縮刷版2014年7月上旬号


【7月10日】 目覚めたのは午前5時より少し前でさあ今日はしっかり観るぞと思って構えたけれどFIFAワールドカップ2014ブラジル大会の準決勝2戦目となるアルゼンチンとオランダの試合は何というか退屈で、守り合いとも責め合いとも違って膠着状態が長く続くような感じで気が付くとまどろみ前半が終わってそして後半も過ぎて延長戦になってもやっぱり動かずそのままPK戦という、前のブラジルとドイツとの試合とはまるで違う展開になってしまった。ここでまたクルル曹長でも出してくるかと思ったけれど、すでに3人の交替枠を使ってしまったようでオランダはキーパーを変えられず、そのまま噂では1度もPKを止めたことのないキーパーが守ってやっぱり止められず敗退してしまった。惜しいなあ、ドイツとオランダなら激しい試合が見られたのに。

 これでドイツはアルゼンチンと戦うことになったけれどいったいブラジル人はどっちを応援するのかがまず見物。でも感情としては仇敵アルゼンチンよりは自分たちの国を倒して上に上がったドイツってことになるのかな。そしてドイツはメッシを1人前で遊ばせておくような気楽な攻め方はさせず押し込んでは仕事をさせないことに長けていそう。それをやられるとまるで得点の気配が消えるのがこの大会のアルゼンチンで、他に得点を獲れそうな選手がいない状況から膠着状態になるかそれともドイツに蹂躙されるか。いずれにしても興味深い決勝になることは確かだろう。今度こそはしっかり起きてみよう。あとブラジルとオランダの3位決定戦はどっちも若手を出して自在に遊ばせるかそれともレギュラーを並べて親善試合のように華麗なテクニックとスピードを見せ合うか。そっちも楽しみなんで週末週明けは早めに寝て早起きしてテレビの前に釘付けだ。

 漫画家の赤松健さんが忙しい連載の合間を縫ってかそっちの合間に連載をしているのか、分からないくらいにコミットして運営している絶版漫画の無料公開サイト「Jコミ」がサービス内容を拡充して名前も「絶版マンガ図書館」と分かりやすいものに変えてサービスをバージョンアップさせるってんで新宿で開かれた会見を聞く。前は明治記念館という雅やかでゴージャスな場所で開かれて華やかな雰囲気があったけれど、今回はサービス内容の拡充ってことで事務的っていうかしっかりと中身について知りたい人が一般も含め集まった感じ。でも質疑応答の時はネット界隈で頻繁に名前を見かける有名ライターに有名ジャーナリストがずらり並んで質問してたから、それだけ注目が高いサービスってことなんだろう、僕はThat’s イズミコ!」と「BOOMTOWN」が読めるサイトってことだけで大好きなサイトって認識に止まっているからなあ。

 今回の発表で面白かったのは絶版漫画に限らず巷に流れている漫画のデータなんかをごっそり集めつつそれがまずは絶版作品かどうかを判断しつつ作者の許可を得て「絶版漫画図書館」で公開していけるようにしようって動きが加わったこと。そして許可を得て公開した後は検索サイトに申し出て違法データへのアクセスがしづらくなるよう検索から除外するような働きかけをするという。いわゆる違法アップロードって奴がこれによって衰退することを期待しているみたい。だって違法のままじゃあ誰も得しない。作家だって嬉しくない。それが「絶版マンガ図書館」に収集されれば閲覧に応じて広告料が支払われる。だったらそっちを選ぶって作家が収集の情報を観て許可を出す可能性は少なくないってことらしい。なるほど巧い手だ。

 ただそれでどこまで集められるかっていうと、やっぱり連絡のとれなくなっている漫画家さんも少なくないだけに、許可の段階でいろいろと苦労はしそう。それでも世に提示されることで誰か観て連絡が付く可能性はゼロではなくなる訳で、それにかけるって手もあるかもしれない。とりわけ単行本にはならなかった雑誌掲載の漫画とか、今読みたいものがたくさんあるものなあ、「週刊少年サンデー増刊号」とかそうした読み切りがいっぱい乗ってたっけ。問題はその元ネタをどこから引っぱってくるかってことか。国会図書館の漫画をコピーする訳にはいかないし、そもそも入ってないだろうし。ボランティアな人が漫画誌なり単行本なりを拾い集めてスキャンし上げて絶版かを問い公開可能かを問うた果てに公開されていくような巧い流れが出来ると良いなあ。それまではアップされている作品を一所懸命に読んで「絶版マンガ図書館」の浸透に務めたい。

 今日がお誕生日なので今日が命日というつかこうへいさんの「飛龍伝2014」を紀伊国屋ホールで見た。演出はつかさんの作品をよく手掛けられている岡村俊一さんではなくて北区つかこうへい劇団出身で解散公演で山崎一平を演じた逸見輝洋さん。ある意味で直系ともいえる人だけにストレートに熱い舞台を見せてくれた。役者は山崎一平も桂木純一郎もうん、まだこなれてなくてセリフがどこか言わされている感じもしないでもなかったけれど、その分熱さが存分に感じられたよ。飛び散る汗とか吹き出す唾液とかが見えて真剣に取り組んでいる感じが観客席まで伝わってきたよ。でももうちょっとだけ、セリフに感情がこもっていたらなあとは思ったよ。そこが逸見さんも巧かったし筧利夫さんは抜群だった。去年観た「飛龍伝21」の神尾佑さんも体格は良かったけれどでもやっぱり巧かった。だから今回の2人ももうちょっと舞台を重ねていって、掴んでいって欲しいかなあ、間合いとか情感とか。

 あと有名女優を当てるのが多かった神林美智子は北区つかこうへい劇団の後を継ぐ「★☆北区AKT STAGE」から稲垣里紗さんが登場して、初々しさとしたたかさが同居する神林美智子を見せてくれた。美しさとかりりしさとか、そりゃあネームバリューを持った女優さんの方がその分だけ上積みされた物があるけれど、無名だって舞台に立てば同じ神林美智子、その演技で世間をねじ伏せていくことだって出来るんだから頑張って欲しい。あと何回かの舞台を経て、きっと何かを掴んでくれるだろうと期待しよう。この舞台をこの宜しくない時代に見る意味の重さを感じたよ。官邸前にいくら人が集まったって世間を動かすにはまだ足りないよ。でももう人なんて集まらないよ。そんな冷めた時代に何が出来るのかって考えたよ。それはやっぱり言葉の力なんじゃないかと思ったよ。だからこうやって残された言葉を伝えていくよ。観ることで世の中に広めていくよ。そう思ったよ。つかこうへいさん。彼らは彼女たちはやっているよ。観てるかな。観てるよね。


【7月9日】 起きたんで始まったFIFAワールドカップ2014ブラジル大会の準決勝、ブラジル対ドイツの試合を見始めたんだけれどちょっぴり眠気も残っていたようで、うとうとっとして目が覚めたら何か4点とか5点とかブラジルが取られてた。そんなはずはない目が悪くなったんでテレビの表示を見間違えたんだ今なおアナログのテレビでデジアナ変換の荒れた画像で見ているから見間違えはしょっちゅうなんだと目を凝らしたらやっぱりそんな点差。いったいブラジルに何が起きたんだ、って驚いていたらさらに追加点も入って前半だけで5対0とかになっていた。あじゃぱ。

 こりゃもうダメだろうとその場で見るのを止めてネットをうろちょろしていたけれど、入ってくる情報ではさらに2点が追加されたみたいでそこから1点返したものの6点差というのはブラジル代表にとって確か最悪の点差。それをワールドカップの準決勝だなんて舞台でやらかしてしまって選手たちはしばらく街を歩けないんじゃなかろうか。いやでもマラカナンの悲劇とかを喰らった52年前とは違って今は人の気持もサッカー一辺倒ではなくなっている。世界の強豪がどんな試合をするかを見る余裕ってのもあるから半分くらいは6点差なんてばかげた点差をこりゃもうダメだわっはっはと笑い飛ばして見ていたんじゃなかろうか。だからこれは「ミネイロンの惨劇」ではなく「ミネイロンの喜劇」。ここからやれやれと心を入れ替え立ち直って行けば良いんじゃないのかなあ、それが出来る国だから。

 とはいえフェリポン監督にとってはやっぱり恥ずかしい試合。途中からこれは夢だ時よ戻れと思い始めたに違いない。でもここでギタイをやっつけてリセットされても戻るのは2014年7月8日の朝でそこから何をやってもドイツに蹂躙される運命は変わらない。いっそ戻れるものなら2002年6月30日の朝に戻って横浜国際競技場でのワールドカップ2002日韓大会の決勝に臨もうとする自分でありたいだろうなあ。あれから12年、復帰はしたものの若手主体のチームをまとめられず抑えられないまま惨劇の日を迎えてしまった。もう古い監督ってことになってしまいそう。じゃあ誰だ、ってところで浮かばないのがあの国というか、だったらフェリポンがまた呼ばれることなんてないよなあ。でも流石に続けられない。次は誰? テレ・サンターナ…は亡くなっているから無理か、じゃあパレイラか、ザガロか。そんなんばっか。ここはワールドカップ出場経験もあるあの人にやってもらおう。ジーコ。さてはて如何に。

   しかしドイツは容赦しないというか、普通ならこれくらの点差が入れば後半は流して勝負をしかけず時には向こうに持たせたりもして拮抗した試合を演じてみせるものだけれど、しっかりと守り責め立て後半に2点を奪うんだから真面目とうか。まあそれだからこそ曲がらず強さを発揮し続けられるんだろうけれど、平均的にどの大会でも。決勝がどこになるか分からないけど、この統率力なら相手にメッシしかいないアルゼンチンあたりはメッシを押し込んで攻撃をさせないでいれば楽に勝てそうな気もするなあ。オランダは前に出てくるのが3人くらいであとは中盤から底を固める感じだからドイツでも裏はとれず攻めても跳ね返されそう。しぶい試合になるかも。さあどっちになる。決勝は。

 結局早起きしてしまったんで早出して地下鉄を乗り継いで白金台まで行ったけれど予定の時間まで1時間以上あったんでベンチに座ってぼんやりとネットを見たり艦これやったり本を読んだり。そうこうしているうちに時間になったんで1カ月くらい前に来た東京大学医科学研究所へと入ってDeNAの子会社が新たに始める遺伝子検査サービスの概要発表を聞く。冷房効きすぎ。とりあえず面白かったのは欧米なんかですでに始まっている遺伝子検査サービスをそのまま持ってきたところで日本人とヨーロッパ人では人種が違うんで遺伝子の働き具合も違っていて、それを元に検査結果を教えると支障が出るといったところ。そこで東大医科学研とDeNAでは論文をいっぱい集めて読んで精査して日本人の体質にあった遺伝子とリスクの関係を割り出し実装したという。凄い手間がかかったんじゃなかろうか。

 でもそうやって先行して事例を乗せておくことで、後に追随するところもそれに準拠しないと安全で安心できて正確なサービスだとは見なされない。東大医科学研究がアカデミズムにあり遺伝子に関する倫理の護持に厳しい姿勢をとってきながらもこうやて企業に協力して遺伝子検査ビジネスの片棒を担ぐのは、適切な遺伝子検査が行われ広まるために必要なことって言えるのかも。倫理面もここが率先して固めていかないとグダグダの中に混乱していってしまうからなあ。でも問題は法律で規制がまったくされていないことで、モラル的にはともかく法的に例えば企業が遺伝子検査の結果を願書に添えて出せと言ってきたら逆らえないしそれを止める法律がない。アメリカではダメ絶対。そういう違いを遺伝子検査サービスを始めることによって浮かび上がらせ、法整備を急ぐためって意味もあっての協力なのかも。多少乱暴だけれど仕方がない、そうでもしないとあの政治家どもは動かないから、自分たちの票田にも資金にも関係なさそうだってことで。でたらめな国。

 かける言葉は「がんばれブロークン・ハート」ってところかなあ、マクドナルドをしっちゃかめっちゃかにして今なお回復の道が見えない状況へと陥れながらも当人は、さっさと抜けだしベネッセへと移籍した原田泳幸さんが行った先で起こった個人情報漏洩問題で矢面に立って記者会見。来たばかりで知らないよと言いたい気持ちもあるだろうけど、そういう企業のトップに立っている以上はやっぱり責任ってものを一身に負わなくちゃ誰も世間は納得しない。心も乱れ砕けているだろうけどそこは頑張って集中砲火を浴びてそのままひとり責任を取るように何処かへ、ってことになるのかな、ならないか、なるならマクドナルドだって5年は昔に辞めてただろうし。そういや最近ほとんどマクドナルド行かないなあ。


【7月8日】 月曜日の朝になんか左膝が急に痛んで寝ている間に寝違えたか何かしたかと思ったものの理由は分からず、ただ踏み込んだり階段を下りた時に痛みが激しくこれはちょっと歩くのも辛いと家で引きこもってふて寝したくても出来ず。仕方がないのでロキソニンのテープを貼って街へと出て、コンドロイチンを買ってむさぼり食っているうちに夜になってそれから朝が来たけどやっぱり痛いんで、ロキソニンの錠剤もかじりテープもはってコンドロイチンをむさぼり食っていたら普通に歩くのは可能になった。

 でも階段を下りるのはちょっと痛いんでしばらくは下りもエスカレーターのあるところを選びそう。高齢者の人が下りもエスカレーターを使いたがる理由がよく分かった。果たして長期に渡って痛みが続くのかそれとも今は何か炎症を起こしているだけでやがて収まるのか分からないけど、だんだんと痛みも引いているような感じなんでコンドロイチンとロキソニンテープで痛みを緩和しつつ様子を見よう。これで急な津波とか来て走って逃げろとか言われると辛いかも。あるいは地震でエレベーターが止まって歩いて降りろとか。なって分かる高齢者ケアの大変さ。とにかく今は安静に。ずっと家で寝てたいなあ。

 やりたかったことをやり残して逝く悔しさを、僕たちは知っているかというと、実はまだ知らない。だって生きているから。生きていさえすれば何だってやれるから。やってもいないことをやれなかったと思い込むのは勝手だけれど、それはやり残してしまうのとは全然違う。やらずにおいてやれなかったと悔やむのは、やりたかったのにやれなかった人たちにとても失礼なこと。もし少しでもそんな気持ちになったなら、生きている今だからこそやれることを精一杯、やるべきなんじゃないのかと、そんな思いにさせてくれる物語が仁木英之さんの「水平線のぼくら 天使のジャンパー」(角川春樹事務所、1500円)だ。

 奄美大島という、鹿児島県の海の彼方に浮かぶ島が舞台の物語。日本では沖縄と並んで何かいろいろと残っていそうな土地柄で、冒頭にも主人公の桐隆文という高校2年生の少年が、誰も立ち入れそうもない崖の上から疾走して空へと飛んでは海へと来てた少女を見て、友人の中洋介から「くいむん」をいう一種のあやかしを見たんだと言われる。そのときはただの見間違いか何かかもしれないと思った隆文だったが、帰省先で何やら儀式に参加させられ、そして戻った名瀬の下宿先でひとりの少女と出会って「くいむん」が現れたと驚く。

 高橋麻巳という名の少女は美しくてそして鍛えられた肉体を持っていて、何より崖から飛んだ少女によく似ていた。もっとも目の前に現れた麻巳は消えたりはせず、同じ下宿の離れに住んでそこから隆文と同じ高校へと通い始める。どこか本土で暮らしていたのが移り住んできたような格好。そして麻巳は隆文や幼なじみの鼎英見が所属している水泳部へとやって来て、あろうことか英見に水泳の勝負で挑んで勝利し、ノルディック・スキー部を創設してしまう。

 どうやら本土では若い頃からノルディック・スキーの選手として活躍していたらしい麻巳。ネットで調べるとそういう経歴が出てくるけれど、それだけにどうして今、雪の降らない奄美大島へとやって来たのかが分からない。家庭の事情か何かかがあったのかもしれない。詳しいことは分からず、本人にも聞けなかったけれど、それでも倣い覚えたノルディック・スキーへの思いだけは強くあったようで、勝負までして勝利をつかんで作ったノルディック・スキー部にだから隆文や英見、そして隆文の友人の中洋介も協力するようになる。

 南の島のノルディック・スキー部。まるでジャマイカがボブスレーに出場した「クール・ランニング」を地でいくような展開に、周囲も沸き立ちメディアの興味も誘って結構な話題となった。」といっても季節はこれから夏。そして奄美大島という土地柄、すぐに雪の上でスキーなんて出来はしない。ということで麻巳はどこかからスキー板だけでなくローラースキーの道具も持ち込み、それを使って練習をするようになる。ただやっぱり目標はジャンプ。隆文は親戚で土建屋をやっている男にジャンプ台を作って欲しいと頼みに逝くけれど、当然のように怒鳴られ断られるかとうと、競技で表彰状を2枚とってくれば考えても良いと言われる。

 ならばと隆文は英見に洋介、そして麻巳を連れて山口県で開かれたローラースキーの大会へと向かい入賞を目指そうとする。やりたいことにむかって突き進む青春のストーリー。とっても爽やかで楽しげに見えたその物語がクライマックスになって一挙に様相を変えるところがとてつもなく興味深く、そして面白い。いや面白がっている場合ではない、むしろ青春のあでやかさとは正反対の切なさと哀しさ、そして優しさと愛おしさがあふれ出てきて心を見たし目を濡らす。そうだったのかという驚き。そうだったんだなあという哀情。知っていればもっと何かが出来たのかというと、かえって思いに熱がこもって空回りしてしまったかもしれない。同情とか憐憫といったものとは無縁の、仲間たちだからこそぶつけ合えるまっすぐな思いが隆文を麻巳へと協力させ、麻巳を仲間たちの中で弾ませた。

 だからこそ迎えられたその瞬間。嬉しかったのだろうか。まだ悔しかったのだろうか。そりゃあまったく悔しくなかったということはないだろうけれど、やりたかったのにやれなかったことをやりぬいた充実だけはあっただろうし、それをやらせてもらえた嬉しさもあったに違いない。そんな麻巳が得た気持ちはそのまま自分たちも得ようと思えば得られるものだと思いたい。やらずに逃げるよりやって転んだ方がいい。それからもうひとつ、やりたいことをやれない者へ何かをしてあげることの大切さも感じたい。会社の業務を放り出してジャンプ台の建設に協力した土建屋の親父の過去に複雑な思いを引きずりながら、それでもというかだからこそ、手をさしのべようとしたその意気を是非に真似たい。

 読み終えて悲しみは当然に浮かぶ。悔しさもやっぱり浮かぶけれど、それでも嬉しさを感じてもらったのかもしれないという思いが救いになる。そしてこれからの人生をどうやって生きていくべきなのかという道も得られる。若くても置いていても残された時間が多くても少なくても、生きてさえいれば僕たちはまだやれるのだと知ろう。やり残して逝く悔しさを味わわないように精一杯に生きていくのだと感じよう。

 えっと誰だっけ、名前を覚えることすら面倒なくらいにどうでも良いどこかの市会議員の大泣き話。問題は人前で滂沱したりしゃべり方が妙だったりすることじゃなく、政務のためのお金が何に使われていたかってことであって追求されるべきはそれ1点。性格がどうとか見栄えがどうといった話は政治の実績と関係ない。そりゃあ人前で兵器で泣き叫ぶ人間がどれくらいの政治ができるのかって疑問は浮かぶ。でも実際にどんな政治をしてきたかが問われる訳でそれをすっ飛ばして泣き叫ぶ映像ばかりを流すテレビの方がよっぽど頭がパーに見える。

 でもだからといってテレビの記者が費用を洗いざらい調べて報じるなんてことはしない。面倒だから。やるのは新聞とか雑誌でそれをかすめとってさあごらんとやってのけて市庁舎を集めCMを集めて金を集める。足腰は弱るばかりなり。その果てに来るものは。雑誌は売れずテレビはポン酢。そして追求を逃れた政治の巨悪が対等して世界を染める。怖いねえ。でももう遅い。全部始まっていることだから。そして進んでいることだから。困ったなあ。まあ良いこの歳ではあとは朽ちるだけ。若い人は若くして朽ち果てさせられる。どうするよ。どうもしないか。そういう風になってしまったんだから、この国は。嗚呼。

 せっかくだからとSTAFF NIGHTも見ておこうとバルト9の「攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears」の黄瀬和哉監督、美術の竹田悠介監督、プロダクションI.G.の石川光久社長がそろって喋るイベントに行ったけれど石川さんあんまり喋らなかった。興味深かったのは最初は別に演出が決まっていたらしいborder:3だけれどやっていく段階でラブストーリーにしたいとなって素子の脚が描きたいとなって演出プランがまるで崩壊。しゃあなしだと黄瀬さんが作画監督のみならず各話監督も手掛けることになったとかで、スケジュールは大変だたけれどそれでもこうやって完成したから万々歳? 本当だったらもっと高密度の作画が期待できた? それは分からないけどまあ良いや、面白かったから。

 竹田さんも忙しい人で各話を担当するだけかと思っていたら全部をやってくれとの石川さんからの依頼。そこはやっぱり同じ風景じゃないと統一感もとれないってことだけれど、それを受けた裏には25年前に「機動警察パトレイバー」の劇場版第1作で黄瀬さんが作画を手掛け竹田さんがハーモニーとかを担当して以来の仲があったとか。友情大事。押井さんは作品を作るたびにプロデューサーを喧嘩別れをするからそういうこともなさそうだけれど、でも石川さんとはそれこそ25年来の仲な訳でいずれやっぱり何かまた作ってくれるかな、実写じゃなくてアニメーションを。ともあれ2カ月ほどで公開となる「border:4」が果たしてどんなものになるか。本来ならこれを最初に見せようとしていたくらい、今までの「攻殻機動隊」になっているらしいいんで待ってましたと喝采を贈れるものだと信じて待とうその日を。やっぱり川崎で初日に見るんだろうなあ。


【7月7日】 そして持ち帰って読んだサイン入りの奈良クラブは岡山一成選手による「岡山劇場」から感じたのは、もしも1年でもジェフユナイテッド市原・千葉に岡山選手がいたらこうまでJ2に残留を続けることもなかっただろうし、そもそもJ2になんか落ちていなかったかもしれないってこと。それはプレーヤーとして数々のクラブでJ2なりからJ1への昇格を経験した“昇格請負人”っていうニックネームから来る実力派プレーヤーだからって意味も含むけど、大きいのはそのパーソナリティ。チームが持つ選手たちの本気ってやつを失わせず、そしてサポーターたちが持つチームに対する熱気って奴もしっかりと組んで、両者を繋ぎそれを上向きにドライブさせていく力を岡山選手は持っていて、それが経由して来たチームで存分に発揮されたからこそ昇格を得るなり、得られなくてもチームを強くして今へと繋げた。

 川崎フロンターレは今ではJ1の強豪で優勝争いにだって顔を出すし、柏レイソルもJ1で優勝したり天皇杯に出たりとすっかり強豪の位置を確たるものにしている。一時のようにJ2に落ちて上がってまた落ちてなんてことは多分ない。そしてベガルタ仙台。上がってからもうずっと落ちていないよなあ。コンサドーレ札幌は上がってすぐに落ちてと悲しい思いをしたみたいだけれど、それでも今のJ2でジェフ千葉なんかより良いところにいたりする。何よりJ1に上がったじゃないか。ジェフ千葉はもうずっとそれが出来ていない。監督が変わっていよいよ何かしてくれそうな関塚隆さんになったのは良いけれど、ずいぶんと離れてしまったサポーターとチームを繋げるにはちょっと弱い。そこに岡山選手がいてくれたら……。なんて考えさせられるくらいに岡山選手がいろいろ気を配り心を砕いた話がいっぱい書かれている。読めば絶対にサッカーとサポーターについて何かを感じられる1冊。結構売れているみたいだけれど首都圏ではあまり見ないんで、Jリーグの本拠地がある街の本屋さんは置くと良いと思うよ。

 FIFAワールドカップ2014ブラジル大会の試合がなくって静かに寝ようとしたけど暑くて寝られず仕方がないので録画したばかりの「魔法科高校の劣等生」を見たら九校戦が淡々と続いていた。本当に淡々と続いているよなあ、今は新人戦の段階だけれど戦いの場面で激しいつばぜり合いがある感じでもなく勝つ人は勝つし負ける人は負ける。司波深雪と北山雫とが決勝で戦ったピラーブレイクの場面とかいったい何が起こっているのか説明もないまま、雫の方は融け落ち深雪が勝利をした模様。そこでどういう魔法が発動しているのか、雫が手にした拳銃みたいなCADはいったい何をどうしたのか、って小説だったらいろいろ説明もあるんだけれど、それもないから何かあってけど深雪が勝った、って感じに受け止めるしかない。まあそれでもそういうものだと思い見ていけるのがアニメの良さ。知りたかったら後で小説を読めば良いんだし。

 そしていよいよ事件は起こり始めて何か良からぬ敵が混じって達也の学校の生徒に悪さをした模様。棄権も覚悟しなくちゃいけない状況になったけれどそれを許さない生徒会から頼まれ達也が試合にでることに。恨みも妬みも買いそうだし、いくら生徒会の十文字隼人がそんなことはさせないといっても人の心は素直にはなれない。だから先が大変そうだけれど、そこで自分だけじゃない2科生を巻き込んだのは良い判断か。西条レオンハルトと吉田幹比古を混ぜた3人がいったいどんな戦い方をしてそして対戦相手を退け暗躍する敵も倒すのか。そんな楽しみを持って以下次回。淡々としててもメリハリがなくてもストーリーはある。だから見ていける不思議なアニメ。CADを欲しがりぴょんぴょんと飛び跳ねる光井ほのかが可愛かったなあ。そういう見所もあるんだこのアニメには。

 本国では9000万ドルにようやく乗ったみたいだけれども海外では2億5000万ドルくらいまで達してこの勢いなら製作費の倍となる3億56000万ドルにもどうにか届きそうって感じの「オール・ユー・ニード・イズ・キル」。本国で1億ドルに乗れば「ミッションインポッシブル」しかヒットしないって言われていたトム・クルーズの評判も帰られるしそれならと当人も乗り気になって続編に挑んでくれるかもしれないけれど、でもやっぱり製作費くらいは回収できないとスタジオだってゴーサインは出せないだろうからあと少し、頑張ってもらえると嬉しいかも。ちなみに日本では本格的な上映が始まったこの週末に「マレフィセント」に続く2位を確保した模様。3位は「アナと雪の女王」で「マレフィセント」が遂にその座を奪ったってニュースになっているけど、しっかり「オール・ユー・ニード・イズ・キル」も「アナ雪」の上に来ていたんだからそこんところだけは忘れずに。「マレフィセント」は突っ走りそうだけれど「オール・ユー・ニード・イズ・キル」も頑張って追随して国内20億円くらい行けば目指すワールドワイド3億5600万ドルにも届くかも。今週来週の興行に注目。

 ようやくやっと読んだ森田季節さんの「不戦無敵の影殺師2」(ガガガ文庫)は暗殺の腕は優れているけど派手さに欠ける異能のため泣かず飛ばずだった朱雀と小手鞠のペアがガチンコバトルで優勝して一挙に名を高めてスターダムへとはい上がったと思ったらそうでもなく、まあそれなりに仕事はあって食べるに困ることはなくなったという程度。むしろ妙なねたみを買ったかあるいは興味を誘ったか、後輩で水を出すくらいの異能しか持たない川匂って女性の異能者と番組での対決を繰り返しながらバラエティめいたことをやってとりあえずの人気を保っていた。そんな朱雀を脇に可愛い小手鞠にも誘いはあって単独での出演とかで人気アップ。それを知って喜ぶはずの朱雀だったけど妙な嫉妬も抱いたか、絶対的な支配者という奢りが出たか関係にぎくしゃくとしたものが生まれてそれが後にピンチを招く。

 自分の絶対的な強さを世に訴え誰も彼もかかってこいと言う朱雀はそれで朱雀らしいけれど、戦う場所なんて用意されていない世界で最強をうたったところで誰も見向きもしてくれない。かといって最弱の異能使いが自分は本当は強いんだと訴えたところで世間の一部はやっぱり強さこそが異能の価値だと言って弱くても懸命に他人を楽しませようとしている異能使いを認めようとしない。強ければ良いのか弱い方が勝ちなのか。分かりづらい世界にあってそれでも異能を使って食べて行かなくてはいけない者たちの悩みと迷いってものが見え隠れ。それは芸が確かでも食えずかといっていい加減だから食えたとしてそれを世間が認めてくれるかというとそうでもない空気が漂う芸能界にも重なる。難しい問題。そして浮かぶ謎の敵。本当の敵に朱雀は、小手鞠は、そして最強の滝ヶ峰万里はどう挑む。ゆるふわ異能バトルが次第にシリアスめいて来たこの先、何が現れどうなるか。楽しみになって来た。


【7月6日】 なんか「美少女戦士セーラームーン」が新しく始まっていたんで見たら、確かにセーラームーンだったけれどもそれ以上かと言われると口ごもるくらいにセーラームーンでしかなかった辺りに今、なぜセーラームーンなのか、それもテレビのゴールデンとかではなくネットでの動画配信なの、といった思いがもわもわと浮かんで頭がぐるぐる。子どもが見て喜ぶキャラクターであり女の子が憧れるストーリー、それがセーラームーンな訳で、それは「なかよし」って女児向けの漫画誌に連載された原作も同様。だから原作準拠のアニメーションだからといって子供向けではないってことはなく、だからこそ子どもが普通に見て楽しめる時間に、テレビの地上波で放送されても良かったんじゃないか、って思えてしまう。

 なのになぜかニコニコ動画での配信。いったい誰に見せたいのやら。かつて見ていた元が子どもの女性たちが見るかっていうとそれも謎めく。ある程度はネタとして見るかもしれないけれどそこに真剣味を覚えるほどにはならないよなあ、むしろ今どきのそういう世代は、女の子たちのドリームが実現するストーリーよりも男同士のラブリーが炸裂するのを遠巻きに眺めてきゃいきゃいするのが嗜みになっていたりする訳で。あるいはセーラー戦士たちはあくまで入り口であって、程なく登場してくるクインベリル配下の4人を肴にわいわいやるのを期待していたりするのかも。分からないけど。

 声は三前から唯一残った石琴乃さんが頑張っていたけど、名セリフの「ムーンプリズムパワー、メイクアップ!」と「月にかわってお仕置きよ」のところだけ、言い慣れているのか巧く耳に馴染む一方で、うさぎちゃんの日常芝居が子ども感を出しすぎな印象で他が普通にローティーンを演じて来るのとギャップが出ないか心配。ってか前の時も4人は普通に大人っぽかったからなあ。うさぎちゃんだって大人っぽくって良いのに、ミサトさんみたいな、それもEVAQくらいの。それだとタキシード仮面も子ども扱いされてしまうか。ともあれ誰のための再アニメーション化が今ひとつつかみづらい新作セーラームーン。ノスタルジーがつきまとう日本ではなく、海外でこれから見始める人たちがどう受け入れ、どう喜んでくれるかを見てみたい。忍者ハットリくんだってリメイク版がインドで大人気だったみたいだし。

 微睡んでいたら何かFIFAワールドカップ2014ブラジル大会のアルゼンチンとベルギーの試合があったみたいで、気が付いたらアルゼンチンが勝っていた。でも1対0とは最小スコア。メッシを始めとしたタレントがずらり揃っていても大量得点で勝ち抜けるほどベスト4の壁はそんなに低くはないってことなのか。メッシ選手は相変わらず真ん中から前目でゆっくり歩いたり止まったり動いたり止まったりしていたようで、そこからでも起点を作れるのは凄いけどそれで勝てるならメッシがさらに動けば楽勝できるのかどうなのか。次のオランダ戦あたりで真価が問われそうだなあ、メッシが止まっていたら勝てる相手ではなさそうなだけに。

 そんなオランダも冷や冷やの勝利だったみたいで、コスタリカ相手に延長ドローからPK戦で秘密兵器のPK専用キーパー、クルル曹長(曹長じゃないって)を投入して相手キックを2本も止めてどうにかこうにか勝ち様子。いずれPK戦になるだろうとことを見越して後退枠を延長終了まで取って於いたファンハール監督も凄いけど、外したらいろいろ言われるだろう重圧でもしっかり2本止めてみせるクルル曹長(だから曹長ではないってば)もやっぱり凄いなあ。そういや冬の高校サッカーでも富山第一だっけかにPK専門のゴールキーパーがいて準決勝だかに出場して活躍を見せていたっけ。あの選手は今どこで何をしているんだろう。日本代表も雇えば良かったんだ2010年のパラグアイ戦で。

 それにしても負けたら終わりのトーナメント故に探り合いから拮抗し、PK戦になることも多い高校サッカーならまだしも、頂点の才能が勢揃いするワールドカップでもPK戦とかが増えてくるのは、やっぱり決勝トーナメントの負けたら終わりという空気の中で選手たちが手足を縛られたかのような試合をしてしまうからなのか、ここまで長丁場の試合を続けてきて疲れ果てているからなのか。終わったらすぐにポストシーズンだからいい加減休みたいって気分になっているのかも。でも残った以上は優勝したいはず。ブラジルはドイツと、アルゼンチンはオランダとの試合でどちらのカードも見応えありそうだけれど残念にもネイマールが腰の負傷で離脱してブラジルちょっと大変そう。フッキとかいるしタレントは揃っていてもやっぱり見たかったなあ、マラカナンでのメッシとの対決。ああでもドイツ対オランダのどこか因縁めいた隣国対決も見たかったり。ドイツ対アルゼンチンは意外性あって面白そう。ブラジル対オランダ。ああどのカードも魅力的。ワールドカップはこれからが本番。

 せっかくだからとフクダ電子アリーナで開かれた、元日本代表の松田直樹さんを悼みつつAEDや胸骨圧迫による心肺蘇生の大切さを一般にも広く知らしめよう、そしてスポーツなどの現場にAEDを普及させようとする目的を持って開かれたサッカーのイベントを見物に行く。急性心筋梗塞で松田直樹さんが倒れたのが確か2011年の夏で、翌年早々に一種の追悼試合が行われて何万人もの大勢の観客を集めたりして話題になり、その後も2回、2013年の1月と8月に試合が行われたみたいだけれども、今回からは追悼試合といった枠をすこし抜けだし、松田さんの記憶を受け継ぎながらも次の世代が安心してスポーツに取り組めるような環境を作っていこうという意味で、「NEXT GENERATIONマッチ」という名称になった模様。

 そしてその第1回目として選ばれた会場がフクダ電子アリーナ、というのはある意味適切で、何しろオープン当初からフクダ電子がネーミングライツを取得するとともに、AEDを13台も備えて安心して運動ができるスタジアムってのをアピールしている。そこでの試合となれば松田さんも喜んでくれるし、周囲も納得してくれるんじゃなかろうか。生前の軌跡を辿れば群馬県出身で横浜F・マリノスを経て松本山雅へと移った松田さんと千葉市千葉県はまるで無縁。だからフクダ電子アリーナが会場になるいわれも千葉県サッカー協会が主管する筋もまるでないんだけれど、年月とともに記憶は薄れていくもので、一時は涌いた世間の関心も離れ松田さんの追悼という意味合いだけでは、人も集まってくれなくなる。試合の開催あっておぼつかないだろう。

 そこにAEDの普及促進という意味合いを重ねることで、フクダ電子アリーナをスポンサードしAEDを取り扱うフクダ電子が乗っかり千葉県が乗っかる理由ができて、試合も開けるようになったってことになるのかな、その辺りの経緯は分からないけど。だから来年以降も果たして開かれて、会場はどこになるのかってあたりが目下の興味。フクダ電子アリーナならAEDと結びつきやすいしフクダ電子だってスポンサーをしやすいけれど、でも千葉県ばかりだと松田さんの意志を生前無縁だった千葉県が独り占めしてしまうことになってしまう。かといって全国で順次開催していくにはそのあたりの理由付けが必要になって来そう。観客だって3600人程度と少なかったし他の会場でどれだけ集められるのか、って考えると今は恒例化を狙うのが最善なのかなどうなのかな。ちょっと考えたいところ。

 試合の方は松田さんの意志を受け継ぎ思いを抱くレジェンドだちが大勢登場してくれてなかなかの楽しさ。名波浩さんと平野孝さんの左足対決、って同じチームだったからここは競演か、それが見られたのも良かったし未だに切れてる久保竜彦さんのプレーぶりとかこちらは半ば現役だから当たり前に動ける福田健二選手の走りとかも目の当たりにできて懐かしかったり嬉しかったり。松原良香さんなんて横幅が出てきたのにちゃんと動けるんだもんなあ、あと櫛野亮さんはビッグセーブ連発で今でも現役で通用しそう。海外だったら40歳まで現役のキーパーなんてざらだし。でも日本だと早く引退。勿体ないなあ。そんなピッチ内の選手たちとは別にコンコースでは今は奈良クラブにいる岡山一成さんが自著を持ち込みサイン会。売上は寄付するとかで行って1冊購入。握手してくれたりと明るく楽しい人だった。近く古巣のベガルタ仙台との試合があるとか。見せてくれるか岡山劇場。ちょっと楽しみ。


【7月5日】 そうそう「攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears」のCAST NIGHTでは登場したバトー役の松田健一郎さんとそしてトグサ役の新垣樽助さんにそれぞれ草薙素子の良いところ悪いところなんてのを聞いていたけど良いところではだいたい決断が早いとか頼れそうっていった声があってなるほどなあと。年齢的には多分バトーやトグサの方が上なんじゃないかと思うけど、経験の差がやっぱり物を言ってか何でもやれるしおまけに強い。そんな人が上にいたら誰だって頼ってしまいそうになるけど、それだけではケツを叩かれけり出されてしまうのがオチ。求められていることにしっかり応えられないと公安9課にはいられない。その意味で悪いところとして怖いし厳しいって声も挙がって当然か。

 そんな公安9課に呼ばれることになるトグサは生身が大半で家族がいて子どもが生まれそうってところでとてもじゃないけど他のメンバーとはタイプが違う。でもだからこそ何か違う物が見えるらしくそこを最初は訝り、やがて認めて公安9課に素子はトグサを呼んだってことが分かるのがこの「border:3」の見せ場かも。素子とホセのラブシーンにも増して。そんなトグサと腐れ縁になるバトーの関係で、車をバトーが運転してトグサが助手席にいた珍しいカットの解釈を、プロデューサーの人は自分たちにはない何かを持ったトグサを認め遇したんじゃないかと見ていて、松田さんあたりはまだ仲間じゃないから運転なんて任せられないとバトーが自分でハンドルを取ったのかもと見ていたりして、どっちかなあと気になった。そこはSTAFF NIGHTで明らかにされるかな。されなくっても素子の脚の魅力を黄瀬和哉監督が話してくれるだけでも良いか。2度目だったけどやっぱり良いものなあ、素子の脚。たくましくて。あれで蹴られて元恋人、よく死ななかったよなあ。

 微睡みながら見ていたFIFAワールドカップ2014ブラジル大会のベスト4を争うドイツとフランスの試合はそれこそナポレオンの時代あたりかた続いていそうな因縁を晴らすかの如く激しいぶつかり合いがあってマジノ戦突破だの電撃戦だのワーテルローだの何だのと、後に讃えられる試合になったかというとあんまり激しいぶつかり合いもないままに、全体としてドイツがボールを支配し安定感のある守備と攻撃を見せいていた感じ。というか微睡んでいたんで目を開けた時がたまたまドイツの攻勢ばかりだったのかもしれないけれど、そんな隙でもボールを持ってパスを繋いで華麗に相手に迫るのがシャンパンサッカーなフランスだった訳で、けれども今は体力に物を言わせたパワー&ラッシュなサッカーが中心。それだとやっぱり屈強なゲルマン魂には及ばないってことになるのかも。民族としては移民もいっぱいいるからゲルマンじゃないなけれど、魂はやっぱり変わらないってことで。

 そして茫洋として目覚めたら始まっていた今日もう1つのベスト4を争う試合で、南米でも屈指の強豪チームがぶつかり合うブラジルとコロンビアの試合はやっぱり微睡んでいたからどっちが強いって分からなかったけれど、2点目を誰だってバルデラマみたいな頭なのにブラジルの選手が遠目からフリーキックで2点目を奪った段階で、ほぼブラジルのベスト4進出が決まった感じでこのあと1点をコロンビアが追いすがったものの残念にも敗れさってしまった。ハメス・ロドリゲス選手の得点王もこれで厳しくなったかなあ、ドイツのミュラー選手もブラジルのネイマール選手もそしてアルゼンチンのメッシ選手も残ってしまっている訳だし。あるいはオランダからロッベン選手あたりが抜け出して来るか。それにはアルゼンチンとオランダが共に勝ち抜いて来ないと。ベルギーにコスタリカが挙がってきたらそれはそれでユニークな大会になるけれど、果たして。

 って言ってたらネイマール選手が腰椎にひとか何だそれ。選手生命にすら関わってきそう。何があたんだろう。心配しつつ眠りもしないで家を出て電車を乗り継ぎ新宿はバルト9まで来て「ガールズ&パンツァー」のOVA「これが本当のアンツィオ戦です」を舞台挨拶付きで見る。映像自体は試写でも見ていたからストーリーは分かっているけど大きな画面で周囲の反応もダイレクトに感じられる場でみるとなるほどそこがやっぱり凄くてそこが意外で面白いんだってことが分かる。実はテレビ、少しも見たことがないんでした。でもだいたいのストーリーと設定は知っているんで大丈夫、2回戦としてこなされながらも描かれなかったアンツィオ高校を相手に大洗学園がどんな戦いを繰り広げたかを描いた映像って理解されあればだいたいの内容は理解できる。

 途中で説明抜きに出てくるキャラがその後の展開でどう関わったかはまでは分からないけど、それはまたテレビ版を見て確認すれば良い訳だし。ねこにゃーとか。っていうかそうした関係性とは別に迫力の戦車戦って奴が存分に味わえるOVA。戦車ってあんなに早く走るのか、それこそスポーツカー並じゃんって思うけどそれが単純に迫力を出すためなのか、それともやっぱりしっかりとした考証の上にああしたスピーディーにして迫力の戦車戦が、実際の戦場でも繰り広げられていたか知りたいところ。そういう映画ってあるのかなあ。でも乗っているのがおっさんばかりだとちょっと見る気が萎えるかな、そういう頭にされてしまうんだよ「ガルパン」って映像は。

 まあ実際に弾が当たったりひっくり返ったりして中が無事ではないだろうから元気に出てきて健闘をたたえ合うとかひっくり返ったおんを元に戻して乗り込むってことはそうはないだろう。そこはフィクション。そのおかしさと戦車戦ってこんなにスピーディで迫力のあるものだったんだという確認を楽しめる映像ってことで、見れば誰でも勉強になるんじゃなかろうか。自衛隊員に見せれば戦車兵とか増えるかな。でも中に美少女は乗ってないぞ。それが現実。厳然たる。

 まいったなあ。とある新聞の1面に連載されている人気漫画が、何を取り違えたか「江戸しぐさ」なんてものを取りあげていたりして赤面するやら恥ずかしいやら。漫画では傘の扱いが乱暴な若者に向かって、爺さんに「江戸しぐさの傘かしげを知らんらしい」「時代は変わっていくのか」なんて言わせている。知らねーよそんなもの。だいたいが江戸しぐさなんて歴史上に存在してねーよ。誰かが突然言い出して宗教のように広め始めたら、勘違いした政治家が道徳に良いと取り入れ広め初めているだけだよ。それを何か古くからの習慣のように描いてみせるのは、はっきりいって歴史に対する挑戦であり、日本人に対する愚弄でもある。

 日本の魂をことのほか大事にして持ち上げる新聞が似非歴史なんてものを掲載して良いのか、ってことになるけどコミンテルンがどうしたと書いた論文で賞をもらった人を大事そうに使い本まで出している新聞だから目的のためには事実がねじ曲がっていようと例え捏造であろうと構わないって判断か。可哀想なのは漫画を描いている作家さん。たぶん知らないだけなんだろうけれどこうやって描いてしまった以上は同じ主義主張の持ち主、目的のためなら架空の歴史でも道徳でも捏造して押しつける輩と同類と思われてしまう。はやく何とかしてあげたいけど、手の届かないところにいるからなあ。せめて誰かが止めてあげれば良かったのに。そんな人がいたらあんな事態にはなってないか。どんな事態だ。それはまあ遠からず。

 15年ほど昔に「ターンエーガンダム」の発表会に来ていた実物のシド・ミードを見かけたパシフィコ横浜で「機動戦士ガンダムUC」の音楽をオーケストラとロックバンドのコラボで楽しむという催しがあったので見物に行く。僕は機動戦士ガンダムUCが結構好きだということが何となく分かった。やっぱり音楽が良いなあ。情動を誘うようで古典的でもあって盛り上げ煽り導くサウンド。哲学的なこと教訓的なことを言う奴らがいっぱい出てくるけれどそういう言葉が妙な説得力を持つのもそうした荘厳でまっすぐな音楽に引かれてのおとなのかもって思えてくる。

 あとやっぱり展開が良いなあと。無印ガンダムにZにZZを経て逆襲のシャアでケリがついたかどうだかな世界観を改めてまとめるとともに、無印以前の世界ともつなげてサンドイッチにしつつ、間に入った宇宙世紀物の主題なのかあるいは道具立てなのか、ひとつの象徴として出てきたニュータイプって存在に、ひとつの意味を持たせてその是非を論じてみせる。単なる空想ではなく実在。その異能に対して人類がどう対峙するべきなのかという示唆。それらが繰り広げられてはひとつの結末へと向かっていくから何かひとつ腑に落ちたような気分にさせられる。そんなまとまり感、あるいは強引でもまとめた感って奴が見ていて安心感を与えてくれるのかもしれない。ああこれでひとつ終わったなあ、って安心と解放の感覚を。

 でもまあここまで密度濃く仕上げ音楽も良いのがたっぷりそろったUCを、ファイナルってことで封印するのは勿体ないって気もしないでもない。かといって続きは難しいかなあ、ミネバ様がもうちょい育っていい女になった姿を見たい気がしないでもないけどその世界は平和なのか戦乱がやっぱり続いているのか。考えると面倒だし哀しくなるのでひとつの混沌な平穏が続いていると思いたい。パッケージ替えが再流行の兆しとなるのはLDからDVDときてBDと辿った中では起こったけれど、BDで出てしまったUCがこの先そうしたパッケージの変化で盛り上がるとも思えないからなあ。ウインドウを別にしようたってテレビ放送くらいしかないし。かといって何もしないと埋もれていってしまう。SEEDとか今何してる? ってな感じだし。5年後10年後にガンダムとしてのトータルでなくUCとして何か語られるような機会、ってのがあって欲しいと願いつつ、パシフィコ横浜より去る。さあアルゼンチンだオランダだ。


【7月4日】 ワールドカップがないんでぐっすりと眠れるけれど暑さに目が覚める早朝に録画してあった「RAILWARS」を見たらうん、個人的には面白かった。主人公はもっと屈折していて本当は車両の運行の方に回りたいんだけれどなぜか公安へと配属されることになって、そこでトリガーハッピーな桜井あおいだとか肉体莫迦の岩泉聡だとかゆるふわだけれど鉄道知識は抜群の実はお嬢様な小海はるかに囲まれ揺さぶられつつ、それでもなぜか主人公然として活躍するってストーリーなんだけれど、そういう前段はまるっと省略されて普通に公安へと配属されてしまうようになっていた。まあ前段に時間かけてもお客さん、離れていってしまうから仕方がない。これが「魔法科高校の劣等生」ならアクションのない日常描写でも何となく、展開を知っているからみんな見てくれるけど、「RAILWARS」はまだそこまでの知名度、ないものなあ。

 まあ前段とかあんまり気にせず公安に乗り気じゃないけど鉄道員にはなりたい少年の活躍する物語としてまずは見ていけばそれなりな楽しさ。桜井あおいは冒頭から痴漢は射殺と言って教官の同意も得つつそれは拙いと諭されるあたりにひとつ性格を示し、岩泉聡もかけっこのシーンで1人飛び抜けた運動能力を見せてそっち方面への活躍を期待させている。小海はるかは頭脳派? じゃあ主人公は何ってところで知識でも劣り熱意でも下がり体力で負けているけどひとつ、実直で何より鉄道が好きってところを打ち出していけば見ている人の共感も得られるんじゃないだろうか。小説はそうなっているけどアニメでそこまで描けるかな。まあこれからの展開を見ていくしかないか。

 それにしても懐かしかった旧国鉄本社ビル。東京駅の横にずごんと建ってた映像に嗚呼、ああいう建物があったなあ、そして最後の日に見学に行って屋上に上ったんだと覆いだした。あと寝台特急のはやぶさなんかもでてきて乗ったなあという思い。その車両がはたしてどういう時代の何かとなるとちょっと鉄道ファンではないんで分からない。そんなあたりにいろいろと突っ込みもはいっているようだけれど、気にしないと気にならないから別にいいか。C62を走らせ100キロ以上出させるあれは一種のシミュレータって理解でオッケー? そもそもがあの距離を走らせる場所なんてない訳だし。誰か後ろから前へと声が届くのが変って指摘していたけれど、シミュレーターとして止まったまんまならそれもありか。どうなんだろう。とりあえず石炭は1カ所で燃やしては燃焼効率が悪いとは分かった。今度やる機会があったら試そう。ないよそんな機会。

 続けざまに「普通の女子校生が【ろこどる】やってみた。」を見たらこれはふんわりほんわか。絵として突出している訳でもないし展開として目新しいわけではないけれど、地方で地味に立ち上がった地域振興アイドルがきっといろいろありながらも支えられ頑張っていく姿を見られると思うとついつい応援したくなる。「Wake Up Girls」が地域アイドルの苦衷をシリアス方面に寄せて描いていてそれはそれで胸に響いたけれど、現実にそういう苦労をしている人を思うとなかなかにいたたまれないものがあるからなあ。だからあっちはあっちで応援しつつ、こっちはこっちでほっこりふんわり。失敗があってもカバーされ建ち直って何とかいく、って展開を楽しんでみていこう。オープニングには3人いるけどまだ2人。もう1人は何時でるんだろう。着ぐるみもあったけどこれもいずれまた? 楽しみ。

 木場のIMAXアターで今日が本当の意味での日本初日となった「オール・ユー・ニード・イズ・キル」を見てみる。やっぱりエミリー・ブラントの顔が小さすぎると思った。あとニヤけたトム・クルーズがどんどんと精悍にそして深刻になっていくのが面白いと思った。繰り返される1日の中で筋肉は発達しないけど、運動神経は発達してそれが肉体にどう反映されるんだろうという不思議はあるけどそれを機動スーツが補っているのだと思うと何か分かる。どうだかは知らない。表情筋は感情に即座に対応できるものなのだろうかという思いもまあ演技派のメディア担当をやっていたからニヤけ顔じゃない顔も出せるというか心にやっぱり表情はついてくるものだというか。考え方はいろいろ出来そう。

 そしてやっぱり思うのは、時間がリセットされるのは良いとして、それで過去に戻った当人ではない周囲の人たちにとっての時間はどうなるのかということ。ループする当事者の主観で同じ時間が繰り返されたとしても、その人を見送る側にとって世界は続いていくものなのか、それともそこですべてが終わっていっしょに巻き戻されるのか。多世界解釈だとか多元宇宙だとかいろいろ言葉は浮かび、それぞれについて滅亡する未来が無数にある中でやり直された時間線だけが主観者にとっての正解にたどり着くって考えもあるけれど、それはそれでなかなかにシビアな話。だからやっぱりすべてが巻戻って誰もが幸せになっていて欲しいと思うけど……。時間って難しい。

 さても木場のIMAXシアターは「ジョン・カーター」以来になるけどあの時もお客さんが少なかったのが今回も平日ってことであんまりお客さんはおらず前の人の頭に画面がかかるってこともなし。聞くと成田のIMAXシアターは傾斜があってそういうこともないとかで、だからみんな都内にあるのにわざわざ成田まで行くらしい。でも「オール・ユー・ニード・イズ・キル」に関しては割と評判になっているみたいなんで週末から一気に盛り上がってこれからしばらく満席って状態が続いたりしたら木場のIMAXシアターも人がいっぱいでちょっと頭が気になるような状況になるのかな。それはそれで嬉しい話ではあるけれど。そういや新宿の地下鉄のコンコースにいろいろと展示もあって小畑健さんによる漫画の絵とそれから映画の画面が大きく拡大して張ってあった。安倍吉俊さんのイラストがないのは残念だけれどうーん、これが時代って奴か。色紙もあって桜坂洋さんが何かショートショートを書いていた。もしかして最新作? そして今年唯一の執筆作? そうはならないでと願いたいけれど、さてはて。

 せっかくだからとバトー役の松田健一郎さんとトグサ役の新垣樽助さんが登壇した「攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears」のSTAFF NIGHTって奴を見に行ったら抽選でサイン入りのパンフレットが当たったよ。今までも何度か抽選会がある上映会に参加していたけれど当たったことがなくって、もしかしたらKINEZOで買うと半券を切られないんでそれで当たらないのかといった疑問すら浮かんでただけに、これでちゃんと座席表を箱に入れて選んでいるんだってことが分かって良かった。サインはバトーにトグサとそしてホセに素子の声の人が入っていて超嬉しい。どうも最近世間から存在を忘れ去られていて会合の案内が来なかったり、選考の仕事が回ってこなかったりするんで落ち込んでいただけに、こうやって運だけはまだ見放していないと分かっただけでも僥倖。生きているんだって実感が持てた。来週はCAST NIGHTってのもあるみたいで、流石に何か当たるとも思えないし当たっても監督やプロデューサのサインだから悩ましいけど黄瀬監督が描いた素子の太股の色紙とか、当たるんだったら行ってみたいかなあ。それが描きたいばっかりにああいう展開にしたそうだし。


【7月3日】 サッカーがない朝は目覚めも爽快かっていつとやっぱりちょっぴり物足りない。仕方ないので録画してあった「ソウルイーター ノット!」の最終回を見て魔女シャウラとの対決に臨む3人はあれで案外強いんじゃないかと思ったけれど、でもイートではないノットが3人合わさっても普通は魔女は倒せないはずだよなあ、そこがだからスピンオフ作品ってことなのかな。全体としてストーリーはまとまり見知らぬ3人が集まり心を通わせあって引かれぶつかりながらも一緒を確認していく成長のストーリーを軸にして、秘密を隠した少女がいたり過去に荒んでいた少女たちがいて、それが3人のほんわかとした雰囲気なり実直な態度なりにほだされ成長していくエピソードもあって楽しめた。本当はもっとマカとソウルの絡みも見たかったけれどそれは別の話。3人の少女の可愛さと強さを存分に味わうことが出来た。見られる範囲で4月スタートでは最高かも。BD買おうかなあ。どうしようかな。

 そうそう「弱虫ペダル」の第1期最終回を見たんだけれどもインターハイの2日目のそれも途中ゴール前数キロ地点で終了ってなかなかに挑戦的。普通ならせめてそこでの決着を見せてから次に行くんだろうけれど、どうせ3月か半月かで第2期がスタートすると分かっているから、今はちょっと骨休みとして続きへの期待を1週間じゃないけど抱き続けて欲しいという現れかも。そしてそれを受ける人が圧倒的に多いから成立するのかもしれない。いったいどこが勝つのかなあ、京都伏見か箱根学園か総北か。原作読んでないから分からないけどやっぱり強そうなのが箱根学園か。京都伏見は2人を置き去りにしたけどでもそれだけスリムだし。エースとアシストの戦い。早く見たいなあ。でもインターハイはまだ3日目があるんだよなあ、これはいったい何クールで描くんだろう。その後は。まだまだ続く「弱虫ペダル」。追いかけていこう。

 やっとこさ読んだヤングキングアワーズの2014年8月号は「天にひびき」でなぜか声楽をやることになった波多野さんがめろめろになっていた。やっぱり慣れない声楽で誰かが失敗すると引きずられる模様だれど、そこに割って入った久住秋央の実直なまでに曽成ひびきに合わせようとする頑固さが、周囲の同様を鎮めてオーケストラを引っぱり元に戻した模様。なるほどコンサートマスターというのは識者の忠実な下部でなくてはならないってことなんだろうなあ、対抗して盛り上げるタイプもいるんだろうけど完璧なひびきにそういうのは不要。ならば完璧に理解し伝えられる秋央が求められたってことになるのかな。それでひびきは満足するのかな。でも端でみていて波多野さんがやっぱり1番やきもきするんだろうなあ。それとも美月もいっしょにやきもき? 突っ込んだけどひびきの答え、分かりづらかったものなあ。どっちなんだろう。何なんだろう、彼女にとっての秋央って。

 ASUKAが保釈されたそうでどこからでてきたんだろう警察署か拘置所か、そこでいきなり「ひとり咲き」とか歌いはじめたら格好良かったんだけれどそういう心境でもなく真面目に一礼してその後どこかへ向かった模様。ヘリコプターとか車とかが追いかけていたみたいだけれどどこに行っても興味がないなあ、むしろ病院とかだったら体調を自分で気遣っているようで嬉しいんだけれど。っていうかやっぱり心配なのがその常習性で、あれだけ言われて止められなかった人が拘置の期間程度ですっぱり身から薬の影響を追い出せるものではない。やっぱり残っているだろうそれをどうやって癒しいなすか。完全に囲まれた拘置所だったらそれも可能だけれど、誘惑も多い現実社会でどれだけ耐えられるのか。厳しい人がそばにいれば良いんだけれど。それがいたらやってないものなあ。どうなるASUKA。保釈されたってことで「ON YOUR MARK」のBDでないものかなあ。

 サッカーはないけどサッカーの話題は何もワールドカップだけではなくって日本で、それも我らがジェフユナイテッド市原・千葉で大激震が起こっていた。すでに鈴木淳監督の解任が発表されていたけれど、その後任に関塚隆さんが決まったみたいでNHKのワールドカップ番組で国内解説を担当してたりして、どこか枯れた感じを醸し出していたのがこれで再びピッチへと戻って、熱い熱い戦いに邁進することになる。モチベーションとか健康とか大丈夫なのか気になるけれど、受けたってことは多分しっかり体調も気分も戻ってきているってことなんだろう。もとより千葉県出身ではあってもジェフ千葉には縁がなかった人が敢えて受けてくれた訳で、そこに本気を見たいもの。後の問題はだから選手たちの方にある訳で、本気だして行けるのか、そもそも選手は揃っているのかを検討することになるんだろう。ワールドカップの解説はそのまま続けるのかすぐにチームと合流するのか。再会されるベスト8の戦いに登場するかをとりあえず見よう。

 日本での本格的な公開を明日に控えて週刊文春に映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」の原作を書いた桜坂洋さんが登場。新潮社ではいっとき仕事をしたことはあったようだけれど文芸の総本山みたいなところに名を知られたことをきっかけにして、オール読み物だとか別冊文学界とかそんな辺りで仕事をしていずれ直木賞なんてことになってくれたら良いなあ、って思ったものの何しろ書かないから賞の取りようがない。そのあたりはやっぱりライトノベルから世に出て文芸誌へと移り直木賞まで受賞した桜庭一樹さんのパワーにちょっと達してないか。その桜庭さんは映画「私の男」がモスクワ国際映画祭で金賞を受賞したことを受けて同じ週刊文春でインタビューに答えてた。同じ雑誌に名前が載るなんて過去にあったっけ、それとも初めてだっけ。ライトノベル関係の作家がこうして活躍して一般向けに名を知られるのはライトノベル読みとしては何か誇らしい。すでに直木賞という栄誉を得て日本では知らぬ者のない桜庭さんと比べるとまだ、日本原作とされてしまうくらい名の通ってない桜坂さんにはここで一気に巻き返しといって欲しいもの。まずは映画の大ヒットだ。行くぞIMAXシアターへ。


【7月2日】 やっぱり薄ぼんやりとはしていたけれど、昨日よりはまだはっきりとした頭で見ていたFIFAワールドカップ2014ブラジル大会のベスト8を決めるアルゼンチン対スイス戦。あの攻撃力突破力に長けたアルゼンチンをもってしてもこじ開けられないスイスの守備の固さにほとほと感心しつつ、だからといって決して引きこもっているだけではなく時には攻めてもみせるアグレッシブさも失わない様にどうして日本にこういう戦い方が出来ないんだろうかと思ったり。前がかりになってもそこで阻まれながら裏をとられて失点なんて愚の骨頂。なのにそれが美しいと思っている選手たちがいるんだから始末に負えない。でもそれって前目の選手だけで、後ろの方はきっと呆れているんだろうなあ。いつかの金子達仁さんじゃないけど前と後ろの選手の意識の違いを誰か本にしてくれないかなあ。

 っていうかワールドカップ期間中は週刊になっている「Number」の最新号で中田英寿さんがコロンビア戦後の日本代表について書いているんだけれどそれがやっぱり自分が中心にあるというか、2010年の南アフリカ大会で引いて守って戦った選手たちが「『次こそは、自分たちのスタイルで勝ち抜く」。そう考えたのは02年の僕らと同じだったと思う」と書いて2014年の選手たちも、そして06年に臨んだ中田さんら日本代表が「自分たちのサッカー」を貫こうとしたことを示唆している。そして「しかし今回も06年の僕らと同じ結果に思った」と書いて共に失敗したことを指摘している。これってつまりは選手たちがいくら現場に不満を持って「自分たちのサッカー」をやろうとしても、それが実になったことはないって話にならないか。

 なるほど「自分たちのサッカー」って言葉はとっても耳障りが良いけれど、それって裏を返せば「自分たちがやりたいサッカー」であってあるいはその中身は「自分たちがやって格好良く見えるサッカー」であったり「自分たちがやって楽できるサッカー」かもしれない。というか実際そんな感じで走らず攻め込まず誰かが何かをしてくれるといった他力本願も蔓延して攻撃は停滞し、何も出来ないまま押し込まれて負けていった。そんな「自分たちのサッカー」とザッケローニ監督が目指していただろうサッカーとのギャップについては、同じ「Number」で大久保嘉人選手も指摘していて「自分たちのサッカーをやりたいって言うけど、じゃあ自分たちのサッカーって何なのか? 逆に俺はそれを知りたい」って言って中身の無さを嘆いている。

 続けて大久保選手、「これっていうものがあるのか? 俺が思うに今大会で日本の良さを出すとしたら、ブロックを組んで、前からプレスして、ボールを取ってショートカウンターを狙うのが良かった。今大会で波乱を起こしているチームのやり方は全部それだから」って日本の停滞気味の攻撃に違和感を表明している。結果は明白。主力選手が散々っぱら口にしていた「自分たちのサッカー」なんてものは負けるためのサッカーに過ぎなかったということで、それを反省するなら次は彼らに「自分たちのサッカー」なんて言わせず「日本のサッカー」「日本代表のサッカー」って奴を叩き込んで教え込み引きずっていくような強引で説得力のある監督が必要ってことになるんだけれど、果たして噂になってるアギレにそういう資質はあるんだろうか。雰囲気はあっても実際面となるとやっぱりサッカー協会に靡いてしまうのかなあ。そこが気になるこれからの展開。

 さてアルゼンチンとスイスの戦いはアルゼンチンの攻撃を守りきったスイスだったけれどもやっぱり最後にメッシの良いアシストがあってアルゼンチンが延長後半に1点を奪って勝利。厳しい試合だったけれども最後は持っている人は才能を発揮するってことが明らかになって日本にさて、これだけのタレントが育つにはいったいあとどれだけの時間をかける必要があるんだろうかといった思いが浮かんでくる。マンチェスター・ユナイテッドのウイングがいるにはいるけど本番ではからっきしだったからなあ。続く世代にもやっぱりそれだけの才能は見あたらない。となると日本は個より組織でいかなくちゃいけないんだけれど誰か特定の人の「自分たちのサッカー」が跳梁跋扈しそれに引きずられていくんだろう。メディアもそんな主体性を褒めそやす。蓋を開ければまがい物ばかりが蔓延る日本代表の未来やいかに。もう1つのアメリカとベルギーの試合も延長戦になっていた様子。決勝トーナメントになってノックダウン制になるとやっぱり誰もが「負けないサッカー」をするってことなんだろう。そこで日本だけ「自分たちのサッカー」をやって玉砕したら恥ずかしかったから行かなくて正解だったかも。行けなかったが正解か。4年後こそ。

 目が覚めたんで東京ビッグサイトで始まった東京国際ブックフェアほかの展示会を見物に行く。去年までは秋篠宮妃殿下紀子さまがテープカットに来られていたけど今年は何と眞子内親王殿下が来られてのテープカット。名誉総裁となって初めての公務といった初々しさを漂わせていたようだけれど遠目でそのオーラまでは届かずちょっと残念。もっと近づけば良かったけれど人いっぱいいたからなあ。みんな見たかったんだ眞子さまを。場内ではとりあえずボイジャーへと行きとなりのパピレスをのぞいて共に20年とかそんな長い時間を電子出版の分野で活動して来たキャリアへの敬意を覚える。パピレスなんて株式公開まで果たしてしまったんだから凄いもの。フジオンラインシステムだっけ、そんな名前で富士通のベンチャー企業として立ち上がった話を記事にしたのも遠い昔だったけれど、その間に新聞業界はどんどんと低落して専門紙は潰れ一般紙も衰退から過激に走って信頼を失っている。それが分かっていれば早く転職でも何でもして電子の未来にかけたんだけれど。出来なかったからこその窓際からさらに外。しゃあなしだ。

 めざといという点では老舗の出版社ながらも流石なKADOKAWA。電子書籍に取り組みBOOK☆WALKERとかを立ち上げているんだけれどそれに加えて立ち読みなんかが出来る機能をツイッターのタイムライン上で表現できるようなサービスをツイッターと組んで始めてしまった。言うなればYoutubeの画像がタイムライン上に現れそのまま再生できるようなことを、電子書籍でもやってしまおうっていうもので専門のサイトにアップされている電子書籍についてるボタンをちょい押すと、ツイートのためのウィンドウが立ち上がりそこからタイムラインにツイートできるようになている。そしてタイムラインに帰るとそこにはツイートに埋め込まれるように電子書籍が。読めてページもめくれてといった具合になっている。これは便利……なのか今はピンと来ないけど、いちいち当該のページに行かなくてもさっと読めるのはユーザーにとっては楽だろうなあ。

 じゃあそこから当該のページに行って購入へと向かうかどうか、ってあたりなんだけれどYoutubeはそこがプロモーションと割り切っているから、見て音楽CDを買うなりアニメのDVDやBDを店頭であるいはオンラインショップで買ってもらえればそれで良いといった感じ。対してKADOKAWAとツイッターのサービスは、電子書籍なだけに買って読んでもらうところまで誘導しなくちゃいけないんだけれどタイムラインで完結してしまうとそっちに人が流れるか、ってあたりがちょっと気になる。誰かが紹介していた漫画なり本を本屋の店頭で見つけたんで買って読んでみるかってことになるかも。まあでもまるで気にしなかった人に存在を知らしめる意味はあるし、9割が買っていないという電子書籍の購買層が少しでも増えれば意味がある。そのあたりを考えつつ先手を打っているんだろう。他のePubで作られた本が全部載せられる訳じゃないってあたりは、KADOKAWAの電子書籍販売サイトへの囲い込みを促すものか、それとも広く共通のプロモーション用システムとして解放していくのか。そんなあたりも含めてちょっと注目。

 上に上がってライセンシングオブジイヤーをふなっしーが受賞しながらもジャパンエキスポで渡仏しているため現れず残念に思いながら、それでも登場してくれたウルトラの母の美しさを堪能したり「コップのフチ子」を宣伝している「コップのシキ子」のすね毛にうげげとなったりしながら回ったあれやこれや。舎人社のブースでアニメーション作家の山村浩二さんが宮沢賢治の絵本にサインを入れてくれていたので並んでサインしてもらいKADOKAWAのブースですでに店頭から消えてしまっている「艦娘型録」を買ってポストカードももらったりしつつボイジャーのブースで池澤夏樹さんのサイン本をもらったり藤井太洋さんに本業で挨拶したら気づいてもらえずやっぱり知名度を上げるために頑張らなくてはと決意した1日。明日もやっているけどでも遠いから行けたら行こう。


【7月1日】 薄ぼんやりと眺めていたワールドカップ2014ブラジル大会の決勝トーナメント1回戦のフランス対ナイジェリアは、知らないうちにフランスが2点を奪いナイジェリアに勝っていた様子。ここでナイジェリアが勝ってもうひとつの山のドイツ対アルジェリアでアルジェリアが勝てば、パラグアイが出ず実現しなかったウルグアイとのパラウイ対決を補って、アルナイなジェリア対決が見られたんだけれど、同じアフリカにあっても両国はずいぶんと雰囲気も風土も違うから、比べるのはちょっと変かもしれない。むしろアルジェリアと旧宗主国のフランスとの対決になった時に、どんな因縁が炸裂するかも気になったけれど残念ながらアルジェリアはドイツに延長戦で2点を奪われ、アディショナルタイムに1点を返したものの追いつけずに敗退してしまった。

 あのドイツの攻撃陣をほとんど寄せ付けなかったんだからアルジェリアも凄いけど、でもやっぱり暑さに脚も止まったか。もとより暑い国で慣れているはずなのに、それで脚が攣る選手とか続出してたのはブラジルの気候が半端ないってことなのかも。でもドイツはちゃんと走ってた。体力エリートの集まりなんだろうやっぱり。そんなドイツとフランスのこれもまた因縁の対決が見られるからワールドカップは面白い。プロイセンとナポレオンのフランスあたりから始まっているんだろうかその因縁。やがて普仏戦争から第一次世界大戦第二次世界大戦と続く戦いの歴史。途中に奪還もあり占領もあってノルマンディー上陸作戦からパリ解放へと至って、今は歴史上ではフランスが勝ち逃げの状態。もはや両国が武力で争う事はあり得ないから、その代替としてドイツ的にはやっぱりフランスに勝ちたいだろうなあ。見物。放送はいつだろう。

 だから遅すぎるんだ。今になっていくら官邸を取り囲んだところで、改める安倍晋三首相ではないし改まる政府ではない。もしも本当に止めたかったのなら、あらかじめそうしたことをやるだろうと目されていた安倍晋三を総理大臣としていただく政権を、誕生させなければ良かったのであって、それはつまり先の総選挙で自民党を勝たせなければ良かったということに尽きる。代替として受け皿になる政党がいなかったと言う声もあるだろうけど、民主党が果たして国政の運営においてどの程度の間違いを犯してきたかを振り返ってみて、今の自民党と比べてみてどっちがましだったかを考えれば自ずと分かる。

 なるほど経済政策は行き詰まっていたかもしれないけれど、一部の金持ちや企業だけがさらに裕福になるような政策を打ち出すことはなかった。だいたいが今の景気も財政を出動させたドーピングのなれの果てにあるもので、薬が切れればすぐに元の木阿弥となってしまう。そうはさせじと消費税をいじり法人税をいじり、福祉を削り規制緩和という名目で外資を優遇しているのが今で、遠からず遍く国民が薄いけれども広く幸せを享受できるような状況は壊れてしまう。そうなって改めて思うのだ。なんて政権を世の中に誕生させてしまったんだと。

 そもそもが軽佻浮薄に政権交代の声に押されて、麻生太郎総理が率いた政権をひっくり返して民主党へと政権を渡して、毒にも薬にもならない状況を作ってしまったのが根元にある訳で、あそこでもしも麻生政権が命脈を保っていれば、安倍晋三の復活の目はなかっただろう。谷垣高村甘利あたりが党首として自民党を率いて、薬にも毒にもならないけれども世間的に見れば真っ当な政権を運営していっただろう。そこに劇薬をぶつけて溶かしてしまい、さらに猛毒をぶっかけ後に不毛の大地だけを作り上げてしまった。そこに城を築き我が儘勝手な政権運営を始めたのが安倍晋三総理。挙げ句に消費税は上がり福祉は削られそして今、憲法解釈の偏向という姑息きわまりない手段でもって集団的自衛権の行使容認を閣議決定してしまった。

 親しいと目されていた憲法学者ですら反対の論陣を張って押しとどめようとするその愚挙を、安倍晋三総理はどうして平気な顔をして行えてしまうのか。よほどの信念がなければそんな愚は犯せないだろう。何が一体目的なのか。一体どこへと行きたいのか。後に残るのは確実に汚名。そして非難の渦。なのに今の快楽にだけ酔っぱらったかのごとく日本をあっちへこっちへと振り回すから嫌になる。それを応援する一部のメディア。これはまあ偉い人にすがりついてれば、自分も偉いと勘違いできるだけの腰巾着で、そこに理念も理想もまるでないんだけれど。だったら安倍晋三総理にどんな理念や理想があるのか。それが今ひとつ見えないだけに恐ろしい。

 思いついたらそれをやる。後なんて知ったことかのそのスタンスが、この国を、この国民を導く先にいったい何が待ち受ける? 遠からず答えは出るんだろうなあ。目の上の追い被さるように鬱陶しいという根拠のない高ぶりだけを根拠にして、中国とか北朝鮮を向こうに物言いたい奴らのおもちゃにされ、いじられた憲法の解釈変更。それがもたらすのは、世界に疎まれ狙われるこの国の未来。イラクは政情不安だし、ウクライナはロシアと喧嘩しているし、シリアは内戦状態にあるしイスラエルとアラブの関係が改善い向かう兆しはない。アフリカでも内戦が激化。そんな渦中に放り込まれた挙げ句、いらぬ恨みを買ってしまって狙われる。怖いなあ。逃げ出したいなあ東京から。そして日本から。って東京都民じゃないんだけれね。船橋は安心だろう、ふなっしーの聖地と世界が認めてくれているから。そうなのか。そういうものだと思いたい。

 ちょっと駆け足気味かなあ、って気もしないでもない間宮夏生さんの「推定未来−白きサイネリアの福音−」(メディアワークス文庫)は予知能力ではなく情報技術によって犯罪の発生を推定してはそえを未然に防ぐことを目的に発足した警視庁捜査一課のある部署が舞台の物語。率いるのは東大理学部を出た如月美姫という才媛で、で祖父が警察庁警備局長までやっていたりしたこともバックに得て、コンピュータとネットワークを駆使して犯罪の起こる可能性を割り出すチームを作り上げた。そこに呼ばれたのがかつて両親を通り魔に殺された過去を持つ君島透という刑事。高卒のたたき上げで28歳の彼がなぜか「ミゼン」と俗に呼ばれる部署へと呼ばれてチームに加わることになる。

 そして犯罪発生確率70%という事件に挑むことになるんだけれど、そうやって次々に事件を解決しながら背後にある犯罪発生の仕組みなり、ビッグデータを駆使することによって人間を丸裸にできてしまう恐怖なりを描いていくのかと思いきや、事件はその1つに止まって君島透による如月美姫の過去探しへと向かってしまうのがちょっともったいない。彼女には殺された妹がいるということ。それがミゼンの発足に繋がっているらしいけれど話はどうもそれほど単純ではなさそうなこと、君島透がミゼンに引っぱられた理由めいたもの等々、読んで興味深いテーマはあるけどそれでいったん、すべてが露見し話が終わってしまうところがある。続けようにもちょっと事態はミゼンには逆風で、如月美姫の正体もミゼンの継続を妨げそう。というか普通の組織なら無理なだけあってこれで終わりとなりそうだけれど、でもこうやって立ち上がった部署を潰すのは勿体ないから何もなかったかのように、続いていって欲しいなあ。そして対抗して欲しい、刑事部捜査零課の音無レイカと。

 六本木から歩いて「花子とアン」でなおいっそう名前が広まった東洋英和女学院のそばにある立派な建物でボイジャーが開いた池澤夏樹さんが電子出版を始めるという会見をのぞく。っていうか今まで池澤さん、電子書籍をほとんど出していなかったようでボイジャーから紀行文とかエッセイとか出てはいるけど、メーンとして活動してきた文学方面はからっきし。何でまって思ったけれど、それについてスピーチに立った池澤さんが「言い方が難しいけど、熱心にそれをやる気があるのかと不安だった。とりあえず抑えておこう、この先どうなるか分からないけれど唾を付けておこうという位の熱意しか感じられなかった」と話してた。

 それは作家に入る印税率も含めてのことで、「コストがかかるからとか、今は売れないからというのが印税率に反映するなら、時期が熟すまで待つのが僕の姿勢」としてきた池澤夏樹さん。そしてボイジャーの提案ではコストも印税率も含め納得がいったので、過去につき合いがあったとかいう「友情ではなくビジネスとして」電子書籍化の仕事を預けたとか。この取り組みでユニークなのは小説を出していた元の版元にもお金がいくことで、それは編集者といっしょに企画を話し合い、装丁についても検討を重ねてもらい、校正者の目も通してもらって本にしてきた経験を踏まえてそれらを蔑ろにはできないという池澤夏樹さんのスタンスから来るものらしい。優しいというか、義理堅いというか。でも合理的でもあるんだろう。

 マネジメントと制作を受け持つ会社によれば10%は元の版元にシェアしたいとか。それでも当人にもボイジャーにも利があるんだろう。他の電子書籍の仕組みに対する、ひとつの提言になるのかも。そんなユニークな試みについては、2日から始まる電子出版EXPOで、池澤夏樹さんが話すようなので行って注目。あああの人が「モスラ」の原作を書いた福永武彦さんの孫で声優でありSF書評でも活躍している池澤春菜さんのお父さんだと思おう。って何か間に挟まった添え物みたい。芥川賞作家なんだぞ。「マシアス・ギリの失脚」と「真昼のプリニウス」は傑作なので電子書籍化されたら読んで欲しいなあ。そうでなくても文庫で今すぐにでも。


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