縮刷版2009年1月中号


【1月20日】 これが「ワイルド7 魔像の十字路」だったら押しも押されもせぬワイルドのリーダー、飛葉ちゃんが秘熊大臣一派に取り込まれた挙げ句に草波の裏切りに遭って後ろから撃たれてあっさり死亡。でもって怒りに憤然となったユキが皆の止める声も聞かずに突っ込んでいったその戦いの中でヘボピーは仁王立ちで全身に弾丸を受け死亡し八百は自分たちを探っていた昔の仲間を追いかけ情報が漏れないよう殲滅するも共倒れ。両国は最後の力を振り絞ってプラスティック爆弾で自分を含めた周囲を吹き飛ばして血路を開きオヤブンは大したことのない怪我を重傷と偽り踏みとどまって追っ手を防ぐ。

 そしてその隙にユキは草波のところへとたどり着いてその首を掻ききったものの多勢に無勢ではやはりどうしようもなく、蜂の巣にされて死亡しあとにはずっと行方不明だったテルが最後のワイルドメンバーとして悲しみに暮れているその一方で、権力を握ろうとした秘熊大臣も腹心の遠井弁護士の裏切りにあって失脚から逮捕有罪処刑への坂道を転げ落ち、あとには何も残らなかったという展開になって感動も味わえなければ感涙にもむせび泣けない可能性が大なんだけれど幸いにして「蛇衆」は「蛇衆」であって「ワイルド7」ではないので別に無理矢理に感動なんか得られなくたって良いのだ。

 そんな小説すばる新人賞受賞の矢野貴さん「蛇衆」(集英社)は、先行にあれだけの大作傑作感動作を持ったシチュエーションをそのままやっても二番煎じになるだけと、考え直してわざと平板にしてメインストーリーを引かず、メインキャラクターも作らずかといって群像劇にもしないで淡々とキャラを並べ、状況を動かしその場その葉でメインキャラを入れ替えつないでいく手法をとったのかも。でなければ「ワイルド7」以降も多く描かれ、そのどれもが次々と仲間が倒れていく姿に感涙と感動を呼び起こされたラストバトルシチュエーションを使いながら、こうも淡々した印象に仕立て上がられるはずはない。あるいは明日は我が身の下克上を現すのに、これほど適した手法はないということなのかも。知らないけど。

 でもやっぱり僕は昔の子。「どろろ」よろしく捨てた親と、捨てられた子の相克を軸に仲間たちの思いを描き技を描いて反撃を食らわす話なり、人の良さから祭り上げられ翻弄された挙げ句に死んでいく悲劇の男の話なり、それぞれが思いを抱き信頼もしつつけれども想いのために裏切りもしてそれが謀略だったと分かり苦悩しつつ、赦され最後の一花をあげる挫折と苦悩と昇華の話なりにしてくれらb、落ち着いて読めて感動も出来たのに、なあ。メインになってた男は目立たずひっそりと消え、その厳格な親父らしき男も目立たず天下もとらず存在感をラストにかけて極薄にしていく。目立ったのは裏切った家臣に売らない婆。でも登場の唐突さがあって情動から生まれる驚きも感動もあまりない。そんな物語が賞に値するってことはだから、やっぱり世間が情動の積み重ねより状況の流転に引かれるようになったってことか。自分で書くときがあったら気を付けようっと。

 んでいったい今どこいらへんまで進んだんだ物語。「宇宙をかける少女」はレオパルドって口先だけの人口知性が仕切るコロニーの中から獅堂院秋葉ががターゲットスコープだかにに映った敵小惑星に向けて手にした小さい銃の引き金を引くと、コロニーの先っちょから何かが飛び出し小惑星を粉砕。でもってコロニーの中はといえば白い灰だかが降り積もって秋葉はヘロヘロになってとまるで安全な感じかしないんだけれど、でもしっかり生きているのはそれがリアルに安全ぎりぎりだったからなのか、どっかにフィクションが交えてあるからなのか。ICPだかって警察めいた組織の怪奇事件を扱う部署にいる神凪いつきが襲われた時に宇宙へと放り出された2人もしっかり生きているしなあ。いくら眼と耳を塞いだからといって真空中でそう長くも生きてはいられないはずなのに、どういう理屈が働いたんだろう。謎。謎が多すぎ。

 そんないつきは撃たれたかにみえてしっかり生きてて秋葉の学校に潜入、と。それやって違和感のない歳なのか。けどそうした学園になじみがないのか、お友達になろうとするのに交感日記から始めるところが愉快というか不気味というか。好きだといって迫れば胸襟開いてくれるなんていったいどんな参考書を読んでいたんだろう、「マリみて」かそれとも「まりほり」か。どっちを読んでもろくな感じにはならないよなあ。そんな彼女を支えるソルジャーウルの声は紫のパパというか「龍が如く」の主人公というか渋い声をやらせれば右に出るもののない黒田崇矢さん。とはいえこっちでは徹底的な気取りっぷりが今までにない味を出してて面白い。芸の幅が広がっていくなあ。次は若本さんみたく弾けてみるか。

 それにしてもどうして下着がさらしなんだろういつきさん。一方の猫耳の河合ほのかもレオパルドとの関係はありそうながらも正体は謎。ウルですら驚くくらいの戦闘力だか謎高を秘めていそうなんだけれどもそうした説明もなければ敵か味方かも不明なあたりを回収しないでグングンと進んでいくのは、そうした想像をさせつつ次に説明があるかもと目を引っ張る計算か。まあ見るけどね。何か含みがありそうな表情を浮かべていた姉の獅子堂風音はすっかりご無沙汰。どう絡んでくるんだろう。「続夏目友人帳」は柊が登場して温泉に入ってなかなの色っぽさ……な風もなし、つか浴衣で温泉に飛び込んではいけません、温泉ではちゃんと脱ぎましょう。ところで柊のあの仮面の下ってちゃんと顔、あるんだろうか。あるんだろうけど見せてはくれないんだろうなあ。見たらどうなるんだろう。とりあえず妖怪助けは人の為ならず。

 幼なコーティ、っていつも見かけは幼いんだけれど復活してから直後のひときわ幼かったころのコーティカルテが主役な「神曲奏界ポリフォニカ クリムゾンS」の第2巻は正確尊大なグンダイスによらからぬサポートがついて学院を引っかき回す中でペルセとプリネに秘められた過去って奴がきっと表沙汰になっていくって展開が小説として語られそう。普通のシリーズだとその辺はもう含み置かれているしアニメーションの方でも語られていたけれど、幻に近い存在のアニメ版とか見る機会なんざあそうそうはないからこうして改めて語られるのは小説版のファンにはきっと有り難いことなんじゃなかろーか。しかし相変わらず尊大だよなあグンダイス。大人編だと何か扱いあったっけ。そんなグンダイスのおまけ小説に出てくるメイドがなかなかに凄そう。本編への登場も願いたいものだけど果たして。

 仮にも全国津々浦々に行き届いているんだと自称しているメディアのひとつでかくも現代的な事態が起こっている以上は世間が大注目してあらゆるメディアが同業におけるかかる事態の意味を問い、且つ我が身へと振り返るだろう可能性を考慮しつついろいろと報じて来るのかと想像していたけれど、現時点ではとりたてて大きく報じられている様子はなし。それはすなわち意味としてたいしたことではないということなのか、主体そのもののバリューにいささかの至らなさがあるということなのか、事情を知らない身としては判断がつきかねるんだけれども一方でかかる事態は事態として、どういう意味合いがあってそして将来においてどのような可能性をもたらすのかってことくらいは、考えてみておくのが生きる上で大切なことなのかも。詳しい人とか一家言ある人とかにご意見を頂戴したいもの。それはだから得られるものの大きさで判断するべきことなのか、持てる才覚への評価をこそ見極めるべきなのか。うーむ。


【1月19日】 王宮に上がって女神候補生となって修行に社交に明け暮れ社交に興じながら騎士や王子様たちとラブラブになって敵も現れ危機一髪、ってちょっと混じってしまったビーズログ文庫の新シリーズ2作品。斎王ことりさんの「レッド・プリンセス とらわれの王子様と秘密の恋を」(ビーズログ文庫)は手に何か火傷を負った過去を持ちながらも記憶から詳細が失われて長じた貴族の娘ルージュが、王子様の話し相手になって欲しいという要請と、あと家業のワインをもう一度、王室御用達に押し上げたいとの思惑を受けて乗り込んだ王宮で出会った第3王子は、戦場で追った怪我がもとで10歳のまま心の成長が止まり、下半身も自由が利かない身になっていた。

 周囲はそんな王子に気を遣い、ルージュをあまり近づけさせないようにしている上にルージュ自身にいろいろと不穏な動きが及んで身を危険に至らせる。そこに現れた仮面の男ガーゴイル。ルージュのピンチを幾度も救うが厳重なはずの王宮にどうして彼が入って来られるのかが分からない。盗賊か。何かの密命を帯びた存在か。なおも迫る危機から救い出されたルージュは、ガーゴイルの正体を知って驚きつつも、王宮でめぐらされる陰謀に立ち向かっていく。自身にも何やら秘密がありそうで、単なる王宮が舞台の恋愛ストーリーに留まらない設定を見せてくれそう。とりあえず2巻目の刊行を待とう。

 んでこっちは女神様候補にさせられるという菊地悠美さん「見習い女神と仮面の騎士 〜恋のワルツで祝福を!〜」(ビーズログ文庫)は、父を目指してトレジャーハンターになった少女ユーノが忍び込んだ場所で手にした腕輪が腕にはまって取れなくなった。そしてユーノは都から来た聖騎士団長に半ば脅され引っ張られるように都へと連れて行かれて女神様の相手が勤まるようさまざまな修行をさせられる。武術に教育に厳しい騎士団長に対して優しく親切な牧師だったか神父もいてユーノはそちらに気を引かれる。そこに起こった謎の攻撃。そして明らかになった真犯人。まだ始まったばかりの物語でユーノがどこへと到達ししていくかに興味津々。けど語尾に「プリ」を付けて喋る女神様ってのは流石になあ、ないプリよあな。

 2年目にして恒例となった「マンガ大賞2009」のノミネート作品が決まったみたいで見てまあこんなもんだろうと納得。個人として推していたのは羽海野チカさんの「三月のライオン」くらいと相変わらずのマイナー狙いの大外しが炸裂してしまったけれども、名を並べることが目的だったんで別に良いのだ。挙がった10作品では河合克敏さんの書道漫画「とめはねっ! 鈴里高校書道部」が昨年に続いての唯一のノミネートとなって人気の衰えのなさを証明した恰好。今回が初ノミネートとなった末次由紀さん「ちはやふる」は百人一首ならぬ競技カルタがテーマになっていたりして、将棋に書道にカルタと文化系なんだけれども入ってい見ると意外に体育会的な世界ってな和風の競技に世間の漫画的な気分が集まってきている感じ。

 ってことは次にいったいどんな和風がテーマになるのかってあたりが漫画読み的興味の置き所。和で文化ってことで和文タイプライター部、ってそんな部活は流石にないか、ワープロ全盛な最近じゃあとくに。必要なのは文化系で静かそうに見えて、その実激しく運動なりパッションなりを要求されるもので、あとは部活だったら団体戦みたいなことも可能になっているってことか。華道や茶道に団体戦はないし主題として挙がっていたりするからここでは除外。とはいえ書道に団体戦があるってことすら意外だったから探せば案外に団体戦とかあるのかも、華道。どんな団体戦だ。

 実際に部活としてあるっぽいのが珠算部だけど、うつむいてひたすらに算盤の珠を繰ってるのって絵になりそうもないからなあ、ここはちょいSF風味を交えて女子中学生がおもむろに逆立ちをして算盤に立ち向かうって設定なら、ビジュアル的にも見られるものになるのかな、もちろん服はスカートだ。囲碁はもう「ヒカルの碁」でやられてはいるけれど連珠(五目並べ)ならまだないから誰か挑戦するのだ、ってこれも絵にはならないか。それこそ地球の命運をかけて異星人と戦う話へとふくらませ、異星人的合理性に地球人的奇想で立ち向かうとか、星をそれこそ5つ直列させるくらいのダイナミックなスケールにするとかいった工夫があれば読んで吃驚できるかも、ってもはや文化系部活じゃねえなあ。

 「宇宙兄弟」「聖☆おにいさん」「よんでますよ、アザゼルさん」あたりはサブカル方面から入って来たのかどうなのか。「青春少年マガジン1978〜1983」を推した人たちの歳が知りたい。10代が読んで楽しい本なのこれ? 「ママはテンパリスト」は少女マンガ枠で去年のダークホースかメインストリームとなった「岳」的な真面目作品枠を「深夜食堂」が確保、と。その流れで行くなら去年の真面目さに反しつつ「このマン」的なポップカルチャー感を薄めるために「聖☆おにいさん」あたりは外れて本人の出づらさから「三月のライオン」も抜けて上がって、「トリコ」はジャンプだから大人にゃちょっと推し辛いのかどうなのか。ってことで来るのは「とめはねっ!」と予想。また小学館かってことになるけど漫画読み受けしつつ一般受けもするって線を行くのが巧い版元だから仕方がないか。さて実際にはどうなるか。その前に全部読まないと。

 「まりあほりっく」はかなこの喋りに時々でじこが混じるのが愉快。けどゴッドな寮長の喋りにぷちこはあんまり混じらないのは暗めの邪悪さがウリなぷちこと明るい腹黒さが特徴のゴッドとの差か。増えるわかめとか煮こごりとか本編に出てくる小道具なりエピソードをちゃんと引っ張り込みつつ爆発するわかめとかを描き加え、間を取るような絵を挟み込むことで漫画を読むのとは違ったテンポと印象を出しているのはさすがに新房監督ってことか。けどまだ本編をなかったものにするかのような暴走はないからそこはそれで気を遣っているのかも。オリジナル話とかあったら面白いんだけどあるのかな。桐さんは冷静な眼鏡っ娘キャラなのに決して優等生ではないってところが常識を外していて可愛らしい。おお今回はちゃんとエンディングもあったぞ。CD発売早期にお願い。

 「ライドバック」はあの構造でああいった走りが可能なのかにちょっと興味。テロ組織だかゲリラ組織だかが政権を取っている世界の設定が今んところまるで無意味なんだけれどいずれ絡んで来るのかな、ヒロインの髪の毛のハネっぷりは描くの大変なのかな。「キャシャーンSins」はリンゴ出生の秘密とかディオの挫折からあっという間の覚醒おtかいろいろと話が進んだ回。レダはスーツに包まれた体の線が色っぽい。でもって無頼キングボスがバトルに参入、やっぱり強い、ディオだって最初はもてあました敵を一撃でぶち抜く腕前はさすがに世界のボスってことで。「みなみけおかえり」はプリンの深さについて勉強。のほほんとした流れは無印に近いけれども変態が足りないのがやや惜しい。保坂もっと出せ速水もっと出しまくれ。


【1月18日】 発熱はないけど頭痛気味で悪寒もちょっとあるけれど何より胃腸が弱体傾向なのは風邪の徴候か、それとも先に控える暗闇への精神的な失調か。公平であるべき制度にあれやこれやと難癖をつけて囲い込みとはじき出しをダブルで仕掛けて平気とはやはり事態に対する根本的な認識の誤謬がありそう。すべきことは公明にして公平な立場の表明なのにこの期に及んで体面の護持に汲々としていて何の未来が開けよう。周囲はそれで褒めそやしても大勢は裏側を見抜き外部はすべてを見抜いて裏で失笑するだけ。過去に1つがそういう憂き目にあって分解へと至ったことを何故分からないのだろう? 立場はだから人を変えるということか。変わってないからこそのこの事態ということか。ああ胃が痛い。

 出かけるのも億劫なんで昼頃まで布団でうだうだ。途中で「ワンピース」を見たり「絶対可憐チルドレン」を眺めてニコ・ロビンちゃんは細腰だなあとかゆかな婆さんは婆さんな癖に見た目は若いよなあとか思って悶々。気がつくと正午を過ぎていたんで本屋へと回ってネタになりそうな本を仕込んでそれから「ストライクウィッチーズ」のムックを買ってパンツじゃないならこれは何かと尋ねたら、それはズボンだ絶対ズボンだ何が何でもズボンなんだという魂の叫びを空耳で聞いてそれなら結構、だったらそんなズボンで公衆の面前を是非に歩いて欲しいものだと呼びかけたところで相手は二次元、どうしようもないのでせめて声優の方々にズボンスタイルでイベントに立つなりして欲しいものだと心で叫ぶ。ああやっぱり熱がありそうだ。

 それだけで疲れ果てて珈琲屋で休憩しながら津原泰水さんの「たまさか人形堂物語」(文藝春秋社)を読みふける。津原さんのことだから人形が真夜中に歩き出しては手足を引きちぎられようとも顔面を砕かれようとも怯まず倒れないで襲ってくる猟奇ホラーかと想像したら(やや偏見)、意外にも人形というものをコアにした一種のミステリーになっていて職人ならではの気質の興味深さと、人形というものが持つ人に似て人に非ず、かといって人とは違うかというと、それもまた違っていたりするといった複雑にして深淵な主題を味わうことができた。こういうものも書けてしまうんだから作家って凄い。津原さんが凄いのか。

 祖母が守り育ててきた人形店だけれど、長男は継がず祖父ももてあまし気味な果てに母屋を売り払ってはニュージーランドに移住。そして人形店は孫娘、といっても広告会社を辞めてひとりふらふらとしていた30も過ぎた女性が相続することになってこりゃあどうしたものかと店へと出向き、どうしようもないなあと想いながらもしばらくは人形店を続けていたもののやっぱりどうしようもない。

 就職活動でもしようかと思い、店番代わりに新卒だけれど家が裕福で働く面倒のいらない冨永という青年を雇ったら、彼が手作りをしたテディベアが妙に受けて商売になり、且つ修理の腕前もあってそちらをだったら本業にしようとしたものの、次第に手に負えないくらいに高級で複雑な人形が持ち混まれるようになって、ならばと新聞で職人を募集したら師村という過去に曰わくがありそうだけれど腕前だけは抜群で知識も豊富な男が応募してくれて、どうにか動き始めた玉坂人形堂にはその日もFRPのケースに収められた高価そうな人形が修理へと持ち込まれて来た。

 ケースを開けて現れた人形を見て誰もが驚いた。顔が砕かれている。他はとても丁寧で綺麗なのに顔だけが砕かれぽっかりと穴を開けている。誰がどうしたのか? それを聞くのを遮るような依頼主の態度に聞けずにいた店主の女性だったけれども、そこにあった顔が依頼して来た女性と瓜二つだったことから人形と彼女との間に何かがあったのだということを想像する。つまりは依頼主の女性に似せて作られた人形だということか。否。人形に精通した師村さんの言葉では人形は女性がまだ幼かった頃にすでに作られていたのだとう。では誰に似せたのか。調べた結果を告げると依頼主は母親に似せたのだという。

 ならば女性はどうして人形と瓜二つなのか。さらに調べて分かった母親という女性の風貌。天才的な人形師がいてその手から作り出された人形があり、そんな人形に恋慕し嫉妬した女たちの激しく起伏する感情があったのだということが見えてくる。人形とは心を取り込んで写す鏡であり、そして過ぎる時の残酷さを見せつける存在でもある、ということか。

 添い寝するティディベアを何度直してもらっても、寝ている間に引きちぎってしまう少年のエピソードに冨永って青年が人形を直すということは誰のためにすることなのかを覚エピソードを絡めつつ、だから人形とはいったいどういう存在なのかを浮かび上がらせる話があり、師村さんって過去にとんでもない経歴を持っていそうな人が、チェコの高名な人形劇団の主宰者と出会いその至芸に触れ、そしてそんな芸を伝承していくことの厳しさに接して人形を相手にする大変さと素晴らしさに気づく話があってと実に多彩。最新のダッチワイフっていうかシリコンを使ったラブドール人形についての話もあって、こと古典的な人形にこだわるんじゃなく、人の形を写した存在全般について、それが持つ深淵で多様な意味について考えさせようとしている。

 チェコの人形師についての話なんかはホラーというかファンタジーめいた話もあって、途中に出てきたその人形師が操る人形が人形を操っていてさらに操られている人形が人形を操っているといった何段にも重なる入れ子のビジョンが、エンディングにさらりと触れられる謎めいたシチュエーションのさらに裏側に、あるいはそのさらに裏側にありそうな事態を想像させてちょっぴり背筋を震え上がらせる。誰が人間で誰が人形で誰がいったい操っていたのか。踊らされていなかったのは自分だけか。それとも自分もやっぱり踊らされていたのか。Wヤスミこと小林泰三さんの「玩具修理者」にも負けないブルブル感が立ち上る。新潟だかの城下町に伝わっていた古い人形をめぐる話は逆にミステリーへとシフト。人形に取り憑かれた女の妄念の凄まじさにこれもブルブルと震えさせられる。

 師村さんの正体をめぐる話では人形よりもむしろ職人の気質についての問いかけがなされていて、例えそれがイケナイことに繋がりそうでも職人として得られるものがあるのなら手を染めてしまい、結果起こった不孝に苛まれながらもやっぱり捨てきれない職人魂ってものがあるのかもしれないなあと思わされる。加藤唐九郎の「永仁の壷」事件もあるいはそうした意識の発露が招いた事件だったのか。名古屋にいたから唐九郎って割と身近に中日新聞なんかに出ていて名士扱いされていたけど、過去にいろいろあったことって後になってようやく知ったんだよなあ。まあ晩節をきれいにまとめて良い作品を残せたんだから唐九郎も本望。師村さんもだから気に病まずひたすらに信念を貫くのが救われる道なのかも。

 そんな感じに綴られた人形と人間との関係についての物語は、師村さんの正体が明らかになってこりゃあさすがに小さい人形店で抱えておくには惜しいってことになって終わりそうになるんだけれども放り出す女がいれば拾い上げる若者あり、ってことでとりあえず場は保たれ人も存続となってこれからもあれやこれやと続けて行けそう。ライトノベルだったら「付裳堂骨董店」シリーズみたいにいろいろと事件が舞い込み解決していく展開になるんだけれどもアンティーク全般を扱える付裳堂と違って玉坂堂は人形限定。なので扱える品も限られ知識もそこに特化しなくちゃあいけないんで作者の人が大変かも。でもラブドールを入れその人が過去にレジンキャストのフィギュアを作っていた話も入れて人形ってカテゴリーをいろいろと拡げていたりするんで、例えばガレージキットを題材にした模型と美術の差とかいったものを折り込みつつ、語っていけばまだまだネタは尽きないかも。期待して待とう。

 そうかそろそろ決まったみたいだ「マンガ大賞2009」の候補作。何十人かがあげた5冊づつの上位を多数決で選び10冊だかを決めてそれに再び投票してもらうってシステムだから集まって来る作品数も下は1票だけのものが何十作品も積み上がるんだけれど、それでも上位はしっかりとそれなりに現代を現しているものが来るから不思議というか、感性って奴はなかなかに侮れない。とはいえ徹底的にひねくれている身なんでそんな10冊に入る作品を選べていたかとはとても思えないんだけれど、ランキング投票っていうのは裏返しの自己主張であり、且つマイナーなものを表舞台にお披露目する機会でもあるんでここぞとばかりにあれやこれやと放り込んでいたいので、いずれ明らかになるだろう全推薦リストって奴から僕の感性のヘタレっぷりを見て笑ってやって頂戴な。


【1月17日】 良かったちゃんと撮れていた「黒神 The Animation」は、子供があっさりトラックに轢かれた衝撃の場面を前にしても、狂わず叫ばず泣かない主人公がちょっと不気味。過去に母親を失い直前にも同級生を失う悲劇を味わった上に、奇妙な少女からドッペルライナーなる存在を聞いて気持ちが上の空になっていたのか、それともどこか達観してしまったのか、いずれにしてもネジが外れた状態になってしまったかに見えたのに、少女が上がり込んでキャベツを貪り喰っていた姿を見た途端に、すべてを拒絶し引きこもりに走ろうとする素の自分が露わになってしまったあたりに揺れ動く、多感さってやつを見るべきかそれとも、キャラクターにまだブレがあったと考えるべきか。

 まあそんなことより問題はクロってあの少女がはいているのかいないのか、ってところででっかいシャツみたいなのを羽織ったその下がどうなっているのか、まだ誰も知らないところにいろいろと想像をふくらませる楽しみがある。ミニチュアダックスフンド以外にも何か入っていたりするのか。大きいのか小さいのか色は何色なのか、ってどこの色の話なんだ。話については世界の裏に潜んだドッペルライナーのシステムが浮かび上がってそれが何のために、誰によって仕組まれたものなのあって辺りが早く知りたいところだけれども、原作を読むのはまだ早い。東京について一家言ある2人組もご到着して起こる騒動の裏から浮かぶ真相とやらを見極めつつ、原作に手を出すかどうかを考えよう。原作ではちゃんとはいているのかな。

 でもって撮ってあったのを見た「鋼殻のレギオス」は切っても突いても再生する巨大な化け物を相手に戦う奴らがいて、それが何やら平穏な学園生活へと展示てさらに再び戦いの場面へと戻る時間のいったりきたりを最初はつかめずちょっと苦労。あれが今はこうなっているんだけれどやがてああなる、って掴めばそれでも追いかけていけるかな。生きている世界のシビアさが学園の平穏さと正反対なところはやっぱりあるかなあ、でも戦争をしてたって民間が本当にヤバさを感じるのって間際も瀬戸際だったりするから今はまだ一部の苦労に留まっていると見るべきか、いやでもあの過酷な世界はずっとずっと続いているみたいだし。環境と心理について考えよう。ルリルリで南千秋でアーニャで長門な寡黙系毒舌家は何故に真夜中に悪態を? まあ見ていこう。原作も読み返してみるかこれを機に。

 汚れた目玉を洗いに、というと汚したものはいったい何だという話へと及んでしまうからここは自重して、与えられたワンダーでスペキュレイティブな感性を、常識の範疇へと引き戻すべくあの衝撃から1週間を置いて別の舞台を見に行く、って云えば良いのかな。つまりはそんなにアレだったのか「鉄人28号」。周囲に山ほどの押井守リスぺくターがいるにも関わらず、誰1人として買った行った見た客がいない模様で、中身についてどうかって感想を述べている人もいない、それ故に貴重な経験だったって訳だけど。同じ値段なら「スカイ・クロラ」を6回見た方が良かったかなあ、ってそれはそれで。いや僕なら6回も草薙水素のボウリングが見られるのんだから、それはそれで受け入れるけど。

 ともあれ1週間を置いて見た舞台は三浦しをんさん原作の「風が強く吹いている」。箱根駅伝を走ることになった陸上ほとんど未経験の学生たちが、頑張りつつそれぞれの持ち味を発揮しつつ諍いも乗り越え疑心も埋めて団結してタイムを高め予選を勝ち抜き本戦へと向かっていくという、スポーツ青春物としては王道以上に王道を行く内容で「まほろ駅前多田便利軒」にも増して好き度では三浦さんの作品において現時点でのトップを行く作品って位置づけだけれど、走ってナンボの小説なだけにそれをあの四角い舞台の上でいったいどう表現するのか、って演出上の興味もあって行こうかと思いつつ、「鉄人」で大バクチを張って大負け(負け?)した後ではフトコロにも遠慮があって止めようかと悩んでいたら、「読売新聞」に出た劇評がことのほか絶賛で、これはやっぱり見ておかかなくちゃと楽日も前の土曜日午後の舞台のチケットを確保。後ろの方ではあったけれどもその分、舞台の全体が見渡させてこれはこれで悪くない場所だと座って開演を待つ。

 幕はなく「竹青荘」の談話室めいた場所と食堂前ってあたりが左右に設えられていて、出入り口の横に上に抜ける階段い上手へと逃げる通路が作ってあって、そこを出入りしながら10人が入れ替わり立ち代わりしたり集まったりして物語を進めていく。小説でも漫画でもパンを万引きして突っ走る走(かける)の姿をハイジが見つけ追いかけるのが特徴になっているんだけれど、舞台はそれをバッサリとカット。ハイジにつかまった走が竹青荘へと引っ張り込まれて理由を聞かれ、その走りっぷりに惚れ込んだハイジからから陸上をやろうぜと誘われ、10人が集まったから箱根に出ようぜって云われて驚き悩み慌てながらもだんだんと、団結していく展開が繰り広げられる。

 練習の走りも記録会の走りも直接は見せず結果を報告しあう形で仄めかせる。なるほど1つの場面を使って見せるには巧いやりかたでもありベストなやりかた。そこから何がどうなっているのかを想像しつつ、皆が成長していく様ってのを掴んでいける。ひとり一人に見せ場もあって、「劇団スタジオライフ」から初の外部客演となった松本慎也さんは漫画大好きの「王子」の役をまさに王子って容姿で好演。インテルのCMでバレリーナになってたデイビッド矢野さんも黒人だから陸上は強くて当然の留学生だろう卑怯だっていった中傷に逆偏見だと落ち込む姿を、普段の陽気さとは反対の表情で演じてる。

 そうだよなあ、人種なり国籍からそうだって決めつけられるのってそうじゃない大半の人にとっちゃあ侮辱以外の何者でもないもんなあ、とくにそうした偏見って半ばからかいの意でもって発せられるもの。そうじゃないって反論しても、図星を言い当てられたから切れてるだけだねって笑われることが少なくない。だからギャグであってもそうした偏見を誇張するような表現をする時には相当な配慮が必要なんだけれど、昨今はむしろそうした誇張を助長する風潮が強まっているからなあ、悩ましい。そうだメンバーだとやっぱり「仮面ライダー THE NEXT」の黄川田将也さんが長身で痩躯で陸上速そうな姿でもって皆を引っ張り支えるハイジの役を見事に演じてた。印象だともうちょっと人をおだて騙してでも引っ張り込むキャラって感じだったけれど、そういう役だと黄川田さんじゃあちょっとハマらない。だから舞台のハイジは真面目でひたむきなキャラになっていたけど、それはそれで全体をまとめるキーになっててとても良かった。

 走役の和田正人さんは云わずとしれた箱根ランナーなだけあって、走りって何だって言葉にも他にはない重みが。いや多分あるはずなんだけれどもそうした過去を色眼鏡的な視点から感じさせないくらいに役者としてしっかり舞台の上で蔵原走を演じてた。熱血でひたむきな良い役者。きっと他でもこれから活躍していくことだろー。そんなこんなで進んでいった舞台はきっと駅伝そのものも背後に隠して進めるのかと思っていたら、いざスタートなる場面で装置が転換されてそして10人が勢揃いして並ぶ配置に。スタート地点に位置しつつそれぞれが迎えるスタートにさまざまなプレッシャーを感じている様を交替交替に演じでいく演出は、見ていてスピード感もあり盛り上がり感もたっぷりで一気に興奮がわき上がる。

 そしてまさか本当に走るとは。その走りっぷりは1人が3分とか5分とかに及んでいるから見た目以上に大変そうだけれど、皆がちゃんとやり遂げていたのが凄い。ともすればコントになりそうな装置を使って感動のシーンに仕立て上げた演出の人のアイディアに喝采。あそこから始まる箱根駅伝の様子を見に何度も通いたくなって来たけど舞台は18日で終わりでほぼ完売。当日券も出るみたいだけれども競争率は激しそう、なんで見たい人はこの後に続く富山名古屋仙台大阪福岡で是非に見て差し上げてやって頂きたい。もう最高に感動の舞台。もう最上に感涙の舞台。汚れちまった目からすっかり埃も落ちて、新しい輝きの中で明日をきっと迎えられるに違いない。でもやっぱり箱根駅伝そのものは関東ローカルな大会に過ぎないと負け惜しみ。そこで燃え尽きて結構な人々のクライマックスだと認めて、日本の陸上界とは別のものだと切り離さないと、いつまで経っても日本から世界と互せるランナーは出てこないから。

 んで新宿へと回ってネイキッドロフトで「アニメの門」のイベントで2008年話題ベスト10の生まれる瞬間を眼にする。宮昌太郎さん小川びぃさんに座主の藤津亮太さんが4つづつ選んだ中から10個を選んで並べる感じで「ポニョ」は出たけど「ガンダム」は出なかったり「I.G」に「TOE」といった謎のタームが並んだりとなかなかに愉快。もちろんパンツなアニメのヒットについても紹介があったけれど、あれはパンツではなくズボンということだから範疇に入っていたのは「ロザリオとヴァンパイア CAPU2」と「一騎当千」のことだろう、うん。後半戦は早稲田マジッククラブから出た大河内一楼さんを招いてのトークショー。そうか大元は大河内さんだったのか、ってことは決断主義的風潮を監督に求め遡るロジックは果たして成立し得るのか。まあひとりで作品は出来ない訳だからニュアンスも入っているってことで。業界の深い話とか聞いていたい気もあったけれども本読みが重なって厳しそうなんで退散。明日を気にせず騒いでいられる時間が欲しいなあ。否応なく来る可能性もあるけれど。どうしようかなあ。


【1月16日】 遅ればせながら「鉄腕バーディーDECODE2」の第1話でバーディーが何で有田しおんを未だに続けているかが判明、大飯食らいな訳なんだな、けどその賄いをつとむの財布ではカバーしきれない、と。もとがバーディーのボディなんだからつとむが代わりに喰ってその分量で満足するはずはないのも道理。だから食い扶持を稼ぐために目玉のとんがった売らないおばあさんの世話で仕事に勤しんでいるのでありますー。

 そんなしおんのビジュアルにバーディーのビジュアルを重ね合わせてチェックしていたのは誰なんだ。地球人に化けたおっさんを殺害したのは誰なんだ。知人らしく手を差し伸べて来た青年の妖しさもこれありでいろいろと錯綜する中で過去に悩みつつ戦うバーディ・シフォンの姿が見られそう。視聴継続。DVDも買うんだろうなあ。実はまだ見ていなかったりする三石琴乃さんバーディーの旧作OVAもこの機会に見てみるか、って考えるから金がなくなるんだよなあ、先に買って埋めなきゃ「レンタルマギカ」の残り分とか。

 またぞろ復活してきた23歳以下のサッカー選手のクオリティ・オブ・サッカーライフな言説に、年齢制限を設けた新しい大会を作るとかいった文言があって犬飼基昭会長ら日本サッカー協会の面々が、「ナビスコカップ」あたりの改変を未だ画策しているんじゃないかって疑心も浮かび来もそぞろ。とっととベストメンバー規定なんぞ廃止して、若手がローテーションで試合にガンガンと出られる状況を作れば良いって改めて言ってみたくなる。

 一方で、中途半端にトップチームに囲われたまんま10数試合とかの先発とあと途中出場くらいで、果たして良いのかって問題も浮かんで、それならアメリカの大リーグの3Aとか2Aじゃないけれど、傘下に下部チームを持つなり提携チームを持ってそこで年に40試合とかさせる方策も浮かんで来そう。実際に、若い選手の保有を制限してレンタルに出すよう求めていたりするアイディアも含まれていて、協会もそれなりに若手問題について考えてはいる模様。

 そんな若年層問題を協会に意識させた北京五輪代表の惨敗で、ひとり責任を負わされた感がある反町康冶さんが「エルゴラッソ」に登場して、もう如何ともしがたい状況にあってその中で選手の成長を待って待って待ち続けたんだけれども……ってな話を吐露してる。それこそ直前まで成長を待っていたからこそのぎりぎりの選手選考だったけれども、経験なき成長はあり得なかったって当然の帰結が、年に何十試合も真剣勝負を繰り広げている各国の23歳辺りの選手を相手にしての惨敗だったみたい。

 「細貝(萌=浦和)にしても、浦和ではずっと控えにも入っていなかった。高校を卒業してから22歳まで何もしていなかったんだ。だけど才能は抜群にあるから選んでいた。もし18歳〜22歳の間にほかのチームでプレーしていたら、今ごろは日本代表になっていたんじゃないかな」という反町さん。そ言葉のどこまでを信じて良いかは細貝選手の浦和でのパフォーマンスを余り見ていないから判断しづらいけれども、香川慎司選手や内田篤人選手の成長ぶりと目立ちぶりからすればそういう可能性もあるのかもしれない。

 とはいえ若い選手を獲得してはJFLのジェフリザーブスに送り込んで何十試合もさせているジェフユナイテッド市原・千葉に五輪を担い代表を担う若手選手が生まれているかっていうとそうでもないところが事のそうは簡単にいかなさって奴を見せている。今期もジェフ千葉のスタメンは外から来た人たちに占められそう。ユースから上がった乾達朗選手にしても高校から入った益山司選手にしても世代別の代表に呼ばれ名を上げているって風はない。米倉恒貴選手も青木孝太選手もデビューは早かったけれども今ひとつトップ選手って感じじゃない。

 それともやっぱり中途半端でリザーブスでも試合数が足りないくらいにガンガンと試合させなきゃ成長は促せないってことか。けど高校時代もそれに匹敵する試合なんてしてない子供がいきなりでは痛みも出そう。部活サッカーの1年は球拾いで2年は補欠で3年は予選だけれど負けたら終わりの仕組みも含めて、大勢がいっぱい試合に出られる環境を作る方がより将来を睨んだ強化につながるんだろー。何をどうすればうまく回るか。2週間に1試合を登録選手に義務づける? それもまた違うしなあ。試合場もないし。ひずみとほころびを直し埋める方法をこそ考えて、偉いえらい会長様ってことで。

 つかおいおい大谷未央選手は早いだろう。TASAKIペルーレ所属選手の数人が引退するとの報は既報通りに年齢もそれなりな池田浩美選手が引退となったけれども今だってストライカーとして十分以上に驚異的な大谷未央選手もディフェンスとして活躍していたしこれからだって全然大丈夫な下小鶴綾選手も引退となるのはちょっと勿体なさすぎる。けど関西に拠点のチームから関東のジェフユナイテッド市原・千葉レディースとかじゃあ仕事も続けられないしお金だって得られないからしばらくは勤め人として関西に足場を持ちつつ指導者として活動してくのが人生設計的にも安心なんだろう。でもしかし勿体ないなあ大谷選手。欲しいなあ。

 乙女ざかりに命をかけて、風に逆らう三姉妹、花と散ろうか咲かせよか。ああ懐かしい。あんまり懐かしすぎてクローゼットの天袋から仕舞ってあった写真集まで引っ張り出してしまった「有言実行三姉妹シュシュトリアン」。DVDも発売されていて見るには困らない作品だけれど、これが酉年でもないのに2月からCSの「ファミリー劇場」で放送されることになったとかで、家にCSがあるならこりゃあ見なきゃあファンの名も廃ると持ったけれども家にCSがないんで仕方がない、写真集をながめて雪子月子花子の3姉妹の15年も昔の麗しい姿を堪能することにしようっと。しかしあんまり変わってないなあ石橋けいさん。不思議シリーズはそういやあこれで最後になってしまったんだよなあ。また復活させて欲しいなあ。「パンシャーヌ」があったって? あれはあれ。これはこれ。


【1月15日】 「空を見上げる少女の瞳に映る世界」。うん1度で書けたぞ「少女が見上げる空に映る瞳には」。違う間違えた。というくらいに長さがあって言い間違いも多発しそうな新番組だけれど事前にあんまり情報もないまま唐突に始まった作品に出てくるどこかで見たような赤い魔神。なんだおいこりゃ「MUNTO」じゃん。

 京都アニメーションがその昔に自分のところで企画して2本まで作ったオリジナルビデオアニメーション。崩壊する天上界を救おうとしてムントって名の魔神が地上へと向かいひとりの少女にアプローチするってストーリーは、前に買ってみたOVAの1本目と多分重なった内容。でもあれは2本でとりあえず打ち止めになっていたはずでテレビシリーズなんて作れるくらいに本数が溜まっていた訳じゃないから、新たに設定なんかも起こされシナリオも作られたんだろー。ただの再編集版とは違う展開になりそうってことらしーんで、こりゃあやっぱり見ておかないといけなさそー。

 んでテレビ版「見上げた空に映る少女の瞳に乾杯」。違う「空を見上げる少女の瞳に映る世界」はやっぱり柱を次々に落とされ天上界から抹殺されようとしている魔神の国からムントが地表へとおりて少女にアプローチするって内容。地上ではひとり天上に国が見える主人公がいて友人が2人いて、そのうちの1人は子供っぽい癖に近所で評判の少年と結婚するんだと言い出すから友人は困惑。探して問いただそうってするストーリーの裏側では、壁に阻まれ立ち往生しているムントがいて、ムントが離れた世界を攻める政府だかと魔神の国だかのバトルがあってと両面から進んでいく。

 バトルシーンではシャザーンがハイハイサーと手を振り敵の連合軍を殲滅(ちょっと違う)したりと健闘はしているけれども多勢に無勢で柱は次々に落とされ魔神の国は崩落の瀬戸際に。果たしてどうなるって緊迫感が次あたりに大きな展開へと繋がるのか。見てみよう。ついでに買ったけどみてないOVAの2巻目も掘り出して見てみるか。できあがりについては流石に京都アニメーションだけあって動くし跳ねるし綺麗だし、って感じ。オープニングではとりわけ敵のライカって女将軍のスタイルに動きがなかなかで、あんなに肌が露わで戦争なんて出来るのかって思ったけれども、局外者のシャザーン、ではなくガスなんて腹を出して戦場に臨んでいたりするから別に良いのか、強い人たちは。

 書き上げられるものとしての犯罪を冒した少年への容赦のなさとか、ゲームなど新しいメディアによってもたらされる影響への根拠希薄な糾弾といったものは前からあったけれども、それはあくまで当人のスタンスであって、肯定されるか否定されるかといった受けて側の反応の違いはあっても物書きとして容認の範疇に置かれていた。けどでもこうもあっさりと誰が情報を明かしたのかを公の席であからさまにしてしまうとなると、主張を否定していた人だけでなくっていい仕事をしているんじゃないかと肯定していた人からも、同じジャーナリズムに携わる者としてどこか妙なんじゃないかって反応が起こりそう。

 なおかつ当人が覚悟の上でやっている雰囲気があまりなく、どんな影響が今後に出るかに思い及んでいる風もなさそうな所を見るにつけ、こりゃあやっぱり違う存在だったんだって声も起こりそうだけれども、1つが決壊すればそれが大きく広がっていくのが世の常って奴でメディアにとっての金科玉条ともいえる「取材源の秘匿」はこうして覆され、将来に果てしない禍根を残すのだろうなあ。それでもご同業で見方している人とかいるのかしらん。これからの展開に興味津々。

 アレグリアとは仕事はしたくないけれども、周囲にアレグリアなんて人はいないから別に平気か、って人名じゃねえコピー機の名前だ。そんなコピー機が大迷惑する話の書評を書いてこれはもう掲載されたんだっけどうだったっけ、気にしてないけどその作者であるところの津村記久子さんが芥川賞を獲得したとなるとタイミング的にも外してなさそうで気分的には悪くない。ただあんまり人に読まれている風がないところが残念というか悩ましいというか。砂に水を撒くみたいなものだけれどもそれでも濡れる砂はあるってことで何かの役に経っていられればそれは本望。芥川賞受賞作品走らないけれども「アレグリアとは仕事はできない」は超面白いので読んでみましょう。とりあえずおめでとうございます。作品以外は全然知らない人だけど。

 ってことで大森望さん豊崎由美さんはともに本命どんぴしゃり。なおかつ直木賞でも山本兼一さん「利休にたずねよ」が受賞していてこちらも本命どんぴしゃり。2人がダブルで本命を当てたのって桜庭一樹さんに川上未映子さんの時以来? 初めてじゃあないから驚くことではないんだけれどもそれに加えて今回は、2人ともまるで絶対にあり得ないと強調していた天童荒太さんが「悼む人」で受賞していたのがちょっと困ったというか大成功と言いづらい点か。きっとこれから「左膝を地面につきました。次に、右手を頭上に挙げ、空中に漂う何かを捕らえるようにして……」受賞を悼んでくれることだろう。

 それにして天童さん。他の何で与えたって構わないけどこれだけは、って作品がノミネートされて且つ賞まで取ってしまった裏にいったいどんあやりとりがあったのか。選評がとにかく楽しみで仕方がないし大森さん豊崎さんのコメントも待ち遠しい。とはいえ受賞したからには読んでみないといけないか。売れそうだよなあこれよりさらに。文藝春秋社的には受賞が1つ出て僥倖って判断? 表紙に作品が使われている舟越桂さんには素直におめでとうと言って差し上げたい。同じ舟越さん表紙の天童作品なら「永遠の仔」で何かを取って欲しかったなあ。

 そうかだから数寄屋橋の東芝ビルの地下にある飲食店が次次に閉店になっていたのかと「週刊SPA!」の2009年1月20日号に掲載の坪内福田対談を読んで理解、塁・ヴィトンが入るビルが建つはずだったのか、んでもヴィトンは撤退を表明でポッカリ空いたあそこには何が入る? GAPが居座ったりして。問題は地下の定食屋さんまで消えてしまうことかなあ、850円くらいで魚か豚肉の茄子味噌いためかといった更に山ほどの小鉢がついた定食を出してくていたんだよ、これがなかかなに良いお味だったんだよ。時間があると今でも食べに出ることある店なんだけれどもなくなってしまうのかなあ、上のHMVもなくなると困るなあ、洋楽の輸入盤はあそこが近所じゃ1番充実してたんで。でもやっぱり歌舞伎座の建て直しは精神的貧困の極みだねえ、あそこでやらなきゃ歌舞伎じゃねえのにねえ、大御所な人たちもどうして反対しないのかねえ、あいやしばらくとか言ってねえ、それだけ社員化が進んじまったってことなのかねえ。


【1月14日】 核ミサイルが落ちてくるかもしれないって不条理でシュールでシリアスなシチュエーションの下で、平素と変わらないように見えてところどころに畏れや怒りや戸惑いや狼狽がちょっぴり吹き出し人間って奴の心の有り様を感じさせてくれる話だったら、吉野朔実さんが「いたいけな瞳」って短編集の中で描いていたように記憶しているけれど、短編ゆえにシュールさがやっぱり際だって人々の身の処し方まではさすがに及んでいなかった。

 その点で山下貴光さんの「このミステリーがすごい」大賞を受賞した「屋上ミサイル」(宝島社)は、米国の大統領だかがテロリストにさらわれ基地に拉致される中で基地から同盟国へとミサイルが飛ぶんじゃないかって不安が世界に蔓延している状況下で、諦めにも似つつかといって生きるしつこさも保ちつつ、開き直りともとれそうだけれど投げやりではない態度で生きる少年少女の姿が見られて人間、いざってときにいったいどうすべきなんだろうかって命題への答えを見せてくれる。でもそんな状況になるなんてあったら困るけど。あったら面白いことには違いがないけど。

 デザイン科に在籍している少女が高い場所から絵を書こうと上がった普通科の屋上にいたのは、乱暴者で知られる男に友人らしい喋らない男。友人が喋らないのは願掛けをしているからで、見下ろしたグラウンドで走る陸上部の少女に告白するまでは口を聞かないって決めていたらしい。そんな面子に1年後輩で屋上から飛び降りるかに見えて別にそうはしなかった少年も含め、屋上の居心地の良さにそことたまり場として屋上部ってのを作って始めたのは、拾った拳銃と落ちていた殺し屋に殺害されたらしい男の正体探し。途中に皆で肝試しっぽく出向いたトンネルで、神を語って殴りかかってきた浪人生を撃退したり、告白を望んでいた陸上部の少女から、見ていただけじゃなくってつけ回しただろうと言われてぶたれた少年を助け、結果的に少女を追い回していたカメラマンを排除し仲を深めたりする青春が描かれる。

 けれどもそれで終わればただの青春ストーリー。乱暴者の少年を狙う殺し屋が本当に現れてはナイフを向けてきたり、デザイン科の少女の弟が誰かに殴られ背景を探ると薬の密売組織があったり、殺されていた写真の男にそっくりな男がいて詐欺を働いていていそれに知人が引っかかっていたりと、話が重なりキャラクターがつながって話を複雑だけれど紐解く楽しさに溢れた展開へと引っ張っていく。やがて屋上の少年が憧れていた少女が誘拐されてそれを皆で助けていく話となってクライマックスの大アクション。ロックの素晴らしさって奴が打ち出された果てに、大前提となっていた大統領の誘拐事件も解決して、話はなるまる大団円へと向かっていく。

 けど、本当にそれで終わってしまうのか、別に何か謎が隠されていないのかってところがやや気になる。これだけつながった事件と人が遠い海の向こうの大統領誘拐事件にもつながっていないのか、とか。傷害だとか誘拐だとか乱暴な事件が頻発するのも世界が恐怖に怯え街から人がいなくなってしまったからって理由にもなっているから、前提としてはそれなりに機能しているんだろうけどもうひとつ、関わっていて欲しいなあ。読んでる間は起こる事件がつながり解決してまた起こる展開の慌ただしさと、どこか達観した少年少女の会話の面白さが楽しいストーリー。大賞ってのも頷ける。それにしても愉快な奴ら。イジメの問題に敢然と立ち向かう少年たちが麗しかった「屋上ボーイズ」と比べてみても、良いかもね。

 ジビッツ、って耳慣れない言葉が流行ったのって去年の夏だったっけ、例の軽くて履きやすくってお洒落なサンダル「クロックス」の本体にポコポコを明けられた穴に通してくっつける飾りのことで花柄もあればディズニーのキャラクターをかたどったものもあったりして、なっかなかの可愛さから子供に限らず大人も含めてサンダルを飾り立てて遊んでた。クロックスの人気も本体の機能性よりむしろ、そんな可愛らしさを自分でアレンジできるとこにあったって言っても多分言い過ぎじゃない。履けばやっぱり良いって思えるけど。

 仕事場に履いていくようなクロックス(仕事に履いていくなよクロックス)には流石にジビッツは付けられないんで経験はないんだけれども、人によってはつけたジビッツが爪にあたって怪我をしたみたいでとりわけ脚が小さくって先端が余ってしまうような子供は、中で動く爪先がジビッツを止めている部分に引っかかって爪が割れたり取れたりしてしまう事故が幾つか発生。エスカレーターに引っ張り込まれる問題ともどもあれやこれやと叩かれた。んまあ脚にあわないサンダルを履いているから起こる事故でもあって想定外の使用に責任をどこまでとれるかって悩ましい問題もあったけれども、周知を徹底させることでとりあえずは収束。飾りは今も人気でクロックスも来年の夏にはまた勢いを取り戻して街に蔓延ることだろー。

 とはいえそんな人気をサンダルばかりに独り占めさせておく手はないってことで、玩具のセガトイズがティディベアみたいな形をクロックスのような柔らかい素材でつくって売り出すことになった模様。お腹と背中にサンダルみたいな穴があいててそこにジビッツならぬいろいろな飾りをつけて楽しめるようになっている。バッヂでも髪留めでも何でもかんでもくっつけぶら下げ飾り立てればオリジナルなベアが完成。それをカバンとかにぶら下げて歩けば人目を引くこと間違いない、って寸法か。クロックスにも小さい携帯電話入れがあってそれにジビッツを留めて遊べないこともないけれど、中に電話が入りづらくなっちゃあ意味がない。音楽に合わせて光って踊る「iDog」とか、元祖の要素を引っ張り可能性を広げて見せる小技の上手さじゃあ玩具メーカーに一日の長ってことで、これもなかなかのヒットになるって気もするけれど、果たして。

 そんなセガトイズの新製品なんかも楽しめた「TOYフォーラム」でも目玉はフカキョンのドロンジョさま、ではなくって深田恭子さんが演じる実写版「ヤッターマン」のドロンジョと同じ衣装を身に纏ったクールガール、でもなくって本当は「トミカヒーロー レスキューフォース」に続く「トミカヒーロー レスキューファイアー」なんだけれどもやっぱり目はフィギュア版のドロンジョ様へと向かってしまう。うーん良いボディ。このスタイルがまんま3Dになっていたなら今頃くびれの行方があれだとか、むちむち感が衣装に押さえ込まれて目立ってないといった反応も起こらなかっただろうなあ、いやあなかなかに立派な谷間だね。

 似た商品だと「キャシャーンSins」に出てくるキャシャーンの対抗馬のディオを中身女性にしたクールガールもあってこちらもなかなかにご立派。同種の女性版キャシャーンもあって2人が出演してたらアニメの評判も今の哲学的なタームへの関心から、ずっと萌えによったものになっていたかも。そーゆーキャシャーンも見たいなあ。フィギュアではあと押井守さんに書かせないプロテクトギアの首都警バージョンではなく自衛隊バージョンも登場。グリーンに塗られたボディは装甲も増えて頑丈そう。デカールを張って汚しを入れてミリタリー色を出すも良し、イラストを描いて痛プロテクトギアにするも良し、ってそれはさすがに。

 しかしそんな商品よりも目を引いたのがNERFってトイガンで調べると米国で40年くらいの歴史を誇るブランドらしーんだけれども日々進化しているから昔のまんまの商品とは限らない。んでもってタカラトミーが持ってこようとしている現代版はリボルバーの弾倉に棒状の弾をつめて打ち出すと、弾の先端についている吸盤が的にくっつくってもので遠目で撃ってもなかなかの速さで飛んでいってしっかりとした命中精度で的に当たる。手にもしっかりと撃った手応えが残って楽しめる。目とかに当たると危なさそうだからそのあたりはゴーグルなんかを必須としつつ遊ぶのが日本的には良いのかも。

 別に先っぽにベロクロがついている弾もあってこれはザラっとした表面のベストを着てお互いに撃ち合い急所に命中させて楽しむみたい。ペイント弾だと汚れるけれどこれなた当たるだけだから安心で清潔。当たった感触もあるからサバイバーショットみたく音と振動で教えられて死んじゃった、となるよりサバゲーな雰囲気に近いかも。そういやあトミー時代にサバイバーショットが復活して葛飾だかどっかの巨大迷路でガイナックスが主催の大会が開かれて見物に行ったっけ。あの時に買ったガイナックスのロゴ入りエヴァンゲリオンのジャケット付きサバイバーショットは今も家のどこかにるんだけれど、売れば値段は付くのかな、売らないけどちょっと気になるなあ。進路についていろいろと物騒な話題も渦巻いているし。


【1月13日】 あまりのハイテンション&ハイスピードで第1話がどう終わったかすら覚えていない「宇宙をかける少女」の第2話なんでMAKOちゃん演じるところの獅子堂家だっけかの3女がどんな状態にあるのか、瞬間分からなかったけれども見たらどうやら宇宙服を着てコロニーの側を漂っていた模様。助けられて学校へと行ったらなぜか生徒会長とかから呼び出され、エリートしか入れないっぽいフロアを通ってはいった部屋にいたのは乱暴な口調の会長とそれを支える下僕な少年。ワイルド&クールなカップルとして人気が出そうな配置をちゃんとしておくところはヒットに向けたフック作りに余年がないなあサンライズ。

 けど天上をぶち破って飛び込んできた謎っ娘少女に助けられ、引っ張られて再び訪れた謎のコロニーでルルーシュじゃなかった人工知能のレオパルドを喋り騒いだ挙げ句に、猫耳帽子を被った謎の少女に連れられて、とんでもない武器を完全にするための部品を奪いに廃棄コロニーへと行く。そりゃもう完全に犯罪者、いかなお金持ちのお姉さんだって助けられないくらいの事態なんだろうけれど、それに気づいている風もないところに3女の脳の柔らかさが見て取れる。そういうのって、どうもなあ。意識しての無鉄砲さでもないしなあ。

 んで現れたポリスと諍いを起こした果てに現れた何か。そりゃ何だ、ってところで以下次回。慌ただしい展開の中に見落としも多数ありそうだし、そもそもな設定を理解するのも難しい。妹子とかポリスの知り合いのガンマンとか、あの小さいのって生物なのか何なのか。それとも作り物なのか。分からないけどそんな分からなさを引きずりながらちょっとずつ小出しになっていく設定を、ハイテンションでハイスピードに流されながら味わい見返して噛みしめ、そうやって全体を理解してそして繰り広げられるスケールの大きな物語って奴を最終的に楽しませてくれれば、それで十分なんで今のところは何も言わずに見に行こう。オープニングの曲調があんまりハイテンションでハイスピードな物語にマッチしていないなあとかも言わずに。

 「続・夏目友人帳」の方は雪ウサギが喋っているのをチラッと見たけどそれを脇にやって「アキハバラ@DEEP」続きでニール・サイモン原作の戯曲を映画にした「ブルースが聞こえる」を鑑賞、ってこのつながりを理解するまでにはあとしばらくはかかりそうだけれど、あんまり大した意味はないのでお気になさらず。いわゆる新兵の訓練もので「フルメタルジャケット」だとハートマン軍曹が激しくも口汚い罵倒でもって新兵を鍛え直して洗脳し、兵士へと作り替えていく様が実に皮相的に描かれている、のかどうかは見てないんで分からないけどそんなイメージ。だからトゥーミー軍曹もそんな感じな人かと思っていたら、クリストファー・ウォーケン演じる軍曹は肉体もガッチリとはしておらずどこか神経質。でもって口調はやや甲高いから強面ってイメージはなくこれなら反抗だって出来ちゃいそうって思わせる。

 実際にニューヨークとかから集まってきた新兵たちも結構な口答え。でもって腕立て伏せをさせられたりしつつ夜になったら賭に興じていつか軍曹に200回の腕立て伏せをさせてやるとか言っている。そんな新兵達に起こる事件がいくつか。お金がなくなったり主人公でニール・サイモンの分身とお言えそうな男が書いたあくまで想像における仲間達の描写が摩擦を引き起こしたり。ホモセクシャル疑惑も持ち起こってそいういうものが厳禁な軍隊のなかに緊張感も引き起こすけど、大きく爆発することはなく淡々と収まっていく。

 生き死にに繋がるような激しい訓練の場面もないから、そういった中で育まれる軍曹と新兵たちの熱くて激しい関係性ってものの見えないんだけれども、逆に議論とか重なったりしたからなんだろう、軍曹の側に新兵への理解なんかが生まれ自分が怪我もあって除隊入院へと至ると知って新兵のひとりを呼び出し、強圧的な態度を示しつつ自分が悪者になって罰を受け、新兵たちの気持ちを和らげようといった行動を見せるところが、軍隊の非人間性を描くってことではなく、青春において出会ったひとつの、けれども大切な思い出としての軍隊生活、集団生活を描きたかったニール・サイモンの気持ちを伺わせる。

 映画にするとこぢんまりとしてしまうけれど、舞台だったら場面も大きく触れず、シチュエーションの中で言葉が行き交う中から若者気質の揺れ動く様が浮かんできそう。原作だとエプスタインがトゥーミーと対決するんだけれど映画では違ってたなあ。舞台ではどっちになるのかな。といわけでパルコ劇場で舞台版「ビロクシー・ブルース」は間もなく上演。キャストを見れば「アキハバラ@DEEP」との共通点も見えて来る来る。「地球でたったふたり」でニヒルなヤクザのボスをやったのに、また繊細で理屈っぽい青年なのか、忍成修吾さんは。そういう顔立ちだもんなあ。

 朝方に「コードギアス 反逆のルルーシュ」のコンプリートベストを査収、CDが1枚でDVDも1枚な割には箱が巨大なのは、楽曲の歌詞が入ってストーリーを紹介する冊子が入って、それから楽曲に関連してキャラクターたちが何かを語ったショートショートストーリーが入って、さらにポストカードも入っていたりするからで、そこまでするならディスクと歌詞だけで3000円とかにしてくれたら嬉しかったかもしれないけれども、縁起物だから仕方がない。曲はやっぱり「COLORS」が良いよなあ、ドドドドドドドってロールが来てプープワップップププワッとか鳴って歌が始まるあのタイミング。これまでの驚きの展開からさらに驚きへと向かうだろうこれからを想像させる期待に溢れたサウンドだった。DVDの方で映像付き見ると毎週のように襲いかかってきた怒濤のエピソードが思い出されて押しつぶされそうになる。あのころは毎週が楽しかったなあ。C.C.のお尻も丸かったなあ。

 ジンの「解読不能」も今にして思えば、ある程度は見えてきた世界観の中で人々が動き出会い別れ諍いふれ合うといったスピーディーな展開と、ナイトメアフレームたちが本格的にバトルしあう激しさを表現していたような気が。まあ後付けだけど。こちらでのALI PROJECTはもう完璧なくらいに悲劇性を帯びてきた展開を受けてしっかり締めてくれているって感じだなあ。「R2」に入ってORANGE RANGEもポップさが溢れていい感じ。そしてやっぱりなFLOWの「WORLDS END」は大きく飛翔した物語の空気を出しつつ未来への希望を開いてくれるテーマソングだった。何もかもみな懐かしい。

 土6なり日5なりもこうやってコンプリートベストが出るともう打ち止めって感じがするけれど、「鋼の錬金術師」みたく復活してくるシリーズもあるし、日7だけど「エウレカセブン」もなぜか復活の気配濃厚なだけに、「ギアス」も今再びの再生を見せてくれると嬉しいけれど、それにはパチンコ行きが前提になっては困るなあ。せめて映画くらいは見たいなあ。「装甲騎兵ボトムズ」だって映画になるし「マクロスF」だって「エウレカセブン」だって映画がどうって話になっているのに、2006年から2007年を越え2008年まで引っ張る長い人気を得続けた「コードギアス」がこれで終わって良いはずはない、ってことでひとつそこのところをよろしく。誰にお願いすれば良いんだろう?


【1月12日】 救われない。というか救いなんてない世の中に、己が信念だけで生き抜く必要性って奴を訴えているのだろうか、目黒条さんの「免罪符に」(角川書店)は。OLの主人公がファストフードに並んでいた時に股間からわしわしと何かが出てきたところから開幕。それは決してペニスではなく、例えるならば膣が裏返ったものらしいんだけれど奥で子宮とどうつながっているか不明な上に、医者とかに行くと引っ込んで元通りになってしまうから診断もしてもらえない。何度か繰り返す内に埒があかなくなった主人公は、昔知り合って今はちょっと疎遠になっていた女医のところへと出向き、見てもらった上にそれがだらりと外に下がった時でもそれなりに見えるよう、人工皮膚でくるんでもらって模様も描き込む手術をしてもらう。

 そうしてどうにか日常生活に戻った主人公だけれどふとしたことから再開した女性に引っ張り込まれた編み物教室が実は宗教みたいな組織で、沐浴を強要されて裸になった時に股間から垂れ下がったそれをみられて教祖の候補にまつりあげられる。売春なんかも奉仕を言い返していた組織でそれなりの地位を得ながらもやがて組織は摘発。行き場を失った主人公は、別の組織で売春を始めるもののそこも逃げだし流れ着いた地方で舞台に立って出し入れを見せたらこれが評判に。そしてQQなる独裁者が収める国からお呼びがかかって危険を承知で金を求めてその国へと渡って、さらなる驚異の体験を重ねた果て。救われているとはちょっと言えなさそうなエンディングを迎えることになる。

 「カルトの島」の人だけあって新興宗教めいた描写はお手の物。その妙ちきりんなふるまいと、けれども人が集まっていってしまう状況にはふしぎな説得力があって、そういう事もあり得るなあって思わされる。そうやってそれなりな地位を築き金も得ながらどうしてQQなんて独裁者の元へと向かってしまったか、ってところで想像するならあまりに奇異な体となってしまったことで、一般の常識の範疇でおさまってしまうことにどこか不安があって、さらに奇異な状況にあってこそ自分の奇異さも中和されると願い走ってしまったってことも考えられるけれども、そうした身に自分がなったことがないんで真相は不明。まあタガが外れただけって見方もできるのか。

 女性に出来る擬似ペニスって話だと松浦理英子さん「親指Pの修業時代」がある意味で女性のなかに潜む男性性ってやつの顕在化したものとして親指にできたペニスを描いていたみたいなものだったけれども「免罪符に」では垂れ下がった擬似ペニスはペニスでもなければ裏返った女性的な特徴の派手なシンボルでもなく、どこまでも当人にとっては無様で不気味な存在。仕方なく受け入れてもそれを誇りに思ったり、何かになぞらえたりしないところに割り切って世界を見つめ、打算の中に身を処そうってこぢんまりとした人が多い現代って奴が見えて来る。だからこそ「免罪符にでもなればなあ」ってな感じの打算的なタイトルが付いているのか。あの後にどうなったかに興味があるけど泥まみれになってもしつこく生きて生き抜くことが殉教者なんて御免といった雰囲気の主人公に相応しいのかも。きっとどこかで出したり引っ込めたりして稼いでいるんだろうなあ。見てみたいものだよなあ。

   えっと萌えブラスレイター? ではなく「RIDEBACK」はバレエのプリマドンナになる夢を靱帯断裂で諦めた少女があれは大学? かどっかに入っても追いかけてくるファンの賞賛から逃げだし、キャンパスを歩いていたところに雨に降られて雨宿り。飛び込んだ倉庫の中で見かけた赤いバイクに陰から現れた青年が乗ってみないかと誘いかけ、ひらりとまたがり少女が操作をするとこれは不思議、2輪を両足にするような形ですっくと立ち上がっては転がったり、歩いたりしてそこいらを動き始めた。

 天気も良いからと外に出たものの、故障なのかブレーキがかからず赤いバイクは大暴走。それでも持ち前の運動神経でひらりひらりと障害物をかわして突っ走るうちに、バレエを捨てた夢をこえる何かが少女に湧いてきた。って展開だけなら普通に明るい青春物なんだけれども背景になっている世界があれは何だろう、すごいテクノロジーを持ったゲリラだかレジスタンスが、国家どころか世界規模で政府を転覆させては支配しているって雰囲気。いかにも日本って感じの地域にまで支配が及んでいるのは、レジスタンスの到来で起こった混乱に乗じて何か政変なりが起こったところを、レジスタンスの力で平定され、復旧中だから、みたいだけれどもそれほどまでに強大無比なレジスタンスが統治している割には、独裁的とも強圧的とも言えなさそーな空気感が漂っているのは、レジスタンスが公明正大な組織だからか、それとも上っ面はそう見えるだけなのか。

 3DCGなんかも巧妙に交えて最先端のテクノロジーを描きつつ、ノスタルジックな絵柄のキャラなりキャンパス描写を繰り広げてみせるあたりの不思議なマッチングが80年代メカ美少女物を見ているような感じを与えてくれてなかなかによろしい。例えるならメガゾーンとかモスピーダとか。あとはあそこから物語がどうなっていくかてところでたかだか学校の片隅に転がっていた赤いマシンが世界をひっくり返すパワーになるはずもないんでベタベタとしたキャンパスラブコメディにメカくんも絡んだドタバタが繰り広げられる、訳はないな。過酷な社会へとどう関わりそこで少女がどう生きていくのか、って辺りが鍵になるのか。とりあえず部長をもっと見たいぞ。

 んで「まりあほりっく」は漫画のまんまをよく描く。あのテンポであのギャグを繰り出させられると声優さんも大変だろうなあ、あれだけ喋りまくって寮長先生と同じギャラだったとしたら真田アサミ姉にもいろいろ去来するものがあるかも。しかしやっぱりどうして海産物なのか、って理由は提示されないか。蛸とかウミウシならいいけどかなこの場合は加工品が中心になるからなあ、誰が作っているんだ煮こごりとか。おお今回はエンディングなしか、YMOの名曲にしてたぶん最大のベストテン的ヒット曲「君に胸キュン」をかなこと鞠也と茉梨花が唄うという豪華バージョン。おっさんたちの媚声とはちがって3人乙女(1人は擬態)の魂の叫びが時折聞こえて良い感じ、なんだよこれ。CD出たら買うね絶対。

 滅びが始まると顔まで変わるのかロボットってのは。月という名の太陽であるところのルナを警護していた死神ドゥーン。キャシャーンに倒されるまではゴールドクロスだってまとっていて不思議がないくらいのイイ男だったのにガラスの荒野をはいずり回るようになった今では顔がふくらみ目つきも変わってまるで別人。それをどうしてリューズは1発でデューイと見抜けたのか。ロボットは人間と違ってきっと本質を見抜く目を持っているんだろう。その目で見ると「絶対可憐チルドレン」の看護士さんも……。あれはちょっと反則です。まさか管理官もそうやって……。そっちは違うかサキュバスみたいなものだから。

 んで「キャシャーンSins」。前半は這いずるドゥーンを囲んでの独白芝居。それが後半にキャシャーンと知ったドゥーンが立ち上がって激しい戦闘。過程でルナの最期が描かれそして、今のルナが映し出されて世界の謎が露わになる。本物か偽物か。滅びるのか救われるのか。キリコも孤独だったけれどもそれに負けない孤独のヒーロー、キャシャーンがやっても変わらない世界の姿を残り2カ月半、じっくりと見守って行こうっと。リンゴは相変わらず可愛らしいなあ。やっぱり滅ぼしてしまうのかなあ。かたわらで見守る鼻歌ブルック、じゃないオージの目の前で粉々、ってのはちょっと悲惨過ぎるか。どんな結末を用意しているのかなあ山内重保監督。

 神保町の書泉グランデ地下コミック売り場にて上野毛あさみさん原作で黒岩よしひろさん漫画の「ステージガールズ完全版2 コーラスライン篇」(産経新聞出版)を確保、うん全部「コミックガンボ」誌上で読んではいたけど改めて単行本にまとまってみるとこれからいよいよ天下のヨシダマを相手にした戦いが始まるんだって興奮が湧いてきて続きが楽しみになって来る。その先となる第3巻「ウエストサイド物語篇」では雑誌にすら掲載されなかったフィナーレが載る訳でドルフィンズとあとレナシゲの周辺に渦巻く陰謀が、どう絡んで2組を苦しめそしてそれを2組がどう乗り越えていくか、って辺りをきっと見せてくれることだろー。問題はだからちゃんと版元が保つかってところか。そりゃあ保つだろう天下の大新聞なんだから。いやそれが実は。だからそれはどういうことだ。うーん。4万キロも離れているとちょっと想像もつきません。

 見えてないのは政治家もメディアも同じか。渡辺ミッチーのご子息であらせられるところの渡辺喜美代議士が自民党を離党するするするすると言い続けて年を越してようやくのところ離党を本格表明。嫌ならとっとと辞めれば良いのにここまで引っ張り何かが変えられるんだと思っていたんだとしたらよほどの見えてなさっぷり。あるいは無理をしょうちで引っかき回していただけだとしたらそれこそただのパフォーマーに過ぎず何かを託すのなんて無理も無理。そんな状況におかれていることを自分が分かっているなら救いはあるけど、持ち上げるメディアとかごくごく一部のポジティブなネット世論を真に受けて、自分をとんでもないくらいの大物だって感じているんだとしたらおめでたいことこの上ない。

 けど。今いる場所で出来うる最大限のことも成そうとはしていない人物を、救世主だのキーマンだのと讃え持ち上げる方がどうかしている。なるほどメディアは引っ張り出しては梯子のように引っ張り回して何やらポストなんちゃらと持ち上げようとしていたりする。でもそんなの見て期待なんか抱く人はどこにもいない。ああまた何か言ってるなあって感じで見過ごすだけ。いざ選挙となったら何もしてくれなさそうな民主党よりやっぱり何もしてくれなさそうだけれど引っかき回しもしない自民党を選びつつ、共産党あたりにも投じてプレッシャーをかけておくくらいだろー。

 公務員制度改革なんざあ今喫緊の問題じゃない。景気と雇用をどうにかしつつ財政を立て直して将来へのグランドビジョンを描くこと。それを言わずして自分の領分にこだわりだだをこねて入れられなきゃあ出ていくって脅して、それが何の効果も発揮されないだけの人をそれでもメディアは持ち上げ続けるのだとしたら、共倒れは必至。というか倒れかかっているからこそ、こんな報道がまかり通ってしまうんだろう。明日の報じ方を見るのが楽しみ。楽しんでいる場合じゃないんだけど。


【1月11日】 いちいちいちの日。何だそりゃ。必要もあって昔懐かしい「アキハバラ@DEEP」の劇場版をDVDで見返す。石丸電器が輝きまくっているなあ。映画公開から2年であっちが締まりこっちも移りと変化が激しい。駅の南側に並んでい券売機も懐かしい。竹輪天が2本も入ってうれしかった立喰蕎麦屋も消えてしまってもうないんだ。アキハバラはそれでも相変わらず元気だけれども、映画が公開された2年前とはやっぱりどこかが違う。ひとつ段々をのぼって一般化されてしまったというか、広がりが増してDEEPさが薄れたっていうか。

 そこに集う人たちのどこか世間に臆した気分を抱きつつも、トンガって生きていた感じが後退して、当然のごとくに奇矯な振る舞いを見せてそれが当然と悪びれない空気が漂って来ているというか。まあ知名度が上がって人が増えるということは多分にそういった変化も内包しているもので、そんな変化の一助をメディア側としてアキハバラを取り上げることで担っている身としては、まあ程々にしておいて下さいねってお願いするしかないんだけれど。

 んで「アキハバラ@DEEP」は佐々木蔵之介さん演じるIT企業の破天荒社長にかっぱらわれた技術を取り戻そうと、少年4人に少女1人のチームが奮闘する話。原作だと6人のチームを5人にしたのは尺に収めて見せ場をつくるのに調度良いって判断からか。テレビ版だと確かちゃんと6人がいたんじゃなかろうか、見てないけど。劇場版はだからハッカーで吃音の成宮貴宏演じるページに潔癖性で3枚重ねの手袋が話せない忍成修吾さん演じるボックスに、「カロリーメイト」でお馴染みの荒川良々さん演じるメカニックで光過敏のタイコと、それから三浦春馬さんが美貌を紫外線を防御する役目を持たせたアムロのノーマルスーツでくるみ演じる天才プログラマーのイズム、そしてネットアイドルにしてキャットファイとのスターでもある山田優さん演じるアキラとそれぞれにしっかりり出番があって役目もしっかりしていての締める。

 中でもやっぱり目が向かうのはメイド姿にキャットファイトの姿を披露してくれる山田優さんで、大昔に六本木で開かれた「パラダイスキス」のアニメ制作発表の時に着飾った姿は見たことがあったけれども、声優じゃなくって役者として演じた姿には長身から来る佇まいがあり、容貌に浮かぶ感情があってとなかなかの存在感。メイド服姿で前屈みになった時にのぞくボリューム感も目には麗しいけれど、そんな媚態をボックスに邪険にされた時に見せる舌打ちしながら眉をキッとひそめる表情が何より素晴らしい。天使が悪魔になる瞬間。いやあ女性って恐ろしい。いや山田優さんが恐ろしいのか。豹変に慣れているのか。撮り直しなくやったんだとしたらちょっと凄いかも。

 ネット上のカウンセリングをしていた女性が死んで、彼女に救われていた5人が集まり何かを始めようとして立ち上げた集団からアキラが資金集めもかねて出場していたキャットファイトの場面を見たIT企業の社長が格闘ゲームの宣伝を依頼。それを成功させて得た資金を今度は新しい検索エンジンの構築に使い完成させようとしたものをIT企業の社長も認めて援助を申し出るものの、クローズドなサービスにしたい社長に対してオープンでいきたい「アキハバラ@DEEP」の面々は拒絶。ここから対立が始まり強奪から奪還のクライマックスへと向かう。

 それはよくある光景だけれどIT企業が社員でも下の方の労働者を人間と認めず虐げプロジェクトごとに切り捨てていて、それに労働者たちが憤る場面が何というか実に示唆的。2年後の今日をまるで予言していたかのうよう。ここで気がつき踏みとどまっていればと今になれば見えてくるけど、楽観主義の中では誰もが悲劇的な未来かはら目をそむけてしまうんだ。かくして日本共産党を頼る人が増えているとかいった記事が出てさらに大勢を引きつけていく、と。プロだ何だと言うけれども実際問題、2大政党とやらもライトな方々も何かしているって風がないもんなあ。こんな状況じゃあ自民も民主も恐くて選挙なんかやれないよなあ。

 家にいたらひたすら眠ってしまいそうなんで神田神保町まで出向いて原稿書きをする前に三省堂神田本店で開かれていた福井晴敏さんのサイン会を見物。ガンダムユニコーンの最新刊へのサイン会でせっかくだからと1冊買ったら値段が660円と漫画本並の安さでびっくり。そういやあ1巻2巻も安かったんだと思い返しつつどうやったらこの値段で新刊の46版が出せるのかって700円800円がざらになった文庫ワールドへの異論も含めて考えてみたくなる。まあガンダムだから数が出るから安くも出来るんだろうし、中高生にいっぱい読んでもらいたいって作家や出版社の意識もそこに込められているんだろうなあ。実際に結構な数売れてガンダムの裾野を確実に拡げているみたいだし。

 福井さん的には作家として確実に売れるシリーズを持てているってのもきっと嬉しいことなんだろう。もとから小説だって売れなきゃただの紙切れで、作家としての未来もないと意識をしてメディアミックスをしかけ本を売ろうとして来た人。「ローレライ」とかなんかがそんなひとつだけれどあれですら1年も立てば誰も見向きもしないコンテンツへと成り下がった。その点ガンダムだったらそれこそ10年が経っても本棚におかれて売られる続ける。ロイヤリティとか払ったって手元に残る金額は大きいって思えばそちらに心を傾けたくなるのも当然だろー。1年ちょっとで7巻まで刊行とはペースとしても凄い。そだけ読者のために、そして自分のためにがんばっているってことで、そんな熱意がこもったシリーズをここで読み返してみるのも良いのかな。2巻までしか読んでなかったもんああ。プラモデルも作ってみるか。難しそうだけど。

 地獄良いとこ1度はおいで。ただし2度目はないけれど。前田司郎さんの「大木家のたのしい旅行 新婚地獄篇」(幻冬舎)は同棲から結婚へといたったカップルの妻が買い物におとずれたデパートの屋上で謎の女から地獄旅行を誘われるってストーリー。1泊2食付きで2万2000円。温泉もあって良いところ。そう聞いて夫婦は屋上の小さな池を通り抜け、地獄にやって来たものの振り返るなという言いつけを破って道に迷い、赤い姿の人たちに負われて危機一髪。青い姿の少女に拾われ車で街まで送られて、旅館にとまり温泉に入って少女とマーケットにも出かけたりの地獄観光を満喫する。

 リアルな日常からするりと入った非日常。そこを異常と思わずふるまう夫婦2人の姿には、休暇をよろこび珍しいものにおどろきながら旅行を楽しむ明るさしか見えず、地獄が別に日光でも熱海でも構わなかったような気がしないけれども、それぞれが持っていた炊飯器を1つにまとめたことで生じた信頼感のズレのようなものが、いずれ広がった先に破綻が待ち受けていた可能性は大。漫然として続く日常に降って湧いた地獄旅行という刺激が、2人の絆に再締結をもたらしたんだと思えばやはり意味があったのだろう。

 頭から入ると脚から落ちる地獄行きの道のりにはじまって、背中の方で2人がともに知っていた人物をめぐるうわさ話が繰り広げられる怪奇現象、まっ赤な体を持ってやって来た人たちをどうにかしてしまうらしい赤い人の存在と、それとは対比され人に親切な青い人の存在といった地獄の住人たちの構図等々、ほんわかとした紀行文の中に描かれる異形のビジョンが、想像をかきたて次に何が来るんだろうってページをめくらせる。シチューのような温泉。入ると小さな虫が体の汚れを食べて綺麗にしてくれるけれども、流れがあって行き着く先でどこかに吸い込まれてしまう可能性が地獄ならではのスリルをもたらす。

 さらに夫は青くなって妻は赤くなって離ればなれになってしまった夫婦の話と、その夫が何者かにたいしてまだかと問うてまだだと聞かされる絶望感はそこが地獄なんだってことを改めて突きつける。親切にしてくれた青い女の子が弟たちも含めていつかじぶんたちをうんでほしいと言う場面。地獄は地獄であってそこにあるのは死者たちに課せられた苛烈な運命、生者が2度目に来れば体は青くなるか赤くなって日々をそこに留め置かれる羽目となるから、現世にたとえ膿んでもゆめゆめ再来をのぞむなかれといったメッセージもあるようでちょっぴり泣けて来る。幸せに思えて実はどこかに虚ろな穴を抱えて惑い、生への執着を後退させている人たちがいたら、五反田のとうきゅうデパート屋上から地獄に、行ってみると良いかも。というか他にも入り口はあるのかな、外国人の女性2人とかも来ていたそうだし。ハロッズ屋上とか。

 2幕夢がともに塔を上る夢ってのはつまりそれだけ崖っぷちにあって上を見ようとしているって現れか。1幕は塔の外から崖をよじのぼってどうにかたどり着こうとしたところを落下しかかったもののテラスか何かに引っかかって内部に進入成功したって感じ。2幕は「アキハバラ@DEEP」での場面が影響したのか中で上へと向かうエレベーターを探している内容で、ようやく見つけてエレベーターの前に立ったあたりで醒めたからまだ上りきっていない様子。総合して決して成功を掴んだ訳じゃあないけれど、上れないと決まってはいないころに希望は見いだせそう。目の前にどっかんときているいろいろをどうこなしどう過ごしていくのか。年度内には決着つくんで時間はないけど考えよう、たとえ野垂れ死んだって自分の一生なのだから。


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