縮刷版97年2月下旬号


【2月28日】 早起きして仕事用に斉藤和義さんのニューアルバム「ジレンマ」を聴く。工業新聞でありながら、ビデオや映画や音楽の簡単な紹介を書くコーナーがあって、発売元のファンハウスから届いていた斉藤さんのアルバムを、来週火曜日付けで取りあげることにした。

 斉藤さんは、ポンキッキーズ・メロディーの「歩いて帰ろう」を歌っていた人。実はこの歌をバックにしたキーズ・ラインダンスが大好きなんですよ、なんてことは別にして、ファンハウスのプロモーターの人から聞いていたように、ジャケットには幕末志士風の格好をした斉藤さんが写っていて、タイトルが出てこないけど、昔のセンチメンタル・シティ・ロマンスのアルバムのジャケットを思い出した。センチとはぜんぜん路線は違うけど、骨太のロックばかりで詞もまたグッド。作詞作曲から楽器の演奏、そしてプロデュースまでをすべて1人で手がけたことで、徹頭徹尾「斉藤和義の世界」で貫かれていた。聴き応えのある1枚。初回プレスはおトクなペーパークラフト入り。でもいくらだったっけ?

 ライナーを見ながらアルバムレビューを仕上げて、東映にこの春公開となる話題のアニメーション映画の試写を見に行く。この春公開の話題のアニメといえば? そう、あれですよ、あれ。ファンからは神様とも教祖様ともあがめられている、あのお方が総指揮をとって作った作品ですよ。少年が大人へと成長していく過程で、いろいろな困難にぶつかり、それを1つづつ解決して、最後に悟りの境地へと達するプロセスを描いた、非常に宗教色の色濃い作品ですよ。もうアニメファンなら言わなくたって解りますよね。さあ、みんなで主人公の名前を叫びましょう。さん、はい。

 「ヘルメース!」。えっ、誰ですか「シンジー!」なんて叫んだのは。「カヲルーッ!」ってな声もちょっと聞こえましたけど、全然はずれです。あの50人は入る試写室で、たった3人で見た映画の題名は「ヘルメス 愛は風の如く」。製作総指揮はあの大川隆法さん。原作も大川さんの本として、「愛は風のごとく」のタイトルで4巻まで発売されている。劇中歌では作詞までもこなしているから、そのマルチな活躍には驚くばかり。某教祖みたく自分で歌わなかったのは、「教宣映画」としての意味は当然持っているとしても、メジャーが配給する一応の「商業映画」として、正しい選択だったのかも。

 純粋にアニメーション作品として見た場合、キャラクターの顔が場面場面によってころころと変わるのが気になった。つまり下手ってことで、主人公のヘルメスなんて、ときどきカッコ良くなって、ときどきカッコ悪くなる。まるで新ルパン3世の次元大介みたい。放映開始時は鼻が下向きにとんがっているパターンだったのに、「荒野に消えたコンバットマグナム」とか「さらば愛しきルパンよ」の時は、「カリ城」風のカッコいー鼻だったからなー。

 あとCGもいかにもなCGで、前に見た「フランダースの犬」のラストシーンとも共通して、セルアニメとCGアニメの質感の違いを融合させることの難しさを、あらためて感じた。ストーリーはまあ予想したよーな内容。しかしチラシで「アニメーション史上空前のスケール」と銘打ってる割には、アニメージュとかニュータイプとかが大特集を組まないのは何故だろー?

 大原まり子さんの「アルカイック・ステイツ」(早川書房、1400円)を読了。こちらも「かつてない宇宙スケールで描かれるワイドスクリーン・バロックの傑作」と銘打たれてる割には、例えば光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」ほどのスケール感は持っていないよーな気がする。作品そのものが醸し出す雰囲気も、決して「ワイドスクリーン・バロック」といった大仰なものではなく、軽いノリで、思弁的なメッセージを伝えよーとしているよーに感じた。惹句を付けた編集者が、気合いを入れたか勘違いして、アオリ過ぎただけなのかもしれない。生頼範義さんのイラストとオビの惹句には引っ張られないよーに。


【2月27日】 週刊文春の読書欄で香山二三郎さんが柴田よしきさんの「炎都」(徳間書店、900円)と井上夢人さんの「メドゥサ、鏡をごらん」(双葉社、1800円)を取りあげていた。メインは「炎都」の方だが、そのあまりの絶賛ぶりに、読了者として「うーん」とゆー苦悶の気持ちが湧いて来た。政府の無策ぶりを揶揄ったところとか、他人を蹴散らして突き進むようなことをしないヒロインへの好感とか、共感できる部分もあったけど、あのむちゃくちゃな妖怪の設定とかには全然触れておらず、自分が面白い、とゆーか大笑いした部分についての感想がなく、大笑いして読んだ自分は、もしかしてとんでもない読み間違いをしているのではないかと、そんな不安でいっぱいになった。もう少ししたらあちこちで感想が出てくるだろーから、とりあえずそれを待ちたい。

 「新世紀エヴァンゲリオン」の新しいポスターの写真が手に入ったので、それを使いたいがために、劇場版公開に絡めた記事をでっちあげる。アスカがプラグスーツ姿で底辺にはいつくばって、中央を素っ裸のレイが手を広げて立っている構図の、最新号の「少年エース」口絵で使われているあの絵柄。アダルト女優の写真を掲載したことはあっても、アニメであれ漫画であれ、女性のヌードを掲載したことは多分これまでもない筈で、創刊から来年で40周年を迎える新聞にして発の快挙と、ひとり勝手に悦にいる。さー次は乳頭付きヌードの掲載にチャレンジだ。

 同じ紙面にはコナミの記事も載っていて、かの広井王子がプロデュースする恋愛シミュレーションのヒロインの写真が掲載されている。セガ・エンタープライゼスで「サクラ大戦」を作ってヲタクなファン心理をくすぐった広井王子が、恋愛シミュレーションの大ベストセラー「ときめきメモリアル」のコナミでいったいどんなゲームを作るのか、ヒロインの名前も声も決まっていない現時点でも、妙な期待が湧いて来る。発売は来年。コナミではほかに2本のゲームをプロデュースする約束らしーけど、つーことは「サクラ大戦」はもー続編が出ないのだろーか。今度の新キャラよりは「サクラ」の方が、好きなんですけどね、藤島康介さんだし。

 山本直樹さんの「フラグメンツ1」(小学館、1236円)を購入。ビッグコミックスピリッツに掲載された漫画を収録した中編集で、幻視に満ちた絵柄とストーリー、赤裸々な性描写を超えたところにある文学性に圧倒される。大原まり子さんの「アルカイック・ステイツ」(早川書房、1400円)を購入。中身は読んでいないからともかく生頼範義さんの表紙に圧倒される。かつてSFのイラストレーターと言えば生頼さんだった。小松左京さんも平井和正さんも、生頼さんの情念に満ち溢れたイラストと斬り結ぶことによって、そのパワーを何倍にも増していた。最近の軽い小説では、生頼さんのイラストはとても受けとめ切れかったのか、めっきり目にする機会が減ってしまっていただけに、「アルカイック・ステイツ」への採用はファンとして嬉しい限り。出来れば小松さんの小説や、新しいウルフガイもって思うけど、小松さんは小説書かないし、平井さんは今は泉谷あゆみさんにゾッコンだからなー。

 その小松さんがNHKの「クローズアップ現代」に出演していた姿を見て、あまりの痩身ぶりに驚く。川鵜の話題を取りあげていた番組で、オールバックの男性の後ろ姿が映し出された時、はじめはムツゴロウこと畑正憲さんかと思った。正面に回って、堺屋太一さんでもないしと思っていたら、何と「小松左京」のテロップが。まるまるとしてエネルギッシュで速射砲のよーに喋っていたあの小松左京が、ほっそりとしてボツボツと喋っているのを見て、不謹慎かもしれないが、末期の手塚治虫さん、川谷拓三さんを思い出した。ちょっとどころかとっても心配。自分の人を見る目がないことを、ここでは良い意味にとりたいのだが。


【2月26日】 テレビ朝日の朝のワイドショーが、久しぶりに「ジョンベネ」ちゃんの事件を取りあげていた。「ジョンベネ」ちゃんがカウボーイハットを被って媚笑を振りまきながら歌う映像を今回も流していて、その歌の下手さ加減に今回もまた呆れてしまった。美空ひばりは子供の頃でも異常なほどに歌が上手かったが、彼女を例外中の例外としても、やっぱり「ジョンベネ」ちゃんの歌は下手だねー。まー「ビューティー・クイーン」のコンテストであって歌のコンテストではないから、歌は下手でもいーのかもしれないが。

 事件そのものは以前として解決する気配はなく、おそらく犯人じゃないかと目されている父親も逮捕はおろか取り調べすら受けていない。雪深い町で起こった惨劇は、このまま春を迎えても解決しないのだろーか。それにしても、辛辣な質問責めで有名なCNNの「ラリー・キング・ライブ」でも取りあげられるよーな話なのに、日本では続報がまったくと言っていーほど入ってこない。2流、3流のタレントが付いたの離れたのには熱心なのに。同じ映像とカットを繰り返して時間を埋めるワイドショーでも、取りあげている以上は有り難く拝見することにしよー。でも下手な歌は聴きたくないなー。

 吉野朔実さんの「恋愛的瞬間」(集英社、400円)第2巻が発売。ハルタこと治田佐吉クンと友情を育む2人の女性キャラクター、かしこと撫子のそれぞれの「恋愛的瞬間」が治められていて、たんにがらっぱちな女性でないことが解って面白かった。ハルタと如月遊馬との関係は相変わらず片思いのままだけど、突然出現した精神年齢ゼロの25歳、元気なヨルの活躍によって、少しだけお笑いな関係へと近づいた。うーん、でもハルタって遊馬にはお笑いは求めていなかったんじゃーないか。このまま友情へと行っちゃたら、ハルタは別の子との「恋愛的瞬間」を探すんだろーか。

 「新世紀エヴァンゲリオン」の写真文庫とやらが角川書店から発売になっていて、本屋で手にとって絶対に買うもんかと放り出す。ペラペラなページ数にちょろり、ちょろりとしたアニメのカットが掲載されていて、間をセリフがつなぐって構成。セルは綺麗だけど、別に映像で見ればいーんじゃんって感じ。「カードダスマスターズ」のよーにテレビでは見られない絵柄とか、ファンが望んでやまない格好(言わなくたって解るよね)とかを入れて欲しかった。ミサトさんとリツコさんを出す時には、そーいったカットをどんどんと入れ賜い。ねえ。

 角川スニーカー文庫の「風水バスターズ 南京町虎笛奇譚」(618円)を購入。麻生燦(さん)とゆー30代後半のおっさんが書いたファンタジーとゆー、傍目には相当に気味の悪い小説だが、内容は極めて軽快で面白くってそれでいて真面目。中国が好きってゆーくらいだから、中国や香港、そして風水に関する下調べも結構念が入っていて、面白そーな要素をただ集めただけってゆー空疎な印象は受けなかった。とりあえず買い。でも次も同じよーな雰囲気の小説を書けるんだろーか。歳も歳だし、なー。東野司さんの新作「電脳祈祷師 美帆」(学研、780円)も発売。サブキャラがポン酢なやつらばっかりで、読んでいてイライラさせられる。まだまだ続くみたいだし、とりあえず次巻まで結論は保留。


【2月25日】 赤坂のサーフスケープトーキョーに行って、ディズニーインタラクティブのプレスミーティングに出る。ディズニーキャラクターを使ったCD−ROMタイトルを作っている会社で、前に伊藤裕太代表にインタビューしたことがあって、パソコン向けCD−ROMタイトルが売れない状況に憤りを表明してたのが記憶に新しい。そんな状況を変えてみせるとの意気込みで投入するタイトルは、どれもディズニーならではの品質の高さと内容の確かさを備えていて、会場に設置されたパソコン上で展開されていたデモンストレーションに、集まったプレスの人たちも楽しそうに見入っていたのが印象的だった。

 毎回凝った演出を見せるブエナ・ビスタ・ホームエンターテインメントとは違って、立ち上がったばかりのディズニー・インタラクティブではインターネットスペースを借り切るのがやっと。それでも3月に発売するディズニーキャラクター付きの名刺やらポストカードやら便せんやらを作ることができるソフト「プリントスタジオ」を使って、「101匹わんちゃん」の絵柄が付いた名札を記者ごとに別々に作って待っていてくれたのは、商品のデモもかねての演出だとしても、なかなかに心憎い。そんなこんなの積み重ねが、ディズニー新派のプレスを作っていくだろーね。それがたとえ「エヴァ」者であっても。

 ビデオに撮っておいた「機動戦艦ナデシコ」を見る。男ばっかりの木星蜥蜴では珍しい女の子のキャラクターが登場して、ナデシコにやって来たのはいーのだが、兄をたぶらかしたにっくき女を成敗せんと湯船に潜って待ち受けているうちに、のぼせてぶっ倒れてしまった。その時に着ていたのがスクール水着。いーですねー。木星蜥蜴の男が普段から学ランを着ているとゆーことは、女はやっぱりセーラー服を着てるんだろーが、それが可愛い女の子ならいーけれど、ちょっと歳くった女性もセーラー服を着ているとしたら。それはそれでいーかもしれんと考えてしまう私はやっぱりヘンか。

 しかし角川書店が出した「機動戦艦ナデシコ」のフィルムブックにはただただ唖然。「新世紀エヴァンゲリオン」のフィルムブックでも、たくさんある他のフィルムブックとの文法の違いに驚いたものだが、「ナデシコ」に至ってはストーリー説明が、ユリカの絵日記で1話あたり100字程度に圧縮されてしまっている。まあそれでなんとなくイメージをつかんだ後で、エピソード集や登場人物の名簿やメカニックファイル、キャラクターファイルを見ていけば、なんとなくストーリーが解るからいー加減なものだね。

 なによりも「ゲキ・ガンガー3」全39話のストーリー完全解説が載っているのがすごいを通り過ぎて素晴らしい。これで1本、本当にアニメシリーズが立ち上げられるぞ。どこか本当に作ったら、それはそれで大笑い、だけど。ちなみに設定制作はスタジオ雄。問題があるとすれば、合体する3体のゲキガマシンの資料が散逸してしまい残っていないことで、どーすれば、あの違い過ぎる3体のゲキ・ガンガーに変身できるゲキガマシンを設計できるのかと、メカ設定のプロたちが頭を抱える様が思い浮かぶ。でもゲッターロボだってちゃんと合体したしなー。

 日曜日の朝日新聞にトーハンの人が売れると豪語していた「女盗賊プーラン 上・下」(プーラン・デヴィ、草思社、各1648円)を読了。豪語するだけあって確かに面白いが、1冊あたり1時間ちょっとで読めてしまい、どーして2分冊にしたのか、1冊2段組にして2500円くらいで売っても良かったんじゃないかとゆー気がしてならなかった。主人公で語り部のプーランが送った10代、20代のすさまじ過ぎる人生を目の当たりにすると、とたんにNIKEのスニーカーで人をぶん殴って殺してしまったり、遊ぶ金欲しさに援助交際の相手を求めたりするニッポンの現状が、なんだか遠い世界の出来事のように思えてくる。

 しかしこれが今暮らしている私たちの国の現実。どちらが良いかといえば、私はやはり今の日本を選ぶだろう。プーランを守れなかった彼女の弱すぎる父親が、彼の世界の「常識」に縛られた人物だっただとしたら、今の私は彼以上に、今の日本の「常識」に縛られ溺れている弱い人間なのだから。


【2月24日】 読売新聞朝刊「マルチ読書面」の「サブカル時評」で、大塚英志さんが「新世紀エヴァンゲリオン」のことについて触れている。なんでも前に同じ面で「エヴァ」に批判的な文章を書いた時、これから「エヴァ」絡みの話を書くときは掲載前に原稿を見せてくれないかと角川書店から言われたとのこと。角川書店とはつき合いの深い大塚さんでも、批判は許されないということなのか、それともつき合いの深い人だけに、批判して欲しくないということなのか。

 むろん大塚さんは、事前に原稿を見せることを断ったそうだが、片方で言論活動を展開する出版社が、一方でともすれば検閲ともとられかねない行動を取るというのは、なかなかに不気味な状況ではないだろうか。出版社が活字だけでなく映像などさまざまなメディアに展開し、自前のコンテンツを生み出そうと頑張っていることの現れとも言えるのだが。

 連日の「エヴァ」ネタにさらに追い打ち。神田神保町で手に入れた「SFマガジン4月号」の自社出版物の広告に、コードウェイナー・スミスの人類補完機構シリーズ最新刊「第81Q戦争」が掲載されていたのだが、脇の見出しが凄い。「超人気アニメ『新世紀エヴァンゲリオン』の原点がここにあった。」と、何のてらいも恥じらいもなく書いている。

 実際、書店で「エヴァ」関連の書籍やCD−ROMなどと一緒に、大塚さんがサブカル時評で紹介していた「死海文書の謎」や、この「人類補完機構シリーズ」の文庫本が並べてあった。でもそれは出版社の意図ではなく、書店が陳列を工夫したものであって、古くからのファンを持ち、実際のストーリーがどれだけ「エヴァ」と関係あるのか疑問の「人類補完機構シリーズ」を、よりによって版元が「エヴァ絡み」に仕立て上げてしまうのは、正直言って解せない。商業的にはマルだが、心情的にはサンカク。バツと言わないのは今のSFの売れ行きを考えれば、何でもやってとにかく売り上げを伸ばし、ここを突破口にしてSFファンを増やしたいという気持ちがあるから。やりすぎると古手のファンにそっぽを向かれるから、その辺りの差配が難しい。

 その「SFマガジン4月号」の後書きで、森下一仁さんがすでに日記で紹介していたように、塩澤快浩編集長の日経記事に対する反論が掲載されている。次号でさらに詳しく書くとのことで、また大森望さんの「狂乱西葛西日記」によれば、「本の雑誌」の特集や、この日経の記事を絡めて、現在のSFの状況について、大森さんが森下さんに緊急インタビューすることにもなっているとのこと。ただ先の日経の記事を除けば、議論が今のところSFに関係している人の間だけに留まっていて、一般の人々の関心を惹いているとは決していえない。

 かといって、騒動に1枚加わりたくても、工業新聞ではいかんともしがたく、産経本紙なり、他の一般紙なり雑誌が、ちょろりとでも良いからリアクションを起こしてくれればと、今は切に願うばかり。その意味で、連日の書評掲載が特徴だった産経読書面の後退は残念でならない。漫画評もエンターテインメント評もヤング・アダルト評も消えてしまった。朝日が「手塚治虫文化賞」なんてものを作って漫画やサブカルを取り込もうとしている時に、足下でのこの揺らぎ(ウチは5階で産経は3階なの)は気にかかる。どーしてしまったのだろーか。どーするつもりなんだろーか。

 晩聲社から出た江口浩さんの「【TOKYO発】報道戦争」(本体3000円、悪税90円)を購入。共同、時事の国内2大通信社の研究を主題に据えて、国際通信社になろうとしてなれないこれら2大通信社の問題点や、海外にどえらい数の特派員を派遣してはせっせと自社記事を送稿させ、一方ではべらぼうな数の海外通信社と契約してはそれらの記事を参考とかにしか使わない日本の新聞社の贅沢な体質を指摘している。

 おまけに日本のメディアが発した記事が海外のメディアに採用されるかというと、実際は日本に駐在している海外メディアの記事の方が良く使われ、さらにこうした海外メディアが「TOKYO発」で打電した記事が、めぐりめぐって日本のメディアを動かすことも多々あることを挙げて、完全に輸入超過な日本のメディア事情を分析している。突っ込んだ批判はないが、数字や資料を挙げて淡々と記述していくその手法からは、「抜かれ」「特おち」が恐くて人海戦術で情報ばかりを集めて安心している日本のメディアの「横並び意識」が浮かび上がって来る

 もっとも、今のペルー報道に関する横一線の様相を見ると、そうそうにこうした体質が変わっていくとも思えず、日本のメディアがAP、ロイター、AFPに匹敵するAクラスの国際通信社となる日は、はなはだ遠いとしか言えそうもない。って大手町・丸の内界隈が主戦場の工業新聞が言うこっちゃないね。弱小メディアの愚痴と思ってご勘弁を。


【2月23日】 「マックワールド・エキスポ/トーキョー」で歩き回って疲れてしまい、麦酒を飲んでそのまま眠ってしまったため、午前1時に目が醒めてしまった。そのままパソコンでインターネットに繋いで時間をつぶし、午前2時15分からは、今月1日の放映開始以来、まだ1度も見ていなかったギャガ・コミュニケーションズ提供のドラマ「エコエコアザラク」をはじめて見る。

 バラエティー番組の劇中劇か、ワイドショーの再現映像のようなチープさがあるものの、カットに工夫があったり、CGを使って特殊効果を加えてあったりして、30分という時間をそれほど退屈せずに見ていられた。高見沢みちる、じゃなかった黒井ミサ役の佐伯日菜子は相変わらずの上目遣いな演技が最高で、あんなうつむき加減でよく声が出せるもんだと関心する。他の俳優は1人も知らない。来週は見るかというと、起きていられたら、としか今は言えない。

 そのまま「新世紀エヴァンゲリオン」の再放送へ突入。朝起きてビデオを見なくてもよくなったのに、やっぱり録画はしておく。第13話から第16話は折り返し地点を回って中だるみだったのか、それとも力つきたのか、総集編っぽい回(第14話「ゼーレ、魂の座」)が挟まっていたり、縦線と横線とジグザグ線「だけ」が画面で震動する回(第16話「死に至る病、そして」)があったりして、あの第25話と第26話へと至る前兆が見て取れる。もっともこれが放映された時、大多数の人があの結末を予想してたかってゆーと、きっと想像だにしていなかったんだろーな。

 ちょっとだけ寝て起きて渋谷へ。渋谷公会堂で開かれたイベント「EVAファン決起集会」に「取材」に行く。全席指定だったので開場前の混雑はそれほどなし。2000人の定員に2万通の応募があったとゆーから、会場はほぼ全席満員で、ロビーもポスター付のチケットやらムックやらを買い求める人でごった返していた。流石に寒いのか会場前でコスプレする姿は目につかず。観客にもやっぱりコスプレはいなかった。

 しかし最近のアニメファンは金があるのかみな身綺麗で、NIKEのエアマックス履いたりエアジョーダン履いたりしている人も結構いた。紙袋を下げたいかにもなヲタクもほとんど見えず。昔だったらノーブランドのジーンズにトレーナー、下にはチェックのシャツ、地味な色のジャンパーを羽織って、靴は月星あたりのズック靴(3年使用)って感じが大半だったのに、今じゃーそんなメタなヲタクは滅多にいない。あるいは「エヴァ」だからかもしれないが、別のアニメのイベントに出入りしたことがないので、その辺りはよく解らない。

 ゲストは宮村優子さんに三石琴乃さんに林原めぐみさん。だらだらと会話をした後で、「注目」のコスプレコンテストへと突入したが、見ていた場所が舞台から遠かったためか、正直言ってこれはって娘はいなかった。男のコスプレは初めから問題にしていない。スラックスはいて色のシャツ着て赤いネクタイ締めて髪縛ってポケットに手をつっこんで加持リョウジって言われてもねえ。おまけに出す声が素っ頓狂だもの。それじゃーまんだらけに立っていても、1票も投票されないよ。

 観客から歓声が上がったのは、全身着ぐるみタイプの「エヴァ初号機」で、遠目に見てもほんと良く作ったぜって素晴らしい出来だった。夏じゃなくて良かったけど、夏の公開時にももしかして着て来るのかなー。冷却装置を装備しておかないと、きっと死ぬね、脱水症状で。優勝は綾波レイをやった人だけど、何故か青いコンタクトを入れていたらしー。レイって目の色、赤じゃなかったっけ。

 賞は取れなかったけど、審査員席に向けてスカートの奥をのぞかせるよーなポーズを取ったミサトさんも登場して、審査員を務めていた少年エースとアニメディアの編集長を、たぶんとっても喜ばせた。そーかコミック誌やアニメ誌の編集長って、そんな役得があるのかと思って朝日新聞を見ると、偶然にも角川書店が、コミック編集とか文芸書編集の中途を募集していて、ぐらぐらっと心が揺れ動く。年齢制限はクリアしていても、実務経験3年以上ってのが引っかかるから、応募したって絶対に無理だろーけど。それに応募理由に「コスプレねーちゃんのパンツを見たいから」って書くわけにもいかないし。ねえ。


【2月22日】 早起きして「マックワールド・エキスポ/トーキョー」に行く。幕張メッセは会社に行くより近くって、おまけに開場時間を勘違いしたものだから、実に1時間以上も時間が余ってしまった。仕方がないのでワールド・ビジネス・ガーデンのマクドナルドに行ったら、コンパニオンのお姉さんっぽい人やソフト業界関係者っぽいあんちゃんたちが長蛇の列。仕方がないので別棟のプロントに行くとこっちはガラガラで、コーヒーを飲んで買い込んだ雑誌「UNO」を読みながら時間を・・・・つぶせない。読むところが西原理恵子さんの「有限会社とりあたま」といしかわじゅんさんの「判決」くらいしかなく、10分もあれば飽きてしまう。

 特集が「松田聖子」ってんだから、てっきり「松田聖子離婚後初インタビュー全20ページ」なんて特集を組んでいるのかと期待したら、何のことはない関係者無関係社のあれこれ喋らせているだけの、週刊文春「コイツだけは許せない拡大版」のノリ。「マルコポーロ」で林葉直子に直撃インタビューした花田サンの雑誌にしては、はっきり言って物足りない。その他の特集も航空会社とかレコード会社とかのタイアップってことがあからさまで、金だして広告読まされてるんじゃーかなわんとゆー気になって来る。まー「とりあたま」を400円、「判決」を100円、ほかのコラムを70円出して読んでいるんだと思えば、あきらめもつく。わけないね。

 開場前に会場に入ってコンパニオンとかをチェックするが、まだ着替え前なのでどんな格好になるのか解らない。とりあえずデジタローグとボイジャーと新潮社が出展しているパブリッシャーズ・フロントのブースに行くと、やっぱり萩野正昭さんが店頭に立って、ペタペタと広告の張り紙を並べていた。開店前の準備が忙しそうなので別の場所をうろうろ。セイコーエプソンのブースでは、懐かしの内田有紀ちゃん出演「カラリオ」のCMが大画面で流れていて、嬉しくてつい立ち止まって見入ってしまった。

 が、しかし肝心カナメの「年賀状ソフトもサービスサービス!」の部分がずっぽりと抜け落ちていて怒りがふつふつ。確かに年賀状のシーズンではないが、あのCMは足を上げるところでもなければ腰に手をあてて踊る場面でもない、両脇から挟んで「胸のしわ」((C)いしかわじゅん)を見せるところにあるのだあ。こんなことなら頑張ってビデオに撮っておけば良かったなあ。エプソンにCMのビデオ余ってないかなあ。ヤミで流れてたりして、ロングバージョン完全収録版が1万円くらいで。

 ボイジャーとデジタローグと新潮社のブースに戻って担当の人とあれこれ。ボイジャーの鎌田さんに「エキスパンドブック横丁」に展示してある自費出版のエキスパンドブックを薦められ、4本ばかり買い込む。展示してある作品のウラに差し込んである注文票を、次から次へと抜いて手渡してくるからもー逃げられない。返すわけにもいかないので、それをもってレジに行き、ちょうどデモをしていた童話っぽいとかゆー「めまめまんべつ物語」(阿部恭子作、100円)、エッチっぽいとかゆー「クミコ・トウキョウ・コーリング」(安斎マサユキ&伊藤久美子著、500円)、画像使用許諾完全クリアの珍品「マレーシア・アイドル歌手写真集」(伊藤雅彦写真提供&解説、100円)、そして謎のヒロイック・ファンタジー「紅蓮のエイカ第1部」(邪楽著、300円)を買う。しめて1000円、高いか安いかは見てのお楽しみ。でもつまんなかったらと思うと恐くてちょっと見られない。

 新潮社のブースではひろき真冬さんのCD−ROM画集「LOUISE」のデモを見る。同題の画集をマルチメディアにしたもので、担当の新潮社メディア室・岩坂さんによると、昔発売されたエキスパンドブック「接続する社会」(今岡清編)に収録されていたデジタルコミック「CALLING」も、同じ日本語版と新しい英語版の2バージョンで収録されているとか。ほかにも4作品ほどデジタルコミックが収録される予定で、完成の前後に展覧会も開く予定なので、6月の発売がちょっと待ち遠しい。新潮社ではほかに松本零士さんがホームページ上で新作コミックの連載を4がつから始めるとかで、こっちもちょっと楽しみ。

 海浜幕張駅前のプレナで古書市が開かれていたので物色。新書館から出ていた萩尾望都さんの「金銀砂岸」を900円、井辻朱美さんの「パルメランの夢」(ハヤカワ文庫JA)を200円で救出して帰る。積み残しの本があるのにまずいなーと思いつつ、船橋でフラフラと本屋に入って今度はアーシュラ・K・ル=グインの「オールウェイズ・カミングホーム」(平凡社、上下各2884円)を買い込む。正直言って苦手な作家ではあるが、こーゆー時に買っておかないと後で絶版とかになって後悔する可能性大なので仕方がない。読了の目標はゴールデンウイーク、だな。


【2月21日】 任天堂のNINTENDO64が3月14日から16800円に値下げするとか。25000円から一気に8200円、約3割もの値下げは表向き量産効果とチップの価格低下が理由だけど、だれが考えてもプレイステーションに大きく水を空けられた任天堂が、起死回生の一策を講じたとゆー結論を導き出すだろーね。もっともNINTENDO64でやりたいゲームってのが「J2」くらいしかないヲタクな野郎だから、今のソフトのラインアップじゃー値段が下がったからって買う気はない。対抗してプレステも下げるんじゃないかって、ちょっとは期待が持てるけど。

 しかし3月14日ってのはモテる男にとっては悪夢のホワイトデーではないですか。チョコレートあげたおかえしに、安くなった「NINTENDO64を買ってね」ってな理不尽な要求を突きつけてくる女性が大勢でるやもしれぬ。もっとも女性はどっちかってゆーとプレステ派が多そーだから、あんまり要求はないかも。おっと「プレステ買ってね」ってな要求の方が出費は大きいぞ。どーするモテる男たち。自分は全然まったく関係ないから安心安心。って、あんまり胸はってゆーことでもないんだけど。おー。

 昨日「三番町萩原屋の美人」を買ったばかりの西炯子さんにまたもや新刊が登場。「ローズメリーホテル空き室有り」(小学館)の第3巻だけど、「萩原屋」とか同じ小学館から出ている嶽野義人のシリーズのよーなジンと来るところが少ない。嶽野義人のシリーズはちょっと前だから別にして、「萩原屋」とはそんなに時期がズレているわけでなないから、雰囲気の違いはきっと作者が意図的に描き分けているんだろーね。でもやっぱり小鳩ちゃんよりはカナメちゃんの方が綺麗。だって小鳩ちゃん、すぐにデフォルメっちゃうんだもん。

 来週用に東映ビデオから発売となるビデオ「クリスマス黙示録」の紹介記事を書く。かの天海祐希が出演した初の映画ってことでそこそこ話題になり、主演でもなんでもないただの脇役だったことが映画館でバレてまたまた話題になった映画が、公開から約5カ月でのビデオ化となった。ゴールデンウイークにはギャガ・コミュニケーションズに言わせれば「真の」天海祐希の主演作「MISTY」が公開されるから、タイミングとしてはバッチリだね。もっとも「MISTY」だって期待しているほどには天海さんの裸って出てなくって、どっちかってゆーと豊川悦司のお尻の方がたくさん映っているそーな。そっちが好きな人は男女を問わず映画館へ行こー。

 明日は「マックワールド・エキスポ/トーキョー」の最終日。これまで行く行くといって行く時間がなくあきらめていたが、最終日くらいはのぞかないと主催している会社の社員としてしめしがつかない。しかし噂では相当に混雑しているそーだから、最終日のおまけに土曜日となれば、きっと死人も出るほとの混雑ぶりを見せるだろーね。開場前に幕張メッセを7回り、ってことにはならないにしても、中を移動するのにも一苦労ってな状況は覚悟せねば。まー主催者の特権みたく入り口は天下御免ってのが有り難いといえば有り難い。◯◯な会社だから役得くらいなくっちゃね。頭縛った胡乱な男がいたらそれがボクです。ぜひお声をおかけ下さい。まー2万人は頭縛った人がいるでしょーが。


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