縮刷版2022年6月下旬号


【6月30日】 何か書くことになって「小説版 機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」を読んでなるほどだからドアンはサザンクロス隊を抜けて子供たちを助けて島で農耕生活を始めたのかとようやく分かった。冒頭からドアンが後にサザンクロス隊を作る男といっしょにあるミッションに挑む。それがめぐりめぐってドアンの周辺に影を落とすことになってある意味絶望した時に、心残りだったことが代わりに叶えられると思って身を退いたとでも言うべきか。そういう気持ちってやっぱりあるよね、人間なら。

 サザンクロス隊にいた女性隊員がドアンをやたらと慕っていながら、本番ではあっけなく退場させられる思わせぶりの肩すかしも、もうちょっと背景に説明があって流れも作られていたから納得。というかそんな場面は映画にはなかったじゃんってものもあって、これが描かれていたらもうちょっとキャラクターに感情移入が出来て、その生き様に涙できたのにとも思った。そういう意味でキャラクターの整理ができてない映画版だった。あとはシャア・アズナブルがアムロの回想だけじゃなく、本人として登場していてマ・クベと会話をしていた。サザンクロス隊ともすれ違っていた。描かれて欲しかったなあ。あれじゃあ出る出る詐欺だもんなあ。ともあれ小説版はちゃんとしていた。セイラさんは金髪さんとは呼ばれていなかった。そりゃそうか。

 とある就活生向けの情報サイトが清掃業とか建設業とか倉庫業とか警備業を底辺呼ばわりして大騒ぎとなりコラムを消したとか。けれどもそのサイトを見ると未だに「Fラン大学」という形で大学の固有名詞を挙げて並べ立てたりしていて、当該の大学から文句が出ても不思議はない状況を平気で維持しているから反省なんてしてなさそう。まあ偏差値と倍率といった客観的な数値を元にランク分けをしただけと言えば言えないこともないけれど、同じ記事にFラン大学の女子学生に関する誹謗中傷に近い文言を平気で書き連ねているから、これは露見すればジェンダー平等な人たちが黙ってなさそう。というか未だ気付いていないのが不思議でならない。

 だってFラン大学の女子大生あるあるとして並べているのが「高級ブランド好きの人が多い」「水商売をしがち」「年上の男の人と付き合いがち」「単位はギリギリor単位不足」「授業は真面目に聞かない」だから誹謗中傷も甚だしい。そういう人はSランク大学にだっているだろうし、いたって莫迦にあれるようなことではない。それを明らかに侮蔑の意味で使って女子学生全般を貶めているのだから炎上したって当然なのに、未だ残しているのは個人の偏見ですといって逃れられると思っているからなのか。スポンサーだったらそういう侮蔑を平気で乗せるサイトに広告なんて出さないだろう。いずれ露見して騒ぎになるのかどうなのか。関心を向けていこう。

 宮益坂にあった元ファーストキッチンで今は知らないハンバーガー屋さんで原稿を書いたあと、渋谷TOEIで「ハケンアニメ!」のティーチイン付き上映を見る。「映画大好きポンポさん」の平尾隆之監督が登壇して「映画大好きポンポさん」の映画内映画の映画っぽさについて解説。実写に近いカメラで光源も計算して嘘っぽさを少なくしサイズも全体がビスタの中に映画内映画はシネスコにして区別したと話してた。そしてニャリウッド部分はキラキラ感を出して差を際立たせたとのこと。そう聞くと改めて見直したくなって来た。

 そんな平尾隆之監督に「ハケンアニメ!」の中のような間際にラストを変えるなんてことがあるかととの問い。答えて描き直しはまずないとのこと。ただし「ハケンアニメ!」のリデルは組み替えと撮影で伸ばしラストカットを追加したくらいだからOKが出たんじゃないかと吉野耕平監督は話していた。確か本編もそんな感じ。徳井優さんが演じる脚本家が組み替えを提案して作画監督もコンテを見ながら案を出し、並べ替え切り貼りをし追加のセリフを考えてどうにか仕上げた。だからアフレコの追加も少しで済んだんだろう。一方で実写が追加撮影をするかどうかで、自身はないと言ってた吉野監督だけれど業界には伝説としてあるそう。条件と監督次第ではあるのかも。次は辻村深月さんも登壇してのティーチインがあるそうでまた行こう。


【6月29日】 夢枕獏さんの原作を谷口ジローさんが漫画に描いたものをパトリック・インバート監督がアニメーション映画にした「神々の山嶺」の公開が近づいて来たので、谷口ジローさんについて考えるために2016年7月21日に開かれた展覧会「ルーヴルNo.9 〜漫画、9番目の芸術〜」に登壇した谷口ジローさんの言葉をメモから引っ張り出す。これから8か月後の2017年2月11日に谷口ジローさんは亡くなられたので、多分最後に近い登壇だったのかもしれない。

 曰く「ファブリスさんから話があったのは、10年以上前のことでした。こういう形になるとは想像もしていませんでした。感激しています。この企画に選ばれたのも、本当に幸運に思っている。古くからバンドデシネ(BD)の魅力に取り憑かれています。BDが大好きで、影響も科なり受けてきました。沢山のBDの作家達と手にされることは本当に嬉しく思います」。確かにソリッドな描線で瞬間を切り取り描く谷口ジローさんの手法はBDに近いところがある。刺激されたんだろう。

 あるいはBDの大御所、メビウスの本名がジャン・ジローというのもあるいは何か因縁があったのかなあ。「パリに取材してルーヴルを描くということになって、1カ月ほど滞在してルーヴルに通いました。厖大な作品を見て頭が混乱してしまいましたが、だんだんと自分の気持ちが解放されていくような気がしました。物語を思いつくきっかけがあると、ルーヴルには何が不思議なものが済んでいるのでは無いかと感じました。そして私の作品ができました。日本ではオールカラーとうのは珍しいですから、それを描けたのは私にとって収穫でした」。そんな本はまとまって1冊になって出ている。ファンなら揃えておきたい。

 「私は漫画というのは表現の媒体として優れていて、どんなものでも表現できないものはないのではないかと覆っています。16ある作品のひとつひとつを見ても、どのさくひんも個性が違います。これから本当に多くの作品が生まれてくるのではないかということを感じています。みなさんに本当にぜひ見て戴きたいです」。発表会ではずいぶんと痩せた姿を見せておられた谷口ジローさん。それでもご本人を見られたのは貴重な機会だった。フランスからシュバリエ文化勲章まで贈られたのに日本は何か報いたか。って考えるとやっぱり日本は漫画やアニメといった文化が下に見られているのかもしれないなあ。渡辺宙明さんにも叙位叙勲はなかったし。あの漫画家の人の当選で変わってくれれば良いけれど……。

 でも見ていると、海外ではそれが当然のレギュレーションを伝えただけで「外圧」と叫び国内にだっていろいろな見方があることを指摘すると「行き過ぎた」といった表現で反発しては内輪の論理で凝り固まってお仲間ばかりにいい顔をしようとするのがどうにも引っかかる。政治家なんだから世の中のあらゆる表現に対する見解に沿いつつそれでも自分はこうあるべきといった主張をすべきなのに、他は排除では反発し合うだけだから。同人出身だなんてここに来て訴えるのも何だかなあ。ちょっと前は持ち込みで新人賞だから漫画誌純正品だんあって言ってたんだから。時々によって顔をすげかえるマスクマン。信頼すべき? まずは当選してからのその言動を見ていこう。

 暑い最中に新横浜まで。一昨日の前橋に比べれば暑くはないとはいってもやっぱり暑いことには変わりがなく、へたれそうになる体を支えてどうにか駅から降りてさてご飯でもと見渡して、新しくできたスパゲティのお店があったんでそこに入って鉄板スパゲティとやらをいただく。ゆでたてパスタを鉄板に載せる意味があまりない気もするけれど、そこはまあ熱々がずっと食べられるという意味合いなのかもしれない。バジリコって店名なのにバジリコスパが発見できなかったので上に牛肉とバターが載ったのをいただく。夏バテにはやっぱり肉だから。ロメスパと違ってパスタもちゃんと芯があって適度な固さがあって美味しかった。また行くかというと新横浜では遠いので近くに行ったら寄ってみよう。


【6月28日】 将棋の里見香奈女流四冠が日本将棋連盟のプロ棋士になれる編入試験を受ける決意を固めたとの報。プロ棋士を相手に優秀な成績を収めている人に受験資格が与えられて5戦して3勝すれば四段になれるという仕組みで、過去にも男性棋士が受けては合格をしてフリークラスではあるもののプロ棋士になっていった。だから最近の好成績から見れば決して無理ではない数字ではあるものの、そこは史上初というプレッシャーの中で差す手に迷いが出ないかといったところが気にかかる。

 里見香奈女流四冠は以前も奨励会の3段リーグを戦って勝ち抜けばプロ棋士四段になれる機会はあったものの、そこでは上がれず大会をして女流に専念することんなった。ほとんどが男性の中に混じって女性が指すことはプレッシャーだけでなく様々な影響もあるだろうから難しかったと言え、その後に西山朋佳女流二冠が次点を1回とってもう1回次点でもフリークラスで四段になれたものの成績がふるわず退会へ。男子ばかりの中で戦い続けるのはやっぱりキツいってことを伺わせた。

 相手も負ければ昇段の目が無くなるといった厳しさを抱えての将棋だから気力もハンパではない。それに対して編入試験は負けても相手が強かったといった感じに気持ちをそらせる。今時は女性に負けたからといったことを恥じるプロ棋士もそれほどいない中で落ち着いた将棋が指されれば、きっと上がって史上初の女性プロ棋士が誕生することになるだろう。それをバイパスだ何だというなら瀬川晶司六段だって奨励会からの昇段ではないからやっぱりバイパス。でもその後の成績で六段まで上がっているのを見れば晩成の実力はあったのだからそうした才能を見出す意味でもあって当然の編入試験からの昇段も、立派にプロ棋士だと言って良いだろう。だから頑張れ里見香奈女流四段。相手は誰になるのかな。

 作業をしながらNHKのFMで放送された「山下達郎三昧」をつらつらと聞く。各アルバムから1曲くらいをピックアップして流していく展開で「FOR YOU」から「MUSIC BOOK」を選んだ人のセンスの良さに脱帽する。「SPARKLE」とか「Loveland, Island」といった代表曲もいっぱいある中であまり目立たずライブでもやってくれない楽曲だけれど、そのメロディも歌詞も大好きで達郎さんから1曲を選ぶとなると「RIDE ON TIME」と並ぶくらいの楽曲なのだった。それだでも番組への信頼がグッと高まる。

 いろいろな人が出てきて達郎さんについて喋る中ではハマオカモトさんの足に包丁を落として気絶してしまった時、達郎さんから何かのお礼のメールが来てその連絡で目が覚めたから本当の意味で命の恩人だといっていたのが面白かった。あの浜ちゃんの息子さんでも包丁で足を切ると気絶するのかとか思った。達郎さん本人も出てあれやこれや喋っていて話が聞きづらいのか楽しいのか分からないあしらいかたが達郎さんだった。インタビュアーも人によっては苦労しそうだなあ。

 音楽プロデューサーの松尾潔さんが登場して、父親が「ON THE STREET CORNER」のカセットかなにかを持ち帰ってずっと聞いていた時に生まれたブルーノ・マーズが、そのグルーブ感に達郎さん味を残しているといった話から、そうした縁もあってブルーノ・マーズが達郎さんと会いたいと話したけれど、それを聞いても達郎さんは「フン」といって相手にしなかったといった“伝説”もそれっぽいと思わせた。会ってどうなる訳ではないけど来たら会ってあげるくらいはするかなあ。でも来られないかブルーノ・マーズ。

 夜になって庵野秀明さんが出演した「帰ってきたウルトラマン」の上映チケットが当選していたことが判明。結構な競争率だったみたいで知り合いは軒並み敗戦していたからあるいはぴあカードでの予約が奏功したのかもしれない。その代わりじゃないけど達郎さんのライブは外れっぱなしだしPerfumeも外れたし舞台「呪術廻戦」も全滅状況。こういうところで運を使うと以後の達郎さんも当たる気がしないなあ。もはや全国どこでも行く気で予約をしているけれどどうなるか。福岡は当たったら生きたいな、ガンダムも立ったことだし。


【6月27日】 用事で前橋へ。暑い暑いとは聞いていたけど折田途端にむわっと浴びせられる空気は暑いというより熱くて厚い感じ。この空気の下で生きている人はやっぱり凄い。とはいいつつ見渡すと駅前なのにほとんど人が歩いていないのは暑さを避けて引っ込んでいるからなんだろうなあ。そういう処世術が身についている。とはいえ尋ねるとこの6月でこれほどの暑さは希見るそう。何しろ今日で梅雨が明けてしまったというのだからやっぱり異常。ここからさらに暑くなっていったら10月にはいったいどれだけの暑さになってしまんだろう……というのは漫才のネタではあるものの、7月8月は群馬でなくても千葉でも相当な暑さになりそう。クーラーがある実家に引っ込むか?

 前橋まで来たのだからと名物を探そうにも駅前には店は見えず、しかたがないので駅横のビルに入っている綺麗なプロントでパスタを食べつつしばらく仕事。1階がおしゃれな本屋になっていてたいていの本が揃っていてこれが自分だったら入り浸るよなあと思ったけれどやっぱり人出はそれほどなし。中高生の姿が見えないのは昼間で授業中だったから? 授業が終わってからだといっぱいの人がやってくる? それはちょっと不明。でもアルバイトがしたくなる綺麗な店舗だった。横にはなぜか配膳ロボットとかが並んだロボットのショウスペースがあったけど、誰が見に来るんだろう。謎の前橋駅。

 せっかく群馬まで来たので高崎で本場のベスビオでも食べて帰るかと思ったものの、むわっと来る暑さにこれは歩いて店までいく余裕はないと諦め新幹線に乗って東京へ。早く帰り着いたので新宿バルト9で開催された2回目の「犬王」の無発声応援上映を見物する。前回みたいにハリセンは配られなかったけれども全開よりキンブレの持ち込みが多く、呪いの面では紫、平家の亡霊は赤といった具合に場面に応じた色を出しつつ友成の前説や犬王の舞に合わせて振りつつ手拍子も鳴らしていた。

 変化した友有から始まる音楽続きのラスト近くまでの感がそのままでは長いと思っていた人もこうやって応援できるとなるとあっという間に感じるみたい。誰も彼もが楽しかったと喜びながら劇場を出て行く。「『鯨』は歌いたかった」といった声もあって次は発声有りの屋外上映をやってくれとの声も。これは本当にやって欲しい。屋外だったら声を出しても良いのかはまだ分からないけれど。今回は字幕も出たので何を歌っているかが聞きながら見られてぐっと分かった。

 あの内容の歌詞をあの節回しでよく歌うものだよアヴちゃん。自分で作ったといってもそれは原典を知ってこそ書ける詞でそれを曲に乗せてしまえてなおかつ歌えてしまう。その凄さも応援しながらだと一体感の中に見に入ってくる感じがあるから面白い。これを経験してしまうともう応援じゃない普通の上映が見られなくなるからちょっと困った。オーディオコメンタリーをまだ見てないから。でも次もまた無発声応援上映があったら行くかなあ。とか思っていたら7月に入って我等が立川シネマシティで極音での無発声“狂騒”応援上映が開かれることが決定。他の劇場でも順次行われているけれど、場の空気も大事とするなら“特別”なシネマシティだと良い感じになってくれおすな気がする。行くか。

 「ゴーゴー・キカイダー」「進め!ゴレンジャー」「マジンガーZ」「宇宙刑事ギャバン」といった人気特撮ヒーロー作品やアニメ作品の主題歌を作曲して音楽も手がけた渡辺宙明さんが死去。あれここれもそれもどれもという感じではなく特撮とメタルヒーローが多くあった感じで「ゲッターロボ」や「宇宙鉄人キョーダイン」の菊池俊輔さんと双璧といった印象ではあったけれど、それでも今でも口ずさめる多くの楽曲を手がけた凄い作曲家であったことは間違いない。アニメと特撮の音楽を長く手がけてくれたこともありがたい限り。そんな方に政治は褒賞や叙勲や文化功労などで報いたかというとそのあたりから外れているのがどうにも寂しい。叙勲褒賞をともに得たすぎやまこういちさんとの違いは何だったんだろうなあ。それも含めて疑問を抱きつつ僕らはその楽曲を永遠に覚え口ずさむことで讃えよう。お疲れ様でした。


【6月26日】 さて始まった平尾隆之監督による新・文芸坐でのトークではやっぱり「ギョ」から「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」を経て「映画大好きポンポさん」へと至る過程での作風の変化について言及。とりわけグロテスクな度合いが高い「ギョ」についてはずっとホラーがやりたくて最初は諸星大二郎さんの作品を希望したものの通らず、それならと伊藤潤二さんへと行って作ったとか。本人はもうノリノリだったけれどもあつ日、原画の人が自分は可愛い女の子を描きたいからアニメーターになったのにこんなの描かされてつらいですと話を聞かされ、ハッと思ったという。

 アニメーションは集団作業で自分が作りたいと思っても描いてくれるアニメーターがいなければできないし、見てくれる観客がいなければ成立しない。そうしたものを無視して自分の願望だけを映像にしたところで見てもらえるものになるかといった反省もあって、「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」ではもうちょっとルックも愛らしいものにしてストーリーも大人が見ても子供が見ても楽しめるものにしたのだとか。なるほど上映された「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」を改めて見たら自分の世界での常識しか知らないヨヨが、復活の魔法が使えない世界に来ていろいろと発見をして理解していく過程が描かれていて、それを通じて自分だけで生きているのではなく、無く大勢の中に生きていることを知ることが出来る作品だとあらためて分かった。

 「ギョ」についてはスクリーンで久々に見たけれども恋人に会いたいからとひとり沖縄から危険を顧みず東京へと戻るヒロインのサイコな感じがいたたまれなかったけれど、結果として沖縄で巻き込まれずに生き残ったのだから良かったのかもしれない。でも化物に引っかかれてもウイルスが伝染せず発症もしなかったから単なるヒロイン補正だったのかもしれない。残る人たちは醜くふくれあがっては体中から異臭を発するようになって生きているのか死んでいるのか分からない状態へと陥る。そうなってしまて以後、どうやって栄養を維持してあの肉体を保っているかが気になるところ。魚だってサメから動物へと乗り換えられるなら人間が全部のっとられた先、どうなってしまうのか。そこは宇宙に出て行くのかもしれないなあ。

 そして35ミリフィルムで観た「映画大好きポンポさん」はリールを取り替える時に右上にぐるぐるっとマークが出るのが懐かしかった。わざと入れているんじゃないよねあれ。色味もおちついた感じでノスタルジックではなく東映された色はやっぱり目に優しいような気がしている。人間の目って反射はとらえても発光はとらえてこなかった訳だから。スクリーンが介在してもそこへのステップが従来に近いフィルムの方が馴染むのかもしれない。いや勝手な思い込みだけれど。そんな3本をしっかりと見て、前の押井守ナイトの時と違ってまるで寝なかったのは事前に寝ていたからってこともあるけれど、作品にちゃんと引き込むところがあったから。それだけの作品を作った平尾隆之監督が、次にいったい何を作るのかが興味津々。やっぱり映画かなあ。マイノリティがマジョリティに一矢報いる作品を、ってテーマを形にするとしたら、やっぱり前に発表していた小説「『のけもの王子とバケモノ姫」の映画かなあ。

 「RWBY 氷雪帝国」の先行配信が始まっていたので観る。なるほど「RWBY」のある意味でリメイク的な内容で、ヤンが向かったビーコン・アカデミーのルビー・ローズも招かれることになってそこで出会うワイス・シュニーやブレイク・ベラドンナがそれぞれに何をしてきたかがはっきりと描かれていたのがウエブアニメのオリジナル版とは違うところ。ワイスについては目に傷が出来るところが描かれて、ヒロインで今回はタイトルから相当に中心になりそうなキャラクターであるのにどうして傷があるのかがちゃんと空かされていた。あるいは逃げずオリジナルを尊重するといった意思が示されたとも。以下のストーリーはウエブアニメ版に準拠していて、鳥形のグリムと戦うシーンも戦い方を踏襲していたけれど、そのスピード感と迫力はやっぱりオリジナルの方が激しくて格好良くって手に汗握った。その意味でモンティ・オウムのアクション監督としての凄さが改めて分かった。返す返すも惜しい。本編はずっと先まで行っているけど「氷雪帝国」はどこまで描くんだろう。やがて訪れるビーコン崩壊の前あたりかな。観ていこう。


【6月25日】 夜に平尾孝之さんが監督した「ギョ」「魔女っこ姉妹のヨヨとネネ」「映画大好きポンポさん」の連続上映があるので昼近くまでぐっすり寝てから起き出して、陽が高く昇って灼熱と化した東京都内へと出て秋葉原でしばらくぼんやり。すっかりと人が戻ってきたようでどの見せに入っても行列が出来ている中、割と有名らいし中華料理屋で生姜焼きがのったチャーハンをいただく。まずまずなボリューム。牛すじや牛タンが乗ったチャーハンもあったけれど、夏バテ防止に豚肉のビタミンBが良いと聞いているので夏場は豚肉を食べることが多いのだった。

 外に出て歩いても倒れそうになるので末広町の先にある「VELOCHE」で原稿を打ちながら昼涼み。近所のお婆さんたちが連れ立ってきて喫茶店とは違い小さな席しかないなかを並ぶように座っていろいろと会話をしているのを横で聞く。公園などがないから集まって昼涼みをしながらお喋りをするようなことが千代田区ではできないんだとか。神田明神とかアーツ千代田3331とか木々が植わってそうなところはあっても大勢が集まるには不便。そういう意味で大都会に暮らす大変さというものが漂っていた一方で、集まれるお仲間がいるだけまだましとも。独居の孤独な老人はそれすらしないまま灼熱の部屋で熱中症に倒れていくのだから。

 夕方になったのでオールナイトを見に池袋へと向かう前に、TOHOシネマズ上野に寄って河瀬直美総監督による話題の映画「東京2020オリンピック SIDE:B」を見る。印象はといえば、A面が選手ならB面は裏方なんだろうという普通一般の考え方だとをあっさりとひっくり返し、とてつもないところへと着地させるた快作。そこのB面として描かれていたのは、何と東京オリンピックというもの全体を客観的に俯瞰する視線とは正反対の、東京オリンピックというものを記録する映画監督として撮影し、インタビューし、編集して音もつけて作品として世に送り出した河瀬直美総監督、その人だった。

 なるほど東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長が、舌禍を理由に退任へと追い込まれた件を追った映像も、国際オリンピック委員会のバッハ会長が東京都庁を訪れた際、拡声器で叫ぶ反対派の1人に叫ばないで言いたいことを言ってくれと語りかけ、反対派がそれに応じず叫び続ける場面を追いかけた映像もあるにはあったけれど、それは「東京2020オリンピック SIDE:A」にもなんとなく含まれていたこと。違っていたのはそうした俯瞰的な視線を細かく切り取って、そこに河瀬直美総監督ならではの“ストーリー”を作ろうとしているように見えたところだ。

 渡橋オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の森喜朗会長も、武藤敏郎事務総長も、日本オリンピック委員会の山下泰裕会長も、開会式と閉会式の総合統括を任された狂言師の野村萬斎も、後を引き継ぐことになってそして途中で降板したCMディレクターの佐々木宏も、開会式で演技を見せた歌舞伎役者の市川海老蔵も、歴史学者のエマニュエル・トッドも、あの天才的IT大臣として知られるオードリー・タンですらも発言は細かく切り刻まれて一部だけが抜き取られ、全体の流れを構成するパーツとして使われている。

 そうやって構成された映像は、例えば野村萬斎と佐々木宏が並んで会見した場面では、クリエイターが並んでいた演出家たちの個性をあからさまに非難し、CMは文化や芸術に劣らないといった具合にCM界出身であることを誇らしげに語る佐々木宏の言葉に、実に癒やそうな表情を見せる野村萬斎の映像を重ねてみせた。実際にそういった非難の心情が野村萬斎にあったのだとしても、言葉を選び映像を並べることによって河瀬直美総監督があるいは抱いている心情を、そこに乗せたのだとも見て取れる。

 自分が撮影に携わって自分が話しを引きだし自分が構成して自分が流れを作ったのだという主張。ラストに国立競技場内にあったように映されていたデジタル時計を一気に100年分進め、未来の子供たちに東京オリンピックの思い出を聞いたという体でソフトボールが金をとった、女子バスケットボールが銀をとったといった記録を語らせ、それくらいしか伝えられていないような雰囲気を醸し出そうとした作為。すべてが河瀬直美総監督の色に染められていた。

 極めつけが、エンディングに流れた河瀬直美監督による作詞と作曲がなされた「Whispers of time」という楽曲だ。その歌が河瀬直美総監督による歌唱といった可能性も浮上する中、当初は藤井風による楽曲が使われる予定だったものを取りやめて、違う楽曲を使ったところに何か作為があった結果と見ると、作為のベクトルも見えてくる。河瀬直美総監督。それがB面のすべて。オリンピックを取材する河瀬直美総監督。オリンピックを考える河瀬直美総監督。オリンピックを伝える河瀬直美総監督。そしてオリンピックを歌う河瀬直美総監督をとらえ、映し出した映画として「東京2020オリンピック  SIDE:A」は存在した。

 それを国際オリンピック委員会からの依頼を受け、堂々と作り出してしまえる凄みはレニ・リーフェンシュタールも市川崑も持ち得なかったものだろう。そこに対する嫌悪はない。あるとしたら、東京オリンピックの開会式に演出家として招かれ、そして降ろされた振り付け家のMIKIKO先生が映画の中で語っていた、何もないという言葉そのままの虚無感か。どれほどの時間と資金をかけ、それほどの虚無感を作り出した映像作家の未来に、贈る言葉も無言、それだけだ。


【6月24日】 クリス松村さんがパーソナリティを務めた「9の音粋」に収録でインタビューに答えた山下達郎さんが、「OPPRESSION BLUES(弾圧のブルース)」について触れていて、別にウクライナの情勢を受けて作ったものではなくてそれ以前のたとえばアフガニスタンであったり、ISであったりミャンマーであったり香港であったりといった各地で起こっていた紛争で、自由が抑圧され人々が弾圧されている情勢を訴える意味合いで作ったものだと話していた。

 それが今という時期にウクライナ情勢と重なるように世の中に登場したことを先見性と見るべきかは迷うところ。それより過去の出来事が現在も進行している上に新たな悲劇が加わっていることを嘆くべきなのかもしれない。歌って何かが変わるとは思えないけれど、感じることで変えられることはあるかもしれないと思うしかない。だから歌い続けたいのだけれど「WAR SONG」と違って楽曲的にあまり格好良くないんだよなあ。そこがちょっと残念かも。

 続く番組でShusuiさんって音楽プロデューサーの番組にも達郎さんがコメントを寄せていたのがちょっと意外で、クリス松村さんなら昔から付き合いがあるから出ても分かるけれどもそうではないShusuiさんがなぜと思って聞いていたら、どうも父親が達郎さんと深い関係を持つ人で、息子のShusuiさんも子供の頃からいろいろと音楽面でのアドバイスを受けていたとか。いったい誰が親なんだと調べてShusuiさんの本名が小杉周水と分かって納得。小杉理宇造さんでありました。

 書記のRCAの頃からアルファレコードに移籍しアルファムーンを立ち上げムーンレコードとなってそしてスマイルカンパニーといった具合に、達郎さんとずっと併走してきたプロデューサーで事務所の社長も務めた間柄。それなら出ても不思議はないか。そういう音楽的なつながりが今に生きるのを七光りと見ることは簡単だけれど、演技とかとは違って音楽はそれでは生き残れない世界でもあるし、おおっぴらにしている訳でもないのでShusuiさんの実力なんだろう。認めるしかないなあ。

 三鷹でいろいろと仕事をしてから家へと戻る途中のイオンシネマ市川妙典で「映画 鋼の錬金術師 完結編 最後の錬成」を見る。栗山千明さんが素晴らしすぎた。髪型といいスタイルといいまさしくヴィクトリア・アームストロングそのもの。割と厚めの唇が大きなスクリーンにしっかりと映し出されるのを目の当たりにできるだけでも意義のあった配役であり実写映画化だったと讃えたい。それ以外だと前編にも登場していた弟のアレックス・アームストロングを演じた山本耕史さんの似せっぷりも良かったけれど、あのボディは本当に鍛えたものかそれともCGIで足しているものかがちょっと分からなかった。やっぱり足しているのかなあ。

 映画自体は原作漫画の名場面を実写で再現してみました的な感じで筋はあっても物語はないといった感じ。ある意味で飛び出す絵本に近いところがあった。その飛び出しぶりが素晴らしいから原作ファンもアニメファンも納得して見ていられるといったところだろう。シンの王子のリンのそっくりぶりは前編から変わらず、そこに加わったエドやアルの格闘技の支障、イズミ・カーティスの似せっぷりが完璧で前屈みになった際の谷間のなまめかしさともども栗山千明さんおヴィクトリアと双璧を張っていた。ほかヴィクトリア配下のブリッグス兵も良いでき。あとは寺田心さん演じたセリムの芸達者さが醸し出す憎々しさも良かった。殺されず延命されたのも良い配慮。そうした役者を見る価値はあるというだけでも、作られた意味はあったかな。

 コラムニストの小田嶋隆さんが死去したということで、雑誌時代からネットへうつっても切れあず鋭く舌鋒も盛んなコラムを結構書いて読まれてた。最近は政治だとか社会に関する発言で諧謔もない生身がむき出しな感じもあって敬遠され気味ではあったものの、届くそうにはしっかりと刺さっていた感じでそうした人たちが悼んでいた。安倍総理とかを讃えるばかりの言論界にあってからかいつつ批判できる不壊では案配の絶妙者も含めてお手本だった。真似する間も開くコラムニストという職種が遠からずなくなるんだろうなあ。残るのはオフィシャル引き打つしの宣材転載半くらい。喪われていく多様性にしんみりと残念会をしていこう。1人で。

【6月23日】 「エスタブライフ グレイトエスケープ」が最終回を迎えて「逃げれば良い、逃げれば分かるさ」というアントニオな明言も飛び出してザ・マネージャーことMのとんずらを逃がし屋たちが手助けし、消滅したサンドリヨンの似姿を持ったMをどこかへと連れ出してまずは一件落着。指名手配になっていたのもリセットと同時に解除されたのか気になるし、エクアのフェイタルラックがMの演算の賜だったとして、それも維持されているのか気になるところではあるけれど、その後に秋葉原クラスタへと現れ、前に逃げなかった男子をどこかへと逃がしたところを見ると普通に逃がし屋家業に復帰したって言えそう。

 そのまま話しは続けられそうだけれどとりあえず一件落着として次は発表となった谷口悟朗監督による劇場版「エスタブライフ」の2023年公開を待つことになりそう。それまで話題が持つかが心配かといえばTOKYO MXで7月から放送をスタートさせるそうで、ほかにも配信プラットフォームに提供を行いこれから3カ月間はしっかりと話題をつなぐみたい。3月からFODで先行配信を行ってこれで7カ月間は何かと取りざたされる環境を作ったところがなかなか上手い。一挙配信で2週間しか話題がもたないアニメも多く3か月放送されても3か月後には誰も覚えてないような状況も問題視されている中で、こうやって地道に繋げる努力がちゃんと効果を発揮するか。気にしていきたい。

 午後のオンライン会議とオンラインインタビューに供えて家で待機している間、AbemaTVで大谷翔平選手が登板したカリフォルニア・エンゼルスとカンザスシティ・ロイヤルズの試合を見る。投げては次々と三振を重ねて最終的には13奪三振と個人として過去最高の数を誇ったとか。前日に個人として1試合最多の8得点を刻んでおいて次の日に投手として自信最高を成し遂げるなんてもはや漫画を超えた奇跡の領域に達してたりする。MLBのサイトもそんな大谷選手の“偉業”をサイトのトップ記事で伝えてたりするからやっぱりアメリカ人にとっても漫画を超えた何かなんだろう。そんな試合を間近に見られるアメリカ人がやっぱり羨ましいなあ。これで大谷選手は6勝目。オールスター前でこれならきっと後半もしっかりと投げて10勝を超えてくれるだろう。それで本塁打も30本とか達していたら改めて奇跡の選手として刻まれそう。見守りたい。

 bayfmに山下達郎さんが出演して「SOFTLY」のジャケットについて話してくれた。なぜ肖像画みたいな絵にしたのとクリス松村さんが聞いたらずっと肖像画を描いて欲しかったと思っていたところに、アルバムの話があってそこでヤマザキマリさんにお願いしたとのこと。原画は2周りくらい大きいそうで見ればきっと緻密に描かれているんだろうなあ。そう思うとCDだけではなくアナログ版も欲しくなって来た。新宿のタワーレコードに行けばまだ置いてあるかな。明日公開の映画を朝一で見てついでに拾っていくなんてこと、できるかな。

 ラジオでは今の時代にアルバムなんてものはなくコンセプトなんてない時代だからそんなものはないとのこと。以前はこだわりはあったけれど、今はCDは直線距離だとかで、そういう時代にアルバムを出す意味を考えていて、パッケージなんてないとも思っていた中で出すことになったからなるほど人気曲の寄せ集め感が強くなったんだろうなあ。それでも冒頭に「フェニックス」が置かれたことでイントロ感が出てまとまりが出たような気もする。どこに奥か考えたそうだけれど結果として最初に置いたのはやっぱりアルバムというパッケージの形を意識したんだろう。そこはやっぱりアルバムミュージシャン。良かった良かった。  「LOVE’S ON FIRE」についても喋っていて、今の空気感を入れた楽曲を作ってみたかったということらしく聞くとなるほどキャッチーなメロディがあるもののその繰り返し感があって、大サビからの盛り上がり感にちょい書けるあたりが切り取られてジングル的に流れてもちゃんと伝わる今時の楽曲に重なるといった印象。BTSとか。その上で10年後に聞いてもちゃんと古びていないようにしたというからそこが何かを確かめる意味でも、10年後に聞いてみたいもの。その時に達郎さんはだいたい80歳。その時はどんな音楽を作り出すかも含めて追いかけて行こう。


【6月22日】 ポータブルCDプレイヤーを6000円で買ってようやくやっと山下達郎さんの新譜「SOFTLY」を聞く。2曲目に入っている「LOVE’S ON FIRE」のPVが公開されていて踊っているショートカットの人がなかなかに淫靡だなあと思って出演者を見たら河合優実さんで驚いた。「サマーフィルムにのって」のビート板であり「愛なのに」の矢野岬といったどちらかといえばエキセントリックな雰囲気を漂わせたオタクっぽい女子を演じていた女優さんが、お洒落なクラブでお洒落な男性とお洒落なダンスを踊っているなんて天と地ほどの差がある。それをやれてしまうからこその凄い女優なんだろうなあ。

 シティポップブームが世界的に盛り上がる中でのキング・オブ・シティポップとも言える山下達郎さんの新譜だからよほどシティポップが響いているかというともうちょっとデジタルなビートが多く被ってシティからサイバーへと浮かび上がっている感じ。雰囲気は「僕の中の少年」に近いかなあ、ってそれ以降の達郎さんのアルバムはだいたいそんなデジタルのビートが響くような雰囲気の曲が多くて、ある意味に通っていたりするからなかなか記憶に残らないのだった。そんな中でも「未来のミライ」の楽曲はちゃんと覚えているところはタイアップならではの影響力か。

 そんな中にあってシュガーベイブっぽい楽曲があって「人力飛行機」というタイトルでメンバーを見たらドラムが上原”ユカリ”裕さんでベースが伊藤広規さんでアコースティックピアノが難波弘之さんという昔ながらのメンバーだった。だから昔っぽい音がなっているんだなあ。愁眉は「OPPRESSION BLUES(弾圧のブルース)」と名付けられた1曲。かつての「WAR SONG」に匹敵する反戦と反抑圧への意思にあふれた楽曲も同じメンバーで作られていてクレジットには2022年の作品とされているからあるいは2月以降の世界情勢を折り込んで、急ぎ作って収録したのかもしれない。こういうアドリブからの発進ができるのも音楽の良さ。だからこそ配信で世界に聞いて欲しいのだけれど……。サブスクリプションではなくても提供があれば。あったっけ?

 水道橋まで出向いて気になっていた街中華で希望通りにたっぷりのチャーハンをかき込んでから「ゴールデンカムイ展」に並ぶ行列が見えるタリーズでしばらく原稿を打って、どうにか出来上がったので池袋まで行ってジュンク堂池袋本店で資料となりそうな本探し。それからイケパークへと出向いて坂本真綾さんが推奨していたHIGUMAドーナツを試そうとしたら休みだった。残念。しばらく休んで赤い10輪のイケバスに乗ってTOHOシネマズ池袋まで行きそこで「劇場版 からかい上手の高木さん」を見る。突き抜けるように明確な意思を込めて「うん」となんども繰り返すその声を聞いているだけで、肯定されているような気になって心が元気になってくる。そんな映画だった。

 原作もそれほど読んでおらずTVシリーズも熱心に見ている訳ではないので普段がどれだけ「からかい」に重点がおかれ、西片が高木さんにはぐらかされるつときおりのぞかせる本気にドキドキとさせられているかはよく知らない。映画でもそうした押されては退かれて蹴躓きそうになってぐいっと寄られてあたふたする状況が幾つもあって心を掬われそうになったけれど、そうしたシチュエーションから漂う「からかい」のコミカルさは劇場版では主従では従となって、中学3年生になってお互いを将来も含めて意識しはじめた2人が「からかい」の向こう側にある思いを汲み取って確かめ合うような展開が多くあって、より強く心を掴まれたような気になった。

 虫送りの前、真野ちゃんと中井くんとが一緒にホタルを見に行って、そして幸せな時間が訪れたことを気にかけて夜、勉強机に向かう高木さんは学校で微笑みを絶やさずに西片をからかいつづける高木さんとは違って心をしっかりと見せていた。そのシーンを受けて誘い誘われる虫送りからのホタル探しは2人がよりもっと親密になろうとして探り合っている状況が認識されていたこともあって、ひとつひとつの反応に見入ってしまった。

 夏休みに2人が会う理由を探して話し合っている場面に、どうして2人が理由を探してまで会わなくてはならないのかといった前提はもはや必要がなく、会うことのために理由を探すような関係になっていることがうかがえて嬉しくなった。その時あらわれた白い子猫の世話が2人をぐっと近づけていったけれど、迎えたある種の終焉が悲しさを誘いつつ次への力を2人に与えたのだとしたら、ハナはやはり良いことをしたと言えそうだ。


【6月21日】 電車に乗ったらアップルウォッチをしている人がいて、それも2人いて流行っていることを実感したもののその2人が揃いも揃って腕時計なのに右腕にしていてどうしてだろうと考えて、中にsuicaを入れて改札を通るときにそれをタッチするとなると左腕では手を前に交差しなくちゃいけないから不便だと、右手にはめているのかと理解する。でもそれだとリューズが手首ではなく腕の側にきて左手では操作しづらそう。そういうところも含めて考えてくれるかというと海外で自動改札で右手でタッチしなきゃいけない環境なんてまずないから、アップルも対応なんかしないだろうなあ。便利で不便ならどっちが良い? 迷う判断。使う気がないから自分がその不便をジャッジすることはないだろうけれど。

 アンナミラーズが最後に残された品川店も閉めるそうで漫画なんかに描かれた可愛い可愛いウエイトレスさんの服を直接見ないでこのまま終わりになってしまいそう。ある種、昭和の可愛いのアイコンでもあっただけに1度くらいは見ておくべきかはちょっと迷うものの、朝1番でいっても行列が出来ているらしいからもはや無理だろう。ここはだから心の中で想像した可愛らしさを永遠の中に封印することにしておこう。そういえばある意味でアイコンとなったフーターズも東京都内にあちこちあったのが今はおしなべて閉店とか。銀座にはまだあるそうだけれどこちらも行かずに終わりそう。アメリカンダイニングのアイコンでメジャーリーグにいったルーキーがその格好をさせられることでお有名だった店が日本に来た時はあれだけ騒がれたのに、濃すぎるとやっぱり遠慮されてしまうのかなあ。かといってアンナミラーズも閉店な訳で結局は衣装だけで保つ世界はないってことになるのかな。

 白金高輪で取材があったのでちょっと早めに到着して、スターバックスで時間を潰そうと思って確かめたら時間を2時間間違えていた。午後3時からなのに13時にいってしまっていて大いに時間があまったので、これならアンナミラーズものぞけたかもしれないけれど行っても行列だから入るのは無理だからと気を取り直してスターバックスでちゃかちゃかと原稿を打つ。白金高輪のスターバックスだからさぞや意識の固いシロガネーゼがノマドをしていたり昼下がりのお茶をしていたりして一般人では息が詰まるかと心配だったけれど、こちらも一応は取材ということでびっちりとしたスーツで身を固めていたのでどうにかハイソな空気に溶け込めた。でも注文でフラペチーノだどうだというのはできなかったなあ。クリームマシマシマシとか言ってしまいそうで喋らぬが吉とブレンドショートで抑えておく。

 白金高輪にはほかにタリーズもあるようだけれど、ドトールとかヴェローチェとかプロントといったちょっぴりローコストなカフェはなく、マクドナルドやロッテリアといったファストフードもなくて時間を潰すのが日や時間によってはちょっと大変かもだった。フレッシュネスバーガーもないし。あとは松屋とか吉野家といったチェーン店もなかったなあ。何か建てられない条例でもあるんだろうか。あれだけタワーマンションも建ってくると人も大勢住むようになって休日とか近隣に溢れそう。でもゆったり座ってお茶する場所もないといったいどこへ行くんだろう。有栖川宮公園まで歩いて行くのかな。それもちょっと遠いよなあ。謎めく。

 取材を終えて地下鉄を乗り継ぎ新宿まで出てタワーレコードで山下達郎さんの新譜「ソフトリー」の2枚組初回限定版を手に入れる。見るとアナログレコードもでていてヤマザキマリさんが描いた肖像画のような達郎さんのジャケットがCDとは比べものにならない大きさで陳列されていて、これを部屋に飾ったらいろいろと御利益がありそうだと思ったものの買っても聴く機会もなさそうなんで遠慮する。ずいぶんと前にアナログレコードをいろいろ買いあさった際にプレイヤーも買ったんだけれど使える状態に今はないのだった。アンプが本に埋もれて届かないしスピーカーから音も出せないし。でもせっかくのアイテムなんで次に見かけたら買って保存しておくか。どうせだったら「FOR YOU」のヘビーウエイトなアナログ版が欲しいなあ。


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