縮刷版2010年9月上旬号


【9月10日】 NDJジャパンとか書いてて、スポーツニッポンの記者とかあるいはデスクとか、まるで関係のないAKB48となでしこジャパンを結びつけてて、スポーツ記者として恥ずかしくなんだろうかって思わずつぶやいてしまったトップ記事。だいたいが48人ですらないその記事が伝えているのは、50人くらいの代表候補選手を集めて合宿して、底上げを図ろうってもの。なるほそ趣旨に問題はないんだけれども、そこに挙げられていたメンバーが先月の壮行試合でなでしこリーグ選抜に入っていた選手たちがほとんどだったところに、本当に女子サッカーを見通しているのあkなあ、って疑問も浮かぶ。

 まあ全部のチームを見て選手をつぶさに調べて書ける人もいないだろうから仕方のない話ではあるんだけれど、いくらなんでも30歳を大きく選手がバックアップに入るような状況にはないだけに、あればとっても嬉しいんだけれども宮本ともみ選手のカムバックを想定するのは、ちょっと無理があるのかも。清水由香選手のサイドバック起用も同様。あのスピードを後ろに押し込めるのは無理だし無駄だよ。せめて右のサイドの中盤とか、トップでの攪乱につかうのが清水選手の特質を存分に生かせるんだけれど。4年くらい前とかもっとはやくなでしこジャパンに入っていれば、あるいはスターになれた素質かもしれなかったなあ。

 小林弥生選手はあるいは入ってもいいし入るべきかも。あの視野の広さキックの正確さは澤穂希選手が下がった時に攻撃の組み立てを行う上でとっても重要。元のチームメートとして大野忍選手とか永里優季選手とかも特徴をつかんで使えるだろうし。でも本当はそこに名すら上がっていな東京電力マリーゼから、187センチのゴールキーパーの山根恵里奈選手を入れて欲しいところ。実力はともかく存在感だけでなでしこジャパンの知名度を、さらに上積みさせる効果を持っているから。今なにやっているのかなあ。

 高校生の少年が憧れる女教師といったらいったい幾つぐらいまでが入るのだろう。学校を出たての25歳くらいまでが許容範囲なのか、それとも教師としての存在感も出始めた20代後半から30代にさしかかった世代なのか、はたまた30歳も半ばを過ぎて女性としての色香が立ち上るような歳をも含めるのか。周囲に同じ世代の女子がたくさんいたりする状況でわざわざ、わざわざ年上に目を向ける男子もいないって意見もありそうで、だからなのかAVなり官能といった特殊なシチュエーションを尊ぶフィクションの世界を外れて、年上の女教師に心をときめかせる男子高校生の純愛ストーリーというものをあまり見たことがない。あったらちょっと呼んでみたい。きっと悶々としているんだろうなあ。夜とか。布団の中で。

 これが女子高生が年上の教師にあこがれる話しだったら枚挙にいとまがないというこの現実に、どーして教師にならなかったんだと悔やんだところでもう遅い。教員免許は持ってて大学4年生の夏に出身高校で2週間ばかり、教師のまねごとをやったもののそのときはそんなに女子高生の若々しさの溺れることも惹かれることもなかったんだけれどそれから幾らだってチャンスはあると思って待ち受けていて四半世紀、まるで良いこともなかった我が人生を振り返るにあそこで踏み込んでいたらと思うことも仕切り。っても向こう院だって相手を選ぶ権利はあるからこればかりは、ねえ。薄毛で小太りの眼鏡オタクではいくらなんでもねえ。あるいはそれが今のトレンドと持てはやされちゃったりしているのか教育の現場では。ありえない。絶対にありえない。

 ともあれ漫画に小説にドラマに諸々の傑作が存在する女子高生と年上の教師との恋愛譚に新たなる傑作が。橋本紡さんの「葉桜」(集英社)は、学校の先生ではないけれども主人公の女子高生が通う書道の教室の先生が、親切で優しげで女子高生の心をとらえて離さない。若い世代によくあるしっかりとして落ちついた上の世代への憧れが、恋心にすり替わっているだけと言えなくもないんだけれどもそれをそうだと認識できるほど大人ではない世代。とはいえ先生には奥さんがいてその人がとてもいい人で、女子高生にも優しくておやつとかくれたりしするから嫌いになれず、そんな間でくすぶる自分の気持ちと、先生の幸せを思う気持ちとがせめぎ合って落ち着かない。

 家に帰れば帰ったで同居している妹が妙に聡明で女子高生の心をざわつかせる。というのもその家系では早熟な天才がよく生まれながらも17歳になるとなぜか自ら命を絶ってしまうという伝統が。あるいは見えすぎてしまう感性がそれからを見通してしまって世を儚ませるのかもしれないけれども、そんな状態に妹があてはまっていることで家族はいつかくるかもしれない離別の日を、不安に思いながら毎日を暮らしている。そんな妹に姉の女子高生は自分が時々気にかけてあげることで今につなぎとめようとしているけれど、それが伝わっているのかそれとも鬱陶しがられているのか、分からないまま毎日が淡々と過ぎていった、そんなある時。

 女子高生は先生に連れられて友人らしい男の個展を見に行って、そこで教師は空海から最澄へとあてられた3通の手紙を写した所を見ていろいろと考える教師の姿を目の当たりにする。自分の方が上だったけれども分け合って身を隠棲させているところにつきつけらえた友人の現在。葛藤するそんな気持ちに心を迷わせる女子高生は遂に心を言葉にして、そして事態は寂しくも切ない方向へと落ちていく。聡明な女子高生の奔放さが女子高生を姉のようにさせ、大人のようにさせていたけれどもそんな本人の惑乱と、今を儚む妹の性著うとがクロスして足りなかったところを埋めあい、あまっていたところを分け合う家族の愛おしさが浮かび上がる。挟み込まれる和歌の解説が展開とピタリとはまって勉強にもなるストーリー。ラストの輝きの中へとあゆみ出すような回が好きだなあ。美しくて切ない物語をどうぞ。

 みなみケントさん原作で環望さん漫画の「エンジェルパラベラム」の第2巻が出ていたんで買ってよんだらぼいいんぼいいんとしていた。もういっぱいのぼいいんぼいいんに首を埋めて息ぐるしさを味わいたくなったけれどもそうしたことが現実にできるはずもないだけに、見た目のすばらしいぼいいんぼいいんぶりに想像の柔らかさを感じて瞑目する。いつかきっと。何をだ。天使と悪魔が人間にのりうつっては戦う間で少年がひっぱりだこという展開に、付け加わったのが少年の妹という少女。悪魔の側にいる彼女と天使の側にいる少年との間でいったいなにがおころうのか、その結果天使と悪魔の対決はどこへ向かうのか。気になる展開だけれどもやっぱり目に入るのはおしりのまるまるっとしてまるまるっとしまくったまるまるぶり。居並んで悪魔を銃撃する天使たちの後ろ姿にもう目がくらくらです。結局そこか。いやでもそこから始まる興味もわるってことで。まずは見よう。

 ぼいいんぼいいんといえば鎌池和馬さんの「ヘヴィーオブジェクト」(電撃文庫)の最新刊もぼいいんぼいいんが凄まじかったというか素晴らしかったというか。100メートルにも及び核兵器すら跳ね返す強大な兵器の登場でガラリと変わった戦争の形。一騎打ちめいた状況が尊ばれるようになったけれども、その下で人間たちもさまざまな思いから行動をはじめ、そして人間が努力と工夫で最強の兵器のヘヴィーオブジェクトを破壊することに成功してしまって、戦争の様相が激変しそうになっていたという話が骨子のシリーズ。その立て役者ともいえるクウェンサーとヘイビアの2人組が、相変わらずフローレイティア正統王国の女性将校から虐げられるように司令を受けては戦いへと出むいてそこで頭脳を使ってヘヴィーオブジェクトを撃退する偉業を積み重ねていく。

 世間的に英雄視されていることもあるそんな2人のうちのクウェンサーが、クリスマスだからと基地でパーティーに参加しているところに現れたのが巨乳のフローレイティア。サービスとばかりにミニスカサンタの格好をして歩いていたところに酒を飲まされ酔っぱらった挙げ句、クェンサーに泣き上戸的に絡んではやっぱりクウェンサーを意識しているヘヴィーオブジェクトを操るエリートのお姫さまとの引っ張り合いになったんだけれど、そこはスリムでスレンダーなお姫さま、あんまり麗しい光景なんて起こらなかったところが情報同盟という別勢力のやっぱり巨乳な女性将校のレンディが、パーティの場にやって来ては、酒を飲まされ酔っぱらっては自分のところのエリートを翻弄するクウェンサーに絡み始め、そしてミニスカサンタの上司の巨大な乳と、クウェンサーの顔を挟んで胸つき合わせる。息もできない中でクウェンサーが思ったこと、感じた柔らかさを思い何てうらやましいんだとヘイヴィア共々のたうちまわった秋。


【9月9日】 九九の日。なのかどうかは知らない。とりあえず出場は決めたもの劇的でなかったためかどうにも気分として盛りあがらないなでしこジャパン。スペクタクルより圧倒的な勝利の方が良いはずなのに、そうもいかないところに人間の、スリルを求めたがる心性って奴の厄介さが見え隠れ。とはえいなんとなーく決まってしまった出場にもう1段の気持ちの上積みができないまま、これからの1年をどうやって過ごしていくのか。国際親善試合が組まれている訳でもないし、なでしこリーグの試合だけではスペクタクルにはちょっと足りない。

 そうなると向かうのがプライベートな方面で、それがスキャンダルへと向かってメディアスクラムが繰り返された挙げ句に、消耗なんて話になったら本末転倒。そうならないためにも日本サッカー協会には、サッカーに関しての適度なスペクタクルを用意して提供して欲しいもの。U−19あたりの盛り上げってことになるのかな。大晦日の紅白歌合戦へのなでしこジャパンの登場なんて話もあるけれど、強いINAC神戸の選手たちが翌日の女子サッカー選手権の決勝に駒を進める可能性もある中で、午前の試合に向けた前日の午後の8時9時に仕事をさせるってのもやっぱりちょっと違いそう。とはいえそこで全国にアピールする意義ってのも分からない訳ではないだけに難しい。今は身を削ってでもアピールに務める時期なのか、もはやスポーツに徹するべきなのか。それが課題になっていくんだろう。

 「MODERN NO.2」を引っさげベネチアの方で頑張っている水江未来さんのベネチアでのワールドプレミアを経て、いよいよジャパンプレミアがあるってんで渋谷のユーロスペースまで行ってCALF夏の短編祭を見物。その前に夕食でもと入った店は何だろう、高級袋麺をその場で調理して出してくれる店なのかどうなのか。分からないけどそんなパッケージが並んだ店頭がちょっと興味深かった。味はまあそれなり。でも1杯450円で大盛りでも500円は安いよなあ。ラーメン1杯に800円とかかかり過ぎなんだよこの国は。とりあえず今回は和歌山ラーメンを食べたけれども次ぎに機会があるなら札幌か佐野に挑戦しよう。

 戻って始まった短編祭は、まずもって諏訪敦彦監督の「黒髪」って話からスタート。どうやら不倫しているっぽいおっさんが、ベッドで相手にしている女性が最初はかつらをかぶってて、それが長い黒髪を出して驚かせてひととおりすることをした後で、女性だけが洗面所に行って髪を手ですくと抜けるという。広島では放射線の影響で抜けたという話が最初に振られていることと重ね合わせての女性の黒髪が抜けるという状態への戦慄と驚嘆、それをもたらす放射線への異論って奴がこめられていそうな映像だけれど、果たして普通に見る若い人にそういうのって伝わるものか。「はだしのゲン」とか見てそういう状況の凄まじさを、強烈なビジュアルで植え付けられた世代にはピンと来るけどそれにくらべるとどこかマイルド。とはいえそんなマイルドさでもって誘いじんわりと感じさせることの方が、今の世代には必要ってことなのか。オムニバスらしいほかの監督の髪についての映像作品も見てみたい。

 続く大山慶監督の「HAND SOAP」はキャラクターの何というかグロテスクにキッチュで森の安藤的というか感情移入を拒絶するような地味さだけれども、そんな中でも眼鏡っ娘の妹に目を向け心を添えてしまうのがオタク動って奴だったりするから情けないやら勇ましいやら。学校であれは虐められでもしているんだろうか、そんな少年が家では黙々とご飯を食べ家族とふれあい妹は何か秘密を抱えているようだけれど、それでも暴れず切れないで過ぎていく淡々とした時間。家族ってものから遠ざかっている身にはあんなこぢんまりとして地味な過程でも懐かしくそして憧れる。家に帰って部屋がいっぱいあって団らんがあって誰かがいるって生活に、果たしていつ巡り会えるのか。遠いなあ。おそらくは永遠に無理かもなあ。

 ざあざあざあざあ。始まった途端に画面が移らない中をささやくような声がしたのが最後の記憶。あとは時折途切れるように浮かぶ意識の向こう側に、ザラついた模様が動いて何かを映し出しているように見えて何も映し出していないような画面が続いて心を挫き、意識を再び闇へと飛ばす牧野貴監督の「In Your Star」を果たして僕は、覚醒したなかで見通すことがいつか出来るようになるのだろうか。その意味性は存分に感じながらも態度まで靡き頷いて受け入れるだけの鷹揚さを、今はまだちょっと持ち合わせていない。メッセージ性を持ったアーティスティックな行為として見れば見れないこともないけれど、映画という形式を取っているそれにアートなんだねとレッテルを貼って良いものか否か。かといって万人が見て楽しい娯楽とも違う。心地よさとも縁遠いそれをどう位置づけ判断するか。何でもレッテルが貼られカテゴライズされてしまう時代にそんな迷いを与えるって意味でも、「In Your Star」は凄いのかも。ざあざあざあざあ。

 男共が最低。あるいは腐ってる。そんなシナリオを男性監督が書いて演出して撮影したのは何か自虐かそれともそれが普通の感覚なのか。見て女性たちはいったい何を思ったか。それが知りたくなった今泉力哉監督の「TUESDAY GIRL」は、のっけから橋の下で弁当食べてるリストラされた長髪男とどこか優柔不断っぽい男の横で、水切りに興じるセーラー服の女子高生たち。そして優柔不断っぽい男は、結婚するからと長髪に介添人だかの署名をもらった婚姻届を家に持ち帰って相方と会話するんだけれど、そこに漂うどこか不穏な空気。かつて告白してくれた女子に報告するのが約束だってことで訪ねていった優柔不断男は、そこで再会した相手といろいろあったことを正直に言って相方の腰を抜かせ、ひっくり返らせ大笑いさせる。それが正直な優しさだというならそうかもしれないけれど、相手のことをまるで慮らないその態度の傲慢さ無神経さがどうにも苛立たしい。

 長髪男も長髪男で、いっしょに暮らしている彼女と向き合わずテレビに興じて愛しているとう本心を言わず相手をぼんやりとさせる。妊娠したということすら告げられない彼女の不安はトンカチとなってテレビに向かいそしてようやく成就した関係。けれども長髪男は河原で女子高生と対峙し思わせぶりな雰囲気でもって相手を翻弄してしまって、それが最後にひとつの衝撃をもたらす。婚約目前の男も長髪男も、毅然としてきっぱりとすれば避けられたことなのにそうしなかったことで生まれたあれやこれや。それが監督にとっては自虐的な告発なのかそれとも男の仕方なさを示しているのか。ちょっと聞いてみたいし女性の観客は見て何を感じたかもちょっと知りたい。とっとと叩き出すなりけ飛ばす成りそれでもすがるなりするのか。男共の気持ちが分かるのか。うーん。愛にも恋にも縁遠いとまるで検討もつかないや。

 続く鈴木卓爾監督の「ワンピース−泥棒」に出てきた男も、引っ越してきた先で書こうとしている婚姻届を鉛筆で書こうとして咎められて、ボールペンがないだの鉛筆で下書きだのと言い訳するところが情けないやらみっともないやら。それに惚れたのか相手も大きくは咎めないけどそこに挟み込まれるパパイヤ鈴木、ではない妙な男の登場とそして妙な行動を経て10年すっとんだ時間でもって再会されるドラマで、今度は離婚届をやっぱり鉛筆で書こうとしている男の態度にやっぱりこいつ離婚されて当然だって情けなさを見る。一瞬で飛ぶ時間は何だろう、時間泥棒でも現れたって意味を表そうとしているのか。テクニカルな撮影の面白さもある上にそんな転換をうまく使って10年の紆余曲折を表現してみせる腕。なかなかかも。

 最終日ってこともあったし遠くベネチアの方でワールドプレミアも終わったってこともあって日本で初公開された水江未来さんの「MODERN NO.2」が最後に流れて、ストーリーもメッセージ性も強くは打ち出されていない、幾何学的な模様が音楽似合わせてリズミカルに動く映像がまずは心地よくすーっと目に入ってきて、長丁場だった複雑な映像芸術の重さをすっと軽くしてくれた。それはなるほど無機質だけれどそんな動きの向こう側に見える近代の発展と衰退って奴が感じられたり、生命の躍動って奴が伺えたりするところが水江未来さんの作品の特質。細胞がうようよと増殖していくものとはまた違った、無機質の中に漂う生命感って奴を存分に感じられた。これってベネチアで世界にどう受け入れられたんだろう。オリゾンティ部門の発表が楽しみ。


【9月8日】 アルバイトのアニメ誌編集者から超大手アニメ誌の編集長となり、アニメとコミック関連を仕切る立場となってそしてそれも含めた文芸も何もかもを手がける社長となった、アニメわらしべ長者の最高峰みたいな人だったらもう、誰だって彼ですらその手中に収められそうな気もしないでもないけれども、そこはやっぱりアニメの魂を宿す人だけあってアニメが好きな女性を好きになったというか、どうというか。そんな過去の経歴を知っているだけに、立場を利用して云々というよりもむしろやっぱりそこに向いたかという納得感が漂った、大手出版社社長と人気腐女子アイドルユニットの関係記事。メンバーには元レースクイーンのすらりとした美女もいて、どーしてそっちに向かわなかったんだろうという気も浮かぶけれども、そこはやっぱりアニメの魂を裏切れなかったということか。ともあれ果たして成就するのかしないのか。しないんだったら僕にもまだまだチャンスはある、わけないか、うん。

 おっぱいがもっとも叫ばれた30分間が前週だったとしたら、今週はひんにゅーがもっとも叫ばれた30分だったかもしれない「魔乳秘剣帖」は相変わらずどこに向かっているか分からない旅路で、千房とかえでのペアにふりかかる新たな災難は、よりにもよって貧乳を描きたいという奇特な絵師との邂逅と、その彼を目の敵にする魔乳の草とのバトル、っても跡目の千房の相手になる訳でもなく、さっさと縛られつるされるそんな草どもを脇に置いて、貧乳をどこか物珍しさも含めて愛でる絵師と、元はそうしたものではなかった過去を悔やむかえでとの間に生まれるすれ違いが、大きいとか小さいといった価値でしか人を見られない風潮への警句なんかを発しているかというと、そこはやっぱり「魔乳秘剣帖」なだけあって、いっぱい出っ張っていてたっぷり揺れるビジュアルか、あるいはぺったんこどうしが胸つき合わせて大きさを競う痛ましい光景へと、目が向いてしまうのであった。いったいどう終わるのかねえ、このアニメ。

 今敏監督の一切について触れられているはずもない「ブラックスワン」のブルーレイとDVDが出た、というかブルーレイにはDVDがくっつきDVDにはブルーレイがくっついていて、なおかつデジタルコピーの権利までもが含まれている訳わからない的展開がされている「ブラックスワン」にあって、さらにおまけがくっついたデラックスボックスって奴を捜して買って開いたら、おまけのフィルムがナタリー・ポートマンではなくって、その母ちゃんがナタリーの絵を描いている姿が後ろから撮られた場面だった。これっていったいどういう顔をして受け入れれば良いんだろう。というか5000ボックスしか用意していないんだから、そういう誰も喜びそうもないシーンは最初っから避けておいて欲しかった。まあでもそんな執着心が見えるシーンは今敏監督の映画にも重なるんで、そうしたことを確認できる場面と思って持てば……やっぱりあんまり嬉しくない。ベッドの上でうつぶせでごしごしシーンは果たしてあるのか?

 うまくないなあ、そりゃあ確かにボールの転がりが悪くって、パスでつなごうにも途中で止まってしまって相手のプレスに奪われてしまったり、トラップをミスして奪われたりすることもあったりするから仕方ないけれど、それは相手にも共通に言えること。なのにプレスして相手のミスを奪って攻撃する、って場面があまりないのはプレスに行く体力がもはや尽きていたのか、それとも相手をどこか軽んじていたのか。そんな女子サッカー日本代表ことなでしこジャパンの北朝鮮を相手にした戦いぶりは、中盤でのキープもサイドへの展開もオーバーラップも中央への走り込みも、どこか後手後手感が漂っていて乗り切れない。かろうじて1点は奪ったけれどもそれだって偶然の賜みたいなところもあって、このままではいけないと澤穂希選手が厳しい顔で引き締めたにも関わらず、その後もやっぱり中盤が間延びし、プレスをかけられないままバイタルエリアを蹂躙される局面が続いて。

 やって来たロスタイムにゴール前へと攻められた日本代表は、絶対にやってはいけないクリアミスを奪われ蹴り込まれて同点に。勝てばすんなりとロンドン五輪への出場が決まったところが、引き分けでは続く中国とオーストラリアの試合をまず経て、その上で中国との対決に持ち越されるという2段が前くらいの突破への関門が出来てしまった。そりゃあそれまで護ってはいたけれど、たった1回のミスでも致命的になってしまうのが勝負事で、それをまず注意するのは仕方のないこと。その上で個人がそこでミスしたら致命傷になるのは当然なシチュエーションを、作りだしてしまったチームの責任なりつたなさを、徹底的に糾明して次ぎに同じ過ちを繰り返さないようにすることが大事だろー。それが出来るチームだと今のなでしこジャパンを信じているけれど、この数ヶ月の喧騒がマインドに与えた影響も皆無ではないだけに心配もふくらむ。1年で改まるかなあ。

 いやだから1年は出られることが決まってからの年限だけれど、幸いなことに続く試合でオーストラリアが中国を敗って、これで日本の2位以内が確定して晴れてロンドン五輪への出場権を獲得した。決まるときはあっさり決まるもんだなあ。試合を経て勝ち取ったって感慨が足りないところが悩ましいけれども、それでも出られるってことはとっても良いこと。それが最大の目的だった訳で、無事に実現したチームの監督と選手たちには、おめでとうありがとうという言葉を贈りたい。続く中国戦は主力を落としたいところだけれど、そんな中国が敗れることによって出場できるチームが別にあったりする以上、中途半端な試合をすればそちらから恨まれるしやっぱりフェアじゃない。最大限の力を出して最高の試合をしてそして、誰からも当然という結果を残して欲しいもの。どーするニッポン。


【9月7日】 すごいぞ本当にじょぼじょぼっとしてしまったまひるちゃんを放送したぞ「神様ドォルズ」。まだ普通だった阿幾とまだ隻だった匡平が森で戯れていたところに倒れていた日向家の隻になったばかりのまひるちゃん。阿幾が脅して匡平が諭す泣いた赤鬼的な役割分担があったかは知らないけれども、それでほだされかかったまひるの気持ちがその後に始まる陰惨なスペクタクルの渦中にあって、命を救ってくれた匡平に向いて固定されてから8年ほど。いったい今いくつなんだろう的疑問はあるけれどもそれなりな見ばえとなったまひるの登場に喜ぶかと思いきや、匡平にはすでに巨大な乳とその胴体があって再会に靡かなかったというかそもそもが眼中になかったというか。可哀想なまひるちゃん。

 そして始まるまひると詩緒とのバトルがおそらくはこのシリーズでのクライマックスになるのかな。単行本なら7巻くらいか。途中で仙台に引っ越しした空守村出身の母と子と詩緒との切なくも優しい邂逅のエピソードなんかは次回に回し、そして帰郷した匡平や日々乃らが遭遇した天照素とのバトルなかも大々的に繰り広げられるのも次回のシリーズってことになるんだとしたら、貴重な眼鏡っ娘の紫音の登場もそれまでお預けってことになってちょっと残念。もう一方の眼鏡でデコな久羽子はしばらく出てきてないし、出てきたら来たで国会議員なんかとのバトルもあるからちょっと話は陰惨な方向へ。それをやりたくないからあんまり阿幾と平城や下山との接触をあんまり描かずに第1期を終わろうとしているのかな。だとしたら正解。そんなあたりにシリーズ構成の妙を見る。いい仕事しているなあ。

 妙な暑さが残る部屋で寝られずテレビを着けていたら妙なSFドラマがやってて何だと調べたら「ヘブンズ・フラワー」ってSFドラマだった。1月からスタートしていたみたいだけれど、気づかないうちに東日本大震災の影響もあって放送が中止に。つまりは「魔法少女まどか☆マギカ」みたいな感じになったんだけれどあちらは4月に残りの話数が放送されて事なきを得たものの、こちらはそうはいかず夏まで引っ張ってから再放送となり、そして未放送になっていた残り3話の放送を行うことになったっぽい。

 といってもすでに5話まで放送がされて6話と7話を見せられて、普通だったら意味不明に終わりそうなところをSF者はだいたいの設定を理解して、勘所を掴むのに長けているようでほぼ理解。そしてこれから始まる世界が滅亡するのかそれとも立ち直るのか、ってところの分水嶺に迫るドラマを楽しめそう。何かが爆発してそれで花が咲かなくなってしまった日本で起こった深刻な食糧難、って設定はなるほど確かにあの現実を踏まえれば放送するのも難しかったかもしれないなあ。なおかつ時折挟み込まれる未来の様子は今よりもさらに厳しそうなだけに、滅亡を予感させるドラマを放送して納得を得られる状況でもなかったってことも言えそう。

 とはいえ何かが起こればこうなりかねない、って示唆を与えて今を省みさせるのもSFの、あるいはフィクションの役割とするならば、今というこの磁気になって放送されることはやっぱり必要だった。TBSの判断を支持したい。そして理解してくれるだろう大勢の人にも感謝を。同じTBSでは深夜ドラマにしてはな豪華キャストが話題になっている「荒川アンダー ザ ブリッジ」があるけれども「ヘブンズ・フラワー」もこれでなかなかに豪華キャスト。ヒロインは「私の優しくない先輩」の川島海荷さんで別に自意識過剰な演技はしないで、逆に自意識を遮断し殺し屋に徹するようなクールな演技を見せてくれてて違った1面が楽しめる。そして得体の知れない演技をする本田博太郎さん。怪奇役者の後は告げるか。

 さらに三田佳子さん。大河ドラマの常連で日本を代表するような大女優だった人が深夜ドラマで日本の裏に暗躍する怪しい女を演じている。包み込むような妖艶さを保っているところは流石。そして草刈民代さん。バレーサンダーならではのすらっと伸びた背筋でもって演じる役は軍服姿でおかぱ頭のメガネっ娘。もう最高。食糧庁長官として日本の未来を左右する場に居合わせ判断に迷いながらも強気でいくそのクールさ、ハードさに思わず「踏んで」と言いたくなった。この人を見るためだけにDVDボックスを買うのもやぶさかではない。っていうか多分買うな。そういうものだ。

 なるほど確かにアニメーションの世界でその名を言えば、誰もが知っていてその仕事についても誰もが目にしていたりするけれども、1998年あたりからそっちに移って仕事をしていたゲームとかフルCGアニメーションの世界でいったい、金田伊功さんがどんな仕事をしていたのか、ってことになると一昨年のメディア芸術祭でちょっとだけ、パネルとか映像によって紹介されていた程度。どういった関わり方をしてそれが映像なりゲームの上でどういった表現になっていのか、ってとところを調べたくてもこれまでは情報も資料もスクウェア・エニックスの奧にあってなかなか外に出てこなかった。けれどもやっぱりこれは世間に示すことが必要と、「ゼビウス」の遠藤雅伸さんが尽力してスクウェア・エニックスの時田さんの賛同もあって、CEDECというゲーム開発者の大会にて講演が実現。これは見逃せないとえっちらおっちら東京都を横切りパシフィコ横浜へと向かう。

 エイベックスの人が出てきてマルチユースに向けてどうするかって話で隠さず抑えず出せるものから出していかないと盛りあがらないよ的発言と、その後にロビーの展示で新清士さんが喋ってたコンソールとパッケージの組み合わせによるゲームビジネスはもはや死滅へと向かって今やソーシャルの世界こそがプラットフォームとしても1番だし、発展していく可能性もあるって話なんかから、ゲームが感性された世界を味わうものからローンチされて後も進化していくサービスを楽しむものにパラダイムシフトしているって印象を抱き、コンテンツも同様に完成されたものを大勢でよっっこらしょと楽しむ時代から、過程も含めて楽しんでいく方向にシフトチェンジしているんだって印象を抱く。そんな流に乗れてないのがアニメーションだとしたらうーん、未来はいったいどーなんだろう。でもこればっかりは過程ではなく成果としての世界を味わいたいんだよなあ。難しい。

 そして講演ではスクウェア・エニックスに仕舞われていた金田伊功さんの切ったゲーム向けの絵コンテなんかが紹介されて、その見るからに金田パースに金田アクションに金田エフェクトな感じが、ゲームの中でもしっかりイカされているものもあったという状況を認識。そんな金田さんの仕事がゲームを楽しむ上でしっかり効果を発揮していることに、あの業界にいて決して間違ってはいなかったという理解も抱く。そりゃあアニメでバリバリやって欲しかったって気持ちもあるけどそこかで教えられ巣立った人はいっぱいいる。そうではないゲームの世界で金田さんがどいう見せればカッコイイかを探って見せて、それを受け継いだクリエーターがいて今のゲームの見せ方に、反映されているとしたらそれはやっぱり嬉しいこと。コンピューターが作り出す無機質で整った世界に人間の汗と魂を入れ込むことが果たしてできるか、って挑戦にアニメでの成功を引っさげ挑みやっぱり成し遂げた金田さん。その偉績はやっぱりどこかでまとめて欲しいなあ。出版部門もあるんだからスクウェア・エニックスでやってくれないかなあ。


【9月6日】 クリオネでネコだからクリオ寝子。ふうん。クリオネでネコだからクリオ寝子。なるほどそれはとっても大事なことかもしれないなあ。分かりやすくて覚えやすいネーミング。作ったのがしょこたんこと中川翔子さんなだけにそれだけで売れてしまいそうなところを、それらしさを上乗せするよーなネーミングでもって畳みかけてくるとはなかなかどうしてしっかりマーケットのことを考えている。えらいなあ。そんなクリオ寝子がいっぱいいたインターナショナルギフトショーの会場では、数年前から出展していて目についていたにゃんぱいあとか、最近は千葉テレビにて占いを放送中のセバタンなんかも登場。これからもりもり出ていくキャラやらいよいよもりもり出てきたキャラなんかもある中で、果たしてしょこたんのクリオ寝子はどんな感じに飛び出すか。キディランドでいよいよ売り出すそーなんで、気になる人はゴーだゴー。

 ひらひらと場内を歩いていて手塚プロダクションが新日本プロレスとコラボレーションし始めるってポスターを発見、別に棚橋弘至選手がアトムになる訳でも、まして中邑真輔選手がサファイアになる訳でもないけれども獣神サンダーライガー選手はちょっと魔人ガロンにはなって欲しいかも、いや似合わないかも。前にBJリーグだったかともコラボをしていたりしてスポーツ方面にそのキャラクター設計力を振り分けていた手塚プロダクション。一方でキャラクター性だけは豊富な新日本プロレス。それらが重なることによって生まれるのは果たして女性層を狙う可愛らしさか、子供層に浸透しそうな親しみやすさか。少なくとも男共をぐっと引きつけるようなワイルドさではないよなあ。それをやるならやっぱり原哲夫さんとのコラボが必要かも。革ジャン来て。肩に棘とかぶったてて。ってそれはロード・ウォリアーズじゃないか。時代は巡りキャラクターは故郷へと還る。

 リラックマとか歩いていたりHANSAの巨大でリアルなぬいぐるみがいよいよ本腰を入れて日本市場を狙い始めていたりと見どころもいろいろだったギフトショー。スターウォーズのライトセイバーが傘になった品とかあったけれどもこれ、傘を閉じると光っているのが見えないんだよなあ、それはちょっとつまらないけど開いて驚かせるのも楽しいからそれはそれで悪くないかも。バンプレストにはカピバラさんに続くキャラ。やっぱりのたくっていてそうな奴。タカラトミーグループはタカラトミーアーツが出展。本体では玩具をやってこちらではバラエティ系をやるって感じに棲み分けが出来てきたってことなのか。いっそ社名をドリームズ・カム・トゥルーに変えてしまったらそれは大昔に時代が逆戻りだ。あの当時もいろいろ愉快なグッズがあったなあ。

 今回も前面に手をかざすと歌を歌ったりリズムを奏でたりする「ウタミン」とかゆー楽器玩具を出展。プロフェッショナルが使う楽器としてはいささかこころもとないけれど、アクションがに対する反応を得られるって点で何かしていたい子供には面白い玩具だし、大人にはこれを使っていろいろと試せる楽しみがありそう。合奏なんかも可能だからこれをパーティーなんかで意中の彼女に持たせていっしょに演奏してあげたり、教えてあげることによってコミュニケーションを深めるって手もあったりするのかも。問題はそんな意中の人をパーティーに呼ぶなんてことが出来ないことか。それが出来ればコクってるよなあ、普通。タカラトミーアーツではあとは「うまい棒」を縦にスライスする装置か。細いスティックにしていろいろ混ぜるとバラエティある味を楽しめそう。1本だけわさびからしを刷り込んでおけば“当たり”だって演出できる。パーティーで遊びたいな。だからそんなパーティーに呼ばれもしないし呼ぶ人もいないんだってば自分。寂しい冬がやって来る。

 生天目さんだよ声が妖怪の。そんな「夏目友人帳・参」は雷が落ちると酒が出ると森に向かったニャンコ先生をおいかけていった夏目の目に、木の上から何かおちてきたものが入り込んでとっても痛い。そして何かが現れ友人の田沼の中に入り込んで起こったいろいろが、前半として描かれる中で田沼の中から現れた妖怪の声が生天目仁美さんだったという次第。割に有名さより普通な演技ができる声優さんを集めてガヤとかサブをやらせることが多いような「夏目友人帳」だけれど、生天目さんは人気声優であってなおかつ普通に洋画の吹き替えなんかもやっていそうだからあるいは起用されたのか。来週はさらにドスの聞いた声を出して夏目と戦ってくれそう。ニャンコ先生は役にたっているのかいないのか。多軌はしかし本当にニャンコ先生に目がないんだなあ。バンプレストかどこかの今度の1番くじとか、オールニャンコ先生だからきっと飛びつくだろうなあ、あの地域で売ってるコンビニがあればだけど。あるのかあの町にコンビニとか。

 へえ、都並さんちゃんと理論立てて解説できるんだって思った日本代表とウズベキスタンの試合。感情的にならず応援モードでもなく守備陣のラインをどう構築して誰がどうカバーに入りそして中盤からプレスをかけている間に押し上げるような展開を、冷静にすらすらと喋ってそうかそう守れば良いんだって思わせてくれる。攻撃だって的を射てはいるんだけれどそのとおりに選手たちが動かないのが監督の理想と現実との乖離。それでも残念がらずに淡々と喋るところを見るとあるいは監督の器量が前よりもさらに何段か、増しているのかもしれない。そんな試合は1点を奪われてから攻撃に移れず相手のもらい治め反転して切り返し突進してはパスを出すリズムにやられっぱなしだったという感じ。

 見たところフィジカルでガンガンと来る欧州ってより、テクニックで見せる南米に近い体の使い方に、日本のセオリーどおりの守備では翻弄されてしまうというか、やっぱりかわされてしまうというというか。攻撃もなあ、良いところまでいっても決定機を決められないとそれが尾を引くというか。李忠成選手はそんな暗黒スパイラル。ちょっと永里優季選手に似てるかも。まあ同点で勝ち点1はゲットできたんで良しとするか。清武選手は攻撃に多彩でもそれ以外だと淡泊そう。後からはいってきて歩いてちゃ、いかんでしょ、っていう感じ? やることさえやっていれば良いのかな。とりあえず次ぎだ次ぎ。


【9月5日】 Y染色体が磁気嵐か何かで破壊されて、男子だけが滅亡した2012年から1980年ばかり経った3992年に生まれた安斎・Y・姫は、なぜかまるっきり男性だった。これはいったいどういうことかと思いながらも、卵子を提供して結合して姫をつくった2人の母親は、姫を慈しんで育て、姫も学校には少女の格好をして通っていた。もっとも、そんな姫を好く皇という学校でも人気者の才女が現れ、自分の卵子を結合させる卵子提供者のパートナーとして姫を選ぼうとした時、そんなものはない姫は黙っていられなくなって自分を男子と告げ、そんな化け物だったのかと皇は姫を拒絶し、そして華やかさにあふれた学園生活は終わりを告げる。

 百合めいた話に女装の男子の話が交じって、ほんわか進むコメディかと思った阿仁谷ユイジさんの「テンペスト 第1巻」(講談社、582円)だったけれども、男子という存在が絶滅してしまった世界を描くSFコミックとして進展。女子から獣なり化け物扱いされているという未来が恐ろしげに描かれ、男子の股間をキュンと締め付ける。なおかつそうやって生き延びたはずの女性だけの地球にも、やがて再びの滅亡の、それは決定的な滅亡の危機が忍び寄ってきて、未来への不安を抱かせる。

 いったいどうすれうば人類は生き延びられるのか。地下にもぐって研究者になっていた姫と、地上で堂々のエリート研究者になっていた皇との、直接ではないけれども再会めいたものがあった先、世界でたった1人の男をめぐっていろいろな騒動が起こり、そして人類の未来なんかが示されそう。そもそもどうして男子が存在できないはずの世界に、姫のような男子が生まれたのか、といった謎もあるけれども、そういうこともあるのかもしれないとかいった可能性を鑑みつつ、人類がこの先いったいどうやって生き延びていくのか、そのための方法はどんなものなのかといった模索のドラマが、これからの展開ので繰り広げられそう。

 もはや概念の中にしか存在せず、それすらも薄れかけて空想の世界に追いやられているだろう男性が、世界にいると分かって人はいったいどんな振る舞いをするのか。死滅を防ぐ唯一の存在と群がるのか、存在すら許されない汚らわしい生き物とパージされるのか。Y染色体を運んで生殖の時だけ役立つ男というものの存在意義なんかにも迫ってくれそうな物語。第1巻のラストの光景の不気味さが、人類の未来を疑わせてくれるからちょっと不安だけれど、そんな不安を乗り越えて、希望を見せてくれると信じて続きの刊行を待とう。

 SFだから世界が滅亡してしまう可能性を文学として模索し、そのビジョンを示すことによって現実世界で滅亡しないための方策を探る手だてを与えるなり、本当に滅亡してしまった時の心構えを与えるといったことができる。もちろんそうして人類の未来なり人の命を欲しいままにするには筆者の覚悟が必要。それを提示することによってもたらされる誰かの苦悩を自分で背負い、その先に大勢が何かを得られるようにして許しを乞う。翻ってSFだからと大勢の死者と行方不明者を出した台風に、自分たちは被害を受けなかったといって賞を出す行為は果たして是か否か。

 それが何か未来に示唆を、人類に可能性をもたらしてくれるなら振る舞いとして認められなくもないけれど、現象として興味深かったといって提示するのはやっぱりちょっと頂けないし、それに多数が共感することもどこか収まりが悪い。ちょっと拙いとそこで止め聡し流すくらいの英断があっても良かった来もするけれどもそもそもが投票という意思表明において、影響を鑑みる必要があった。それでもなお票を投じるならばSF者よ、覚悟を抱き言説を受け止めそして未来を指し示せ。ああっと池澤春菜さんへの贈賞はもう当人がその気もガンガンに去年の雪辱をバッジにして胸に掲げていた段階で決定していたようなものだから、これは全然是だとし認め讃えよう。目指せ2連覇、っても夕張はやっぱり遠いよなあ。どうしようかなあ。

 ちゃーちゃちゃーちゃーちゃーちゃーちゃーちゃー。って書いたってそれが「ドラゴンクエスト」のテーマだなんて分かるわけないよなあ、でも耳にすればやっぱり浮かんでくるどこか楽しげな光景。1作たりともプレーしたことがない自分にだって、その音楽とともにゲームの光景が浮かんでくるくらいに“国民的”となったゲームソフトトの最新作「ドラゴンクエスト]」の発表が開かれたんで新宿都庁前からえっちらおっちら歩いて会場へ。毎度の会場だけれどやっぱり遠いなあ、どうせだったらもうちょっと近場でやって欲しいなあ、なんてことを言いたくなるけど仕方がない。広くてもステージが遠くなるだけだし、近い場所で見られて話もじっくり聞けるにはこれくらいの規模が良いんだろう。

 そんなこんなで発表された新作「ドラクエ]」は何とオンラインゲーム。かつて「ドラゴンクエスト9」を出した時にニンテンドーDS向けですれ違い通信なんかの機能が組み込まれることによって、誰かと繋がる楽しさって奴を現出せしめた訳だけれども今度は本当にネット上にコミュニティーを作り、リアルに存在するだろう誰かと繋がることが可能になる。大勢がその楽しさを口にしてコミュニケーションの種になってたゲームが、本当にコミュニケーションのツールになることでもあるオンライン化。まさに待ち望まれていた「ドラクエ」の進化系って言えるのかもしれないけれど、そうしたコミュニケーションが苦手な人間にとってちょっと敷居が高いんじゃない? って思ったらそこは堀井雄二さん、しっかり考えてくれていた。

 誰かを誘って友達になってパーティーを組んで冒険に出ることができなかったらコンピュータが作りだしている誰かを誘ってパーティーを組むことも可能。たった1人でアクセスをしてお供をひきつれ旅から旅へ。別れたり落ちたりする気兼ねなんていらないその気楽さが、オンラインゲームの楽しさと果たして整合性のとれたものになるかどうかは微妙だけれども、「ドラクエ」という看板タイトルがオンラインゲームだからという理由で誰かにとっては敷居の高いものになっては本末転倒、1人で遊べて大勢でも遊べる仕掛けを作るべきって判断がそこにあるんだろう。とはいえネット環境にあって接続できるってのもやっぱり敷居だし、そこにかかるだろう費用、あるいは課金システムの問題が「ドラクエ」を楽しんでいる子供たちをパージしかねないって問題も浮かぶ。そんな辺りをどう解消して“国民的”なゲームとしての地位を守るのか。発売に注目したいしその後の展開にも目が向かいそう。

 何か急にあちこちで店舗を見かけるようになった「東京チカラめし」が新宿西口にあったんで入ろうとしたら中がまっくらだった。休みかなと思ってのぞき込んだら人がいた。ガラスが黒いだけかとなお見たら中で電気がついて明るくなって外から見えるようになった。停電してたんだ。中でご飯を食べていた人は大変だったかも。そんな「東京チカラめし」のメニューの焼牛丼や焼いた肉がご飯の上に乗っているだけといえばだけだけど、そういうのが食べたい人間にはなかなか嬉しいメニュー。味も悪くない。それに卵をかけるのが作法として、あるいは味として正しいかがなお謎だけれどもちょっと通っていろいろ試し、極めてみても面白いかも。しかしどーして急に増えたんだ?


【9月4日】 トラップがなあ。いくら下の芝生が長めでほとんど牧草地って感じになっていたってそこはトップ中のトップのチームでトップを張ってる選手たちなんだから、どんあ悪条件であっても足下にぴたりとトラップを決めてそれを奪われるような真似なんかしないで即座に攻撃、あるいは素早いパスへと展開しては相手を翻弄していって欲しいと思ったけれどもなでしこジャパン、やっぱり日本の綺麗なピッチで試合しているからなんだろうか、送られてきた絶好のパスのトラップをミスしては相手に寄られ打てず得点の機会を逸してしまう場面か幾度か見られたところにこの大会での、なでしこジャパンの苦戦の一因が伺える。あと走ってない感じ。

 中盤が持ったらサイドが走りサイドが持ったら中盤が近寄りサイドバックが駆け上がって選択肢を増やすなかでパスが送られ連動して周囲も動くような感じ。それが無理でお相手のプレスを翻弄しながら微妙に位置を変えてそこでパスを回すような感じ。トータルフットボールでも良いしポゼッションでも良いけれど、どっちにしたって相手に触らせることすらしないで圧倒してみせる試合ぶりがまるで出来ていないのは、追い越す走り近寄る走り修正する走りができるほど、体力が回復していないって現れなんだろうか。

 幾らワールドカップで優勝したといってもそれで天狗になって日々、鍛錬を怠り大事な大事な試合で込んでションを落とすほどのユルい選手が揃っているとは思えないだけに、それをさせなかった環境って奴が一方にあったりしらのかな。あちらこちらで表彰されたりテレビに出たり。それはそれとして別にそれなりな鍛錬に励んで試合でバッチリ、ってのが格好良い生き様って奴なんだから、できればそれを見せて欲しかったけれども今となっては仕方がないのでとりあえず、向かう難敵のオーストラリアをしのぎきってはプレスのきつそうな北朝鮮に中国という相手を退け、晴れてロンドン五輪生きの気っ風を獲得してやって頂きたい。まずは明日だ。勝て日本。

 冴えない試合に頭も朦朧となりがら眠って起きたら朝になっててテレビをつけたらNHKのニュースでSF大会で大勢が小松左京さんを追悼したってニュースが放送されてて見ると黙祷している自分の背中の端っこが映ってた。そこを回り込んだら背中にマミさんが見えたのに。そんな僕の後ろに座っていた人はもうまる見えで全国中継に。ああ驚いた。企画の方では瀬名秀明さんとか鹿野司さんといった面々が登壇してしゃべっている風景。SF大会そのものという切り口よりもやっぱり全国的に名前の知られていた作家としての小松左京さんが、ここではクローズアップされているってことなんだろう。つまるところそれだけ偉大でポピュラーな作家だったということ。返す返すもその死が残念でならなくなって来た。黙祷。

 朝1番の企画もそんな小松左京さんに関連して新城カズマさんが喋る部屋へ、っても本当は3・11についての話だったんだけれどその前提として小松左京さんという存在を語ることになったらそれがだいたい1時間くらいに及んでしまったという。まあよくあることだ。印象として未来にまだ可能性が開けていて、テクノロジーの進化によって克服できることが多くありそうな状況の中で未来を見通す小松さんの筆が冴えたんだけれど、それが今、よく見えず誰にも何とも言いづらい時代において果たしてどこまで何をいったい書けるのか、なんてことを考えさせられた企画。1億年2億年のスパンで見れば誤差ですらない変化なんだけれども人間にはやっぱり、いろいろ大きな影響をもたらしそうだよなあ。どうなるんだろう来年。そして10年後。

 それから2時限目は「絶対少年」っていう大昔にNHKの教育で放送されたアニメーションについての企画。何でも前半のパートが静岡を舞台にしていたものだそうでご当地だけってんならほかにもありそうなものだけれども小学生とかロリロリ出てくるだけではやっぱりSFではない(個人的マインドにとっては空想科学の世界であっても)のでちょっぴり除外。そしてSFテイストを持って一部に根強いファンを生みながらも、同じくNHK教育で放送された「電脳コイル」ほど省みられることも少ない「絶対少年」について話をしようってことになった模様。

 そこで登壇したのは脚本の伊藤和典さんと監督の望月さん。もともとはフライングメガロポリス×絶対少年っていう感じでワンフェスなんかでレトロフューチャーなガジェットを出展しているグループがあって、そこのオブジェクトを使った何かができないか、ってことで始まったものらしいんだけれど、それを「LAST EXILE」的な乗り物としては使わず、山間部にある町を舞台にした一夏のふれあいと、そして横浜が舞台になった少女の心の物語に伊藤さんが仕立て上げていったという。そこのところがやっぱり伊藤さん、発想の飛躍と創造に優れた脚本家ってことになるんだろう。普通は思いつかないよ、あのガジェットからあの田舎町での閉塞感にぎっしりな物語を。

 改めて見るといろいろ行きづまった気持ちにあった少年が、田舎での出会いをきっかけにして少し変わる、ってことになっていきそうな物語。丁寧なロケハンによって再現された田舎の町で、派手ではなく喧しくもない少年少女が交流し、そこに不詩吟亜現象も絡むストーリーが繰り広げられては先にいったい何が起こるのか、って興味をもたせてくれる。決して派手ではないんだけれど、女性のおへそがみえたり胸元がのぞいたりするあたりにエロスもあって目を引きつけられる。そうした鏤められたおかずの先にある、心の痛みと戦う物語は6年の時を経ていよいよDVDボックスへ。どんな話か知りたい人、そして聖地巡礼が叫ばれる今、かつてこれだけの作品もあったという証拠として買って見てみてはいかが。たぶん買う。でも見られるかなあ。

 遠い場所での戦いと、ご近所でのラブストーリーの中間にある社会。それが何で描かれないかというと、リアリティの持てる状態で描くのがきっととてつもなく面倒だからで、遠い世界を空想し、近い世界を創造することによって描けるんならそれでオッケーって風潮が、広がったのがいわゆるセカイがどうとかいうストーリーの氾濫か。そんな時代に改めて、中間ありまくりのストーリーが示して見せる、いかにリアルを保ちつつアンリアルを作りだしては、読み手を空想の世界にいざなうか、って挑戦に腐心された物語を読むことによって、人はこれだよこれじゃなくっちゃ面白くないよって思うようになった果て、重厚さと軽妙さを持った物語が多く生まれて、ライトノベルの水準をまた1つ、上げることになるんだろうか。笹本祐一さんの「妖精作戦」。おかえりなさい。

 とって返してフクダ電子アリーナで、あの巻誠一郎選手がジェフユナイテッド市原・千葉以外のユニフォームを着て試合を戦うことになるなんて、思いたくもなかったけれどもそれがサッカー選手の宿命って奴だから仕方がない。自ら出ていった訳ではない選手を、今は迎えるのにブーイングはいらない。ただし。このままヴェルディで得点をとりまくってはジェフ千葉の昇格、そして勝利の妨げになるようなら容赦のないブーイングを浴びせるのは必定。サッカー選手としてそうなって欲しいという希望を持ちつつも、敵としてそうなってもらっては困るという意識を持ってこれからも見ていくことになるんだろう。こちらもおかえりなさい。しかし勝てないなあジェフ千葉。一瞬の隙で奪われクロスバーに嫌われ奪えず。それが今の水準ってことか。だから取り戻しておけば良かったのに.


【9月3日】 やっぱり面白いなあ、「ルパン三世」の最初の劇場版アニメーション映画。「ルパンvs複製人間」ってのは後からついたタイトルらしいけれども、それは確かにそれを出しては話の半分がバレてしまう。でもそれを知ってて何度見たって、面白いのは最初っから何度も何度も畳みかけられる攻撃と、それから反撃に向かって逆襲を食らってどうにか倒した後に待ち受ける最強の敵、そして戦いの果ての勝利といったドラマに引きずり込まれてしまうからなんだろう。大和屋竺さんのこれが脚本家としての凄み。初代「ルパン三世」でいくつかの名脚本を描いた人だけのことはある。スタイリッシュでアダルトなルパンのイメージのいくつかは、多分この人にも依っているんだろう。

 絵柄もこの後の宮崎駿監督による「カリオストロの城」が、アニメファンの間でのクラリスブームからカルトとなった後、宮崎駿監督の大メジャー化にともなってスタンダードんあってしまった感もあるけど、当時はまだマイナだったからこそのカリ城人気。ほかにないルパンだからこそ楽しんでいたものがみんなそがスタンダードだと言い出すようになると、やっぱりルパンはマモーの方だよなあって思えてくるから現金というか。やっぱりルパンはFIAT500に乗っているより、メルセデス・ベンツのSSKに乗っている方が格好良いし、強がって喋っている方がやっぱりとってもルパンらしい。不二子を追いかけ山を登る直前の「夢盗まれたからな、取り返しに行かにゃ」ってセリフとか、聞いててゾクゾクするもんなあ。軽薄で皮相的で虚無的で浪漫的。そんなルパン三世の声ができるのは、やっぱり世界たった1人……。

 だからルパン三世の新作のTVスペシャルが放送されるってことになって、また栗田寛一さんが声を担当するんだろうかと考えると、ちょっぴりやっぱり見る気が下がる。なるほど似ている。でも似せているっていうことでしかない。15年近く演じていてもそこはやっぱり変わらない。なぜかどこかで感じるこのざらっとした感覚。かつてバカボンのパパは雨森雅司さんから富田耕生さんになり、イヤミは小林恭治さんから肝付兼太さんになった時にはあんまりそうとは感じなかった。いや違いはやっぱり感じたけれどもその違いすら飲み込むようにバカボンのパパなりイヤミといったキャラクターが浮かび上がって見えてきたのは、似せることより演じることに、お二方とも腐心したかだ、って話をちょっと前にお二方から伺った。

 富田耕生さんが雨森雅司さんの後を継ぐ時。「悩みました。止めた方がいいってベテランのディレクターにも言われました。でも劇団の先輩にはやれって言われてやりました。最初は雨さんに似せてやろうかなと思ったけれど、それじゃつまらない。楽な声をだしてやりたい。だから1本目から”自分”で演りました」。そんな富田耕生さんに肝付兼太さんは「違和感なかったよ」と感想。応じて富田さんは「ハートは同じだから。雨さんと。赤塚漫画の基本はギャグとペーソスといたずらっぽさがあること。それを基本にやれば、あとははねまわっていればいいなあと」。声に幅はないけれど、でもその役をハートで演じることで無印元祖とはまた違う、けろも同じ平成天才バカボンのパパは生まれた。

 ちなみに肝付兼太さんはイヤミの声を新たに担当して、赤塚不二夫さんから最初、違うんじゃないかと言われたとスタジオぴえろの布川さん経由で聞いたとか。でもその後に言われなかったから大丈夫となったと思ったという。何を演じても基本はやっぱり同じ声質。ザンスといえばイヤミだし、ザマスといえば「怪物くん」のドラキュラだけれどそこは役になりきって、役をどう見せるかで演じていくことで、イヤミはしっかりイヤミになった。決して小林恭治さんの真似ではなかっ。だから山田康夫さんの演じたルパン三世の真似をしようと真似の特異な芸人が真似する気持ちでやったところでそこにルパン三世は現れない。そこが15年近く経ってしまった今もやっぱりどうにも引っかかっている。

 これは栗田寛一さんの責任ではない。いや自分がどうしたら良いんだろうってことで動いてこなかった責任でもあるのか。うーん。せっかく似ている声質と演技力を、真似ではなくってルパン三世というキャラクターの魂を見せる方向へと腐心したらあるいは……。だから今からでも遅くはない。「DEAD OR ALIVE」のルパンはそのビジュアルそのマインドとも相まって良い感じを出していた。次もクリカンさんならそんなところを気にして欲しいんだけれど一方で、加齢がどうしても殺いでしまう艶ってものがあるからなあ。いっそだったら全とっかえ。山寺宏一さんがルパンと次元ご五右衛門を演じるってのは、どうだ。ちなみに不二子はスフィアが週代わりで担当します、とか。誰の不二子が可愛いだろう。それとも不二はスフィアが“実写”で登場? それもそれで。団地妻不二子とか。どんなんだ。

 眠って起きたら朝だったんで支度をして外へ。雨が降ってはいるが止んでもいたりする不安定さ。とはいえ豪雨に見舞われている四国中国なんかを思うと安心ばかりもしていられない。東北を避けて良かったねとも言いづらいけどそうした感情より先に、キャッチーな言説としての東北に親切な台風って言葉が広がってしまうところにこの、後先考えず言葉が吐き出される社会の危うさってのを思ったりする。悩ましい。そして東静岡まで来てグランシップで受付をしてから星雲賞とか見たり企画とかみたりの日本SF大会。池澤春菜さんが立っていたり山本弘さんが喜んでいたりしたのを見てそして長谷敏司さんが持ち込んできた「円環少女」の韓国語版を見せてもらって表紙絵の大きさに日本もこれで出し直してくれたらうれしいかもと願ったり。いや普通に深遊さんの画集を買えば良いだけなのかもしれないけれど。

 最後に仁が死ぬか否かってあたりで丁々発止があった話とかを聞きどのキャラが好きか話を聞いてそれから外に出て、辻真先さんが登壇して喋るアニメの歴史を聞いて辻さんが今まさにリアルタイムでもアニメを楽しんでいることに驚く。何しろ日本のアニメの脚本家の草分けみたいな人、オリジナルもやれば原作付きもやってその機微がわかるだけに、見ていていつも自分はかけるか、あるいはどういう驚きをもたらしてくれるかってところを気にされているそうだけれど、「魔法少女まどか☆マギカ」は最初の感覚ではできたはずが3話あたりのマミさんの衝撃でこれはもう凄いと感じて最後まで見て驚いて感動したという話。それから「GOSHIC」を見てアニメで面白いと感じつつ作家の桜庭一樹さんに聞いたら原作のあちらこちらを引っ張り繋いで作り直していると言われてそれはまた凄いことをアニメはやっているんだと気づいたとか。改めて原作を読み直しそれからアニメを見直したいとも。その通り過ぎないアグレッシブさに見習うところも極めて多そう。

 「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない」とか「花咲くいろは」とか「輪るピングドラム」とか見ているという辻さん。なおかつ「週刊少年ジャンプ」の漫画もずっとヨン出て「ONE PIECE」はドライアイにはつらいと良い、「NARUTO」は原作から映画を大きく変えるならばそれが成り立つように世界を作らなくてはイケナイと指摘。その点で劇場版の「鋼の錬金術師」はしっかりと原作をとらえ織り込んで作っているって話してた。今の映画の方なのかな。それとも前のかな。ジャンプ漫画では「めだかボックス」が西尾維新さんの原作で突拍子もないことをやってくれていると高評価。タイトルが西尾さんらしくないなあと言ってしまえるくらいに西尾さんのこともしり尽くしている感じ。若いなあ辻さん。そして極めて記憶が鮮明。言葉も明晰。その無尽蔵な知性を今、すべて記録しておければ嬉しいなあ。どこかでやらないかなあ。

 SF大会の場で萩尾望都さんを見るのは僕は初めてか。ブラッドベリについて語った部屋に登場、中村融さんの時に圧の高そうな口調にも飄々とした雰囲気で聞き入るあたり、大人を越えた女神のニュアンスが漂う。何だったっけ、繊細なイメージで翻訳されてた原作のとおりにおじさんを書いたら実は翻訳が違ってて、おじさんはマッチョ系でそれを性格に中村さんが訳したら、イメージが違うと言われたとかどうとか。そりゃ萩尾さんに責任はないよなあ。

 それから吉岡平さんの部屋でカメラ自慢を聞き入る。ペンタックスのQは小さ過ぎ。問題は映りか。どーなんだ。それから韓国のサムスンが出してるミラーレスの一丸レフ。フォーサーズでもマイクロフォーサーズでもないAPSなサイズのCCD搭載機はスタイリッシュな上にコンパクト。それでいて写りもしっかりなのになぜか日本では紹介されない。カメラメーカーの陰謀? 権益を守るため? 韓流ドラマはあんなにいっぱい紹介しているのに。その段差にこそ区別も甚だしいと声を挙げれば良いのにメディアと広告会社の策動がイヤな人たちは。


【9月2日】 いやあ容赦ない。日日日さんの最新刊となる「大奥のサクラ 現代大奥女学院まるいちっ! 」(角川スニーカー文庫)は、豊臣家がずっと続いている現代、直系の跡継ぎながらも妾腹として脇においやられがちなところもある主人公の少年は、身分を隠して隠密みたいな仕事をしていて何やら大奥という場所で怒っていることを、調べるように相棒というか先輩の女性隠密から命じられる。そして潜入した先で見たものは、将軍の寵愛を求めて争う美少女たちの姿だった……というストーリーからまず浮かぶのはいわゆる格闘美少女者で、そこに跡継ぎの少年を狙って戦うハーレム設定なんかも加わったうはうはのラブコメディだったりするけれどもそこは日日日さん、容赦がない。

 大奥で繰り広げられているバトルはもう本気。確実に死ぬか再起不能へと追いやられる。主人公が出むいた先でまず目にした百足姫と熊蜂という少女同士の戦いでは、敗れた熊蜂が腹に埋め込まれた爆弾によって自縛させられ百足姫もろとも殺されようとする。そこは持っている異能の力で身を守った百足姫だけれど、その後に戦うことになる敵との戦いでも相手は死に、すがってきた少女は口から尻へと太い槍で串刺しにされて粛正される。そもそもが百足姫自身がかつて主人公の跡継ぎと仲良くしていたところを咎められ、親は拷問によって惨殺され、自身も四肢を切り取られて放り出されたほど。そこを大奥にいた治療の力を持った少女に助けられ、序列で上位の少女の庇護も受けてどうにか立ち直ったという。

 かつて地上で使われた時空をねじまげる爆弾の影響で、少女たちに異能が宿ってそして400年という設定からしてSF気味。そうしたもうひとつの歴史の上で大奥が日本に君臨し、そして支配者を操りすべてを操って暗躍している凄まじさはもはやライトノベルの範疇を越えて多くに衝撃を与えそう。跡継ぎを慕う腹違いの妹の、兄を思うが故にめぐらせる計略の残酷な可愛らしさもまた凄いけれど、それすら手のひらで転がしていたりする本当の黒幕の正体と、その技の凄まじさといったら。まさにまったく容赦ない。とはいえその黒幕がどうしてそこまで計略を廻らせるのか。そして身分を奪われ気味な主人公の少年の立場は。そこで実はという異能でもあったらそれこそヒーローだけれど、そう向かわせないところが日日日さんだろうからなあ、容赦なんて絶対にしない。だから楽しみ。

 それを思えば瓜亜錠さんの「らぶバト! 俺が指輪でハメられて!?」(HJ文庫)は普通に気楽に楽しめる美少女バトル&ハーレム物。姉がもらったというチケットが姉の多忙で廻ってきた少年が、洋上にある異能の持ち主たちを集めた学園都市に観光に行くといきなり見知らぬ少女から指輪を渡され指にはめられた。何だろう、と思っていたらどうやらそれが学園都市でもトップの少女を決める戦いのシンボルだった模様。それを持って台座におさめたものが勝利者となる指輪だけれど、まるで指から抜けなくなってしまった少年は、そのまま勝負のおまけにされてしまって奪い合いの対象にされてしまう。ああ王道。そして正道。呼んでいて微塵も揺らぎがないのが有り難い。誰も死なないし。自縛もしないし。

 なおかつ少年にもただ巻きこまれただけじゃなさそなところもあって、まだ何者でもない自分ながらもいつか何かになれるかもって思いこみたい年頃の少年の気持ちをくすぐってくれる。学園の創設者の係累の少女に剣術使いの長身の美少女に力持ちの美少女に寡黙なゴーレム使いで愛用している衣装はスクール水着という美少女、さらには少年とは幼なじみの人形作家だけれどその本性は的美少女もくわわり少年を囲んで起こる争奪戦と、それが解決した先に待ち受けるハーレム展開のその先には、単なる日常ドタバタコメディがあるのかそれとも何かそうせざるを得なかった大きな展開が待っているのか。こちらも楽しみながら先を待とう。個人的にはやっぱり剣術使いの美少女だよなあ、凛々しいし強いしそして大きいんだ、背も、胸も。

耕して食べて寝て起きて耕して。生きるって大変だけれど楽しそう  とっとと起き出して静岡へ。あるいは台風が接近して新幹線が止まるかもって心配もしたけれど、四国の方へとそれてそっちはそっちで甚大な被害を出して大変そうだけれども静岡的には無風で過ぎたようで無事に東京駅を発車した新幹線はまだ雨の降らない静岡駅へ。時間がまだあったんで大昔に行ったことがある登呂遺跡へと34年ぶりくらいに出かけてみる。バスで15分も走ればそこは登呂遺跡。歴史の教科書なんかでさも重大な遺跡の1つとして語られ勉強した記憶もあるんだけれど、その割には閑散とした地で周囲には住宅が囲むように立った中に草地、というか田んぼがあってその中にぽつん、ぽつんと竪穴式住居と高床式の倉庫が建っていた。派手な高床式の建物がある吉野ヶ里遺跡なんかと比べるとそんなに繁盛してないっぽい雰囲気なのはもう十分に語られ尽くしてしまったからなのか。しれとも価値の問題か。

 それでも今の日本人が稲作をして定住をして商業を発達させ経済を生みだし発展していった、その源流でありひとつの典型ともいえそうな登呂遺跡を見るのはやっぱり日本に生まれてお米を食べて生きてきた人間としては感慨もひとしお。まだ早稲だけれども穂が出て米が実り始めた稲を見るとこうやって季節とともに生きるのも悪く無いなあって気にもなってくる。今の暮らし、寒暖くらいしか季節を感じないもんなあ、食だって年がら年中一緒だし。って感じにいろいろ考えてからとって返して静岡駅前でホビースクエアを見物。プラモデルがずらりと並んでホビーショーみたいな感じだったけれど、今の旬を反映してか「ダンボール戦機」がやたらと目についたのはやっぱりレベルファイブって会社の凄みの現れっていうことか。これに「ガンダムAGE」も加わるんだもんなあ。食い合わないのかなあ。

 さて集合して日本SF大会のオプショナルツアーへ。プラモデルの工場を見てプラモデルの歴史を学んだりして静岡を堪能。バンダイの静岡ホビーセンターは3年前に普通に取材しから2回目だけれど改めてみてもあの作り込みは凄い。コーポレートアイデンティティを徹底させることによって得られるシンパシー。応用できないかなあ、でもそれでウヨキッシュにライティーな雰囲気を演じるってのもイヤだしなあ。エコプラが山積みとなっている売店を眺めつつTシャツで我慢。ガンプラ好きな声優さんも来場しているSF大会だけれどこっちに参加すれば大騒ぎだっただろうなあ。今度はいつ来られるだろう。その時にはどんな新しいプラモデルが生まれているだろう。

 静岡駅へと戻っておでんをかいこみホテルで食らいながらワールドカップアジア3次予選を見物。入らないもんだなあ得点って。ポゼッションはあっても走り込んだり切れ込んだりって連動がないからシュートへと結びつかない。けれども後半に入って香川が中心となって清武ハーフナー・マイクと重なったところで圧力が高まりそしてロスタイムに得点。これで買っても3次予選を抜けるだけのことでしかないんだけれど、ここで抜けられなければ次ぎもない、ってことだからやっぱり勝てて良かった。何か偶然で勝ち進んでその奇跡を最後の最後で放り出してしまったジーコジャパンの二の舞なんてものも頭が過ぎるけれども、ただ適当に放り込んで選手任せというんじゃなく、段階を踏んで圧力を高める段取りがちゃんとある分、ザッケローニには手腕があるって言えるかも。次にどんな試合ぶりを見せるのか。その時の布陣はどういうものか。そこに注目。


【9月1日】 狭い場所で揮発性の高い油をまいて引火させたらどうなるか、って考えたらちょっと怖くて狭い場所に行くのも怖くなってしまった渋谷のライブハウスでの一件。刃物も持っていたそうでまずはまき散らしてから刃物を振り回して誰も近寄れなくしたところで着火、なんてことになっていたらいったいどれだけの被害が出ていたか。非常口とか整備はしてあるんだろうけれども混乱の中でやっぱり大勢が被害を受けていそう。それを思うと瞬間に押さえつけて止めさせた店員さんたちの覚悟を讃えたい。ともすれば刺されたり切られてた可能性だってあるんだから。

 いつかの韓国での大邸での地下鉄放火事件といい、その前の新宿バス放火事件といい、ごくごく簡単に手に入りやすいガソリンにライターあるいはマッチだけで、とんでもない事件を起こせてしまうのが社会の現実。飛行機のように入り口出口で厳密に持ち物をチェックできるなら防ぐことも可能だけれどあらゆる場所に開けた社会で何かがしでかされるのを完璧に防ぐ手だてはない。ならば何かを誰かがしでかす前に止めるしかない、ってところなんだけれどもそういうことをやりそうだからと囲う訳にもやっぱりいかないこの社会。囲うよりも溶かし改めさせられる方向に動くってのもひとつの手だけなんだけれど、それには社会のコストと人の心が必要だからなあ。コストははらえず心も頑なさを増すこの社会でいったいこれから何が起こるのか。分からないけど考えなければ。

 30分のアニメーションのなかでもっとも多く「おっぱい」と叫んだ声優として大川透さんがギネスワールドレコードに認定されるという話があってもきっと誰も驚かないだろう「魔乳秘剣帖」はおっぱい大好き藩主が城を抜け出し、風来坊として行き交う最中で出合った千房たちと交流。そして千房が剣術使いに破れさらわれたところに藩主が乗り込み大暴れという展開で、刀傷がつけられた千房の胸に猛り怒って叫び続けたというのがことの次第。いやああれでなかなか強いんだ。それにしても随分と前に城を出たはずなのに未だにあの藩にいるのか千房たち。どれだけ広いんだあの藩は。しかしかつてはロイ・マスタングだなんて婦女子も憧れるイケメンを演じながらも今はこうしたお殿様。どっちが本当? ってそれは役なんだと言っても、どっちかなんでしょって思われてしまう声優さんって大変な仕事だなあ。

 とりあえず浅草へと出て玩具のクリスマス商戦の見本市を見物。R2−D2の格好をしたホームスターは前におもちゃショーでも見ていたけれど、発売も近づいてきてちょっぴり期待も高まってくる。とはいえ我が家で映せる場所なんてないんだけれど。デススターが映るってのがとりあえずの評判。でも爆発はしないんだ。爆発しないデススターなんて……。それからタカラトミーでは口の前に手をかざすと音がなる顔型の玩具。演奏を楽しむみたいな玩具はたぶんパーティー用か。トイズフィールドではエドウィン使用の奴がいたけど発売日はまだ未定。価格も未定。そして503にちなんで503体限定。きっと即完売だろうなあ。503好き芸能人とかもいそうだし。

 おお、いよいよ白日の下にさらされたか新型NERF。棒っきれをガンガンと飛ばして遊ぶガン型のおもちゃとしてSF方面でもつとに有名だけれども今年の頭あたりからその新型が、展示会などで紹介されてて中は見て良いけれども話しちゃダメてき状況に、そこまでして守りたい秘密があるのかと訝りつつ、これが世に出れば世のNERFファンも狂喜乱舞するに違いないとほくそ笑んでたっけ。そして登場した新型「VORTEX」は飛ばすのは棒ではなくって円盤でフリスビーの小型版みたいなのを打ち出して遊ぶようになっている。これが飛ぶんだ遠くまで、まっすぐに。前のは室内でのサバゲ的な遊びに適してたけど今度のは外でもいっぱい遊べそう。登場は秋かあ。今ならSF大会に持って行けたのに。ともあれ楽しそうな逸品。でも人に向けて売ってはいけません。

 メガハウスではヴィネットタイプのフィギュアがあったけれどその中にジュエリー・ボニーが捕まって腕を縛られつり上げられ気味になっている例のシーンがフィギュア化されてた。何でまたよりによってこのシーンを。大正解。できれば同じように「BLEACH」でも夜一さんのレオタードでの登場シーンとか作って欲しいよなあ。もうむんむんで。そういやあんまり「BLEACH」のフィギュアって見ないかも。許可してない? あんまり売れない? 欲しいのに砕蜂の戦闘服バージョン。薄い平たい前後が分からない。刺されます。

 そんなメガハウスでは対戦型ルービックキューブを用意、ってキューブじゃないけど。5×5マスの様々な色がつけられたプレートが前後に並んで、プレーヤーは向かい合って座って、中心の3×3マスを、別の指示器が出した色に合わせて早く並べるって競技。スライドさせて絵柄や数字を会わせるパズルに近いか。ちょっと楽しそう。そういや今年はルービックキューブの世界大会の年だそうで、日本人にも期待がかかるけれども何かオーストラリアで5秒台とかでキューブをそろえる天才が現れたそうな。インチキはして折らず指が丈夫で柔らかく、あっという間に揃えるとか。日本人も理論はわかっても運動性能で追いつかないと。

 ならば鍛えなくてはと、バンダイが送り出すのが「FUSHIGI」とかいうボールの玩具。表面がやや透明になったボールなんだけれどこれが不思議にも宙に浮く。両手を向かい合わせて指を丸めた中に浮いたボールの何と驚嘆すべき挙動よ、糸で引っ張っている訳でもなければ天上から吊り下げている訳でもない、引力に逆らい宙に漂うボールのその正体は? ってもちろん種も仕掛けもあってすぐに分かるんだけれど、それをそう感じさせないで遊ぶには指の柔軟性とそれから強さが相当いりそう。これを完璧にマスターした暁には、ルービックキューブだって2秒で揃えられるようになるのかも。今冬のパーティーの人気者になりたかったら今からマスターだ。

 そしてなでしこジャパンがいよいよロンドン五輪の出場に向けた血戦をスタート。タイを相手に楽勝か、って思われたけれども2004年のアテネ五輪出場をかけた試合のグループリーグで当たって6対0で一蹴した時代は遠く昔で、今はしっかり守備をつくりプレスをかけて日本を自在にさせず前半を0対0のまま折り返す。日本もやや引き気味にしてポゼッションを高めた上で裏に抜けるなりサイドチェンジをしかけて引き剥がし崩せば良いのにつっかけては阻まれ放り込んでは奪われるという悪循環。まるでイングランドとの試合を見ているような気にはなったけれどもそこは自力もあってどうにか1点を奪いそして2点3点を重ねて勝利。したもののやっぱりサブ中心では試合が作れないことが判明してしまった。それともやらないだけ? ここに小林弥生選手がいたらなあ、とか思ったけれどもそれを今は宮間あや選手に託すことにしたんだろう。ともあれ勝利。そして次ぎは明後日。頑張れなでしこジャパン。


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