縮刷版2020年9月中旬号


【9月20日】 9月27日には50歳を迎える羽生善治九段が竜王戦の挑戦者決定戦で丸山忠久九段を相手に1敗からの2連勝を飾って見事に挑戦者となり、豊島将之竜王を相手に戦うことになた。勝てば100期目のタイトルとなって「りゅうおうのおしごと!」の中でおそらくは羽生九段をモデルとしている名人に追いつくんだろうかどうなんだろうか。小説では九頭竜八一の持つ竜王位を奪取すれば100期だったけれど敗れて国民栄誉賞の授与もその対局では吹き飛んだ。その後に100期目を獲得して国民栄誉賞をもらったか覚えてないけど、構図としては「りゅうおうのおしごと!」にピタリと重なってしまう。何だかんだいったって、やっぱり現実を先取りしてきた小説。同時に現実に追いつかれ追い越されようとしているとも。果たして羽生九段は勝てるのか。注目の対局になるなあ。

 将棋といえば三段リーグで戦っている西山朋佳三段が6連敗を喫して7勝9敗となり今期の昇格はもう絶対に無理なところに来ただけでなく、負け越しの可能性も出てしまってちょっと心配。まあ前に次点を取っているから次期に立て直して次点をとればフリークラスでもプロ四段になれるんだけれど、このところの負け方がちょっと著しいだけに何か不調の要因でもあるのかと心配になってしまう。周囲が負けるものかといった気持ちを強く持ち、プレッシャーをかけてくる中で戦うのは小説の中の空銀子ですら吐きそうになったんだから、現実の世界でリアルに生きている人間ならさらに激しいプレッシャーを受けても当然だろう。そこを乗りこえるには周囲にやっぱり女性の将棋指しがいっぱい増えて、大勢で競い合うようにならないと。そこへと至るまでにあとどれだけかかるんだろう。中井広恵さん清水市代さん林葉直子さんの3人が活躍を始めてもう35年は経つのになあ。壁は分厚く天上は堅い。

 女性の活躍といえば日本SF作家クラブの会長に決まった池澤春菜さんだけれど、日本SF大賞では賞状に会長の名前が入ることから今度の日本SF大賞では、池澤さんのサイン入り賞状が授与されるってことになる。何だろうこのワクワク感。あるいは印刷でもって名前も含めて刷られるのかもしれないけれど、今回ばかりは池澤会長が手ずからすべてを書いて最後に流麗なサインを入れてくれればもらった方も末代まで額に入れて飾って家宝とするんじゃなかろーか。でもって次の日本SF大賞を狙いに大勢の人が優れたSFを書いて池澤さんのサインをもらおうと競い合い、結果としてSFの豊穣に見舞われるかもしれない。任期があるからその次は次の会長になってしまうだろうから狙っていけるのはこれからの1年。さあ頑張れ作家たち。あるいは池澤さんのファンたち。ネットで凄いSFを書いて即出版からの日本SF大賞獲得だ。

 去年の受賞者発表会は誘われたのに、広報事務局が変わった途端に同じ年の内覧会の案内が来なくなった文化庁メディア芸術祭。精神がどん底だた去年は足を運べず消えたタンポポの綿毛事件も目の当たりに出来なかったけれど、今年はやっぱり内覧会の案内なんか来ない中、アニメーション部門の大賞を受賞した「海獣の子供」の上映があるってことで、久々にスクリーンで見られる機会と予約したついでに、展示の方も日時指定のチケットをとって日本科学未来館へと見物に行く。ちょっと前にしたインタビューがあまり言い手応えではなく、テープ起こしをするのが怖くて心に引きずるものがあって、起き上がれなかったけれど残る2日で何とかすると決めて少し、気を持ち直せたのも良かったか。
 キリストの聖体に関連したインスタレーションめいたメディアアートの何というか宗教を暴く的なアプローチが面白そうではあったけれど、細かく何がどう動いているか分からなかったのでちょっと研究したい。あとネオ工芸とかいう造形物はCADだか何かを使って新素材を工芸的に作るアプローチだったのかな。出来たものが美しかったけれど人間の手でそうしたフォルムを生み出すべきか、コンピュータの計算ですべて造形されるべきかといった問題意識がそこにあるのか、図りづらかったのでこちらも研究していきたい。紙袋を大量にふくらませるメディアアートは何だったんだろう。生命感があって面白かった。

 アニメーションでは「海獣の子供」の渡辺歩監督による絵コンテや小西賢一さんによるレイアウト、秦さんという作画監督の人の修正なんかが展示してあって、ああやっぱり手で描いた映画なんだと分かった。上の会場でスクリーンで見た時もキャラクターにそうした手描きの凄さを改めて感じて、5年もかかった理由にうなずけた。いやそkはCGでクジラなんかを造形するのにかけた時間も多分に入っているんだろうけれど。そうした技術の粋とも言える傑作映画が、文化庁メディア芸術祭のアニメーション部門で大賞となったことは素晴らしいけれど、世にどこまで知られているかというと未だに難しいところがある。優秀賞の「天気の子」はあれだけ売れたのに。賞が持つ栄誉以上の商業的なバックアップという効果を、ストレートに繁栄させる手段はないものか。啓蒙の筆と自発の思考なんだろうなあ。そこへと繋げる作品がもっといっぱい出てくれば。

 マンガ部門は島田虎之助さんの「ロボ・サピエンス前史」が受賞していて、原稿が飾られていて墨ベタの塗りのムラなんかに手の味を感じた。他の作家さんだとデジタルで描かれているものもあって、野田彩子さんの「ダブル」だったかは手で描いた部分と、取り込んでデジタルで仕上げした完成原稿が並べられていてそこまで変えていけるのかとデジタルの力を感じると同時に、そこまでを手で描き通すことができないのか、やれるけどやらないのかが気になった。エフェクト的なもの、トーン的なものならデジタルでも言いけれど、もっと細かい部分までデジタル上で描き足されていたからなあ。それもタブレット上で手描きしていると言えば言えるのか。技術の力量を把握するのが難しい時代になって来た。

 アニメーション部門でそういえば優秀賞の「GON」で人形が飾ってあって、アップリンク吉祥寺で見た時よりは少なかったし、撮影状況まで再現されていた吉祥寺に負けていた感じもあったけれど、絵コンテや設定は逆に見やすかったからどういう風に作られているかを知るには良い展示だったかも。エンタ−テインメント部門ではスポーツしている時の影にだけ注目してそれを正対の位置に映し出して並べた映像が受賞。選手ではなく影をまっすぐに真正面に映し出すためにどういうカメラをどう配置したかが気になった。斜めからクレーンで追いかけたのか真上からドローンで撮ったのか。カメラやドローンの影まで入り込んでいたら興ざめだけれど、それはなかったし。アイデア的には背番号もユニフォームも人種も性別すらも曖昧となったシルエットが競い合う景色から、差別や区別のない純粋な競技としての価値が感じ取れた。アイデア勝負。問題はオリンピック向けに作られた映像が宙ぶらりんになって世界が見ていないことか。来年も作るのかな。別のアイデアをのっけてくるのかな。


【9月19日】 越谷オサムさんの「いとみち」が映画化されることになって、主演は決まっていたけど共演が誰か気になっていたら続々と発表。相馬いとが務めることになる青森のメイド喫茶のオーナーは、小坂大魔王さんが演じることになって心根は悪くないけど胡散臭いところがあるオーナーを演じるのにピッタリな配役で、そんな人が青森出身者にいたことに天の配剤を感じる。とはいえプロデューサー的な小坂さんよりはプロデュースしているピコ太郎の方がビジュアル的にピッタリ。そんな風体で出てくれるのか違うのか。映画の公開が待ち遠しい。

 店長役は中島歩さんという役者で「花子とアン」で仲間由紀恵さんが駆け落ちする相手として登場した人だから生真面目な役にピッタリ。シングルマザーの先輩メイドは黒川芽以さんで33歳だから年齢的にジャスト。その年でメイド服を着て似合ったりしたら店長でなくても惚れてしまいそう。もうひとりの先輩メイドで漫画家志望の智美役は22歳の横田真悠さんが演じるようでこちらもピッタリそう。残る興味はやっぱりいとのばあちゃんになるけれど、三味線を弾けて濃い津軽弁を話せる女優さん……いるのかなあ、それとも地元の一般人を起用する? そこも興味。続報を待とう。

 先だっての菅義偉総理大臣の組閣で、新大臣の登庁と会見が深夜に及んだことに関して、朝日新聞が夜中まで官僚を働かせてといった記事を書いていた。いやあ、何というか自家撞着というか、そんな朝日新聞も含む官邸記者クラブの要望から官邸で順繰りに会見してもらったあと、やっぱり朝日新聞も所属する各省庁のクラブの要請もあって、各省庁に戻って会見してもらっている訳で、それを明日に回して良いよと朝日新聞も含むメディアが言えば夜、中まで職員が残る必要もなくなる。とはいえ、省庁の会見は官邸の会見に出られない専門紙の記者にとっても重要な最初のコメントを取る場で、なくなったら困るところも出たりする。

 だから官邸の順繰り会見なんてなくし、そして省庁での会見も一般紙、テレビ、専門紙といった感じに別れていることもあったりする記者クラブごとの会見をやらないようにして、早い時間に済ませれば良いだけのこと。それを朝日新聞がまずは言ってから、聞き入れられず仕方なく真夜中まで会見をやらせてしまってすいませんと言うならまだしも、省庁が自分たちの趣味で真夜中まで働いていて、それを自民党の新大臣がやらせているようなニュアンスで記事を書くのは違うだろう。それを世間の人は知らないから、新聞の言うがままに政治家を疑うかというと、そうじゃないってことを知り始めている。

 かくして新聞への信頼は下がり部数もどんどんと下がるばかり。8月のABC部数で朝日新聞の発行部数が500万部を割ったとのこと。ピークから300万部は減っていて、それこそ毎日新聞だとかが消滅するくらい減っているのだから新聞業界が苦しいのも当然か。そんな毎日新聞の半分しかない自称するところの全国紙が、生き延びているだけでも奇蹟に近いかもしれないなあ。まあ給料は半分以下で賞与は1カ月分も出ないんだから、部数が下がってもとりあえず持ちこたえられているだけなのかもしれないけれど。地方も支局を減らして契約社員を通信員的な人に置き換えているからなあ。責任ある報道が出来るのか。よりいっそうの信頼低下を招きかねないなあ。

 日本SF作家クラブの総会があって新しい理事が専任され、そして新理事の中から会長(代表理事)の立候補が受け付けられて声優であり書評の分野でも活躍している池澤春菜さんがひとり、立候補をして投票によって選任された。以前の任意団体だった日本SF作家クラブの時代を含めて20代目の会長。25代目の事務局長は榎木洋子さんが就任。会長と事務局長が共に女性というのは任意団体、一般社団法人の時代も含めて初という。文芸系の団体はいろいろあるけど、その中でも初かもしれない。どうなんだろう。

 世間では声優の池澤さんがと思うだろうけど、SFの紹介で活躍していることが周知されたことで、SF作家クラブの会員であっても理事になっても不思議がられない状況にはなっている。だから会長もとは思うけれど、知らない人はいろいろと言うかも知れない。けれど、声優であり父親は池澤夏樹さんだから、文芸の世界にSF作家に負けず伝手を持っているだろうし、芸能だとかエンターテインメントの世界にもいろいろとネットワークを持っていそう。何より実行力があって英語も話せればスペイン語だって大丈夫そう。

 料理も得意でキャンプもしていて今は自動車運転免許もとっている。そうした前向きさが発揮されればきっと今まで以上に日本SF作家クラブを開けたところにしてくれて、新しい場所へと連れて行ってくれるんじゃないのかな。前々会長の藤井太洋さんも理事で残っているし、林譲治前会長も監事で残った。サポートを得ながら懸案の事項を推進しつつ、新しいことを始めてくれると信じて活動を支えていきたい。。


【9月18日】 全米オープンテニスで優勝した大坂なおみ選手だけれど、グランドスラム大会の全仏オープンは休場することを発表した。連続してのy勝利を期待もしたけれど、どうやらハムストリングスを痛めていたらしく、それが治ってクレーコートに適応するには時間がなさ過ぎるということらしい。英語での挨拶文にはそうしたハムストリングスの状況も書いてあったけど、日本語訳では抜けていてクレーコートになれてないから休場したともとれそうな感じだった。本人が頑張って書いているのか翻訳者がいるのか分からないけれど、そうしたすりあわせはした方がいいんじゃないかな。前の栄誉ある欠場の発表に対するどこかのスポーツ新聞の編集委員みたいに、また誰かが難癖付けるかもしれないし。

 厚生労働省の副大臣に三原じゅん子参議院議員が就任したとのこと。「3年B組金八先生」あたりから小生意気な女子生徒を演じたり活発なチアリーダーを演じたりシンガーをやったりレーサーもやったりと芸能活動で目立った人だったけれど、2010年に何を思ったかどういう引き合いがあったか参議院議員選挙に出ては当選を果たして政治家に。自身の癌経験もあって医療や介護の問題に関心があったようだけれど、そこから一気に国政に出て当選を果たしたというのはなかなかに凄い。タイミングもあったし知名度もあったんだろう。とはいえその後、どこかライティな言動が目立ち、安倍晋三総理大臣を崇めるような雰囲気も醸し出してて愛国議員なのかって印象を振りまいてしまった。

 今回の抜擢もだからそうした言動の論功行賞的なものかと言われそうだけれど、それだったら安倍政権の中で就任していたっておかしくない。今、改めてこうして副大臣に任命されたのは子宮頸がんを患った経験からワクチンについて情緒的ではないリアリスティックな考えから推進を啓蒙していたり、児童虐待の問題に取り組んだりしてきたことが認められての抜擢と見るのが良いんだろう。もう誰かにライティな言動で目をかけてもらわなくても良いんだと思ってくれたら良いんだけれど、八紘一宇だとかいった思想が心底からだとするとそれはそれでちょっと厄介。介護や医療から横滑りして家族や血統へと話が進むととたんにきな臭くなるから。そこは稲田朋美議員と語らいバランスをとってウイングを広げていって下さいな。

 仕事先で健康診断があって体重がどえりゃあ増えているかと不安になったら意外と増えてなくってむしろ減っていた。一方で見たところの体はぶよぶよ度が増し腹囲も大きく増えている。つまりは体に脂肪がついて筋肉がそげ落ちて軽くなったけど大きくなっただけ。新型コロナウイルス感染症からこっち、出歩かなくなっていたのとそしてやっぱり常勤ではないから取材に出歩かなくなったことが運動不足につながって、体を変えてしまったと言えそう。ここで筋肉を付ければ体重は増えるけれど体は絞れるならやっぱり朝早く起きて散歩でもしたいところだけれど、それができるならとっくにやっている訳で心の倦怠感はまだ抜けない。仕方ないから頑張って、少しずつでも快復へと向かって這っていこう。自転車でもあれば乗り回すんだがなあ。壊れて乗れないんだよなあ。買い直すか。

 せっかくだからと初日となった「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を丸の内ピカデリーの最前列で。スクリーンの距離が近すぎて、「アズールレーン」のCM映像で女装した西川貴教さんのスカート姿を増したから拝む形となって有り難いのか違うのか、分からない感想を抱いたけれどもそれはそれとして本編は、始まったばかりでまだ何も語れないものの素晴らしい映画であることだけは断言できる。とくにヴァイオレットのあの両腕の義手がロケットパンチとなって放たれ飛んで行ったところとか、社長のホッジンズが語尾を伸ばして喋るようになって「ヴァーイオレットちゃーあん」とか言い始めてどこのロズワールかよと思ったところとか、素晴らしかったなあ。嘘ですそんなことはありません。電話が発達して言葉を伝える良さは確かにあっても手紙が伝える心の重さもあるんだと教えてくれる、そんな映画だった。こちらは本当。また行こう。


【9月17日】 書籍への総額表示義務づけに関して作家の人たちを中心に、総額表示義務化への反対を表明する運動が始まっているけれど、一方の当事者ともいえる出版社で作る日本書籍出版協会の方はすでに陳情とか働きかけを終えて、もはや財務省が今から2021年3月31日までの猶予期間を延ばしてくれたり、総額表示の義務づけそのものを撤廃してくれることはないという手応えから、出版社の方で粛々と対応していきましょうといったスタンスみたい。

 書協のサイトには「当協会としては、関係省庁に対して総額表示の義務の免除措置の延長を要請してまいりましたが、延長は行われない予定です」と書いて議論の段階は終わり、あとはガイドラインに沿って対応してねといった書かれ方がされている。出版社の方でこれに困っているかどうかとなると、書協に加盟している出版社はだいたいがその筋で進むことに合意しているような雰囲気もあるけれど、中小ではやっぱりまだそこまでの対応がしきれておらず、混乱なんかもあった感じでそれが今のガヤガヤにつながっているのかもしれない。

 作家の方はさらに説明が不足している感じで、総額表示をしなくちゃいけなくなった結果、カバーがつけかえられない本がこぞって絶版となって書店から消えてしまった過去を噛みしめ、また同じことが起こるんじゃないかといった不安から反対を発信している。中には書協の対応を見て、義務とはいっても罰則はないからそこは曖昧模糊として、当面をしのげば良いみたいと理解し積極的には声はあげない人もいて斑模様。とはいえ急な厳格化もあり得るだけに、不安要因は廃しておきたいのも心情だろう。流通業界の税制に関する要望の中でもトップに総額表示の義務づけ廃止があったりするから、問題は出版業界に留まらない。新型コロナウイルス騒動で停滞する消費をさらに冷え込ませる可能性もあるといった経済界からの働きかけで、変わる可能性があるのか。それでもやっぱり年内には指針を出して欲しいところだろう。山は動くか。

 高品質のBDプレイヤーとして買う価値はどうやらありそうだけれど、そうしたBDを映し出すモニターを持っていない以上は宝の持ち腐れとなる可能性が大。そしてゲームに関してはもうさっぱりコンソールでは遊ばなくなっているので、発売が決まったプレイステーション5については現行のプレイステーション4に引き続いて、購入を見送ることになるんだろう。そもそも買うようなお金の余裕もないし。BDプレイヤーならプレイステーション3で充分だし。というかアーキテクチャとして初代からプレイステーション2からソフトが上位互換されている初期ロット。貴重なプレイヤーとして末永く使い続けることになるんだろう。

 気がついたのはプレイステーション4もプレイステーション5もMPUとかGPUがAMDのチップになってて、あれだけこだわって自社のチップを作ろうとしていたソニー・インタラクティブエンタテインメントというか以前のソニー・コンピュータエンタテインメントからはスタンスが大きく変わってしまった印象。その頃はチップを大量に裁けるコンシューマ向けのゲーム機で立ち上げ世界に売りつつそれを元にテレビだとかいろいろな情報家電に展開していくってルートもあったりしたけれど、費用がかかり過ぎるしサイクルも短いし、何よりグラフィックだったらそっちに特化したGPUがいくらでも出てくる世の中で、勝負したってかないっこないと考えているんだろう。

 だったらアセンブルでもってゲーム機を組み立てつつ、そこで勝負できるタイトルを送り込む。アップルほど一気通貫は考えてはいなさそうだけれどゲームの世界ではプレイステーションというファミリーの中で抱え込んで行こうとしているのかな、それにしてはプラットフォームがプレイステーション5だけっていうのは弾が足りない。むしろバックエンドにタイトルを溜めるなりしてディストリビューションするチャネルを作り、そのひとつの出口としてプレイステーション5を使いつつ他のプラットフォームにも送り込んでいけるような体制を整えるのかな。ビジネス取材から遠のいてそうしたビジョンを知る機会もないだけに、気になるところ。これから出てくるだろう報道を注意して見ていこう。

 満席上等になったはずの映画館がまた、座席の販売を半分の50%に戻す動きがあちらこちらで出始めている感じ。満席にできるぞと喜んだのも束の間、100%を入れると飲食が禁止になるという通達が政府から届いたようで、それ早く言ってよと思っただろうけれども通達なら従わざるを得ないため、すでに50%以上は売れてしまったものは飲食禁止を条件にして見てもらいつつ、ほかはまだ暑い日も続くことだし50%に絞るという決断をしたみたい。飲食なんてしてもらわなくてもと言うファンもいそうだけれど、映画館では上映したって入るお金は限られているから、それを物販とか飲食販売で取り戻す。それが禁止されてしまって経る勘定、受けるお客さんの迷惑と入れてしまって入る収益を見て50%で行こうってなったのかも。メジャーなシネコンもそうするかどうか。様子見。とりあえず「劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデン」を観に行かなくちゃいけないんで。


【9月16日】 往年のS30型系フェアレディZを思わせる新型が登場するといった話に期待していたら、現れた7代目フェアレディZのプロトタイプは似せようとはしていても決定的に違った感じがあってS130型系ほどにも近づけていなくてちょっとガッカリ。これなら1代前というか現行車のZ34型系の方がロングノーズでショートデッキのフェアレディZっぽさを持っていたし、その前のZ33型系のころから近づこうという意図はちゃんと見せていた。それこそ運転席に座って後輪が触れるくらいのショートデッキっぷりがフェアレディZの初代ならではの面白み。コンパクトさも含めて再現しようとしていたけれど、7代目はそこから余り進化していないように感じられた。

 なるほどフロントグリルを四角く開けたのはGノーズを付けていないS30型系っぽさがあってZ432なんかも思い浮かばせてくれるし、丸目に近づけようとしたヘッドランプもS30型系とそれを引き継いだS130型系を思わせないこともない。でもそうしたヘッドグリルを持っていてもなおスリムさがあったのだ初代と2代目の雰囲気。今の下までぐるりとスカートが回っているような感じは、空力を考えたものだとはいってもフェアレディZの華麗さを削いで鈍重な感じを与えている。そういうのはスカイラインクーペにこそ相応しいんだよ、ってもうない車種だけど。

 AE86のカローラレビンやスプリンタートレノのスタイリッシュさを今に甦らそうとしたトヨタの86の方が、意識として軽快さを保ったライトウェイトのスポーツカーといった感じだったし、スタイルだけならよりフェアレディZに近かった。そうした意識をまるでひっくり返したように鈍重さを醸し出しつつパーツを似せてもフェアレディZの淑女っぽさは甦らない。それでも復活を歌い原点回帰を叫びたいなら直列6気筒を持って来て搭載しろ。話はそれからだ。今時性能的にも燃費的にもない選択だろうけれど、それを乗せてこそ生まれるロングノーズこそがフェアレディZのスタイルを形作るのだから。頑張れ日産。潰れる前に。

 予定調和のように菅義偉内閣総理大臣が誕生して、国民の直接とは言えないまでも間接的な意思なんてまるで届かないような政権が思惑によって作られては身内の論理でもって内閣が編まれて安倍晋三前総理が去った後もなお残る国難にあたる。大丈夫かというのは全体にまず抱く感想だし、個別に見ても適材適所なのかといった疑問を差し挟む余地はありそう。頭はとても良さそうな平沢勝栄議員が復興担当大臣で初入閣したのは遅すぎるという気もする一方で、安倍総理の家庭教師だったという立場から避けられていたのかなあという邪推もできて、そういう意味でここで起用して解散からの改造まで持たせるだけかとも思ってしまう。

 デジタル担当大臣の平井卓也議員は以前にIT担当もしていたしクールジャパンだとか宇宙政策なんかも担当して科学と技術には明るそうな印象だし、2000年に初当選した時からITによる政治や行政の効率化に取り組みセキュリティの重大さも訴え続けて来たから、ある意味では適任と言えそう。一方でご実家の四国新聞が香川県の県議会がすったもんだの果てに通した、ゲームやスマホなんかの利用時間を制限するような条例の成立に、記事でもって先触れを続け応援もし続けた経緯があるだけに、どこまでデジタルの可能性と役割について認識しているか見えないところもある。

 ITについて詳しいからこそ利用しすぎでハマり過ぎの功罪も含め認識しているからこその子供たちに対する利用制限だ、なんて言えなくもないけれどその成立過程における不透明さを国政に引っ張ってこられ、業界に都合が良くてユーザーに優しくない規制なんかを作られたらちょっと困ってしまう。しばらくは打ち出す政策を様子見か。そしていつまでその立場でいられるかも。防衛省として頑張っていた河野太郎議員はどこかが書いた総務大臣ではなく行政改革担当大臣に。そちらでもいろいろ頑張ってはくれそうだけれど、外務だとか経済産業だとか財務といったメインからは外されている感じがあるなあ。法務大臣を任されないだけまだ良いか、死刑を認可するのはやっぱりね、いろいろとね。

 数年前から食品業界なんかが遠からず来る消費税の総額表示義務化が売れ行きに及ぼす影響なんかを考え、反対しつつ総額表示そのものを廃止するよう求めていたし、最近も流通業界の団体がそろってスーパーの店頭なんかでの総額表示がもたらす割高感が消費に悪影響を与えるからといった理由なんかで、やっぱり揃って反対を表明していた。政治力を持ったそうした業界が訴えてもなお財務省がぴくりとも動いていなかった上に、メディアの反応も鈍かっただけに、業界規模としてさらに小さい出版業界が、インボイスの勉強会で財務省の主税局課長補佐から来年3月末での総額表示義務の猶予期限が切れることから、総額表示を求めていくよう話したというニュースに、逆らってひっくり返せるのかといった疑問が今は浮かぶ。

 ただ、メディア事業にも関わる問題でオピニオンの発信力に長けた著者たちがこぞって総額表示の義務化に対する危機感を表明し、反対を訴え始めたこともあって新聞なんかもちょっと騒がしいんじゃないかと気付いて記事にし始めた。問題点は言うまでもなくカバーの掛け替えなんかがコスト的に難しいからと引き上げ絶版から断裁してしまい、本が消えてしまうことで、過去に消費税が上がった時にそうした事態が起こって著者も出版社も大いに苦しんだ。同じことがまた起こりかねないという恐怖から絶対反対を訴えているし、総額表示でなければ子供が迷ったりするなんてことは消費税が導入されて30年以上も経って起こるはずもない。

 だから価格プラス税で良いじゃないかという理屈になるんだけれど、それだと税金を枚回負担しているという感じを抱かせ、税への嫌悪感を生むという財務省の理屈があるらしいだけに、撤回されるかは微妙なところ。だからこその政治なんだけれど、変わったばかりですぐに動き出せずこれで選挙でもあれば空白は続く。そして期限が迫って慌てたところでどうしようもないまま撤去・断裁の道をたどるなんて事態、絶対に避けたいので今すぐ国会を開いて議論をして廃止に動いてよ国会議員の皆々様。


【9月15日】 「南鳥島北北西の風、風力3、晴、1012ミリバール、23度」とかそんなのがラジオから延々と流れてくるのを書き込んでいくんだっけ。「『ラジオ天気図』と呼ばれる天気図を書くための用紙」に。そんなものまでを扱っている気象庁の中の名物書店、津村書店が65年の営業年月をもっていよいよ閉店。ずいぶんと前、それこそレッドパージに遡る互助的な関係から本屋が始まって、半ば既得権益的に気象庁の中に存在はしていたんだろうけれど、そうした期待に応えるべく気象に関する本を徹底的に集め販売するこだわりで文句も出ない存在になっていた。

 気象関係の本ならないものはないと言われるくらいの書店らしく、庁内でも霞が関でも重宝されていただろうし、研究者たちだってここに行けば買えるとあって利用していたのかもしれないけれど、霞が関における省庁の移転にともないいっしょに行くことなく閉店を決めたという。新しい建物での家賃とか条件とかできっと仕切り直しもあるだろうし、前なら許された既得権益も公平性から認められないとなったのかもしれない。本そのものが売れなくなっているから営業的に苦しかったのかもしれない。本当だったら気象庁が公的な位置づけでこうした機能を受け継ぎはぐくむべきだって気がするけれど。またひとつ、文化が失われていく。

 映画館で両隣に人がいて、後ろまでぎっしりと埋まっている感じがどうだったかを忘れて久しいから、復活した全座席販売によるシアター内に人がぎっしりといる状況で映画を見る感じというのが、自分にとってどうなのかをちょっと想像しきれない。というか、元々あまり満席になるような映画には行ってなかったし、いく映画館も郊外で満席からは縁遠いこともあったから、ぎゅうぎゅう詰めで映画を見る空気感を思い出せずにいた。

 あ、人気アニメの封切日あたりで行われる舞台挨拶付き上映で、満席というのは経験しているからあんな感じ、皆がわくわくとして上映を待ち、見終わって喜びをあふれさせる空気感じが、戻ってくるならそれは映画にとって、そして映画館にとっては良いことなのかもしれない。今まだ新型コロナウイルス感染症の流行が止まっておらず、これから冬に向かって拡大も心配される中での再会は、不安もはらんでいて状況によってはまた元に戻ることもあるかもしれない。いずれにしても両隣に人がおらずひじ掛けをひとりじめできる環境は、王様気分でなかなか快適ではあった。残り少ない生涯でもひとつの時代の雰囲気として心に残していこう。

 間隔をあけての鑑賞は快適な一方で観客数が半分になるだけに、チケット争奪戦では不利がさらにふくらむ状況だったけれど、グランドシネマサンシャインが満席解禁に踏み切ったことで新宿バルト9あたりが追従っすれば、この「REDLINE」の10周年記念イベント上映も最大規模のシアター9いっぱいに人を入れられるようになり、争奪戦も少しは緩和されてくれるのでは。

 映画画館で見るべきアニメ映画と言い続けてもう10年。上映時の後も確か秋葉原のUDXシアターで上映があった時に見に行って、ソノシー・マクラーレンの「イエス!」に合わせて心で「イエス!」と叫んだっけ。今回はその時よりも大きなスクリーンで、きっと音量も爆音でもって上映してくれるだろうから、過去にない体験ができるような気がしている。これで木村拓哉さんが舞台あいさつに登壇してくれれば世界的なニュースになるんだけれど。「ハウルの動く城」でも声優は務めているけど「REDLINE」のJP役は雰囲気も含めて木村拓哉さんの吹き替えのベストだと思うのだ。上映日はいつか。チケット販売はいつからか。油断をしないで情報を見守ろう。

 覚えているのはやっぱり「西遊記」の沙悟浄役からってことになるのかなあ、それ以前にも何かで見知っていたから、沙悟浄なんて演じるんだと堺正章さんの孫悟空とか西田敏行さんの猪八戒、そして夏目雅子さんが演じた三蔵法師ともども面白い役者をそろえたドラマだと、中学生ながら感じた訳だけれども遠く以前のザ・タイガースの頃については、堺さんのザ・スパイダース時代も含めて後から知った口になる。タイガースについては1981年からの再結成で「十年ロマンス」「色つきの女でいてくれよ」でテレビとかに出ていたのを見て、改めてそうだったんだと理解した感じか。岸部シローさん。

 そのあとは「ルックルックこんにちわ」の司会を長く勤められていたから目には入っていたけれど、借金騒動で1990年代末ごろに表舞台から離れてちょっぴり、イロモノな感じでバラエティに出ているのをながめていた程度。大病をわずらって相当に衰えた表情を見るにつけ、寂しさも感じていたけれど、一方で兄の岸部一徳さんが俳優として活躍を始めていてバイプレーヤーとしての存在感を高めていて、世評というのはがらりと変わるものだということを実感した次第。一徳さんがすさまじいベーシストだというのもこの頃から改めて感じるようになったんだっけ。

 「西遊記」が海外で人気だそうでもしかしたら岸部一徳さんの存在も、そうやって世界に知られていたかもしれない。検索すると「西遊記」の沙悟浄姿の画像をあげて英語なんかで追悼している人もいるし。そうやって世界に残る仕事があるのはやっぱりうらやましい。ご本人には後悔もあるだろうしご家族ご親族にも悲しいことではあるけれど、何かを残して逝かれたことを喜びとしつつ改めて追悼の言葉を贈りたい。楽しませてくれてありがとうございました。西方浄土へ。


【9月14日】 打首獄門同好会による新曲「サクガサク」のPVが公開されてアニメーション業界で働くクリエイターの大変さを描きつつ応援するような内容に、アニメーション業界がやんやの喝采を贈っているかというと反応はまだまだ少ない感じ。忙しい最中にあんまり知らない打首獄門同好会について関心を向けている時間もないのかもしれないけれど、逆にロック方面ではアニメ好きの人たちから反応がある感じで、そうした橋渡しをしつつアニメ業界への応援が向かうようになれば、狙いは果たされたんじゃなかろうか。

 見ていろいろな時代のいろいろなアニメを元ネタにしたオリジナルのキャラがいっぱい出て来て、懐かしくもあり目新しくもあって面白い。美樹木本晴彦さん的なタッチの美少女が出て来たりプリキュア的だったりラブライブ的だったりキャプテン翼的だったりと実印多彩。中には後藤隆行さんが「ドテラマン」でデザインしたサイコーユ鬼によくにた丸い顔の美少女が歌っていたりして、かつてプロダクションIGで仕事をしていた浅野恭司さんが監督しているだけのことはある。

 登場するアニメスタジオも国分寺にあった頃のIGと今の三鷹にあるIGとそして近くにあるウィットスタジオあたり。ボンズやコミックス・ウェーブ・フィルムも出ては来るけどIG系が多いのは許可も取りやすかったから、なのかな。あと途中に挟まれるイラストには「アニメタ」の花村ヤソさんが描いたものもあった。元々がアニメーターだった花村さんだから浅野さんとも知り合いで話が回ってきたのかも。新型コロナウイルス感染症の拡大防止のために今もリモートワークが続いている人もいる中で、孤独な作業を続けるアニメーターが聞けば勇気も出るだろう楽曲。このタイミングで投入した意味もそこにあるんだろう。届け。そして広がれ。盛り上がれば紅白歌合戦に登場も……それは遠いか。

 記憶にあるのは「仮面ライダー響鬼」の姫ではなく、万城目学さんの小説が原作の映画「鴨川ホルモー」の早良京子役といったところで、美人だけれどもツンケンとした役どころにぴったりの人だったなあという印象が残っている。メインヒロインは栗山千明さんだったから、それに比べてば印象も薄くて仕方がないか。そんな蘆名星さんが死去。ドラマでずっと活躍していて、最近でもいくつかドラマに出たり映画にも出たりしていたから仕事がかつかつだったってことではなさそう。舞台女優じゃないから新型コロナウイルスの騒動があっても、急に困ったといった感じではないから別になにか思いつめることがあったのかもしれない。掘り返されるんだろうけれど、今は静かに。

 おおお。ゆうきまさみさんの画業40周年を記念する展覧会が東京ドームシティにあるギャラリーアーモで開催とか。萩尾望都さんや竹宮恵子さんといった漫画家の画業を振り返る展覧会なら数々あったし、手塚治虫さんとか石ノ森章太郎さんとか藤子・F・不二雄さんなら個別にミュージアムが作られ、作品が展示されていたりするけれど、ゆうきまさみさんという人気はあっても時代において超絶的なバリューを放っているとはあまり言えない漫画家さんの個展が開かれるというのは、ある意味で画期的かもしれない。

 個人的にはデビュー近いところからファンをやっていた身ではあっても、そうした特殊なファンだけではない一般層にどれくらい認知度があるのかを、確かめるチャンスかもしれない。ファンにとっては画業の40年がぎゅっと凝縮された展覧会になっていそうで、そのワールドにどっぷりと浸れる空間が期待できる。クラウドファンディングをするらいし、春風高校光画部の部室と等身大R・田中一郎の再現プロジェクトは、夢の空間を現実に楽しめるものとして35年来の夢がかなう場と言える。

 初の画集というのも出るそうだけれど、つまりこれまで画集が出ていなかったということで、意外過ぎてちょっと驚いた。漫画を描いた「機動警察パトレイバー」でもキャラクターデザインを手がけた高田明美さんの画集はあってもゆうきまさみさんのはなかったからなあ。「じゃじゃ馬グルーミン」とかも含め週刊少年サンデーとか増刊少年サンデーでで連載された作品をまとめた画集があっても良かった気はするけれど、そこまでには居たらなかったのかも。

 アニメ化では「鉄腕バーディー」のテレビ放送ではすさまじい作画だったものが、あまりに前衛的すぎてパッケージでは手直しされた第何話だったかの原画とか、飾られたらうれしいけれど直接ゆうきまさみさんとは関係ないからそれはないかな。「鉄腕バーディ」については増刊での連載だったオリジナル版と、ヤングサンデーでリブートした版が並んで見られたら、長いバーディーのファンとしてこれもやっぱり嬉しい限り。会場では粉砕バットの遠投競争とかやらないかな、近くに東京ドームもあることだし。

 小学館だけじゃなくKADOKAWAが協力に入っているのは最も長く続いている連載が、月刊ニュータイプでの「ゆうきまさみのはてしない物語」だってこともあるから当然か。何しろ創刊時から続くニュータイプの歴史とともに歩んだ連載が、時々に何を書いているかはまさに歴史の生き証人。これを気に全部まとめた本を改めて出してくれたら嬉しいかな、できれば電子で。ずっと持ち歩けていつでも見られて時々を振り返られるのが楽しそうだし。

 民意なんてものはそこにはなく、政策なんてものとも無関係に、ただ自由民主党という政党の中での思惑だとか力関係とかで総裁が選出されては、政権与党ということで次の内閣総理大臣に任命されて国政を司る。そうやて選ばれた新しい総理大臣が、政策を打ち出してはそれに逆らう官僚をとばして自分たちのやりたいようにしていった国は果たしてまともなのか。選ぶ人たちが政策を吟味して選びそして選ばれた側もそうした民意に基づいて行動し、官僚たちも国民のことを考え政策を遂行するなら素晴らしい結果が訪れるけれど、そうした団結とは別の思惑を土台にした専横がまかり通る今のこの国で、未来を口にするのも空しい限り。どこへ向かっていくのやら。


【9月13日】 大坂なおみ選手が、テニスの全米オープン決勝でビクトリア・ナザレンカ選手を破って優勝。これで全米は2度目の優勝でグランドスラム大会では全豪オープンを入れて3勝目となり2勝のアザレンカ選手を上回った。グランドスラム大会で23勝したセリーナ・ウィリアムズ選手が38歳ながらも準決勝まで来ていて現時点でのトッププレイヤーであることには疑いがなく、あと1勝すればマーガレット・スミス・コート選手の24勝に並ぶだけにまだまだ活躍を見せてくるだろうけれど、大坂選手との対戦成績は2勝1敗で大坂選手が勝ってきているだけに、直接対決で倒して行くような場面が続けば名実ともに女王の座を、大坂選手が引き継ぐことになりそう。

 クリス・エバート選手からマルチナ・ナブラチロワ選手を経てシュティヒ・グラフ選手のあとビーナス・ウィリアムズ選手やモニカ・セレシュ選手がいた女王の座をしばらくセリーナ・ウィリアムズ選手が継いでは君臨していた感があるけれど、長期政権を敷ける女王がやっと登場してくれたと見るか、前に女王となってもすぐに落ちてしまったように精神面がまだ弱くて浮いたり沈んだりするのか。そこは黒人への差別問題に対して抗議をし続けながらも勝ち続けたことで、ひとつ成長してクリアしたって見方もできそう。周囲の理解も得て個人的な落ち着きも保つようになって、ひとつ抜けたその実力が次の全仏オープンで発揮されるかどうかが見極めか。とはいえクレイコートだから事情も違うかな。注目。

 今期はどうやら入れ替え戦はないとはいえ、なでしこリーグでジェフユナイテッド市原・千葉レディースは9月13日の試合でアルビレックス新潟レディースに1対3で敗れて1勝5敗3分となって10チーム中の9位まで下降。まだ半分とはいえ調子を出せていない感じでこのまま後半に突入しても、調子を上げられなければ最下位に近いところでシーズンを終えてしまう可能性がある。新しく発足すWEリーグに参画できるかできないかは、そうした順位とは直接は関係がないように言われているけれど、首都圏にチームが多いだけに間引くとなったらって考えも浮かんで心配になる。

 いつもだったらそれなりの順位につけて中盤から時には上位だって狙えるチーム力だったんだけれど、兄貴分が長引くJ2暮らしの中ですっかりそこそこなチームに落ち着いてしまった感もあって、それに引っ張ら得ているのだとしたら寂しい限り。WEリーグになればプロだって置かなくちゃいけない中で、チームに強さという魅力でも大きな部分が欠けてしまうと運営面が厳しくなる。というかもとよりなかなか無茶な条件も提示されている感じがあるけれど、それくらいクリアできなければ未来はないという現れでもあるだけに、クリアしていかなくちゃいけない。

 だったらやっぱり強さもと思った時に、それこそ永里優季選手クラスを取って来られたら良かったんだけれど、そちらはそちらで男子に交じって神奈川県リーグ2部に挑戦するという大きな使命をかかえているから、割って入る余地はなさそう。最高の練習環境とサポート環境を用意してもらえて、時にはフクダ電子アリーナという最高のピッチで試合だってできるチームが弱くていいはずがない、っていうのは男子も同様だけれど女子もここで発起して、皇后杯で優勝を狙ったようなチームに返り咲いて欲しいもの。監督かなあ、選手かなあ、運営かなあ、やっぱりKAPPAのユニフォームが拙いのかなあ、これを着始めてトップチームはほとんどJ2暮らしなんだよなあ。

 昨日まで1行も書けていなかった原稿を、覚え書きとか昔の日記とかからいろいろ掘り出し張り付けて、どうにかこうにかドラフトでもって5600字まで書いたので、今日はそろそろ終わりにして、柏に行って「パプリカ」のレイトを見ることにする。音感上映もやっていたけど時間が間に合わず、売り切れになったのでパス。「AKIRA」の音感上映も満席だったみたいで、支えるサブカル層の分厚さを感じ入る。なぜってサブカルとは「AKIRA」で「AKIRA」とはサブカルの権化と言ってしまっても過言ではないやつなのだからfrom「いのち短しサブカれ乙女。」byハセガワケイスケ。

 という訳でキネマ旬報シアターで「パプリカ」。最近も見たような気がするけれど映画館で観たのかNetflixに入っているのを見たのか頭がごっちゃになってよく覚えてないのだった。とりあえず「パプリカ」については千葉敦子というキャラクターの冷たげな言動がツボに刺さってとても痛甘いのだけれど、一方では今敏監督の声をそっくりなキャラクターとともに楽しめるという点で、ほかの今敏監督作品にはない利点があるのだった。見ている人は一方が筒井康隆さんとは気づいているようだけれど、もう一人が今敏監督だって気づいているのかなあ。

 「パプリカ」については終盤のたたみ方がやっぱりすっきりとはハマらなくって、夢が現実を脅かして市松人形が研究所を壊し始めて所長が落ちそうになった時、一人では支えられなくなった敦子の脇にパプリカが現れる場面からこれはどこから来たんだろうと考えてしまうのだった。そんなパプリカと敦子が逃げた先でロボットとなった時田が現れた際、まず敦子が時田に呑まれそして時田がパプリカを求め暴走したところに大きな敦子が現れる流れに整合性を求めようとするとちょっと迷う。

 そんな敦子がロボットに寄り添い消えたところに最後のスパイスとしてパプリカも加わり現れた赤ん坊が巨大化しながら所長を飲み込んで巨大化していく場面の、見上げるような敦子の美しさはそれとしてもどうして時田ではなく敦子があの場面に立ち上がって世界を救う役割を果たしたのか、あの場面で時田はどこにいるのかが気にしようとすると気になるのだけれど気にしなければ気にならない。つまりはそういうものなのだろうということで。

 世の中なんて不思議なことばかり。そして人間の夢も整合性なんてまるでない。昨晩も引越しの荷運びをしながら依頼主の機嫌を取ろうとぬいぐるみを見せて喜ばせた後に、引き上げる中でアカペラで「上を向いて歩こう」を歌い褒められる夢を見たばかり。全く意味がわからない。浮かんだ断片がつながるようでつながらないまま転がっていくのが夢だとするなら、そんな夢を描いてのけたのが筒井康隆の原作であり今敏監監督の映画なのだと思えばいいのだ。そして原作では言葉でしかなかったものを映像にして見事に動かしてのけたのが今敏監督の映画だったと理解して拍手喝采すればよいのだ。とりあえず今回も面白かった。次また上映があれば見に行こう。それまではNetflixにあるうちはそれを舐めつくそう。いやDVDだってBDだって持っているんだけれどね。


【9月12日】  起きたけど寝て起きたものの寝て起きたら夕方になっていた。「荒野のコトブキ飛行隊」でザラが美味しそうにビールを飲むのを見て、金曜日だということもあって久々にビールというか「金麦」を1本、開けたのだけれどそれが祟ったのかどうなのか。前もビールを飲んだら翌日がなかなかぼんやりしていたから、アルコールに対する耐性が下がっているるのかもしれない。あるいは急ぎ何かをしなくてはいけない事が無いと分かって、ビールを飲むから余計に何もしなくていいやって気になるのかも。月に何度かをそういう日があっても良いけど、そういう日ばかりだとフリーの身には拙いので、飲むのはノンアルコールに絞ってしばらくお酒は遠慮するか、それともウイスキーに戻して晩酌をして馴れるか。さてはて。

 何かのための覚え書き。「空の境界」全7章でで音楽を手がけた梶浦由記さんは、ここで聞かせてくれた深淵から響くような静かな音楽からバトルシーンにぴったりのドラマチックな音楽から、さまざまなタイプの楽曲を膨大に提供して作品世界を盛り上げたことで、なくてはならない存在になっていった印象。その流れが「Fate/Zero」以降のufotable作品における奈須きのこさんの作品、「Fate」シリーズへの楽曲提供にもつながり、やがて「鬼滅の刃」への参加にも至ったのだけろう。

 その梶浦さん、『空の境界』では合わせて200曲くらいを作曲したらしいけれど、アニメだから長さとかシーンとかに変更があったりする。そうした現場から上がってくる映像に合わせてその都度、音楽を合わせていくような作業を繰り返し行ったって前にインタビューで話していた。作り直しによって絵も変われば長さも変わる映像に、前に作っていた音楽も合わなくなるけれど、そこで変えられないと曲げず、編集して使ってと投げもしないで自分で作り直していったらしい。

 大変だただっただろうし修羅場だとも話していたけれど、ファンのために最高の映像を作ろうとする熱意が現場にあって、だったらと音楽でも答えていかなくちゃと思って頑張ったた成果があの、どの場面をとっても音楽とマッチした映像の完成度に繋がったのだと言えそう。こうして作り手達を巻き込んでファンのためにと頑張らせ、期待に答えられるものを送り出そうとするクリエイティブの魂が、全体を覆っているからこそufoableの作品は見る人の目も耳も心も捉えて放さないのだろう。「鬼滅の刃」のヒットもそうした延長にあるのだ、きっと。

 去年の今頃の台風で、大きな被害に遭った川崎市民ミュージアムだけれど、1年近くが経ってもまだ、再開ができなくて休館中というのが意外な感じ。新型コロナウイルスの影響で美術館自体の休刊が相次いだという事態はあっても、すでに再開されている展覧会も多い中で川崎市民ミュージアムはずっと閉まったままになっている。建物だけなら浸水があってもポンプで水を汲みだせば、とりあえず元通りにはなるんだろうけれど、収蔵庫が濡れて被害を受けた収蔵物や展示物を整理して修復するとなると、1年ではとても時間が足りないってことなんだろう。

 単純に貸画廊として箱だけ貸していた分けじゃなく、収蔵と研究もいっしょに結びついたミュージアムとして再開を目指すなら、そうした部分も解決される必要があるってことなのかもしれない。とはいえそうした修復の作業に見通しが立ったかというと、収蔵庫が地下のままではまた濡れる可能性があり、かといって上に上げるのも重量とかの関係で難しいとあって、同じような施設として再開させることが難しくなっている。だったら移転かというとそれも場所の問題費用の問題がかかりそう。

 ただでさえ学芸員に関していろいろあって弱体化が言われていたりもする中で、それでも頑張っていたポップカルチャー系に関する収蔵や展示を同じように展開していくための費用が果たしてすんなり出てくるのか。行政のこうした文化にかける費用がどんどんと削られている状況、というか福祉も含めて財政事情が厳しくなっている状況で移転なんて言い出せる状況にはないのかもしれない。タイミングが悪かったなあ。とはいえここが頑張らなければメディア芸術総合センター構想なんてとてもって話になるから、必要性を説いて実現に向けて動いていって欲しいもの。どうなるか。

 栗本薫さんは1990年、確か37才で乳癌が判明して手術から闘病に入りつつも作家や評論家としての活動を19年くらいつづけ、56才で亡くなってしまわれてつづくづ残念だとは思いつつ、存命された期間もそれなりにあったことからすぐどうなる病気でもないと言えば言えるのかもしれない。だとしたら同じ病気を表明された谷山浩子さんも、治療から闘病を経て復帰し20年、80才を超えるまで活動を続けて頂けると思いたいし願いたい。ご本人もやる気にはあふれ気力もあるみたい。夜まで何もないと寝てしまう自分が恥ずかしくなるようなその心意気に触れて頑張ろうと思った1日だった。明日は早起きだ、午前中には起きるのだ、って午前かよ。


【9月11日】 テニスの全米オープンで大坂なおみ選手が決勝まで勝ち上がったとか。相手はビクトリア・アザレンカ選手で元世界女王らしいけれどもそれは大阪選手も同様。現在の順位はアザレンカ選手が27位で大坂選手は9位にいるそうだからずいぶんと上ってことで、2018年に続いての全米優勝とそして2019年の全豪に続くグランドスラム3勝目ってのがあるかもしれない。世界1位になった後。コーチの問題があって成績が下がったけれども10位以内はキープしてこうして優勝戦線に戻って来るところは若さでもあり強さでもある。立ち直ればウィリアムズ姉妹にも匹敵する女王として君臨していけそうな印象。

 それならとスポンサーもわんさかつきそうだけれど、日本では大坂選手が黒人への迫害に対する抗議からいろいろな言動をしていることにスポンサーが迷っているなんて報道が出ている。具体的な名前は挙がってないからフェイクかもしれないけれど、聞けば日本人的な感覚から人種問題で説教的に発言することを嫌う人もいそうだからとそれを組んでスポンサーが何か言いそうな気はする。でも外国のスポンサーは絶対支持っていうか支持しなければ世界のマーケットから反目を喰らうと分かっているから絶対に言わない。そういうところで日本と世界の格差が生まれているんだなあ。気付かず歴史戦なんて仕掛けて恥の上塗りをしているメディアもあたりするし。やれやれだ。

 藤原啓治さんが演じたサネアツに、矢島晶子さんが演じたマダム・ルゥルゥもきっと、ありがとうとお礼の言葉を最後にかけたのではないだろうか。なぜって……。そんな思いを一方に抱いてしんみりとしつつ劇場アニメ『荒野のコトブキ飛行隊 完全版』を最前列に陣取ってみる。MX4Dは時間が合わず避けたけれど、もしもいきなりみていたら振り回されて撃ちまくられて疲れ果てたに違いないから、まずは様子見にしてよかったと映画を見て思った。それほどまでにすさまじい空戦が繰り広げられた完全版。

 テレビでもそしてゲームアプリでも空戦はひとつの売りになってはいた。それでも遠めに見るテレビモニターも大きくたってiPad程度のディスプレイも飛行機は手のひらにおさまるサイズで見た目の迫力にはかける。それでいてエンジンがかかってプロペラが回る音も機銃が発射されて当たる音もなかなかの迫力。それが劇場では巨大なスクリーンいっぱいに時にクローズアップされたプロペラで飛ぶ戦闘機たちが迫り迫られ回り上がっては落ちる繰り返し。そのエンジン音から風切り音からプロペラ音からすべてが作り込まれて大音量で身を包む。自分が戦闘機に乗って空を振り回されている気にさせられる。

 その上で放たれる銃弾がそばをかすめたり当たったりして金属音やら爆発音やらをたてる。空戦というものはこれほどまでに激しいものだったのかといった気にさせられる。なるほど「ガールズ&パンツァー」で戦車戦の迫力を、女子高生たちの武道という形に落とし込んでもしっかりと描いてのけた水島勉監督が、こちらは命すらかかっている戦闘機による空戦を、目まぐるしく攻守が入れ替わり前後がひっくり返る画面の中にスピーディーに描いてのけたのだからもうたまらない。過去にどれだけの戦争映画があって空戦のシーンが描かれたか分からないけれど、そして今まさに「ミッドウェイ」という映画も公開されたけれど、こちらの絵で描かれた戦闘機による空戦の方がきっと迫力もあり、そして面白みもあるのではないだろうか。

 お話に関してはテレビシリーズの総集編に前日譚をつけたうえで端折っているから分からない人にはさっぱり分からないだろうし、巧みにつないでドラマ性を作ることもわざと避けているように説明がまるでないなかと淡々と展開だけが進んでいく。テレビシーズを見ていた人、そしてゲームで後日譚となる展開からキャラクターをある程度復習している人にはだいたいわかっても、誰に感情を移入する間もなく進んでいく展開にただ流されてしまうかもしれない。それは仕方がない。映画でもテレビシリーズの後日譚として作った『劇場版ガールズ&パンツァー』とはそこは比べたら完成度で雲泥の差になってしまう。

 だからここは日本軍が使った戦闘機にどうしよる空戦がどんな感じで行われたのかを、それこそ特等席桟敷席最前列から間近に見て堪能するものとして楽しむのが良いだろう。隼とはああやって始動させるのかといった手順がアニメながらも3DCGのモデリングを元にした映像によって描かれ、分かるようになっている。そしてああいった感じに飛ぶのか、ああいった風にドッグファイトをするのかも見せたい場面を自在に描けるアニメーションならではの特質によってしっかりととらえられている。さすがに震電やそのジェットエンジン搭載版が見せた挙動は実機がない以上嘘っぽいところもあるらしいけれど、前翼型の戦闘機がそうあればカッコよい挙動を描いてのけているから構わない。「スカイ・クロラ」の散華もああいった感じに飛べばティーチャーに勝てたかもしれないなあ。あの映画の世界観には合わない挙動ではあるけれど。

レオナとイサオの関係だとかキリエとサブジーとの関係だとか、テレビだったらしっかり描かれた部分がないから感動には乏しく理解も通そう。とはいえそうした一端に映画で触れたらテレビシリーズを振り返ってみて欲しいもの。そしてゲームにも手を出したら今度はそこで活躍しているハルカゼ飛行隊やらカナリア自警団やらゲキテツ一家やら怪盗団アカツキやらへの関心を抱いて彼女たちが活躍するストーリーをテレビで、そして劇場で観たいと願うのだ。カナリア自警団所属の人の皮を被った猛獣ことミントの活躍を見たい、見たい、見たいのだ。

 立憲民主党と国民民主党が合流して立憲民主党と国民民主党ができた。何を言ってるか分からないだろうが俺にも何が起こったのか分からなかった。恐ろしいものの片りんを味わったぜ。いや合流するなら大きい方が「民主党」と名前を戻して戻らなかった人たちが集まって違う政党名を名乗るとかすればすっきりするんだけれど、これでは合流も再編も起こらず単に引き抜きがあってちょっと片方が多く抜いただけって感じになりかねない。党首だって変更無し。いったい何がやりたいのやら。まあ自民党だって保守合同からの分裂なんかも得つつそういうところが潰れていって今もって巨大政党を保っている。立憲民主党もそうなれれば良いんだけれど主義主張だけ立派な御仁が目立ちたいと思い分裂しては各個撃破される繰り返しだからなあ。ここは我慢して大きくなって欲しかった。せめて立憲には頑張ってと願おう。枝野寝ろから来年で10年。


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