縮刷版2008年8月下旬号


【8月31日】 はてなにもmixiにもあんまりリポート上がってないのは感動に振るえて指も動かないファンが多かったんだろうかと悩みつつどっちにしたって彼方の嵐と見過ごしひたすらに読書。それが仕事だマイジョブだ。とはいえしかい多すぎるよなあファミ通文庫の新刊が出たと思ったらスニーカー文庫の新刊も。どれもこれも面白いんだけれどそれだけに来月の「SFマガジン」の紹介も渋滞しそう。縛りがない分大変だけれどとっても愉快。問題はだから金銭的体力だけなのだ。やっぱりライトノベルって今やブルジョワジーの密かな楽しみなのね。

 とりあえず野村美月さんの“文学少女”シリーズが「文学少女と神に臨む作家(下)」(ファミ通文庫)で完結。複雑怪奇な遠子先輩ん家の事情が明かとなって出生の謎も解き明かされていく展開が遠子が居候する家の主の女流作家が書いた本の記述とその元ネタになってるジッド「狭き門」の解釈なんかを交えつつ描かれていく展開が圧巻。作家は何故書くのかってあたりの記述もあって野村美月がいよいよ覚悟を決めて作家道を邁進していく表明をしているよーにも見える。出ようよハードカバーな文芸の世界に。とはいえ遠子先輩がどーして本を食うのかって説明はなし。“文学少女”だからって説明は観念的にはありなんだけれど他があまりにリアリズムな中でちょっぴり浮いている。この観念っぷりを飲み込み気にさせないだけのマジカルさがあれば読む人を巻き込んでしまえたのに。そこが出来ればいよいよ次は直木賞? どうかなあ。

 んでもって幻狼ファンタジアノベルズの高瀬恵美さんは「魔女の戴冠1」を刊行。魔女学校の生徒を見舞った事件の謎を解く物語ってあたりが読んだばかりの「天才魔法少女トリオがいく!」にちょい、似通っていたりする雰囲気。とはいえ完結はせずエンディングでアーダルベルトって兄ちゃんが魔女学校にある街へやって来た事情が最後の最後で浮かんで事の善悪が決して絶対ではないことを示唆する。巨悪の裏にひそむ凶悪の存在が暴かれる展開に期待。ファミ通文庫に戻って藤原健市「ななてん」は学園が舞台の異能バトル者。ツンデレ美少女と朴念仁な少年との興隆にチビっこ理事長が絡むというありがちさを超えて染み出るパワーが良い。力が発動するとキザになるってどっかで最近読んだライトノベルにあった気が。何だったっけ?

 思い出せないくらいに今月に入って本、読み過ぎ。でもさらに嬉野秋彦さんの「彼女は戦争妖精」(ファミ通文庫)ってのも読んでいるのだ。送りつけられてきた棺から現れた美少女が実は、って電撃文庫の「C3(シーキューブ)」っぽいなあ。んでもってそんな美少女を武器にバトルロイヤルってのは「Fate」以来氾濫気味。んまあ普段はぼさぼさで冴えない女性の校医が実はバリバリの美女って設定は嫌いじゃない。風呂に入っているさつきの格好とそれを見下ろすむつきの半分ズリ落ちたジャージだかパジャマの描写も悪くない。から良しだ良し。ってことで。

 読み過ぎで胃がもたれ気味になったんたんで気を取り直して板橋へと出かけて「西が丘サッカー場」でもって女子サッカーリーグの1部に所属するチームから選手が出てくる「なでしこオールスター」だかを見物に行く。午後5時のキックオフに午後2時くらいと早めに出向いたのは駐車場で開かれている縁日で遊ぼうかって想ったからだけれど人気の荒川絵里子選手と加藤與恵選手がくじ引きのホステスを務めてた日テレ・ベレーザのブースは長蛇の列で近づけず。がんちゃんやっぱり人気者。それだけに怪我にならずに出て欲しかった。

 この縁日、前回は入場者だけのイベントだったけれども今回は再入場券を中の人には発行して外から来た人には自由に楽しんでもらえるよーにしたのがグッドアイディア。ちょい前の男子のオールスターでも「国立霞ヶ丘競技場」の前の公園で開いたイベントを見て戻れるよーにしたかったみたいだけれども相手が韓国の選抜チームだってことでいろいろあるといけないからって中止になったことがあったっけ。そのこと事態は残念だけれど僕たちの応援するリーグの人たちが参加するからそこに何かを感じたいって人に向けてこそ親しんでもらえ楽しんでもらえ発展にもつなげられる「オールスター」って存在の意義を考えた時、男子の方ややっぱり最初でボタンを掛け違えたよーな気がしてならない。

 だって本当に楽しかったんだよ「なでしこオールスター」。前座には引退している大部由美さんと大竹美奈さんを混ぜてラモス選手高木選手金田選手柱谷哲選手井原選手水沼選手大嶽選手野々村選手といった誰もが知ってるJリーグなり日本リーグのOBたちがチームを結成して、現役というかまだその卵といったJFAアカデミー福島に所属する中学生から高校生といった面々で構成されるもちろん女子のチームと対戦するって試合が組まれていたからまず吃驚。男子の高校生が相手だってまずやらないだろうエキシビションマッチを日本代表クラスのOBたちが午後3時って暑い時間のピッチに立って、余裕こそ見せながらも挑んで来る女子選手たちを相手にちゃんとサッカーを繰り広げるってのはつまりそれだけ女子サッカーを普及させたいって意識を持っているからに他ならない。何とかしなきゃって意識がそこに見えるから、何とかしてあげたいって気持ちも生まれて共に前に進んでいける。それが男子のオールスターにはあったのか? ちょっと疑問。というか大いに難問。プレーからですらそういうのって匂って来なかったからなあ。

 そりゃあ体格で3割は違うし引退しているとはいえコーチとしてプレーに接している人もいたりするし金田喜稔さんなんて今だってドリブルはキレキレ。そんな人たちが走れなくなっていたとはいっても決して楽はさせてもらえないなかをJFAアカデミー福島の選手たちはぶつかり当たっては奪い走って得点を奪おうとしてそして何とか3点くらいまでを奪い取った。天晴れ見事。守っても必死に走ってディフェンスし、そして前半だったらその身長187センチ? とかって日本代表の川口能活選手よりも高いゴールキーパーの山根恵里奈選手が俊敏な動きに果敢なグラウンドでのセービングを見せてくれて一方的過ぎる試合にはさせなかった。けどしかし大きかったなあ山根さん。ラモスさん高木さんと並んで遜色ないんだもん。このまま成長していってくれれば次のワールドカップも五輪も無敵になれるんだけど。どうだろう?

 後半も同様。その頑張りに打たれたのか試合後におじさんとお姉さんの混成チームはバックスタンドからゴール裏からメインスタンドまで回って「なでしこオールスター」の応援に来た人に挨拶をしてくれた。感謝はそのまま「なでしこ」の女子サッカー選手たちへの応援につながる。有り難い。だから応えようという気になるこの連鎖を、男子のオールスターは失ってしまった。何かを引き替えにして。その事に今日の「なでしこオールスター」を見て気づかないとしたらよほど末期だよ協会もJリーグも。でも気づかないんだろうなあ。それが協会でありJリーグなんだよなあ。落涙。

 そんな小粋なエキシビションの後に控えた本番おオールスターがまだ素晴らしかった。ボールはは回り選手は走り得点の匂いをさせながらもカバーとキーパーのセーブで拮抗した展開を前後半、まるまる使って繰り広げる。実にスピーディー。そしてスリリング。半々にしか代表がいなくてこれだけのことができるのに代表となった北京五輪ではうまく回らなかったのはやっぱりプレッシャーがあり、あと2日置きに7試合だなんて無謀無茶なスケジュールから来る疲れがあったんだろー。そんな事情で至高の戦いを見られないなんて哀しすぎる。けれどもだからといって逃げず怯まない態度がまた感動を生んで5000人以上の観客を、それも有料の観客を西が丘へと来させた。だからと一所懸命のプレーを見せた。これが感動を呼ばないはずがない。

 1部のチームだけのお祭りで、2部には関係ないってこともなく、2部のジェフユナイテッド市原・千葉レディースに所属している石田ミホコ選手を呼んでシンガーでもある彼女の歌を唄ってもらって2部のファンにも関係のあるイベントにした。集まった女の子たちにこういう夢もあるんだと見せた。首尾一貫した前向きで上向きのベクトルが、次の五輪でメダルをもたらしワールドカップをもたらしてくれるかもしれないって、今さらながらに思えてきた。1部のそれもわずかなチームからの選抜がどこか知らない国と戦う試合のどこに前向きのベクトルを覚えられるのか、って懐疑と対をなして反対に位置するこの歓喜。良いものを見せてもらったと企画し実現に奔走した人たちを讃えたい。スポンサーになってくれたプレナスにも感謝。来年も是非に開催を。そこにジェフ千葉レディースの選手が選手として参加していることを夢見て。今日も勝ったか。石田さんも出たのか。そこから来たのか。この頑張り。やっぱり泣けるね女子サッカー。

 って感涙した後に「県庁の星」の桂望実さんの最新作「平等ゲーム」(幻冬舎)なんかをつらつら。絶対平等が実現した瀬戸内海の島で生まれ育った34歳の男を主人公にした発見と成長の物語、って感じ。すべてが投票で決まる島では仕事も4年に1度の抽選で割り当てられるし学校の成績もなく運動会の徒競走は全員が一斉にゴール。だけれども住むに足り食べるに困らず娯楽だっていっぱいあって休みも十分。そんな島に憧れる本土であれやこれやに疲れた人たちが移住を希望してそれが抽選に当たった時に出向いて行って勧誘する仕事を主人公はしている。

 最初の頃は生活に忙しく疲れ果て夢やぶれた人たちが苦労を語り、そして移住していかに素晴らしい生活を送れているかが描かれてなるほど理想ってのも悪くない、それがどこかの共産国家とは違って特権階級なんていない完全なる平等が成し遂げられている世界ならなおさら素晴らしい、つまりは悪いには欲得に走る人間の心なのだって気にもさせられるけれども、読み進むうちにそんな理想郷にかいま見える綻びが浮かび上がってきて足を止まらせる。

 なるほど理想郷。ユートピア。競争なんてない。でもそれで生きているって充実感は得られるのか? 達成感は得られるのか? 頑張ろうという気になるのか? 頑張りのないところに進歩はない。そりゃあ失敗もあって敗残することもある。けれども大切なのはそうした失敗して敗残した人たちを救うセーフティネットをちゃんと設けておくことであって、そこから再帰できる道をしっかりと残し誰もがそうした再帰を応援する気分を醸成させておくことであって、突き進み達成しようとする気持ちそのものが悪いわけではない。ところが最初、主人公はそういう気持ちがまったく理解できなかった。

 そりゃそうだ。生まれてからずっと34年間を理想郷で過ごしてきた。敗者の歯がみも弱者の震えも経験しえいない。だから理解できるはずもない。そして平等こそが善だと信じ込んでいた。一所懸命に島の良さを語って勧誘した。なのに来てくれない人がいる。一時の忙しさに移住を希望したこともあった歯科医の助手は、他人より良くなりたいという欲望が生き甲斐なんだといって勧誘を断った。毎日が退屈でスケジュールを埋めるためにやりたくもない生け花に理由をつけて通っている彼女ですら、平等で平穏な世界を嫌がった。どうしてだ。悩み始めた主人公に転機が訪れる。彼女を勧誘するために近づこうと通った生け花教室で展覧会があって、行った際に描いた生け花のスケッチを認められ絵の教室に通うようになった。誉められた。嬉しかった。そんな気持ちがわき上がった。

 船に乗った。船員から乗客の絵を描いて欲しいと頼まれた。最初はいやだった。同時に幼い少女から離婚する両親の絵を描いてと頼まれた。やっぱりいやだった。でも断れずに描いたら違うと言われた。笑っていないと言われた。笑顔ではないのか? 違うらしい。なぜだ? 心がない。感情がない。葛藤がない。だから絵に表情として現れない。そんなところか。気づいて描いて喜んでもらえた。船員から頼まれた乗客の絵も喜ばれた。嬉しかった。嬉しさは認められたこと。それは個性。否定されていた個性について考えるようになったけれども主人公はまだ縛られていた。平等に。だから島でいろいろなことが起こっていると知って悩んだ。理想郷じゃないと知って傷ついた。憤った。そして……。

 理想郷に見えてそうではないという現実は何だろう、どんな理想郷でも腐敗するということの現れだけれど、かといってそうした腐敗を腐敗と糾弾して排除した所に生まれる完璧な理想郷では、個性は生まれず競争もなく従って発展も起こらない。それで良いのか。談合だの斡旋だのといった風習を声高に糾弾するそのマインドは確かに正しいけれども、一方で強圧的な存在がコスト無視ということはすなわち、働く人たちの権利を無視して安く入札して仕事を奪いコミュニティを崩壊へと追いやる可能性もないでもない。赤城リツコも言っている。潔癖性はつらいわよ、と。

 だから腐敗が良いのかというとそうでもなく、やっぱり平等が完璧だというとそうでもないなかで拠り所となるのは個々人の幸福であり、その連鎖。すべてが前を向いて歩み、そしてこぼれそうになったら支えふたたび前を向かせる仕組みをもった優しい世界の到来。問題はそれをどうすれば実現できるのかってところで、「隠の王」で服部が壬晴の中に眠る森羅万象の力を使って歴史を消してすべてを平等にしようとしたり、「コードギアス 反逆のルルーシュR2」でブリタニア皇帝シャルルがアーカーシャの剣とやらをつかって世界を変革しようとしているけれども、現実世界にはそんな超常的な力はないし、そうして実現された平等から生まれる幸福もあるとは思えない。

 だったらどうすればいいのかということを考えなくてはいけないんだけれども、とりあえずは手前の小さな幸福ぐらいは作り育て守りたいものではあっても現実そんなものはないしなあ。起きて仕事して本を読んでアニメを見て寝て起きる繰り返し。不満はあってもどうする気概もなく日々を怠惰に送った果てに理想郷は見えるのか。うーん。ともあれワープアどごうこういって軍国主義的な統制社会を夢見たり、革命の理想を追って共産社会を望んだり、政府政治家の腐敗をその心性の愚かさにのみ注目して糾弾する一方で、だったらどうすれば理想が実現してそれが腐りもせず、かといって固まりもしないで運営するのかを提案できないでいたりする人に読んで考えてもらいたい1冊。個人的には島を出てウィーンに留学したけど夢叶わず島に帰りたがってる礼子のぞんざいな口調が好き。って結局はそこなのかい。


【8月30日】 さらばウォルター。「ヤングキングアワーズ」の2008年10月号にて遂にラス前となった「ヘルシング」よりワイヤー使いの執事が退場。すでにして最強にして最大のライバルだった「最後の大隊」の少佐もセラスとインテグラルのコンビニよって野望潰え、機械の躯を晒して朽ち果てた。ただひとり残った眼鏡のドクもウォルターによって刻まれたところを箪笥に顔を潰され死亡確定。そして沈む飛行船を脱出してロンドンへと降り立つセラスとインテグラルによって次回、いよいよ物語に終止符が打たれるのであった。

 ってそりゃいけない、だってアーカードが還って来てない、シュレディンガーを食べてどちらでもない不確定な存在となって消えてしまったアーカードが還ってきてこその「ヘルシング」。不適な笑みを浮かべて地面に降り立ち「婦警」と唸ってすべてに幕は降りる。ってことでどんな復活劇があるのか。でもってどんな決着が着けられるのか。続編への期待は残されるのか。「長い間『ヘルシング』をご愛読頂きありがとうございました。次回より『新・ヘルシング』の連載が始まりますのでご期待下さい」とかって文言が載っていたら良いのに。でないと平野耕太さんの新作漫画にもうきっとゼロ年代中にはお目にかかれないかもしれないぞ。それは流石にないか。でも他であんまり描いてないしなあ。ワクワク。

 「エクセルサーガ」は拘束されたパジャマ姿のエクセルが妙に艶めかしい。出るとこ出っ張ってるからタイトなパジャマだといろいろ膨らんでしまうのだ。でもってエクセル風味の1式登場。いよいよバトルか。「ジオブリーダーズ」は電脳世界の中心で愛を叫ぶまや。聞き入れられて始まる反撃は果たして神楽総合警備の面々を救うのか。次回にこれは大期待。「惑星のさみだれ」。戦士の総攻撃から九つ目を抜け出させ、花子に太朗の仇を最後にとらせるなんて敵もなかなか粋だねえ。「ナポレオン」。眼鏡のカルノーの武器がすごい。そんなカルノーと五分に戦うオージュローがまたすごい。フランス人ってこんな強者ばかりなのか。セボンな画家しかいない訳じゃないのか。そうだよなあ、柔道強いし。「それでも町は廻っている」。台風シーズンゲリラ豪雨シーズンにピッタリ。「超人ロック」。続いている。まだ続く。雑誌も続く。永遠に。多分。

 憎しみのオーラが宇宙に満ちて人々の心を歪ませていく……とでも言うのか「マクロスF」はヴァジュラがどうしてやって来てどうして人間を襲うのか? なんて所への言及はなくまた思考すら行われないままいたずらに殺られたから殺りかえす的行為の連鎖が続いてやや辟易。とくにアルトのランカが連れてきたアイくんを見たときの怯え怒り撃とうとする直情さにガキっぽさしか覚えない。今時のこの憎しみの連鎖で世界から混乱が消えない状況に何かを考えなくちゃいけない風潮のなかで、あまりに単純な思考と行動しか見えない所がどうにもやるせないけれども、そんな中にあって対話の可能性を探るドラマが描かれ始めた辺りに救いを見出し、逃避行へと向かったランカが何を見つけてどう振る舞うかを見守りながらこれからの展開を見ていこう。でも相変わらずに着地点の見えないアニメだ。ラスボスがグレイスって訳でもあるまいし。人間とヴァジュラを噛み合わせる理由って何なんだ?

 とかいったテーマ性でも引きつける所が大なんだろうけどやっぱり「マクロスF」の人気はメカと美少女、ってことで今日から始まった「キャラホビ2008」の会場でも「マクロスF」関係の展示はそれなりな人気。1番はやっぱろ「ヴァルキリー」の模型であのガンプラを作り続けて30年のバンダイがアリイではなくバンダイとして完全変形の「VF25−F」を製作。コンピューター上で緻密な設計を行った上で光効果型樹脂か何かを使って迅速かつ精密に模型のサンプルを作りミクロン単位で隙間を与えてスムースに、けれども決して緩まないよう創り上げる技術って奴を叩き込んだ「ヴァルキリー」はお得意の3段階の変形を完璧なまでに再現している上に、バトロイド体型もガウォーク体型もそして飛行機の形をしている時もそれぞれにスタイリッシュに決まっている、よーに見えるけれども過去から現在に至るまで、ヴァルキリーに関しての愛があんまりないんで詳しいことは不明。んまあガンプラだって愛がないから最新の「MG」の初代バージョン2を見て凄いとか素晴らしいって言えないんだけど。メカ目ってどうやったら養われるんだろう?

 んじゃあキャラ目はどうなんだ? って点ではまあ悪くはないけどのめり込むほどまでいかないのはやっぱり歳だからか。バンダイグループに入ったラジコンのシー・シー・ピーがランカとシェリル、それぞれのキャラクターが散りばめられた自動車、すなわち「痛車」って奴を作って展示していて左右に描かれて微笑むランカにシェリルの見目麗しさに惹かれはしたもののそれを買うほどの気はおきない。やるんだったらやっり実車だよね、それじゃなきゃやる意味もないってもんだ、いつかポルシェでも買ったら全面をカレンとC.C.とコーネリアとナナリーとユーフェミアとアーニャとあと誰だ、天使と神楽耶も入れてあげよーか、さらにヴィレッタさんと千葉さんも混ぜた「コードギアス 反逆のルルーシュR2」女性キャラクター「痛車」を作って銀座原宿六本木を乗り回してやりたいって気は満々なんだけれども肝心のポルシェを買うお金が全然。いやホントいえばあるんだけれども大本営発表を受けた翼賛報道に内向きの情熱を燃やす面々の未来を考えると今使うべきじゃないって感じもあるんでそれは10年の未来にとっておく。10年後に「ルルーシュ」はどんな評価を受けているのかなあ。

 んまあ「キャラホビ2008」で見てもそれなりには人気があったみたいだけれどもやっぱり男性が集まっていたのは「ガンプラ」の限定品の販売コーナーで女性は「機動戦士ガンダム00」の展示コーナーか関連商品の販売コーナー。宮野真守さんと三木眞一郎さんのたぶん手渡しがついたDVDの販売コーナーには開場と同時に長い行列が出来てその99%が女性だって状況を見ればいかにどれだけ「00」が需要されているかがよく分かる。視聴率? そんなの関係ないことは「コードギアス 反逆のルルーシュR2」のDVD&ブルーレイの売上が証明している。放映されるのと同時に見ていなくたて見ている人はちゃんと見ている「00」。そして愛されているキャラクター。4人のガンダムマイスターが出題してくれるクイズコーナーにも行列が出来ててその時だけなのかもしれないけれどもアレルヤの前の列が1番長かったりして人気の度合いが測れて面白いので「キャラホビ2008」に行ったら観察するように男子。見てアレルヤが人気なら二重人格になろうとか、ティエリアなら眼鏡をかけようとか考えても良いけどその前に「ガンダム」の運転手になる必要があることを忘れずに。

 箒にまたがり空を飛ぶゲームが面白そうだけれども自称魔法使いの兄ちゃんたちがプレーするに相応しいのか悩んだり見知った顔がプラカードを持って立っていたり巨大なミンメイのフィギュアがいたり木製のゴジラのフィギュアがあったり初音ミクのfigmaが発売から1時間弱で売り切れていたりギアスのTシャツをかって決断主義的イベントに着ていったり廃棄プラスティックを使って作られたガンプラを配布している場面をみたり近所でそれを組み立てている親子をみたり組み立てられたガンプラの精巧さに日本の、とうかバンダイのプラモデル技術の凄さを感じつつマルシンが最初に出した国産第1号のプラモデル「ノーチラス号」も負けてないと売り場の人に聞いたらあれでバリがバリバリあるんで削って組み立てなきゃねって言われてああそうだよプラモデルってそういうものだったんだよそれが簡単になり過ぎているよと振り返って嘆息したりブラスレイターの所にいたコンパニオンさんが谷間ってたりといろいろ楽しんだ「キャラホビ2008」でありました。

 買う気さえなければいろいろ見られてゆったりできるのが嬉しいし、限定品でなければそんなに困らず買えてしまうから秋葉原のホビーショップを回るより楽しくお買い物ができる。コンテンツを持つ企業にとっても良いPRの場になっているみたいで、バンダイなんかもガチャポンに投入するちょっと代わった新製品を展示したり、台湾から来た企業が魔法使いになれる不思議な業務用ゲーム機を展示してた。すでに魔法使い化している男が試すと巧いかな? ビジュアル的にはアレだけど。冬に「ワンフェス」がないってことも決まったみたいだし、春先くらいにキャラクターイベントとして開いて欲しいもの。その時期は「東京国際アニメフェア」もあるんだけれども物販が弱いんだよなあ、あのイベント。かといって「コミックマーケット」の企業部スーツとも内容が違うし。でもちょっと違うしなあ。

 そして時間をあれこれ潰してから午後6時半の「青山ブックセンター本店」。並んでいるのは自分だけ? んまあそこは時間になれば満杯になって芥川賞作家の川上未映子さんもいたりチャーリー鈴木謙介さんもいたり早稲田文学な編集の人もいたりと結構な面々に溢れて満杯ではあったけれども語れる話の速射砲的断言の多くに納得はいってもだからそれが書き手にとってどれだけの問題として必然性をもっているのか? といった部分がかいま見えないところにどこか隔靴掻痒の気分を覚える。もちろん身に引きつけて語るばかりが批評じゃなくむしろ事象を客観的にとらえ要素を集め並べ調べて分析し、導き出すことの方が良いのかもしれないけれどもそれってどこか味気ない。

 んまああれだけの面々が聞きに来ている訳だからそうした世代には何か相通じる問題意識がそこにあってその代弁者的な立ち位置にあるからこそのこの人気、って奴なんだろうけどそれがくっきりとは見えて来ない当方にはなかなか迫れない御仁って印象。なのでこれからも講演会では最前列のどまんなかに座りサイン会でも真っ先に「プラネッツ」にサインを頂戴する感じで彼方より遠巻きに眺めつつ、いつか出るだろうその富野由悠季論、過去に数多の評論家が挑み著し単なる物語作家としてではなくやはりアニメの監督としてビジュアルも含めて何をどう描いていたかを語った本もあったりする中でそれでも自分が書く、自分なら書けるといった自身を除かせてくれた富野由悠季論を読ませて頂くことにしよー。川上さんてほんま関西弁やねんなあ。


【8月29日】 ってか何か人が辞めたり辞めさせられたり辞めた人が訴えたり残った人が退任したりといろいろあったって話は聞いていたけど、「モンスターファーム」や「デッド・オア・アライブ」なんかで知られるゲームのテクモがついにスクウェア・エニックスの傘下入り、にはまだ段取りを踏む必要があるもののおそらくは発表された通りにスクウェア・エニックスがテクモ相手に行うTOBに主要な株主も応じて、タイトーと同様にスクウェア・エニックスのホールディングスの下に連なるゲームソフト会社となっては過去にあったいろいろを清算して、そして「デッド・オア・アライブ」とか「忍者外伝」といった世界に知られるタイトルを出し続けて行ってくれるだろー、って考えるのはやっぱり甘いか、早計か。

 タイトーは単に経営環境面での逆風に体力が弱まっていただけで内部的にはそれほど混乱は来していなかったけれども、テクモの場合は看板タイトルに絡んだ人材の退社に始まるあれやこれやが今に尾を引いていたりするから解決もスッキリとは行かないだろー。そこをどうまとめ上げどう解きほぐして、最大にして唯一の資産と言えるタイトルと人をうまくスクウェア・エニックス傘下に持って来れるのか。そのあたりで問われる手腕にどう答えるのかって点で和田洋一さんの動きに興味津々。スクウェア・エニックスのCG力(しーじー・ちから)で「エクストリームビーチバレー」を作ったらどれくらいにリアルでエロくてゆらゆらでぼんぼんなゲームが仕上がるのかにも興味津々。やってくれ。

 普通の女性が3人集まっただけでも「姦しい」と静けさを求める身より眉を顰められるのだからこれが普通じゃない女性が3人も集まれば起こる事態は驚天動地の天変地異。巻き込まれたらきっとひとたまりもないに違いない。まあそこはそれ、姦しさこそ放ちながらも普通じゃない力を重ね束ねて向かう相手は社会の敵であったり世界の危機。そして普通じゃない女性ならではの力でもって見事に解決してくれるからご安心。でも怒らせるのは御法度だから気をつけて。そんな普通じゃない3人女性のこちらは魔法使い候補生たちが織りなす物語が山本豪志さんの「天才魔法少女トリオがいく! それは、卒業からはじまるのだよ」(トクマ・ノベルズEdge、819円)て本。魔法を習う学校に入った生徒のうちでもとりわけ魔法に秀でていて、それ故なのか個人的な資質なのかは不明ながらどもこか他とは違っている3人が集まり学園に起こる、というより帝国すら脅かしかねない事件に挑む。

フロイズ中央魔法学院に通うぷるすとアイマとそしてミヌスは天才だけれど問題児。とくにぷるすは血気盛んで乱暴者で口の悪いアイマといつも喧嘩をしているけれども間に入っていつも冷静なミヌスが繋ぎ役になって学校を破滅に追いやるよーな事態は起こらなかった。そこに事件。飛行魔法を得意としているグロニウス教官が何故か空から墜落して死亡。自殺なのか他殺なのか事故なのか。ちょうどそのころ学園では帝国が他国と戦争をすべきかそれとも平和を維持すべきかってことで教官たちがまっぷたつに割れ言い争いをしていて、グロニウス教官はそんな間に立って中立を訴えていたもののそれを双方から腰抜けと見なされ居場所を失いかけていた。

 ってことは自殺なのか、っていうとどうにも不自然。さらに事件を探索する騎士団が乗り込んで来たこともあって背後に不穏なものを感じたぷるすとアイマとミヌスの3人組は、校長や騎士団に断って事件の調査に乗り出した。それを脅かすよーに正体不明の刺客が現れ食堂が木っ端微塵になる事件が起こって学園はますます大混乱。そんな状況に3人娘は証拠を洗い状況を精査して真相へと迫っていく。魔法、って世界設定に関わる部分ならではの条件も折り込んだ上でフェアに証拠を並べていく点はファンタジーというよりミステリー。さて犯人は、といった種明かしのさらに先にどんでん返しというかより確かな真相の披露もあってワクワクしながらクライマックスを楽しめる。なるほど人の怨念というものは恐ろしいのだなあ。新人離れした構成力にキャラクターの描写力。ぷるすの姉が若くして帝国の将軍となっていて事件を解決した3人にやや執心。ここからきっと学園から規模を広げた事件が起こってそれを特徴を持った3人が姦しさではなく賢さと強さと激しさを重ねて解決していくストーリーが描かれていくことになるんだろー。超楽しみ。

 魔法使いならそれでも人間だから暴れたって破壊される範囲は限られているけど悪魔ともなれば及ぶ影響の範囲は無制限。だから御す方にも相当な忍耐力と経済力が求められるものらしいって教えてくれるのが朝松健さんの「STOP!! ダークネス!」(幻狼ファンタジアノベルズ、900円)って新シリーズ。大学で講師をしている神奈三四郎の上司でトウこそ立っているものの美人らしい折枝教授がバグダッドだかテヘランに行った際に現地のテロリストから何故か命が惜しかったらこれを持って行けと押しつけられた8世紀くらいの壷。とりあえず大学に送ったものの下手くそな梱包からまろび出た壷を何だこれはと手にとり張ってあった封印を剥がしてしまったからたまらない。呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん。とばかりに煙が出てきて中から和風美人にマッチョな美女にゴスロリ美少女が現れ神奈をマスターと読んでそして肩を揉め、飯を食わせろと要求してきた。ああなんて姦しい。

 いやいやそれは甘々も大甘。この3人、ミンタカにアルニタクにアルニラムは古(いにしえ)の女悪魔で持つ能力も兄弟なら性格も凶暴。しがない講師の神奈に頼み事があるなら和風美人のアルニタクは柿の種1キロとキムチ1樽を寄こせと言い、マッチョなミンタカは銀座の料亭「桐丁」の茶碗蒸しを食わせろと言いゴスロリ美少女のアルニラムはゴディバのチョコレートをちょうだいとせがむ。いったい幾らするんだ。講師の給料でまかなえるのか。生協の柿の種とかスーパーのキムチとかコンビニの茶碗蒸しとか80円の板チョコではいかんのか。いかん訳でもなさそうだけれど事が何やら古の悪魔妖怪の類を呼び出そうとする陰謀が進んで学園一体が緑のカオスに覆われてしまった緊急事態に安い品々では動いてくれない贅沢三昧の悪魔たち。やれやれと言いつつ神奈は費用を工面しつつ3人を使ってカオスの中を突き進んでは真相へと迫りそして知る。何てこった。

 さすがにオーソリティーだけあって悪魔に関する知識や描写は分厚くてリアル。けどそんな上で繰り広げられる物語はどこまでも軽快で愉快で読んでいて身が切られたり内臓をえぐられるような恐怖とはまったく反対の、胃袋を内側からくすぐられるようなおかしさと身をぐらぐらと揺さぶられるような楽しさでもって全身を満たしてくれる。たかだか封印を開けただけの神奈にどーしてこうまで3悪魔が甲斐甲斐しく(もないけど)接するのかって辺りがやや、つかみ辛いんだけれどまあそういうもんだとここは理解。

 3人3様の悪魔だけれども好みはやっぱり間をとってミンタカかなあ、でも熟女(ったって自分より見かけは年下の)アルニタクも一緒にいたら飽きなさそう。アルニラムは目に麗しいけどキレるとマシンガンやらガトリング砲やらで一斉掃射する癖があるから用心ようじん。そんな感じで始まったいきなり腐れ縁的女悪魔同居ストーリー。どこに向かうか。何を理不尽な要求に神奈三四郎は振り回されるのか。それより美人らしくて性格的には破綻しているっぽい折枝教授は出てくるのか。期待を胸一杯に続きを待とう。続くのかなあ「幻狼ファンタジアノベルズ」。面白いのは良いんだけれども毎月こんなに出ると大人買いだって出来ません。「ファミ通文庫」も5冊は買わなきゃいけないよ。どうしよう今月末。


【8月28日】 ああちくしょうめ。どう見たってダルビッシュより勇ましい表情と肉体を誇らしげに見せる上野由岐子さんを表紙にした「スポルティーバ」の2008年9月25日号をぺらりぺらりと眺めていたら、どこかで見た顔がぼわんとした表情で映っている。名乗って万太郎。つまりは「鴨川ホルモー」の万城目学さんが取材と称して瀋陽から北京を巡ってオリンピックの観戦記を訥々と飄々と綴った特集で、サッカーを見ただの野球を眺めただの柔道に感動しただの鳥の巣で陸上に感動しただのと実にまったく楽しそう。とってもとっても楽しそう。ああ悔しい。実に悔しい。ギリギリギリ。

 いつか作家になって評判を取りつつスポーツ好きだと知られてそれならば観戦記でも書いてみませんかと誘われて、海外で行われるサッカーの試合とか、女子レスリングの試合とかにロハで行って試合を見て美味しいものを食べてそしてつらつらと感想でも書いて、原稿料までもらって1カ月をダラダラと過ごす暮らしを夢見ていたのに先を越されてしまったよ。それも五輪だなんて華やかな舞台で遥か先を行かれてしまったよ。まあ未だ1行も書いていない人間にそんな夢を語る資格なんてないんだけれども、夢だからこそ語るのは自由だし妄想だってするのは自在。なので次のロンドン五輪こそは誘われロンドンまで出向いてフィッシュ&チップスをかき込みながらソフトボールで上野さんが活躍する様を間近に見るんだと叫ぼう。なんだって! ソフトボールってないのかよ!

 んで「スレイヤーズR」は淡々と進んでジョゴンダおばちゃん侯爵の屋敷で大暴れをするリナ・インバース。剣がないと何も出来ないガウリィにゴーレムの大剣を渡すと最初は重たそうにしていたのにしっかり手にして振り回す。インスペクターのおっさんはどうやらジョゴンダの裏を内偵しているみたいだけれども目的は開かさず、カリオストロの城での銭形警部よろしく地の底へ。役に立つのか立たないのか。そしてどうやら赤法師レゾの魂だけがどっかに生きていると判明。前のシリーズを熟視していないだけにどんな輩でどうなったかをすぐに思い出せないけれどもきっと強かったんだろう、魂になってまであれだけの影響力を残しているんだから。ってな感じにちょっとずつ小出しにしつつギャグを繰り広げバトルを展開して話を進める作法は連続アニメの王道。次週もまた見ようって気にさせられる。でもしかしやっぱりどうして深夜アニメなんだろう?

 「鉄腕バーディーDECODE」も見てシャラマンの案外な小物ぶりが見えてきたけど落としどころは美少女からリンカとやらを抜いて終わり? 切ないねえ。んで初日に出遅れた「東日本玩具見本市」を見物に浅草へ。外国人の観光客とか秋葉原と同様に多い感じ。ビジットジャパンという奴か。会場ではいろいろ見物。セガトイズの逆立ちする犬のぬいぐるみって奴が意外なかわいさ。あと呼吸をする動きだけしかないハムスターのぬいぐるみ。だけどその息づかいが本物感をすっげえ出してる。ハムスターを回転する輪っかの中に仰向けにいれるとすやすやお休みしている感じで可愛さ倍。見た目をそっくりなぬいぐるみにした上でちょっぴりの仕草を入れると人間ってこうも騙されるんだ。あるいは脳が作り物だという情報を背後に後退させた上で仕草なんかに本物らしさを感じさせるよう働くとか。

 逆立ちする犬はともかく座ったままで体だけ動かす猫だって猫っぽさをだんだんと感じて来るから不思議。最初の頃は造型もまだややぎこちなくって(それでもどっかの情報機器メーカーが出した吊り目の猫よりはマシだったけど)いかにも動くぬいぐるみくさかったけど、毛並みもよくなり表情のついて目もつぶらになった猫がもにょもにょと動く様にこれ、生きてるかもって感じてしまう人間の心理ってのはどんなプロセスを踏んでいるんだろう。舟越桂の木の彫刻を見ているうちに顔が動いてまばたきするんじゃないか、って思えてくることもあるけど猫の場合は動くしぐさが造型としてのぬいぐるみ感を上回って猫っぽさを感じさせる、とでも言うのかな。やや不鮮明。考えよういろいろと。「夢いぬ」「夢ねこ」とか出してきたんだからいよいよ「夢ひと」も欲しいかなあ、メイドさんが卓上を走り回る、ってそりゃあ「電脳フィギュアARis」じゃん。

 目を引いたのは「おもちゃショー」でも目立ってたバンダイのラジコンメカゴジラ。動き歩くのは良いとしてもビームは出ないのかミサイルは発射しないのか、って考える「ジャンボマシンダー」崩れ。本編でそういう描写ああったかは知りません。8万4000円はヴィストンの「鉄人28号」や「ブラックオックス」に比べれば安いけれども玩具として出せる値段じゃない。それでも買う人ってのはどなんだろう、あのディテールに惹かれるんだろうか、大きさい燃えるんだろうか。こっちはタカラトミーの円盤形室内ラジコンでじゅうぶん。回転を上げて話すと舞い上がるんだけどスロットルを開けすぎると上にとんでいってしまい締めると落ちる、その案配が微妙。訓練くんれん。

 マテルのブースではバービーのコレクションにスーパーガールとか発見。アメリカンな顔立ちとプロポーションを持ったバービーなだけにハマってる。リカちゃんじゃ無理。ほかにもゴージャス系の衣装をまとったバービーが登場。欲しいんだけれど置く場所が。フィギュアではパネルで「ヤッターマン」の「ドロンジョ」様が。聞けばいよいよ公開も半年後に迫りつつある劇場版に登場するドロンジョさま、すなわきフカキョンが見にまとう衣装をつけたフィギュアとか。だからこそ前面の胸元あたりがどーなっているかを知りたかったけれどもそこは不明。開いているのか避けているのか飛び出しているのか白いのか。全部いっしょじゃん。でも期待。劇場版のスチル公開に先駆けこのフィギュアが劇場版ドロンジョの衣装の初披露とか。なので発売が近づく年末のフィギュア雑誌に注目だ。その頃まで「ヤッターマン」の評判が続いていればいいけれど。アニメ版がなあ、放送時間の飛び石連休で視聴習慣がまるで付けられないみたいだしなあ。


【8月27日】 なんか初日を前にして品切れ続出な模様の「少女革命ウテナ CD−BOX」は、大昔に放送されていたそれとその劇場版を最後に監督の人の作品がパッタリ途絶えたという不穏な因縁も囁かれるテレビアニメーション「少女革命ウテナ」に使われていた、聞くもおどろおどろしくて暗黒に耽美なJ・A・シーザーさんの楽曲を中心とした音楽が、何と凄まじくも10枚のCDに入って華麗なボックスに収められているという絢爛豪華な品物で、初回にはこれまた実に120ページものブックレットが付いているとゆーシロモノなだけに、マニアだったら買う筈だって感じはずっとしていた。

 とはいえ放映から10年を経て作品を知らない世代も増えたこの2008年に、どれだけの数が売れるんだろうって心配も同時にあって、品切れなんて事態にはならないだろうと楽観していたらこの事態。油断して買い逃した人にはきっと一生の後悔が付いて回るだろう。ちなみに当方は発売日前日の昨日のうちに石丸電器で、予約分を除いて棚に置かれてあった最初で最後の1本を購入済みなので後悔なんてありませんのだ。問題はこの後に発売されるDVDのボックスか。LDを華麗なボックス付きで揃えてあるから機械さえあれば見るのに不自由はしないんだけれど、当の機械に寿命が来ていて現状での鑑賞は不能。かといって2箱で6万とかするのはなあ。もっと安くならなかったのかなあ。あるいはブルーレイとか。ちょっと考え物。ボックスの雰囲気を見て考えよう。絶対運命黙示録。

 やっぱり分からないなあディートハルトの絆創膏。ちょっと前に扇たちとルルーシュというかゼロを死んだことにするかどーかを話し合っていた時には綺麗な顔をしていたのに、九州で戦っていたシンクーを含めた中華連邦の面々とあと神楽耶たちがやって来るからどうしようかって聞かれて扇がしどろもどろになってた場面では、顔に青タンはこさえてないけど顔面に傷を負って絆創膏を貼り付けたフルボッコフェイスになっている。誰がやったんだ。ってかどこでやられたんだ。可能性があるのはアーニャに記憶を戻され船を逃げ出そうとする前に、ゼロの部屋にチーズ君を取りに帰ったC.C.と鉢合わせでもした時だけど、そんな力をC.C.って持っていたっけ。かといって「黒の騎士団」がフルボッコにして、なお座の中心に座らせておく筈もないし。どうなっているんだろう? 作ったけど尺が合わずに飛ばされた? ならDVDでは復活を。気になるんだよそういう部分。

 けどしかし10万本とは恐れ入ったよ「コードギアス 反逆のルルーシュR2」の第1巻のDVDとブルーレイディスクを合わせた出荷本数。もちろん出荷であって販売ではないけれどもそれだけを出すのって滅多にない上に、最初の「コードギアス 反逆のルルーシュ」の初回出荷分を上回っているんだっていうから相当な勢い。視聴率は散々なのにパッケージは売れるこの謎めいたビジネスモデルの解説を誰か。

 先月からリリースの始まった「マクロスフロンティア」も確かDVDとブルーレイで10万本を達成していたはずで、これにまずまず堅調と伝え聞く「機動戦士ガンダム00」も合わせると10万本クラスを3シリーズも今のバンダイビジュアルは持っているってことになる。そうでなくって見込みを下回っているのもあるだろうから相殺されれば丸儲けってこともないんだけれど、3万本だって大ヒットな現代にそれが10シリーズ近くあるって計算はやっぱり大きい。それだけ儲けててどーして「トルネードベース」を8月で更新停止しちゃうの? って疑問もあるけどそれはそれ、これはこれで作品作りにお金と手間をかければ成果も得られるならそっちに邁進するのが経営の道、ってことになるんだろー。でも勿体ないなあ「トルネードベース」。小牧さんの連載とか本にならないのかなあ。

 宿題のよーに録画されたアニメーションを見ようとしたけど次から次へと録画される新しいエピソードに追い付かずそれならとそっちからまず消化、っても「一騎当千 Great Gurdians」だけれど何やら妖しい術にかけられた劉備が、いつもとは違った悩ましい格好でうろちょろしていて劉備好きな関羽には目にも毒なら心にも毒。何があったと訝るものの退ける訳にもいかず戸惑う中で張飛に坊主までもが伝染したかのごとく関羽を襲う。そして孔明にまで迫る劉備の甘い罠。あのいたいけな孔明が肌も露わに乱れて関羽を誘い始めるのかって妄想も浮かんだけれども、登場はせず術が解けるまでずっと寝ていたみたい。やや残念。けど張飛に趙雲子龍までもが暴れて竜を発動させていない孫策なんかが太刀打ちできるはずもないんだけれどそこはそれ、操っている人物の範囲内に収まっていたとここは理解しておくべきか。けどしかしいった何者なんだあのツインテール。

 出だしは悪くなかった。というかむしろワクワクとした「第4回トクマ・ノベルズEdge」の新人賞受賞作となった一の倉裕一さんによる「ブルースカイ・シンドローム」。宇宙線の照射で地表の人類が脊椎動物も含めて絶滅してしまい、人類は宇宙にうかんだ3つのコロニーに残された20万人だけになってしまった。それから41年が経って、宇宙線の影響がなくなった地表へと人類が帰還するプロジェクトがスタート。地表が安全かどうかと探査するコロニーでも憧れられている部署の1員として適正を認められたロンって少年が、さあ地上に降りられますよって段階になってあれこれと悩んでいたのは幼なじみのシレンって少女と10年ほど前にあることを約束していたからだった。

 それは宇宙にもコロニーにも存在しないどこまでも続く空を見上げると、パニック状態になって命すら脅かされる症状をシレンが持っていたからで、2人で一緒に地表に降りられないなら、ロンも地表には降りないって気持ちを貫こうとしていたんだけれども、人類の未来よりも手前の幼なじみの心配をする優柔不断さを見かねてシレンは彼に彼女をあてがったり、自分に彼氏がいるよーに見せかけたりしてロンを地上にやろうとする。それでも徹底して朴念仁で優柔不断なロンは迷い抜き、ようやくシレンの強烈な後押しでもって地表に行く気持ちを確定。シレンから送られた、腕にはめるとコロニーからデータを送ってロンの網膜にシレンの3D映像を映し出させ、声も脳に直接働きかけて聞かせる機械を持って地上へと向かう。そして出会った先遣隊の壊滅に、生き残った人類によるコロニー人種への敵意。遂には人類の命運にすら関わる事態も起こってロンを困らせシレンを悩ませ人類を知らず滅亡へと追いやっていく。

 とまあ大枠ではそれなりにまとまっている気もしないんだけれど、ロンって主人公の性格が最悪なのが物語への感情の没入を妨げる。優しくってスタイルも抜群で何よりロンを好いてくれているリアンって女の子にまんざらでもない癖に、シレンのことが気になって仕方がなくってどちらにも面前と告白できず、かといって断りもしないままズルズルと関係を続けていく様がとにかく鬱陶しい。はっきりしろ。でなきゃ死ね。ってマジで言いたくなるその性格を考えて書いた作者はある意味凄い。辛くなかったのかなあ。まあそんな優柔不断さが迷いの果てに最悪の事態を招かず双方に未来を与えているとも言えるんだけれど、それとて偶然の産物だ。つてい納得出来るものでもない。

 何より人類滅亡に絡んだ経緯にまるで納得がいかない。世界の命運を手のひらで転がすよーなプロジェクトを成立させるには、とてつもない権力からの圧力と、緻密な計算とそして莫大な資金が必要。なおかつそれらはなかなか成り立ちにくい。圧力をかけてもどこかに隙が生まれる。情報は漏れる。資金が動けばそこに人も動いて情報も動き漏れやすくなる。なのにうまくいった。完璧にうまくいったよーに見えていたのに、地表に禍根を残していた。その禍根が実にあっさりと文明を維持し盛り立てていくから驚き。それもコロニーから身を隠して。子細をもらざす完遂したからこそのプロジェクトなのに、そこにしっかり綻びがあるのってどこか矛盾してないか。コロニーいにたって影響を受けた宇宙線にいささかも害されずに人類が残る可能性があるって所にも不思議を覚えてしまう。

 まあそれはそういうこともあるんだと納得できないこともない。ならばそう、シレンが追った空を見上げられないといういつか地上に帰りたい人類にとって致命的ともいえる症状について、メインのストーリーに絡むドラマって奴を与えてやって欲しかった。地上に降りられない少女と地上に降りて冒険をする少年が、間に横たわる絶対の断崖を乗り越え興隆して共に生きる道を得てこそのこの設定って思えるだけに、ただ宇宙から少年をバックアップしてピンチをしのがせる役回りのために少女に傷を負わせたのだとしたら、何か浮かばれない。なおかつ最後まで浮かばれていない。平和がもたらされてもシレンはずっとそこに居続ける。これってどうにももの悲しい。

 シチュエーションを作り出しプロットを進めるために仕方のなかった設定と理解はできても、シチュエーションのためだけに背負わせるには厳しすぎる運命。そこへの配慮が欲しかったんだけれどもまあ、繰り広げられる壮絶なビジョンって奴はこれでなかなかに警句に富む。気にせずに読んで浮かび上がる悔恨の念をどう踏まえ、自分ならどうするかを考えることがこの不透明な未来に人類の道を開く上での第1歩になるんだろー。先走り過ぎでも意欲は買いたい1冊。イラストも良いねえ、とくにリアンの前チャック開け。髪型は違うけれども衣装に「青の6号」の紀野真弓ちゃんを思い出したよ。懐かしすぎ。


【8月26日】 可憐ではないけど乙女がひとり、男子ばかりの学校に男装して入学するってそりゃあどこの「花様少年少女」だよ、ってそっちが先に来るのは見ている千葉テレビで再放送されていたりテレビCMが流れているからで別に「花ざかりの君たちへ」を忘れているからではありません。見たことはないけど。違うだから「光の王子と炎の騎士」(一迅社文庫アイリス)だ。「幻獣降臨」の本宮ことはさんが「講談社X文庫ホワイトハート」ではない場所へと初進出。男子しか入れない音楽の学校があってそこを出た父親が学校に残した楽譜を見つけだす必要があると娘のアディーシャが弟のサディの名をかたり無事入学。でもどこか迂闊なところがあって弟から贈ってきた手紙を紛失してしまって誰かに自分が男装した女の子であることが知られてしまう。

 これは一大事、と心配したものの学校にバラされている様子はなし。もっとも元が女性なだけに綺麗な声で唄った歌が学校でも評判になって注目を集めてしまっていたこともあって上級生が兄貴だかお兄さまになろうとちょっかいを出して来たからちょっと鬱陶しい。困っていたところを通りがかった見目麗しい男子が助けてくれたらこれが何と王国の王子様。親切で優しいサリアン王子の庇護下に入ってさあ目的を果たそうとしたところにまた迂闊ぶりが出て、サリアンに従うネイトという男子に自分が女の子だと知られてしまう。さらにサリアンと双璧の強さと才能を誇るジェッツという男子も絡んで私の学園生活は、そして父の楽譜を探す目的はどうなるの? ってあたりで以下続刊。女バレがどう進んでいくかが楽しみ。薄い胸板が年相応に成長していき戸惑うような展開とか。

 もっともネイトが言う成長期に頭を使い過ぎると体が成長しにくくなるらしーんでその辺は安心か。ってこれ本当なのか冗談なのか? アティーシャが周囲の男子に気を遣って頭を悩ませ続けていれば体に栄養が回らず成長していかないんだとか。ナイスバディを夢見る少女は牛乳に相談する前に、成長期に入る前に頭を使い教養を高めておいた上で13歳から16歳あたりはその貯金を使いつつ勉強は抑えてあっぱらぱーな日々を過ごすのだ。そーすれば頭はしっかりでナイスバディな女性になれるのだ。だから本当の事なのか? あとこの学校、男子しか神に迫る美声を発揮できないからこそ男子だけしか入学を許可していないのだとしても、作曲や楽器にそうした男子だからこその特殊性は学園にいたって備わらない訳で、それでも男子しか入学出来ないのは何だろう、中心の声楽に通う男子の周囲に女子が出没しては成長に支障が出るって見なされているからなのか。おいおい明らかになっていく展開を見守ろう。台湾でドラマ化されて陳嘉樺が主演を務めるその時まで。それはだから「花様少年少女」だって。

 んで一迅社文庫アイリスからベテラン流星香さんの「Walhalla ヴァルハラ」。謎の流星雨が降り注いだ地球では塵のような流星雨に打たれて大勢が死に、そして巻き上げられた粉塵が日光を遮って地球に冬をもたらそうとした。それはどうにか水耕栽培などの技術を発達させて解決したものの謎の放射線が地表に残って人類に影響を及ぼそうとして、これは天才科学者の嵯峨紫苑が見つけて阻止したけれども地表では植物の枯死が進み、そしてなぜかひとところにだけは巨大樹が繁っていつしか「イグドラジル」と呼ばれるようになっていた。さらに地上ではビースト化して暴れ出す人間が出現。危険な上にそのビーストたちは巨大樹の元へと向かおうとする習性があって、何がビーストたちをそうさせるのか、そしてイグドラジルとは何なのかを突き止めることが人類の生き残りに不可欠となっていた。

 ってな設定の上で繰り広げられるのは、流星雨に打たれて多くが死んだ天文台でひとり生き残った諸星昴という少年が、当時から天才だった嵯峨紫苑の家へと引き取られ彼の父母や妹たちに囲まれ普通に生きていたのが10年後、ビースト化してしまて嵯峨家に惨劇をもたらし、一気に事態が急転していくという展開。普通は永久にビースト化してしまい人を襲うだけになってしまうのに、昴だけは人間とビーストの間を行き来できてこれが家族の惨劇に急遽帰国した嵯峨紫苑に興味を抱かせる。暴れるビーストと戦える力を持った存在として昴を飼い慣らしつつ人類の死滅を阻止するためにイグドラジルへと向かおうとする紫苑の前に提示さっるのはどんな神からの啓示なのか。流星雨の下を生き残りビースト化する力を得た昴の存在の意味は何なのか。宇宙規模で神話レベルの大きさまで福良年で行きそうな展開が見せてくる壮大なビジョンに期待しつつ数奇な運命を送ることになった昴に訪れるそれは悲劇かそれとも幸福かを見守ろう。後書き風ミニドラマが愉快。「鉄腕バーディー」の後書き漫画みたい。

 帰宅して録り溜めてあった放送分のアニメーションを繰り出し再生。まずはやっぱり「コードギアス 反逆のルルーシュR2」から。ををこれは。コーネリア皇女殿下のお尻がとっても丸かった。ギアスによってルルーシュをコーネリアだと想わされて結果としてブリタニアを裏切る羽目となってしまったギルフォードにフレイア発射の栄誉を与えて場を治めようとするシュナイゼルにそりゃ違うとスザクが突っかかっていった場面。シュナイゼルの横に佇むコーネリアのお尻が丸かった。でもあの居丈高で尊大でそして騎士道精神に溢れた皇女様がシュナイゼルの横だとどうにも弱々しい。立場をなげうってギアスの秘密を探る冒険をしていたくらいの意志の強さがすっかりそげ落ちてしまって脇役に甘んじている。ソファーに座った横から映されてなだらかに盛り上がる胸元のシルエットを見せていたりとすっかりビジュアル要因。寂しいなあ。もーちょっと活躍の場を与えて差し上げて欲しいなあ。ダールトンもギルフォードも浮かばれないよ。

 でもって「ナイト・オブ・ラウンズ」のアーニャは中身がやっぱり。皇帝のシステム発動と同時に目覚めたのはそれを皇帝が望んだからか、皇帝の暴走を予測して発動と同時に蘇るようにトラップとして仕込んであったからなのか。そもそもどういうカラクリでアーニャになっていたのか。分からないけどそのすべてを説明するには余りにも時間が足りない。だから全部すっ飛ばしてルルーシュの魂の保管だけを語って幕を引こう……なんて考えないでね谷口吾朗監督。とりあえずアーニャは、というか中の人はあれでC.C.よりアクティブで腹も黒そう。ビスマルクに口八丁で信じ込ませて場をしのぎ、息子すらどうしよっかなー、って笑顔で見殺しにしそーなその態度は、子供想いで夫想いの清楚にして強靱な意志を持った大人の女性ってイメージとは正反対。だからこそあのシャルルともつき合えたんだろうけど。ところでアーニャ自身はどんなギアスの持ち主なんだ。それとビスマルクは。ギアス持ちが多すぎて有り難みも薄れて来たなあ。あれがあるから一介の学生に過ぎないルルーシュでも王になれるってくらいの絶対的な力だったのに。どう収拾をつけるのかを見守ろう。

 んで「マクロスF」。クラン・クランが脱いでいた。でも子供だし。いやそれが良いというか。それしか良くないというか。ソックスの膝小僧のワンポイントが可愛すぎ。けどしかしミシェルが。ミシェルが。柿崎に。まあそういうもんだ「マクロス」って奴は。でもオズマはフォッカーにならなかったからあるいはミシェルも。シーンではシェルターの中でシェリルが「ダイヤモンド・クレバス」をうたいだすシーンに鳥肌が立つ。涙がにじむ。絶望の中でも紡がれる天使の歌声に人は心を癒され生きようとする意志に身を満たす。ランカ・リーにゃあこんな境地はまだ早い。だからこそシェリルにもっと生きて欲しい。次週予告ではとりあえずバジュラは片づくみたい。でもその先は。グレイスの目的が見えないんでどこに連れて行かれるのか分からず不安もあるけれど、基本「マクロス」のテーマは主人公が三角関係をどう精算するかなんでバジュラよりもランカやシェリルとの関係さえ納得できるよう収めてくれたらそれでオッケー。触発されて女形に戻り女装してステージへ、だったらなお納得。

 「薬師寺涼子の怪奇事件簿」。お涼のツン×10000+1デレなデレがかいま見られる瞬間が楽しい。「ワンピース」。ニコ・ロビンが出ているうちは見続ける。あの合体技に意味はあったのか。サンジはやっぱり強いなあ。「ワールド・デストラクション」。世界救済委員会の女の子の方の性格が今ひとつ読めない。世界撲滅委員会の人間の元コックに惚れているのかどうなのか。でも優柔不断な態度にはいきなりキレて怒り出すからなあ。それこそが惚れているということか。宵風と壬晴の逃亡が続く「隠の王」はまだ見ず。「絶対可憐チルドレン」と「セキレイ」はまあそれなりに進んでいるんだろうけど急ぎ見るまでもない、か。ブルーレイで買った「マクロスゼロ」はいつ見られるかなあ。「F」が終了するまでには見たいなあ。


【8月25日】 それにしても意外感があった星雲賞の日本長編部門における有川浩さんの「図書館戦争」シリーズ受賞。もちろん刊行され始めた当初からその面白さを広く喧伝していた身としては現状からかいま見える将来への不穏な動きに対する牽制と反抗の物語としてSFな人たちにもしっかり認知された現れとして嬉しい限りではあるんだけれどもそんな「日本SF大会」に来場するようなコアでハードなSFの人たちが、プロパーとも言えず「SFマガジン」誌上にえっと登場したんだっけ?

 記憶にないからたぶん「SFジャパン」も含めてないっぽい人にちゃんと投票した、って事実がやっぱり意外。短編はSFマガジン読者が好みそうな野尻抱介さんが受賞をしていたから長編もそうしたハードな方面に流れると思っていただけに、この一件でそうした層に広がる回路を作家の人を、アスキーメディアワークスって版元もちゃんと持っているんだってことが分かってこれから「電撃文庫」あたりからもバンバンと、受賞作家が出てきてくれるんじゃないかって期待も膨らむけれどもやっぱり無理かなあ。まず読まれないと行けないからなあ。読んでもらいたいよなあ。「空の鐘の響く惑星で」とかしっかりSFなのになあ。

 体調不良とかでご挨拶には来られなかった有川さんのお顔を拝見できなかったのがやや残念。でも代わりといっては大物過ぎるくらいに大物な「20世紀少年」「21世紀少年」の浦沢直樹さんが登場していたのには輪をかけた驚きが。映画公開も間もないって時にきっと宣伝も忙しかったに違いないのにわざわざ岸和田の岸和田の会場まで、やって来てくれたってことはあるいは手塚治虫さんを敬愛する作家活動をしている人として、SF大会への親愛を抱いているってことなんだろー。

 挨拶でもあれは「サンダーマスク」なんだっけ、冒頭でSF大会についての会話が出てくることをちゃんと話していたし。書いている漫画は全部SFがって思って書いているとも話してくれたし。ちなみに浦沢さんはしっかりとご本人。替え玉でも偽物でもなくって去年だかに萩尾望都さんにインタビューした時にいっしょにトークショーを行ってくれた浦沢さんそのまんまのご来臨。最後まで閉会式を見た人にとっては大きなプレゼントだったんじゃなかろうか、己の自由と時間を引き替えにした甲斐も存分にあった。

 ってのも聞くと閉会式を飛ばして新大阪駅から帰ろうとした人はまだ何とかそれなりの遅れで新幹線に乗って東京駅にたどり着けたものの閉会式をしっかり見てから新大阪駅に到着した人は、熱海小田原あたりでとてつもない豪雨に見舞われて新幹線がストップした煽りを受けて電車は来ず来ても進まずとんでもない時間をあの細長い空間に閉じこめられて過ごす羽目になったとか。暗くはないし狭くもないけどいつ動くか分からない苛立ちって奴はあれで結構、精神を痛めつけるから、乗っていた人は心に相当なプレッシャーを負ったんじゃなかろーか。

 2時間ちょっとの遅れで特急券を払い戻してもらえた人はまだ幸運。深夜に米原で明け方に東京なんて事態はさすがに若くってもキツいだろう。本当を言うなら難波まで来た時に御堂筋線で新大阪まで行ってそこから新幹線で名古屋に出ようか、とも考えたけれども新大阪まで行く時間の間に難波から近鉄で3分の1は進めるんじゃないかと思い値段の安さも手伝って、近鉄を選んだんだけれどこれがもし、午後の7時に新大阪だったら名古屋到着も結構危うかったんじゃなかろーか。良い判断。これもきっと京都の晴明神社でお札を拝領したお陰だ。持ってたポニョのお陰かは知らない。実家に連れ帰ったポニョは実家に奪われたんでまた買おう。

 真夜中にかけて北京五輪の閉会式をドロドロ。うーんベッカムかよ。今時ベッカムかよ。でもってジミー・ペイジかよ。古いなあ。でもそんな古さからでしかロンドンの今って語れないのだとすると英国文化も英国スポーツもちょっとお肌の曲がり角に来ていそう。っていうかベッカムってマンチェスター・ユナイテッドのスターだった訳で五輪が開かれるロンドンのチームから見れば敵も敵。選ぶんだったらロンドンはスタンフォードブリッジに本拠を置くチェルシーのランパードなり、同じくロンドンでもハイバリーからやや移ったエミレーツスタジアムのアーセナルで将来を嘱望されているウォルコットくらいを引っ張り出すべきだった。

 でもすでにプレミアシップはシーズンイン。イングランドの代表に呼ばれるクラスが代表の試合でもないのにはるばる北京へと出かけていくなんて出来るはずがない。にもかかわらずそこにのこのこと出られたベッカム選手が、つまりは英国のサッカー界からはすでに別の次元へと、押しやられている存在だってことがあのロンドンバスの上からのちょん蹴りでもってあからさまになったって事になる。ちょっと哀しい。しかしベッカムか。中国ですらもはや過去の人、って印象を抱いているんじゃなかろーか。いっそだったらスパイスガールズにしておけば良かったのに。それかレズ・ツェッペリン。儒教の国でもだいじょうぶ?

 しかし休みとは言え惚けていては仕事に差し障りも出るだろうとMF文庫Jから出ていた赤松中学さん(どんな名前だ?)って人の「緋弾のアリア」をつらつら。武力行使の認められた探偵が事件を解決して回る世界にあってそんな武探を養成する学校に入ったものの最初の強襲科から転じて探偵科へと移りさらにすぐにでも止めたいって思っていた主人公の少年に迫る少女、っても色目ではなく少年がかつて示した特級の能力を買ってのことらしく、今は不抜けてしまった少年を巻き込み武探ばかりを狙って殺そうとする事件に挑む。

 事が武探殺しとあってはかつて兄を同じ事件で失っていた少年としては心も揺れる。とはいえ少年が秘められた力を発揮するにはとても恥ずかしいシチュエーションにならないといけなかったりしてなかなか前向きになれない。そこに迫るのは命の危機。大勢を巻き込みかねない大ピンチに少年も封印を解いて本領を発揮し意外でもあった武偵殺しの犯人に迫る。罵倒しつつもしっかり主人公を頼るアリアとか、前に助けられた時に少年のフルパワーを見て惚れてしまった巫女系の美少女で清楚で優しくって剣術は一級という白雪とか周囲に最高級のヒロインが寄り添い慕うってのはどんなハーレム? 都合良すぎるけれども未来のまだあると信じる少年には、そうした自分にあるかもしれない力の発露を先取りして代弁してくれるよーな話はとってもマッチするんだろー。売れそう。でも安心しろ。そんな力なんて100年経っても出てこないから。ああ言っちゃった。

 いやでもある日突然に召還されてそこで5人のお姫様から国を守るためには世継ぎを生んで女王になる必要があるからあなたを夫として迎えたいと迫られることだったらあるいはあるかもしれない……ってことはやっぱりないか。現実の世界であってないもんなあ、玉の輿。だからこれは現実への鬱屈を発散する場として与えられた物語だと理解して心ゆくまで虚構の幸福を味わうんだ風見周さん「H+P1 ひめぱら」(富士見ファンタジア文庫)のことだ。目覚めるとそこは異世界で、女性だけが魔法を使える世界である王国を治めていた王女が病に伏して国を守るバリアーが消えてしまいそう。早急に後継者を作らなくちゃいけないんだけれども5人いる王女のために集めた男たち、つまりは王仕(おうじ)たちは敵国の軍隊に見つかり一網打尽にされてしまって今は王国は男日照り。

 これでは世継ぎを生んで女王になる王女を作ることすら困難と女王が力を振り絞り、異世界というか現実の日本から召還したのが神来恭太郎という少年で、見渡すとややツンケンとしつつも正義感にあふれ腕っ節も強い第1王女を筆頭に、もうとても深い谷間を高い山を胸部にいただき性格はおとなしめでそして女王に代わって国政をきりもりする才能にも恵まれた第2王女、その二卵性双生児の妹で姉とは正反対にスレンダーで性格もキツめながらも常に前向きでアグレッシブな第3王女、魔法の研究が大好きでいつもやや引っ込み思案で運動も苦手だけれども可愛らしい第4王女にそして完璧に子供ながらもその魅力でもって“おにいちゃん”を籠絡しようとする第5王女のいずれからも求愛され小作りに必要なことをしようと迫られる。それがいったいどういうことかは子供だからぼく知らない。

サオリン!  あの手この手で迫る描写のエロっぽさがまず読み所、というか何よりの読み所。下着にエプロンで第2王女が迫れば負けじと第3王女もスリムな体を包んだ下着の上にエプロンだけはおって迫るその脇から、下着すら着けないでエプロンだけでもう横にずれれば見えちゃいそうなプレッシャーを放って第5王女が迫ったりしと見所たくさん。どーしてイラストがないんだと憤りも浮かぶけれどもそれを着けたら売る場所とか、売って良い相手も限られてしまいそうなんでここが寸止めのぎりぎり海峡。そのシチュエーションを読んで心に浮かべて官能に喜ぶのが妥当な振る舞いって奴だろー。想像力だって鍛えられるし。でもって話はやっぱり少年自身に謎の力があって世の中そんなに巧くはいかねーぞと大人のやっかみをぶつけたくなるストーリー。さらに謎めいた男もいたりして、それがどーつながっていくのかを妄想しつつこれからの刊行を待とう。謎の魔法使いは主人公のオヤジで王女たちは主人公とは母親違いの兄弟姉妹だ、なんてありきたりの展開にはしないよね。

 せっかくだからと大須をぶらつき「時次郎」って新しいあんかけスパの店でミラカンを頼んでなかなか出てこずいらっとしたけど出てきた味が良かったんで心を穏やかにして久屋大通と若宮大通りがクロスする1アール交差点をながめそこの正面に出来てた「ランの館」なる施設を見物し、松坂屋の上でやってた「ポニョ」の展覧会で半魚人に驚くフジモトをながめ三越の上の旭屋書店で「ちゅうじょ」(実業之日本社)って「ひゃくはち」の親戚みたいなタイトルだけれど中身は中京女子大学のレスリング部についての実録漫画を珍しいからと買って読んで表紙はまだ近いものの中身は圧倒的にカワユくなっているサオリンのビジュアルに惚れつつ「とらのあな」をのぞきテレビ塔へと登って眼下を見下ろし人がゴミのようだと思う自分がゴミカスだと社会的に置かれた境遇に相応しい身分を自覚しつつ降りて環状になってた名城線で大曽根を回って八事へと周り昔はバスしかなかった名古屋大とか日赤病院に地下鉄で行けるようになった感動を味わい帰宅。名古屋は進化しているなあ。


【8月24日】 夜中にかけてまとめ読み。「ゲーマーズ」でもちゃんとアニメイトっぽくくれたビニールのカバーに治めた七位連一さんの「丸鍋ねこの改造計画(仮)」(MF文庫J)は、普通にエロエロな男の子が奥手な女の子を元気づけたりするって感じで、ちょっぴり設定は違っているけど直前に読んだ風見周さんによる「女帝・龍凰院麟音の初恋」(一迅社文庫)にも相通じるとこのあるラブでコメディな物語かと思っていたらラストになって大転回。そう来るかって驚かされたさらに先にじゃあどうするって疑問も浮かぶけれども、ずばっと味わってゴクゴク飲んでのどごし最高、でもって舌に残る後味をちびちび味わっていたら消えちゃった的な楽しみ方もあるんで気にしない。

 クラスメートの丸鍋ねこは誰が告白しても感情すら見せずに断り知らん顔って難攻不落の大要塞。圧倒的な美形の男子が挑んだところで玉砕また玉砕のオンパレードにもはや誰も相手にしなくなるかって、思われたところに果敢に挑んだ男子が1人。というか別に恋人にするって訳でもなさそうなんだけれども可憐な乙女が1人でずっといるのって寂しくね? ってお節介からまさしく丸鍋ねこちゃん改造計画を立ち上げ、笑わせ恥ずかしがらせキュンとさせて怒らせってって感じにとにかく心を動かそうと持ち前のバイタリティでもって吶喊する。その彼、春田リク自身はそれでなかなか人気者。校長をパトロンに男どもから大枚をせしめる小学生の白崎チカには懐かれツンケンとして吐く言葉は「このブタ野郎」といった具合に大罵倒の嵐なのに行動だけはしっかり甲斐甲斐しい美少女の蘭ひょうにつきまとわれといった具合に結構モテている。でもだからといって丸鍋ねこを放ってはおけない。だって自分は彼女の本当の顔を見たことがあるのだから……。

 って感じで動き始めた大作戦は、挑んでは失敗続きの山なんだけれど、そんな途中に明らかになった意外な真実、そして丸鍋ねこの正体! ちょっかいをかけようとした男子共のことごとくに災難が降りかかったりする現象の正体って奴も見えてきて、ただの日常ラブコメのフェーズがぐるりと変わってそれは世界の命運すら動かしかねない事態へと進んで行くんだけれど、それが何だと主人公の少年が怯うことはなく、迷うこともない。だって目的はひとつ。丸鍋ねこと仲良くしたい。それだけ。だからそれこそ世界を壊しかねない事態もあっさりすり抜けて、そして再び怒らないとも限らない事態にはまるで言及しないで物語を締めくくる。その意味で設定こそ急転直下にシリアスだけれど、主軸にあるのは少年の真心と少女の慟哭、そして開放って意味でなるほどボーイ・ミーツ・ラブもベッタベタな物語だったと理解。そこに絡む絶対悪魔幼女に究極ツンデレ少女。立ちまくったキャラと絶妙な語り口で至福の時間を過ごせます。

 伝奇にして猟奇というかファンタジーにして不条理というか、とにかく不思議な1冊の登場にきっと世間も沸き立ちそう。「MF文庫Jライトノベル新人賞」の第4回に佳作で入った葉村哲さんの「この広い世界にふたりぼっち」(MF文庫J)は、まずもって少女が街と森のそばを歩いていたら喋る狼が現れお前を妻にしたいと言うからなりますといって狼といっしょに森へと入って、一族の長とか兄の狼とかに告げると文句を言われたんで戦って裏切り者と誹られ、脱出して少女の家に行ったらそこは家で2階建てで狼は屋根の上に登って休憩する。そんな少女の家庭は再婚相手の夫との間に出来た子供の死を認めたくないと母親は気をふれさせ、義父はそんな母親に愛想を尽かし気味で娘の少女に色目を使ってとぐっちゃぐちゃ。少女はひとり心を閉ざし気味に生きていた。って段階で既にファンタジーとも寓話ともいえそうな狼と少女の興隆に現代の崩壊しかかった家庭というシリアスな要件が重なってリアルのレベルがぶれている。

 且つ少女は学校で虐められていて机の上に塗られたマーガリンの上にガラス片を散りばめられたり体操服を隠されたり。首謀の少女がいて周囲にお付きの少女たいたり少年がいたりして鬱陶しいことこの上ないんだけれども、主人公の少女はそんな相手に怯まず怯えず臆さずに毎日を超然と生きているものだから相手も苛立ちを募らせさらに激しい攻撃を加えてきたところに、夫となった狼が現れ首謀者の少女の頬を爪でひっかき傷を負わせ、首謀者の下で腰巾着をしていた少女の腕を食いちぎる。そりゃあ大事件だろう? 事実としても事件化されて何か獣が現れたってニュースが飛び交うんだけれども、そんな町中を少女は狼を引き連れ犬と見せかけ歩いて誰の咎めも受けず捕まりもしない。

 さらには虐めていた少女が退院して来て主人公の少女を相手に戦いを挑んで向かって来て、それを少女は狼といっしょに受け止め退けようとする。えっと現代だよねえ。それもシリアスな現代だよねえ。なのにどうして血で血を洗うようなバトルが起こるのか。狼が現れるのか。喋る狼が出てきて裏切った狼を襲って来るのか。分からないけれども何となく浮かんでくるのは世界にたった2人というか、1人と1匹になってしまった少女が、生きづらいこの世界で目にして耳にする不純なものが暗喩として様々な形となって立ちふさがって、それを乗り越えようと足掻く様を描いた寓話的メッセージ。リアルのレベルがどうとか考えないで素直にメッセージとして受け入れておくのが読み方として前向きなのかも。とにかく不思議不条理不透明な物語。だけれどもその型にはまらない歪さが誰かの心に届いて人気を招くはず。これからの広まり方に大注目。

 むくむくと起き出して「PRONT」で朝食を摂り南海電車で岸和田までゴー。降りると街がてんつくてんつくと太鼓の音に溢れていたのは今日が「浪切ホール」で来月13日辺りがピークとなるだんじりの決起集会めいた日だからでこの日を境にあの街は、通常とは違ったハレの場へと変わって賑やかで熱くそして激しい住民たちによる日々が始まることになるんだろー。そんな最中に突っ込んで行って虚弱なSFは大丈夫かて心配が漂ったのもむべなるかな。いくら肉体作家の今野敏さんとか空手家小説も書く高千穂遥さんを擁していても実戦系な肉体派のそれも集合にはかなわない。事あれば見かけは立派な警備体調がひとりで引き受けてくれるかとは思ったものの見かけで勝てるはずもなく、ここは静かに決起集会が過ぎるのを待つべきかって覚悟を固めたものの実際にはきわめて粛々と集会は終わったみたいで午前のプログラムとして見た氷川竜介さんによるアニメのSF的な面白さについての解説を聞いていた間に引けて静かになっていた。ああ良かった。でも街へと散ったダンジラーたちが帰宅するSFを待ち受けているって可能性もあるからなあ。待ち受けて何をするのかは知らないけれど。引き手? それとも街を守る壁?

 そんな氷川さんの講座は中村豊さんの作画の凄さって奴を実感させられた内容。「鋼の錬金術師」でエドがグリードにケリを入れた場面で片足をぐるりと回したら除けられたけれどもその後に続けたもう片方の足が頭にヒットするって作画を中村さん、最初の足を顔の直前で留め次の作画で足を顔をちょい通り過ぎた位置で留めてそしてその次ぎに足は地面へと立ってもう片方の足がぐるりと回って顔にヒットしている作画を持ってくる。作画が時間の経過も飲み込んだものなら作画の間で動く距離も同じになるはずなのにそれを捜査して緩急を見せ、さらに顔に足がヒットした直後に歪み揺れる顔だけをアップで見せたりして、1度当たっているのにまた当たっている絵を突きつけることによって蹴りの凄さを見る人に印象づけている。単純に見れば2度も顔に当たったことになるけど見る側としては重ねられたヒットの音が1つだけってことあって1回だって認識して処理してしまう。そして2度重ねられた絵に1回だけとは違った衝撃の強さって奴を感じ取る。こうした作為の作画によってアニメーションって奴は作られていて、だからこそ見ていてどこかに気持ちを揺らされ煽られ発憤させられるんだってことになる。

 よく3次元CGのアニメーションが見ていてあんまり面白くなって話があるけれどもそれはリニアな時系列の上にすべてを整えようとして、編集によって動きを操作し時間すら前後に動かすことによって見ている人の感情を動かす従来の、というかプロフェッショナルのアニメーターが感覚的にやってしまう動きの付け方を3DCGの人はまだ会得していないからって理由があるらしー。いくら技術が進んだところで動かすのはアニメーターの力。そこを効率化で端折れば経験も蓄積も欠けた単なる動く絵になってしまって感動は引っ張り出せないのだ。って話のところは実はホール前にあるトイレの個室で聞いていた。親切にも音をホールの前だけじゃなくってトイレの中にも出して中座した人の後ろ髪を引かれる思いに答える配慮が出来る岸和田ってやっぱり人情の街なんだ。トイレで天井から囁きかけられる氷川さんの声もまた異次元の経験、これもひとつのSFか。

 ってな感じであれやこれや聞いてそして星雲賞やらセンス・オブ・ジェンダー賞やらの発表を聞いてから研いだしてんつくと太鼓は鳴れども興奮にはまだ間もあった岸和田の商店街を無事に抜けて駅から難波へと出てそこからさて新大阪に向かい新幹線でとっとと帰るかあるいは近鉄でゆっくり帰るか迷ったものの新大阪に行く間に割と近鉄でも進めそうだと考え直して近鉄に乗ってから何か新幹線が大変なことになっていると知って選択の正しさに胸をなで下ろす。これで新大阪に行っていたら名古屋着はいったい何時になったんだろう? 近鉄はあれで結構揺れて気分にダメージも出かかったけれども乗り切り名古屋駅に降りて評判のミッドランドスクエアに行ったら地下の飲食店は午後の8時半で全滅。地下街の飲食店も9割が全滅と名古屋の見せ仕舞の速さを今さらながらに見せつけられる。日曜だって東京の六本木ヒルズの店が午後8時で閉まるなんてこと、ないからねえ。それでもあんかけスパの「チャオ」はしっかりやっていたんで入って注文。「ヨコイ」とか「そーれ」に比べると上品さのある味だって印象だったけれども東京で食べる「パスタ・デ・ココ」に比べればまだまだパンチの強い味。これだよこれこそがあんかけスパだと喜びジャンボをかき込む。至福。時間があったら本家の「ヨコイ」にも行ってミラカンの1半、注文したいな食べきれるかな。


【8月23日】 まあ別に国辱とは思わないけど星野ジャパン、病気に倒れて実質的に指揮の執れなくなった長嶋さんを未だ監督と仰いで背番号3のユニフォームをかつぎベンチに飾り、回復の進まないながらも勝利への意志をこめて記した「3」だかの文字が入った日の丸を頂いてアテネ五輪を戦った中畑さんのチームですら、銅メダルを獲得して勝利を長嶋さんに捧げつつ帰国してもなお、金メダルを獲得できなかったことへの悔いを選手たちは抱き周囲は難色を示したんだから完璧に動ける監督が、金メダルを取りたい日本の野球界の意志も前回よりは前向きにもらって選手を集められた今回の北京五輪で何のメダルも奪えなかった事実に対して、いったい何が起こったのかって検証だけはやっぱりちゃんとしておかないと、日本の野球界への信頼にもいずれ遠からずヒビが入るんじゃないかって心配したけれども当人は調子も悪いときがあるとか言い募り、周囲はだったら次はWBCだって押し出す構えを見せているところに何か奇妙なベクトルって奴が伺い見えて仕方がない。

 そりゃったい何だろう? ってまあひとつにはメディアの遠慮っていうか事実としてセレクトからコーチングから采配から何から何まで綻びが見え隠れしていた星野ジャパンだったにも関わらず始まってから終了するまでメディアは妙なプレッシャーはかけるなというか、もとよりプレッシャーなどかける気も無さげに異論をはさまず淡々と状況を伝え批判の矛先をどこにも向けず、あまつさえ「選手がかわいそうだった。野球そのもが不思議でしょうがない」ってどこかのお洒落なミッドフィルダーがPKを奪われた直後に若気の至りで喋ったことのようなコメントをもらって平気で載せていたりするから興味深いというか悩ましいというか。「ストライクゾーンがまったく他の世界でやっている」とも言ってたみたいだけれどでもそういうのって国際試合じゃよくあること。WBCだって日本とは違う審判たちの判断に迷い悩んでも打ち破ってつかんだ優勝だった訳で、なのに今からあれやこれや心配していちゃWBCの連覇どころかアジアの予選を勝ち抜くのだって難しい。

 だって韓国の2回も負けてるじゃん。相手はそりゃあ強かった。ピッチャーは良かったしイ・スンヨプ選手も日本で干され気味だた間に臥薪嘗胆、プライドを燃やし体調を整え北京に乗り込んでは日本戦でホームランを放って日本の金メダルへの望みをうち消し、そして決勝戦でもやっぱり本塁打を初回に叩き込んでキューバの出鼻をくじきそして世界の頂点へと輝いた。常に国家ベストなキューバに勝つのと、大リーガーが出てない米国チームにすら負けるのとではもはや次元の100ぐらいことなる事象。なのに日本はやられて韓国はやってのけたって事実を踏まえればもはやどこからもWBCをもう一度、なんて発想なんて出てこないのにメディアあたりはいささかの葛藤も交えずリベンジと持ち上げるこの裏に蠢くものはいったい何だ?

ようやく見つけた話が居場所!  日本政府が転覆するくらいの秘密とか、日本を沈没させられるくらいの科学力を星野仙一さんという人は持っているのか。実はビル・ゲイツなみの資産家でここで星野さんが引くと日本の財政は空になり田舎に道路はできず年金も支払えないくらいの事態が起こるのか。起こりませんってば。でもしかしやっぱり星野さんを囲む音頭は極めて微温。どこか温いのはやっぱり奇妙にしか見えない。とかいいつつ個人的にはずっと星野さんであった方がせっかく勝った星野ジャパンの背番号「77」のユニフォーム(オーセンティック!)もムダにならずに済むってもの。なのでここは2016年でのリベンジを目指して星野さんを持ち上げ押し上げ讃え引っ張って頂ければ有り難い。頑張れ星野ジャパン。岡田ジャパンはどうでもいいから。

 起き出して「PRONT」で朝食を頂きまだシャッターの閉まった千日前あたりを抜けて南海難波駅から電車に乗って向かった岸和田は遠かった。東京で言ったら東京駅から横浜駅くらいの間隔? 同じ大阪でそれも大阪っぽさに溢れた地域ってことで難波が銀座あたりなら上野浅草谷中千駄木的な近さだと勝手に思い込んでいた。地理重要。これで関西空港はさらに向こうにあるってことは関西空港って東京駅から見ると横浜すら超えた湘南あたりの海上にある空港って感じ? 成田が遠いっていうけど関空もなかなかじゃん。日本ってのがハブ空港をおいてアジアの交通の要所を目指したってしょせんは規模で中途半端で距離も中途半端な空港じゃあ、中国韓国あたりに持っていかれるはずだよなあ。んで中部国際空港はどんな感じだ。常滑ってでも名古屋からだと大阪岸和田間よりは近い気が。というか常滑市議に知り合いの名が。いつの間に!

 そして到着した岸和田は町がだんじりで出来ていた。それはないない。でもだんじりの開催を翌月に控えた町はすでにして雰囲気が出始めていて提灯なんかが飾られていて何だかそれっぽい。且つ翌日には安全講習会という名の血気、じゃなかった決起集会も控えて町はいよいよって心も躍る状況の中に飛び込んでいって大丈夫なのかSF小市民、という心配もあったけれども開幕した「日本SF大会 DAICON7」の中で岸和田を統べる市長さんが歓迎の意を示してくれたってことはとりあえず、保護の範囲下におかれたってことで命だけは助かったと安心はしたけどでも血気、じゃない決起集会の場にうろちょろしていたら何だこの得体の知れない扮装をした奴らは細いか太いかどちらかしかいない男共はといった具合に睨まれ、いろいろされるかなっと浮かぶ不安。まあそこはSF的はあらゆる理不尽もSFの現象に比べればたいしたことがないという鷹揚さで受け止め受け流すのがSF者たる務めと納得して明日を迎えよう。

 いやまだ始まったばかりの「DAICON7」は企画が……見てないや。普通に見たのは「FREEDOM」の上映会くらい? 1話は昔見てそれで2話でつながったんだけれど途中はすっとばして7話を上映。SF的なガジェットは豊富でもドラマとして上っ面だけな感じがして世間にはもっと深く月とか火星の管理社会を運営している様を描いたSF作品があるんじゃないのって気もしたけれどもそうした深さを見せるより、ビジュアル的な凄さとそれからスピード感を見せるってのがアニメーションのひとつの役割。その意味でいうなら大友克博キャラがちゃんと立体感を持ちつつ2Dっぽく動いてそしてバイクみたいなのが高速で走りタコみたいなのが重量感とスピード感を持って迫る描写はひたすらに圧巻。そんなビジュアルの上で自分の外へと向かいたい意識を最初は自分のために使い、つづいて誰かのために頑張ろうとする少年の成長が繰り広げられた話はそれなりに感動も得られたんで11月に出るらしいブルーレイのボックスは買うことにしよう。作られた月での風景と荒々しさに満ちた地球での自然の描写をCGの上でどう描いたか、それがどんな効果をもたらしたのかって辺りも確かめたいし。問題は……買う金か……。ボーナス出るのかな?

 それにしてもどこも立ち見の大盛況、ってよりは参加者に比べて部屋数が少ないのが理由なのかほとんどが人のあぶれる状況に、最初から入って席をとっておくだけの前向きさも失われた年齢の身では太刀打ちできず廊下とんびで見知った人の顔をみかけて話したり、ソファーにすわって星野ジャパンの戦いぶりを確かめたりしつつ過ごして初日は終了。これがごろごろって奴か。いやでも瀬名秀明さんのサイン会には行ったしバニーコスプレの人とかも見たからちゃんと参加はしているってことで。コスプレなら自分でしろって? いやいちおう星野さんのユニフォームを着ていたんだけれども恥ずかしくって試合終了後に脱ぎました。これで岸和田あたりを歩いていたらやっぱりタコ殴り? 大阪で星野さんって未だどういう位置づけなんだろう。でもやっぱり怖くて明日は着られません。ダルビッシュにしておけば良かったかなあ。


【8月22日】 どうしたんだ金子達仁さん。「スポーツニッポン」の2008年8月22日漬けでサッカーの女子代表こと「なでしこジャパン」が北京五輪で見せた戦いぶりについて「いまだ男子のサッカーが見つけられずにいる“ジャパン・オリジナル”なサッカーであり、今後、世界中でコピーが展開されていきそうなほど魅力的だった」って手放しで褒め称えている。そのどこが例えば具体的に“ジャパン・オリジナル”なのかを解説していいないところか隔靴掻痒だけれども、代弁するなら高く保った最終ラインでしっかり回して陣形を整えサイドに開きサイドバックが追い越し中盤も絡んで前へと向かい切れ込むなりして相手ゴールへと迫りシュート。ゴールイン!

 逆に攻められそうになっても最前線からフォワードがチェックへと行き中盤がしっかり相手をマークしボールを前へと入れさせない。サイドに流れても2人で囲んで攻撃を遅れさせ、その間にゴール前を固めて得点を赦さない。リスクを冒して攻めていた途中で相手に奪われても諦めないで追いかけ食らいつき、そうして奪い返して攻撃に転じるメリハリの利いたサッカーのことを指すんだろう。なんだ当たり前のサッカーじゃないか。でもそれが通してはなかなか出来ないんだよなあ。

 それをやるのに必要なのはしっかりとしたテクニックとひとところに留まらない継続的な動きとそして献身的な守備意識。誰かが行けば誰かがカバーに回ってバイタルエリアを作らせない、シンプルで強力なサッカーを8月6日から8月21日まで15日間にわたり中2日間でそれも真夏の中国なんて環境的にもバッドランドで7試合、繰り広げなくちゃいけなかったんだから最後に疲れてパスの速度が弱くなったりズレたりしたって仕方がない。スポーツ界にとって最高の大会であるにも関わらず、ことサッカーについては最高のプレーを見せられる状況にないにも関わらず彼女たちはよくやった。

 でもってそんな環境に文句の一言も言わずに戦い抜いた。金子さんがコラムの末尾で「君たちのやったサッカーは世界一だった!」と快哉を叫んだのには、そのプレーぶりに加えてアスリートとしての心持ちもまた世界最高峰にあったってことなんじゃなかろーか。たとえ福元美穂さんの背がちょい低かったってことしか敗因についての具体性のある記述がなかったとしても、その気持ちは努めて前向きに受け止めたい。

 ただでもしかしそうした身体的な課題を、03年の女子ワールドカップあたりから見てきた目にはどーして5年間もやっぱり改善が進まなかったんだろう? って映らないでもない。あるいは国立競技場での北朝鮮戦での勝利に感動した女の子たちが始めて4年でひとつ形にならなかったんだろうかって気も。そりゃ流石に無理って思わないでもないけれど、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースのフォワードとして活躍する清水由香さんは三井海上で陸上の選手として活躍していたトップアスリート。それがサッカーに感動して転向して4年ほどで2部とはいえトップを争うチームのフォワードとして得点を取りまくっていたりする。

 反射神経がある背の高い女の子だったらゴールキーパーとしてそんなにかからず育成できそう。アテネに出られるくらいのアスリートならその上背と身体能力でディフェンスとして高い壁を築けるだろー。ソフトボールで金メダルを獲得した上野由岐子さんだって背は174センチもある。これは「なでしこジャパン」の誰よりも高いのだ。集める気概で集めれば集まったかもしれないと思うとやや残念。「スーパー少女プロジェクト」をやってたって? 成果が出てないってことはやっぱりどこやり方に問題があったんだろう。あるいは目先を急ぎすぎて魅力そのもののアップを怠っていたからとか。

 もちろんオリンピックに出場するようなアスリートたちが、マチュアに文字通り毛が生えた程度の境遇しか用意できない女子サッカーなんて袖にして、成功する場へと行き成功するのは当たり前。わざわざ女子サッカーへと来てもらうのも僭越といえば僭越な話だけれど、でもしかし残念なことにソフトボールは4年の先に五輪という大きな大会は行われない。サッカーは4年後も8年後もきっとある。これをどう見るか。今は厳しい境遇だってきっと良くなるだろうと楽観するなら、ソフトボールやバスケットボールやバレーボールに流れていた身体的に頑健な人たちのちょっぴりでも、五輪出場の可能性を夢見てサッカーに来てくれれば底は広がり背丈も上がる。体重も増えるのか?

 だからこそグランドキャニオン的に谷間となって女子のサッカー行きを妨げている中学世代の受け入れ先の無さを改善することが必要だ。中学女子にあって当然のバレーにバスケにたぶんソフトといった競技に並ぶくらいに女子サッカーを行う学校が、あるいはクラブがあれば小学生で男の子達といっしょにサッカーをして時には凌駕すらしていた才能が、絶えずに上へと来てくれるようになる。協会長の犬飼さんが全てのJリーグチームに女子部をって言ったのもそうした継続性を問題にしたかったから。全国のクラブに受け皿があれば一部の強豪にのみ人材が偏りあぶれれば去るだけの勿体なさも起こらなくなる。アテネで蒔かれたタネがようやく芽を出し蕾を着けた今こそさらに動きを強めて下地を整え、底上げに取り組み4年後のロンドンでの、それが無理でも8年後の東京(予定)での頂点を目指して歩んでくれれば重畳。その時に男子はいったいどんな惨状にあるんだろう? アフリカもブラジルも逃してたりして。マジで冗談じゃないから怖いなあ。

 オリヴィエ・ミラ・アームストロング最強伝説はもしかして正しいのか、いやそんな伝説があるって証拠はないけどでも「鋼の錬金術師」の第20巻を読んでいたらやっぱり最強なのはオリヴィエ少将じゃないかって思えてきた。弟にして筋肉お化けのアレックスを軽く凌駕し地べたにはいつくばらせてアームストロング家の家督を相続。北の砦ではひとにらみでエルリッックもアルも怯えさせていたオリヴィエの前にはいかなホムンクルスとて足の小指であしらわれてしまう、ってことは流石にないけどでも互角以上には戦えそう。彼女とあと無敵の主婦とこイズミさんが組めば前に敵なし、後ろには重なる屍のみ、ってことになるのかな、ああ見てみたい2人の合体。ブリッグズ砦にイズミさんも来たことだし。そうだこれにキャスリンも加えれば更に最強の軍団が出来るかな、ああ見えてピアノを少々嗜む可憐な乙女、片腕で持ち上げ振り回しては果てへと投げるピアノ投げ選手権を少々嗜む。シンなど行かせず是非に最前線への投入を。希望。

 えっとナギお嬢様? 違うか龍鳳院だから三千院ナギではないしお付きも蘇芳さんであってマリアさんじゃないけれど、国家すら揺るがす権力を持った家柄てあたりはやや共通か。そんな龍鳳院の家に生まれた一人娘が父親の決めた相手と一緒になりたくないからと、恋愛の相手を捜して見つけて仲良くなった相手がいたらしいのに夏の間のひとときを、ともに過ごして甘い体験もしたのが何かの事件ですべてパー。というか関係した人たちの記憶からそんな甘い思い出がすっぽりと抜け落ち、まっさらな所から再び関係をやり直す羽目となてしまった。もっともナギ、じゃない麟音は美少女ながらも胸はほとんど板というスレンダー過ぎる女の子。おまけに生真面目で風紀委員として学校での恋愛を取り締まる立場にあって周囲に誰も男が寄りつかない。実は本当は恋に焦がれるお年頃。古今の恋愛に関する小説を集め漫画を読みゲームだって多分しているのに外ではプライドも邪魔して男の子と恋を育むことが出来ずにいた。

闇の眷属もはらいたまえきよめたまえ  いたはずだったのに記憶を失う前にはなぜか悠太という名の少年と知り合えた。仲良くなれた。なのにそれが他に類を見ないヘンタイだったから驚いた。顔立ちはやや真っ当ながらも心の奥底、骨の髄まで巨乳爆乳突乳好きで学校でもそんな女の子にちょっかいかけてははり倒され、けれども負けずに食らいついては虐げられる日々を送っていた。巨大な谷間を見れば腕を振り上げ振り下ろして叫ぶ「おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい」のシュプレヒコール。そんな野郎に女子なんて誰も目を向けるはずがなかった。なかったのに何故か麟音と知り合った。恋に落ちた。どうしでだ? ってところがまるで説明されていないんだけれどそうなったんだから仕方がないと2人は、というか見合いを嫌がる麟音は悠太との恋の記録を繰り返し、記憶を取り戻そうとして同じ行動を繰り返す。

 というのが風見周さんによる「女帝・龍凰院麟音の初恋」(一迅社文庫)のストーリー。気になるのはやっぱり前にどーやって知り合い仲良くなったのかってなれそめと、そしてどうして誰もが記憶を飛ばしてしまったのかという理由。まあそこはいずれ続くだろう巻の中で明らかにされるんだろう。ってか明らかにしてくれないと暴れちゃうぞ。そんな作者の後書きにさらに吃驚。みなさんで仕事場を作ってたんだ。作家が仲間で同じ部屋を借りて仕事をするって青山智樹さんと篠田節子さんとあと誰だっけ、そんな感じの部屋があったりするから珍しい話ではないんだけれども誰だったっけ、あざの耕平さんに鏡貴也さん上月司さん支倉凍砂さんだったっけ、そんな感じのライトノベル界のトップ級が集まり創作に励む部屋に飛び交う言葉が、いったいどんなのかが知りたい。

 いや仕事中はみなが机に向かい黙々とキーボードを叩いているだけなのか。9時から5時まで黙々と。そして終わったら連れだって飲み屋でいっぱい。上司はいないから編集者の噂話でうさをはらして家に帰ってお風呂ですかお食事ですかと奥さんに言われ子供の寝顔を見て仕合わせを実感してそして眠り起きてお弁当を手に仕事場へと向かいライトノベルを書くのだ「おっぱい」と連記された。これぞゼロ年代。

手足が生えたら万歳したかったの  そうだ京都に行こう。じゃなくて岸和田に行かなくちゃいけないんだけれども土曜日にいきなり入るのも眠いんで急遽の金曜日入りを決定。でもってせっかくだからと京都に寄って晴明神社に方位除けのお札を返して新しいお札を頂戴する。これでどんな厄が来たって大丈夫、会社が潰れても会社が転がっても会社がひっくり返っても会社が濁流に巻き込まれても会社が資本主義に破れても会社が帝国主義に潰えても会社が会社が会社が……。だめた1枚じゃあ足りないや。一緒に普通のお札も買ったけれどもこれでもやっぱり足りないか。晴明神社はこれまでだとバスで堀川今出川あたりまで行っていたけど今回は経路を変えて地下鉄烏丸線でもって今出川まで行って徒歩でしばらく。途中に蹴球の守り神の白峰神社があったんで絵馬を頂き「ジェフユナイテッド市原・千葉」の1部残留を祈願する。でも京都サンガの地元なんできっと邪魔しに来るんだ水本裕貴とか佐藤勇人とか。多めに見てよ、見逃してよ。

 晴明神社は平日だけれど夏休みってことで参拝客はひっきりなし。どんな妖怪変化も調伏してしまう大陰陽師なだけに持っていった半魚人もあるいは闇の眷属を去れとばかりに清められたか。鷲宮神社と違ってあからさまにそれっぽい人はいなかったけれどもどこかアンニュイな夏なのにふりひらなドレスで眼鏡なんかをかけた漫画家と言われればそうかもしれないと思いたくなる(やや偏見)ビジュアルの女性がステッカーとあとみずかがみのお守りっていうかペンダントを買って帰って行った。ファンなのだなあ。とかいう自分だってこれで来たのは何回目だ。最初に来た時はまだ前の境内が整備されていなくて一条戻り橋も柳も式神もなく本殿だけがひっそりとしていたのに6年ほどでここまでの発展ぶりはやっぱり夢枕獏さん岡野玲子さんの漫画やライトノベルでの陰陽師物の隆盛が大きいんだろうなあ。ビーズログ文庫の金沢有倖さんの「闇の皇太子」ってシリーズだとそんな感じに観光スポット化した晴明神社の様子が割にリアルに書かれてあるんで、興味のある人はご参考に。たぶんきっと行ったんだな。絵馬が奉納してあるかは未確認。あれって有名人じゃないと飾ってもらえないのかな。飾られるくらいの有名さってどれくらいなんだろう。

 とことこと大阪から難波へと来て散策。途中で日本の野球の代表が韓国に破れたって話を聞いて星野さんの代表ユニフォームを着ていなくって良かったと安堵。来ていたら戎橋から道頓堀へと叩き込まれていたよ絶対に。んでなんば花月とか周り日本橋でゲーマーズとかアニメイトとか見て秋葉原と変わらないなあむしろ活気があるかもとか思いつつ宿を探したら日本橋の真上だった。南海難波も目と鼻の先。本当は当日分しか予約してなかったけれども急ぎ前日も予約したら都合よく連泊に出来たんで明日のチェックインも不必要になったんで初日の「日本SF大会」がおわった後は岸和田でだんじりでも引こう。いや別に毎日は走ってないから。そうなのか。


【8月21日】 姉貴を相手に「でありますぅ〜」と有田しおんの物まねを有田しおんであるところのバーディー・シフォンが有田しおんのそっくりだんだと言い募って演じて見せつつ勧められたビールをぐいっと飲み干し酔っぱらって倒れて眠ってしまっていた間に人が1人、殺害されていたっていう事実を千川つとむもバーディーももっとどうして深く重たく受け止めないんだろうかって辺りが気になった「鉄腕バーディー DECODE」は、シャラマンが案外に俗物でお金をいっぱい出したんだからちゃんとやれとかキレてみせたりしてちょっぴり興ざめ。クリステラ・レビみたく超然としながら宇宙の1つや2つぶっつぶしてみせるくらいの敵を相手にヘラヘラとしながらも挑んでみせる展開って奴はもはや得られないのか、いやでもちびっ子が妙な動きをしているからそのあたりでガチンコのバトルもあるんじゃないかと期待はしておこう。

 手も足も出ないといったらやっぱりゼロスも魔物の端くれだけあってリナ・インバースといえども叶わないみたいで立ち向かっては張り飛ばされて捕まってしまったもののしっかり小動物ことポコタを逃がして今は獅子身中の虫になろうと護送のただ中。連れて行かれた先で起こるがジョゴンダの虐めかそれとも。ってかここまで進んでも結局のところ何をどうすればお話がミッションコンプリートとなるのか判然としない中でコメディばかりが続いているって印象で、大きな敵の登場にそれでも立ち向かっていくカタルシスに溢れた展開ってやつが今後あるのかどうかを悩み中。うっすらとしか覚えてないけど「スレイヤーズNEXT」のラストの方って割に感動、したんだよなあ。とりあえずリナの姉ちゃんの話題も出てきたんでいよいよ本筋へと立ち返ってポコタの秘密に光の剣の真贋に赤法師レゾの復活なんかをこれも期待しながら続きを待とう。でもやっぱり真夜中に見るアニメじゃないよなあ、完成度高いし、それなりに面白いし。

 どうするかって悩んだけれどもそこはアレだ、細部まで見て見込んで見えるものがそれほどあるとも考えられないビジュアルだし、何よりストーリーと展開の面白さでもって引っ張ってきた「コードギアス 反逆のルルーシュR2」だからわざわざお高いブルーレイディスク版を買うよりは最初のシリーズと同じサイズで陳列できるDVD版で十分と判断、そっちを購入していくことに決めて発売前日のショップで確保する。それともブルーレイだと学園祭の騒動の中に現れたヴィレッタ先生の超ハイレグがエチケットゾーンの処理済みな様子までくっきりと見えたりするのか、ややザラザラとしていたりするのか、しないよねえ。あるいはバニー姿のカレンの網タイツが微妙に股に食い込んでいたりする立体感って奴が分かるのか、分からないってば。だからDVDで十分と判断。いずれブルーレイのボックスが出たらそっちで買おう。

 ボックスでブルーレイならこれは仕方がないと「マクロスゼロ」のボックスを確保。というか25年が経つのに未だに購入したことがなかったマクロス関連のパッケージとして始めて買った「マクロスF」の第1巻がブルーレイディスクだった以上はマクロスは可能な限りブルーレイで買おうって気持ちになっているから仕方がないというよりはむしろ当然か。問題は「超時空要塞マクロス」の如きにリマスターしたところで元がピカソかポロックかって感じの絵ではブルーレイなど無意味ってことなんだけれど少なくとも最初にHDでもって制作されたらしー「マクロスゼロ」ならブルーレイでも十分にそのビジュアル的なポテンシャルを発揮してくれることだろー。んで「マクロスゼロ」ってどんな話? シェリルを育てたマオ・ノームがまだ子供だった頃の話か。「マクロスF」と絡んでいるところを確かめ既にしてマクロス関連の年表を頭に叩き込んで「マクロスF」を見ているベテランに追い付こう。見てなーるほどって感慨をベテランばかりに味わわれているのってやっぱ、癪に触るし。

 とか言いつつ読書も粛々と。水市恵さんの「時間商人 不老不死、売ります」(ガガガ文庫)は最初の1話を読んで何このこぬるい教訓も皮相さもないまとめ方はって放り出したくなったけれどもそこで落ち着いて第2話、第3話と読んでいくとなあるほど、1本のつながった物語なんだってことが見えてきて、1話のとりとめもない帰結にもそれなりに意味があったんだって分かって納得感が浮かぶ。10年の間だけ絶対の不老不死を与える代わりに、その先の10年分の寿命かあるいは法外なお金を受け取る「時間商人」が登場して、様々な悩みを抱える人たちに不老不死を提供していくってストーリー。だから当然にして不老不死って神の摂理に背くよーな力を得て人間たちが自滅してく様を見せ、欲望の怖さに旋律させる話なのかと思いきや、むしろ不老不死という一種のモラトリアムの中で足場を見つめ、心を入れ替えそして新しい自分として10年縮まっているかもしれない未来をしっかりと自分の足で歩き生きていくんだって前向きな話になっている。

 ライバルを相手にずっと2番手に甘んじ続けてきたプロ野球選手が、本塁打王を取るために体力が衰えない不老不死の身にしてくれと時間商人に頼む話があって、高校の野球部で活躍する少年2人が、クラスで仲の良くなった病弱な少年の未来をちょっぴりでも先へとつなぐために3人で時間商人を訪ねる話があって、超絶的な歌声と作曲家としての力を持って生まれた女性が、レコード会社の金でもって不老不死の10年を得た果てに気づく成長していく大切さを説いた話があって、そうした登場人物たちが、ちょっとずつ重なって来る最後の話があってといった感じに繋がっていくの面白さの中に、ズルをしてしまった疚しさよりも得られた貴重な時間の中で自分だったらどうするか、ってな可能性への思索を求められている気がして、読み終えてあれこれ考えさせられる。どうするかなあ。

 最終的に第1話のプロ野球選手がどんな寿命の尽き様を見せるのか分からなくって、だから掟破りは厳禁だって説かれる物語以上に曖昧な気持ちをちょっぴり引きずるけれど、そこまで選手として生きられた果てに格好の勝負を体感できる素晴らしさって奴を体現して見せてくれる辺りに、長く生きてつながりを広げることの意味って奴を見出すこともまあ出来そう。だから残酷な帰結は不必要ってことで。イラストはカズアキさんって人でとっても美麗。時間商人の助手だかのカナタちゃんが可愛い仕上がり。でも本編ではあんまり役には立ってないなあ。今後の展開で自己主張を始めるのかなあ。なので続きに期待。

 さらに仮名堂アレさんの「コピーフェイスとカウンターガール」(ガガガ文庫)も一読。天体観測部のやんちゃな女先輩が抜けて残る実質的な部員は自分ひとりかもって境遇におかれた少年のところに入ってきたのは卒業したはずの先輩。何をしているのかと問いただしたもののいつものような反応がない。誰なんだと聞けば先輩の妹で顔がそっくりなだけなんだけれど、当人はそれを認めたくないのか今ひとつ不機嫌。それでもどうにか仲良くなりかかっていた所に邪魔が入って少年は、親戚が待つ場所へと連れて行かれる。そこで見たものは……! って感じの導入部なんだけれども単に堅物な女の子が最初の不興を乗り越え少年と親密になっていくだけの話ではなくて、少年の一族にまつわるトンデモな現象が明かされて、そんな境遇からの開放を目指す少年の一族の無茶の最中で少年が少女との間にあるかもしれない愛の存在を確かめ合う展開へと進んでいく。

 印象を言うなら中盤以降のそっくりさんのオン・パレードって必要なのって気にもなって、例えばそれが顔のそっくりだと言われている先輩と後輩の関係にも実は関わっていて相対する現象で、それぞれの一族の思惑が暴走気味に爆裂して合体したところに起こる驚天動地のラストが待っているのかもって想像も浮かんだけれど、ちょっとそれとは違っていたみたい。ラスト近辺で爆裂な環境は後退して少年と少女の1対1の対決があってそして自分という存在を声高に訴えたい面々の心にキュンと来る愛の成就のエンディングが待っているから一安心。でもしかしやっぱりそっくりさんのオン・パレードは果たして必要だったのかって思いも募って悩みも深い。面白いから良いんだけど。1人ちょっぴり違った顔立ちの女性がどうやってそれを成し遂げているか、とか。でもまあラストのやや錯誤を招く展開には驚きもひとしおだったんで総じて満足。うん満足。


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