縮刷版2006年10月上旬号


【10月10日】 HDDに溜まって放りっぱなしのアニメを見返す日々。「パンプキン・シザース」はウドの大木に見えて実は対戦車肉弾兵器の兄ちゃんが戦争復興に燃えるお嬢様軍人にほだされ化学兵器部隊に挑むってストーリー。軍部でもアンチャッチャブルな化学兵器部隊がたった1話で壊滅したよーに見えたけど、それともほうぼうに配置されてて暗躍しているのかなあ。原作読んでないからちょっと不明。それともその他の秘密部隊をAは「アンチ・タンク・トゥルーパー」だからB以下を順不同で叩きつぶしていく展開になるとか。対戦車肉弾兵器な部隊も主人公の兄ちゃん以外にいるんだろうけど登場する予定? 原作を読めば手っ取り早いんだけどそれだと楽しみも半減するんで我慢してアニメを見続けよう。エンディングは犬の歌か。あまがみ。あれはくすぐったい。

 「夜明け前より瑠璃色な」を見る。月のお姫様が民家に下宿するという、お約束きわまりない展開だけど声が生天目仁美さんで凛としているようで艶っぽくて聞いてて全身に甘い空気がまとわりつくようで心地よい。絵は崩れず動きもまあまあ。謎な美少女登場で波乱の予感。来週からは同じ学校に通いながらドタバタありロマンスありアクションありエロなしの展開になるんだろー。それはそれで楽しみだけど、でもやっぱり見ないかな、録画だけはしておいて。あと録画して見ていないのは「すもももももも」と「コードギアス」と「ヤマトナデシコ七変化」と「乙女はお姉さまに恋してる」と「天保異聞 妖奇士」と……だめだあり過ぎ。きっと見ないままDVDに焼いてお蔵入りかなあ。「ネギまにだっしゅ」は見た。メソウサが出ていなかったけど艦長が喋っていたからまた見よう。「銀色のオリンシス」はどうしようかなあ。

 なるほどねえ。しょこたん呼ばれ崇め奉られているオタクの女神だけあって中川翔子さん、「芸能界アニメ通が集結!徹底調査!! 好きなアニメランキング100」でも他とは違うところを見せてくれていやがるぜ。選んだのは1位から順に「美少女戦士セーラームーン」「クリーミーマミ」「ドラゴンボール」「ふたりはプリキュア」「新世紀エヴァンゲリオン」「ゲゲゲの鬼太郎」「ガンバの冒険」「ひみつのアッコちゃん」「ポケットモンスター」「おぼっちゃまくん」。85年生まれのしょこたんだけあって92年から97年まで放映された「セーラームーン」が世代的にドンピシャだってことは分かるけど、2位に83年から84年と未だ生まれる前に放映された「魔法の天使クリィミーマミ」を選んでいるところが渋いというか一体いつごろどこで見たんだというか。再放送? そんなにされていたっけ? 分からないけどきっとDVDで勉強したんだろう。

 それを言うなら「ドラゴンボール」だって1歳からやってた番組だし、「ゲゲゲの鬼太郎」「ひみつのアッコちゃん」はリメイクはあったけど面白くって話題になったのは旧作の方で当然ながら生まれていない時代のもの。それを挙げて来るとは目利きぶりも凄まじい。「ガンバの冒険」は当然ながら生まれる前の作品で再放送だってここんとこお目に掛かってないけどやっぱり入っている。「宝島」とか「エースをねらえ」とか「未来少年コナン」あたりを選ばないところがナナメ上を入っているというか、それ以前にいったいどこで見たのか知りたいっていうか。それとも何だろう、ケーブルテレビのアニメ専門チャンネルがあってのべつまくなしに流れるこれら旧作を、存分に見て育ったんだろうか。だとしても、同時代的に放映されてた山ほどの新番組を上回って、これらを選ぶところはやっぱり渋いとしか言いようがない。

 2004年ってことは既に19歳になってから放映されてた「ふたりはプリキュア」を一所懸命見ていて好きな作品のベストテンに挙げ、それから10歳にして「新世紀エヴァンゲリオン」を見てあの内容あの展開あのエンディングに感動をしてベストテンに挙げるしょこたん。同世代の人では考えも及ばないリストを挙げるしょこたん。そんなしょこたんにもうアニメファンはくらくらって感じ? いやいやそこはオタクの王女。こんなもんじゃない裏ベストテンがきっとあってそこにはhideが主題歌を唄った「AWOL」とか主題歌がドラゴンアッシュだった「DTエイトロン」とか、仲間由紀恵さんが声優をやってた「HAUNTEDじゃんくしょん」とかが入っているんだ。でもアーティスト仲間の過去に配慮して敢えて外したんだ。見せてくれ、本気って奴を。

 絶大な人気を地元で誇る浦和レッドダイヤモンズのホームで6万人以上入るスタジアムに4万8952人と5万人未満しか動員できず、2万人も入らないホームスタジアムの「フクダ電子アリーナ」をここんとこ満杯にしたことがほとんどないジェフユナイテッド市原・千葉を片方に、遠く清水エスパルスが相手だったとはいえ土曜日の午後ってゆー絶好の時間に開かれながらも総勢で国立競技場に2万800人しか集まらなかった鹿島アントラーズがもう片方に来る試合だよ。それがどーして即日完売となってしまうのかが分からないけどそこはそれ、「ナビスコカップ」ってゆータイトルのかかった決勝戦だからってことなんだろーか、それともそんな価値を見込んでゲッター共が跋扈した結果なんだろーか。後者の可能性が大、かなあ。すでに出始めているし。

 とりあえず自由席は抑えられて試合が見られなくなるってことはないからひと安心。あとはこれからワラワラと出てくるだろーオークションでの価格が、試合も迫って売れ残りダンピングされて来たらそっちを買って乗り換えるってのもアリかも。いやいや応援なんてする気のさらさら皆無な転売野郎には沈んでもらってポッカリと指定席に空席を遺しながらもアウェイゴール裏で応援するのが臨海魂って奴だ。当日は並び陣取って精一杯に声を枯らして叫ぼう「アマールオシーム、ジェフユーナイテッド「うばがいひでたか、じぇふゆーないてっど」と。

 ソニー・マガジンズの文庫「ヴィレッジブックス」のうちライトな感覚のものを集めたっぽいその名もどっかで聞いたことのある「edge(エッジ)」って付いたシリーズから出た辻友貴+熊谷純って連名の著者の「C−R−O−S−S 聖討伐隊レイ&サキ」(ソニー・マガジンズ、680円)を読む。読まなかったことにする。でも読んでしまったのだよ。困ったなあ。何やら吸血鬼だかバンパイアだかと戦うコンビが出ているんだけどそのコンビが表題のレイ&サキに加えてアカ&キイロってのもいて目一杯。且つ文体が独特というか若々しいというかすんなりと頭に入るにはやや壁もあって今ひとつ乗り切れない。ストーリーはといえば暴走気味の化け物を倒して一件落着と割にありがち。イラストは……表紙は綺麗なんだけど挿し絵はなかなかにチャレンジブル。これが漫画も含めてメディアミックス展開されている実状を思うと世の中も実に多様性に富んだものだと思うけど、ぬきんでて生き残るにはあと1味の特色が、キャラなり物語になりないとキツいんじゃなかろーか。漫画版はどんな感じなのかなあ。読んでみようかなあ。恐いなあ。


【10月9日】 1人少なく疲れも出てきた後半に、有意義なサイドチェンジを後ろからの追い越しを頻繁に行って怒濤の攻めを見せながらも、クロスバーに当てる不運もあって追いつけなかったあの試合を目の当たりにした上で、なおも「今月7日の浦和戦で0−2で完敗」と書けるセンスで記者をやっていられるスポーツ新聞だからイビチャ・オシム監督への的はずれな非難などまるで気にしてないけれど、そんなスポーツ新聞でも同じ時期に一斉に「ジェフユナイテッド市原・千葉の祖母井秀隆GM退任」を流すってことはそれなりに根拠のある事実と認めるしかなさそー。

 問題は先に「ナビスコカップ」の決勝を控えリーグ戦だって何試合も残しているこの時期、でもって欧州はシーズンが明けてまだ半分も経っていない時期にどーして欧州チームのGM就任なんて情報が出回るのか、ってことで欧州側が諦めていなかったにしろあっちだって敢えて再びオファーを出すんだとしたら、シーズンも深まり結果も見えて次期への新体制を考えなくちゃいけなくなった頃合いを見計らってのことになるはず。そう考えるとシーズンも終了間際にあって次期の体制を考え始めている日本側から出た話って考えることが妥当だし、出所としてもこの時期に情報を出してチームを動揺させるリスクを気にせず、早々に祖母井さんの退任をアピールしたい勢力って想像するのが筋として正しそう。

 それが誰ってことになると、チームの事情に通じてないから分からないけど、ひとつ言えることは、若手の育成からチームの強化から一身に背負い10年をかけてそれなりの強さと全国的な知名度を持つチームにジェフ千葉を育て上げた人を、さあこれからビッグクラブ追随だって大切な時期に退任させてしまう損失は計り知れないって点。そんな愚策を平気で行えてしまう経営体制に比べれば、独裁だスポンサー偏重だと言われながらも、日本サッカー協会を潤沢な資金を持った組織へと成長させ、全国的な強化・育成の仕組みを作り上げた川淵三郎キャプテンの施策の方が遙かにましってもんだ。とはいえこの時期に出たってことは残るシーズンの間にアピールする機会もまだあるってことで1つひとつのリーグ戦と、そしてナビスコ決勝って大舞台で選手ともどもアピールすることで、ひっくり返らないまでも時計の針を戻すような愚を冒さないで済むように、出来れば幸いなんだけど、でもなあ、それで言うことを聞く経営陣ならこんな愚策は最初っから冒していないよなあ。

 これをサクセスと言わずして何を言う。DVDの売上枚数にCDの売上枚数とそれから、インターネット動画サイトを通じて流れた出演したアニメに出演した歌番組を見た人の数を合わせれば、延べで軽く数億を突破するだろー世界のアイドルにして世紀の歌姫、平野綾さんを相手に対談するだけに止まらず、平野さんから「そんなそんな……ありがとうございます……。今もう……めちゃくちゃ緊張してます」とまで言われて崇められている西島大介さんはもはや人生の、というより全人類における成功者。そのポジションを羨ましがる人のおそらくは全銀河に数兆人はいるだろうことは確実だ。

 かつて大森望さんを相手に「どうすればサクセスできるのか」を根ほり葉ほり聞いていたこともあったけど、近く同じメンバーで行われるのは「『恋におちた悪魔 世界の終わりの魔法使い 2』刊行記念 大森望vs西島大介☆サクセスの秘密 最終章 そして伝説へ…」ってタイトルで、大森さんと並列というか対立項として西島さんを立てて「サクセスの秘密」を話し合うって内容。すなわち今や西島さんは、古今の文学賞をメッタ切っては半期に1度の国民的文学賞の際にいなくてはならない立場にある大森さんと並び立ち、若手人気声優からも宇宙を動かす力を持った美少女からも酒を飲むと人格の入れ替わる魔術使いのるーんエンジェル隊員からも好かれ慕われる、サクセスの象徴へと上り詰めたのだ。ああ羨ましい。実に素晴らしい。もとより仰ぎ見るばかりだったけどもはや臨んでの遙か高みは冥王星の彼方に届くほど。せめて足下に跪いてはサイン会なり対談の場へと潜り込み、「ねこマン」を描いてもらって一生の宝としよう。西島版ねこマンってどんなだ。

 なるほどそうなのかフェリックス・ウォーケン。おそらくは当時において人類最強と目され下手すれば不死人たちより強いかもしれないヴィーノことクレア・スタンフィールドが、誰から買ったというニューヨークでも最強と目されクレア自身も自分の次くらいに強いと認めていたフェリックス・ウォーケンの秘密が成田良悟さんの人気シリーズ最新刊「バッカーノ1934獄中編」(電撃文庫)でちょっぴりだけど明らかに。不死になる酒を飲んでしまったマフィアならにカモッラの幹部・フィーロに伸びた連邦捜査局の手は、彼をサンフランシスコ沖に浮かぶ難攻不落の刑務所「アルカトラズ」へと送り込んでそこに収監されている、不死となった錬金術師の中でも最も危険なヒューイ・ラフォレットの監視の任に就かせる。

 それだけじゃない。刑務所の奥から人心を操り都会で爆弾テロを頻発させようとしているヒューイの危険性を察知し送り込まれる殺し屋がほかにも。さらにはなぜかよくわからないまま捕まり大した犯罪でもないのにアルカトラズ島へと送り込まれた脳天気カップルのひとり、アイザックまでもが絡んで刑務所内はもう大変。外ではヒューイの娘でクレアの恋人でもあるシャーネにかつてフェリックス・ウォーケンと名乗っていた殺し屋の魔手が迫る。そこに現れたのが現役フェリックス・ウォーケンのクレア・スタンフォード。その感動的とも言えるはずの体面シーンに生まれた齟齬が、事態の半端じゃない複雑さを伺わせる。

 対決の予感があってそして出所したアイザックとミリアが大陸の反対側からそれぞれシカゴへと向かい起こるだろう大混乱の兆しがあって、続く巻ではさらに激しくもど派手なバトルが繰り広げられそー。未だ刑務所内に止まっているフィーロの運命は。そして何故か命を長らえたヒューイ・ラフォレットの反撃は。興味深さもいっぱいに続刊の発売を今は待とう。一方では漫画化の話もあっていよいよメディアミックスも本格化。次はできればアニメとなり、そして実写映画化となってニューヨークの街を舞台に起こるスラップスティックにしてハードボイルドな物語を、全世界へと広めてやって欲しいものだけどそこまでの体力は流石にないか、メディアワークス。でも見たいなあ。


【10月8日】 3カ月ぶりに見ても相変わらず丸かったなあレヴィの尻は。ジャギャジャギャと鳴るサウンドをバックにソードカトラスを引っかけた手をたんたんと打ち付ける、レヴィの履いたカットジーンズの丸さを堪能しつつ再び始まった、血が飛び散り酒が香り硝煙の漂い紫煙のくすぶる暗黒の街ロワナプラを舞台に繰り広げられる真っ当じゃない奴らの日常。のっけから原作でも最大の賛辞と最強の戦慄を読んだヘンゼルとグレーテルの双子による殺戮の物語をぶち当てられてはもう「BLACK LAGOON」の世界にどっぷりとハマってしまっている人間は見るしかない、それも生で、午前2時から毎週確実に。日曜の朝がこれで遅くなること確実だ。「交響詩篇エウレカセブン」が1年遅れてなくて良かったよ。

 「おとぎ銃士赤ずきん」のヘンゼルとグレーテルはおでん缶好きな割に命令するとなると冷徹な兄貴のヘンゼルに比べて割に心優しいところも見せる兄思いの妹グレーテルって設定だけどこっちのヘンゼルとグレーテルは徹頭徹尾壊れまくり。取る行動も無茶苦茶なら喋る言葉も子供離れしているってより人間離れをしていて、もしもこれが実写で実在する役者が喋ったとしたらそのキャリアに暗く輝く光を永遠に与えそう。まだ子役だったころの安達佑実さんが全身を血に染めにっこり笑いながら「ロシア人はまだ入れたことがない」なんて入ったらもう、マニア卒倒。録音して繰り返し繰り返し危機ながら布団の中でうぉーっと悶絶するんじゃなかろーか。筒状にした手をぎゅっと握りしめながら。

 エダも登場。スツールに腰掛けやっぱり丸さを強調しているレヴィの横に座ってぶわっと脚を振り上げるシーンなんかは実に眼福。風船ガムをぷわっとやりながら拳銃を手に凄みを聞かせた教会でのシーンに続いて、露出の激しい衣装でガラの悪い言葉を発してその阿婆擦れっぷりを見せてくれたけど、「サンデーGX」の方で連載された原作漫画では見かけのアウトローっぷりの仮面に隠された凄絶さって奴を披瀝してくれてるんで、改めて見てそのどこまでが計算づくの演技なんだろうって興味も募る。ああ描いていた時は原作の広江礼威さんもそこまで考えてなかったんだろうけど。ともあれ開幕した「BLACK LAGOON」がどこまで突っ走ってくれるのか、日本編では手首ごと持っていく松崎銀次の刀さばきがどこまで見られるか。いやあ楽しみ。ってかどこまで描くんだろう今回は。

 二兎を追った者が二兎とも得やがった話ってことでオッケー? 3年と半分くらいをかけて延々と描き継がれて来た渡瀬草一郎さんの「空ノ鐘の響く惑星で」(電撃文庫)が第12巻でもって晴れて完結。長かったけど冒頭の激烈なシーンから始まり大陸規模どころか宇宙へ異次元へと広がり膨らんだ話を、完璧なまでにまとめあげどのキャラクターにもそれなりの結末を付けさせた上で、おおむねハッピーエンドへと導いた腕前にはただただ拍手。大河ファンタジーにありがちな、まとめ上げられないままシリーズが中断したりえいちゃっとまとめて第1部完としてあとは読者の想像にまかせる手段が講じられることなく、素晴らしいエンディングを迎えられた喜びはこの10年のライトノベル界にとっても一種の軌跡なんじゃなかろーか。山本弘さんの「ソードワードノベル」完結に続いて。

 イリスやリセリナたちが元いた世界とフィリオたちがいる世界の関係。そしてフィリオたちの世界の成り立ちとそこに住む人類たちの素性。言葉が通じる理由に北方民族たちのように超人的な力を発揮できる民族が存在する理由などなど明かされていく怒濤の謎も呼んでいて楽しいけれど、それらを上回ってキャラクターたちに対する心底からの情愛が感じられるのが最高に嬉しい。悪人という人はいないし善人という人もいない。絶対的なものでなく相対的で環境的で社会的なマトリックス状になった規範の上に点在する、キャラクターたちそれぞれの立場に目を配り理解をしめしつつそれぞれに妥当な帰結を用意してあげる。自分が絶対的な正義とは思えず、かといって絶対的な悪ではないと信じたい、迷える若い読者たちに自らの立場でなし得ることを最大限いやり尽くせって諭しているよーな雰囲気が漂う。

 フィリオもリセリナもウルクも、イリスもエンジュもシアも誰も彼もがそれぞれにそれぞれ居場所を得ていく展開が、読み終えて気持ちをほこほこと暖かくしてくれる。そんなキャラクターたちの中でも秀でて目立ってくれるのがパンプキン。これがハーメルンの言う「おいしい役所」って奴か。いやあおいしすぎ。ベタベタなロマンスを押しのけて1番良いところをすべってをかっさらっていくエンディングなんて涙が出るよ、嬉しさに。ジョニー・デップとかオダギリジョーなんかが演じたがる役って感じ? 美形役者に演じさせる上で難しいのは最後まで顔が出ないところだけど、それでも演じてみたくなる役だよなー、パンプキン。

 世が世ならそれこそメディアミックスもばんばんとかけられ映画に漫画に引っ張りだこになって可笑しくないくらいの作品。この長大で壮大で複雑な世界を映像でどこまで描けるのかって疑問もあるけれど、それこそ「ロード・オブ・ザ・リング」みたいに1話3時間で3部作くらいにすれば、適度に圧縮されそして見所も毎回豊富な映画になるんじゃなかろーか。ついでにハードカバーの箱入り上製豪華版を全6巻くらいで出してくれれば、改めて買いそろえて訥々と読んでいくんだけど。でもそれだと毎回楽しみだったイラストが見られなくなるか。そっちは豪華な画集でフォローだ。がんばれメディアワークス。これからの20年を引っ張る作品へと持ち上げるんだ。

 家にいると寝てしまって気が付くと翌日にタイムトリップしてたりするんで自ら尻を叩いて家を出て、地下鉄に乗って竹橋へと出て神保町まで歩いて「VELOCHE」で珈琲を飲みながら支倉凍沙さん「狼と香辛料」(電撃文庫)第3巻をペラペラ。相変わらずに経済ファンタジーをやってくれてて嬉しい楽しい。ともすれば美少女狼神と冴えない兄ちゃんとの腐れ縁的ラブコメディに走ってしまいがちな所をちゃんと1巻の頃から特徴的だった、行商人の主人公が降りかかった災難やら事件やらに、相場の知識と技術とハッタリを使いそこに狼神の助けなんかも交えてひと勝負をかけてどうにかこうにか結末を付ける展開が守られているから、他にありがちなラブコメとは一線を画した楽しみを味わえ知識もつけられる。

 今回は行商にのロレンスが連れている一見美少女ながらも実は尻尾と耳があって年齢も数えられないくらいに高い狼神のホロに言い寄る若い魚の仲買人の挑戦を、受けて立つってストーリー。半ば偶然に出会いそのまま一緒に居続けているロレンスとホロの関係を、今一度見直すストーリーが織り込まれていて、商人としてのプライドとホロへの恋情の間でうだうだし続けているロレンスと、北の故郷へと連れていってくれるロレンスへの依存と狼神としての矜持との間でうにゃうにゃしているホロが、改めて一緒にい続ける覚悟を決めてひとまずの帰結を見せ、そして新しい段階への移行を示す。ヒントも得られていよいよ向かうは北の大地。そこではどんな困難が待っているのか。核になる商取引のネタともども楽しみ。


【10月7日】 何をやっても結局は誰かが傷つき不幸になるって教訓か。ライトノベルの新レーベル戦線にあって大きな判型と高い値段というハンディをものともしないで、堅調に秀作を送り出して来ている「ジグザグノベル」から出たベテラン、篠崎砂美さんの「狩籠師 不即不難」はいわゆる退魔師みたいな力を持った2人の狩籠師が登場してはそれぞれの力でもって妖魅を滅したり、あるいは封印して人々を難局から救うんだけどそれが次の難を招いたりして別の狩籠師が尻拭いみたいなことをする羽目に。その時の最善も永遠の善とはなり得ない構図を読むにつけ、目先の利益ばかりを追いがちな昨今の政治情勢社会的風潮のいずれもたらす災難に怯えも浮かぶ。

 まず登場の狩籠師は凛華という女性で手に魔を退ける妖刀を持って諸国を巡り歩く。たどりついた村では集まってくる妖魅を退けるために別の狩籠師によって作り出された化け物が、いつしか妖魅にのっとられ人まで襲うようになっていたので退治し滅して村人たちにこれで安心、あとは自分たちで生きて行けって諭すんだけどしばらく後の短編で登場した同じ村は、人も食べるが妖魅も食べてくれていた化け物がいなくなってしまったため、集まってくる妖魅に村は大変。かつて化け物を作り出し、且つ村に結界を張ってその中だけなら安全なようにしてくれた美女狩籠師が戻ってきてがんばっているけど、どうにもならないって状況にやっぱり狩籠師でどうやら凛華が持つ太刀を探しているらしい少年の青陵は封じる力を使い何とかその場を切り抜けようとする。

 もっとも以前に海辺の村で、船幽霊になっても漁村の人たちを妖魅から守ろうとしていた同じ漁村の出身者たちの魂を、真珠に封じてこれからも村を守るようにしたことがあった青陵だったけど、妖魅がよりつかなくなったことで敬遠していた海賊が現れては、その巨大な真珠を目当てで村を襲ったりしてもう大変。結局は凛華が乗り込み真珠貝についた村人たちの魂を滅して海賊もうち滅ぼすんだけど、その課程で何人も人が死に村も甚大な被害を受けてしまう。

 もしも青陵が真珠に魂を封じて村を守ろうとせずにおとなしく村人たちに村を捨てさせていたら。あるいは凛華が妖魅も喰らう化け物を退治しないで村を結界の中においたままにしておけば。目先の安心を追う人と自らの力を絶対を信じる正義の味方の善意がもたらす、決して幸福ではない結末に苦さも浮かぶ連作集。未だ出会えない凛華と青陵を描きつつ続いて、やっぱり思い込みから来る不幸をまき散らしていくのかなあ。イラストは美麗。同じく狩籠師が出てきては洋の東西の神話が重なる絢爛な世界を見せてくれた「魔鏡の理」(ファミ通文庫)とは特に重なる部分はなく、話も人間界に寄っててシンプル。すらりと読んではどろりとさせられる1冊です。

 快晴の中を「埼玉スタジアム」へと乗り込んでサッカーJリーグ「浦和レッドダイヤモンズ対ジェフユナイテッド市原・千葉」の試合を観戦。浦和美園の駅を降りるとあまりに強烈な向かい風が吹いていたんで楽をして100円出してシャトルバスに乗り込む軟弱さに達した年齢をふと思う。スタジアム前の広場では強風の中をどっかの中学生だかのブラスバンド部が来ていて演奏界。強風にまくれあがるスカートも眼に入ったけれど中学生なんでぞろりと膝下まで長い上に下に体操の時にはくショートパンツを付けていたんで見えるものはとくになし。まあ仕方がない。

 遠目にも麗しく見えたフルート吹きの女の子とかちっちゃい体でどんがんどんがんとスティックを振って太鼓を叩きシンバルを鳴らすドラムの女の子とかいて試合前から良い気分。「A列車でいこう」の演奏中のトランペットとかサキソフォーンのソロパートがあるんだけどそこでユーフォニュームだかチューバだかを手に立ち上がってソロを演じる子がいて感心。重たいしソロだってベースソロ以上に地味にならざる得ないなかで見せようとする努力を買いたい。でも巨大な楽器に阻まれ顔は見えず。見えなくてそれはそれで幸運か。続いてはるばる千葉から来たジェフサポーターのためなのか、単に持ち曲だからなのか木更津が生んだスーパースター「氣志團」の「ワンナイトカーニバル」をぶんちゃかと演奏。受けて「アッポー」と踊るジェフファンでもいれば盛り上がったか。いや逆効果か。

 さすがに見やすい専用スタジアムはバックスタンドのアッパーデッキの比較的前列から見下ろすとピッチ全体が眼に入って選手たちの動きの質が手にとるよーに分かる。体面のメーンスタンドアッパーデッキの同じ場所に記者席があるのも道理か。「横浜スタジアム」みたいにピッチから遠い上に1階ではろくに見えないだろーなー。だから先だっての「日本代表対ガーナ戦」はメディアの勘違い観戦記が多かった? さて試合は早々に結城耕造選手が退場をくらってゲームへの興味がぐっと減退。がっぷり四に組み合い激しい攻防を見せてくれると期待したのに、あんな時間帯で試合を真っ当なものではなくしてしまった正義の主審に文句の1つも言いたくなる。

 けどそこはジェフ。後半に入り1点も追加されてからが本調子のよーでここ暫くなりを潜めていた流動的な動きでもってパスを繋ぎランを交えて相手ゴールまえへと突き進む怒濤の攻めが復活。クロスバーに当たるアンラッキーなシュートが何本もあってあれが決まってさえいたら、試合をひっくり返せてたかもしれないと歯がみすること仕切り。あと「A3」の頃からあんまり見られなくなった有効なサイドチェンジも何本もあって、この調子がちゃんと続けば、11月3日のナビスコカップ決勝戦も大いに期待が持てそう。もしかすると走るジェフには10人のフィールドプレーヤーでは渋滞が起こってしまうのかも。9人くらいが走る良からしてちょうど良いっていうか。まあ結局は勝てなかったから意味がないのか。次は鹿島で遠くて行けそうもないけど撃破し弾みをつけて欲しいもの。それとも行こうか鹿島にまた。


【10月6日】 何がアニメになっても別に驚く時代じゃないんだろーけどそれにしても山田J太さん「あさっての方向。」(マッグガーデン、552円)がアニメ化とは。単行本が山と出ている訳でもないし広く知られている感じもない。設定だって万人に受ける要素のどちらかといえば乏しく逆にマニア向けって雰囲気の漫画をアニメ化しては、UHFじゃなく地上波でもって放送してしまうこの第何次か分からないアニメブームって奴の凄まじさを改めて痛感。絵は結構ハイクオリティで眼鏡美人のすまし顔とかからだちゃんの笑顔とか見ていると引き込まれそうになる。音楽も端麗。アニメと漫画とでは設定がやや違うみたいだし原作自体も帰結がどーなっているか不明ななかで、アニメがどんな感じでまとめてくるか。要観察の1本。

 その直前の「009−1」は紺野直幸さんだけあって石森章太郎度高し。声は……許容範囲か、いや割に良いかも釈ちゃんで。気持ちを言えば同じだけの露出を当人にやって頂きたいところだけどいくら釈ちゃんでもあんあにお尻は大きくないから仕方がない。絵は絵として楽しみつつそれを脳内で釈ちゃん本人がふんにゃかふんにゃかしていると変換して眺めることにしよー。おおっすごいアクションだ。動きも完璧に近いぞ。お金かかっているなあ。あっ004みたいだ。うわお黒いのがまる見えだ。そこだけやっぱり釈ちゃんに演って欲しかったなあ。しかしそれにしてもやっぱり何故にこれが今アニメ化されなきゃいけないんだろう。誰が望んだんだろう。アニメ化企画の謎について誰かまとめてくれないかなあ。

 いまや「また久保か」で冥王星の彼方まで通じてしまう「夕刊フジ」の偉大なるエース編集員とこ久保武司記者が、このほどネットへとご進出あそばされて全銀河的に善哉善哉。紙面に掲載された記事をネット向けには出し惜しみをして新聞を少しでも買ってもらおうとする愛社精神の高邁さに目も眩むばかりだったけど、それではエースのスマッシュヒットに触れられないって嘆き叫んでいるファンのために、別に「夕刊フジBLOG」なんてものを始めてそこに、堂々の連載なんかをしてくれちゃっていてアンドロメダまで含む宇宙に散らばるクボメイニアから拍手喝采が起こっては、天空を大いに揺るがせている今日このごろ。季節外れの激しい風雨もそんな喝采の振動がエーテルを揺らし、地球の大気を刺激した結果なのかも。

 そんな期待に背くことなく、早速掲載の「“切り札”播戸竜二が沈没したら…」ってエントリーでやってくれちゃいましたよ「また久保か」さんは。書かれた内容のあまりの素晴らしさに、昔テレビで見て身につまされつつ笑みを浮かべたジャパネットタカタの名CMで流れた故郷の母親が息子に送った手紙を読み上げたテレビCMを思い出してしまいました。曰く「2001年頃の播戸竜二選手は全国的という意味での『無名』であってもサテライトで干されるようなことを指す『不遇』ではありません。播戸選手の卒業した琴丘高は、兵庫県屈指の進学校ではありません」。

 「あなた、一度ならず幾度もジェフユナイテッド市原・千葉サポーターの目にも入る『夕刊フジ』でオシム監督を”妖怪”って書きましたね。フジサンケイグループのほかの会社に所属する社員は全員、恥をかきました。<木村元彦さんが書いて川淵三郎キャプテンもオススメする『オシム語録 フィールドの向こうに人生が見える』>。読みなさい。必ず読みなさい。それから『ごっつぁんゴール』はアレッサンドロ・デル・ピエロが鋭いドリブルによる切れ込みや絶妙のタイミングによる飛び出しによって侵入した左45度の”デル・ピエロ・ゾーン”から放ってはどんなゴールキーパーでもぶち抜いて決めるゴールのことではありません」。いやあ伝説に残るジャーナリストには賛える言葉が途切れずに浮かぶなあ。あやかりたいあやかりたい。

 ところでエースなだけあって言葉遣いが凡人とは違うってことが判明。「播戸もここまで来るのに98年にG大阪に練習生としてから8年かかった」。凡人は「ここまで来るのに98年にG大阪に練習生として入団してから8年かかった」ってするところを「入団して」を省いてエッジを利かせる。「オシムジャパンの公式戦は4日の親善試合(対ガーナ戦)をあわせて、あと3つになった」って一文も想像するに「年内の公式戦は」ってことなんだろうけれど「年内」なんて当たり前だろうと省いて切れ味を出す。流石だなあ。これに付いてこれない読者は小学校から勉強しなおし書かないことによって仄めかすテクニックって奴を磨けってことなのかなあ。格好良いなあ。真似したいけど凡人なんで出来ません。これからもすっげえロジック&テクニックのエントリーを期待してます4万キロの彼方から。

 地下鉄南北線に溜池山王から乗ると周囲に黒いネクタイの人たちがぽつりぽつり。2駅乗って麻布十番駅を降りるとさらに増えてそのまま麻布山善福寺へと続いていくので後について雨の中を米澤嘉博さんの通夜へと向かう。看板を持つ人列を整理する人と配置もきめ細やかで馴れたもの。指示に従い順繰りに記帳を済ませそれから別の列について祭場へと入り焼香を済ませて祭壇の米澤さんに内心で挨拶をしてから祭場を出て帰途につく。その時も行列は続いていてさらに駅からお寺へと上がってくる人もまだまだ大勢。土砂降りの中を数百人ではきかない人が訪れる。その様に米澤さんって人の大きさを改めて思う。晴れた明日はいったいどれくらいの人が来るんだろう。伝説がまた刻まれる。


【10月5日】 平日の、雨も降り出しそうな天候で、横浜の繁華街からはるか彼方に佇む「日産スタジアム」に5万2437人も来たんだから興行としては極上の部類に入るだろう。なのにメディアは4日に開催されたサッカー「日本代表対ガーナ戦」の来場者数が、「日産スタジアム」のキャパいっぱいにあたる7万人余を埋められなかったことをあげつらって”不人気”と書くから分からない。

 とりわけ今や「また久保か」の異名とともに、サッカーをこよなく愛する人たちから次に一体何を書くかを注目されまくってる「夕刊フジ」の久保武司編集委員は「ファンもソッポ」の見出しも鮮やかに腐すこと腐すこと。いったいなにがそんなに不満なのか、聞いてみたいって人もきっと大勢いるに違いない。5万2437人だよ。オシム監督になって初戦の「国立霞ヶ丘競技場」での「日本代表対トリニダード・トバゴ戦」の4万7237人を上回っているんだよ。それで「不人気」と書くならトリニダード・トバゴ戦にだって「不人気」だったと書くべきだ。新潟スタジアムでの「対イエメン戦」だって4万913人で完売しなかっったって指摘するべきだ。

 だいたいが同じ日産スタジアムで2月22日に行われたジーコ監督下の「アジアカップ」予選のインド戦に、たったの3万8025人しか集まらなかったことをメディアはどう書いた? そりゃ海外組とやらはいなかったけれど、イケメン宮本恒靖選手はいたしボンバー中澤佑二選手もいたし、地元横浜をホームに活躍する久保竜彦選手もいた。ワールドフェイマスな小野伸二選手だって浦和レッズに復帰して出場していた、国内組だけならベストメンバーの代表の試合に、集まったのはたったの3万8025人。その時にどこのメディアが”代表人気に衰え”って書いた? どこも書いてなんかいやしない。

 相手がインドだったからって理由もあるかもしれないけれど、それだったらガーナだってライトなファンが抱く印象においては同じこと。どこにあって誰がいてって情報なんかまるで気にしない。そういう人たちが目当てにしたかったのは日本人の”有名選手”であって、だからこそツネやボンバーといった名前が今もって取りざたされ、引退表明だの何だのって事柄が新聞紙面に載ったりする。つまりは以前の人気は決して代表人気じゃなく代表選手人気だった訳で、メディアもサッカーの記事じゃなくサッカー選手の記事を書くことで、そんな代表選手人気に乗っかっていただけのこと。アイドル的にアーティストを取り上げ音楽の評価をしない音楽雑誌みたいなスタンスって言えば言えそう。

 オシム監督がそーした”人気選手”をまるで呼ばなくなって、彼等目当ての観客はだからいなくなっているはずなのに、ガーナ戦では実に5万人以上がスタジアムへと足を運んで若い選手たちのプレーを見守った。これを快挙を呼ばずして何を呼ぶ? 彼を招けば来場者が増えるってメディアが書き立てる中村俊輔選手がプレーした、セルティックと横浜F・マリノスの試合にいったいどれだけ来た? 3万人も集まらなかったんじゃなかったっけ。もはや1人の有名選手で観客を集められる時代じゃないんだ。

 あの悲惨極まりないドイツでの闘いを目の当たりにしてそのことに皆が気が付いた。名ばかりの有名選手では駄目なんだと理解した。そして新しい選手たちに期待した。というより新しい選手たちで構成されるチームが繰り広げるプレーに期待した。今やスタジアムを埋め尽くすのは代表選手ファンなんかじゃない。代表そのもののファン。それが未だ5万人以上もいることを喜ばずして何を喜ぶ。

 しかしそこは久保”また久保か”武司編集委員。真っ当に世界を見ている人なら顔を上げて前を向いては言えないことを、あっけらかんと口にして文字するから驚くばかり。「試合中の記者席では、『座っていると眠くなる』とあくびを連発する多くの記者の姿が。平均3ページのスペースがあるスポーツ紙では『こんな試合で、何を書けばいいのでしょうか…』というボヤキも聞こえてきた」。そうかそんな記者がいたのか。それはどこの新聞社だ。教えてくれ。あの激しいつばぜり合いの繰り広げられた、油断も隙もない高密度の試合を見て欠伸を発した記者のいる新聞なんか読みたくないから。ワールドカップで活躍した、世界屈指のプレーヤーたちが割と本気で臨んだ試合を見て「なにを書けばいいんでしょうか」という記者のいるスポーツ紙など買わないから。

 いやいやそんなことはない。少なくとも高い志を持ち、知識も豊富で試合を見る目も高い記者が今のスポーツ紙には揃っている。だから練習の風景や選ばれる選手たちの日頃のリーグでのプレーぶりも踏まえて招集された選手たちが何故呼ばれたのかという意味や、そんな選手たちが試合で実際にどれだけのものを出せたのかを、ちゃんと記事に書いている。複数のページを昨日の代表の試合で埋めきれなかったスポーツ紙など1紙とてない。

 ジーコ監督が日本代表を率いていた4年間のうちに、まるでサッカーの試合そのものにについて語らなくなっていた金子達仁さんですら、この何ヶ月かは再びサッカーについて語っている。2006年10月5日付けの「スポーツニッポン」でも「いい試合だった、というよりはいい相手だった、というべきだろう」と書き出し「極端に浅い最終ラインを敷くガーナは、日本の選手たちに勇気の先に待つ果実の存在を教えてくれた」とあのピッチに描き出された絵のどこが興味深かったかを語っている。「オシム監督が切ったカードは、勝つためのというよりは試すためのカードだった」と分析している。あの試合を見れば誰だって語りたくなるのだ。真っ当なサッカー記者ならば。

 だからきっと「なにを書けばいいんでしょうか」ってどこかの記者のセリフは、いつもどーりにインスピレーションの産物なのだろう。脳内に現れた幻の記者が話した言葉だったのだろう。あるいは持論か。だとしたらつまりはサッカーを報じる一般的な記者とは異なる眼差しを、筆者は持っているって証明だ。どう異なるかは言うまでもないことだけど。

 「サッカー専門誌のベテランスタッフからは『これでは、代表を名乗ってはいけないと思います』とまで酷評される始末」だって? それはどこの専門誌だ。2誌しかなくって親しく関わっている雑誌だとしたら「ダイジェスト」か。いやいや今出ている「マガジン」にだって執筆していたなあ。2誌ともか。つまりはサッカー専門誌はあのメンバーに「代表失格」の烙印を押しているということか。これは何とも薄ら寒い。そんな視線でしかサッカーを報じられないメディアに囲まれているのかこの国は。それともやっぱり脳内サッカー専門誌の空想ベテランスタッフか。そうであって欲しいんだけど。

 登録によって背番号が固定されているアジアカップの最終予選のインド戦を控えた今は、背番号を大きくいじることなんて出来やしない。少なくともアジアカップの本戦を闘うレギュラー選手の選考が続いている最中で、今はまだ確定した背番号なんて与えられるはずもない。そんな事情をサッカー報道に関わる人なら当然知っているはずなんだけど、「夕刊フジ」は背番号が固定化されないから代表グッズが作れず売れいないと書き、それを代表不人気の理由に挙げている。

 裏返せばそこまでしないと不人気さを強調できないってことになる。どうしてそうまでオシム監督が率いる代表が不人気だと書きたいのか。前の代表が残したツケを支払わされている中で極めて健闘している代表を、サッカーの内容ではなく根拠のない事象から誹るのか。分からない。分かるはずもない。何せ4万キロも離れた場所で、世界中の注目を集める記事を連日ものんしいてる天才記者だ。その考え方をライターの端くれの土塊如き当方が理解するなんて不可能だ。ボーナスだってきっと何十万円も違うに違いない。まあ仕方がない。それが階級って奴だから。

 幸いにしてネットには愚鈍な凡人では理解できない言葉が流れないよーになって、自分は何て頭が悪いんだろうと心を苛まれることはなくなったけど、4万キロも離れていたってふと気が付くと目の前に、「オレンジ色のにくい奴」が積み重なっていたりする。そして哲学的とも言える複雑なロジックが目に入ってしまうこともある。そんな知識も経験も拙い我が身を呪いロジックの探求になど勤しまず、静かに微笑んで「また久保か」とつぶやきそして立ち去ることにしよー。4万キロを超えて見えることなんてまずないから、それだけは安心だ。


【10月4日】 「となグラ」だか「つよキス」だか「らぶひな」だか何だか分からない暗号が飛び交うアニメーション業界に、これはまだストレートさを感じさせる「らぶドル」だかって新作アニメが登場したんで見たらまんまアイドルのストーリー。なんだけどステージに次々と出てくるアイドル少女たちの目がことごとく死んだナマモノみたいな目をしてて、見ていて背筋にシベリア級の冬が来る。ぞくっ。瞳に芯となる部分を入れない作法故のもので馴れればそこに視線を感じることも可能なんだろーけれど、馴れない目にはどこ見ているか分からない得体の知れなさが不気味に映る。きっともう見ない。でもオープニングはちょっと好き。ヌボッと立って揺れるキャラとかボワッと真っ赤になる顔とか。

 ついでに録画してあった「ギャラクシーエンジェるーん」も見る。なるほどさすがはサテライト。宇宙での戦闘シーンがゲームっぽくなくちゃんと締まって見える。けどお話は全体にギャグ。ゆるゆるとしながら進む不思議な情景をたらたらと見ながらふふふふふってほくそ笑むのが正しい見方か。キャラではテキーラさんだかカルーアさんだかな二重人格のお姫様っぽい人が好き。声の平野綾さんがんばってるなあ。CMで唄っている平野さんも格好良かったし。それに比べて「らぶドル」のCMで唄っている野川さくらさんの唐突感といったら。いきなりだと子供が仰天しまっせ。次回予告はとっても楽しそう。美少女キャラが丁寧な作画でわんさと出てくる感じ。見よう。そうこうしているうちにズルズルと引きずり込まれてもう抜けられない、これが「GA道(じーえー・みち)」って奴だ。

 夢だった。場所はホテルのホールみたいな体育館みたいなところでどうやら政権政党の自民党だかがパーティーを繰り広げていて人がわんさと詰めかけていてかろうじて間を縫って歩ける程度のその場所で、なぜかサッカーをしているんだけど敵はパーティーに参加している自民党だか何かの人たちで見方はたぶんこちら1人。パスを回されてそれに食いついていこうと必死になって走り回るんだけどなかなか追いつけない。それでもどうにかこうにか追いつき相手の守りをひょいひょいとフェイントでかわしてゴール前右45度ペナルティエリア外まで迫る。

 そこでちょんと前に蹴り出したボールが前へと行き過ぎ、相手ディフェンダーが詰めて来て大変。それでも思いっきり足を伸ばしてボールに触れば、ゴールも決まるかと思い夢の中で足を付きだしたら、寝ている自分の足までも突き出されてそこにあったDVDの山の根本に当たり、ガラガラと崩れ落ちてきたDVDの山が寝ている僕の下半身を埋め尽くして目が覚めた。夢の中では確かにボールに触ったと思うんだけどボールがゴールに入ったかどうかまでは確認できなかった。崩れたDVDを積み直してまた寝入ったけれど続きは見られなかったから。悔しいなあ。誰か世界のどこかで同じ夢を見ていた人がいたらゴールは決まったかどうか教えてください。いねえよそんな奴。

 大崎にあるサンリオの本社で人間そっくりな表情としぐさを見せてくれる案内嬢のロボットの最新型を見物し、それから話題の”ハンカチ王子”が使っていたとちゅー青いタオル(そうタオルだよあれは、誰が何といおうとハンディタオルでしかないんだよ)がほぼ同じデザインでそれも「ハローキティ」入りで復活していたのを見てから湘南新宿ラインと地下鉄を乗り継ぎ「日産スタジアム」へと出向きサッカー「日本代表vsガーナ代表」を見物する。エシアンもいればアッピアもいればムンタリもいればマ・クベの愛機のギャンまでいるとゆーガーナ最強の布陣が手抜きもせずに真剣に試合に臨もうとしていてこいつはヤバいかもって心配したけど、試合開始のホイッスルからしばらくは相手ディフェンスラインの裏をついて飛び出すフォワードにボールもあって日本代表が幾度となくチャンスを作る。

 そこで決めていれば試合ももっと楽に進められたんだろーけど巻誠一郎選手がゴール前右45度付近で撃ったボールはシュートではなくゴール前に詰めてた山岸智選手へのクロスだったみたいで敵にはばまれ無得点。後半にゴール前へと飛び込んだ山岸選手のすべりこみながらのシュートもポストに当たり、跳ね返りが倒れ込んだ選手の所まで来ずゴールキーパーに抑えられる不運もあってなかなか得点を奪えない。対してガーナも水本裕貴選手の高い対人能力や阿部勇樹選手のうまい守りにはばまれ無得点。途中で今野泰幸選手の不慣れから来るマズいプレーもあったけど、そこは神がかった川口能活選手のセーブが発揮されてガーナに得点を与えない。

 それでも一瞬の隙をつかれゴール前を深くえぐられ返したボールを走り込んできたガーナ選手に決められまず1点。以後も危険な場面が何度もあって虐殺の予感すら漂ったけれどそこは2度は同じ間違いをしたくない、すれば次がなくなる緊張感の中だけあて守りきり、最後まで出ずっぱりだったエシアンアッピアの超が付く選手たちに決定的な仕事をさせず1点差から離されないまま試合を終えた。相手はチェルシーにウディゼーネといったトップリーグで活躍するホンマもん。それを抑え切ったんだから日本代表の守備陣は実に良くやったって言えるだろー。

 問題はやはり攻撃か。フィニッシュの精度の問題もあるけれど中盤でモタっとする所が相手に守備を固められ決定的な最前線での仕事につながらない部分もややあって悩ましい。遠藤保仁選手の保持が長くてテンポがでなかったり、無理につっかけ奪われカウンターを喰らう場面があったりしたのが気になったし、アレックス選手もサイドに張り付き止まって待つ場面が幾度となくあった。そこにわたせば前に走り込んでもコネられ渡してもらえず遅れると分かって、渡さない山岸智選手のイケズさが見られて興味深かったけど、本番では決して笑っていられないシチュエーションだけにもうちょっと話し合いが必要かも、あるいはアレックスと遠藤両選手を外すとゆー英断が。

 田中マルクス闘莉王選手のいない布陣でオーバーラップをケアする役回りの鈴木啓太選手はいらないんじゃないかって気もしたりと、疑問に思える場面も幾つか合った。今が無極めの時だってことは承知だけど果たしてアジアカップの場にこの2人は登場しているんだろーか。よっぽどスーパーな所を見せないと生き残れない気が今はしてる。だったら代わりに誰ってなるとうーん。本多圭祐選手にははやくフル代表に来てくれと願おう。フォワードは伊藤翔選手の爆発に期待だ。それにしても羽生直剛選手はいつみてもちゃきちゃき走るなあ。出た途端にテンポが上がったよ。代表に定着できるジェフユナイテッド市原・千葉の選手では彼が唯一になるかもなあ。問題は年齢か。水野晃樹選手のこれも成長してフル代表に定着してくれることを切に願おう。


【10月3日】 明け方に蒸し暑さから眼が醒めてしまい、そこから録画してあった橋本紡さん原作のドラマ版「半分の月がのぼる空」を見た。悪くない。あのイラストのイメージが強く頭に入っていると、オープニングで白い寝間着のぞろりとした格好で立つ里香の、決して大きくはないんだけどイラストのイメージに比べて大きく寸胴に見えてしまう姿に違和感を抱きそうだし、お茶目なんだけど芯は強情そうな雰囲気とは違うマジレッド演じる軽薄そうな祐一にも入り込もうとしていた気持ちを拒絶されそう。

 けどそんな違和感も5分で馴れた。空にでっかい半月が合成で浮かんで走る速度について来たり、夜空を病室から見る里香の横に大きな半月がガラスに映り込むって演出で輝いていて、あざといなあと感じてもそれもすぐに気にならなくなった。マジレッドとして1年間を演じきった経験もある祐一役の橋本淳君はたどたどしい喋りながらも、ぶっきらぼうな感じが格好良いと思っているアイドル系の美少年役者とは違って真摯に役に取り組んでるし、エコエコアザラクの劇場版で凄絶な美貌を見せてくれた吉野公佳さんも齢三十路に達してもなお衰えをしらない美貌でもってヤンキーナースを演じてくれている。マジレッドvs黒井ミサ。すげえバトルだ。

 そして里香。演じるは石田未来さん。若くて健康な人が果たして病弱って設定の里香を演じきれるのかという心配も事前にはあったけれど心臓の病の重大さを微塵も感じさせず、傍若無人に振る舞うってのが最初からしばらくの里香。それなら見た目の雰囲気になんてこだわることはない。石田さんがこれから始まる祐一との交流の中で見せてくれる、見た目の強情っぷりとそして奥底にかかえる未来への不安をどう表現しつつ、それでも上辺は挫けないで祐一相手に我が儘を通し内心で焦りしていくのかを見守ろう。しかしあのゾロゾロとした寝間着は何なんだろう。パジャマじゃいかんのか。

 主題歌はなかなかに格好良い。砲台山をのぞんだ伊勢の風景はどことなく懐かしい。高い建物なんてなく山裾までびっしりと民家マンションの建ち並ぶ東京近郊とは違う地方ならではの風景を思い出させてくれる。役者に過剰な演技をさせずギャグも押さえ気味にして全体のトーンをゆったりとしたものにしている点も、見ていて気恥ずかしさを感じさせない要因か。

 そりゃあもっと著名な役者を使ってゴールデンとかでドラマ化したら原作の知名度も上がったかもしれないけれど、大手芸能事務所の雰囲気だけが取り柄の役者にいつもながらのグラビアアイドルが過剰な演出の中でドタバタとするだけになった可能性も大。それなら時間は悪く予算だってそれほどではなくっても、原作の持つ空気をちゃんと描いてくれた方が良い。今回のドラマ化がそうなるって決まった訳じゃないけど、1話目はとりあえず合格。あとは続きを見て考えよう。

 フクダ電子アリーナとか行ってジェフユナイテッド市原・千葉の選手が通路でサインなんかしている姿を間近に見て感じるのはどいつもこいつも異様にスリムで頬も引き締まっているってこと。スタメンを張るような選手ならなおさらで阿部勇樹選手佐藤勇人選手を筆頭に”ふっくら”なんて印象を与える選手なんて1人もいない。重戦車の結城耕造選手だって決して太めじゃない。よっぽど練習の時から走らされているんだろう。

 だから「スポーツニッポン」の2006年10月3日付でFC東京に入った平山相太選手が、本当にそう言ったかどうかはともかくそう書かれるニュアンスのことは言っただろう「僕をどこの出身だと思っているんですか。国見ですよ」ってコメントを読むと「姉ヶ崎へ行け!」って言ってやりたくなる。つか今の走りが本当に国見並だと言うなら国見の現役は怒り出すんじゃないのかなあ。叩きの横行で言葉尻を捉えられがちなのは分かるけど叩かれがちな言葉を不用意に言ってしまうくらいに自己認識の緩さがあるって面もあるんだろー。やっぱり1度フル代表へと呼んでオシム監督流の練習に放り込んでやった方が良いのかなあ。

 そっか別にジェットを噴射している訳じゃないのか「ストライクウィッチーズ スオムスいらん子中隊がんばる」(ヤマグチノボル、角川スニーカー文庫、571円)に出てくる女の子たちが空を飛ぶときに脚に履くブーツみたいな機械は。パラレルワールドの世界では魔法の使える女の子たちが選ばれて軍人になっては正体不明の世界の敵ネウロイを相手に闘っていた。北の果ての現実世界だとスカンジナビア半島の根っこにあるスオムスはまだ中欧あたりまでしか進出していなかったけれど現世だとドイツにあたるカールスランド国境あたりまで来てオスムスまではもう1歩。これはそろそろヤバいとスオムスでは援軍を各国に依頼した。

 そこで集まってきたのは英国ならぬブリタニアからは優秀だけれど命令違反の度が過ぎるビューリングでアメリカならぬリベリオンからはナイスバディに楽天的な性格のテキサス娘にして空を飛べば着艦に失敗して見方の武器をすべて破壊してしまうというキャサリンちゃん、ドイツならぬカールスラントからは寡黙で発明も得意な本好きのウルスラちゃんと癖ありまくりな奴らばかり。我らが日本ならぬ扶桑国からも巨大な機銃を抱えて上がれば見方を撃ってしまうドジっ娘の迫水ハルカが選ばれそしてもう1人、なぜかエースと呼ばれて撃墜数でもトップの穴吹智子が選ばれた。

 当然にして智子は激怒。出向いたオスムスで見た同僚たちのやる気のなさを見てさらに激怒し訓練させようとして果たせず諦めたった1人で闘いにのぞむようになったけど、そこに落とし穴がまっていた。なるほど単機で富んで遊撃するネウロイもいるけれどしょせんは蚊トンボ。だから智子が1人でも相手ができたけど、巨大な爆撃機として現れる本体のネウロイあいてに1人では歯が立たない。それを分かってもらおうとした親友の配慮で智子はスオムスに配属されたのだった。

 智子は果たして仲間を得られるのか。そして巨大な敵を相手に戦えるのか。そもそもネウロイとはいったい何者なのかといった謎と期待を持たせてまずは1巻の終わり。続く展開で”いらん子中隊”がメンバーのそれぞれが持つ突出した能力を重ね合わせて1つの強力な部隊となって敵に挑み倒していく様を楽しめそう。そんな彼女たちを上回るかのようにネウロイも、より強力な兵器を擁して現れるんだろー。果たして勝てるのか。うーん楽しみ。


【10月2日】 アニメーション版の「時をかける少女」があってポプラ社小説大賞の受賞作があって、いずれも過ぎた時間をなかったことに出来たらってお話で、それがヒットしたり選ばれたりしたことに、今をありのままに生きる大変さって奴をこんなにも感じている人が大勢いたのかと考えていた所に更なる時間リセット物が登場。その名も「女神の香」(竹書房ラブロマン文庫)は、居合いの同情に通う和田義之という少年が、師範に向かい所詮はお稽古事だ、自分は中東で何人も斬って来たと言い張る美女と出会い感動し、弟子入りを志願したところ許され明日の日暮れまでに鎌倉の家まで来いと言われ、帰宅し眠り起きると人がすべて消失して吃驚。

 人は消えてもその時に来ていた衣服は後に残っていて、外に出ては女性の残した衣服を拾い上げ香を嗜みながら自転車やスクーターを乗り継いて、鎌倉に美女の家までかけつけると彼女だけはちゃんと存命で、何が起こったのかを聞くと何と彼女は人魚の肉を食べて不老不死となって800年の時を生きていて、おまけに時間を遡る力を持っていて、義之を見方に歴史をリセットしては新たに理想の国家を作ろうと企んでいた。

 男と同衾すれば歴史を過去にも未来にも行ける能力を持つ彼女に初めてを捧げ、鎌倉時代へと遡りそして行く時代の先々で出会う女性と女性と寝ては種を残していく義之が、現代へと戻ったそこに広がっていたのはどんな世界? とまあこんな話を書いたのは誰あろう睦月影郎さん。つまりはエロです。だから歴史をリセットすることに躊躇も何もなく、むしろそうした改変にともなう同衾を喜び、足の香り脇の香り股間の香りを堪能し尽くそうとする始末。大昔に残した種がその後の歴史にどれだけの影響を与えかたって部分は描写がなく、練り上げられた設定って感じはしないけどでもまあ官能がメーンの小説なんでそれも致し方なしと。ポップで明るく愉快なエロでありました。次はアニメ版「時かけ」の睦月版、読みたいなあ。莫迦じゃなくって淫乱な真琴の時かけっぷり。楽しそうだなあ。

 朝日新聞はやはりというか写真入りでの掲載で読売新聞毎日新聞もしっかりと掲載。日経産経東京も載せ共同通信時事通信も配信したためほとんどの地方紙にもきっと訃報が載ったことだろう。これでおそらくは全国津々浦々までの同人誌ファン漫画ファンにコミックマーケット準備会代表の米澤嘉博さん死去の報が伝わって、それぞれに何某かの想いを抱いたのではなかろーか。新聞を読んで知ったという人も案外に多いよーで、ネットがいくら世にはびこっているとはいえ、広い範囲へと情報を行き渡らせる手段として新聞が果たす役割が、未だ失われていないんだってことを改めて実感した。その役割を勘違いしている所が今の新聞の問題なんだろうけれど。テレビはどこか報じたのかな。

 あと共同通信時事通信といったところがどこまで「コミケ」に理解を持ちその代表の逝去を配信してくれるのかって心配も実はあったけれど、コンテンツ立国を標榜する日本がなにゆえにコンテンツ立国に成り得たかとゆー理由の大きな部分を、「コミケ」という場が担っていたことは紛れもない事実。そのことを勘案すれば配信しない訳にはいかなかったと考えるべきか。それとも最初に朝日がウェブサイトで流したことで通信社としても後を追わざるを得なかったのか。地方紙のみならず産経日経中日北海道西日本といった準全国紙にブロック紙を抑える上で共同の配信は不可欠だった訳で、それが実現したってところに何とかして訃報を全国に伝えたいと頑張り、門前払いも覚悟でメディアに働きかけた準備会の方々の熱意を見る。多忙はそれこそ大晦日を超えるまで続くだろうけど皆様におかれましてはご健勝のほどを。

 そうかあの傑作にして僕を「超人ロック」の世界へと引きずり込んだ「魔女の世紀」から数えてすらもう26年も経ってしまったのか。歳もとるはずだよなあ。ましてや最初の「ニンバスと負の世界」から数えて40年なんて、人が生まれて惑わなくなるくらいに長い期間を描き嗣がれて来た「超人ロック」の素晴らしさを語る言葉なんて持ち合わせていないけれど、その分は11月下旬から刊行が始まるとゆー「少年キング」に連載されて大勢のファンを一気呵成に獲得した「炎の虎」以降のエピソードの再刊を、購入させて頂くことで埋め合わせしよー。

 初のカラーページ再現ってことで緑に赤といった眼にキュッと来る独特の色使いに今また出会える素晴らしさ。A5版とゆー従来にない版形の喜ばしさ。値段は1200円とちょい高めだけど「ロック」とともに育って不惑すら超えた身にはどーとゆーこともないのだ。とりあえず12冊目の「愚か者の船」までの刊行みたいだけどなあに40年を経て世界に1000万人はいるだろー「ロック」の子らが3冊づつ買えば3億6000万冊、あだち充さんと高橋留美子さんを足したより多い冊数が売れて続刊のコンプリート版での刊行も即決すると信じて待とう。出来れば作画グループ版も同サイズで出して欲しいんだけど。特に「コズミック・ゲーム」。駄目?

 勿体ないっていうか分かってないっていうか「夕刊フジ」。サッカーファンからは「また久保か」の異名を奉られてはその記事に大いに注目が集まっていた久保武司編集委員の手になる記事がここしばらくネットからでは閲覧できなくなっている。全文が掲載されていたからこそ、その論旨の月とアンドロメダ星雲くらいの距離は真実からかけはなれていたことに、皆が気づいては話題にし言及してネット上で取り上げそれが波及して有名になった。なのに何を勘違いしたのかそれだけアクセスを稼げる貴重な記事だと思ったのか、あとは新聞を買って読んでくれってことになってしまった。

 こいつは何の冗談だ。あの性格から次は何をどう書くかってことくらい読者の方では先刻承知で、それがあまりにも想像どーりに出てきたからこそ皆がアクセスしてはリンクを貼り、あるいはブログに取り上げわいわいと盛り上がって話題にした。これがネット上に置かれていなければ騒ぎようがない。かといってわざわざ買って読まなくたっておおよその論旨は検討も着くから買わずに内心で「また久保か」と毒づいて終わりにしてしまう。そうこうするうちにネットで誰も話題にしなくなってフェードアウト。せっかく日本代表のゴシップについてだけはそれなりの認知度を見せていただけにどーしてこーゆー判断になったのかが解せない。

 それとも何だろー、ネット上で衆目にさらされるのにはあまりにあまりな意見ばかりが続いていたのか。それを隠蔽する意味でもリード部分だけを残してエッセンスだけは伝えて後は自然消滅の道を選ぼーとしたのか。不明ながらもとりあえずはネットの世界から「また久保か」は消えたも同然。すなわちサッカー好きの眼からも消滅したに等しいんだけど、そんな人でもこと紙の上では未だに唯一絶対の存在として扱われている様を伺うに連れ、メディアってところで生き抜くには真面目なだけじゃあ駄目な世界なんだって想いを改めて強くする。生き抜いたメディア自体が生き抜けない可能性は別にして。しかし何で”逃げ”たんだろー。「また久保か」って言われ続けてこその「また久保か」なのになあ。


【10月1日】 ここんところの試合で大量失点を喫しなくなった1番の功労者と言っていいジェフユナイテッド市原・千葉の水本裕貴選手が遂にサッカー日本代表入り。ワールドユースでのしっかりとした活躍ぶりからいずれはって逸材ではあったんだけどまずは五輪代表って所から始まる予定が一気一気のフル代表。その卓越した対人能力とスピード、183センチってそれなりな高さを思えば中央の田中マルクス闘莉王ともども2010年のフル代表を背負っていってくれる存在に、育ってくれると信じたいけどその時はきっとジェフにはもういないかもなあ。

 水本といっしょにワールドユースに出た水野晃樹選手にもフル代表入りの期待がかかったんだけどオシム監督がまだジェフの監督だった今年前半に、あんまり使わなかったところからすると攻撃面でのパワーは買ってもどこか途中でフッと息を抜いてしまったり、守備に戻らなかったりする部分を気にしてもう少しジェフ千葉で鍛えられてから、あるいは反町五輪代表で実績を残してからピックアップする方針かも。代わりといっては何だけどジェフでは山岸智選手が初代表。ハマればスピードもキレも水野選手以上の逸材ではあるんだけど、チームが調子を落とす中で攻めからちょっぴりキレが失われていたんで今回はないって思ってた。

 けどナビスコカップの準決勝で川崎フロンターレを相手にした第2戦で阿部勇樹選手からのワンタッチのピンポイントクロスい走り込んで叩き込んだスピードと勝負勘、それから昨日の大分トリニータ相手の試合で見せたゴール前への走り込みから立ち直って来たって判断をされたのかも。いっしょに阿部選手と佐藤勇人選手と羽生直剛選手って中盤を組む選手が選ばれ左サイドで後ろにいることの多い水本選手が入りトップにも巻誠一郎選手が鎮座する布陣なら活躍も期待できそう。阿部ちゃんクロスにピンポイントで叩き込んだり、羽生とのコンビから左サイドをえぐって中央の巻選手やガンバ大阪の播戸竜二選手にショートクロスを入れる山岸選手の姿が目に浮かぶ。あとは正夢になってさえくれれば。

 「タマラセ」が最初っから最後までダメでとりあえずめくってはみたけれどストーリーのほとんどを覚えていないんだけど、そんな六塚光さんが新しく始めた最新シリーズ「レンズと悪魔1 魔神覚醒」(角川スニーカー文庫、600円)はスラスラと読めてとっても面白い。何ってったってアニメが妙に気に入ってDVDまで買ってしまっている「Fate/Stya night」に似た感じのところがある点が個人的には嬉しいところ。馴れたフォーマットの上で繰り広げられるドラマはどれも楽しく読める性格なんで学園異能バトルとか、異能美少女同居物と同様にこいつも似てたり違っていたり定番だったり独創だったりする部分を探り確かめながら読んでいける。

 故郷のブルティエールって東部にある街に帰ってきたエルバ・ナイトロンドが巻き込まれたある出来事。その街に封印された悪魔はことあるごとに復活しようと分割された8つの目から生まれる魔神と人間とを組ませて戦い合わせ、最強になったものをよりしろにしようと企んでいた。闘いは「八眼争覇」と呼ばれ何年かの間隔で行われており、エルバの父親もかつてその「八眼争覇」に参加したことがあった。それから6年。父より赤いレンズを受け継いだエルバは、否応なしに「八眼争覇」のメンバーへと組み入れられてしまう。戸惑いながらも同じく「八眼争覇」に参画した少女を見方にし、魔神との契約も果たしてパートナーを得て闘いにのぞむのであった。

 うーん。まあいいや。ともあれエルバって主人公の割にくよくよとせず脳天気に振る舞うところとか、遠坂凛よろしく見方につける「八眼争覇」の参加者が、博物館を営む家系のお嬢様で見目麗しい一方で、何故か手が万力になってて立ち向かってくる悪者を相手に万力を叩きつけ捕まえた相手を万力で締め付けるといった具合になかなか剛胆。描かれたイラストの拷問にのぞもうとしてニタリと笑った表情なんか実にキュートで彼女にだったらギュッと抱きしめられても良いって思えたりもしたけれど、締められたは本気で死ぬから心の中だけにしておこー。ともあれまずは始まった聖杯……じゃない八つの眼を奪い合う闘いに登場して来る参加者たちとそのパートナーとなる魔神たちの、バラエティーに富んだ描写を心待ちに展開を楽しんでいこう。

 家にいると眠り倒してしまうんで起き出し午後から東京国立近代美術館で開かれている「モダン・パラダイス 大原美術館+東京国立近代美術館所蔵 東西名画の饗宴」って展覧会を見物、これは面白い。どっかの上野の美術館で開かれているダリの展覧会が狭い部屋にダリのあんまりメジャーではない作品ばかりを詰め込み人も詰め込んであって、ゆっくり鑑賞できなかったのと比べるとこっちは来場者の数は見るに適切で空間も広々として天井も高く心地良さは抜群。何より企画力が素晴らしい。モダンを切り口に人物やら静物やら風景やらら心証やらってテーマを作って、そこに洋の東西から有名著名新鋭気鋭の作品を持ってきて飾ってあって、なるほどこういう見方もあるんだって新たな発見、こんなアーティストもいるんだって新たな知識を得られる展覧会になっている。キュレーターの人、頑張ったなあ。

 牛腸茂雄さんとダイアン・アーバスが並んで飾られているってあたりは分かっているなあって感じだし、キリコと古賀春江が並んでいたりすつところも同様。あと萬鉄五郎とゴーギャンの熱帯に佇む女性がいる作品があって、そして松かなにかが散りばめられたお風呂に横たわる女性が描かれた土田麦僊の作品もあってと同じイメージを持ちながらも、本当の洋画があり日本で育まれた洋画があり日本に独特の日本画が同じ部屋に。それぞれに異なるアプローチから”楽園”のイメージが描かれているのを見比べられる。

 個別には戦争画として知られる藤田嗣治の「血戦ガダルカナル」もあってなかなかの迫力。モネの睡蓮にギュスターヴ・モローにマーク・ロスコーにジャクソン・ポロックにルオー等々、個人的に好きなアーティストの逸品もあってカタログ的に楽しめる。ちょい前の戦争画も含めて全容を伝えた藤田嗣治展といい良い、日本の現代美術で重要な具体の立て役者だった吉原良治展といい、次の日本画と洋画の入り交じった日本近代の絵画を振り返る展覧会といい、意欲的で挑戦的な企画が多くなったなあ。貸し画廊化の著しい美術館にあってこうした良い企画が途絶えないことを願おう。

04年5月の日比谷高校で開かれたSFセミナーでもそういや喫煙コーナーにおられたなあ。  会場を出て無料バスで銀座へと周り散策してから茅場町の「VEROCHE」でネットに繋いだらコミックマーケットの代表だった米澤嘉博さんが亡くなられたとの連絡があって会社に向かい訃報のファクスを受け取って記事にする。産経には大阪の方にいてコミケに詳しい人からも連絡が行っていたみたいだけど、とりあえず訃報のファクスを回しサンケイスポーツにも連絡。マスなメディアでいかなコミケといえどもどれだけの知名度があるのか心配だったけど、”萌え”が新聞の見出しに踊り漫画が日本を代表する文化と認められている時代。そんな日本を作ったきっかけともいえるコミケへの関心は皆無ではなかったよーで、産経には無事にネット版に掲載された。良かったよかった。

 時事通信からの配信もあったから共同通信も負けず配信をするはず。朝日読売毎は言わずもがなで、テレビをのぞけばメジャーなメディアを通して、米澤さんの早すぎる訃報は全国の同人誌ファン、漫画ファンに伝わることだろー。個人的には面識はなくSF大会とかSFセミナーの場で見かける程度。最近だと日比谷高校で開かれたSFセミナーに来ておられた姿に校庭脇の喫煙スペースで間近に接し、岐阜県で行われたSF大会で「はっぴいえんど」について語っておられた姿を見物し、それからいつだったか漫画を買っては部屋に詰め込んでいっぱいになったら引っ越していったって話を聞いたこともあってそれだけの覚悟がなけりゃあ本当のマニアにはなれないんだと感嘆した記憶が残っている。いつ見てもお元気そうだったのに……。ともあれ同人誌という文化を育み守り、今の漫画大国・日本の隆盛にコミケって場を提供することで多大な貢献をした人の逝去を心より悼みたい。合掌。


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