縮刷版2021年5月中旬号


【5月20日】 解離性大動脈瘤といえば大滝詠一さんもこれで突然に亡くなられたくらい、唐突に訪れては人の命を奪っていく病気だったりする。「ベルセルク」の三浦建太郎さんも休載こそ割と多かったけれど、特に健康がすぐれないといった話も聞いていなかっただけに、今朝方この解離性大動脈瘤で亡くなられたといった話が伝わって来て、どうしてなんだといった思いにとらわれた。何しろ未だ完結していない大長編。その行方を永久に拝めなくなった訳で、ファンならもう悲しさと同時に目いっぱいの悔しさを噛みしめているんじゃなかろうか。

 個人的には「ベルセルク」は漫画ではほとんど読んでなくって、STUDIO 4℃が手がけた劇場版3部作を劇場へと見に行って、ブルーレイを買ったくらいの接触だけれど、それでも聞く範囲で世の混沌に引きずり込まれまいとあがく、最強の男の孤高の戦いぶりを味わわせてくれるダークファンタジーの金字塔として、日本のみならず世界が愛してやまない作品だといった理解は持っていた。今回も世界中から悲しみの声が届いている感じ。手にドラコン殺しを持って振り回し、追悼している人が世界に1万人くらいはいるんじゃないかと想像している。

 実際に「FF11」とか「ウルティマオンライン」とかいったオンラインゲームで、大剣を振り回すキャラの使い手たちが出張って追悼をしている感じ。そうしたキャラの造形も含め、ひとつの文化を創って世に広めたその功績は讃えられるべきだろう。とはいえ、やっぱり心残りは終わらなかった物語のその続き。栗本薫さんが「グイン・サーガ」を終わらないからこそワクワクする物語と言いつつ、やっぱり完結に向けて筆を進めながらも及ばず亡くなられた過去を見るに、三浦建太郎さんの「ベルセルク」にも同じ無念を感じる。「グイン・サーガ」が五代ゆうさんらの筆を得て続きが描かれているように、「ベルセルク」にも誰かの筆が後を継ぐ? それは無理かなあ、漫画だと。だったら小説で。構想だけでも是非に示唆を。

 それを「報道の自由に値しない」と言うのなら、そちらは「報道の名に値しない」と言われることを覚悟しているのかどうなのか。とある自称するところの全国紙が、社説に相当するオピニオンで「 ワクチン架空予約 『報道の自由』に値しない」と主張。読むと新型コロナウイルス感染症のワクチン接種を申し込む大規模予約サーバーで、ランダムに番号を打ち込んでも予約ができてしまう不具合があることを報じたメディアに対して、防衛相が不正なんてしやがってといちゃもんんをつけたことを全肯定して、報道の自由だから報じるのは当たり前だといったスタンスを真っ向から否定している。

 その言い分のすべてが既に専門家によってすでに論破されているような代物で、メディアが防衛省に問題を指摘しながらもスルーされた状況から、これは報じて警鐘を鳴らす必要があったといった意見でほぼ固まっている。そんな状況にあるにも関わらず、問題があっても改善までは報じるべきではないと主張しているから腹が痛い。メディアが報じなければアンダーグラウンドで試す人とかいっぱい出て来てボットか何かを動かして攻撃する輩だって出て来たかもしれない。いち早くメディアが報じたおかげで、防衛省の側だって警戒するスタンスを取ることができた。それで即座に直そうとはしないところがちょっと意味が分からないけれど、余裕も知識もないか最初から確信犯で穴を開けてたってことなんだろうか。国防にもそんな穴があいてるんじゃないかとちょっと不安も浮かんでしまう。

 そうした指摘が既にある中で、それでも黙して語るべきではなかったと主張するその自称するところの全国紙は、政権を揺るがすような大ネタを掴んだとしても、相手が反省をして対策をとるまで報じないのが真の報道だとでも言うんだろうか。それって報道の死そのものじゃないのか。なんてことを言っても通じないことは、この20年くらいの言説から分かっていたから今さらだけれど、ここ数年の苦況がそうした政権ベッタリなスタンスによるものだったと反省して、真っ当になるかと思ったら余計にベッタリ度が高まったのは、もはやそこにしか生き残る道を見いだせないって判断した現れなのかもしれない。朝日新聞出版と毎日新聞だけをやり玉に挙げて、同様に報じた日経クロステックや日本経済新聞にはダンマリなところも政権と同様。分かって除外したなら悪質だし、分かってなかったらそれはとってもアンポンタン。どっちだろう。どっちもかなあ。

 竹町さんによる「スパイ教室」シリーズの最新刊「スパイ教室5 《愚人のエルナ》」(ファンタジア文庫)が出たのでペラペラ。共和国でもトップクラスのスパイとして活躍していたクラウスの下、養成学校では最下層にあえいで退学間近だった面々が鍛えられつつ突出した独自の才能を活かして難事件をクリアしていくストーリーは続いているものの、そこに養成学校でトップだった6人が組んだチームがクラウスをボスにしたいと挑んで来る。どちらが早く任務をこなすかって勝負だけれど、トップの6人に対して落ちこぼれの8人も結構活躍できているところはクラウスの仕込みが良かったのか、元から1点突破の才能を持った異端児たちが集まったからか。ともあれ途中でなんで読んでどちらが勝ったかを確かめよう。


  【5月19日】 岸信夫防衛相と安倍晋三前首相の兄弟が、朝日新聞出版と毎日新聞だけをやり玉に挙げて、日経クロステックも報じていた例の新型コロナウイルス感染症のワクチン接種に関するシステムに、穴があるといった記事について批判を行い不正だ何だとぶち切れている様を傍目で見ながら、朝日や毎日が嫌いな人たちは日経がやり玉に挙げられていないのはちゃんと段取りを踏んで取材しているからだなんてつぶやいているのを見て、敢えて朝日と毎日を敵認定してそうしたメディアが大嫌いな人たちを取り込んで、批判の矛先をそろえては自分たちのミスを隠そうとしているんじゃないかって説にも信憑性があるんじゃないかって思えてきた。

 だって朝日新聞出版だってちゃんと取材で段取りを踏んでるんだよ。記事にはシステムに穴があることを検証した飢えで「防衛省にさっそく取材を申し込むと、以下の回答がきた。『現在、担当部署に確認している』」。いやいや大変な事態が起こっているんだから、確認するより先に試してみてこれはヤバイと気がついて、即座に対策を講じつつ欠陥を公知してミスタッチによる間違った予約が出来てしまわないように注意を勧告するのが責任者としての勤めだろう。それをせず発表すらしないままAERA、dotが報じるに任せて事態を放置し、翌日になってケシカランと怒って見せる。まったくもって意味が分からない。

 システムを構築した会社にも連絡をとったけれど、「『担当者が不在で対応できない』との回答だった」とか。こっちもこっちで自分たちの仕事に重大な欠陥が見つかったんだから担当者を探し出してでも解答させつつ、欠陥の修正に全力を挙げるのが筋だろう。でも結局のところ防衛相はシステムを抜本的に改善するような節は見せないまま、ただ朝日と毎日だけを批判して世間の関心をそちらへ向けて、自分たちのミスへの批判をメディア批判へとすり替えようとしている。それに引っかかる人の実に多いこと。それだけ日本の中に朝日嫌い、毎日嫌いが浸透しているってことなんだろうなあ。これはこれでヤバイ事態。どうしたものか。どうしようもないものであるか。

 前のiPad miniで結構やり込んでいたけど、故障してIDを移し替えていなかった「けものフレンズぱびりおん」のサービスがいよいよ停止になるってことで、改めてダウンロードしてちょっとだけスタートしてみる。例の一件で「けものフレンズ」への関心が大きく揺らいでテレビアニメーションが持っていたやさしい世界、そして愛らしいフレンズたちへの愛を果たして維持できるのか迷っていた時に、等身の低いフレンズたちが登壇しては愛らしい動きを見せてくれる内容に、これでしばらく戦えると思って常駐させ続けた。

 改めて始めてみるとやっぱり愛らしいフレンズたち。これであそびどうぐが揃ってくると、不思議で珍しい動きをしてさらに楽しませてくれるんだってことを思い出し、しばらくやりこんでみたいなあと思った時にはサポートは終了してしまっているのだなあ。残念。ちょっと前に「荒野のコトブキ飛行隊」のサポートも終わってアプリの世界の移り変わりの速さにいろいろと感じ入る。パッケージソフトならマシンさえ無事ならまた遊べるけれど、アプリはスタンドアロンでなければ遊べなくなってしまうのだよなあ。果たしてどこまでスタンドアロンの昨日が継続するか。ちょっと気にしつつ残り時間を遊んでいこう。

 やっと来た愛知県の大村秀章愛知県知事に対するリコール実施を求めた署名活動で、大量の偽造署名が作られた件に関してリコール事務局の事務局長とその家族および事務局員が愛知県警に逮捕された。いわば実行部隊の一網打尽って訳だけれどもあれだけの大々的な活動で、かかった費用も莫迦にならないのならその費用を出した誰かがいたりするだろうと想像できる。そんな費用を果たして理由も聞かずにポンと出しては、事務局長の勝手に任せるものだろうかどうだろうか。信じていたとか言った態度の裏に信じるに値する成果を持って来いとでも言ったのならそれはやっぱり道義的だけじゃない実質的な責任も生じるだろう。故にやっぱり及ぶか司直の手。これを端緒にどんな動きがあるかを見守りたい。

 明日が締め切りという日の夜から弥生のサイトを立ち上げて、入金出金をパツパツと入力していって生命保険料などの控除も入力してどうにかこうにか作成した確定申告の生類を、翌朝にプリントアウトして送ると全部詐欺になるレターパックで税務署に郵送してひとまず作業を完了。果たしてこれで通るものかと思った青色申告が無事に通って支払った源泉徴収からそれなりの分を取り戻すことに成功した。振り返れば去年も同様に前日に作成した書類を締め切り日に郵送して見事に通ったからこれで2連勝。もしかしたら自分は青色申告の天才なのかというと、単純に入金が少なく出金も少ないから書くのに苦労はしないってだけのこと。大金を扱い税控除とかいろい記載できる身分になりたいなあ。


【5月18日】 田村正和さんが4月3日に亡くなられていたとの報。「ニューヨーク恋物語」「古畑任三郎」で1990年代のテレビドラマを席巻し、21世紀に入ってからは時代劇での眠狂四郎役なんかで知られるようになったけれど、元は希代の二枚目で耽美で危険な雰囲気を漂わせていた俳優として、昭和のテレビ界を引っ張った人だった。「うちの子にかぎって」でコミカルな役を演じて以降、「パパと呼ばないで」あたりも含めて二枚目だけれどどこか抜けてるか、二枚目ぶりを半ばメタ化して強烈に打ち出すかしたような作品が多くなったような印象で、それで余計に人気は出て役者としての寿命も延びたけれど、純粋にその二枚目ぶりを味わえなくなっていたところもあった。浅丘ルリ子さんと共演した「土曜日曜月曜」なんて記憶だけれど本当に妖艶だったからなあ。再放送してくれると嬉しいかも。合掌。

 岸信夫防衛相による新型コロナウイルス感染症のワクチン接種のシステムに穴があったことを報じたAERAや毎日新聞に対するツイートが朝から大評判。曰く「自衛隊大規模接種センター予約の報道について。今回、朝日新聞出版AERAドット及び毎日新聞の記者が不正な手段により予約を実施した行為は、本来のワクチン接種を希望する65歳以上の方の接種機会を奪い、貴重なワクチンそのものが無駄になりかねない極めて悪質な行為です」

 続けて、「両社には防衛省から厳重に抗議いたします。不正な手段でのワクチン接種の予約は、本当に希望する方の機会を喪失し、ワクチンが無駄になりかねないと同時に、この国難ともいうべき状況で懸命に対応にあたる部隊の士気を下げ、現場の混乱を招くことにも繋がります」。何を言っているんだ? そもそもが自分たちが作ったシステムに大穴が開いていたことが大問題であって、国防を預かる自衛隊のシステムにももしかしたらとんでもない大穴が明いていて、この国を危険にさらしているかもしれないことを、満天下にさらしてしまったことを恥じて詫びる武が先じゃないか。

 それなのに、全世界が嘲笑と憐憫の目で見ている中で防衛相はこんな底抜けのシステムを作ってすいませんと真っ先に謝るのではなく、大穴が開いていると指摘したメディアを批判して抗議まで行った。もうど戯けとしか言いようがない。すでに噂が流れていたそうした大穴の存在を報じたからこそ、防衛省だってこれは拙いと思いついたんじゃないのか。お礼を言って当然の報道に対して難癖をつけ抗議までするとはもはや人間の頭で考えた言動とは思えない。

 だいたいが「不正な手段」なんてまったく使っておらず、聞き及んだように適当な番号を打ち込んだら予約がとれてしまったというそれは、蓋をしてしっかり止めておくべきマンホールの蓋をぐらぐらに緩めてすぐに開くようにしていたもので、それに乗って開いてしまったからといって無理矢理開いたと批判なんて出来はしない。そして落っこちたらぐらぐらに緩めておいた報が責任を問われる。そんな稚拙なミスであるにも関わらず、なにかとんでもない手段を用いてクラッキングでも行ったかのように騒ぎ立てるからまったくもってあんぽんたんとしか言い様がない。

 もうとことんまで防衛省の側に瑕疵があるにも関わらず、認めようとせず報道を批判するそのスタンスに、自民党が乗っかりワクチン担当相が乗っかり前首相まで乗ってきた。つまりは国家として自分たちのミスを認めずこれは報道機関が不正を行ってクラッキングをかけ国民の命を危険にさらした悪質な事例だといったストーリーを作りたいんだろう。「竹槍では間に合わぬ、飛行機だ」と国防の欠点を指摘した海軍担当の新聞記者を、怒って陸軍が招集しようとした戦前の竹槍事件に通じる国家の無茶っぷりが、21世紀になってもまかりとおるこの国の、あるいは現在の政治家のポン酢ぶりが垣間見える。

 その時は大正生まれのの記者を招集するなんて無理筋だと海軍が抗議したことで、だったらと大正生まれが250人も招集されては硫黄島へと送り込まれて全員玉砕・戦士の憂き目を見た。当の記者だけは海軍の後押しで除隊して無事だたっというから痛い目を見たのは巻き添えを食らった一般人ばかり。今回も抗議しつつ不正アクセス事件だといったストーリーを裏付けるために警察あたりを動かして、個人なりで試した誰かを摘発してほらやっぱり犯罪だったでしょって“実績”を作るんだろうなあ。やれやれだ。

 「鬼滅の刃」のテレビシリーズ第2期にあたる「遊郭編」がフジテレビで放送されるかもしれないといった話で取り沙汰される改変の可能性。いやいやフジテレビだって「ノイタミナ」を16年も放送していて良質のアニメーションをいっぱい送り出し、湯浅政明監督を世界に送り出して数々の賞を取らせたくらいにアニメーションに理解のあるテレビ局だって言いたくなったけれど、返す刀で「約束のネバーランド 2ndSeason」を挙げられぎゃふんとなった人が結構いたりするあたりに、やっぱりいろいろと浮かぶ混沌。これだけ注目されている中で改変とか無理だろうし、アニプレックスだって改変なか許さないだろうし、ufotableだって全力で作ってくるだろうからあとはちゃんと放送するかどうか。テレビとして一般に配慮してもば配信で完全版が提供されればこっちとしては構わないんだけれど。


【5月17日】 引き続き日向夏さん「薬屋のひとりごと」に関連した後宮医学薬学もののキャラクター小説から甲斐田紫乃さん「旺華国後宮の薬師 4」(富士見L文庫)をイッキ読み。元々は薬売りの父親から、偉いさんとの関係を強めることを狙いに後宮へと叩き込まれた英鈴という少女が、最初は持ち前の薬学の知識で喉に良いお茶を売っていたら評判を聞きつけた皇帝から声がかかって苦くない薬を作ってくれと言われたことを嫉まれて、虐められていたら皇帝が追い出すどころか妃にしてしまったから大出世。とはいえ子孫を残すといった行為には及ばず引き続いて皇帝のために薬を改良する業務に従事している。

 第1巻では地方で大流行した全身から水が抜けてしまって死んでしまう病気を治す薬を引っさげ赴いては、女性だからと信じて貰えない中で頑張って薬を飲みやすく改良しては地方の人から信頼を集め、自分が過去に弟を救えなかったトラウマも乗りこえて立派に役目を果たす。そんな過程で後宮の別の妃からは信頼を得るようになり、さらに後宮にある薬草がわんさか生えた庭の主として第1妃の立場に引き上げられてしまってもはや大出世どころの話ではない。それでも英鈴は皇帝の思惑は余所にひたすら薬の改良を続けいたところ、ひとりのライバルが現れたというのが第4感のイントロダクション。

 その相手とまずは皇帝に出す薬の工夫についてひと勝負をし、そして隣国で発生しているかつて自分たちの国で発生した病気を治すための薬の工夫で勝負をする羽目となる。前と同じで良いかとうとそこは遊牧民の暮らす国で草木があまりなく薬を改良して与える方法が見つからない。悩みつつライバルと共闘して乗りこえようとして裏切られ苦しんだ先に果たして英鈴は苦くない薬で大勢の人たちを救うことができるのか。そんな主線が走るストーリーを皇帝による企みが彩りつつ女性に対する依然として蔑むような視線を乗りこえる反発の意識が煌めく作品。なんだかんだで仲の良いところを見せるようになった英鈴と皇帝の間に、さらにとんでもない事態が起こるというか皇帝が起こして果たして英鈴はどう出るか、ってのが第5巻の読み所になるのかなあ。

 パナソニックが希望退職を大々的に募るといった話がダイヤモンドに掲載されていた感じ。50歳で50カ月分を上乗せして最大で4000万円くらいもらえるとかいった話に、それだけもらえるのなら辞めてやるといった声も多くあって、先細る業界で不安に生きるなら、大金を得てしばらくは悠々自適するのも悪くないと同意したくなる一方で、希望退職とはいっても内実はリストラで、そこで概要説明という名の圧迫面接を受けるとメンタルが木っ端微塵に破壊され、無能感に沈み「シン・エヴァンゲリオン劇場版」で第3村にたどり着いたシンジくん状態になるので、悠々自適だのといった甘い考えは実に甘いとみてきたようなことを言いたくなる。いや見てきたんだけれど。

 まあ4000万円となると倍なんで余裕もあると言えば言えるけれど、その時点まで会社の中でシステムに乗っかりやるべきことをやり続けていた人が、そんなやるべきことをすぽっと奪われてしまった時に浮かぶ虚無感は、なかなか筆舌に尽くしがたいものがある。自分はいったい何だったのかといった思いと、そんな自分にどうしてなってしまったんだという公開から横になってうずくまって泣きながらレーションを頬張りまたうずくまって泣く状態に、大なり小なり陥るだろう。家族がいれば金銭的に無理だといった不安があるだろうけれど、いなくても存在としての根源的な部分でダメージが来る。脱するにはそれこそ1年2年といった年月が必要だから、それを見越して乗るかどうかを決めましょうと言っておこう。

 国家が大目標を立てたら下々はそれに是が非でも沿うように動くことだけが求められ、たとえ無理でも無茶な手段を講じることで数字だけは達成したように見せかけた結果、疲弊と間違いが起こってとてつもない災害を起こすという事態を過去に中国は「大躍進政策」で起こしては、それこそ1億人近い人の命に影響をもたらした。そんな中国を日頃は敵視しているような政権がまるで軌跡をなぞるように7月末までに高齢者の新型コロナウイルスワクチン接種を終えるんだとう総理大臣の願望を、官僚たちが是が非にも叶えなくてはを動いては電話をリンリンと馴らして地方自治体の首長に絶対に7月末までにワクチン接種を終わらせろとねじ込んだとか。

 ワクチンは届いてないしあっても接種のための仕組みも接種をする人材もいないとうい状況で、それでもお上のご意向なら聞かなくちゃ行けないといっていったい何が起こるのか。接種になれていない人がかり出されては事故を起こすとか、忙しさのあまりに管理がずさんになって効かなくなったワクチンが接種されたりなんて事態が起こるとかするんだろう。やれやれ。そんな日本での接種を諦め海外での接種を目指すツアーなんてものが始まったとの報もあるけれど、これって中国の人が日本の健康保険制度に乗っかり安価に医療を受けようとしているってデマゴーグを、現実にやってしまっているような行為なだけにやっぱり日本大好きな人は日本人の風上にもおけないと批判するんだろうか。しなきゃ変だよなあ。個人的には打てる人からどんどん打って接種率をとにかく上げることが肝要だと思うんだけれど。それをズルいと思う心根が育ってしまったんだよなあ、今の余裕がない日本に暮らす日本人には。寂しい時代だ。


【5月16日】 空間除菌に光触媒にほか諸々の疑似科学的な新型コロナウイルス対策を、超党派で持ち上げようとしている議員連盟があって片山さつき議員が音頭を取っている様を見て、たとえ最高クラスの大学を出て最高クラスの官庁に入って今は国会議員とかしていても、科学といったものへの理解が完璧だということはないんだと理解する。とはいえ国立大学の教授あたりが学問的な後ろ盾となっていたりするからなあ。その背後に当該の空間除菌に関するビジネスを展開している企業なんかも見えたりするし、科学も政治も清貧ではやっていけないってことなんだろう。だからこそ国費を与え研究費を支給するべきなのに、無駄だと削って民間に任せて食い物にされるという悪循環。それもこれも日本が貧乏になったせいだ。誰がした?

 どれだけ社会現象になろうとも25年前に「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督が個人名で週刊誌沙汰になることなんてなかったし、宮崎駿監督だって「となりのトトロ」がどれだけ子どもたちに支持されていても「もののけ姫」が200億円近いヒット作になるまでやっぱり、個人名が話題になることなんてほとんどなかった。それが今は庵野秀明監督が何かを考えているらしいって憶測だけで週刊誌が記事にして流すから時代が変わったというかそれだけ大物になったというか。

 いやいや大物ぶりだったらそれこそ富野由悠季監督だって佐藤順一監督だってりんたろう監督だって杉井ギサブロー監督だって、アニメーションの世界では庵野秀明監督に増してキャリアと実績を持っている人たちだけれど、それでも話題に上ることなんてほとんどない。知っている人を知らせる繰り返しによる濃縮しかできないメディアの癖ってことになるんだろう。そんな庵野秀明監督に関して、所属しているカラーの誰かが言うところには「誰もが知っている国民的アニメ映画監督の代表作のニューバージョン」とやらを作る準備を進めているとか。

 それはいったいなんだ、ってあたりで勝手に妄想を膨らませるなら、出崎統監督の『ガンバの冒険』あたりをリメイクするとか、杉井ギサブロー監督の映画版『タッチ』を作り直すとか、笹川ひろし監督の名ギャグ『ヤッターマン』をいよいよ映画化してみせるとか、あの時代の子どもたちの誰もが戦慄を覚えた西沢信孝監督の「マジンガーZ対暗黒台将軍」を今の技術でやり直してくれるとかしてくれたら、長いアニメーションのファンとして嬉しい限りなんだけれど、そんなことを言っても週刊誌なんてまるで付いてこれないだろうし、それだと記事にする意味もない。

 まあ言いたいことは、聞けばまずはあれだろうって誰でも浮かぶあの巨匠のあの作品を、漫画版オリジナルでもって映画化するってことなんだろう。でもそんな話って長い年月究極の次回作として語られ続けている話であって、目新しくもないし具体的な証拠もない。カラーの誰かが話してたっていうけどそれが本当にカラーの誰かなんて証拠もない。いくら週刊誌だってねつ造をして訴えられた負けるだろうから保険はかけてあるとは思うけれど、そんなアニメ好きだったらそうだねそうだったら良いよねって思う話をぶち上げて、話題になると思っているあたり、従来のアニメ好きとは違った躁に、庵野秀明監督のバリューが広がっているってことなんだろう。否定するのも野暮な話だけれど、否定しないと一人歩きする可能性もある今はカラーも正面切って公式が否定するしかない。お仕事増えて大変だなあと遠くから同情。

 薬学に通じた宮女が活躍する日向夏さん「薬屋のひとりごと」の人気に絡められるかもと、同じ中華風の世界が舞台になった作品で、、二見サラ文庫から出生薬に通じた王様が出てくる野々口契さん「笙国花煌演義 〜夢見がち公主と生薬オタク王のつれづれ謎解き〜」を買って読む。強大な国の台頭に国力を削がれた喬という国の王太子に、ヒョウという別の製鉄に長けた国の公主(姫)・花琳が嫁ぐことで、喬の国力強化が図られてようとしていた。そんな公主が女装した宦官と目的地の隣国となる笙に入ったところ、狙ったように賊に絡まれてしまう。そこに現れたのが頑丈なお供を連れた美男子だった。

 花琳を助け、煌月と名乗った美男子こそその笙国の国王だった。ある理由から薬草に長けるようになって市井にも薬の材料を求め出ていたという。花琳たちはしばらく滞在はしつつ、いずれは隣国へとは向かうはずだったが、婚姻相手の王太子が死んでしまったからさあ大変。その王太子の死因が不可思議。そして隣国の流行病が煌月の国にも及んできた。何かが起こっている。煌月の過去にも絡んだ事態ともつながってめぐらされる陰謀に、美貌の王が立ち向かい、公主も好きな読本の知識で助けを出す。

 公主の花琳には猫猫のような薬学の知識もなく、そして煌月から積極的に愛されている訳ではないからあまり積極的に絡まないけど、まずは馴れそめとして続編があればもうちょっと強い関係が出てくるのかと期待したいところ。花琳が連れている宦官ではありながらも美貌でなおかつ武芸に通じた白慧というキャラクターがなかなか良くて、イラストを見たいのでその意味でも続編があって表紙絵に登場して欲しいのだった。続くかな。


【5月15日】 来た、観た、面白かった。1週間の延期で済んで上映が始まったのでTOHOシネマズららぽーと船橋へと出向いて見た「Fate/Grand Order −神聖円卓領域キャメロット− 後編 Paladin; Agateram」に黒味なし。もちろん白味も歪みも崩壊も制作上のヤバい感じはいっさい無しに前編からの物語をしっかり引き継ぎ前編以上のアクションを乗せて円卓の棋士ベディヴィエールの彷徨に決着をつけている。

 アーサー王の最期を看取ったという彼がいったいどんな罪を背負っているのか。そして今またどうしてアーサー王に対峙しようとしているのかが次第に明らかにされていくストーリーを骨子にして、復活しては世界を自身は救おうとしながらも実際は一部の選民たちだけを残そうとする非道なものでもある−サー王の計画に、賛同をした騎士達を相手にしたそれぞれの戦いも描かれては、ひとつひとつに見せ場が用意されど派手なアクションが繰り広げられては納得のカタルシスをもたらして幕を下ろしていく。そんな連続に魅せられ続けて時間をしっかりと過ごしていけるから心配せずに映画を見に行くのが今はお薦めだと言っておく。

 詳細について、とりわけベディヴィエールの存在している意義についてはまだ公開されたばかりで語ることは避けたいし、ファラオにして太陽王オディマンディアスによる尊大にして尊厳にあふれた振る舞いも映画で観て驚いて欲しいから何かを観たとだけ言っておく。いやもうすでに言っていたか。ここで展開とは別に讃えるならば一時、どうにもけだるげな演技ばかりが耳についてすっかりやる気を失ってしまったかのように思えた子安武人さんが、この数年またぐいぐいと声の艶を取り戻していたように感じていたのが、ここに来て一気に大爆発したといったところ。全身を震わせる子安叫び(こやす・さけび)を聞くだけでも、映画に行く価値はある。

 あとはマシュとランスロットの不思議な縁とか。ゲームのfate/Grand Orderを一切触っていない人間なのでそういう設定が以前から有ったのかどうかは知るよしがないけれども展開の中、まずはど派手にしてど迫力のバトルが繰り広げられ、高圧に押しつぶされそうになってしゃがみ込み耐えるマシュの筋肉が膨れあがったマッチョなボディスタイルに感嘆したその後に、明かされてはやりとりされるマシュとランスロットの会話に心をザワザワさせられる。傍目でもそうならランスロットに心中かばかりか。文字通りに心臓に悪そう。

 ニトクリスだとか三蔵だとかの活躍もなかなか。三蔵はあれで坊さんのくせに円卓の騎士に説法して納得をもたらすのだから仏教とはなかなかな宗教なのかもと思わせる。それとも三蔵の巨大な胸から違う何かビームのようなものでも放たれているのか。とまあそんな個別のバトルを経た果てにたどりついた決戦から先、起こった世界の救済のその先に、何があるのかが仄めかされてはいたけれど、やっぱりゲームをやらないのでどういう意味があるのか分からない。まあずっと続くってことなんだろうなあ。

 エンディングの宮野真守さんの歌がとにかくカッコいい。声優が演じて唄っている感じではないプロのシンガーとしての歌声って感じ。時が時なら大ヒットしていたんじゃなかろうか。それからスタッフ。キャラクターデザインで名を連ねつつ前編では作画監督を務めていた黄瀬和哉さんが後編では作画に名前を連ねていた。プロダクションI.Gの作品なんだから当然なのかもしれないけれど、事前にそうしたスタッフの情報ってあまり伝わってこなかっただけに、重鎮も参加してのアニメーションであり、結果としてどこまで迫力でハイクオリティのアクションシーンがあって、キャラクターもしっかり可愛い映画に仕上がっていることを、世間が知ったら前編でおやおやと思った人も改めて映画館に向かうことになるんじゃなかろうか。マシュの尻を観に。結局そこかい。そこなんだよ。それがFGO。

 目指せ100億円といった感じに新しい入場者特典が配られ始めた「シン・エヴァンゲリオン劇場版」をTOHOシネマズららぽーと船橋そのまま見る。12度目か13度目。パリかちこみ作戦の途中、マリが操演よろぴくーと飛び上がったあたりで意識がとんで気がつくとシンジがトンネルを歩いてた。でもってヴンダーにシンジが乗り込んで鈴原サクラからビンタをくらってアスカがマリに抱きつかれたあたりで気を失って気がつくとアスカがシンジの部屋に立ち寄り会話をしてそして目が覚めるとマリとアスカがネルフ本部へと突入してた。さらにそこから一気に意識が飛んでクモハの中でゲンドウとシンジが会話しているシーンになってあとはだいたい意識を保って「VOYAGER」が流れてクライマックスへと至る好きなシーンはしっかり観られた。これだけ飛び飛びなのにストーリーはしっかり覚えているのはきっと睡眠学習が働いたからだろう。ということにしておこう。

 そんな事実などないと前の総理大臣が口にした以上は事実であっても存在してはいけないと、関連する証拠が示された書類が破毀され関係者の記憶からも綺麗さっぱり失われてしまう事態が過去に何度も起こった流れを今も引き継ぐかのように、総理大臣のご意向に逆らうような事態が存在してはならないとばかりにあらゆることがねじ曲げられている感じ。東京オリンピックを開催したいという意向から7月の半ば過ぎまでには高齢者の新型コロナウイルスワクチンの接種が済んでいなくちゃならないという考えを、イエスサーとばかりに忖度をして厚生労働省とかが全国の自治体に7月末までには接種を終えろとプレッシャーをかけている。

 兵庫県ではいくつかの自治体が7月末までに接種なんて無理だと調査に解答したところ、副知事だとか総務省だとかが電話やメールをかけてきては7月末までに接種が終わると解答するよう言ってきたという。それを聞いたら市町村だって無理でもそう答えざるを得ないのが親方日の丸な組織の宿命。かくして調査を終えて結構な市町村が7月末までに接種を終えるという報告が総理大臣のところへと上がって至極ご満悦といった構図ができあがる。でも実際には無理で無茶なスケジュール。現場が死ぬか接種したことにして嘘の報告が言って誰かが詰め腹を切らされることになるだろう。

 それこそ例の近畿財務局の人みたいに虚偽をやらされ心労が祟って命すら失うかもしれない。これは兵庫に限らず全国的に行われていることのようで、群馬県では総務省音担当課長が太田市長に見込みを前倒しして7月末までとするように念押ししたとのこと。無理だから無理と答えることこそ市民生活のためになるのに、国は誰かの面子しか気にしてないことが伺える。いつか大本営発表として戦地で連戦連勝が伝えられている裏で死屍累々となった日本が、最終的にどうなったかを知らない訳ではないんだろうけれど、それでもやってしまうんだろうなあ、何かを惜しさに。それこそ反日と糾弾すべき売国の輩になぜかライティな人たちは味方する。まったく訳が分からないよ。


【5月14日】 ちょっと驚いたILMによる「ultraman」のNetflixでの製作発表。すでにソラスタジオで神山健治監督と荒牧伸二監督による「ULTRAMAN」が配信されているけれど、そっちはコミックに原作があって1966年に放送された特撮ヒーロー「ウルトラマン」の系譜を継いではいてもそのままない。やはり海外での展開に今少しのネックもあってストレートには出来なかったんだろうけれど、そうした不安も裁判に決着がついて解消されたこともあって、マーベルでの「ウルトラマン」の展開があったりして、いよいよアメリカでも本格的な浸透が始まろうとしていた感じがあった。

 それがハリウッドでの特撮ヒーロー映画になるんじゃないかなんて想像もあったけど、「KUBO/クボ 二本の糸の秘密」のキャラクターデザインに携わっていた人が関わるみたいだから「ultraman」にはアニメーションになりそう。そしてキービジュアルからするとフォルムに独特なところがあって、それこそ日本の「ウルトラマン」のオープニングに出てくる切り絵のような感じにシャープなデザインのウルトラマンが活躍する話になりそう。日本では庵野秀明総監督による「シン・ウルトラマン」が公開に向けて動いているから、日米で激突なんてこともあるのかな。判官贔屓で日本では庵野ウルトラマンに軍配が上がるだろうけど世界ではどちらが勝つ? 見物だねえ。

 庵野秀明総監督といえば「シン・エヴァンゲリオン劇場版」の公開からこっち、いろいろとスタッフだとか出演者だとかに対する誹謗中傷めいたものがあったとかで、スタジオとなったカラーが警告を発していた。別に作品にたいして何を言おうとそれは言論の自由だし、文句を言われるならそれはそういう作品でもあるってことだからカラーだってきっと受け入れただろう。問題があったとしたら見解の相違なり印象の悪さなりを勝手に認めて脅迫だったりを特定個人あるいは組織に対してしたことか。それはやっぱり犯罪行為だから取り締まられて当然だろう。でもどんな誹謗中傷があったんだろう。見渡して見当たらないだけに気になる。「乳の大きい良い女」はやぱり大小を理由に善悪を語っているから差別というんだろうか。「これだから若い男は」に若い男がカチンと来たんだろうか。気になるにゃあ。

 独裁国家めいてきた。いやすでに独裁国家か。菅義偉総理大臣が東京オリンピック開催に向けて全国で進めたい高齢者への新型コロナウイルスワクチンの接種がやっぱり、調達の問題があって行き渡ってない上に、体制整備の遅れによって滞っていることに切れまくってる感じでで、口では「えっ、そうなの」と知らなかった振りをしつつもきっと影では厚生労働省あたりの尻をひっぱたいて実績を挙げようと懸命になっていると勝手に予想。とはいえ先立つものがなければ摂取もできないなら「『医療従事者用のワクチンを高齢者に当てるように』と総務省、厚労省が都道府県に内々に指示しています」とAERAがスクープしたように、本来は医者や看護師に回るべきワクチンを高齢者に回して接種率を上げようとしているらしい。

 いやもうポン酢かと。戦地へと行って最前線で戦っている兵隊さんたちのために調達して届けるべき食料を、国内に留め置いて軍を支持してくれている人たちに優先的に回して反発を防ごうとしているようなもので、とりあえず国内は落ち着くけれどもその一方で戦地では兵隊さんが飢えて亡くなって戦線は瓦解し戦争に負けて結果として国内も悲惨なことになるのは歴史が証明している。それを分かっていながら自民党への支持が高い高齢者層に回しつつ接種立を挙げてほら日本はこんなに予防に努めてますよと海外にアピールする気なんだろうけれど、そんな意図は先刻承知をアメリカなんかがヤバい日本に来て練習するのを止めたりし始めた。

 オリンピックを開きたい余りにアスリート優遇とかいった施策も打ち出そうとしたけれど、茨城県とか千葉県とかが選手のためにことさらに医療機関を空けたりなんてできないと県民目線の施策を打ち出し政府も振り上げた拳の落としどころを見失っている。挙げ句に選手たちがちょっと羽目を外したら選手資格を剥奪だなんて、そんな権利を政府が持っている訳もないのに勝手に言い出してはだったら政治家がルールを破ったら議員資格を返上するのかと問われても、きっと答えられないか答えないに違いない。国が選手の動勢を差配できるならオリンピックの開催だって差配できるだろうはずなおに、そんな権限はないとか言って組織委員会に丸投げし、組織委員会の方は国が決めたからと諾々と従っている無責任の押し付け合い。このまま果たしてまともに開催できるのか。いよいよ決断の時期が来たって感じかなあ。

 狐塚冬里さんという人の「アレキサンドライトの正義 怪盗喫茶は営業中」(二見サラ文庫)
が面白い。訳あって施設に預けられた少年少女がひきとられて兄弟姉妹として育っていた喫茶店のマスターだった父親が失踪。残された男子2人に女子1人が父親の残した最後の言葉をより所にしてひとつの暗号めいたものにたどり着き、そこから人命を割り出して何か犯罪めいたものが行われていること、それから人名の裏にある種の異能たちが存在していてそれにまつわり何かが動いていることにたどり着く。悪事を暴くときに3人が何でも覚えて忘れないと囁きまで聴けるとか数字に強いといった異能を使いドロボウめいたこともするところが、「キャッツアイ」的でミステリ的な面白さを感じさせる。滅多に見ないレーベルだけど見つけたら買い。


【5月13日】 AmazonPrimeビデオで「スーパーカブ」の最新話。礼子が郵政カブで富士登山に挑むという文庫本でも第1巻に書かれてなかなかに感動させてくれたエピソードが描かれた。山小屋で働くことで山頂へと荷物を運ぶマシンがしっかり登れるかどうかを確かめるといった理由付けで、カブを山頂まで走らせる許可をもらったところは、礼子にやりたいことのためには難しい壁を突破するだけの才覚と行動力が備わっていることを表している。どうしてカブで富士登山なのかといった理由付けが分からないという人もいるみたいだけれど、それこそカブに乗っててそこに富士山があるからに決まってる。そういう風に出来ているんだよ人間は。

 そんな礼子の行動に対してはっきりと「莫迦」と言ってしまえる小熊を冷たいかっていうと、合理的じゃないことをそれでもやってしまえる礼子の前向きさを、自分にはなかなかできないことだって讃える意味で使っているんだろうことは想像に難くなく、それを冗談めかしてではなくいつものとおりに淡々と言うから知らない人には誤解が生まれそうだけれど、ちゃんと分かっている礼子には通じたみたいで喧嘩にはならず、友だちづきあいも深まったみたい。それもこれもカブに乗ったから。踏み出すことで始まる何か、そして開ける道があるんだなあ。僕も中型免許に挑んでみるかなあ。

 Netflixで「転スラ日記」の最新エピソード。夏祭りを開催したいってリムルの要請に応じて魔族たちがこぞってリムルが伝えた夏祭りを再現しようと動き出す。普通だったら似てまったく非なるものが出て来て文化のギャップに身もだえするところだけれど、伝え方が巧かったのはたこ焼きはちゃんとたこ焼きになっていたし、型抜きも射的もそれなりの完成度を見せていた。タコかどうかだけは謎だったけれど味が一緒なら気にしない。白身フライだって元の魚を見るとちょっぴり不思議だったりするそうだし。

 浴衣もちゃんと再現されていたようで、そしてシオンの巨大な胸では浴衣の着付けがうまくいかないとシュナが笑顔を引きつらせて力説しながらさらしを巻いたことを強調していた。なぜそこまでかは聞くだけ野暮ってものだなあ。でも最後ははだけさせては元どおりの巨大さを見せていた。後でシュナが燃えていた。魔族でもそういうものなんだろうなあ。かき氷ではリムルが大活躍して魔法で氷を出していたけれど、シロップについては何を元にしてるんだろう。甘味とかどこから採取したんだろう。異世界はなかなかに奥深い。こういうほんわかを見た上で第2期での悲劇を見ると余計に心に痛みが走る。でも復活できたし、とりあえず良かった。のんびりほんわかなアニメ。何かと圧迫される昨今だけに心落ち着かせるために見ていこう。

 茨城県知事が東京オリンピックの出場者たちに対して医療を優先するよう求められたことに、そりゃ無理だって返事をしたのに続いて千葉県知事も同じ様にオリンピックの選手を優遇するようなことをしたら、県民の医療が滞るってことで断ると表明。利根川を挟んでとかく反発しあっている千葉と茨城だけれどこういうところではしっかり共闘するのはそれだけ、医療が逼迫していることの現れだろう。残る10週間で劇敵に状況が改善するとも思えないだけに、もはや中止するしかないところまで来ているんだけれど前の千葉県知事は菅義偉総理大臣を訪ねてはやる気満々だったことを紹介してお追従ぶりを見せていた。もしも県知事のままだったら大歓迎して茨城からだって福島からだって栃木や群馬からだって受け入れただろうなあ。とりあえず良かった。

 東横店がなくなって東急百貨店といえばあとは坂の上の本店くらいしか見当たらなくなった渋谷だけれど、その本店を2023年に取り壊して別の建物を建てつつ隣のBunkamuraともども整備するとのこと。オーチャードホールや展覧会のスペースがなくなってしまう訳ではないのは安心で、あとは映画館も残って最近はずいぶんとご無沙汰だけれど良い映画もかかるプログラムを維持してくれれば、個人的には百貨店は存在しなくても構わないというか、今のこのご時世に百貨店という形態がマッチしているかと考えたら時代の趨勢としてなくなっていく方向にあるってことだと理解している。ただ上の書店がなくなるのは勿体ない。あの場所にオフィスとかあまり向かないだけに、新しい業態の商業施設を作ってすっかり宮益坂方面へと持って行かれた流れを引っ張り戻して欲しいもの。頑張れ東急。プラネタリウムとか作らないかなあ。あと映画館。


【5月12日】 目覚めてベッドから抜け出して周囲の部屋とか隣の部屋とかを歩き回っては誰かに会ったりしてそして気がつくとベッドで目覚めてやっぱり誰かを探したり近所を歩き回ったりする繰り返しに囚われて、それが夢だといながら抜けられない状態がしばらく続いてなかなか起きられない。気がつくと夕方になっていて、原稿を書く予定がまだ書き出しすらしていなかったけど、そこから2時間くらいでどうにか仕上げて送稿して1日が終わる。こういう生き方もまあ、リタイアからのリハビリってことなんだろうなあ。立ち直る時は来なくても。

 やっぱりミミックに囓られていたフリーレン。雑誌掲載から1週間というか途中に大柄連休が入ったから2週間遅れて「うえぶり」で読んだ「葬送のフリーレン」ではいよいよ一級魔法使いの2次試験が始まってフリーレンがフェルンといっしょにダンジョンに降りていったけど、そこで見つけたミミックが99%ミミックだと分かっているにも関わらず、残り1%が違う別の存在だと告げていると言い、それを見破った偉大な魔法使いたちがいたからこそ歴史的な発見があったと良い訳しては、開いて食われてしまうところが、フリーレンという魔法使いの魔導書への執着なんだろうなあ。

 何かに挑戦しようとする意識とかはまあ後付け。誰の言うことも聞かない身勝手ぶりが伺える。これでフェルンがいなかったら食われて終わりになるのか、技を出して抜け出すのかは分からないけれど、フェルンが側にいると分かっているからこその身勝手な振る舞いなんだろうなあ、そこは。ダンジョンには一級魔法使いのゼンゼもいっしょに潜っているけれど、フリーレンの凄さを見破った感じではなく試験に臨んだメンバーの中では実力的に上っぽいと感じ取っただけみたい。でも早速後悔しているところからの大逆転がありそうだから面白い。どうなるか。

 すごいなあ日本のオリンピック組織委員会。はるばる世界からプレ大会のために来てくれた水泳飛び込みの選手たちを空港まで出迎えにいかず、入国の手間をかけさせて不安にさせた上に競技期間中はまったく外に出さず、選手達のメンタルを粉々に粉砕した上に食事も唐揚げ弁当のようなものを出しては選手たちのフィットネスまでボロボロにしかけた。箸をつかってライスを食べるなんてことに馴れてる訳ないじゃん世界の選手たちが。せめてケータリングで自由に食事が取れるようにしてあげるところを、部屋からほとんど出さずフロアの移動さえ認めなかったというからもう刑務所並み。それがプレ大会なら本番でもそなことが起こりかねない。こりゃあ日本での大会に来たくないと思う選手や国が出ても当然かも。

 そんな噂を聞きつけたのか、アメリカの陸連がオリンピック前の日本での事前合宿を取りやめると言ってきたらしい。それこそ10週間前の今の時点でそういったことを決めたら、準備にあたってきた市町村だっていろいろと大変に違いないけれど、それで文句を言えないくらいに日本の新型コロナウイルス感染症に対する対応は遅れていて、ワクチンの接種も行き届かない中に来て感染でもさせられたら堪らないと考えてもまったく不思議ではないだろう。問題はだったら事前調整をしてから来るかというと、時差もあるし待機期間も求められるだろうからそれはない、ってことはもはや来日を断念してオリンピックには参加しないと決めたに等しい今回の措置。受けて果たして組織委員会は何を言うかというと、今はまだそしらぬふりを続けるんだろう。それが処世術になってしまったこの国の未来をぶち壊す。やれやれだ。

 その新型コロナウイルス感染症といえば京都で基礎疾患のない20代の方が亡くなったとかで、いよいよじわじわと深刻な事態が広まりつつある感じ。大阪でも50人が亡くなってもう連日50人規模の死亡者を積み上げつつある。以前に50人といっても以前に亡くなった方を混ぜているからそんなに深刻じゃないと嘯いた人がいたけれど、その日がそうでもそれ以後に50人が連続するならもう平均して連日50人規模の死亡者が出ているってことになる。あるいはもっと多いのに後日にずらしているだけで70人亡くなった日だってあったかもしれない。少なく見せようなんてもう無理だ。

 そんな状況になっても大阪では吉村府知事がテレビにでまくて何かやっている振りをみせている。大阪市の松井市長もそんな吉村府知事と止めることなく大阪の猖獗を極めさせている。国が大規模な接種会場を作るといって東武トラベルツアーズを窓口に選んで何かしよとしているにも関わらず、大阪市で独自に作ると言っては大阪府も独自に作るといった意見と調整してなかったり、看護師の手当もまだだったりと相変わらずの何かやっている振りを貫いている。そうやってどんどんと積み上がっていった死亡者をバックに、2025年の大阪万博は果たして開けるのか。開く気は満々なんだろうけれど、そこで復興万博だなんて言おうものなら自分たちで沈めておいて自分たちで持ち上げるマッチポンプぶりを非難されるだろう。それでも馬耳東風、メディアもお追従な大阪に未来は? 私気になります。


【5月11日】 サクラバクシンオーをスピード重視で育成してようやくURAファイナルの決勝を勝利し、伝説の「うまぴょい伝説」を「ウマ娘」の中で聴けるようになった。ちょっと嬉しい。ずっとバックに流れていたBGMのメロディがそのまま歌になっていたんだなあ。早口の掛け合いからサビへと流れていく楽しさがある楽曲だけに知らず広まっては「けものフレンズ」の「ようこそジャパリパーク」みたいなサブカル発の人気楽曲へなっていってくれそう。まずはどうぶつビスケッツと同様にミュージックステーションに出るかどうかかな。誰がセンターを務めるかは謎だけど。

 例の一件で「けものフレンズ」というIPが一気に熱を失いどうぶつビスケッツも「ようこそジャパリパーク」もそのまま萎んでいってしまった関係で、年末のNHK紅白歌合戦にはお呼びがかからなかったのを「ウマ娘」の「うまぴょい伝説」で雪辱を晴らせば、そっち系な人間としてちょっと嬉しいかも。なるほど競馬ファンの間からにわかな競馬ファンが「ウマ娘」から生まれて競馬場を荒らすんじゃないかって不安な声も起こっているけれど、あくまでもアプリゲーム「ウマ娘」の中の音楽ユニットがゲーム内の楽曲としての「うまぴょい伝説」を歌うだけだから競馬場に悪さも何も関係ないだろうってことでお許しを。

 ちらっと見た時に一種のパロディかと思って、この現代によくもまあ戦中の雰囲気を持った女の子たちを見つけ出しては当時の衣装を着せて竹槍だか長刀だかを持たせて撮ったものだと感心しようとしたものの、どこか見覚えのある図像に調べたらそのまんま毎日新聞社が戦中に行われた事を紹介する講座の案内ページに載せていたバリバリの戦前戦中写真。ってことは当然に写っているだれかは実在した誰かであってともすれば今もまだ存命かもしれないし、そうでなくても係累は続いている可能性もあったりする。そんな女の子の顔に大きく新型コロナウイルスを貼り付けた形で、広告という形で全国紙に掲載するのはさすがに拙いんじゃないのと思ったら、誰もそういった懸念をしめさずやんやの喝采を贈っているから唖然とした。

 宝島社による政府の新型コロナウイルス感染症対策を批判して、竹槍でB29に挑んだ戦中のごとき振る舞いだと訴える意見広告。それがもしも完全に現代人を使ってあくまでも過去のモチーフにならって録り直したものだったら一切の異論は抱かない。まさに竹槍でB29に挑むが如くに政府は無策の徒手空拳で新型コロナウイルス感染症に臨んでいるから。あるいは横尾忠則さんが描くポスターなり、バンクシーが描くグラフィティのようなものだったらそれはそれでアイデアだたっと讃えただろう。クリエイティブにも称賛を贈っただろう。

 でも違った。それはかつて実在した少女たちだ。今と地続きの時間、同じこの世界のどこか違った片隅に生きていた少女たちを思うなら、その尊厳を塗りつぶすような顔への新型コロナウイルスの貼り付けは、たとえ日の丸をモチーフにしたデザインを意識したとしても、やるべきではなかった。今にそうした図像が伝わるのは、戦意昂揚を訴えかけたものとしてであって、そのプロパガンダ性の中に少女たちは個性といったもの、自分たちの意思といったものを奪われ塗り込められていた。そんな図像を引っ張り出して、プロパガンダへの荷担を当人たちの意思とは無関係に問いつつ、改めて反政府的な広告に用いることで逆プロパガンダ性を担わせた。ある意味で2重に蹂躙されたとも言える。

 「この世界の片隅に」であり「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」といったアニメーション映画を通して僕たちは今と地続きの世界のあの時代という片隅に生きた人たちがいて、当時の状況なり雰囲気の中で思想とかいったものとは無縁に精いっぱいに毎日を送っていたことを知った。そんな人たちが時局の中で知らず戦争といったものに巻き込まれ、あるいは荷担していったことを映画を通して目の当たりにすることで、かえって戦争といったものの恐ろしさであり残酷さを感じた。そして、ことさらに大声でがなり立てず、主張を前面に押し立てずとも伝えられるメッセージがあることを知った。そんな映画を経てなお、同じ世界の違う片隅に生きていた人たちを、メッセージのために奉仕せよとばかりに持ち出して、顔に新型コロナウイルスを乗せたりすることがどうにも認めがたかった。

 実在の図像だからこそ伝わるメッセージ性があるかと言うなら、果たしてそれが新たに作成された模写的なものだったとしても、そうした行為が過去にあったことさえ分かっていれば伝わるメッセージは同じくらいの強さを放っただろう。だからこそ実在する図像を使ったことを残念に思った。そう思う人も他にいると考えた。だってこの国は「この世界の片隅に」という映画を経ているのだから。でも見渡すとそうした意見はあまり見当たらない。のんさんの境遇にシンパシーを感じていたようなところがあった小泉今日子さんですら、自分の会社のアカウントを通して宝島社の広告を讃えていた。どうにも寂しい。どうにも空しい。せめて自分ひとりだけでも異論を唱えていこう。一方でメッセージとしての「竹槍ではだめだ間に合わぬ、飛行機だ」とも訴えていこう。


日刊リウイチへ戻る
リウイチのホームページへ戻る