縮刷版2006年10月中旬号


【10月20日】 年間売上高の約半分がバンダイの製品だったりする市場から類推するに、おそらくはプラモデル市場の大半は「機動戦士ガンダム」のプラモデル、通称”ガンプラ”によって席巻されているって考えるのが妥当って所で、そんなガンプラが勢揃い下夏の「ガンプラEXPO」にワンサと人が押し掛け限定品を買おうと長蛇の列を作っても、何の不思議はない。あるいはやっぱり夏の「キャラホビ」に、「ガンダム」がテーマのフィギュアがズラリと並んでいるのを見たり買ったりしよーと早朝から、大行列が周囲を取り巻いていたとしても一切の疑問は浮かばない。

 逆にプラモデルメーカーやラジコンメーカーが集まって開く「プラモデル・ラジコンショー」の会場に、どれだけ新製品のガンプラが展示されていたとしても購入が不可能な状況になっている以上、早朝から人が並ぶってことはあり得ないし、業者日に身分を騙って忍び込もうとするファンも絶対に現れない。ってことで業者日の2日目を迎えた「幕張メッセ」の会場は、通路も閑散とする中をゆうゆうとプラモデルやらラジコンの新製品を眺めることが出来た。

 もっとも、市場がガンプラ一色になっているってことは、それだけ他のメーカーに弱体化の波が起こっているってことで会場も5年とか7年とかいった昔の、所狭しとブースが並んで新製品がワンサと出てくる状況から遠く離れて、それぞれが得意な分野を並べていたりちょっとした新機軸をお披露目するといった感じ。お金に余裕が出来た人向けの大きめのラジコンヘリとか鉄道模型とかってのが並ぶ一方で、最近になって新たな大人の嗜みとして浮上して来た二足歩行ロボットなんかが幾つかのブースで登場しては、鉄棒をしてみせたり並んでダンスを踊ってみせたりしていた。

 買えば10万円くらいするロボットだけど一昔前の「AIBO」に比べれば半値以下。それでそれなりの遊びを楽しめるから大人にとっては安い物。テレビ番組なんかで見てロボットに憧れいつかは自分でもって思った40代とか50代が、新たなホビーとして買っていじくる文化なんかが生まれて来そうな印象もあった。問題はだからそーした大人でも軽くプログラムできるよーなツールの必要性か。ハイテックだかが出していた、プログラム済みで出荷するロボットなんかは完全にそっち向けの需要を狙っている感じ。

不思議な形がぐるぐる回って電気を起こすのだ  一方で新しいジャンルの開拓では老舗のタミヤが出していた、ループウイングって会社が開発した特殊な形状の風力発電用の風車をミニチュア化した教育玩具がなかなかのインパクト。見てもコレがどーしてクルクルと回るのかがわかりにくい形なんだけど、聞くと夜店のかざぐるまなんかが持ってる形状に近くって風を受ける面責が広くって、少ない風でも回り始めるって特徴があるんだとか。実際にお台場なんかでぐるんぐるんと回っている巨大な風車は最初に電力を使いプロペラを回してあげないといけないんだけど、ループウイングのはそーした起動が不要。且つ風切り音もせず低騒音で効率よく発電を行える。

 都心部なんかの路地の風の通り道においておけば結構、使える電力なんかを発電させられるってことでこれから世間に向けて本格的に売りだそうとしていたそのループウイングに、いち早く目を付けたのがタミヤさん。これを使って風力発電を体験できる模型を作ればって考えそして作り出したのが展示してあった製品で、発電した電力はそのまま取り付けてあるミニカーにチャージされるよーになっていて、ミニカーを取り外して置くと電気の力でくるりくるりと動き出す。いやあ興味深い。面白いかって言われればそうでもないけど原理を学べて且つ楽しめる、教育玩具としてはなかなかのもの。値段も4000円以下なんで買って原理を研究っっしてみても面白いかも。本物の方もそろそろ出てきて話題になり始めるのかな。先取りしたい人にもオススメ。

 ゲームを遊んでいたらRPGの中の勇者姫がテレビの中から現れこんにちわ。勇者なので箪笥を開けて部屋の中を荒らし回り玄関にある壺を割り、そこにいた少年に仔細を尋ねてどこかに行こうとしていた所につぶやいた少年の名前が勇者にとっては運命の人だったらしく、そのまま家にいつかれ世話をやかれるよーになるってゆー、ゲームを楽しむ人間にとって願望がマックスまでかなう内容の小説が、果たして作者の願望の垂れ流しになってやしないか、それって気持ち悪くないかって心配もあったりしたけれど、七月隆文さんの「ラブゆう」(集英社スーパーダッシュ文庫、619円)については心配無用。最初に感じた不安が出現した勇者のあまりの可愛さと、勇者に言い寄られた少年を弟と慕ういとこの少女の健気さと、少年と同じ学校に通っているお嬢様でなぜか少年を言葉で邪険に扱う美少女の居丈高さに攪乱されながらも、そんな強烈なキャラクターたちに引っ張られ気が付くと話に引き込まれていたりする。

 RPG的なお約束を逆手に取ってはいてもそれだけじゃないし、ありがちなキャラクターが登場するけれどそれだけに寄りかかっている訳じゃない。それぞれのキャラたちが生きた人間として抱いている信念めいたものがちゃんと伝わって来くるから、ハーレムに放り込まれて肉まみれにされるよーな、幸福だけどどこか空虚な感じを味わうことはない。無理矢理な展開に唖然とさせられることもない。もっとも猫耳生徒会長の唐突な変貌ぶりだけはちょっぴり奇妙かな。でも彼女がいないと世界がどんな状況にあってそれをどうにかしないどどうにかなってしまうって切迫感が出ないから仕方がないか。とりあえず続きはありそーで、牽制しあっていた状況から3方で囲み腕を引っ張り合う状況へと移行した次巻、主人公の少年が受ける羨ましくも厳しい仕打ちに興味津々。白い三角形の布きれだけを着用した姿で跨られるって仕打ちに嫉妬炎々。

 ごめん舐めてた小原真史大監督の人気ぶりを。下北沢シネアートンでの上映も最終日ってことでのぞいた映画「カメラになった男 写真家中平卓馬」のレイトショーは開場前にすでに満席になっていて、中に入れそーもなかったんで、こいつは明日から始まる「東京国際映画祭」に関連したイベントの取材とかあって朝も速いんだから、とっとと帰って寝ろって神様のお達しなんだと心に思い込んでとっとと退散する。しかしなあ。中平卓馬さんなんて30年も前に活躍していた写真家の現在を、新鋭が撮影したドキュメンタリーに満席の来場者があるとは。それも2度目となる上映に。まあどんな展覧会を開いたってそれなりな来場者がある首都圏なだけに、伝説の写真家に興味を持つ人が劇場を埋め尽くすくらいいたって何の不思議もないのかも。しかしどんな映画だったんだろう。恋慕した未亡人の側にいたいと自分で組み立てたカメラの中に入り込んでお屋敷に居座るって猟期物でないことは確かなんだけど。まあ良いやそのうちDVDになったら買って見よう。あるいは別の機会にまた上映も行われるかな。


【10月19日】 ここんとこコンテンツ関係をプロデュースしている人たちに続けて話を聞く機会があって、気になっていた最近の著作権保護期間を日本でも50年から70年に延長しようって話についてどう思うかって聞いたら揃って「反対」だった。理由はひとつにはすでに50年も期間があって作り手とその子や孫の代くらいまでは恩恵に預かれるし、無茶な改変もされないままクオリティを維持され得るって考え方がある。

 あるいは元のアイディアだってそもそもが別アイディアから生まれたものであって、それは別のアイディアによって改変されていくことであらに新しい作品が生まれるものなのに、より長く保護されればそうした活動が出来なくなって、クリエイティブな世界が滞るんじゃないかって考え方もあった。いずれも一理。小説だとか音楽といった個人の才能が大きいウェートをしめるコンテンツの場合は、そこからもたらされる恩恵は作り出した個人に帰するべきものであって、何も生み出していない孫曾孫といった世代からさらにその下の世代が利益を得ようとするのは何とも奇妙だって考え方は成り立ち得る。

 悩ましいのは大勢の企業なり出資者がいて作り出される映像作品のようなものの保護期間で最近だと富士通総研が「機動戦士ガンダム」を題材に挙げつつ、著作権の期間を伸ばすことは初期の投資促進もつながりコンテンツとしての質的向上にもつながるんだって主張をしていたよーな記憶もあって、それもまあ一理あると思ったし、誕生から30年近い「ガンダム」に「ポンキッキ」に40年の「ジャイアントロボ」が、未だ掘り返されてはそれなりな、収益源として機能している現状を見ると一定期間の保護はなるほど必要かって気もしないでもない。70年化っってこと自体が「ミッキーマウス」の権利保護を目的に行われたって話もあるし。

 とはいえ悪戯な権利保護強化からは死蔵といった問題が起こったり、クリエイティブな活動の裾野の広がりといったものに影響を及ぼす可能性も皆無じゃなく、そのあたりをどう踏まえて無茶苦茶な使われ方を牽制しつつも一方では容認是認黙認といった態度をとりつつ、コンテンツの”現役”感を保ちファンの反発も買わず長く親しまれるものとして、育て上げ守り抜いていくってことが求められて来るんだろー。誰もが感動を覚えて全国民的な認知もあった「アンドロメダ編」ならいざしらず、続編として登場しつつも決して国民的な認知を得たとは言い難い「エターナル編」に登場して、単行本でも21巻なんて最新刊に掲載されてる言葉を持ち出しそれが全体のテーマなんだと主張しそれを、真似されたからと感じて怒り心頭になる漫画家の態度は、本当に剽窃があったとしても支持はされにくいよなあ。

 人よっては心からの喜びをもって迎え入れるんだろー佐藤明機さんの「楽園通信社綺談」(コスミック出版、952円)が遂に達成。個人的には1990年から95年あたりのオタクサブカルアニメゲーム事情にちょっと詳しくなくって「ホビージャパン」から刊行されていたらしー雑誌に掲載されてた佐藤さんの漫画についてはほとんど知らず、ほんとどが初見になってしまうんだけどそれでもこれだけの作品が、今の時代に読めるってことは大変に喜ばしいこと。世に出回っている最新の作品と比べても、面白さでもって充分に対抗できるだけの内容を持っているから復刊に沸く旧来からのファンだけじゃなく、何か面白そうな作品を探している人なら買って決して損はない。

 メカに美少女に不思議な生き物が、レトロな雰囲気の中で動き回るって部分は同じくコスミック出版から出た粟岳高弘さんの「鈴木式電磁気的国土拡張機」とも重なっている感じ。っていうか吾妻ひでおさんの時代から粟岳さんへと脈々と受け継がれて来ているテイストの間に立っているのが佐藤明機さんて言えるのかな。プラス80年代後半あたりに盛んになったかがみあきらさん的だったり藤原カムイさんだったり大野安之さんだったりな、ロリータ系SFコミックのテイストも含みつつ登場して来たって雰囲気もあったりして、そーゆーのが好きだった人間がひとめ見れば気に入ることは間違いない。事実大好きになったし。

 どっかの場所にあるゴチャゴチャと家々が積み上がった島の一角にある新聞社に勤めることになったライターの女の子が、猫の支局長やらカメラマンやら魚みたいな機械を操り物や人を運ぶ女の子たちと絡みむ中で奇妙な出来事が起こっていくってストーリー。途中から女の子の素性も明らかになり親戚めいた女の子の乱入もあったりしてSFっぽくファンタジーっぽい設定が浮かび上がってくる。それが最初っからあったものなのか、絵の雰囲気も少しづつ変わっていく中で生まれた設定なのかは分からないけど最後にグッと盛り上がって楽しませてくれるから気にしない。ともあれこんな作品があったと気づかせてくれた出版の人に感謝。きっと他にもすごい作品が僕の知らないうちに埋もれたまんまになっているんだろー。どんどんと掘り起こしてやって下さいな。ついでに大野安之さんも。

 そして完結を迎えた嬉野明彦さん「蘭堂家の人々 Goddess of the Earth」(集英社スーパーダッシュ文庫)はインド生まれのブラフマーニーたちの正体も露見し物語りの世界が級数的にスケールアップしながらも、そこは60億人の人類が営々と思い崇めて来た女神たちの魂を受け継ぐ少女たちだけあって1歩も引かず、翔太の胸当てとなり篭手となり武具となってはブラフマーニーたちを相手に激しい闘いを繰り広げる。

 地球を抱えたアテナの姿が描かれた表紙の絵はある意味で最終巻のストーリーとそこに込められたメッセージを忠実に現したものと言えそー。そしてたどり着いたクライマックスには、意外だけど嬉しいエッセンスも加わって感動のフィナーレへと向かう。3冊で1部を計3部。成長もあって挫折もあって結束もあってと素晴らしい”家族”の姿を見せてくれたシリーズに拍手。「フェアリーランド・クロニクル」に「アウゴエイデス」と傑作シリーズを重ねてきただけにスーパーダッシュ文庫での次の嬉野さんのシリーズにも是非に注目したいところ。どんな驚きの設定を持った物語を見せてくれるのかなあ。可愛い女の子たちがいっぱい出てくる話が良いなあ。


【10月18日】早朝に起きて「東京ビッグサイト」へと向かい「ライセンシング・アジア2006」を見物。「東京ドーム」の脇にあるホールで開かれていた時代から通っているからもう5回目か回目くらいになるんだろーか、その間に世の中ではコンテンツだとかプロパティだとかって言葉が平気で使われるようになり、キャラクタービジネスなんてものが21世紀の日本を代表する産業になるってことまで言われるよーになって、展示会にもそんな新しいビジネスの種を持ち寄り花咲かせたいって企業と、種を早めに拾って大きく育てたいって企業がワンサと押し掛けそれなりに賑わっていた。

 そんな中でもまずはスイスイって「ライセンシング・アジア」が「東京ビッグサイト」に移って最初くらいに見かけてそれ以来、何をやるんだろうって興味を持って見ていた会社のブースへとゴー。このイベントで見かけて不思議だ妙だと思っていたら、あれよあれよとゆー間に雑誌なんかで取り上げられて大人気となり、グッズまで登場した「タイツくん」に続けとばかりに新キャラクターのobetomoってのを展示していてこれが何とも不思議な雰囲気。サイケっぽくって欧州っぽいって対立するよーな雰囲気を併せ持ったイラストで、見れば絶対に何かを感じるインパクトを放ってた。

 スイスイではそれをベースに童話やらグッズやらゲームやらってのを展開していきたい考えらしく、絵本やらポストカードやら絵合わせゲームやらを作って展示していた。商品にもなっていないのに、それを自分たちで作るなんてコストも掛かって大変だろーとも思うけど、こーやって具体的な形に落とし込んで見せることによって、キャラクターを作った側のこうして欲しいって意欲が見せられるし、使う側もこうやれば良いんだって分かりやすい効果があるんだろー。もっとも他にいろいろと試し甲斐のありそーなキャラクターだけに、紋様みたいな部分を抜き出し布地にプリントしてテキスタイルとして使うなり、ノートの表紙なり包み紙なりに使うってこともありそー。さてもどんな使い方が出てくるのか。展開ともども楽しみ。

 そんな新しさで湯気の立つよーなキャラクターが競い合っているかとゆーとそれは一面で、一方では誕生から何十年も経つキャラクターを新しい装いにするなり、昔のまんまで落ち出すことによって以前からのファンの目をまずキュッと惹きつけつつ、新しい層の「これって何?」って関心を引っ張り出そうとする動きが出展している各社で目立った。例えばイングラム。「ピースマーク」なんかの権利を持っているんだって主張して名を馳せた会社だけど今回展示していたのは何と「アイ・ラブ・ニューヨーク」のロゴマーク。1977年くらいに誕生して、ニューヨークへの憧れを喚起させたデザインだけどそれが30年を経て今に蘇っては以前からのファンだけじゃなく、若い層に目新しさでアピールしよーとしてた。

 どちらかと言えば年輩者にとっては、陳腐化されたロゴって印象があって使うにしても今更感を醸し出す、一種のギャグ的なアイコンと化しているって感じがしないでもないけれど、敢えてこーして飾り見せつける以上は例えば若い層には斬新に映ったりしているのかも。だからこそこーして再び蘇ったてことなんだろー。あるいはハートマークを「ラブ」と読ませる元祖として、敬意の対象と成り得るんだって目論見もあったとか。見渡せば電通だって1960年代とか70年代の雰囲気を持ったレトロチックな「マクドナルド」のロゴを使った商品なんかを提案してたし、バンダイナムコゲームスもあの「パックマン」をキャラクター展開したいって意欲を見せていた。懐かしさと新しさでもって古いファンと新しいファンを総ざらいできるって、各社が思い始めた現れなんだろー。

 極めつけがガチャピンにムックの大展開。フジテレビKIDSって会社が主に子供向けのプロパティを預かり商品化していたんだけどそこがこれまでのノベルティ的な展開から大きく脚を踏み出して、様々な提案に対して商品化を検討し、進めて行くんだって異色を見せていた。別のブースではあの「ジャイアントロボ」の新しいアニメーションを手にして、永遠の名作が新しい装いでもって蘇るんだって感じに、古手若手の双方を惹きつけよーとしていたほど。「ニンテンドーDS」がゲーム卒業者やゲーム忌避者の支持を集めて大きく伸びたよーにキャラクターも、年齢や属性を超えてアピールするよーな中身を作り、多メディア展開の中で育て盛り上げ商品も売っていきたいって腹があるんだろー。

 デザインは「THE ビッグオー」っぽくってレトロ調で腕ぶっとっくって重量感がありそー。おまけにスタッフに「ビッグオー」の小中千昭さんがいたりするから、あのレトロにスタイリッシュなテイストが入って来るのかもと興味は津々。キャラクターの感じも横山光輝テイストを微妙に残しながらも今風で、これなら若いアニメのファンにだって受け入れられそう。問題はやっぱりあの今川節炸裂な熱血さと、銀鈴の見目麗しさでもって今に至る傑作と讃えられる「地球が静止する日」の評判を超えられるかってところか。あっちが6年がかりて溜めに溜めつつ評判を高めていったのなら、こっちは連続シリーズでもって一気呵成に攻めて来てくれるものだと期待、して良いのかな。

 えっと誰でしたっけジェフユナイテッド市原・千葉のアマル・オシム監督が今年で退任に追い込まれるんで日本にい続けるためにはナビスコカップで是が非でも勝たなきゃいけなくって、その頑張りを見極めようと国立霞ヶ丘競技場が満杯になるとかってトバしていた御仁は。何のことはない「Jリーグ1部(J1)千葉のアマル・オシム監督は来季も指揮を執る」ってことはオフィシャルな場でチームから公表されてどっかのタブロイドの記事は根も葉もないイマジネーションの産物だったことがまる分かり。それともそう書いたからこそチームは表向き、アマル監督を引き留めるって言わざるを得なかったとでも言うのかな。言ったりして。あるいは息子の揺れる立場に父親が手を回したとか何とかってことをいつもの「関係者」という靴屋の小人を呼び出し語らせるとか。楽しみだ。


【10月17日】 録画から見た「ギャラクシーエンジェるーん」は土曜日の朝とかだったらダラダラと見て心をほぐせそうなユルいギャグなんだけど月曜を控えた午前2時に目をこらして見ると肩すかしを食らいそうな微妙さが何とゆーか悩ましいとゆーか。同じことを例えば「ぱにぽにだっしゅ」がやったら合間にテンポ良く橘玲ちゃんのキャッチーなポーズとか艦長や部下たち宇宙人のコントが挟み込まれてそして本編に戻れるリズムが出るんだろーけれど、「ギャラクシーエンジェるーん」はまだあそこまでの境地には達していない感じ。とはいて「ぱにぽに」だって1話2話あたりのテンポと最終話あたりのテンポとでは明らかに違っていたから、あるいは「ギャラクシーエンジェるーん」も見る人の心地よさと期待にシンクロしたテンポや中身を持って来るよーになるのかも。それを期待して頑張って見続けよう、録画で。

 ライトノベルの新刊読みに忙殺されてて読む時間がなさそうだと買い置きしていた三浦しをんさんの「風が強く吹いている」(新潮社、1800円)を丸の内にある丸善でようやく購入。メーンの平台のはすでに3刷りになっていたけど脇の賞関係が集められた棚にはまだ初版が残っていたんでそっちを取ってレジを抜ける。なるほど表紙は山口晃さんかあ。同じボイルドエッグズがプロデュースしている三浦佑之さんの「日本古代文学入門」(幻冬舎、1700円)は表紙が会田誠さんといった具合に日本を代表する現代美術のアーティストが起用されていたりする所にお二人の、出版界における位なんてものを感じてみたりする今日この頃。あと山口さん会田さんを選ぶセンスの良い編集者がお二人にはついているんだなあってことも。

 んで「風が強く吹いている」。またの名を「ハコネの空に笑え」。あるいは「ハコネのロマンティック…わはは」。それで分かる人は分かるよーに印象的には川原泉さんのスポーツコメディ漫画を文章にしたらこんな感じになるんじゃないかって気にさせられる所が大。まず冒頭の箱根駅伝に大学最後の年をかけたいと思いつつも長距離はんて走るメンバーはゼロの弱小陸上部員が銭湯帰りに万引きをして駆けていく男を見かけて追いかけるって辺りがカーラ的。若くてギラギラとした表情にパンをくわえてたったか駆けていく少年のその横を、ぬぼっとしつつも目は死んでいない兄ちゃんが自転車を漕ぎながら追いかけていく絵が目に浮かぶ。

 でもって高校界期待といわれながらも暴力沙汰でドロップアウトしていたパン食い少年を引き入れた陸上青年が、同じアパートに暮らす漫画好きだったり司法試験に合格してたり外国からの国費留学生だったり陸上経験はあっても煙草まみれで走れなくなっていたり双子だったりクイズ王だったり田舎の神童だったりした8人を、引っ張り込んで10人のメンバーを揃えてさあ箱根駅伝に出場するぞと意気込んだものの陸上の経験なんてほとんどないかあっても過去のことって面々を、叱咤し宥め持てはやしてはそれなりのランナーへと育て上げていくプロセスに豆の木学園なり、メイプル球団の像が重なり落ちこぼれたちが頑張る姿への共感が沸く。

 かくしてどうにか出場権を得てのぞむ箱根駅伝の最中にそれぞれの思いが描かれアクシデントを乗り越える姿が描かれ1つ、また1つと高められる感動は1話また1話とキャラクターの描写を積み重ねていき感動のクライマックスを作ろうとする連載漫画的な盛り上がり。そして迎えるエンディングの何かを犠牲にしてでもつかむ栄光の座ってところに「銀のロマンティック…わはは」の描いた悲しくて面白くて美しくて眩しいエンディングが重なり心からの感動を呼ぶ。挫折もあるけど鬱にはならずに明るく楽しく乗り越えたどり着く幸福の地平。その前向きさまでもが川原泉さんの好んで描く熱血とは対極にありながらも冗談ではなく真剣に、スポーツに打ち込み勝利をつかむ漫画の世界を思い出させる。

 才能のある選手たちが集まりそれなりの訓練を経て臨んでも出場すらおぼつかない場合だってある箱根駅伝にまるで実績のない、それこそ走った経験すらない選手たちが1年も待たずにそれなりの記録を出せるようになって出場権を勝ち取るなんて豆の木学園以上の強運がそのチームにあったか、あるいはメイプル球団のよーに癖はあってもそれなりの力を持った人たちが偶然に集まっていたとしか思えない。真っ当に考えればあり得ない話なんだけどそれがあり得てなおかつ面白く、そして感動を招く漫画の世界が文字になったと思えばこーゆーのもアリだしむしろ嬉しい楽しい喜ばしい。ラストに味わえる幸福感はとにかく最高。読んで悔いゼロの大傑作。箱根駅伝が心から見たくなる効果も存分。来年の1月3日はこの本を手に大手町の読売新聞近くを訪れる人とか、出そうだなあ。三浦さんなんかゲストに呼ばれてたりして。


【10月16日】 職場に転がっていた「新文化」を読んでいたら気になる記事が。何でも駅のキオスクがどんどんとコンビニ化されている影響で、一般紙の駅への配置がどんどんと減らされていて、それに日本新聞協会が文句を言ったとかどうとか。キオスクのコンビニ化っていうかキオスクで「suika」を使えるようにした関係で、レジが導入されて精算が遅くなり、いらつかされることが最近多くなったとは感じていたけど、コンビニみたいに囲いの着けられた売店の導入が、一般紙の配置源に繋がっているとはちょっと気が付かなかった。つまりは駅で一般紙なんか買うことがなかったって裏返しだけど。

 とはいえ駅で買ってもらう人もいたりする訳で配置無しは、新聞社にとっては結構な死活問題。駅でタワー状に刺さった新聞から見える見出しが、そのまま新聞のカラーを示す宣伝媒体になっているってこともあある。配置がなければそーした効果は期待できない。一般紙では唯一、日本経済新聞だけが並べられていたって記事には書いてあって、なるほど実際問題駅で1番変われる”一般紙”は日経だってこともあるけれど、並べておかれていればたまには経済系のスクープがあった時に買ってもらえていた一般紙も、置かれていなければ最初っから除外されてしまうから、やっぱり置いてもらうにこしたことはない。

 以前だったらここで新聞様に異論を唱えれば後に尾を引くとビジネス的な効率を引っ込め付き合いに回った売店だろうけど、親会社のJR東日本も私鉄もどこも株式が公開されている中で、売れないものを取り扱って売れるものを置けず結果として儲ける機会を逸したと株主代表訴訟をくらってはたまらないから、言いなりになってばかりもいられない。だったら売れそうなものを回せと至極当然の要求をして来ることもあるだろー。そこで売れるようなレイアウトを作れば紙価は低下するし、かといって引いてはただでさえ宅配率も下がっている中で更に販売場所を減らしてしまうという苦渋が待っている。日経のように経済に特化する訳にもスポーツ新聞のよーにスポーツに専念もできず、売る場所もどんどんと減っている中で一体どこに向かうか新聞業界。他人事じゃあないけどでもちょっと興味深い状況です。

 もっともスポーツ新聞だって東京六大学野球だなんって関東はローカルの、それも別に大学最強を決める訳でもない大会の秋季リーグで早大が優勝しただなんて記事を堂々の1面に掲載している「サンケイスポーツ」を始め、旧態依然としたバリュー判断の元でしか記事が作れない状況だったりするから困ったもの。これで斎藤投手が投げて勝ったってんなら話は別だけど斎藤が入団する前の話だから始末におえない。それとも早大のOBはこーゆー新聞を見てニコニコとして買うんだろーか。在野が何とかで中退が域だとか言ってる割には結束の固いことで。それともメディアにいるOBだけが高い尊厳を持ちたがっているの?

 そんなメジャー系スポーツ紙に比べると「東京スポーツ」の方がナンボかマシだなあと思った10月17日付け。あのロナウジーニョ選手への真っ当なインタビューを前後編に分けて載せる大盤振る舞いもさることながら、中面でサッカーに関する記事で代理人の田路雅朗さんが平山相太選手の移籍に際して起こったゴタゴタと当事者ではないけれど代理業務を知る立場から解説したコラムが載っているし、2010年のワールドカップに向けた期待の選手としてフランスのヨアン・グルキュフ選手を割に大きく取り上げている。これってすっげえ早くない? ACミランに入って活躍は見せ始めているけどリーグではカカの控えに未だ甘んじている若手選手。年齢だって20歳と日本じゃ五輪代表的なポジションなんだけどそれをちゃんと抑えて「リトルジダン」と紹介してる。普通のスポーツ紙じゃあ依然メッシにフェルナンド・トーレスにメッシって所なのに。こいつは読んで損なさそう。次は誰が出てくるんだろう。次はいつ掲載なんだろう。

 欧州でハットトリックを達成した中村俊輔選手の取り上げ方も派手ではなく自慢げでもなく謙虚なもの。代表に呼ばないオシム監督へのあてこすりもなくって、読んで中村選手のことを嫌いにならない。その脇には浦和レッズのアレックス選手や鈴木啓太選手といった代表入りしている面子が、代表に選ばれながら決して活躍しているとは見られていないジェフユナイテッド市原・千葉の選手に対する非難が強まる中で自分たちにだって非はあるんだってことを言ってる記事で好感。なるほど後で浦和に非難が回ってこないようにする予防線だって推測も記事にはあるけれど、その語り口も断定口調ではなくそいうかもしれないといった程度。むしろ代表に入った面々の結束の高さが伝わってくる。まあ時には奇妙な記事も乗るから1日だけでは判断はできないけれど、バランス感覚で言うなら今、サッカー報道は「東スポ」が1番真っ当なのかも。それってどうよ。どうなのよ。

   普通に生まれて普通に育った頭だったらジェフユナイテッド市原・千葉と鹿島アントラーズが戦う「ナビスコカップ」のチケットが、妙に売れて完売状態になっている理由を二ジェフ千葉に大勢いる日本代表選手を見たいって人が結構いるからなんだろうって、考え及ぶんだろーけれど流石は「MATAKUBOKA!(=また久保か!)」こと「夕刊フジ」の久保武司編集員。普通の裏側にある”真実”とやらを巡り漁って記事かするタブロイドの記者だけあってナビスコ完売の理由をこう解き明かす。「しかし、今年は昨年よりもチケットが売れている。これは何よりもアマル監督の『力量』に注目が集まっているからにほからない」。

 はあ? は〜〜〜あ? だって「夕刊フジ」的にはアマルってダメ監督なんでしょ。親の七光りなんでしょ。受け継いでからろくすっぽ勝てず順位を落としてサポーターからも総スカンを食いかけている監督なんでしょ。へたくそなジェフ千葉の選手たちばかりで固められた日本代表の不人気ぶりの一翼を担っている人でしょ。そんな人を見に行こうって思う人が国立競技場を埋め尽くすくらいにいるとはとても思えないのに「夕刊フジ」はアマル目当てでチケットが売れていると書く。さっぱり意味が分からない。普通の頭では理解できない。

 それとも何だろう、記事にあるよーに日本代表のヘッドコーチとしての入閣が取りざたされているアマルの「力量」を確認しに、日本サッカー協会の面々が押し掛けるとでも言いたいんだろーか。なるほどだとしたら凄い組織だJFA。1人のヘッドコーチの「力量」を計るために数万人ものスタッフを送り込めるんだから。どうせだったらその動員力を「札幌ドーム」でのサウジアラビア戦でも発揮すればいいのに。

 つかまあ、アマル・オシム監督でジェフユナイテッド市原・千葉が出場するナビスコのチケットが、売れているって事実を前に何かを書こうとしてもこれまでの「千葉は不人気」で「アマルは親の七光り」的なロジックを覆す訳にはいかず仕方なく、協会による「アマル査定」を絡めた記事にしか出来ないんだろーなー。自縄自縛で自業自得。けどそう思わず心から「ナビスコ完売=アマル査定」と信じている所が「MATAKUBOKA」たるゆえんなんだろーけれど。

 ちなみに記事には「それまで3年連続で決勝戦に進出してきた浦和が負けてしまったことで、チケット販売は期待薄だったが、スポンサー筋が”動員”をかけたこともあって、何とか万人にこぎ着けた」ってあるけれど、今年ほどじゃなくても結構、順調にチケットがはけたて記憶があるよなあ。当時の日記を掘り返してみたら、「イープラス」なんてアクセス集中で繋がらずSSとか取れなかったて書いてあった。半々に黄色と青で埋まった当日のスタンドの様子から振り返っても、その場しのぎのスポンサー筋の”動員”とやらが大量にあったとは思えない。

 あるいは古河とJR東日本が社員を招いていたかもしれず、それを”動員”とでも呼んでいるって可能性もあるけれど、せいぜいが数百ってところだろー。そんなのは日々のリーグ戦でだってやっている。ことさらにスポンサー筋の”動員”をあおり立てる程のことじゃない。そうじゃない人が大勢来たからこその国立完売。イビチャ・オシムって監督のバリューが強まった中での大舞台だったから、見たいってファンが争ってチケットを買い求めたんじゃなかろーか。なのに今年との際を際だたせようするあまり、去年を不人気だったと書かざる終えないからややこしくなる。素直じゃないけど素直じゃないからこその「MATAKUBOKA」って訳で、読者は怒るよりもそのアクロバティックな筆さばきを、ひとつの芸術として認め嗤うのが正しい対応の仕方って奴なのかも。


【10月15日】 そりゃ”萌え”ますって幼児体型の女の子にM字開脚されつつ「このクソ野郎」とか罵倒されれば誰だって、って違う? それって”萌え”じゃない? 僕素人だからよく分からないけどともあれ”初萌え”とかって惹句も鮮やかに登場の日日日さん「ギロチンマシン中村奈々子 義務教育編」(徳間デュアル文庫)は目ざめるとそこには世話好きな女の子が登場しては、マルチよろしく耳にカバーがついてコードが垂れ下がりそして機械っぽい眼差しでもってここはロボットの学校で人間なんて2秒で殺されちゃうって言ってきてもう大変。なぜって主人公の”僕”は人間で「ターミネーター」よろしく人間たちを遅い始めたロボット相手に闘いを挑んでいて、そんな中で”僕”はロボットを率いる”チェシャ・キャット”なるリーダーを暗殺するために訓練され送り込まれた存在だったから。

 それが何のはずみか送り込まれる途中で乗っていた飛行機が事故に遭遇。気が付くと浜辺に打ち上げられていてそれをロボ娘の加藤千紗ちゃんに助けられたらしー。けど人間だとバレると2秒で殺されちゃうとあって慌てて学園に生徒としての登録に向かう途中、何やら戦闘めいたことが行われている場面に行き当たる。学校の姿勢に反旗を翻す<生徒会>なる組織が暴れていてそれを現れた手に巨大なナイフとビーム光線の発射装置を取り付けた、人(じゃなくってロボット)読んで「ギロチンマシン中村奈々子」が排除しようとする所だった。

 戦慄の出会いをくぐり抜けて学園に無事に入り込んだ僕だったけど、そこに仮面を外して普通の少女の表情を見せる中村奈々子が現れ僕につきまとう。どうやら自分が憧れた教師の中村奈々子に僕がそっくりだったらしく以来、あれやこれやと関わりが始まる。一方僕はとえいば目的の”チェシャ・キャット”暗殺のために学園を散策する毎日。近寄るためにはギロチンマシン中村奈々子のよーな立場になれば良いと聞かされ暴れん坊の番長に挑むも全身これ破壊兵器とゆー番長相手に粉砕されて敢えなく退散。そんな最中に「保健室」にいる<生徒会長>なら助けになると聞かされ乗り込んでいった僕が見たものこそ、M字開脚をし肩に載せた鳥の口を借りて悪口雑言をまき散らす幼女だった。いやあ萌えるます。

 どーやら「中村奈々子」ってのは1つの記号みたいになっててそれはロボットを生み出しロボットを狩り立てる人間の知性の象徴みたいになっているんだけど正体は不明。だいたいが人類はロボットに追いつめられて瀕死の状況にある訳で、そんな状況を中村奈々子がどうして作り出そうとしたのかって辺りも含めて隠された謎はまだまだ沢山ありそー。そんな世界の構造とその中で中村奈々子と同じ顔を持った”僕”の正体、そして学園の未来に人類の将来といったものがこれからの「学級崩壊編」で明らかにされるんだろー。ロボットとは? 人間とは? って問いもあってSF風味。蹂躙されるロボット権に対する慟哭といった泣けるエンディングも用意されてて感動と興味をかき立てられます。続きはいつ出るのかなあ。

ベルディの選手たちより年長者な穂希姉御。ふがいない弟に成り代わって頑張ってます。  久々に西が丘で女子サッカー。「mocなでしこリーグ」も今節でレギュラーリーグ戦がとりあえず終えて、次からはディビジョン上位にいるチームどうしでの優勝決定リーグ戦が始まる予定。すでに日テレ・ベレーザが1位通過を決定済みで、あとは負け知らずでリーグを終えるかって所に注目が集まっていたんだけど、開幕前の「なでしこスーパーカップ」でベレーザを破っている「TASAKIペルーレ」が、独走許すまじって気迫で試合開始から激しく当たってベレーザを自由にさせない。それでも中央後尾から酒井與惠選手が散らし澤穂希選手が守備に攻撃に要となり、中地舞選手もサイドを駆け上がってはペルーレのゴール前へと攻め上がり、幾度と無くチャンスを作り出す。

 酒井選手が持つととにかくボールが落ち着き、そこから左右へと攻める起点になるんだけ、どそこから先がいつもと違っていた模様。ゴール前に送り込んでもそこにペルーレのディフェンスが詰めて、トップの永里優季選手を自由にさせず大野忍選手にも撃たせない。ミドルも届かず無得点が続く一方でペルーレは少ないチャンスとなったゴール前の混戦から、ちょんと浮かしたボールが飛びだしていたゴールキーパーの小野寺志保選手の背後に飛んでゴールイン。不運というかミスというか、ベレーザが押しながらも1点のビハインドを背負って前半を折り返す。

 後半にはいるとペルーレの攻撃が早くなって、ベレーザも容易に攻め上がれなくなる。とりわけベレーザの前線へのチェックの速さにカウンターの素早さは特筆もの。ベレーザにほとんど危険な場面を作らせないまま、1点を追加しペルーレが逃げ切り体制に入る。そんな中でも冷静かつ強靱な澤選手が中盤から抜けだし、相手ディフェンダーに絡まれながらも振り切ってはループ気味にペルーレゴールへと放り込んでまず1点。そこからさらに追加点を狙うものの、ペルーレも強靱で後半途中から入ったベレーザの荒川恵理子選手に前を向かせず、大野選手も永里選手も抑えきって1点リードのまま試合終了。今シーズはじめてベレーザに土を付けた。最後まで強かったよペルーレは。

 22日から上位4チームによるプレーオフに入ってまずは湯郷Belleと西が丘で対戦の予定。勝って浦和レッドダイヤモンズレディースにそしてペルーレとの対戦にも勝ち完全優勝を決めたいところだけど、最後の最後でペルーレに喫した敗戦が心理的なマイナスとなってベレーザの脚を縛り、湯郷はともかく浦和にペルーレの代表メンバーも何人かいる強豪を相手に、取りこぼす可能性だって皆無じゃない。とりわけペルーレの強力なディフェンスは破るのは容易ではなく、守られた果てにミスから奪われ逃げ切られるパターンを重ねれば、折角のレギュラーリーグ首位通過も意味がなくなってしまうかも。敗戦を糧に気を入れ直して「mocなでしこリーグ」の初年度を優勝で飾り、1億円のティアラをその頭に抱いて欲しいもの。その場合だとやっぱり抱くのはキャプテンの酒井選手? プレゼンターはよっすぃー? 行かねば11月4日午後1時西が丘(だよね?)。

 「パンプキン・シザース」を見た。怒り狂ってるアリス少尉が可愛い。つか情報部所属な癖にランデル・オーランドの前歴とか調べないんだろーか。着けると性格が変わってひたすら前身のゼロ距離射撃をできるよーになるランタンが欲しい。押し出しが強くなれそーだ。気が付いたけど脇はリク=ハイゼンベルクとカイ=シュバイツァーなんだなあ。クウ=エアハルトは療養中か。無事だったら何を演じたんだろー、マーキュリー号? それから「BLACK LAGOON」の第2期はヘンゼルvs張の銃撃戦がアニメならではの動きも加わり迫力たっぷり。決着の付く次週は粉砕されるヘンゼルの脚に色仕掛けを見せるグレーテルのおぞましさが存分に堪能できるでしょー。その次は日本編?


【10月14日】 ハルヒの原画集だけでは送料がサービスにならないんで併せていつか買おうと思っていた京都アニメーションの自主企画アニメ「MUNTO」とその続編も買ってあったんだけど暑さにかまけて見ていなかったのをようやく視聴。時間にして50分もあって3800円の格安ぶりに、あるいは中身もそれなりかって抱いた懸念が軽く吹き飛ぶ画のクオリティにまず驚く。

 天界では何やらエネルギーが枯渇しかかっていて中でもエネルギーを食うと目されている魔導師たちの住む浮島が他の天界人から狙われ地上に落とされようとしていた。迫る危機に魔導の王ムントは地上へと身を投じ、そこに暮らす1人の少女に助けを求める。少女の名はユメミ。幼い頃から天空に島が見える特質を持っていたけれどそれが人とは違うと思い込んでいて突如現れたムントの頼みにも惑い躊躇っていた。いよいよ迫る魔導国の危機に天界に残った魔神が1人立ち向かうものの果たせず最後の支えも折られあとは地上へと落下するばかりに。天界のみならず地上にも甚大な被害の及ぶ危機にユメミはどうするのか?

 地上でユメミたちと中の良かった3人組のうちで、1番脳天気な涼芽(すずめ)が不良と目されていた少年の沈み固まってでいた心を融かし、2人で1つのことを成し遂げるエピソードを一方の本筋に置きつつ、力があると言われても関係ないと躊躇うユメミの姿を見せることによって、何かを成すために一歩を踏み出す勇気、一線を越える覚悟の大切さを描き出している。浮き輪を使い必至になって川を泳ぐ涼芽の可愛さと健気さを見ればどんな不良だって偏屈だって心、揺り動かされるよなあ。

 いきなり魔導国が攻められいかにも悪人面な奴らが孤軍奮闘している描写に、いったいどんなシチュエーションなのかがつかめず戸惑ったけれど、見ているうちにちゃんと説明もされるから心配は無用。それから異国の危機に立ち上がりこれを救う異世界ファンタジーによくある設定を、異国に乗り込むことなく描いてみせるシナリオ的な力業も他に類がなくって勉強になる。それでいてちゃんと納得できて感動できる筋立てになっているところもが素晴らしい。見せなくっても語り描かなくっても知らしめる。日本や欧州なんかの短編映画みたいな印象が何とはなしに漂っているって感じがした。尺もそれだけあるし。

 声優さんが馴れてない人たちなのかちょい微妙。喋りも訥々としている部分があったけれど気にしなければ気にならない。丁寧に作られ芯も通った秀作。だけど売れそうもないよなあ。それでも地道に売り続けるところが素晴らしい。続編も買ってあるんで明日にでも見よう。ちなみに収録の宣伝映像で「京アニプロジェクト」には他にも何本か動いているってあったけど(企画は100あって具体化に向けて動いているが6つとか)、現在までに出てきたのは「MUNTO」とその続編だけ。これだけの物を見せられ且つ「ハルヒ」「フルメタ」の制作力を見せられると、オリジナルへの期待も高まるんだけど制作に入っているのかなあ。お金や人材の問題で動いていないのかなあ。これでファンドとかやったら今なら幾らだって集まりそーなのに。原作や出演者のバリューでしか金融も商社も判断出来ないんだろーなー。そりゃアニメに限った話じゃないか。

 何という文才だ。たった3行。なのに強烈な輝きと芳香を放っては、読む人の目を閉じさせ鼻腔を塞がせ顔をそむけさせて背を向けさせたくらなる。こんな文筆家など他にいない。古今東西に名を残した画家であっても、キャンバスに置いた筆先1つであらゆる民衆の感動を集めるなど不可能だ。世界の名花と讃えられるソプラノ歌手でも、くしゃみひとつで世界を唸らせることなどできやしない。なのに彼はやってしまう。やっては全世界の耳目を集めそこに刻まれた言葉の背後にある思想の奥深さに、唸らせ激情させては悶絶させる。

 そしてこう叫ばれる。「MATAKUBOKA!(=また久保か!)」。まさに鬼才。さすがは「夕刊フジ」が全銀河に誇る久保武司編集委員ならではの文章だ。居並ぶものは現世にはなし。重なる偉績は5・7・5の短い言葉で世界を魅了した松尾芭蕉くらいなもの。たとえは悪いが微量の粒を吸っただけでガンを引き起こすプルトニウムにも似た、激しくも凄まじい影響力がこの3行にはある。不沈と仰がれたタイタニックを大西洋に沈めた氷山のように、水面下にある巨大な質量が伺える。もしも今日、ノーベル文学賞が開かれたらそこに掲げられた受賞者は彼になったはずだ。ピューリッツァー賞の選考が明日だったら間違いないしにこの記事が世界を震撼させた3行として文句無しに選ばれたはずだ。

 「弱り目にたたり目とはまさにこのこと。プロ野球・日本ハムの25年ぶりリーグVに沸く、札幌ドームの11月の主役が、何と瀕死(ひんし)のサッカー日本代表である」。何と複雑なロジック。そして常人には理解し得ないバランスを持った言葉であることか。「弱り目にたたり目」と前で振って、続けるのが「プロ野球・日本ハムの25年ぶりリーグVに沸く、札幌ドームの11月の主役が、何と瀕死(ひんし)のサッカー日本代表である」という文章。前後を考えれば「たたり目」は至極自然に「サッカー日本代表」だと分かる。ならば「弱り目」は当然にして「札幌ドーム」となるのだが、その札幌ドームを飾る言葉が「日本ハムの25年ぶりリーグVに沸く」。つまりはとても賑わってウハウハだって状況を、この偉大なる編集員は閑古鳥が鳴いている状況を指すかのように「弱り目」と例える。

 そてとも何だろう、北海道日本ハムファイターズのリーグVに沸いている状況は、「札幌ドーム」にとっては「弱り目」すなわち拙い状況なのだろうか。かつて時折試合を行っては、常にどの球場も超満員にふくれあがらせた「読売ジャイアンツ」に遠く及ばない動員力だと言いたいのだろうか。それくらいの動員を集めなければプロ野球のチーム、日本野球界の名手と名乗るには相応しくないとでも言いたいのだろうか。まさに深慮遠謀含蓄多実。噛めば噛むほどに味のしみ出す文章からは、巨人を盟主に視聴率30%を常にあげ、メディアも常にトップにプロ野球の話題を繰り出していた時代への、果てしなき敬意と惜しみない憧憬が伺える。

 続く「札幌ドームの11月の主役が、何と瀕死のサッカー日本代表である」もまた、実に奥深さに溢れた言葉だ。11月と言えば11日に地元「コンサドーレ札幌」が「愛媛FC」をドームに迎えてJ2のリーグ戦を開催するし、23日には超絶的な人気を誇った「東京ヴェルディ1969」をやっぱりドームに迎えてJ2のリーグ戦を開催する。1カ月で2回も試合を行う地元が誇るサッカーチームを差し置いて、日本代表を「主役」と位置づけるこの筆が示すのは、決してコンサドーレ札幌への蔑視の眼差しでもJリーグ軽視の姿勢でもなく、さらにはJリーグという存在が頭からスッポリと抜け落ちていたという無知でもない。

 ひたすらにコンサドーレ札幌のJ1復帰を願いつつ、ここに至って昇格にほど遠い体制しか組めないチームへの、無言を通しての叱咤激励なのだ。名前ばかりのスター選手でふがいない試合を繰り返しては、”日本代表ブランド”を地に貶め現在の苦境を招いているジーコ前監督への遠回しの批判なのだ。

 見事にパ・リーグの優勝を果たした北海道日本ハムファイターズに比して、未だJ1に這い上げれないでいるコンサドーレ札幌への遠回しの叱咤激励。日本代表を束ねる日本サッカー協会への問わず語りによる異論反論。さらには日ハムを独走させてしまい結果として全国区的な野球人気を沈下させつつある日本のプロ野球界への苦言提言を、わずかに3行の文章で、複雑怪奇にして常人には理解しがたいロジックも交えてやってのける文豪にしてジャーナリスト。素晴らしい。素晴らしすぎるぞ久保武司編集委員。4万キロの彼方から応援するぞ声を枯らして。

 どうやらこの後にも文章が続くようだけど、読めばその神々しさに目も眩み3年は布団から出られなくなるくらいの衝撃を受けてしまうだろーから、悔しいけれど「夕刊フジ」の本紙は買わずにここは過ごそう。もっとも読まずともこの3行だけで凄さが分かるから良いんだけど。さすがは”MATAKUBOKA”。来年あたりには”MOTTAINAI”を超えて世界の共通語になっているかもなあ。しかしそれにしてもこの常人には理解し得ない「弱り目にたたり目」の前フリをよくも通したなあデスクも整理も校閲も。もしかしてチームで常人には理解不能な思考力を持っているのかなあ。それとも読めない部分でただでさえ不人気の日本代表が、日ハムのリーグVで沸いた札幌ドームに乗り込んで試合しなくちゃいけない状況を「弱り目にたたり目」って言っているのかなあ。だとしたら全文とちゃんと読まきゃ意味不明な前フリをそれだけ載せて恥じないウェブ側の怠惰だよなあ。いずれにしても揃って常人には理解不能ってことで。

 鹿島灘へと遠征。って別に船は使わないで電車を乗り継ぎはるばる来たぜ「鹿島サッカースタジアム」。オールスターで行ったのが最初だったけど2度目に見てもやっぱり美しいスタジアム。収容人数も多いのにピッチが近くて見やすい点では「埼玉スタジアム2002」とタメを張るかも。こーゆーのが都心部に1つ、欲しいよなあ、出来たら「東京ヴェルディ1969」なんかが早速ホームスタジアムとして乗り込んで来そう。だけど今のヴェルディが1万人だって集められないから大きなスタジアムはかえって邪魔か。

足下が弱いキーパーに低めの弾道で狙うとは。しゃがむ勇人もキューティ  とはいえJのお手本とされた鹿島アントラーズだって地元で土曜日の昼間からって絶好の試合に集まった観客は1万5000人程度。ゴール裏こそ真っ赤に染まっても2階部分はガラガラなのは何だろー、相手がジェフユナイテッド市原・千葉では集客も期待できないってことなのか、それとも地元におけるプライオリティが徐々に下がってきているのか。ここんところ優勝から遠ざかっているのもひとつの要因になっているのかなあ。

 その意味では是が非でも欲しいナビスコカップの優勝なんだろーけれど、前哨戦になったジェフ千葉との試合は阿部勇樹キャプテンのコーナーキックをニアから叩き込み左前からのフリーキックを叩き込みゴール前での混戦を押し込んで達成したハットトリックに、巻誠一郎選手が善戦でねばりそれをサイドに流してそこから入ったクロスに飛び込んだ山岸智選手の1点を合わせた4点で千葉が快勝。これを見るとナビスコも千葉が2年連続で頂って期待もグングンと高まってくる。

 だってストヤノフ選手も結城耕造選手もいないんだよ。本職のディフェンスが水本裕貴選手だけであとは中島浩司選手に阿部キャプテンが入りつつ山岸選手も巻選手も危険とあらば戻りディフェンスをする超守備的にして超攻撃的な布陣。それで相手を零点に抑えこちらは4点も奪ってしまうんだから本職が入りマリオ・ハース選手も完調し巻選手も得点感覚を取り戻したナビスコに期待しない訳にはいかない。相手だって柳沢敦選手が干された所から気を入れ直して来れば恐いんだけどでも、今の千葉ならきっとやってくれると信じたい。信じてる。信じよう。秋の国立に黄色い歓声が響く瞬間を、ってそれだと女性ファンばかりが詰めかけている印象だなあ。女性ファンも実際に増えているからそれで良いのか。


【10月13日】 つらつらと録画済みのアニメーションを見直す日々。「銀色のオリンシス」は平井久司さんのキャラクターに「機動戦士ガンダムSEED」とか「蒼穹のファフナー」なんかとの共通性も感じつつまあこのキャラならそれなりに見られるな、オープニングでもスカートをきゅっと上げる場面で見えそうで見えなかったりして楽しいなと思いつつ始まった本編になんじゃこりゃあ。メカが。目新しい。例えるならば「戦闘メカザブングル」とか「タイムボカン」しりーずというか「今週のびっくりどっきりメカ」というか。

 斬新さとは対極にある分かりやすさというか親しみやすさというか、ともかくも土曜日夕方6時半くらいから小学生の少年少女が見て楽しむアニメに出てくるよーなデザインぶりで、それを深夜アニメに導入してしまった製作者たちの英断にはただただ頭が下がる。つか何で東映アニメーションが深夜向けアニメなんて作っているんだ? 老舗にして大手。ハイエンドなハイティーンから大人のアニメファン向け作品を作るプロダクションとは違い王道を行く子供向けのアニメを作って、堂々と夕方とか休日の朝とかに流せる実績と実力を持ったスタジオじゃないのか東映アニメは。

 それが真夜中の誰も見ない時間帯に、ビデオをどれだけ売ってナンボな作品を作っているこの状況。いったい何があったのかは事情はまるで分からないけど、折角のオリジナルでそれもハイティーンから大人に向けて自在に作れる場所を得たなら、キャラクターだけじゃなくストーリーでもメカでももっと斬新さって奴を打ち出して欲しかったよなあ。いやある意味で斬新だけど、びっくりどっきりメカたちは。荒野に浮かぶ街を守ってシビリアン、じゃないハンターたちがメカを操り戦う様とそれから世界の仕組みが明らかになっていく過程を楽しみつつ眺めて行こう。

 前編と後編に別れて連続刊行となった榊一郎さん描く「神曲奏界ポリフォニカ」の「スパーティング・クリムゾン」と「ストラグル・クリムゾン」(GA文庫)をまとめ読み。大迫純一さんが担当する「黒ポリ」だと飄然としながらも憂いとそれから底知れない力を帯びた表情だったりするマナガ警部補だけど、榊一郎さんの「赤ポリ」シリーズでイラストを担当している神無月昇さんが描くとちょっぴり可愛さを帯びた巨漢になってしまうのは仕方のないところか。寡黙だけど凛とした少女のマチャ・マティア警部補なんて「赤ポリ」だとコーティより幼く儚げな美少女だもんなあ。

 それでも遂に邂逅したコーティカルとマナガの上級精霊2人が、これからの「黒ポリ」「赤ポリ」それぞれの展開の中で交流しつつ、高殿円さんが描く「白ポリ」でこれから繰り広げられるだろーコーティやらマナガやらミノタウロスといった精霊たちの饗宴の過去を、見せてくれればさらに興味も広がるところ。「神曲奏界ポリフォニカ」の世界はリンクしつつ広がりつつ、かつてない楽しい物語世界を作り出しそう。何やらアニメ化も決まったみたいだけどいったいどの絵柄でどんな物語が繰り広げられるのかな。「赤」「黒」「白」のそれぞれのイラストでそれぞれのメーンキャラが描かれるハイブリッドなアニメになったらちょい、楽しいかも。

 そんな感じにヒットシリーズも揃い始めたGA文庫から新鋭も登場。沖垣淳さんって人の「かむなぎ 不死に神代の花の咲く」(ソフトバンククリエイティブ、600円)は鏡に勾玉に剣といった古代日本から伝わる三種の神器の力を守り育み伝えつつ、日本を魔より守って生きた一族に起こる事件を描いた和風ファンタジー。とはいってもそれぞれが持つ力で日本を脅かす魔物を退治してく”退魔師物”とは違って、三種の神器の家系が担う力を狙った敵による攻撃をかわし守り戦うってところで目新しさがあって飽きずに読める。

 かつて黄泉の国への道が開いてしまって封印した際に穢れのような力を一身に負うことになった八坂の勾玉の力を伝える家系の少女・千尋を狙って何者かの力が迫っていた。千尋を守りたくても八坂家では母親が身ごもり力を千尋に避けない状況に。ならばと草薙の剣の力を伝える草薙家へと預けられることになる。その家には当主の父親がいるけれど事情で諸国を漫遊中で後を妻とそして次期当主となる息子の真幸が守っていた。預かった千尋は自分の秘めた力が他人を危険にする可能性も鑑み、草薙家のとくに真幸に最初はなかなか懐かなかったけど、真っ直ぐに守ってあげたいと思うようになった真幸の心情を汲んで彼を兄と慕うようになった矢先。妖怪変化ではなくヤクザのような組織が草薙の家を急襲しては千尋をさらって連れていく。

 これはまずいと後を追おうとしても難しそうだった真幸たちが頼みにしたのは八咫の鏡の力を伝える一族の女2人。八多いすずに八多みすずという名の双子ではなく姉妹ですらないのに生年月日も顔立ちもそっくりな2人がヘリコプターで現れ真幸の尻をひっぱたいて千尋奪還へと向かわせる。立ちふさがるは陰謀をめぐらした老人とそれを助けた能力者。黄泉の扉が大口を開けて世界を混乱に陥れようとしたその時、怒りを頂点に達しさせた真幸のパワーが爆発して千尋を救い出す。本心から出た親切が最後に大きくものを言う場面の美しさがキラリと光る。

 国を護るべき存在の半ば内輪もめ的な事件を描いてアクションを求める人には物足りなさを感じさせるかもしれないけれど、日本古来のガジェットを組み込んだ手腕や、九十九神から慕われ得体の知れない妖異からも気を配られる千尋という存在の、世界を左右する危うさを持ちながらも心根の優しい様を描いたキャラクターの造形力はなかなかのもの。そんな千尋をめぐる人たちの存在感もなかなかに強く、千尋や国のためを思い取る振る舞いにも合理性があって読んでいて絵空事だからと読み飛ばせない濃密さ、奥深さを感じさせてくれる。とりあえず道が選ばれてしまってこことで終わりって言われても納得はできるけど、風伯って謎めいた存在のこれからとか、みすずにいすずのハチャメチャぶりをまだまだ楽しみたいから是非に、続きを書いてくださいな。


【10月12日】 トラップが下手。ドリブルが下手。パスが下手。クロスが下手でシュートも下手とあっては得点なんて挙げられるはずもないじゃんサッカー日本代表。たぶん普通にプレーしていれば飛んできたボールをピタリを足下におさめそれから吸い付くようなドリブルでもって前へと運びそこからドンピシャのクロスを送り受けた方もそれを落ち着いてゴールマウスにたたき込めるんだろー。

 けど何故か試合が始まるとトラップしたボールは大きく1メートルとか転がり相手に奪われる。ドリブルも1メートルとかけり出しては相手に渡してしまう。クロスは必ず相手ディフェンダーの頭に向かうしコーナーキックだってやっぱり相手ディフェンダーを狙っているかのよーなボールが飛ぶ。どうしてなんだろう? ガーナとの対戦の時も思ったけれどガーナの選手のことごとくがピタリと足下に治めるのに日本代表はまるで石に当てたかのよーに弾いてそれを回収に走ってた。インドとの試合はさらに酷くて弾いたボールが相手に渡る場面が多々。逆にインド選手の方がしっかり止めてたよーにすら見えた。

 経験の無さなのかもしれないし焦りなのかもしれない。これがある程度レギュラーも確約されて安心してプレーできる場ならボールを慌てて前に運ぼうとしてミスをすることもないんだろーけれど、あまりにレギュラーだと決めつけ過ぎると今度は気持ちがユルんで走らなくなる。その中間地点をどうやって探り出してなおかつその地点を大切な試合に持ってくるのかって所がオシム監督の腕の見せ所になって来そう。ホント視ていて苛々するんだよトラップが大きすぎて相手に奪われる場面って。

 もしそれがピタリと収まっていれば周囲を走る選手にパスがわたって大きなチャンスになるってゆーのに。パスがちゃんと届いていれば決定的なチャンスを作れたのに。そんなシーンが浮かぶだけになおのことミスが苛々する。こればっかりややっぱり場数を踏まないと直らないのかなあ。それとももっと下の世代の頃から叩き込まれないと身に付かない所作なのかなあ。とりあえず次の北海道だかでのサウジアラビア戦でどんなメンバーが集められ、どんなプレーをして見せてくれるのか。とりわけミスはどこまで減らされているのかに注目。途中にピッチに現れた犬はふがいない巻選手山岸選手を知ったに来たジェフィかユニティのどっちかだな。ご苦労さま。

 なおもエンターブレインから創刊のB’s−LOG文庫を読む夜。ビーンズ文庫で活躍中らしい志麻友紀さん「神父と悪魔」は優秀なエクソシストなんだけど性格に難のある神父が、地方の村の教会に左遷されるとそこには1人の悪魔がいてあれやこれやとつきまとう。男の格好だったりすることもあるけど人前に出る時は女の子の格好でメイド服。でもって訪れる子供たちにクッキーを焼いて振る舞うという悪魔らしからぬ行動を見せる。

 そんな悪魔のメイド服のスカートをぺろりとめくって平気な神父の凶悪さ。その神父には天使の守護もついているんだけど悪魔的な振る舞いをする神父に手を焼き、今また強力な悪魔の登場にあたふたとしている所に村を吸血鬼の魔手が遅う。悪魔は優しさも見せるけどでも悪魔らしいところも見せて神父を誘惑し籠絡しようとして、けれどもそんな籠絡にのらない神父にはどうやら出生の秘密がありそうで、って感じに仕込まれた伏線が後々あれこれ効いてきそう。続刊が楽しみ。悪魔の変身したメイドが可愛いんで次は表紙に。

 ボーイズラブな分野ではなかなかに知られた人らしい剛しいらさん「金の王子と金の姫」はボーイズラブな要素も皆無なら尖った部分もほとんどない、4冊では1番少女小説っぽさを感じさせるストーリー。隣国の美形ながらも陰険な王子に攻め滅ぼされた国から双子の兄と妹の王子と王女が脱出するも、王子は谷底に落ちて行方不明。ひとり逃げる王女が手にしたご神体から現れたのはしばらく眠っていたという神様で、王女の体に寄生し王女を王子のような姿に変え力も与えて別の隣国のゴート王を支える騎士にさせる。

 見かけは男みたいでも中身は女の子としてゴート王に恋慕してもそこはかなわなず、一方で格好良さと頭の良さから王の許嫁に男の騎士として好かれる羽目に。かといって女に戻ればゴート王から求愛されかねないという難しい立場であたふたとする様がなかなかに興味深い。ウラルが滅ぼされた時の電撃戦にしたっていきなり王宮まで攻め込まれる事態のあり得なさに、国というものの成り立ちを得た方が良いんじゃないかって気もしないでもなかったけれど、そこは若い読者に向けたファンタジーってことで不問。とりあえずは王子に成り代わって祖国奪還を目指す王女の奮闘と、それにまつわる錯綜した恋模様に注目しながら続きを楽しんで行こう。

 ふらふらと見ていた京都アニメーションのサイトで「涼宮ハルヒの憂鬱名場面線画集・凸巻」なんてものが出るって知って注文してからだいたい1カ月くらい? 送料合わせのために一緒に注文して先に届いたオリジナルアニメ「MUNTO」とその続編は実はまだ見てなかったんだけど、画集の方はさっさと開封して中身を確認。開けば本編で見た場面の原画がずらずらっと並んでいて眼前に迫るバニー姿のハルヒとか、そんなハルヒに半裸にされかかっているみくるちゃんとかが大口に八重歯を生やして呵々大笑する鶴屋さんのめがっさ可愛い顔とかを存分に堪能できる、モノクロだけど。

 コピーして塗ればカラーにも出来るしスキャンしてペイントショップで色を入れていけばアニメと同じ場面だって再現出来そうだけどそれよりも1本1本がちゃんと人間の手で描かれて、それでいて微塵の狂いも迷いもない線を間近に堪能できることの方がすばらしい。20年若ければトレーシングペーパーを重ねて上からなぞって絵の勉強をしてたかも。でもそれだと静止画は描けても動画は描けないんだよなあ。幸いにして収録分にはオープニングの一部も入っていてハルヒがギュッと身を縮こまらせてからギュンと迫ってくる場面が連続で入っているからその2枚をトレースした上で自分で中割してみるってのも面白いかも。今からやっても上達できるかなあ。本編が7話の「ミステリックサイン」までってことは例のバンドシーンとかも入った「凹巻」ってのも出るのかなあ。出たら買いだな。


【10月11日】 御影瑛路さんと頭がごっちゃになっててこの人もっと作風違ってたんじゃなかったっけと名前を見返し、御堂彰彦さんだってことに気づいてもう1度読み返してそれでもこれまでとはちょっと違うと感じた「付喪堂骨董店―”不思議”取り扱います」(電撃文庫)は、「アンティーク」なる呪具を扱う骨董屋でアルバイトをする少年と少女の物語。骨董店の主の女性はのべつまくなし海外に出かけては、不思議な力を持ったアンティークを買い付けて来るんだけどそのほんとどが偽物という体たらく。とはいえたまに本物が混じっていたりして、それがあれやこれやと問題を起こしたり、逆に助けになったりする。

 1話目は別の骨董屋からアンティークを買った”僕”が、そのアンティークの持つ”偶然”を起こす能力を使って自分の思いと違ってしまった事態を操作しようとする話。一方で街では事故に遭遇する人が続出し、巻き込まれた人たちが「付喪堂骨董店」が売りつけた謎の石が原因じゃないかと殴り込んで来たからたまらない。違うと言ってアルバイトをしていた少年は、訪ねてきた高校生たちを街を出たけれど、そこに”偶然”に思える災難が次々と降りかかっては骨董店の立場を悪くする。

 そんな物語の中から「アンティーク」と呼ばれる呪具が持つ凄さと怖さが浮かび上がるってゆーのが骨子の短編が4本。ほかには人を直す力があったはずなのに、いつしか人を不治の病に追い込む力を出すよーになった仏像の謎に迫る話とか、書いたことが忘れられなくなるノートをめぐる話とかを収録してる。面白かったのは最後の1編で、その日に稼いだ金はその日のうちに誰かのために使ってしまわないと翌日に残らなくなってしまうって財布をめぐるストーリー。アルバイトをして金をもらっても自分のものにならないんだったら、一緒にアルバイトをする少女にプレゼントをすれば良いとばかりに少年は、黒いファッションを貴重にしていた少女にピンクのワンピースや白い帽子や赤い眼鏡を買ってプレゼントする。

 嫌がらせ? とは思いつつもあるいは自分の為を思ってと気を取り直す少女の気持ちが、ぐっと少年に傾いた時に発せられる残酷な言葉。うーんこれは辛いかも。つか言う方も言う方って感じだけど、普段のツンとすました感じを知っている少年にはまさか少女にそんな可愛らしい所があるなんて、思いも寄らなかったんだろー。でもちょっとだけ知ってたっぽいから小憎らしい。それでももう1つの救いがちゃんと用意されているからとりあえずは安心。人は見かけによらないってことをキモに命じるべきか。最初のエピソードでは何やら黒井ミサっぽい所もあった少女だけど、続くエピソードでは病に倒れ少年のプレゼントにどぎまぎしたりと割に普通の人間っぽさ。そーゆーキャラなのかそれとも別に秘密があるのか。確かめる意味でも続編を希望。

 をを柳下毅一郎さんが「東京スポーツ」に新連載。ちょっと前にも林由美香さんの本がまとまったってことでインタビューに答えていたけれど、それが縁だったのかその時にはすでに縁が出来ていたからなのか、いよいよもって持てる多才ぶりを発揮しては多用な知識を東スポ読者に披瀝してくれそー。もちろんテーマはニューウェーブSF、ではなくって猟奇事件の犯人たち。「スーパー殺人鬼列伝」と題された隔週連載の栄えある第1回目に取り上げられたナンバーワン殺人鬼は当然にしてエド・ゲインで殺したのはたったの2人でしかないけれど、掘り起こしてきた死体から頭蓋骨の杯を作ったりおっぱい付きの本皮衣装を着たりと猟期なエピソードでは群を抜く。「羊たちの沈黙」だの「サイコ」といった映画の題材にもなったって映画評論家ならではの蘊蓄も傾けつつ、そんな希代の殺人鬼を紹介してくれている。東スポ読者なら楽しめそうだしそうでなくても勉強になりそうな連載の次は一体誰? 再来週も買って読もう。

 レベルファイブって福岡にある中堅どころのゲームソフト開発会社が新製品発表会を開くってんで青山スパイラルホールへ。いくら「ドラゴンクエスト8」とか「ローグギャラクシー」ってそれなりに知られたソフトを作っていたって所詮は一介のディベロッパー。会見を開くんだったらソニー・コンピュータエンタテインメントなりスクウェア・エニックスといったパブリッシャーが主催するべきところを敢えて自ら開くってことでいったい何事かと会場に入り着席していると来るわ来るわの重鎮たち。エンターブレインの浜村弘一社長が来れば任天堂から専務営業本部長も出席。そして何とあの堀井雄二さんまで来ているとあってこれは相当にデカい会見かもって期待したら何のことはない「ニンテンドーDS」向けの半分ミステリーで半分脳トレのゲームを来年2月に自分たちがディベロッパーになって発売しますってだけだった。

 けどその程度の中身にしては集まったメンバーが半端じゃない。招けば訪れる壁の華ではなくって本当にゲームを知る人たちが来賓としてやって来ては着席し、あるいは壇上で挨拶するってことを鑑みればレベルファイブって会社が秘めているポテンシャルの高さも伺えるってもの。そこが自らパブリッシャーにもなって新作ソフトを出す意味ってものがゲーム業界において相当に重要なことなのかもしれないって感じさせる。実際に出てくるソフトはあの「頭の体操」の多湖輝さんが監修を務めて新作のクイズも入ってて、そして声には大泉洋さんと堀北真希さんが起用されているって具合になかなかの大作感が漂っている。

 残念にも大泉さん堀北さんが来場していなかったけど齢80歳にもなろーかとゆー多湖さんが来場して挨拶をしてみせたって辺り、それなりな内容を持ったソフトが出来上がる予感があったってことなんだろー。ちょっと期待。つか大いに期待。だけどでもいくらレベルファイブだからって新作のそれも地味なミステリー調脳トレゲームをミリオンにすることは難しいかもなあ。そこはそれ、任天堂のバックアップも受ければあるいは伸びて来る可能性も。そんな余裕を任天堂が見せられれば「Wii」にもソフト会社が集まり繁栄も約束されそー。スクウェア・エニックスに離れられて停滞した一時の反省も含めて有力ソフト会社の囲い込みから再びの繁栄を任天堂が築けるかって辺りも含めて気になる1本。その行方は果たして。

 そんな会場にも来ていた浜村さんの会社からボーイズラブではなくってコバルトっぽい雰囲気を持ったライトノベルのレーベルが登場。その名も「B’s−LOG文庫」って意味はあんまり分からないながらも何とはなしに傾向は感じられるレーベルから初登場した4冊のうちからまずは名も頻繁に聞く流星香さんの「封縛師 あなたのお悩み、封じます」(エンターブレイン、460円)を読んだらこれが面白かった。田舎から出てきたロックミュージシャン志望の少年がどういう訳か陰陽師だか退魔師だかって感じの妖怪変化を封印する仕事をしている美貌の青年・武庫川右京の所にやっかいになることになって始まる物語。誰からも憎まれ虐められることを快感にしている節のある右京の意味不明な行動とそして強大な力が炸裂する中で、田舎からやって来た桃枝綱紀の役割も明らかになってかくして新たな退魔師ストーリーが幕を開ける。キャラは立ってるし展開もなかなか。巧くて読ませて楽しませる。イラストも美麗。売れるかも。

 そんな1冊に続いて読んだ日向真幸来さんってあんまり聞かない人の「春に来る鬼」(エンターブレイン、560円)がまた傑作。何せ舞台が名古屋に三河だ。傑作でないはずがないのである。奥三河にある村に伝わる天狗とお多福の交合を踊る祭りのお多福役に村の高校生が選ばれた。一昨年に同じ祭りでお多福を務めた大学生がそのまま行方不明になった事件があって、それを鬼がさらったせいだと信じ込む高校生の女の子はお多福役を躊躇するが、村に骨董を引き取りにやって来ていた骨董見店の見習いがお宝目当てに天狗を務めることになり、その先輩で言葉遣いはオネエ言葉で見目も麗しいけれど実は男という日本舞踊の家本の孫息子にも背中を押されて女子高生は役を務めることにする。

 とはいえ昔から見えないものが見える性質の女子高生には不安もいっぱい。そして訪れた祭りの中で真相は暴かれ痛ましい事実が浮かび上がって来る。途中に伝承のいわれとなった戦国時代のエピソードが挟まれている理由が今ひとつ分からないでもないけれど、本編を一気に読んではい解決ってなる前に、人の怨みがもたらす恐怖なり山と里という近いようで絶対的に遠い関係なりを指摘する効果があってその上で、改めて現代に視点を帰して因習に縛られることの勿体なさって奴を描きつつ、古来よりの習俗も大切なところがあるんだってことを思い知らせてくれる。名古屋で奥三河でなくてもなかなかに傑作。

 サブキャラなんだけど棒術が得意な大学助手の美女とか素敵で次はもっと出して欲しいって切望。文化人類学ならぬ人類文化学部のある北嶺大学ってつまりは南山大学か。ほかにも日泰寺とかおおあんまきの藤田屋とか、名古屋に三河の人間だったらピンと来る描写が多々。読めば三河の山深さと尾張のおだやかさが思い出されて還りたくなります。28日の豊田スタジアムでの名古屋グランパスエイト対ジェフユナイテッド市原・千葉戦、見に行こうかなあ。ほか2冊も同時刊行の「B’s−LOG文庫」の読んだ2冊がともに真っ当だった高率ぶりにあるいはこのレーベル、結構良いところまで行きそうって気もして来たけれど果たして。同じグループに属する角川ビーンズ文庫と両脇からコバルト文庫を挟み撃ちって寸法か。コバルトよどう切り返す? そこら辺にも興味津々。


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