縮刷版2021年11月中旬号


【11月20日】 Netflixで実写版の「カウボーイビバップ」が配信スタート。さっそく第1話を見てちょっとジョン・チョウが演じているスパイク・スピーゲルの脚の長さが足りてない気はしたものの雰囲気はちゃんと出していて、こちらは雰囲気完璧なジェット・ブラックとの良いコンビを見せてくれていた。山寺宏一さんはそのままだけれど石塚運昇さんが亡くなられてしまってちょっとジェットの声が違っているのが気にはなったものの、聞いていくうちにきっと慣れるだろうからあとはビバップ的な展開の愉快さで引きずり込んでいってくれるんじゃなかろうか。

 フェイ・バレンタインもできれば手足は生が良かったかもしれないものの、逆に生身の女性が演じているという意味での肉感があってそれれで悪くない。林原めぐみさんが声を被せればほらもうフェイ・バレンタインそのものって感じ。ただそうした日本語音声に引きずられるとどこかそれっぽさが増し増しになってフェイクな感じも出てしまうので、むしろ音声をオリジナルの英語音声に変えてストーリーとビジュアルはビバップだけれどそこにドラマ性をより深く感じる方が見方としては正しいのかもしれない。ビシャスは若本規夫さんのブルァアアアア声になったらどうしようかと心配していたら、ちゃんとまっすぐ出していた。これはこれで良し。英語だとちょっと威厳が足りないかな。追々見ていこう。

 ヤバいのは昔からだけれどももはやヤバさを隠すことなく押し出してきた感じなとある自称するところの全国紙の1面コラム。近畿財務局で記録の改竄に携わらされた職員が両親の呵責もあって自裁した問題について、その流れを一般的にはそうした改竄を現場がせざるを得なかったのは最高権力者に関わる問題であって、忖度から改竄を急がされたことで現場が疲弊したといった認識がされていると思うのだけれど自称するところの全国紙のコラムはそうした前提をまるっと避けては、問題に対して野党が追及をするから現場が改竄をせざるを得なくなって結果として職員の自裁につながったので、悪いのは追求した野党議員といった論理を打ち出している。

 根も葉もないところに勝手に火を着けて野党が追及をしたという認識なのかもしれないけれど、根だとか葉だとかを隠して見えないところに押し込んだからこそ発端まで追求が及ばず、改竄が改竄として成立したのだと捉えるならやはり原因は野党が追及せざるを得なかった無理難題を作った側にあると考えるのが普通。そこを包み隠すというあたりにいわゆる全国紙めいた新聞の1面コラムの書き手が何を守って何を貶めようとしているかがうかがえる。そうした意見に賛同もあったりするからなお厄介なんだけれど、一部の内輪でそうした論理がまかり通っているだけで世間は呆れ果てた結果、もはや全国紙を標榜するのも難しい状況へと追い込まれていたりするから、その意味では自業自得と言えるのかも。100万部割れもすぐそこに。

 一生に一度くらいは見て緒かなくちゃと伝説の「虹伝説」を再現するという高中正義さんのライブ「虹伝説ファイナルat武道館」を見に日本武道館へ。前に来たのはBABY METAL以来か。席は1階で東側だからステージに向かって上手側から高中さんを真横から見るといった感じだけれどその分、ステージに近くって指の動きなんかもちゃんと見えた。よく動くなあ御年68歳なのに。その年齢で「虹伝説」を再現した上にヒット曲を披露する第2部も勤め上げてほぼほぼ3時間、弾きっぱなしというから素晴らしい。できる人は幾つになってもできるんだなあ。

 いやそれを言うならベースの岡沢章さんは70歳だしドラムの宮崎まさひろさんも66歳で激しいドラムを叩き続けていた。あの世代のミュージシャンは皆凄い。村上“ポンタ”秀一さんが存命だったら70歳でも叩いただろうか。それでもやっぱい高中正義さんのギターは歌うし唸るし泣くし叫ぶしと超カッコ良い。どこまでも聞き込んでいける旋律を作り上げるのみならず、エフェクターを駆使してさまざまな音色を織り交ぜながら弾きあげるそのテクニックを目の当たりにすると、どれだけうまいギタリストがいたとしてもやっぱり一目置いてしまうだろうなあ。今日も見に来ていたんだろうか。反応が気になる。楽曲では「渚、モデラート」とか「Blue Lagoon」とか有名な曲も聴けて良かった。伝説の一端を垣間見れただろうか。次はどの伝説を観に行こう。


【11月19日】 朝からネットとにらめっこしてロサンゼルス・エンゼルスの大谷翔平選手が果たして大リーグのMVPをどれだけの得票で獲得できるかを見守る。取ることはほぼ確定はしていたけれどもゲレーロ選手の方に流れる可能性もあってそれもまた認められることだけに、気になっていたものの発表された数字は満票で大リーグを担当する野球記者のすべてが活躍を認めたってことが証明された。

 まあ事前にあれだけ満票かどうか取りざたされ、投票に対して説明も求められる中で他と違う意見は出しづらいところもあるけれど、そこを突破してくるのがアメリカのジャーナリストという人たち。説得力を持つ論を展開できれば堂々と他の選手に投票するんだけれどもそうした数字なりを探しても挙げられないところに大谷選手の凄さってものが改めて浮かび上がる。

 中には打者として単独ならゲレーロ選手だけれど投手としての成績も合わせたってあって、そこに別の投手が絡んできた場合には中途半端だといった意見も出たかもしれないけれど、打者が3人並んで本塁打数とかで拮抗している中、投手として勝利に貢献したことも含めればやっぱり評価は断トツに跳ね上がる。そうしたところをしっかりと認め評価するからこそ、アメリカの選手たちは頑張れるし実力も上がっていくのだろう。どこか年功序列的なところもある日本では難しい話。それを怖そうとした落合博満さんは指導者として排除されてしまったからなあ。度しがたい。

 度しがたいといえば「メイドインアビス」のキャラクターを「いらすとや」の人がグッズにしていてそれがどれも「いらすとや」テイストな上にデフォルメされた「メイドインアビス」的なニュアンスも備えていてなかなかな巧みさ。企画した人が凄いのか、いらすとやの人がやっぱり巧みなのか。世の中にあれほど出回っているイラストも他にないからなあ。そうやって慣らされた目に違和感がない上に「メイドインアビス」のファンにも馴染む巧さもあるんだろう。個人的にはオーゼンが不気味でなかなか宜しい。プルシュカは別バージョンがなくて良かった。

 図書館へと出向いて3時間ほどテープ起こし。30分もないインタビューだけれど起こしては休んでいたら結構時間がかかってしまった。集中力が足りないのは糖分が足りて内政なのか。コーヒーには砂糖を入れる方が良いのか。太るしなあ。とりあえず起こし終わったのを持って図書館を出てから近所のフレッシュネスバーガーへと移りそこで原稿まとめ。前後を入れ替え並びをよくして意味が通るようにしていくことでどうにか読めるようになるのだった。

 1発目からしっかり意味の通ったインタビューができれば良いけれど、それだと興が乗らない相手の表層の記憶しか記録できないから難しい。後に回って繰り返して尋ねて出てきた話を混ぜたりすると、やっぱり前後の入れ替えが必要になる。そこはだからインタビューというものの考え方しだいかなあ、ジャーナリスティックな証言としてのインタビューなら動揺も含めて記録して心情を伺うことも必要だし、証言にないことを付け加えるのも御法度だけど、宣伝としてのインタビューは相手が言いたいことを付け加えてくることもあってそれでグッと価値が増すならオッケーだったりするから。30年やっているけれどやっぱり難しいお仕事であります。

 先だって竜王を奪取したばかりの藤井聡太四冠が王将戦でも挑戦者決定リーグで白星を重ねて最終局を待たず挑戦者に決定したとの報。これで1月から始まる王将戦で渡辺明三冠に勝てば、年度内の5冠も確定となってとんでもない偉業を達成する。ボクシングの王者統一ではないから3つのタイトルが一気に移動することはないけれど、名人位も持つ竜王とならんで最強最高の地位にある棋士を倒せばやっぱり現時点での最強を名乗るに相応しいってことになる。どうなるか。順位戦でも勝ち続けているから来期のA級昇級はほぼ確定。そこで勝ち抜いて挑戦者となり名人も奪取できればこれは羽生善治九段を超えた棋士って言えそう。出るんだなあ。後から後から天才が。


【11月18日】 温泉娘に関して言うならマニアだけの間に流通している設定だったならまだしも、公然とした場においてたとえ同性が対象であってもセクハラチックな文言を盛り込んでいた時点で突っ込まれる可能性があったということで、そうした部分での工夫の足り無さが、少し前の松戸市における警察で使われるVtuberのモデリングの開けっぴろげさに対する突っ込みにも繋がったと言えなくもない。碧島めぐの問題からこっち、少しは配慮といったものを考えながらコラボを進めているかと思ったけれど、抜ける部分はやっぱりいろいろあるんだなあ。そうした配慮をしてもなお文句を付けてくる相手は思想が違うといってスルーするしかないけれど。

 だから温泉娘がそうした文言を改めたにも関わらず、当初は触れてもいなかったビジュアルに関して文句を付けてくる相手にはお引き取りを願うしか無く、そうした煽りが業務妨害につながったなら法律と相談するしかない。そこは検討の余地があるかも。そして18禁で描いている絵師が温泉娘のキャラクターを描いているという意見はもはや難癖を超えた差別にも等しい文言なので、無視するか抗うかして押さえておくべきだろう。過去であろうと現在であろうと成人向けの仕事もすれば一般向けの仕事もするクリエイターは枚挙にいとまが無い。

 「Shall we ダンス?」で日本アカデミー賞を獲得した周防正行監督は「変態家族 兄貴の嫁さん」という成人映画を撮っていたし、「おくりびと」がモントリオール世界映画祭でグランプリに輝いた滝田洋二郎監督は「痴漢電車」シリーズの監督として知られている。「ガメラ2 レギオン襲来」で日本SF大賞を獲得した金子修介監督は「宇能鴻一郎の濡れて打つ」なんて作品で世の中に出てきた。同じ日本SF大賞なら「新世紀エヴァンゲリオン」の庵野秀明監督も18禁のアニメーションに携わった経歴を隠していない。新海誠監督にも18禁のゲームでオープニングなんかを手がけた実績がある。そうした過去を引っ張り出して現在を批判できないことはこうした例が表しているにも関わらず、煽るように非難をしてしまうのはそれが正義だと思い込んで考えも無しに発言してまいがちなSNSの問題でもあるんだろう。厄介だねえ。

 たった1日でも交通費が満額出るのはおかしいと訴えた維新の態度を讃えて他の政党の所業をディスったら維新のトップが同じような所業をしていて跳ね返ってきたブーメランに謝りつつ言い訳をしないと言って讃えたらもっと別のことで跳ね返りが起こってどうしようもない橋下徹氏が話を別の方向に持っていこうとれいわ新撰組から比例代表で当選した人は即日で当選が出てないからたった1日をもらうのがおかしいと言って、いやいや衆議院の規則で当選日は総選挙の行われた日だと決まっているといった突っ込みがはいってこれまた跳ね返りを喰らった格好。

 そもそもが投票が締め切られた段階で投票箱に入っている票はある意味で確定している訳で、開けるまで分からないシュレーディンガーの猫状態ではない。だからこそ同じ日が当選の日だと規定されるんだと思うけれど、そうした方向へと頭を働かせないものまた何かを言うことで衆目を集めていかないといけないといった気分に染められているからなんだろう。SNSで何か煽り続けるのと一緒。でもちょっと自爆が重なっている感じなだけにそろそろ誰か引導を渡すことになるんだろうか、いやいやテレビが持ち上げ続けている限りはやっぱり世の中に現れ続けるんだろう。そんなテレビも視聴率で20%を超える番組がない状態なだけに、3年後にはテレビからではもはや世の中にアピールできなくなるかも。今がだから分水嶺。

 ビッグボスって言い方ははっきりいって大嫌いで、それがカッコ良いと思っているセンスは最悪だけれどそれと当人が言い続ける限りは趣味の範囲だから尊重しよう。問題はメディアもそんな肩書きをありがたがって報道にあたって新庄剛志ビッグボスと書き続けていること。日本サッカー協会の会長時代の川淵三郎さんをキャプテンと呼び続けたのも正直やり過ぎな気がして、どこか絶対に譲らず会長と呼び続けるメディアがあっても良かったように、ビッグボスを監督と呼び続けるメディアがあったらちょっと評価するかなあ。まあでも盛り下がりが目立ち始めた野球への注目を集めたい一心というのも分かるから、今年くらいはビッグボスと呼んであげてもいいかなあ、それでリーグ最下位だったらカッコ悪いから、当人もチームも必死で頑張って楽しいリーグにしてくれると思うし。果たして。


【11月17日】 グループ2位に浮上して残り4戦の日本代表がFIFAワールドカップ2022カタール大会に出るためには、サウジアラビアオーストラリア中国ベトナムといった続く試合の少なくとも3つは勝って1つは引き分けといきたいところだけれど、ベトナムには勝てそうでも中国相手だと果たしてどうかと迷うところだし、サウジアラビアもオーストラリアも強豪で簡単に勝てるとは思えない。これまでの試合では得点こそ奪われる試合は少ないものの奪ってもいないだけに膠着状態から両チームとも無得点の引き分けで終わる積み重ねの果て、勝ち星を積み重ねていくオーストラリアに追い抜かれる可能性もないでもないからなあ。

 なのでやっぱり得点を奪いに行く采配を期待したいのだけれど、三苫薫選手を後半からしか入れなかったり、古橋亨梧選手をうまく使いこなせなかったりして前への圧力を高められそうにもない。やっぱり必要なのはサイドとの連係だけれど長友選手は走っているように見せてはいても攻撃の要になっているかというとちょっと微妙。中盤でボールをさばく選手もおらずサイドチェンジも反対側に届かなかったりする攻撃力では、守備を固めてきた相手に点を取りあぐねた挙げ句にカウンターから失点なんてこともありそう。どうなることやら。まだまだ緊張の予選が続きそう。

 Netflixでの配信がまもなく始まる実写版「カウボーイビバップ」のポスタービジュアルめいたものが出回り始めたけれど、これだどうにもエクスプロイテーション映画的な雰囲気で、どことなくカンフー映画っぽさもあってはっきりいってダサい。日本でも時代を外した感じがあったものの、それが物語の積み重ねによって一周回ったクールでスタイリッシュなものだと感じられるようにしたところがある。でも海外ではストレートに半周遅れのダサさを嗜む作品って受け止められていて、だからこうしたポスタービジュアルになったのかもしれない。評判が毀誉褒貶なのもそこを楽しんでいる人とそうでない人がいるってことなのか。早く見てみたい。

 午前中に家を出て図書館で原稿をぱちぱち。予定の3時間でだいたい完成したので図書館を出て地下鉄に乗って大手町まで出て星海社FICTIONSの新刊なんかを買ったあと、とことこと歩いて神保町まで向かう途中、確か大勝軒があったっけと思って歩いていたけど見つからず、見落としたのかなあと思って神保町まで来て昼食をとれるばしょを探したもののキッチン南海には行列が出来ていたので、諦めてまんてんまで行ってカツカレーを頼む。650円でボリュームもたっぷりな上にサクサクのカツが乗ったカレーを食べられるのは嬉しい限り。そこから夜まで時間があったので、九段下あたりまで歩いてカフェで原稿をチェックしたりネットを見たりしながら時間を潰す。これが無職の自由って奴か。収入にはならないけれど代えがたい時間。でもそのうち焦るんだ。稼がないと。

 時間が来たので試写会場まで行っていしづかあつこ監督の長編アニメーション映画「グッバイ、ドン・グリーズ!」を試写で観る。東京国際映画祭でも上映されたけれど観られなかったのでこれが初見。見終わって東京国際映画祭の舞台挨拶に、花江夏樹さんと梶裕貴さんがいたのに村瀬歩がいなかったのは、本人の希望か都合なら仕方ないけど大いに残念だなあと思った。花澤香菜が出たから宣伝的には良かったのかもしれないけれど、役の上では村瀬歩みさんが実質主役よようなものだっただけに、欠けた感じがして仕方が無い。

 ロウマとトトという幼いころからの知り合いで、そして共にクラスから弾かれ気味の少年達がチームを組んで「ドン・グリーズ」と名乗って秘密基地のような小屋を作って遊んでいたのも中学まで。高校進学にあたってトトは医者を目指すために東京の進学校に行き、残ったロウマは畑仕事を手伝いながらやっぱりひとりきりの放課後を過ごしていたかと思いきや、ドロップという名の少年と知り合いになって2人で会話をしたり会ったりしていた。このドロップを演じたのが村瀬歩さんだ。

 ロウマを演じる「鬼滅の刃」の花江夏樹さんとトトを演じる「進撃の巨人」の梶裕貴あんというヒーロー系の2人に挟まれる形にはなっているけれど、逆にいうならドロップは2人をつなげてストーリーを引っ張る主役中の主役とも言えるキャラクターだった。その言葉をこそ聞きたかっただけに、来年2月18日に公開が始まったらそこには花江さん梶さんともどもそろってドン・グリーズとして立って欲しいなあ。花澤さんももちろんご一緒に。女優のどんぐりさん(竹原芳子)を呼んで芸をさせるのだけはカンベンな。

【11月16日】 FIFAワールドカップ2022カタール大会の欧州予選でイタリア代表が勝てず勝利したスイスに勝ち点差を付けられグループ2位に終わってプレーオフに回った。すでにクリスチアーノ・ロナウドを擁するポルトガルもセルビアに敗れてプレーオフ行きが決定。ここにオランダが加わってきたら世界の強豪のうちの幾つかがワールドカップの檜舞台に立てないことになる。欧州予選の厳しさが分かるってものだ。

 もっとも、今回に限ってはアジアでも日本代表が大苦戦をしていて夜のオマーン戦に敗れたらもう道を断たれたも同然になってしまう。かといって出たとしてもあのセルビアに日本が勝てるとも思えないだけに、ハリルホジッチ監督が解任された瞬間から日本代表のサッカーは止まったどころか後退しているのかもしれない。それでも日本サッカー協会の会長職は田嶋幸三会長でしばらく安泰みだい。長沼健会長の解任騒動が起こった1998年のフランス大会に向けた予選とのこの温度差は何だろう。それだけ関心が代表から遠のいた現れってことか、それともJクラブに関心が移ったと見るべきか。それでも代表が両輪の片方であることには変わりが無いのでここでダメなら次の4年は革新的な監督に任せてみるのも手じゃないかなあ。ピクシー来てくれないかなあ。

 「アイの歌声を聴かせて」がヒットしていることもあって吉浦康裕監督の過去の作品が立川シネマシティで上映されることになって大歓喜。「サカサマのパテマ」も嬉しいけれどもここはやっぱり「イヴの時間」の上映が大いに気になる。だってあの立川シネマシティのゴージャスな音響で、Kalafinaによるエンディング曲「I have a dream」が聴けるんだよ。これはもう最高にして至福の時間を過ごせそう。テーマ自体もAIが日常に溶け込んだ世界が舞台になっててポスト「アイの歌声を聴かせて」のビジョンというのを見せてくれている。すっかり内容を忘れているだけに、ここで思い出して改めて「愛の歌声を聴かせて」を見ると分かることもありそう。楽しみだ。

 平将明議員が自民党のネットメディア局長に就任したって報告をツイートに上げていて、そこに掲載されている似顔絵になぜかorihimeが映っていたので何事かと調べたら、以前にorihimeを入手して机の上に置いてリモートの時もそれを通してコミュニケーションがとれるようにしていたとか。身体が不自由な人たちが自分の意思を表現するために使うツールでもあったけれど、動いて態度を示せるのは健常者にとっても単なるビデオ通話より親しみも湧くってもの。そうした効果をねらいつつリモートワークのツールとしてこうしたリアルアバターの活用を促進していければ、何か新しい産業も生まれてくるのではないかなあ。そういう意識が自民党にあるかは知らないけれど。単に奇矯なツールとして見られているとしたら持ったいない。

 そんなorihimeを作った会社がいよいよ視線入力で動かせる電動椅子を完成させたとか。体が動かせない人でもそれを使えば誰かを呼ばないでも体をストレッチさせられるというからなかなかのもの。家族を呼ぶ回数が1日30回から1回に経るとかで、使っている人にとっても家族にとってもある種の気兼ねをなくして明るさを与えるツールになりそう。吉藤オリイさんは視線入力で動かせる車いすを作っていたけど可動となるとやっぱり不安もまだまだあるのかな、間違ったところに進んでいっても止められないと危険だし。そうした道へと1歩近づいたということなのかな。いずれにしても考える人は考えてそして作ってる。そうした人を応援する社会を作っていって欲しいけど、金を出し惜しみするのがこの国だからなあ。やれやれ。

 そして夜になってDAZNでFIFAワールドカップ2022カタール大会のアジア最終予選。アウェーでのオマーン対日本戦は前半にまるで日本代表が動かず棒立ちになっては足元でボールをもらっては誰かの足元に出す繰り返しで、オマーンの守備陣をまるでまったく崩せない。得点の気配すら感じさせない前半にこれは拙いと思ったか、柴崎岳選手に替えて三苫薫選手を入れたらこれが大当たり。自ら持って前へ前へと進む三苫選手に従うように周囲も前への圧力を強めて連動が生まれ、そうした中から相手守備陣の隙も生まれて得点につながった。中国がオーストラリアと引き分けたこともあって日本代表がグループの2位に浮上。ちょっぴり出場が近づいたけど残る試合はまだ4つ。どれも落とせないことには変わりがないので何が拙くて何が良いかを吟味して、次からのメンバー構成を考えて欲しいもの。それこそ監督も含めて。


【11月15日】 防衛省が山口県に航空自衛隊防府北基地に「第2宇宙作戦対」を配備する考えだとか。人工衛星に対する電波妨害を監視する業務を行うそうだけれどどうして山口県なんだろうと考えて、山口市にはKDDIから引き継いだ電波望遠鏡があってそれが使えるからなのかもと思いつく。それは使えないから別に観測施設を用意するのかもしれないけれど、いずれにしてもいろいろと予算が回って宇宙観測のための設備が充実していきそう。

 それはそれで安全保障の面から良いことなのかもしれないけれど、一方で世界でも有数の野辺山にある宇宙電波観測所の方は予算が回らず観測の機会が減らされて宇宙に関する研究が大きく損なわれる可能性が生まれている。身近な“敵”に集中するあまり、じわじわと近づいている地球外生命体を見逃す可能性だってあるんだぞ、って言うのは少し大げさだけれどそうでなくても日本が宇宙観測の分野でどんどんと世界から取り残されていく可能性は低くないだけに、そちらにも予算を回して欲しいもの。そして軍事利用でしか予算が増えない風潮が改まって欲しいもの。難しいけれど。

 明け方にDAZNを開いてFIFAワールドカップ2022カタール大会の予選を見たり眠ったり。ポルトガル対セルビアの試合で監督がストイコビッチということだったけれど、画面に映し出された監督はどう見ても現役姿のシュッとした感じとは一致せず、別の誰かかと一瞬思ったけれどもそれがコロナ時代の我が身でもあると理解し貫禄がついたと思って諦める。まあオシム監督だって現役時代は長身痩躯のイケメンだったのが監督としては貫禄たっぷりだったから、それで良いのだ。

 さすがはポルトガルといった感じで、早々に1点を奪ってそのままフィニッシュかと思いながら寝入ってそして目覚めたら、何とセルビアが逆転しワールドカップ出場を決めていたと知る。試合そのものも衰えないスピードでもって選手が動いてパスをつなぎポルトガル陣に攻め入っていた感じで、たたでさえテクニシャン揃いの旧ユーゴ系にスピードとスタミナがつけば敵もなかなかいない。オシム監督の薫陶「走れ走れ走れ」を弟子として実践しているって感じかな。

 喜ぶ陣営の中に東洋人がいて、調べるとどうやら喜熨斗勝史さんという名古屋グランパス時代のコーチだった人みたい。ピクシーがセルビア監督就任の条件としてコンディショニングに招いたというから、選手のフィジカルとコンディションを整えることで走れるチームにしたんだろう。オシム監督就任当初のジェフがテクニシャン系だったのを走らせ走らせ走らせることで鍛え強豪に押し上げた手法に近いのかな。そんなジェフも今は……。ピクシーに来て欲しいけどワールドカップのあとは欧州選手権の予選まで監督をするそうなのでずっと先になりそう。待ってるぞ。

 月曜の興業通信発表による週末興行ランキングで「映画すみっコぐらし 青い月夜とまほうのコ」が1位になっていた。前週からランクを上げての1位で代わって2位に落ちたのがあの「エターナルズ」だからもはや世界のマーベルとも互角に戦える「すみっコず」って言えそう。この人気ぶりに興味を示して世界が前作ともども配給を始めたら面白いけれど、いつも自信満々であることを要求され自覚している西洋の人に、いつも消極的で迷っているけど夢は持ってるすみっコたちの感性は受け容れられるかな。抑圧されて叫ぶアグレッシブ烈子が人気だから大丈夫かな。

 市川でお仕事をこなしてから新宿へと出てEJアニメシアターで「リナ3Dライブ」を見る。「スレイヤーズ」のリナ・インバースを3Dモデルで作ってYouTuberをさせたりライブをさせたりするイベントムービーだけれどとりあえず紙のように固そうなスカートがすこしひらめいてスパッツの裾がのぞいたことと、そして「Give a reason」がトリで流れたから映画として満点だ。今はなきDMMシアターのような場所にチューニングして背後から半透明スクリーンに投影する3Dモデルだったらもっと没入感があったのかな。そこまでヌルヌル動くモデルじゃなかったから用途が違うのかもしれないけれど、いつかそんなライブもやって欲しい。白蛇のナーガも織り交ぜて。


【11月14日】 TOHOシネマズ池袋の轟音上映で観た「劇場版マクロスΔ絶対LIVE!!!!!」は会場のほどよい狭さもあって真正面から音の振動を浴びる感じがあってワルキューレによる音楽の世界に没入できた感じ。あと闇キューレの音楽にも。アルバムも買って聞き込んでいるとだんだんと誰がどのパートを歌っているかが分かってきて、これがアイドルユニットに耳慣れるってことなのかと理解する。まあひとりJUNNAだけは歌い方が違うから分かり過ぎるけど、それでも最初の方のアルバムと比べるとソウルフルな感じが増しているから作品を通して成長しているんだろう。May’nさんがシェリル・ノームのイメージをやっぱり結構引っ張っていたように美雲・ギンヌメールのイメージを超えてシンガーとしての存在感を増していけるのか。見守りたい。

 気がついた時には販売が終わっていていけなかった「攻殻機動隊SAC_2045 地獄可能戦争」の舞台挨拶だったけれど、報道を読むと本編とはまるで関係のないお笑いグループが入り込んではブサイク極まりないコスプレをして全体の半分くらいの時間を奪い受け答えしていたとか。アニメファンはまったく喜ばないその宣伝がだったらスポーツ新聞を通して読者に受けるかというと高齢者ばかりになてっているスポーツ新聞読者にマヂカルラブリーなんてまるで通じないような気がするし、ワイドショーを通して見る主婦層もやっぱり気にしそうにもない。

 刺さるとしたらそうした媒体力でもってネットに出回る記事を若い人が見る時だけれど、そうしたデジタル世代にとって「攻殻機動隊」は少佐でありバトーでありタチコマであって、そうした役を演じている田中敦子さんや大塚明夫さん、そしてトグサ役の山寺宏一さんと声優の世界でも超トップが勢揃いした舞台挨拶なら、そうした声優さんたちの声をもっと聞きたいと思うのが本音だろう。そこに割り込んできたコスプレお笑い芸人を忌避こそすれ歓迎なんてしそうもない。そうした宣伝にも嫌悪感を示して作品への関心もそれてしまったら本末転倒も甚だしい。でもやってしまう宣伝のメソッドはいったい何に依拠しているんだろう。まったく訳が分からないよ。

 吉村洋文知事が先の衆議院議員選挙で当選をして10月31日から新しく議員となった人たちが、10月分の交通費としてまるまる100万円を受け取るのはおかしいんじゃないかと言い出して同じ維新界隈から持ち上げられているみたい。そうやって敵を想定しては指弾して自分たちこそ優れているとマウントをとっていくのがあの界隈の特質ではあるんだけれど、瞬間瞬間にそうした乗る山を見つけようとしているからか、過去への振り返りが甘くってどうやら吉村知事が前に国会議員を辞めた時も、1か月のうちの1日だけ議員だったらしくその分の交通費は100万円をまるまるもらっていたんじゃないのかといった指摘が出ている。

 つまりはブーメラン。そこでそうでしたとい言うのもみっともない話だけれど、分かりました日割りで計算して使わなかった分は返しますとやってしまった時に今回の1件も日割り計算となってすべての歳費が日割り計算によって算出される事態となって両議院の手間は増える割にたいした節約効果もないまま言い出しっぺの点数が加算されるという上っ面だけの政治が繰り広げられてしまう。本質としての節約を求めつつ使うべきところに使われたことで生まれる効果にも目を向けるべきなのに、削ったらとりあえず見てくれが減ったからそれで良しとする風潮が、大阪のさまざまな公的機関公共施設の削減を読んでは文化と知性にじわじわとダメージを与えている。そのツケを払わされるのは未来の大阪の人たちだけれど、ご老体はどうせもういないから今が楽しけりゃって感覚で応援してるのかなあ。謎めく。

 午後に起き出してフレッシュネスバーガーへとこもってノートのメモを頼りに珍しく行った企業取材の原稿を取りまとめて2時間ほどで1本しあげたので、読書でもと「魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー」の第3巻を読んだらもうはや司馬達也が世界最強どころか知性体の存在が判明しているのが地球だけだとしたら全宇宙で最強の存在になっていて、もう誰が何をやっても揺るがないその存在でどうやって物語を作っていくかが気になって仕方なくなって来た。マテリアル・バーストで地球に近づく彗星すら吹っ飛ばすんだから地球のあらゆる観測可能な地域はその射程に入ったと言って良い。ホワイトハウスだって中南海だって同様。そんな相手がそれでも暴れず粛々と政治をしている姿は不気味だけれど、すべてが深雪のためだとしたらいったい深雪はどこの地平に向かっているか。果てに来る世界とその中での司馬達也&深雪の有り様が今から気になる。終わりはあるのかなあ。


【11月13日】 「アイの歌声を聴かせて」がネットでバズったからバズってる状況を見るにつけ、「ジョゼと虎と魚たち」がもっとバズったり「サイダーのように言葉が湧き上がる」が激しくバズったりするための導火線は果たしてどこにあったのだろうか。それがあったらもっと話題になって大勢が劇場に詰めかけてそれぞれに10億円くらいの興行収入をあげてタムラコータロー監督もイシグロキョウヘイ監督も次が作れて、さらに素晴らしい作品を見せてくれただろうから。

 結局はバズっているかが判断基準になってしまうんだろうなあ。「アイの歌声を聴かせて」に行った人が「フラ・フラダンス」や「グッバイ、ドン・グリーズ」に行くかというと行かないだろうからなあ。この壁を突破するために何が必要なんだろう。「若おかみは小学生!」もギリギリになって付きかけた火を燃えがらせようとして監督達が舞台挨拶を始めたことがバズるきっかけになったし、「マイマイ新子と千年の魔法」も監督が自ら劇場に足を運んで小さい興行を長く続けた。それがなければヒットしないとなると監督も大変。代わるべき有効な宣伝がやっぱりないのが問題か、受けての能動性が弱っているせいなのか。ちょっと考えたい。

 中割りはどこに行ったんだとか思わない。空を飛ぶ幽霊の女の子もちゃんと履いているんだとかは思っても構わない。イラストレーターとして活動するloundrawさんがが監督を務めたアニメーション映画「サマーゴースト」は、しっかりと物語として感慨をもたらし感涙を与えて、そしてひと夏の経験のように去っていきながら、ひと夏の思い出のように永遠にしっかりと記憶に刻まれるアニメーション映画に仕上がっていた。

 ルックは新海誠監督の初期作品「雲の向こう、約束の場所」と重なる風味であり、現代の大学アニメーション専攻から出てくる商業アニメ調の卒業制作風味ではあるものの、そこまで自主制作寄りのアマチュア的な線ではなく、かといってプロフェッショナルの線には少し届いてない見てくれで、劇場の大きなスクリーンでかかってぎりぎり大丈夫といったところ。輪郭こそ粗いもののフォルムはしっかりとしているから、作画崩れの妙なラインを見せられることはない。

 美術はloundrawさんが描くイラストと重なって繊細で美しく見ていて引き込まれる感じ。とりわけ多くの舞台となっている郊外の使われなくなった飛行場から見える空の昼間や夕暮れや夜の美しさは、その時々にそこに居て何者かが現れるのを待っていたい気にさせられる。それは幽霊。夏にそこで花火をすると現れるという黒い服を着て髪の長い女性のゴーストに会おうとして、少年2人と少女が花火を買い込み出かけていく。

 友人でもない3人にはそれぞれに抱えている悩みがあって幽霊にでも会って聞いてみたいことがあった様子。そんな1人で成績は優秀ながら本当は絵の道に進みたい杉崎友也をメインにして、現れたサマーゴースト、佐藤絢音という女性の幽霊との交流が綴られていく。超えてしまった生死の向こう側にあって達観したような口ぶりを見せる絢音だけれど、それでも引きずる思いがある。一方で未だ生死のこちら側にいながら向こう側への憧れを抱く友也の対比から、浮かぶ今というこの時間、生きているこのかけがえのない状態をどう使うべきなのか、といった思いが浮かび上がってくる。

 やれるときにやれることをやりきろう。たぶんそんな思いだ。すべてが終わった後、また巡ってきた夏に飛行場へと集まって花火をする3人の姿に安心はするけれど、そこにも含まれる寂しさをこれも噛みしめながら、人は出会いそして離別しながらまた出会い別れる繰り返しを積み重ねていくことの意味に改めて思いを馳せるのだ。そんな映画だ。下北沢トリウッドあたりで上映されて「ほしのこえ」を上回る動員を達成して伝説を作るところから始まるべき体裁なのに、いきなりTOHOシネマズで上映っていうのも現代的。そこは「ほしのこえ」から20年の成果とも言えるのかな。

 「劇場版マクロスΔ絶対LIVE!!!!!」の轟音上映まで時間があったのでTOHOシネマズ池袋横のVELOCHEでパソコンを開いてAbemaの竜王戦中継に見入る。豊島将之竜王が藤井聡太三冠の玉に迫るもの詰めろを作れないまま渡した手から藤井三冠が責め立てて最後はきっちりぎりぎりの持ち駒で詰みがあるところまで持っていって投了。藤井三冠が羽生善治九段よりも2年2か月早く、そして10代では初となる史上最年少での四冠達成という偉業を打ち立てた。

 ライトノベルの「りゅうおうのおしごと!」で九頭竜八一が未だ二冠なのにどんどんと上を言ってしまってもはやフィクションの出番なし。これでB級1組からA級に挙がって2022年をトップで名人挑戦者となれば、2023年には谷川浩司九段を上回って史上最年少の名人位奪取も見えてくる。それより現在8つあるタイトルの制覇だってとは思うものの、それはタイミングもあるから難しいかなあ、すでに年度内ではとれないタイトルも出ているから、それは防衛をしつつ名人挑戦と前後するくらいで集めよう。しかし羽生九段の凄みとはまた違って飄々としながらも強い藤井四冠。これが現代の棋士か。


【11月12日】 いくら強くなっているとはいってもベトナム相手に1点しかとれないサッカーの日本代表はやっぱりちょっと拙いところに来ている気がする。次のオマーン戦でも同じような戦いしかできなかったら最終的に得失点差で上位にはあがれずプレーオフに回って強豪を相手に沈没する可能性が高い、そんなサッカーFIFAワールドカップ2022カタール大会へのアジア最終予選。守るベトナム相手にぐるりと取り囲んでも足元でパスをもらいあうだけで攻めたり突っ込んだり崩したりしないんだから得点なんて奪えやしない。負けなければ良いとはいっても勝たなくてはダメでもあって無得点で終わったらそこで夢が絶たれてしまう。次はどうなるか。見守るしかないのが辛い。

 インタビュー原稿のテープ起こしから単元にまとめて質疑に変えるところまで終わったので、京成ローザへ「攻殻機動隊 SAC_2045 持続可能戦争」を観に行く。なんだ面白いじゃないか。さすがは「新聞記者」の藤井道人監督が入って構成しなおしただけのことはある。総集編にとどまらず1本の、というかまだ全体の半分だけれど、それをとりまとめた“前編”としての興味を誘う映画に仕上がっていた。

 Netflixで各話ごとに順々に見ていった時には感じなかったスリリングな展開とエキサイティングなアクションがギュッとつまって前半部分を楽しませてくれる上に日本へと戻ってからのポスト・ヒューマンをめぐる捜査活動もメリハリが効いて何が起こっているかが分かりやすく終えるようになっている。トグサ消失で尻切れ蜻蛉だった感じも構成を入れ替えた上に"その後”も着けることで続編の楽しみを煽る。

 そんな続編の映像も挟んで日本が舞台のアクションを見せてくれそうな予感を誘う。これは良い物だ。ジョン・スミスのセリフも聞き取りやすいと感じたのはアフレコをし直したのかな、それともダビングをやり直したのかな。演技も攻殻のベテラン勢にしっかり絡まってた。カッコ良いよ曽世海児さん。モーションアクターも務めているから画面の中で歩く姿も佇む姿勢も曽世さんてことになる。舞台上での活動をちょっと見られてないだけに、スクリーン越しでスキンを経ながらであってもそのお姿に触れられるのはちょっと嬉しいかも。

 RDシリーズのDVD/HDDレコーダーを最後にそういえば東芝の製品から遠ざかっていたけれど、気がついたらそんな東芝が“解体”の憂き目に会うとかで時代というものの無常さを強く感じる。石坂泰三とか土光敏夫といった経団連の会長まで輩出した名門企業で1990年代もDVDの規格化でソニー・フィリップス連合に挑んで勝利した立役者の西室泰三も送り出したものの2010年代に入って急激に業績が悪化。原発へののめり込みが2011年3月11日の東日本大震災によって裏目に出たこともあって、同じ充電の日立製作所に大きく水をあけられてしまった。

 ダイナブックでファンも多かったパソコン事業はシャープに売られ、オーレックスのブランドもオンキヨーが傘下に入って使われなくなり、そのオンキヨーも切り離されて個人の持ち物となった模様。松任谷由実や椎名林檎や宇多田ヒカルを送り出した東芝EMIも今はユニバーサルミュージックに売られてしまって東芝との接点もどんどんと細っているから今となってはあまり感慨もないけれど、「サザエさん」を提供し続け東芝日曜劇場で数々の名作ドラマを送り出して来たブランドが、衰えるのを見るのはやはり寂しいものがある。

 今後は3社ほどに分割されるみたいだけれど、いったいどういう社名になるのだろう。さっそくやっぱりいろいろと言われているのは例のCMからとったものが大半。たとえば発電設備や交通システム、エレベーターなどを担うインフラサービス会社は「走る東芝」、ウェスタンデジタル買収によって強化されたハードディスクドライブ(HDD)などの電子部品を担うデバイス会社は「回る東芝」、そして約4割を出資する半導体大手キオクシアホールディングスなどの株式を管理する東芝本体は「光る東芝」といった具合。「歌う東芝」はEMIなき今、存在しないということでやっぱりどこか欠けた再出発になる感じ。せめてもの手向けにREGZAを買ってあげようかなあ。そろそろやっぱりテレビが欲しいし。


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