某人に評判の良い「ムーラン」のアクションドール(鉄棒とか剣とかついたバージョン)を894円で購入。非アクション版のチャイナ服姿のムーランとか、傘とか持って女性の姿になった「ムーラン」のドールも結構なお値打ち価格で出ていたけれど、手足を曲げられる方が面白いし顔立ちも女性服バージョンより頬紅がさしてあって陰影が出ていて趣があったのでこっちに決める。ズボンを脱がせても白は身につけてないけれど昔の人だから仕方ないか。シノリョウみたく男のパンツでもはいてたら面白かったのにぃ。他には前にも見かけた「銀鈴」や、こっちは履いているけど「赤」だった「ウエディングピーチ」なんかが1000円以下でセール中、だったけど流石に「さくらや」のピンクの紙袋持って「ロフト」に行くのもアレ過ぎるんで、1つに抑えてディパックに押し込み素知らぬ顔で歌舞伎町へと向かう。ちなみに1階では幻との噂も高い「ドリームキャスト」が山積み状態。どこで仕入れたんだろ?

 今日の出し物はオタク・アミーゴスでは1人だけ訴訟から仲間外れの眠田直さんが、「はれときどきぶた」で世間をシンカンさせたヘンな演出では定評ありまくりなワタナベシンイチ監督を招いてのトークショウ。最近渡辺信一郎って似たよーな名前のアニメ監督が世間をやっぱり別の意味からシンカンさせているけれど、どっちがどっちのパチもんって訳でもないので世間の人は「ニセモンだー」なんて指などささないよーに。ってもねえ、登場したその格好が緑のジャケット黒いシャツ黄色いネクタイのモロ「ルパン3世」って格好は、メタルな長髪兄ちゃんなあっちよりもやっぱりパチもん臭く見えてしまうからなあ。髪型なんてアフロだし、あまりにウケ狙い過ぎだよなー。

 とか思っていたら前に神戸で開かれた何かのイベントに、個人賞を貰いに行った時のワタナベシンイチ監督の格好がこっちは赤いジャケットでまんまセカンドシリーズの「ルパン3世」。頭のアフロは高校生の時からの由緒正しいものらしく、決してウケを狙ったその場限りのコスプレではないことが解ってその筋金ぶりに感嘆する。常にどうあれば面白いかを意識せずともやってしまえるそのセンスがあればこそ、かくも面白すぎるアニメを次々と世に送り出せるのだろー。

 それが証拠に流れたフィルモグラフィィは、かの「ミスター味っ子」にはじまって「おぼっちゃまくん」とか「魔法陣グルグル」とか題名忘れた勇者シリーズの何かとか、最近では「ガオガイガー」(お天気おねえさんが出た回ね)とか「こどものおもちゃ」とかいった、テンション高くギャグ満載のエピソードばかり。そしてそれ以上に本人のあふれるサービス精神が、会場に集まった濃いファン薄いファンを煽って盛り上げて3時間近い時間を笑いの渦へと叩き込む。

 アニメに登場する「ナベシン」キャラ総まくりとか、手持ちのパソコンでせこせこ作った素材をビデオ編集の人と3時間かけて編集して作ったとゆー(ちなみに本編の編集は1時間)予告編の総まくりとかってな紹介されるビデオの質量ともすさまじく、合間にトークも絡まって時間が瞬く間に過ぎていく。質疑応答のコーナーでは「どーしてグッズは出ないのか」と聞かれて「ソニーの人いますかぁ、ああいたいた、彼に聞いて下さい」と言っていたけど、ソニー・グループのソニー・クリエイティブプロダクツって、おたくなグッズのマーチャンってどうも下手っぽいから難しいかも。残るは製作元のSPE・ビシュアルワークス当たりに頑張ってもらいたいところですが如何でしょうか白川社長、ゲームとかが見たいって要望が多かったよー。個人的には和子せんせいのフィギュア(歌も唄うバージョン)が欲しいね。

 これからの仕事の段になって言うはどうやら「や」な傾向の物語が1本で現在絵コンテを進行中。そして最大の期待が今日このイベントにわざわざ緑のジャケットを着てきた、のは普段着だから別だとしてもそんな格好を日常的にするきっかけとなったあの作品を、ナベシン自らがメガホンはアニメだから取りはしないけれど監督として映像化する事に決定! そう来年夏の「ルパン3世スペシャル」は、ワタナベシンイチが「味っ子」のエスカレート、「こどちゃ」の饒舌そして「はれぶた」のシュールなテイストをすべてぶち込んでもちろん自信もこっそり出演の、とにかくハチャハチャな作品になる、とまでは言ってないけど多分そうなるでしょう、とゆーよりそーしてくれるでしょう受けるのが大好きな人だから。

 あまりの高まる期待に会場では早くも予告編が上映、主演はもちろんルパンな格好のナベシンで、次元はギャング兄弟五右衛門は武蔵小金井銭形は則安そして不二子は和子せんせいとゆー配役までもが発表されたけど、このまま作ったらまんま「はれぶた」になりそーで、それでもオモシロそーだから良いかも。ってことで来年夏の劇場用に「はれぶた」のルパンパロディ1本いかがっすかー。


【11月28日】 「プレステの上にセガサタのっせってー、セガサタの上にドリキャスのっせってー」と唄いながら買ったばかりの「ドリームキャスト」をテレビの上に乗っかっている家庭用ゲーム機の山の上に積み上げる。プレステが1番下なのは上が平らで1番土台にしやすそーだしドリキャスが3番目なのは当然の事ながら3つの中で最も小さいから。あれれ「NINTENDO64」が無いよって人には教えてあげようあれは大きいくせに上が波打ってておまけにROMカセットを差しっぱなしなんで上にも積めなきゃ下にも置けない。常にスタンドアロンで置いてもらえるよーなボディ形状にしておくとは任天堂これでなかなかに隅におけないねえ。ゲーム機から情報端末へと向かおうとしているセガとソニーが「プレステこけたら皆こけたーっ」ってな具合に共倒れしても、独りゲーム機の世界で孤高を保って行くって矜持かもしれないと妄想する。

 とりあえず「バーチャ」でお遊び、する前に同梱されていた「プロジェクトバークレー」ってな文字の書いてあるROMディスクを突っ込んで中を見ると頭髪的にデンジャラスなおっさんが出て来て何か喋ってる。彼こそが世界に冠たる(のかどーかは知らないけれど)ゲーセンの神様・鈴木裕さんと知ってはいるけど、自分家のソフトとはいえ結構長時間に及ぶインタビューを収録して配ってしまうのって、自己顕示欲のそんなに強そーな人に見えないだけにちょっと不思議な気持ち。社員のスタア化によって雰囲気をソフィストケートさせよーって戦略でもあるのかな。社長に専務にクリエーターと一般受けする人材を持つ方が、可否はともかくマスメディアの関心を集めやすいのは昨日の大騒ぎを見れば瞭然なんだけど、肝心の物が一般受けするものじゃない限り後でくらうしっぺ返しも大きいから気を付けた方が良いんだがなあ。

 さてその「バークレー」こと「シェンムー(莎木)」では、3次元CGで描かれた女の子が活躍するムービーが登場するよーで、確かに優れた絵かもしれないけれど色気って点で「FF8」のリノア・ハーティリーちゃんにちょっち負けてる。まあこれは多分に見る物の趣味であって特に強要するものではありません悪しからず。とはいえ決して嫌いではない、おまけディスクに多数登場する原画のマンガっぽいキャラクターの雰囲気が、3次元CGになった途端に霧消してしまうのは問題で、それが嫌だと粘土か何かでキャラクターの立体像を作ってみたりしているんだけど、そうした段階ですでに雰囲気に違いが出ているのは2次元と3次元、アニメとCGの越えられない壁って事になるんでしょー。まさか鈴木裕さんが止め絵のギャルゲーかセル風アニメのゲームを作るとも思えなないし、ならば最初から立体で美人を作れば良いんだろーけれど、「バーチャ」を女性キャラで遊んで顔立ちに好みがいなかったことを考えると、鈴木さんと僕とでは趣味の違いに差があり過ぎるのは明白だから、厳しい見方しか出来ない事態も今から想像しておいた方が良いのかもなー。「バーチャ」胸揺れないし(って結局それかい)。

 とはいえ所詮はゲーム若葉マークな僕がその道苦節ウン10年な人たちと同等の感動を得られるはずもないので、ここは商用ネットのフォーラムあたりで極めて高い評判を得ている、んでもって某「ファミ通」のレビューでは「7」「6」「6」「6」と「ユーラシアエクスプレス殺人事件」の「6」「5」「6」「6」あるいは「みつめてナイトR大冒険編」の「6」「6」「5」「6」よりも高い点が付けられている「ペンペントライアイスロン」をプレイして、我が目の曇りを取り払い蒙を啓こうと意を決して「ドリキャス」に「ペンペン」のディスクをぶち込んで、再びのプレーを開始する。うおえい。お見苦しい音をお聞かせいたしましたがやっぱり目が回って神経が高ぶって僕にはちょっと食べられそうもありません。

 何が合わないかってあの、常にキャラクターのペンギンが画面の中央に位置取られている関係で、キャラの移動と同時にチカチカな色をしたCGの背景が右へ左へとブンブン動く点。ゆっくり動いている分にはよいけれど、ピンボールのバネっぽい仕掛けが左右にしてある狭い通路をペンギンが左右の壁にぶち当たりながら進んでいく場面では、もう目が追いつかないくらいに画面が左右に動いて1発で頭が痛くなる。氷上を滑ったり海中を泳ぐ場面はそれでもスピード感と浮游感を味わえるけど、歩く場面ではなかなか前へと進まず心がザラつき、段差の場面ではなかなか超せずに心がイガつく。まあこれとて所詮はゲーム初心者たる僕の修行の至らなさに依るものかもしれないから、昨日に続けてしつっこく先達エキスパート師匠マスター神様とりわけハンターな方々のご感想が広く登場して来る日を待ち望みつつディスクを抜き出しケースに封印する。おうえぃ。

 岡野玲子さんの今は亡き「PANJA」に連載されていたらしーマンガ「妖魅変成夜話」(スコラ、900円)の第1巻を買う。科挙の試験を受けに行く途中の主人公が妖怪狐狸の類に何故か好かれてそれでもどうにか進士となって登用されて、さてやるべえと気張っていったら命じられたのは各地で起こる怪奇な現象を調査し報告するとゆー仕事。生真面目な男が誑かされて呆然とする表情が頻出する点とか、雅やかな話なのにどこか俗っぽい点とかは「陰陽師」のシリーズでも見られる岡野さんの真骨頂とも言え、グリャグリャと笑いとろけながらエピソードを読み進む。主人公の上司にあたる双子の強い童子を従え5つ子の下僕を従える超絶美形な龍将軍ってのがこれで結構怪しい輩で、たぶんな展開を次巻以降に期待してはいるんだけど、さて今も何かに連載されている話なんだろーか。第1巻とあっても続きの出ない「バーディー」とかってのもある事だし、期待しつつ期待しないで次が出るのを待ちましょう。


【11月27日】 目覚ましに叩き起こされて電車に乗る。仕事に行くのである、って何かをパクったよーなイントロはさておき目指すは一路秋葉原、朝まだ暗い午前6時の総武線はそれっぽい人も幾人か見られたよーな気もしたけれど、ほとんどは会社に向かうおじさんで到着した秋葉原ではもっぱら山手線へと乗り換えて北へ南へ今日も元気にニッポン経済の底力にならんと向かって行った。そんなおじさんたちをしり目に電気街口を抜けてまずはテクテクとラオックスのゲーム館をチェック、うーん確かに並んでいるけどすっげー行列ってほどじゃーない。ざっと7−80人ってとこ? コミケとかの行列を直に見ている目にはあんまりごった返しているよーな印象はない。むしろ前のウィンドウズ98発売の時の方があちらこちらでイベントやってただけあって、もっと賑わっていたよーな気がするなあ。「iMAC」ん時は名古屋にいたんで知らないけれど。

 でもって次に向かうはセガ・エンタープライゼスから前日に教えてもらっていた取材ポイントの「メッセサンオー」前。おおこちらはすげえ人出でごった返しているなあと遠目に思って近くばよると、目にも見えたのは大半がカメラマンにリポーターに新聞記者に雑誌編集者といった風体のおっさん姉ちゃんたち。出来ていた行列は長さこそ末広町の交差点方面へと続いていたけど聞くところによると「メッセサンオー」、この日に発売になった「センチメンタルなんとか」なパソコン用ソフト)(とオマケか何か)を求める人たちも同じ行列に並ばせていたそーで、取材して回る人たちがきっと「ドリキャスいかがっすかー」とマイクを向けると「なんすかそれ?」とか言って肩すかしを喰らわせるなんて光景も、前夜からきっと何度も演じられていたに違いない。騒ぐマスコミの彼らにとって何と滑稽に映ったことよ。

dc1  そうこうしているうちにイリさんこと入交昭一郎社長が登場、さっそくカメラに囲まれてインタビューを受け、行列を視察し握手をしたりしてから裏手に回って店の偉い人たちとの歓談に入ったみたい。表では着々と開店への準備が進みシャッターが開いてテーブルが置かれ後ろにはオレンジ色の箱が山積みに。やがて午前7時30分過ぎになり、全国のきっとどこよりも早い「ドリームキャスト」の販売がスタートし、前夜から並んだとゆー新聞によれば(聞かなかったよ俺)中野区在住で23歳の男子学生くんが真っ先にテーブルへと歩み寄って第1号の「DC」をゲット、報道陣の申し出を快く受けて湯川専務の顔も鮮やかな「DC」の箱を高々を掲げて全国にその面をさらした。のはワイドショーでも新聞の夕刊でもすでに知れ渡ったことでしょー。ちなみにそんな彼を自慢の「コンタックスTVS」で狙っている帽子被った兄ちゃんが読売新聞夕刊の1面にちゃっかり映ってました。仕事している男の姿ってウツクシいなあと自画自賛。

dc2  さて丸い兄ちゃんは第1号の「DC」を持ったまま再び登場に入交社長と固い握手を交わしてセガ万歳を全世界に向かって訴える。うむ偉いぞ仕込みじゃないのがもっと偉いぞ次のハードの時もちゃんと1番乗りを果たすんだぞと呼びかける。とか言ってたら来年末とかって言われてる「PS」後継機の販売時にも「メッセサンオー」前で1番とってたりして。相変わらず学生とか言って。さても約300台を用意していた「メッセ」前で粛々と販売が進むのを背中で見ながら、移動する入交さんを囲みながら今度は第2スポットに予定されている「ラオックス」前へと向かう。何故か赤いフェラーリがどっちの店の前にも止まっていたけど、あれ誰んだったんだろー? 中さんのかと聞いたら違うみたいだったけど。うむ。

 こっちにはかの有名な湯川専務が眼鏡なしの真っ当な顔で登場、した割にはオレンジ色の法被を来て専用のスピーカーで「ドリームキャストいがかっすかー」と呼びかけていたのはいかにもテレビを意識した演出でなんだかなーと心がけぶる。とにかくテレビの連中と来たら! ってのはペン記者とスチールカメラマンが大クルーで来てでかいカメラを振り回して走り回るテレビの連中に共通に抱いている感想で、今日も湯川専務と入交社長が2人でインタビューの応えているショットを広報がいくら先にスチールを、それからテレビをと呼びかけても、聞く耳をもたずにずーっと撮り続けていた。まあこっちは半分は飾りな専務の写真より一応は代表取締役の写真を撮る方が重要だったからツーショットは無視したけれど、テレビの人たちにはもうちょっとねえ、なんとかしてやっていただきたかったですねえ、リポーターの人も大したことのない行列をさも一大事のよーに喋ってただけだし。給料は僕の倍なのに(って結局はこれが言いたかっただけなのかも)。

 しかし20分もすると行列がなくなってしまい格好がつかなくなったのか蜘蛛の子を散らすよーにカメラの放列も雲散霧消したのには呆気にとられたねえ。しかしそれ以上に早朝だけですべて品切れとならなかったのが意外だったねえ。聞くと整理券は180番くらいで「まだ買えます十分にあります」との事だったので、ここは集まった知り合いの記者たちの「こいつなら踊りそーだ」との期待に応えるべく、何故か財布にしっかり用意してあった万札を握りしめて階段をば駆け上がり、本体とメモリとソフトは何が良いかと考えて簡単に遊べそーな「ペンペントライアイスロン」を買ってついでに「湯川専務ストラップ」ももらって秋葉原を後にする。ちょっぴり自己嫌悪が背中にさぶいぼを立てる。土砂崩れ注意報発令中。「lain」は買ったんですけど暫く出来そーにもありません。

 会社に着いて何をしたかと言うとパッケージから出して会社のテレビに接続して早速買ってきた「ペンペン」の試し遊び。おお綺麗じゃん、と思ったのも束の間スピーディなレースを期待していた目に映ったのはスティックを倒してもボタンを押しても一向に激しく走ったり滑ったりしよーとはしない鈍なペンギンの姿。タイミングが悪いとはいってもあまりの鈍さにイライラばかりが募り、その割には左右とか上下にグラグラとゆれる画面に早起きな上に空腹な胃からこみ上げてくるものがあってコントローラーを投げ出す。こりゃ参った。もしかして素人の僕が悪いだけなんだったら誤るけれど、これって「良い」ゲームなんでしょうかそれとも「アレ」なゲームなんでしょうか。ビリーバーに負けず断じられる人の意見を期待したくなりました。

 グリグリになった目玉を落ちつけるべく、よりグリグリになりそーなフルCGの映画を見に行く、っても「FF」なあれでも「VSITOR」でもないその名は「ビーストウォーズ」だ。来月の19日から始まる劇場版の試写をのぞいたんだけど、TVシリーズを実はほとんど見ていなくって予備知識くらいしかなかったにも関わらず、CGの硬派なキャラクターにあてられた日本人声優たちの軽妙なセリフ回しに口元はほころび腹の皮はほぐされて、ペンギンから受けたショックが幾分か緩和される。アニメ版が実はメインになるとはいえ、CG版も第1作のダイジェストらしき展開と、それからアメリカで絶賛放映中らしい新作のCG版も合わせて1時間近くあって、そっちの方が好きだったってな大人のファンでも行けばそれなりに楽しめる、かもしれない。

 とりわけ新作版はCGのクオリティもパワーアップしてちょっと凄いぞ。デストロンな蜘蛛の姉ちゃんと鷲だか鷹だかのサイバトロンとのラブロマンスもあって物語的にも納得の逸品。残念なのはバツっと途中で終わってしまっていて、デストロンの手下になってしまった不死身なプロトタイプのビースト戦士の運命やいかにの引きに「ここで終わっちゃうのって悔しいよー」との思いが募る。新作CG版が放映されるのってきっと来年の秋とかになっちゃいそーで、それまでの心の整理がファンほど大変になるでしょー。しかし不思議なのは「東映」マークにあてられるナレーション。いかにも「ビースト」らしいその声その喋りにファンは泣け。あるいは笑え。赤字になって開き直りの東映の未来は明るいぞ。いや暗いのか。

 土砂崩れ警報発令。あまりな事態にこれは拙いと再び秋葉原にとって返して「バーチャファイター3tb」を買ってしまう。さすがに午後も2時になればたいていの店で売り切れになっていて、袋をもった人の数も随分と減っていたよーな。聞くと再びな入荷は週明け以降でも未定だそーで、たとえ朝の8時半に秋葉原にいるとゆー僥倖に恵まれたとは言え(っても仕事なんだから当たり前か)、初日に「DC」を手に出来たとゆーのはやはり運が良かったとゆー事なんだろー。早速始めた「バーチャ」はやっぱりまんまアーケードの「バーチャ」ですげえ。けど乳は揺れないなあ。


【11月26日】 朝から元気に起き出して新宿経由で初台へと向かい、アスキーの決算説明会をのぞく。つい先週末にも「週刊アスキー」の創刊(復刊!)1周年記念パーティーで見かけた鈴木憲一社長(のりちゃーん、の掛け声あり)が、やっぱり色物のシャツ姿で登壇しては最近の概況についてあれやこれやと話してた、よーな気がするけれど頭は刷り上がって発売を間近に控えた「ファミ通DC」の内容確認に追われてほとんど聞いてなかったのでリストラの対象になってるんじゃないかと思う雑誌&人員は社長をつかまえて直接聞いて下さいな。

 でもって「ファミ通DC」を読んでようやっと(どっかの方言)山手線とか総武線とかのJR駅頭を賑わしているセガ・エンタープライゼスの謎なギャル絵の正体が判明。あれこそが「ヴァーチャ」な鈴木裕さんが10月頭の発表会で口にした「ゾンビの出て来るゲーム」、じゃないこれは岡本吉起さんだ鈴木さんの方は「プロジェクト・バークレー」のキャラ画であったのだ。コードネームを外されたタイトルはポスターにもある「シェンムー(莎木)」で女の子の名前は玲莎花ちゃんと言うそーな。見るだにおそらくは中国関係の人らしーけど、いわゆるチャイナ・ファンタジー系のゲームになるかと思いきや、記事には登場するアイティムに黒い電話にカセットに卓上の平べったいタイプのレコーダーがあって、推察するに昭和も30年代あたりがあるいは舞台になってるのかも。12月20日なんて暮れも押し迫った時期に横浜パシフィコなんて僻地(千葉からは、って意味)で発表会を開くそーなんで良い迷惑だけど行かざるを得んなー。

 新しめの情報ではコナミのDC参入タイトルがいよいよ決定、それは「ときメモ」でも「メタルギア」でもなくオリジナルのフライトシューティングゲーム「フライトシューティング」と、最近のコナミが得意としている音楽体験ゲームの「ポップン・ミュージック」であったとか。マルチプラットフォームとは言え何時もながらの手堅いラインにコナミらしさを感じるけれど、スポーツゲームは定番として出して行くみたいなのでサッカーゲームについてはグラフィックの美麗さを含めて期待をしてる。動画もふんだんに使えるのなら「桃天使」あたりも出し直してみるのも良いかも、って実はまだやってないからどれほどの物語か知らないんです悪しからず。「サンパギータ」より面白い? って比べて良いのか。良いかも。

 そんな「DC」の会社の社外役員としてやっぱり期待をせざるを得ない角川書店がいよいよ東京証券取引所に上場。出版社としての上場は例えば学習研究社なりベネッセ・コーポレーションといった教育系の出版社を入れれば始めてじゃないし、ソフトバンクだってアスキーだって一応は出版社とゆー事になるけれど、文芸から雑誌からコミックから文庫から幅広いラインを持ったいわゆる「総合出版社」としてはやっぱり初の上場とゆーことで、これからのコンテンツ時代(日経産業はそろそろインフラの時代が来たんだってな軌道修正を促しているけれど)を見据えて出版に限らず映像へネットワークへと多角経営をしていく上で、資本市場とゆー有力なパトロンを得たことになる。

 もちろん市場の声とゆーこれまでの”天の声”とは違う所から鉄砲玉が飛んでくる心配だけは、毎年どころか四半期いやいや毎月毎週毎日だってあるんだろーけれど。まあ歴彦社長曰く「社長に復帰してからトップダウンにしろボトムアップにしろ民主的に運営される会社にしようとやって来たし、そういった結果がディスクローズになるのなら、資本市場にもディスクローズしようと言うことで今回の上場になった」とゆーことらしーので、市場からありゃこりゃ言われるリスクだってもちろん自覚の上での上場なんだろーけれど。ところでホントーに角川書店って民主的、なので、しょう、か。

 他の記者が経営に関する難しい質問をする間中、ずっと押し黙ったままでいると時間切れとなってしまい会見場を退場。「何で質問しないのよ」と、パーティー会場とかで見かける度にあれやこれや聞き回る僕が黙ったままでいたのを歴彦先生いぶかったみたいで聞いて来たけど、だってねえ、晴れの上場の会見で周りは経済記者(って僕も一応は経済記者なんだけど)って環境で、「エヴァはもうブームが終演したんですねえ」「ナデシコも終わり掛けてますけど次は何をするんですかぁ」ってなオタクに走った質問、とても出来ないじゃありませんか。ましてやそんな質問に、逐一社長の人が答えて社長の人までオタクな人だと思われてしまうのも、未来ある角川書店にとってあんまり嬉しい話でもないしぃ。関係ないけど主婦の友とかとの連携に続いて挙げよーとして隣りの人に止められた会社の名前がチラリと耳に入ってウムー。何があるのか何かあるんだなきっと多分あの会社と。

 上場にしろ店頭公開にしろ資本市場で投資家の目にさらされるということは売り上げを毎年確実に上げないと信用をなくしてしまって資金調達もままらなくなる可能性を藻っているってことで、その当たりで今岐路に立たされているのが公開依頼順風満帆に走って来たスクウェアの中間期での実に7割にも及ぶ減収と赤字決算。スクウェアがミリオンなタイトルと期待していた「武蔵伝」が意に反して68万本だかの売り上げに止まり、「双界義」も15万本で競馬の「パワーステークス」に至っては5万本のセルスルーと、とても日本を代表する800人もの人員をかかえたソフトハウスとは思えない成績を余儀なくされた。

 下期は例の「FF8」が発売されるし年末の「チョコボの不思議なダンジョン2」に年度末には「サガフロンティア」も発売の予定で、うまくすれば3本で480万本の販売が期待できるとゆーのがスクゥエアの弁。まあ「FF8」に冠してはミリオンは固いだろーけれど、200万本とかって数字を出すのは果たして大丈夫かどーか未だ見えず、「チョコボ」のミリオン「サガ」の今期中の発売も実はまったく不透明だったりするからやっぱり正念場なんだろースクウェアも。かき集めた人材の行き場もいよいよどーなのかと、考える所も多々あるけれど来年には開発ラインも軌道に乗って少なくとも数だけはちゃんとソフトが出るそーだし、「アナザーマインド」なんて一風変わったソフトも出て来てバラエティーにも富んで来たから、ちょっとは状況も変わるのかも。さてもまずは「FF8」、女の子可愛かったんであたしゃ買いますとりあえず。

 朝日新聞と読売新聞が奇しくも同日に小林よしのりさんの「戦争論」を巡る論壇の動きについて論評。朝日では松原隆一郎さんが多分「世界」の特集の序文を引いて、「『なぜ読まれるのか。惹かれるのか』が気になるのだ」という、「戦争論」が戦争を肯定する根底に最近の乱れた世の風潮があることへの認識をを示した上で、「むしろ小林氏の呼びかけが有効だった理由を問うべきだろう」と「世界」あるいは「論座」での特集が小林さんへの十分な反論になり得ていない点をついている。朝日にしてこの記事を掲載するとはなかなか。読売新聞のほうは小林さんの義憤の源を冒頭で指摘しながら、それに応える術を求めていない点がちょっと物足りない。

 「SAPIO」には先の「朝ナマ」での議論が相変わらずの恣意的に敵味方を描き分ける手法で紹介されているけれど、絵柄はともかく実際に見ていても相手側の小林さんを追いつめようとする姿勢に抜かりがあったのが解っていたから、見逃していた最後の電話投票で小林さん側が勝ってしまったのにも半ば納得できる。僕自身は戦争は嫌いだし絶対に行くものかと思っているから多分敵側の人間なんだろーけれど、義憤する気持ちがある事への認識は持っていてそれを解決する方策を「公」すなわち「国家」に求めて戦争を肯定するにしろ、もっとゆるやかな共同体めいたつながりが「お互いに迷惑をかけずに相手を尊重する」程度の気持ちで良好に保たれれば「戦争」も「国家」もいらないと考えるにしろ、その点について語り論破できる識者の登場が待ち遠しい。番組では敵側(そりゃ台湾出身だもの)だった筈の金美齢さんでも悪かった事良かった事を認めた事で小林さんは「ウツクシ系」の側に入れていたくらいだし、案外話せば解る人、なのかも、って甘いかねえ。甘いわねえ。


【11月25日】 ニーコニッコニコニコグラフー、と「磯じまん」のCMソングに乗せて唄いながら(知らんわい)、幕張メッセで開催中のCGなんかの展示会に行く。アメリカに比べて毎度のことながら相当に貧相らしー展示会だけど、それでも今やCGの最大の使い手であるゲームメーカーがナムコとスクウェアのみながら出展していて、技術から娯楽へのフィールドへと降り広がって来たCGの現在を見せてくれる。そのスクウェアでは「ファイナルファンタジー8」とそれから「ファイナルファンタジー・ザ・ムービー」のデモンストレーションを上映中。後者についてはすでに発表会の会場で見ていたから今さら驚きはしなかったけど、改めて見ても目の動き顔の表情のリアルさにはやっぱり感心する。

 「FF8」のムービーについてはリアルさの追求という点では映画には及ばないけど、普通一般のゲームのムービーにあってそのリアルさはやっぱり図抜けていて、とりわけ女性キャラクターに今年頭に発売された「パラサイトイヴ」なんか比べ物にならない肉感が漂っていて、これが見られるんなら買っても良いかなーってな気になる。主人公のスコール・レオンハートと、その多分恋人ってなリノア・ハーティリーがダンスホールで踊るシーンの、揺れるリノアの髪とかぶつかった相手にアカンベエするリノアの表情とかにはただ驚嘆。ローアングルであおった踊るリノアのミニスカートから伸びる脚の何とソソることかと、ただのポリゴンのカタマリに欲情する自分を恥ずかしいとは思いつつスクリーンに見入る。決闘シーンでの適役の唇の端を吊り上げた表情はいかにもな出来でちょっとねえ。よーするに女性キャラだったらCGでも人形でも縫いぐるみだってオッケーって事なんだろーなー。

 まだ小さな会社がいっぱい出展しているコーナーで「映像光房」ってファクトリーが出していた「つくられた女」とゆービデオを買ってみる。「要人の身代わりアンドロイド、『擬人体』 それは倒産寸前の佐藤工藝社にとって切り札の新製品だった」とゆー宣伝文句に乗ればたぶんSFなんだろーけれど、家に帰って見たビデオは始まるったのっけからザラい絵ショボい演技ズレる音声に「まるで自主制作ビデオやなー」との思いを抱く。とはいえ出演しているのはプロだしスタッフも必殺シリーズなんかに携わっていた人がいるそーで、オープニングとかにそのテイストはうかがえる、かも。必殺ファンなら喜べるのかなー。全編通して見て(見られたら)また感想を述べましょう。

 映画と言えば昨日24日発売の「夕刊フジ」に出ていた「落下する夕方」への快楽亭ブラックの票が、前に読んだ「大怪獣東京にあらわる」以上に酷いシロモノで見て結構面白かった身として異論反論オブジェクションな怒りにとらわれる。ブラック曰く「性を描いてくれていないので退屈な映画でした。原田、菅野、渡部の3Pが見たかった!」。まあ言われてそう言えないこともないけれど、少なくとも映画はそんなシーンが無くても十分に成立しているし、ブラックが欠点として上げた「菅野がまるで脱がない」ことも「映画では何も見せないとはケチすぎる」点も、だからと行って映画の興を殺いでいるとは思えない。

 確かに「女性の女性による」映画ではあるけれど、決して「女性のための」映画ではない作品を、ヌードなき故に「女性のための」映画としたとしかとらえられない品性なら、モロ男性のためのAVでも見てれば良いんだ。もっともこちとら原田知世のプールのシーンの水着姿や、図書館のシーンでの胸ポッチなセーター姿に欲情してしまうお手軽野郎なんで、おそらくは百戦錬磨の快楽亭の感性とは、比べることは難しいんだろーけど。ただし脱がないけれど菅野美穂の演技はファンでなくても必見の要あり。自然に自然な演技をする田中麗奈も良いけれど、意識して天然な菅野美穂もまた良いなー。これに天野佑吉ベタ誉めな真野きりなが居る限り、ニッポン映画の未来は決して暗くない。

 浅草の雲古ビルの横にあるホールでバンダイが開いた「ワンダースワン」の業者向け説明会に行く。「チョコボの不思議なダンジョン」に「電車でGO!」に「信長の野望」と家庭用ゲーム機でお馴染みのタイトルが「WS」向けになって実際に触れるとあって業者のみならずマスコミ関係者も結構来ていたみたいで、いずれ出るレビューが楽しみですがとりあえず個人的にはまず「信長の野望」がマジに「信長の野望」だった事に仰天。字は小さいしマップは適当だけどコマンドのバラエティーは本作並で、内政するなり外交するなり合戦するなりエトセトラな命令を与えて、戦国の国穫り合戦を楽しむ事ができる。ちょっち注目のソフト。

 「チョコボ」は実はよく解らない。RPGなんだろーけど動きが目まぐるしい訳でもないし、グラフィックも美麗な訳でなく、わざわざ携帯型ゲームでやる意味がいまいち掴めない。家庭用ゲームの「チョコボ」に親しんだ人なら触って楽しいかもしれないので判断は保留。あと「電車でGO!」はキーチェーンが携帯型ゲームになってもやっぱり「電車でGO!」でした。振動パックでも出せばもうちょっと面白くなるかもね。ナムコの野球とサミーのゴルフは携帯型でもそれなりに楽しめる面白さ。やっぱりスポーツゲームって歴史があるだけあってゲームとして熟成し切った定番ジャンルなんだろーなー。ここはテニスとサッカーも欲しいところであります。プロレスはあったぞ。

 しかし1番ハマってしまったのが、かの横井軍平さんが開発に携わっただろー理由からその名が冠されたパズルゲームの「GUN PEY」。横に5つで縦に10個くらい並んだブロックの下から準に斜めやら鍵型やらに線の描かれたブロックが現れて段々と上に上がって行く、その線を右から左へと繋げられれば線が消え、つなげられずに上まで到達してしまうとペナルティとゆー簡単なルールだけど、やってみるとこれがなかなかに面白い。簡単なよーでいて油断すると線がニョニョニョっと上まで行ってしまい、慌てて他のブロックを上へとずらして線を繋げて消して、再び下へととって返して出てくる線がうまく繋がるかを待っている、そんな繰り返しが知らず10分、30分、1時間を奪ってしまう。

 10万点あたりを越えるとたてに10列くらいあるブロックの真ん中の1列が見えないよーになって、消したつもりが残っていて気が付くと上に近づいていたりする、そのスリルは結構なもので慣れてくると消えている部分のブロックをひっくり返して線が残っているかをチェックする、そんな行為が自然に出来るよーになったらあなたは立派な「GUN PEYER(グンペイヤー)」。ついついムキになって1時間程度を占領し、21万7000点まで行ったところで時間切れお開きとなってプレイを断念。対戦モードみたいなのもあって楽しみ方の幅は広いよーで、おまけにハードと同時発売かつ特別価格の1980円で販売とあって、ハードとセット購入が必携のタイトルといえるでしょー。美麗なグラフで「N64」とかに移植しても「テトリス」的に楽しめるかも。やりません?


【11月24日】 昨日の「ロフト・プラスワン」イベント関連で補足。ゲストとして出席していた小中千昭さんによれば、「朝松さんは、ほんの数年前に脳の手術をされ、奇跡の復帰をなさっておられたんですが、ここ数ヶ月無かったという発作が起きてしまい、とうとう最後まで皆さんの前に出られませんでした」との事。部位が部位だけに後難もまた多いだろうし、今度もいつまた発作が起こらないとも限らない切羽詰まった心境の中で、本を書き研究もしあまつさえイベントも開いて啓蒙(暗黒だけど)活動に勤しんでおられるその姿勢を、たまたまイベントに出て来られなかったからと言って無碍に断じられるものではないと反省する。がしかしやっぱり説明は欲しかったなあ。

 山形浩生さん訳ポール・クルーグマン著の「クルーグマン教授の経済がこんなにわかっていいかしら」(誤訳、正式には「クルーグマン教授の経済万歳」)(意訳、正確には「クルーグマン教授の経済入門」)は大手町の紀伊国屋で再び平台に復活しての山積み状況に、本を手に取って確かめると再版になっていて、これはあるいは目標としていた10万部突破も夢では…まだ夢か。しかしろくすっぽ宣伝がなされてない割には立ちどころに山が半分くらい減っていまうほど店頭での消化も良いみたい。やったね。

 もっともこれが例えばアカデミー出版だったり徳間書店だったら、電車の中吊りもバンバンやって露出を増やし、店頭には田中麗奈のフジカラーのPOP(くれ!)を押しのける大きさの「クルーグマンくん」を立てて大宣伝を繰り返し、ヨースタイン・ゴルデルも仰天のミリオン・セラーへと仕立て上げてたりするんだろー。口コミでジワジワジワっと広まっているとは言っても、天下の読売新聞あたりが書評で紹介するのは同じ著者でもダイヤモンドの固い方(でも2刷だ)だったりするのがやっぱり権威って奴ですか。ここは1つ月曜日付に掲載されている「ネットで語ろう1冊の本」なマルチ読書のコーナーの方で取り上げてやって頂きたいものですね。

 「アニメ絵」という言葉を町田ひらくさんが「アリスブランド」(コアマガジン、1000円)の著者による作品解説で使っていてたのを思い出す。その中で持ち込みをしていた時代に編集部の人から「アニメ絵じゃないと受けない」と言われてそれを思いきり皮肉った作品として「ROSWELL ANGEL」って漫画を書いたって話してる。「アリスブランド」に載っているのはそのリメイク版って事になっているから、それが「アニメ絵」なのかを判断する事は僕にはちょっち難しいけど、他の細い描線と目もキラキラしていない女の子のマンガと比べると、「ロズウェル」に描かれた目の大きく頬の線がふくらんでいる斜め45度が可愛い手足がプニプニとした女の子の絵は、やっぱり雰囲気が違って見える。

 となればいわゆる「アニメ絵」ってのの傾向もそこから何となく伺えそーなものだけど、こうしたアーティスト側なり編集者側の認識が、「美術手帳」に論文を出した伊藤剛さんとの認識と果たして一致しているのか、あくまでも彼にとっての了解に過ぎない区分けがその他の人たちの認識と重なっているのかを検証する術はなく、故にやっぱり次に特集する時は、「俺アニメ絵」についての想いの丈をぶつけちゃってやって頂きたいと切に願っちゃったりして。次はあるのかな。

 「ゼルダの伝説 時のオカリナ」を買っても相変わらずプレイしているのは「ドラモン」だったりするゲーム鈍な僕ですが、それでも虚仮の1年エアーズロックをも持ち上げるの故事もそのままに、何とかよーやくチームバトルのAクラスを1発でクリアして、新しい扉の向こう側へと旅立つことが出来ました。しかし不思議なのは捕まえるモンスター配合で作り出すモンスターのほとんど9割9分が女の子になってしまう事。あるいは僕のマシンなりソフトには環境ホルモンでも入っているのかと頭をめぐらしてみるけれど、多分真相はゲーム前に肉とかを食べ過ぎて体が酸性になっていたからでありましょう。ここは頑張って野菜や梅干しでも食べてアルカリ性に体を直しておかなくっちゃ。石灰風呂につかるってのも良いかも。

 「週刊プレボーイ」を今週も買ってしまう。三浦理恵子さんの妖艶さが滲む写真でも三船美佳さんの16歳にして人妻な熟れた肢体でもなく、目的はスロヴェニアで活躍する森山泰之元名古屋グランパスエイトの記事、ってのは実は3割くらい本当で、残りの大半を占める目的の7割分は「鮮烈美少女」と銘打たれた初音映莉子さんだったりするのです。すでに先週発売の「少年マガジン」誌上で170センチのスラリとした長身の、けれども長身だからという訳では決してないほどにスリムな肢体が目に痛く、再びにしてその体躯を確かめてみたくなった次第。

 すでにしてNTTドコモ東海や永谷園のCMで活躍するとゆー彼女の、顔こそ美少女だけど袖のないワンピースあるいはキャミソールからむき出しになった腕の、あまりの細さには申し訳ないけど色気はいささかも感じない。もちろん食い気も全然。手と同様に脚の細さもアフリカ的で(って意味はつまりエチオピアかルワンダかってな雰囲気のこと)触るとトゲが刺さりそー。同じく細さが異様なまでに目立つ榎本加奈子の場合、胸はいちおうあるし顔の元気さアクションのしっかりさをCMなり番組で確認できるからまだ安心出来る(水着はさすがにイタイタしいけど)。顔は全然頬骨立ってないし頬もコケ落ちてないから、単にスリムなだけなんだろー。テレビとかに露出してくるよーになったら、アクションとか喋りとか見て印象も変わるかな。おっと森山の記事も鯱男なら必読。頑張ってるよ。


【11月23日】 佐倉訪問で思い出したことあれこれ。そーいえば「川村記念美術館」には何とかって日本画家の描いた「木蘭」つまりは「ムーラン」をモデルにした絵があって、これがなかなかに現代風の麗しい木蘭さんで、これで10何年も女とバレずにいられるのかなー、などと不思議に思うことしきり。まあ絵なんだから綺麗で結構なんですが。あとJR佐倉駅から佐倉市立美術館へと向かって歩いていく途中に、犬小屋があって横に犬が寝ていて、小屋に何を思ってつけたか「ナサニエル号」とかってな名札が張り出してあって吹き出す。まあ名前なんだから「ナサニエル」が「サキエル」でも「エヴァンゲリオン」でも構わないんですが、名前負けしないものかとちょっぴり可哀想にも思います。んなこと我関せずとばかりに、小屋の横でぐっすり眠ってたナサニエル様でしたが。

 新宿・歌舞伎町の「ロフト・プラスワン」で朝松健さんが1日店長を務めるトークライブがあって見物に行く。最初にキツい言葉で感想を言えばちょっぴり「看板に偽りあり」だったイベントで、ってゆーのも当のホスト役の朝松さんが何やら不可思議な事情でもって(一説にはアレイスター・クロウリーの呪いとゆー声もあったけど)控え室で倒れてしまい、最期まで観衆の前に姿を見せる事が出来なかったから。体調が悪いんだから仕方がないよと言われれば、ファンだから仕方がないなぁと思って引っ込ま去るを得ないけど、折角集まった人たちの為にも、やっぱりあんまりあって欲しい事態ではない。次は体調を万全にして今日の倍いや5倍の濃度でトークを繰り広げて下さいな。

 でイベントの方はというと、午後2時の定刻になっても一向に始まる気配がなく、その時は体調の事なんで知らされてなかったから「遅れているのかなあ」(というのも会場ですでにゲストの小中千昭さんと井上雅彦さんの姿は見かけていたから)と思い、15分遅れくらいでようやく場つなぎ的に小中さんが昔脚本を書いてTBSの今は懐かしい番組「ギミアブレイク」で放映された「オカルト勘平」の2話目にあたるビデオを流し始めた時も、30分くらいしたら始まるのかなあ、とくらいに考えていたらやがてドラマがクライマックスに近づく午後の3時くらいになっても、誰も舞台へと姿を現わさない。クトゥルー的に遊びの多い番組に喜ぶ濃いファンもいたけれど、決して特撮的に優れているとはいえない番組だけに、まるまる見せられるとは思わず一体何事かと訝(いぶか)る。

 そうこうしているうちに番組が終わって3時を回り、ようやく小中さん井上さんが登壇し、そこに朝松さんの代役として松尾未来さんが加わってのトークとなって、なんとか「トークライブ」っぽい雰囲気だけは出て来た。もちろんお話の内容も、さっきの「オカルト勘平」での数々の遊びに触れてみたり、その次に作られた同じクトゥルーを題材にお魚人間なインスマウスが出てくるドラマについてありゃこりゃ解説を加えたり、魔術と魔女の違いについて専門家である松尾さんが答えたり、当初は朝松さん本人がいろいろと解説を加える予定だったクロウリーの肉声テープをかけたりして、それなりの盛り上がりは見せたし勉強になった部分も多かった。

 途中飛び入りで菊地秀行さんが登壇して、アメリカのやっぱりラヴクラフトに関連するドラマを見せながら解説をしてくれたりと予定外の楽しさもあったけど、せっかくの「日本SF大賞」で特別賞を穫った井上さんがいながら、おまけに普段はたぶん着ないよーなフリヒラのついたほとんど吸血鬼かナイトウォーカーってな格好をしていながら、2時間半の時間のうちの1時間半は映像が流れていた状態では、井上さんを含めてトークの部分は畢竟少なくなり、ホラーやクトゥルーへの思い入れと知識の披露大合戦的なネタを期待していた分には、ややもすれば物足りないイベントだった。サイン本プレゼントも外れたしぃ。菊池さんは女性に持ってるクジの番号聞いてその番号を言ったりするしぃ。

 買ったばかりの「lain」のシナリオ集に小中さんからサインをもらえたのはそれでも大きな収穫で、同じ事を考えていた人が結構いたのは案外とやっぱり「lain」ってそこそこの人気があった番組なのかと再認識させられる。「異形アンソロジー」の中で唯一、ホストとゲストだった朝松さんと小中さんと編者でもある井上さんが全員書いている(奇しくも菊地さんも書いている)「屍者の行進」も持っていたけど、肝心の朝松さんがダウンでは別にサインを頼むのもはばかられたので諦める。会場には田中啓文さんとか(違うか?)牧野修さんとかも来ていたよーだけど顔を覚えてなくってわかんないのが残念。しかし昼間っから暗黒なイベントで「ロフト・プラスワン」ほぼ満員になるとは、東京ってやっぱり凄い街なんだねー。

 加野瀬未友さんが「ARTIFACT−人工現実−」の最近の出来事の11月20日付で紹介している、「美術手帖」における伊藤剛さんの文章が面白そうな予感がしたので給料取りらしく1600円払って購入、読み始めてなるほどこれはただ面白いだけじゃなく、とてつもなく面白い文章だと解ってしばし絶句する。思うところはいろいろあるけれど、ってゆーか何について論じていて何を結論として言いたい文章なのか読解力のない自分にはさっぱり解らなかったけど、それよりもまず感じたのは、「アニメ絵」と「非アニメ絵」とを分ける明確な違いって何なの? ってことですね。

 文章じゃあ目線とか立ち位置とかいった構図的な部分から、「カードキャプターさくら」はアニメ絵的で「MASTERキートン」はアニメ絵ではないと言ってるけど、同じく目線が合ってなくって立ち位置も混乱していると指摘している「はだしのゲン」が、果たしてアニメ絵なのかそうでないのかが説明されておらず悩む。39ページの松本大洋さんの「鉄コン筋クリート」の1コマだって目線あってないし。あるいは政治性に回収されることをきらって一時留保した可愛さが、だったら差異の最もたるものだとしても、おじさんが主人公の「キートン」ではなく同じ浦沢直樹さんの可愛い女の子が主人公になった「HAPPY!」を例示した上で、これもアニメ絵じゃないとしたら何故にそーなのかを説明して欲しい気がして仕方がない。

 そもそも「アニメ絵」ってからには「アニメ」の絵と何らかの関係があるんだと思うけど、そんな説明が一切なされていない事がわかりにくさに一層拍車をかけている。「アニメ」って言ったって「サザエさん」から「あずきちゃん」から「ちびまる子ちゃん」から他多数の、目も大きくなければ髪だって紫色でも緑色でもない作品が幾らだってある。非アニメ絵的と言われた当の「キートン」だって、その絵柄のまんまに「アニメ」になって動き回ってる時代に、果たして「アニメ絵」「非アニメ絵」ってな分類が成立し得るのかどうかが、とりあえずの疑問として浮かぶ。

 直感的にはいわゆる「アニメっぽい絵」ってあると思うし、それは物語とか主題とかとは関係なく、もちろん目線や立ち位置といった構図的な問題でもなく、目鼻立ちとか手足の造形とかってなキャラクターの「絵」そのものから感じている事なんだけど、そんな極めて私的な直感を便りにすれば「To Heart」はアニメっぽい絵だけれど、「さくら」の絵はあんまりアニメっぽくない。大胆なコマ割りにしても、背景に飛ぶ花にしても、昔っからある「少女マンガ」の延長線上にある作品じゃないかって思う。

 まあ、これとてあくまで僕の主観でしかなく、違うよどっちもアニメ絵だよって言う人が大勢いるであろーことは容易に想像が可能だし、アニメのアクションなり演出を取り込んだマンガの事をアニメ絵とカテゴライズするのかもしれず、だからこそ論者である伊藤剛さんには、彼にとって「アニメ絵」とは何かを、絵を並べて了解しているね、と言うだけでなく明解に言葉でもって論じてもらいたい気がします。それがアニメ絵的と断じられた藤島康介さんも含めたアニメではなくマンガを作ってる人たちへの、礼儀じゃないかって思うんですけどね。まあ僕が「<バカ>くん」だから説明したって無駄だと思うかもしれないですが。


【11月22日】 数奇な運命に恐れおののきつつも明石散人さんの「謎ジパング」などを読みながら電車に乗って佐倉へ。駅を降りてえっと南にちょっと歩けば「佐倉市立美術館」があったよな、と勘に物を言わせて適当に歩き出したは良いものの、去年の今頃通ったはずな道も、坂の上にそびえたつラブホテルもさもありなん、ってな瀟洒な建物も見えずこれは方角を間違えたかと心配になってもと来た道をとって返して駅前へ。線路越しに北を見ると何とあれこそは去年の今頃「ポール・デルヴォー展」を見に行った美術館ではないか。そうなのです去年はキチンと京成佐倉駅で降りて歩いたのをすっかり忘れてJRで行ってしまったのでした。徒労に終わらせないためにも歩くべえ、と意に決した瞬間にすーっと通るは「川村記念美術館」へと向かうマイクロバス、これは怪我の功名とコロリ態度をかえてバスに飛び乗って本の続きを読みながらこちらは「フランク・ステラ展」以来だからかれこれ3年ぶりくらいかになる「川村記念美術館」へと向かう。バスちゃんと動いてたぜい。

 もちろん朝の11時だから閉館なんて事もなく中に入ってゆっくりと、それこそ次のバスが到着するまで否応なしにゆっくりと中を見学「させられ」る。ロビーを入っていきなり漂うはチョコレートの甘酸っぱいよーな香りで、売店かどっかで板チョコでも売ってるのかなー、などと訝(いぶか)りつつも順路に従って1の間から順に見ていく。まずは目に入るはマルセル・デュシャンの有名過ぎるほと有名なレディ・メイドの便器をひっくり返した「泉」。まあ説明するだけ徒労だからしないけどただの便器も「アートだ」と言えば「アート」だし「アートだ」と言われれば「アート」にさせられてしまう代表例でありましょう。横にあるはルネ・マグリットの1枚と、さらにこちらも有名過ぎるほど有名な森村泰昌さんの「オランピア」を元にした素っ裸モリムラがベッドに横たわっているアレがでん! と迫力の裸体を披露してくれておりました。見かけによらず筋肉質だなー相変わらず。

 ほとんど常設になっている後方のマネやらピカソやらジャガールやらローランサンは放っておいて次々と次の間へ。ここで1つ注意しておきたいのは飾ってある絵のどれにも作者名もなければ題名のプレートもなく、観客はただ作品そのものを見て「これはアートなのか」を考え「これがアートなのか」と想像しなくちゃならないって事。名前なりタイトルなりから想起するイメージが先入観となって別の価値観を観客に与え、純粋に「アートとは」に考えを巡らすチャンスを逸するのを避けようとする配慮なんだと思うけど、でも展覧会のタイトルがずばり「なぜ、これがアートなのか?」って具合に逆説的に「これはアートなんだ」ってことを主張していて、そこに「アート」というある種の価値観に見る人が縛られている事は否定できない。出来ればこっそりガラクタでも混ぜて、最期のコーナーに置いて在るビーズ玉による投票の場でそんなガラクタに山ほどの票が入ったりして、人の価値観とそしてキュレーターの価値観をぐっちゃんぐっちゃんにして欲しかったよーな気がするなー。

 とはいえある程度美術展馴れしていると、飾ってある作品の半分くらいは誰の作品なのか解ってしまうのが哀しいと言えば哀しい。さっきの森村にデュシャンにマグリット、そしてステラにセラにアヴァカノビッチに宮島達男にヨーゼフ・ボイスにボルタンスキーにマイヨールにタレルあたりは、どっかで見たり聞いたり似てたりする作品で、著名過ぎる作家の作品故に「すげー、アートじゃん」と先入観もたっぷりに見ざるを得ないのだから。上田薫さんのスーパーリアリズムな玉子を割る絵なんて何度見たことか。シンディ・シャーマンのグロいアップの写真も類似のものを知ってたからすぎ解ったし。それでも中には「誰だっけ?」と思わせる以前に純粋に「すげえ」と思わせる作品もあって、「これもアートなのか」と新鮮な思いを抱かせてくれた事も事実ですが。

 その代表例がロビーに漂っていたチョコレートの香りの元となった作品「煮えたぎるチョコレート」、じゃないヘレン・チャドウィックの「カカオ」。10人は行水できそーなでっかい桶の真ん中に棒が突っ起っていてそこからチョコレートが泉のよーに吹き出して桶へとダラダラたれさがって縁の方へと流れていく。桶の中でも何カ所かで下から拭き上がる空気か何かがチョコレートをゴボゴボと泡立てていて、見るだに登別あたりの山肌から湧き出る高温の温泉を思い出させてくれる。香りがあっちは硫黄でこっちはチョコだったりするけれど。ときどき泡が大きかったのか跳ね上がりが大きくなって縁の部分に飛び出したりするのが面白くって、脇にあるベンチに座ってついつい見入ってしまう。触れないから熱いのか温いのか判然としないけど、いつか誰かを叩き込んでチョコまみれにしてやったら楽しいかも、とかパンを串に差して「チョコフォンデュ」とかって遊んでやりたいなー、とか思ってしまうそれが「アート」の高尚さとは無縁であっても、それが僕にとってのこの作品の「正しい」見方。他の人がどう見て何を思うか聞いてみたいところであります。

 やがて到着したマイクロバスに乗ってとりあえずJR佐倉駅まで行き、雪辱を期すために徒歩で1キロほど歩いて当初の目的だった「佐倉市立美術館」へ。何かやってる、くらいにした認識してなかったけど到着してその展覧会が「チバ・アート・ナウ’98 FREAKS 境界線上の遊戯」だった事に気付き、入っていきなりの立石大河亞さんの巨大な絵に圧倒されて来て正解だったとほくそ笑む。並んでいるのは江戸と明治と大正と昭和のそれぞれの時代を象徴する人物なり物品なり建物なり風俗なりをコラージュしていった巨大な作品で、それぞれに見知った顔なり懐かしい建物・風俗・物体を見つけて記憶の隅をくすぐられる。一番見知った「昭和」の時代を描いた絵「昭和素敵大敵」は、中央に東京都近代美術館に行けば見られる古賀春江の水着姉ちゃんと潜水艦が組み合わされた有名な絵をパクりつつ、右の戦争時代から左の昭和末期までの人物風俗をズラリならべて激動の時代を1枚の上に表出させている。

 東条秀樹だ吉田茂だ佐藤栄作だ田中角栄だ三島由起夫だ朝永振一郎だ岡本太郎だ松下幸之助だ土井たか子だそして淀川長治だ、とまあざっと上げただけでも10人20人の顔が散りばめられ、鉄腕アトムにのらくろが走り回り新幹線がどかんと描かれロケットは空へと向かう。なぜかでっかく「バナナ」が描かれているのはあるいは好物だったかそれとも昭和で1番のご馳走だったかちょっと謎。一番角には「昭和」そのものをその名に持たざるを得ない”彼の人”の肖像が描かれて画面を引き締める。極彩色の絵もさることながら「岡本太郎」と「パブロ・ピカソ」のそれぞれの作品の代表的なモティーフをコラージュして作った陶器が、抑制された色彩と複雑なフォルムで絵画とは違う立石大河亞の才能を感じさせる。こーゆー作品をもっと見たいと思っても、すでにして物故した作家故にかなわない。回顧展としても主要すぎる4枚と陶器の作品が並んだ今展に、ファンなら是非ともかけつけよー。

 さらに個人的には最大の収穫が柏木賢造さんという作家の作品をたぶん初めてくらいに、そしてたくさん見られた事。拙い絵とこちらも原色に近い派手な色を組み合わせた作品はヘタウマなイラストくらいにしか思われないかもしれないけれど、その稚気にあふれたキャラクターたちとウィットに飛んだ書き文字、そしれなにより目を打って止まない色、色、色の組み合わせに例えば奈良美智さんとも太郎千恵蔵さんとも違う新しさと、そして美しさと、さらに楽しさを感じてしばらく会場を離れられなかった。陽気なバスキア、ってんでしょーか。とにかく奇妙で軽やかな作品群のほとんどが番町画廊とかってところの扱いみたいなので、本当に金でも溜まれば是非とも1つ買い求めてやりたい気すら湧いて来る。カラーじゃなくってモノクロに近いトーンの絵もまた作者のモードがストレートに出ていていい感じナウ。もう有名な人なんだろーけど、もっと有名になって欲しいとここに大宣伝をしておこー。

 そんなこんなで適当に辞去して今度は京成佐倉へと向かって坂を下り、去年も寄った古本屋でありゃこりゃと古本を漁る。すでに店頭からは消え失せてしまったロバート・J・ソウヤーの「ゴールデン・フリース」が1冊200円で2冊も残っていて、山岸真さんの解説に出てくるオーソン・スコット・カードの助言に従ってここは2冊とも購入して持ち帰る。1冊はいつか売ろう。あと最近人気急上昇中なのかなかがみ・あきらさんの「ワンダー・トレック」がやっぱり2冊も残っていたけど500円と600円は流石に救出にも重たい値段なので見送る。是非とも欲しいとゆー人は佐倉まで行って探しましょう。ただし間違えてもJRの佐倉で降りて南へ行ってはいけません。京成佐倉で南へ向かって山を上って行くんですよ。


【11月21日】 今日もきょうとて「ドラモン」はBクラスを突破してちょっとづつ前進の予感なれど本へのしわ寄せがタップリ出始めているよーで申し訳ない。がしかし更なる追い打ちをかけるよーに亀戸まで行って「ローソン」に予約してあった「ゼルダの伝説 時のオカリナ」をゲットォォォォォ! やり始めればおそらくは軽く2カ月は(だって初めてだもん「ゼルダ」なんて触るの)潰れる可能性の高い超高何度RPGが歳末のクソ忙しい時期に発売されるなんて犯罪以外の何者でもない、とりわけ年末進行にかかっている出版業界にとっては恐怖だろー(編集者も作家もすべてが「ゼルダ」に染まる)。ご心配なくあたしゃまだ必至に「ドラモン」やってますんで、あと「ナムコアンソロジー2」の「ナムコクラシックス」とかをジタバタと。

 けど亀戸の「サンストリート」内にある「GAME TSUTAYA」には正午前でまだ何本かの「ゼルダの伝説 時のオカリナ」が並んでいて”即秒完売!”とはいってないみたいなのが吃驚。大量に仕入れられただけなのかもしれず、人気の程を確かめるべく秋葉原へと回るとあんまり賑わってない様子で、あるいは既にして早朝のうちに大騒ぎも完結したのかと考える。面倒臭いんで店を回って在庫を確かめるなんてせずにいつものLD屋で「カードキャプターさくら」の第3巻を購入、ほかに「モルダイバー」のDVDなんかがあったけど恵比寿方面にありそーなのでとりあえず留保する。をを「VIRUS」の第3巻のジャケットはミレイが下からのアオリで肉への食い込み具合が超プリティー。ぜーんぶこんなジャケットだったら既にLD持ってても買ったかも。

 秋葉原デパートの本屋で「石神伝説」のVol.2を購入。「熊野の章」の冒頭で描かれる中田のシュートをイランのキーパーがこぼしてそれを岡野が叩き込むシーンが既にして遠い大昔の事のよーに思われ時代の虚ろいやすさを実感する。これ雑誌掲載時に立ち読みしたのって確か運輸省のある合同庁舎の本屋だったなあ、あの頃はマジメに仕事して、なかったわやっぱり。白鳥くんのミニスカートにルーズソックスにラムv(ラルフローレンかは不明)姿は今でも十分に通称するから、女子高生のファッションはこの1年でそれほど変化を見せてないってことでミニスカ好きには嬉しい限り、ただし現物の女子高生は脚がドムだから、白鳥くんとは印象がずいぶんと違って見えるけど。しかしいくらミニスカでも仮に電車の正面に座った白鳥くんのが見えたとして(何がだ)果たして喜べるんだろーか、喜んでいーのか。教えて下さいとり先生白鳥くんにはついてるの? それともついてないの??

 ドムといえば「G20」の第2号はジオンの特集で冒頭から並べられた「ザク」の開発過程を示したモデルが楽しい。テスト機の手がなんだか「ラムダ」みたい。「ザク」がなぜ「ザク」なのかはこないだの「ガンダム・センチュリー」のイベントで、スタッフだった人が「ザクザク歩くから」とか言っていたのを聞いたけど、「ドム」はだったら「ドムドムバーガー」あたりから思いついた名前なのか、「グフ」はアンディ・フグをモデルにしたからなのか、聞いたことがないので解らないけどすでにどっかに解説とか出てたっけ。「墓堀りreview2」は最初のソノラマから出た「機動戦士ガンダム」全3巻とか「OUT」80年3月号掲載の「悩ましのアルテイシア」が紹介されていて同時代的に下半身を擽られるものがあって懐かしさに起つ。と思ったら「月刊OUTのセイラ・マスヌードポスターを床に起き、アムロとセイラの濡れ場を読みつつ自慰行為に耽る青少年の姿」なんて書いてやがってこん畜生、どうせ仕方ないと呆れられる(笑)な中学ーand高校生活だったよ全くもう。今もたいして変わってなかったりするけどね。

 よほどニッポン放送「東京キャラクターショー」の一応の成功が嬉しかったと見えて来年2月の6日と7日に東京ビッグサイトで「アイドル&アニメカードフェスティバル’99」ってのを開催するとか。「カード」って言えばスポーツカードで大リーグにバスケットボールに競馬にサッカーと思われていた時代が、「マジック・ザ・ギャザリング」に「モンスター・コレクション」に「ポケットモンスター」のゲームカードへと移ってすっげー市場を形成しているよーな気はしてたけど、知らないうちに「アニメ」も「アイドル」もしっかりとファンを作って隆盛を極めているんだろー。tただし粗製濫造とは言わないまでも多すぎる発売にファンの財布は痛み、キャラなり対象での選別が始まってるって気もしないでもない。

 ファンの人に言わせればただキャラクターを並べているだけじゃあダメで、9枚をフォルダーに入れた時に描かれる1枚の絵とかいった表面的なこともそーだけど、すべてをコンプリートした時に作品なり対象の世界観が起ち現れてこそのトレーディングカードだとか。だから良い絵だけをカルタのよーに切って並べるんじゃなく、135枚なら(やっぱ9の倍数か)135枚の1番から135番までを貫くストーリーを9枚ごとのブロックにして構成していく力量が、たぶんカードの編集者には求められているんだろー。すでにしれカード業界に名編集者とかディレクターって産まれているのかな、調べてみたいテーマだけど、それを検証するには雑誌1冊ムック1冊買う以上の手間と金がかかりそーで(「VIRUS」なんて54枚なのに5000円くらい使ったもんなぁ)、これはやっぱりバンダイなり未来蜂歌留田商会なりブロッコリーの協力を仰ぐ必要がありそーだなー。

 ゲストにはあの「お面」じゃなかった「仮面天使ロゼッタ」で一躍ブレイクした(と勝手に思っている)吉井怜ちゃんが登場の予定、ご本人のカードもさることながら12月24日だったかには当の「ロゼッタ」のカードも発売される予定とかで、ファラオンやってたライオン丸こと潮哲也さんもそれから多分「ロゼッタ」の中に入っていた人も、含めてどびゃーんとカードの上に撮り降ろし状態で登場してくれているみたい。見えるのを厭わず空をジャンプするロゼッタが果たして怜ちゃんか否かは不明、というか言わぬが華。でも買っちゃいそーだなー。


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