縮刷版2005年6月中旬号


【6月20日】 高輝度な液晶テレビの恩恵に浸りつつ「コンフェデレーションズカップ」の日本代表vsギリシャ代表戦を見始めたら何か違う。選手たち走る走る走る。今までの試合分を走っているんじゃないかってくらいに縦に横に斜めに走ってはボールを持つ選手からボールをもらいそれを別の走っている選手へと渡すプレーが2002年にジーコ監督が就任して始めてじゃないくらいに見られてこれは見た目はジーコジャパンだけど中身はオシムジェフでそれにCGのパワーで日本代表の色を付けてるんじゃないかって目を凝らしたけれど高輝度の液晶にそんな細工は見えない。やっぱり日本代表だったのか。

 加地亮選手は走るし中田英寿選手は走るし柳沢敦選手も走るしアレックス選手は……あんまり走ってなかったけど途中から走ってたりしてもう吃驚。なおかつボールがちゃんとつながるところが愕きで、いつもだったら足下に入ったボールがつかず転がり相手に取られて反撃を許すところをギリシャ戦に関しては詰めて来るギリシャ選手があんまりいなかったってこともあってボールを奪われず出し受けられるテンポの良い展開が最後まで続く。シュートの場面ではずしまくるのはお約束って言えばお約束だけど、それでも加地選手の再度ネットをゆらしたシュートとか、過去にあった宇宙開発系のシュートに比べればずいぶんと改善されててゴールの匂いを感じさせるシュートであとはそれがもーちょっとだけ、枠に飛べばゴールインってことになるんだけどそれを言い続けてウン10年、だからなあ、心臓だけは練習したって太くはならんか。

 そう何がこんな攻めにつながったってギリシャの選手がボールを持つ日本の選手にまるで詰めて来てなかったってことでこれが去年の「EURO2004」での対フランス戦とか、対ポルトガル戦になると持ったフランスなりポルトガル選手の周りに2人3人とギリシャの選手が集まり囲んで走らせないしパスを出させない。遅攻となってゴール前へと有効なボールを入れられないまま奪われカウンターからクロス、でもってヘッドとギリシャの高さを活かした攻撃へとつながりそのうちに1点が決まって後は守りきるって試合運びで決勝まで行きそして勝った。録画してあったギリシャの2試合が2試合ともそーだった。

 これと同じ事をやられたら日本だって結構キツくなったんだろーけど日本を舐めていたのかそれとも疲れていたのか、左サイドでボールを持ってゆっくりとあがるアレックス選手を見るギリシャ選手はいても、詰める選手はおらずそこからパスが出てやっぱりマークされてない受け手に渡って良い攻めの形へと発展していく。もちろんギリシャのマークを外すスピードも日本代表は発揮していたし、こと得点シーンだけだったら中央でのどちゃがちゃした中から中村俊輔選手の瞬間のスルーに素早く反応した大黒選手の冴えが光ったことは確か。ただそれならばその他のシーンでも着実に点を積み重ねて対ブラジル戦で勝たなくても、引き分けで得失点差から上へと行けるくらいになっていて欲しかった。

 そーした状況への認識をすっ飛ばしてただ欧州チャンピオンに勝った、凄い攻めで勝ったって見解ばかりが一人歩きしてメキシコ戦での相手がマジで来た時の至らなさが覆い隠され、なおかつ本気で来るブラジル相手に戦えって破れても本気のブラジルなんだから仕方がないって風潮に覆われギリシャ戦のよーな試合ができれば勝てる、大丈夫って楽観が蔓延ることがとりあえずは怖ろしい。それはイングランド戦でアレックス選手が記憶だとそれほどキツくはなかったマークからパスを小野選手に出し得点をアシストした成果を未だ引きずり代表のレギュラー入りを確固たるものにしている点からも想起できる。望むならブラジル相手にまったく同じ布陣で望んでその通用しなさを白日の下にさらしてもらいたいんだけどでもやっぱり勝って欲しいし……悩ましいなやましい。

 続けて始まったF1のアメリカグランプリを見たら凄いことになってた。6台しかスタートしない。何があった? と見続けて了解、ミシュランタイヤの連中がそろってボイコットしたらしー。何でも予選の段階でミシュランが持ち込んだタイヤがインディの500マイルレースを開催するインディアナポリスに独特の高速オーバルコースを走った場合に長くもたずバーストするおそれがあって、これは拙いとミシュランがFIAにタイヤ交換を可能にしてくれ、高速コーナーにシケインを作ってくれと申し込んでブリジストンタイヤ側からはオッケーをもらったけれどフェラーリの反対があったり規則は規則で曲げられないってこともあったりでこれを却下。ならば危ないからとミシュラン勢が総引き上げしてしまった結果、ブリジストンタイヤのフェラーリ、ジョーダン、ミナルディだけが走ることになったらしい。

 ブリジストンがちゃんとしたタイヤを持ち込んだ会場に危ないタイヤしか持ち込めなかったミシュランが悪いことはまず間違いない。ただ出走中の16台だかがボイコットせざるを得ない状況を鑑み集まった観客テレビを見ている観衆にエンターテインメントを提供する責任からルールを曲げフェラーリを説得してでもこのレースだけはミシュランの言い分を呑んでも悪くはなかった。けどF1はどーやらエンターテインメントではなくって貴族の社交であってそこでは自動車メーカーなどとゆー下々の輩の声など聴けるものではないんだろー。挙げ句にたった6台のレース。完走すればすべてにポイントが与えられる実に奇妙なレースが行われてしまった。

 これが将来にどんな影響を及ぼすのか。米国でもはやF1が開催されなくなる転機となり得ることは当然として、F1の主催者に反意を抱いた面々が、かねてより噂されてた別のグランプリを発足させる決定打となった可能性もあって興味深い。フェラーリはそーした自動車メーカー側の動きに反対していたファクトリーでそれが走って優勝したってことはある意味象徴的。長く続いたF1とゆーカテゴリーが終わる動きの始まりとして、2005年6月19日の「F1アメリカグランプリ」は記憶されるのかもしれない。その節には正当な安全性を確保したブリジストンがフェラーリ=FIA陣営に組みすると見られ、ギリギリを攻めた挙げ句に失敗したミシュランが反FIA陣営に組みするヒーローと見られることだけは避けて頂きたいもの。ブリジストンは立派にやり遂げたんだから。

 殿が来たりて何もせず。まあ存在自体が何かだったりするんだけれど福田政雄さんの織田信長が現代にタイムスリップして来てしまって大騒動物語「殿がくる!」シリーズの最新作「殿がくる! ニッポン最後の日!?」(集英社スーパーダッシュ文庫、600円)は本腰を入れてきた米国が日本の混乱に乗じて乗っ取りを図ろうとするのを織田信長と丹羽新一郎が頑張り防ごうってゆー話。ただ殿が侵略して来た米軍に対して採った対策が果たして対策として妥当なのかどーか、そんなことで果たして守りきれるのかってあたりが悩ましくって、気持ちの良い終わり方ではあるけれど世界はそんなに脳天気なのかって気も起こる。まあ血みどろな治世を繰り返して来た信長だからこそ見せる無血の反抗が意味を持つんだけど。

 これで落着のシリーズだけど福田さんが次に向かうのはどんな地平か。21世紀に平将門が復活しては世界を平らげよーとする話? 関係ないけど「スーパーダッシュ文庫」の折り込みに入ってたチラシに「夏のフェア」の案内。オリジナルグッズとしてもらえる品々に「読子のミニクッション」「タズサのスポーツタオル」と並んで「こよみのたらいストラップ」があった。何がいったいたらいだか。他に「はっぴぃセブン」と「テイルズオブリバース」のグッズがあってそれらと並ぶシリーズに、「カレイドスコープ」と「現代魔法」は入ってるんだと確認。あとはそれに「ウナ・ライツのコンタクト」が加わるだけだ。


【6月19日】 本当に「かえってきた、ぺとぺとさん」ってタイトルになってた木村航さんの「かえってきた、ぺとぺとさん」(ファミ通文庫、640円)は九州へと行きちょちょ丸の仕切る沙原興業だかでぺと子の写真集を作るプロジェクトがスタートして影の薄い母も自分が目立ちたいと頑張ったりして楽しそう。一方で鮎川町に残されたシンゴは平気なふりをしてても心にどこか寂しい思いが残っていたのか、墓場でぺと子そっくりの誰かを見かけてなびきかけるも違うと分かって己の心の寂しさにつけこむ何かに憤る。

 そんなシンゴの迷う思いを知ってか知らずか先に一目連の風子に乗って鮎川町までやって来ていたちょちょ丸たちは、街に起こった不思議な事件を解決するためってこともあって九州からぺと子を呼び寄せることになってくぐる共々あれやこれやの儀式を執り行う。甲斐あっていよいよタイトルどおりに「かえってきた、ぺとぺとさん」となった所で起こった嗚呼これは悲劇と呼ぶべきか? ともかくも衝撃の場面でずばっと終わってしまう第1巻に続く第2巻の刊行が待ち遠しいけどタイトルは別に「ぺとぺとさんエース」にはならなさそーで「かえってきた、ぺとぺとさん」の下に番号が振られる形になるみたい。まあそうだよね、「エース」とか「タロウ」じゃ何が何だか分からないし。ともあれアニメ化も間近でブームとなってこの夏はあちらこちらのお祭りで「こぬりちゃんお面」とか並んでくれたらいいナ。

 んでもって新城カズマさんの「サマー/タイム/トラベラー1」(ハヤカワ文庫JA、660円)も引きの強さに続く巻が待ち遠しいシリーズ。学校のマラソンでゴールの瞬間にちょいっと空間を移動してしまう力を見せた少女を中心にして幼馴染みの少年だとか、お騒がせ屋で仕切り屋なお嬢様だとかが集まり夏休みの期間を使って少女の謎を解明しようとプロジェクトを発足させるって展開で、一夏の経験値的な大人には懐かしさを喚起させ同世代には今のその自由を謳歌せよって訴えかけるよーな世界観が鶴田謙二さんの淡いイラストと相まってぐっと迫ってくる。

 でもって引きでは大きな事件を起こしこれからの展開にザワリとした波風を立てていて、これからどんな悲劇が起こるんだろーか、それは悲しいことなんだろーかって興味をかきたてる。涼宮ハルヒ的に騒動好きの少女が中心となって騒ぎを起こしてそれを周囲の人たちがやれやれといいながらも楽しんでしまうタイプの小説が昨今割に出ているけれど、そーしたものと重なる部分を持ちながらも行く末に予定調和っぽい終わりが用意されていない雰囲気があって、ドキドキした気持ちでこれからの展開を楽しめそう。次はいつ出るんだろう? 楽しみ、鶴田さんのイラストも含めて。

 タイムトラベルに関する小説の名前がわんさと出てきてタイムトラベル小説のタイトルでしりとりなんかをしたりして、SFなサークルの人たちを「やったやった」って感じに悦ばせそうな一方で、空間を飛べる能力を持った少女が録画してある「ツール・ド・フランス」に見入ったりするシーンとか、20年以上も昔にどこかで聞いたことがあるよーな、それとも単なる記憶違いかもしれないけれどミギワって自転車のパーツに関する言及があって自転車好きも悦ばせそー。ってかここまで深い自転車への言及ってSFでは始めてかもしれない。

 「ランドナー」って言葉がちゃんと盛り込まれているのが1980年前後に「サイクルスポーツ」を呼んでいた身にはうれしい限り。当時は「ランドナー」こそが自転車だったんだよ、一般人には。ロードはイノーとかメルクスとかが乗るものでピストは中野浩一用。MTBなんてまだなかったし。今時のロードにクロスバイクにMTBばかりが自転車と思ってる方々には是非にランドナーの美しさを知って頂きたいもの。なので新城さんには東京クロスボーのカンティブレーキにマファックのブレーキレバー、TAのチェンリング、ミカサのペダルにユーレーのディレーラーにブルックスの革サドルにトーエイのフレームあたりを続く巻で出して頂くと、ロードに押されて日東のランドナーバーがサイクルショップに売ってない現実に涙する古手の自転車ファンをも取り込めますと言っておこー。まるで暗号だな。

見よこの躍動を! 彼女の活躍があって日本はワールドカップに、オリンピックに出場できたのだ! 人妻でもないし若くもないけどメディアはこぞって持ち上げよ!  西が丘では「L・リーグ」の日テレ・ベレーザ対宝塚バニーズの試合。曇天とは言いながらも高い気温に選手達も大変そーで、前半はベレーザがかろーじて1点を取って折り返し、いつかのTASAKIペルーレ戦と同様に点の入らない試合になるかな、って想像していたところにバニーズが瞬間の奪取から前へと送り横から中へと放り込んでそれをゴール前で選手が頭で押し込み同点に。これで火が着いたのか交代で入った近賀ゆかり選手が中央あたりで猛爆を見せ前半は下がり気味だった大野忍選手も左右に中央に動き回って相手を攪乱。そんな中から2発3発と立て続けにゴールが決まって終わってみれば5点だか6点を奪ってベレーザの圧勝となった。

 あの暑さにも関わらず終盤になってもまるで落ちないベレーザの運動量に圧巻。女子ではとかく中央でごっちゃごちゃに選手が高まり蹴り合いになることが多いんだけどベレーザは1人が奪えば周囲にフォローが走りサイドがワイドに展開し、その前に走り込む選手がいたりしてそちらへと送り出してサイドから攻める場合もあれば、サイドをダミーに切れ込んで中央突破を図る場合もあったりと変幻自在の攻撃を見せてくれる。詰まれば即座にサイドチェンジ。そこにちゃんと人がいて、さらに前へと走り込む選手もてって具合に休みなく走る選手の多さにこれがボールも人も動くサッカーなんだと目を見張らされる。ボールだけが動く某代表のサッカーを見慣れた目にはものすごく目まぐるしく映るかも。でもこれが世界標準、なんだよなあ。

 終わって酒井與惠選手に200試合出場の花束がサポーターから贈られいい雰囲気。年間に30試合するかしないかって感じのリーグで200試合を出場するには相当な年月が必要だけど、それをきっちりとこなし一方で代表の方でも着実にキャップ数を増やしてる酒井選手はある意味澤穂希選手よりも荒川恵理子選手よりも日本の女子サッカー界におて偉大な存在、なんだけどそこはスターにばかり目を向ける日本のメディアの悪しき風習が、若いとかってだけで永里優季選手やら宇津木瑠美選手やらを持ち上げはやし立てて挙げ句に潰してしまうんだから質が悪い。せめて200試合出場を果たした週くらいは、スポーツニュースもサッカー専門誌もサッカー日刊紙も酒井選手を取り上げその偉大さを讃えてやって下さいな。3年前に見た時よりもぐんと綺麗になって来てるし。これマジで。


【6月18日】 実を言えばそれまで名前を意識したことも、作品を注視したこともなかったレオノーラ・フィニってイタリア出身のアーティストの日本では20年ぶりとかゆー本格的な展覧会で96年の没後初になる回顧展「レオノール・フィニ展」を渋谷のBunkamuraザ・ミュージアムで見物。これは良いっ! シュールレアリストって分類されてアンドレ・ブルトンだとかマックス・エルンストとった当たりとひとかたまりにされ、サルバドール・ダリにも通じる精緻な筆致からそっちと関連づけられて言われる事も多かった画家らしーけどなかなかどーして、どれもが実にオリジナリティにあふれメッセージを持ち強く、そして激しく何かを見る者に訴えかけて来る。

 台座の上に座る乳房もあらわなスフィンクスの絵が有名らしくポスターにも使われていてそれを見るとなるほどダリっぽい精緻さと発想性が伺えるレオノール・フィニだけど、そーした超絶リアルでシュールな絵ってものは割に初期に描かれた作品で、見るからに異次元へと誘ってくれる絵として楽しくレオノール・フィニ理解のひとつの切り口にはなっても、それで全体は語れない。だいいち画家を志したトリエステ時代の絵が続くシュールレアリスムの時代と違ってて目にも優しい肖像画群で、感じを言うなら有元利夫さん的ってゆーか柔らかい色彩でフレスコ画っぽい平面系の人物を描いててそれもそれで好きになる。有元さん自身がイタリアのフレスコ画に衝撃を受けて画業にのめりこんでいった人だから、トリエステで育ったレオノール・フィニが有元さんに通じる絵を描いてても不思議じゃない。歳から言えば先輩だし。

 そんな明るい世界から一転、シュールレアリスムの時代をくぐって次に進んだのが「鉱物の時代」でこれは色の出てきた時代のオディロン・ルドン的な沈んでいるのに絢爛に見える不思議な色彩の中に沈みそこから浮かび上がるよーな人物だったり、機械めいた人物だったりが描かれていてこれはいったい未来の図か、それとも異星の図かとSF心、ファンタジー心をくすぐられる。「ドラゴンの番人」なんて何がドラゴンで何が番人だか分からないんだけど、鉱物的で無機的で、なのにどこか生命感を持つモチーフがそこにあって「ドラゴンの番人」的な何かを想起させる、って言われたからそう思うだけかもしれないけれど。

 有元利夫好きにルドン好きも引っ張りもちろんシュールレアリスム好きを呼びつつそこに留まらないところがパリ社交界の花形だったレオノール・フィニ。「エロティシズム」と銘打たれたコーナーに並べられたのは女体もあらわな女性たちが描かれた作品群でそこには戯れる女性たちが持って男たちの目を引きつけて止まないエロスがあり、なおかつ女性にそんな関心した見せない男性の下心を見透かし引き寄せはじき飛ばすパワーがあり、女性たちが己に持つプライドがあって居住まいを糺される。運動めいたところはないのにメッセージだけは伝わる作品ってのは難しいけどそれをやってしまっていたんだなあ、感心。

 円熟期にはいるとシュールさがあり優しさがあって強さもあってちょっぴり黒さも出てきたりと実に様々。ダリに有元にルドンにデルヴォーにバルテュスに興味がある人たちを惹き付け満足させつつもしっかりとオリジナルな世界へと観覧者を引き込みファンにさせる。SFとか幻想とかに興味がある人もいって損なし。あっとあと猫好きも。アパルトマンに15匹とかって猫を飼いながらくらしてたって話のレオノーラ・フィニの絵にはふわふわとしてふかふかとした猫たちがいっぱい描かれていてその柔らかそうなボディをぎゅっと抱きしめたくなってくる。とにかくデカい猫ばかり。そんなのが10数匹もいたらきっと部屋は猫でぎゅうぎゅう詰めだったんだろーな。部屋一杯の猫。浸かってみたいなそんな部屋。タイトルに猫が入って猫好きっぷりが伺えるフィニの著書で、工作舎から昔出た「夢先案内猫」も復刊してるんで飼って、じゃなかった買って読もう。

   「弱体化なんてとっくに始まってますよ」「だから解任しろと言ったんだ」等々、「機動警察パトレイバー2 THE MOVIE」から借りた言葉を読んでつぶやきたくなった「スポーツニッポン」2005年6月18日付の金子達仁さんによるコラム。ワールドカップの出場権を獲得することを第一義と考えてそれまでは一切のジーコ批判を封印して来たんだぜってなスタンスでも取っていたのか、予選が終わって何だかジーコジャパンへの不満をぶち負け始めた印象で、今回も先の「コンフェデレーションズカップ」での対メキシコ戦の無様さを挙げて「このチームは昨日結成されたのですか?」って非難してる。

 「最終予選を勝ち抜いたチームとは思えないぐら、日本はバラバラだった」「アジアで点がとれなかったのは重圧のためかと思っていたが、どうやら、互いのベクトルがとんちんかんな方向を向き合ってるのが原因だったようだ」って内容のコラム。そのニュアンスには、ジーコジャパンのヤバさに気づいているのは自分だけ、他のメディアはワールドカップに出られて良かったねと礼賛ばかりしてるよーなポーズがあってそれはそれで気持ち悪いけど、言ってくれないよりは言う方が何倍もマシなんでそこは問わない。

 ただ「ベクトルがバラバラ」で「チームとしての日本の地からは、2年前よりも確実に弱くなっている」のはメキシコ戦で始まった訳じゃない。それは2年前のコンフェデでジーコ監督が見せた硬直化した采配による予選敗退の時点で何とはなしに予見できたことで、事実あそこでの戦いぶりをひとつの頂点にして代表からオートマチズムは失われ、選手たちが突っ立ち足下でパスを回しながらちょっとずつ前へと攻めていく、見ていて躍動感のまるでないサッカーへと転がってった。

 得点力は上がらずアジア予選では1次の段階で苦戦を強いられ「アジアカップ」でも同様に苦戦ばかり。それでも根性と奇蹟でトップはとれたもののそのサッカーが欧州ではとてもじゃないけど通用しそうもなことは誰だってわかってたし金子さんだって分かっていただろー、プロのスポーツライターなんだから。

 けどその時期には危機感を見せずどちらかといえば見守るスタンスを崩さずに来たのにここに来て一変しての弱体化宣言。けれどもチャンスだった監督交代の時期は過ぎて今は現状の体制のままで来年を迎えることがほぼ確実な情勢となってる。その2006年ドイツで日本がグループリーグ3連敗をして「だから1年前に言ったじゃないか」とアリバイにした考えでもあるのかってこの時期の掌返しを穿ち見たくもる。

 そこは自分の言説がそれなりに影響力を持っているって自負もあるだろーし、客観的にも影響力の高い金子さんだから、今ならまだ間に合う、ここがギリギリの戦だからコンフェデでの戦いぶりを見て即体制の建て直しに着手すべしってゆー、最後の審判を下してくれたのかもしれない。だったらなおのことメディアも足並みを揃えて体制の立て直しにベクトルを揃えるべきなんだろーけど、これだけはバラバラどころかジーコ万歳で揃ってしまっているからなあ。どーしてメディアってこーなんだろ。ともかくも次のギリシア戦が正念場ってところで日曜はテレビの前に正座して、ジーコジャパンの勇姿かそれとも愚昧さを見守ることにしよー。テレビがあるって良いなあ。


【6月17日】 更けて来たんでさあいよいよ開幕の「コンフェデレーションズカップ」でも見ようかとテレビを着けたら死んでいた。こんな時に近所にドン・キ・ホーテがあったら小さい液晶テレビでも買いに走ったところだけどそれもままらなず、仕方なく音声のみで実況を聞いていたけどさっぱり状況が分からずそのうちに瞼も重くなって眠って起きてニュースとか見たら負けていた。ああやっぱり。

 画面を見ていないからはっきりした所は不明ながらも内容は事前に予想していたとおりだったみたいで左サイドにいる彼の人が仕掛けてはとられとられては抜かれ下がっては茶野選手の邪魔をして得点(相手)に絡む大活躍。翌日の「エル・ゴラッソ」100号記念号に4・5点と最低の採点をされるくらいにいつもの三都主アレッサンドロぶりを発揮してくれたみたいで、なのに最後まで買えなかったとゆーその事実オンリーで今回のジーコ監督も去年以上の采配上のジーコクオリティを発揮してくれそーって期待が湧いてくる。次はブラジルに一蹴されたギリシャが相手だけどこれに4点差くらいで負けたらやっぱり考えないといけなくなるだろーなー、キャプテンも。さて。

 一方の右サイドの加地亮選手は何か食べたものが良すぎたのかそれとも横にいる鬼軍曹の中田英寿選手が怖ろしかったのかしきりに突破しては素早いクロスを入れる活躍ぶりだったよーで日本の得点シーンなんかをニュースで見ると走り込むタイミングとかスピードは、柳沢敦選手の触れて流し込むシュートともども欧州サッカーを見ているくらいに格好良かった。これも試合を見ていないからはっきりした所は分からないけど右寄りには中田選手がいてこれが前の小笠原満男選手を叱咤し加地選手も使う良い関係が出来ていたのかな。

 一方の左は中村俊輔選手にアレックス選手。どちらがどちらを活かすって感じじゃないだけにそれがお互いの良さを殺し合ってしまったのかもしれない。次の試合で変わらず先発も含めてその不動ぶりを見せてくれるよーならメディアも、ジーコ監督に口聞いてもらえなくなろーと堂々の論を張って問題点を指摘してもらいたいんだけど、それができるよーならとっくにやってるか。予選突破した途端に監督解任の話題が出るお隣の国がちょっと羨ましい。ごたごたしよーと6大会連続出場ってのはやっぱり凄いことだよ。

 ちょっと良い話。かどーかは分からないけど「ワールドユース」の方でオランダ戦でもベナン戦でも素晴らしいフリーキックを見せてくれた水野晃樹選手について、平山だ森本だって間抜けのひとつ覚えの如くやってた阿呆なメディアも放ってはおけなくなったよーでその繰り出される魔法のフリーキックがどーやって生まれるのかをスポーツニッポンの6月17日付けで紹介。「たゆまぬ研究と秘密特訓の成果だった」って記事によると同じチームにいるJリーグでも屈指のフリーキッカー、阿部勇樹選手からテクニックを頂いたってことらしー。

 それはまあ当たり前過ぎるけど、加えて「FK練習では壁に1メートル91、90キロと巨漢のオシム監督が立つ」ってことも水野選手のキックに正確さを与えた模様。だってオシム監督ですよ、世界のオシムですよ、おまけに60過ぎの高齢者ですよ、当てられません、当てたら命に問題が生じます。かといって上をただ通り過ぎるキックでは1メートル91センチではそのままゴールのクロスバーの上を超えていってしまう。外せば眼前にいるオシムが怒鳴るか怒鳴らないまでも睨まれるだけで「スゴゴゴゴゴゴゴオ」って擬音付きで迫って来るプレッシャーを覚えるあず。否応なしに超えてなおかつ落ち曲がるよーなキックを蹴れるよーにならなきゃいけない。巧くなるはずだよなあと納得。そんな訳で次のオーストラリア戦は水野選手が先発で起用されてすごいキックを見せてくれることを期待。ってかそーしろ大熊監督は。オシムは怖いぞ。

 そんな水野選手の大活躍(予定)が明日に迫っているんで近所のさくらやでテレビを買う。もはや部屋にブラウン管の大きな奴を入れるスペースはないんで(死んだテレビすら掘り出せない状況)否応なしに液晶テレビとなってしまってどれが良いかと悩みつつ、地上デジタルとか絶対に見ないしBSチューナーだったらハードディスクレコーダの方に付いているからとりあえずモニター機能さえあれば良いとシャープのアクオスの20インチの奴にする。

 お値段は8万2800円。他の日立とかソニーとか東芝あたりの同スペックのテレビと比べると1万円くらい割高だけどやっぱり液晶ってくればシャープになってしまうメビウスユーザー。実際に並べて見ても黒が凄いぞブラックトリニトロンだぞって感じに色鮮やかでコントラストも鮮明。なるほど売れる訳だと納得させられる。かつてはそーゆープレミアムをソニーのトリニトロンが持っていたんだけど、次世代のトリニトロンを開発できないまま今へと至って停滞の原因となっているのが栄枯盛衰とゆーか盛者必衰とゆーか。ともあれこれでしばらくは綺麗な映像でアニメとか見られるのが嬉しくなってDVDとかあれこれ買い込みそうでもらったばかりの棒茄はかくしてあっとう間に尽きるのです。ってもとから少ないんで尽きて当然なんだけど。不惑で手取りが某つぶれかけてるDPEチェーンの名前ってのはないよなあ。築地とか大手町(皇居寄り、または鍛冶橋寄り)なら30歳の月給だよ、それも手取りの。困ったなあ。


【6月16日】 だからなぜ水野晃樹選手を初っ端から使わないんだ大熊ジャパンU−20。アフリカの小国ベナンを相手にすっかり勝つ気でいたらこれがどうした、当たりは強く足下も巧くスピードもあり戦術までもが備わっていてボールを持った日本代表選手にそれをさばく時間を与えず焦らせる。切羽詰まって大きくけり出すくらいしかないけどそれがことごとく相手に渡って反撃を喰らうとゆー悪循環で前半ままるで良い場面を見せられなかった。

 後半も似たよーなもので最前線に頑張る平山相太選手も周囲をぎっちり固められては仕事にならない。ってかあれだけ固められてるんだたら動いてはずしてもらって落として走るくらいのことをすれば良いのにあんまり巧くないのかそれとも、大学リーグでなまったのか弾際に強さを見せず得点を奪えず水野選手から「あのデカイのが点を入れてないから」セットプレーでしか点にならないと怒られる。「あのへディング能力があるんなら入れなきゃ」ってのは同感。けどそれを言うのは本当だったら大熊監督で、それができないならば外して後方からぼんぼんケリ込むだけの戦術も変えてのぞまなくっちゃいけないのに、動ける選手を外して動けない選手を残す謎采配を見せては見ている観客を唸らせる。うーんうーん。

 業を煮やした水野選手の豪快にして直撃のフリーキックが見事に決まって同点にはなったけど、その後も相手を崩す場面には至らず結局そのまま終わってこれで勝ち点は1と、次のオーストラリア戦に勝たないとちょっと決勝トーナメント入りが難しい立場になってしまった。まあ勝つだろーし3位でも進めるらしーんで引き分けでオッケーって気もしなでもないけれど、相手が凄いスピードど身体能力で攻めてくるオランダなりゾマホン、じゃないベナンとは違ってたぶんハッスル系のプレーを見せて来るオーストラリアだったら水本入りの4バックに家長左で右水野で中に本田兵藤あたりを入れてトップはカレンに前田あたりでサブ森本ってな感じの前向きな布陣を敷いてもらいたいところ。だけどやらないだろーなー、やったら1戦目からやってるよなー。それが大熊クオリティ。まあどっちにしたって始まるコンフェデのフル代表よりは見て目に楽しい試合なんだけど。それがジーコクオリティ。

 格好良いなあ。でもって面白いなあ。「コミックバンチ」でチラっとだけ連載を読んだ記憶があったけどまとめて読んだらやっぱり絶頂に面白い漫画だった深谷陽さんの「スパイシーカフェガール」(宙出版、1100円)は濃そーに見えて案外にポップな絵柄で繰り広げられる、ハードボイルドに見えて結構コミカルなストーリーに誘われて次へ次へとページをめくらされる。始まりは1軒のエスニック料理店。仕事をなくして立ち寄った青年がその味に感動し働いていた韓国人のウェートレスに魅せられ調理場スタッフ募集の張り紙に応募して現れた店長が天辺だけを残した坊主頭の筋肉ムキムキな強面の男。怯えつつもその腕前に引かれ働き始めた青年・小野哲也に次々と襲い掛かるちょっぴり怖くて、けれども愉快なエピソードが綴られる。

 韓国人ウェートレスに持ち上がっていた事件が料理の得意な店長の別の1面によって知らないうちに解決していたり、アフガニスタンから連れて来られた少女をめぐって起こるアフガニスタン側と米国側の綱引きみたいな事件の中で店長がこれまた凄腕の男たちも寄せ付けない強さを発揮してみせたりと、謎の男っぷりを散々っぱら発揮してくれていてわくわくさせられる。ついでに韓国人ウェートレスの次に雇われてきたエリーって娘も凄腕の男を殴り蹴り飛ばして気絶させるパワーの持ち主だったりして、そんな得体の知れない奴らの間で哲也が振り回されつつも料理にかける熱情を、保ち発揮してみせるところが読んでとっても胸をすっとさせる。料理の腕で強盗を改心させられなかった所を悔やむ部分。ちょっと胸打たれます。

 振り回された挙げ句にとりあえずは日本に残って哲也とエリーの手伝いを始めたアフガニスタン人の少女が言葉を覚え頭の良いところを魅せながら働く姿の可愛さっていったら、どんな”萌え”少女をも上回るものがあって頬ずりしたくなる。そんな少女がおまけ的な短編でもって気丈に振る舞いつつも大粒の涙をこぼしてアフガニスタンに帰らざるを得なくなる場面の切なさたるや。これが書き下ろしとして加わった完全版として「スパイシーカフェガール」は発刊されたらしーけど、これで完結ってのはあまりに悲しすぎる。可哀想過ぎる。切なすぎるんで深谷さんにはここからさらに続けて少女が再び哲也やエリーやマスターたちと見え、ともに危険をかわしながらも美味しい料理を出して悦ばれる物語を紡いで欲しいってのが今の切なる願い。無理かもしれないけれど是非に。どこかの漫画誌が描かせないかなあ。

 今年も鈴鹿8耐に「仮面ライダー」がやって来る。3年目なんで「555」でも「剣」でもなくって当然に「響鬼」でライダーも手に輝くバチを持ってバイクにまたがり走り出すんだけど両手がバチに塞がれていてハンドルが切れずカーブで突っ込みリタイアしてしまいました。なんてことはなくって載るのは山口辰也さん徳留和樹さんに高橋江紀さんのプロのライダーが乗るんで変身はしない代わりにリタイヤもなく順調に8時間を走り抜けそー。去年はクラス2位で総合でも4位と好成績だった「ライダー」チームが今年は直前の300キロレースでもそれなりな成績を修めて望むってことでクラスでも1位、総合でも1位を狙うとか。ホラではなくって実際に。

 もしも叶ったら翌日の新聞は「仮面ライダー、優勝」になるんだろーな。ならないか、バイクのレースじゃ新聞のトップには。それにしても3人ともちっちゃくて可愛らしいライダーばかり。巨摩郡みたく触ればキレそーな人も「ふたり鷹」の両鷹みたく細身の熱血または冷静な人もいないのはそれが漫画の世界でしかなかったからか。実際にバレンティーノ・ロッシもちっちゃくて細くて繊細そーだし亡くなった加藤大治郎さんも可愛い系だったからなあ。ってことでグランプリライダーを狙いたい人にはまずデカくならないよーに成長を抑え、童顔のまんまで育つことをお勧めします。


【6月15日】 歩いていたら「6月は環境月間です」ってコピーとともに「スターウォーズ エピソード3 シスの復讐」の場面が描かれているポスターが貼ってあってどうやら環境省とルーカスフィルムが環境月間でタイアップしたっぽいんだけど、描かれてるのが涼しげな顔をしてるプリンセスではなくって夏でも冬でも常に黒いマントを欠かさないベイダー卿。手袋長靴で固めたそのボディは見るからに暑苦しそーで環境省も率先して「クールビズ」だと行っているならまずはルーカスフィルムに言って、ベイダー卿に「クールビズ」を実践sて頂くとか出来なかったのかと憤る。

冷房は28度にするのだシュコー。それが環境のためになるのだシュコー。暑くなんかないぞムハー。  ステテコ姿でヘンリーネックのシャツ来て手には扇子のベイダー卿。サンダル履きでデススター模様のアロハを着て手にはトロピカルドリンクを持つベイダー卿。それなら見るからに涼しそうで環境月間のキャラクターに相応しい。ただし頭は変わらず例の黒いマスクをつけたまま。だって外すとベイダー卿って分からなくなってしまうから。それともプロレスラーのメッシュのマスクと一緒で夏仕様のベイダー仮面ってあるんだろーか。表だけで後ろがなくってヒモで縛ってあるだけ、とか。周囲に群れるトゥルーパーたちも全員が半袖開襟シャツで白いズック靴で勢揃い。夏場に修学旅行に行く中学生ファッションだねえ。

 「東京新聞」と名乗るより「東京”萌え”新聞」と名乗るべきだと6月15日付け「東京新聞」を見て思う。「オタクが握る景気浮揚の鍵」って記事はよーするン昨今の「オタク銘柄爆上げ事件」に絡んでだったらその状況は、根拠はって所に迫った内容で冒頭からブロッコリーの会長となった木谷高明さんが写真入りで登場しては株価高騰への所感とか、これからのオタク市場についての展望とか語ってる。曰く「百年後、日本史の教科書には『二十一世紀の初頭、東京・秋葉原を拠点に萌え文化が花開いた』と必ず載る気がする」とか。そんなことはない。世界史の教科書には載るかもしれないけれど。「秋葉原を拠点に萌え革命が起こり秋葉原に住むあの御方が女王となって独立国家をうち立てた」とか何とか。

 それにしても見開きで250行くらいあって一般紙にしてはすごい分量。「デ・ジ・キャラット」だけでなく「プチ・キャラット」に「ラ・ビアン・ローズ」の絵まで載っていたりと大盤振る舞いで今はちょっとマイナーになりかかっててこれからメイド喫茶のイメージキャラとして復活を目指す「でじこ」にとって良い露払いになったかも。コメンテーターには森永卓郎さんと森川嘉一郎三が登場。あと「AERA」の最新号でペンギンの着ぐるみ姿で東池袋に赴いて腐女子文化を取材した有吉有香記者もコメントを寄せている。どマイナーな新聞でいくらオタ記事書いたってコメントは求められないし官公庁の審議委員には呼ばれないのに、雑誌で超一流記者がペンギンになると一気に有名になるんだなあ、これが希望格差社会って奴なんだなあ(ちょっと違う)。

 同じ「東京新聞」は15面に例の「ハッピー☆マテリアル」をチャート1位にしようぜ運動についての記事で経緯から成果について結構詳細に書かれていて状況がつかめる。まま個人的には幾ら有名歌手がアニメソングのランク入りに嫌悪感を締めそうと、音楽番組があんまり話題にしなかろーと売れた数字は数字であって、むしろ真夜中に放映されてるアニメの主題唄が3位に入るんだったらそれはそれで凄いことじゃん、良かったじゃんって思って終わり。貶され虐げられて腹立たしいから1位にしてやれって感慨はあんまり起こらない。逆に作品への愛情を超えた、目的としての運動性が透けて見えてどうしたものかと身を引いて眺めたい気になって来る。

 大昔に「宇宙戦艦ヤマト」のエンディング曲「真っ赤なスカーフ」がチャートのあれは1位だったっけ、獲得して面白がれたことがあったけど、当時もいろいろ運動があったらしーけど誰も知らない作品じゃなくって一種ヤマトブームが起こっていた中での出来事で、だから大勢の共感も得られて問題にもならなかった。飯島真理さんの「愛・おぼえてますか」なんて普通に「ザ・ベストテン」で唄われていたし安田成美さんの「風の谷のナウシカ」だって同様。それを見て良かったなあ、とは思ったけれど1位にしようって気は起こらなかった。ネットでバカ騒ぎする楽しさってのはそれで十分にあって認めるに吝かではないけれど、共感作用を起こしながらあり得ないことを起こすのが楽しいんであってそれはそれで満足すべき成績に憤っている一部の運動にはなかなか共感は発生させられずむしろ反感を招きかねない。その辺りの塩梅を勘案しつつ進めて頂ければ悦んで応援いたします。でも僕「ねぎま」見てないよ。

 陸上の男子100メートルで世界記録が出た朝に思うこと。選手の履いていた靴着ていたウェアのメーカーに聞いてそれの特殊性なり開発秘話を紹介しろって偉い人は言うだろーな。なるほど理屈は分からないわけじゃない。陸上競技の雑誌だったらそれもありかもしれないけれど経済のメディアにそんな情報を載せて誰が読む? 誰の役に立つ? 誰もが知ってるメーカーだ。そこが作るものの凄さも周知の事実だ。同じ物を作れば勝てるなんて思っている同業他社なんていやしねえ。いたとしてもメディアに載るような情報なんて先刻承知。むしろ載らない秘密にされている情報の方を求め日々収拾に精進している。つまりは役に立たないって訳だ。

 運動をしている人が読む? でもってそのメーカーの商品を欲しがるようになる? おいおい陸上選手だったら誰だって使ってるメーカーだぜ。今さら優勝者が履いていよーがそれを改めて欲しがる奴なんていやしねえ。いたとしたら小学生か中学生だろう? でもってそんな奴らが経済のメディアなんか読んでやしねえ。結局のところ誰の役にも立たない記事が、それを載せることによって何か特別なことをしているんだって思いたがりたい輩の自己満足として掲載される。自己満足だから他の誰も満足しない。事実満足しなかった。満足してたら去年のアテネ五輪でやったどんちゃん騒ぎで売れ行きが倍になってたって不思議はない。結果は? それは事実が証明してる。にも関わらず変わらない。変えようとしない。それでどうなるか。どうなるんだろう? 夏の青空がまぶしい。


【6月14日】 「不幸最低拳」って……。漢字で言葉をつければそれなりに見えるって言えば言えるけどさすがにこれには引きました。「創世のアクエリオン」は不幸を招く女だと自分で思い込んでは落ち込んでいる麗華が冒頭第1話で敵にやられ倒れた同僚の苦しむ姿になおいっそう落ち込んで家出してしまったところに神話獣。仲間たちが倒れていく中で麗華は目覚めベクターマシンに乗って合体を成し遂げそして不幸のどん底に落ちて苦しむ自らのエネルギーで拳を放ち敵を倒す。だから「不幸最低拳」。当たりたくねえ。

 作画がどことなく妙でキャラクターがいつもとちょいズレてる感じがしたのは致し方ないことだとしても、さらわれた子供たちがいつの時代のだって思わせられるデザインのバスに閉じこめられたまま湖の底にいるのを助けて救うってゆー、1970年代風巨大ロボットアニメにあって不思議じゃないストーリー展開にはちょっと驚いた。懐かしいっていえば言えるし王道だって言えば言える。けど深夜のアニメでやられてもあんまり愕きはしないなあベタ過ぎて。それとも海外ではローティーンを狙っているのか。ともあれ復活した麗華のこれからの活躍に期待……って思ったら不幸の底にはさらに下があった模様。救われねえ。次回は絵、まともそうで安心。

 課題図書で回ってきた藤谷治さんの「恋するたなだ君」(小学館、1400円)が面白い。デビュー作の「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」(小学館、1300円)もおもしろかったけどあっちは大人の青春コメディ小説って感じで痛快だったのが、こっちは純情ストレートな恋愛小説にちょっぴりの不条理性幻想性も混じって当たるもの出るものすべてに意外性があって、どこに連れて行かれるか分からない感覚にわくわくわくわくさせられる。

 日産が昔出してた「パオ」って車を走らせていたら迷い込んでしまったどこかの街で、たなだ君こと僕は女性の後ろ姿を見かけて脳天に光が走る。そのまま車で後を追っかけクラクションを鳴らして振り向かせ、逃げるよーに彼女が入っていったビルの壁面に車をぶつけて停車させて、裏口でハンプティダンプティみたいな警備員とこんにゃく問答を繰り返し、表に回って入ったロビーで金ピカの布袋様に頭から突っ込み強盗だと間違われて捕らえられた牢屋でもやっぱりつかみ所のない問答。そんな時に食事を持って現れたのがまさしく一目惚れしてしまった彼女だった。

 そして動き出した物語は一目惚れの恋が本当の恋へと変わるっていうか、そもそも恋ってのは何っていうか、好きっていう気持ちがあればそれはそのまま恋なのか、それとも恋はひとときの経験であってすぐに過去へと押し流されて、その後で”失恋”へと変わるのかそれともそこから”愛”って奴が生まれてくるのか、ってな具合に人間が抱く感情の中でも最大にドキドキワクワクとさせられる「恋」について、あれやこれや考えさせてくれる内容になっている。

 だからといって小難しさは皆無で絶無。粗暴で身勝手でお節介なホテルの社長とか桃が大好きな秘書さんとか、奇矯な奴らの破天荒で不条理な行動に巻き込まれるたなだ君が恋した彼女と逃避行しながら育む恋って奴の素晴らしさを感じ浸って楽しめる。不条理が不条理のまんま心に棘を残して終わることなく、不条理であってもそれが誰もをハッピーにしてくれる展開もグッド。見上げた空を行く七福神。きっと鮮やかだったんだろーなー。

 経営している書店フィクショネスのページにある日記に「不思議の国のアリス」との関連性なんかを書いているけどこれを読まずに本だけ読んでて感じたことはまさしく「アリス」のめくるめく繰り広げられる不条理展開との共通性。可愛いお嬢ちゃんではなくって29歳でのっぽで社会から必要とされてないんじゃないかと迷っているたなだ君ってところが男性諸氏にの読者には同族嫌悪を受けそうだけど、一方で誰もが抱いている今への不安を体現してくれつつも、そんな不安を一発で解消してくれる出会いの素晴らしさなんかを教えてくれてて読むと生きてりゃ良いことあるかもって思えて来る。

 とにかく不思議で楽しい小説。こんにゃく問答の場面とか頭がねじれそうになったりと描写にも巧みさが出ている感じ。個人的には牢屋でたなだ君が運ばれてきた「トマト・ド・サルタンナントカ」を食べて言葉が出せないくらいの美味しさで、それを分かち合おうと運んで来た彼女にも食べさせようとする場面が好き。「美味しいものに言葉はいらない」感覚が読んでびんびんに伝わってくる。もし映画化されたらいったいどんな描写になるんだろうなあ。演技させるにはやっぱり最高の料理が必要になるんだろうなあ。「味っ子」みたいに吹きだしで火山を爆発させる訳にもいかないし。それってよっと違うし。

 あんまり面白かったんで下北沢にある書店フィクショネスまで行ってカバーが外されている課題図書とは別にちゃんとした「恋するたなだ君」を購入。本当に作者の人が店長さんをしていたよ。「アンダンテ・モッツァレラ・チーズ」はなくって「おがたQ、という女」も見えなくって聞いたら「おがたQ」や注文中らしいのでまた行って買おう。それにしてもしばらく前の嶽本野ばらさんといい、大ベストセラーの片山恭一さんといい市川拓司さんといい売れて読める作家をどこからともなく連れて来るなあ小学館。文芸に妙に伝統のある出版社よりもその辺は巧くって誰か凄腕の編集者でもいるのか聞いてみたくなる。そんな中に入って知名度ではまだまだな藤谷さんだけど、いずれ居並ぶベストセラーな人たちに入って名を上げてくれると期待。次は島本和彦さんの漫画で映画にもなった「逆境ナイン」のノベライズ「試験に出る不屈闘志」だそーであの熱血の世界観を藤谷さんの筆がどう描くかに興味。


【6月13日】 桜坂洋さんに「ミツアミメガネ番長」の執筆を断念させたとも噂される沖田雅さんの「先輩とぼく」の最新第5巻は、学園祭を舞台にはじめくんがつばさ先輩の元の体が持っていた豊満で迫力たっぷりのボディをコスチュームで包んで喫茶店の店頭に立ち、学園祭を脅かす敵と戦う戦隊のメンバーとなって和装に身を包んで駆け回る楽しくも見目麗しい展開が続いて、相変わらずのはじめくんのイジられっぷりに心沸き立つ。元のつばさ先輩が体も心も一致していた時代では起こらなかったつばさ先輩のボディへの賞賛が、はじめくんの心が入った途端に起こるってのはつまり人間は中身ってことなのか、それとも中身が伴ってこその体ってことなのか。中身が原因で誰も寄りつかなかったんだとしたら、そうとうに凄まじい中身なんだなあ、つばさ先輩って。

 そんなドタバタ劇の裏側で生徒会長の恋ってのにも筆を割いている辺りが巻を重ねてますます向上している物語作りの腕前の冴えって奴で、過去につばさ先輩からいろいろされて人間不信となっていた生徒会長が、だったらどーしてオーラ=レーンズちゃん(ロボの方だけど知っているのはごく一部)には好意を抱いたのかって辺りを考えさせつつ最後に地球が再び狙われているっぽい状況を示唆して次に続けるところが難い。あととっても下品で醜悪なタッキーが、半ば妄想気味の執着であってもそれを貫き通すことでひとつの幸福を得るって展開が、美醜に悩んでいるより心を真っ直ぐに持つことの方が大事なんだって勇気を与えてくれる。そっか人間はやっぱり中身か。けどそれも相手かオーラ=レーンズだったからで一般人にそんなことをしたらすぐさまストーカー呼ばわりされて監獄へと叩き込まれるからご注意を。執着するなら相手は選ぼう。そんな相手は兆に1人もいないだろーけど。

 すごいぞ「kami−robo」。やったぜ「kami−robo」。安居智博さんって京都出身の造形作家の人が、小学生時代から作り続けプロレスのよーなリングの上でプロレスのよーに団体を作って戦わせ続けて来た紙製のロボット「kami−robo」は、バタフライ・ストロークって企画・広告会社を率いる青木克憲さんのプロデュースもあって去年あたりから有名になり始めてて今年、ついに「PARCO」で展覧会まで開かれる快挙を成し遂げバンダイからグッズ、エイベックスからDVDも発売されてひとつのキャラクタービジネスが起こり始めていたんだけど、そんな「kami−robo」がプロレスってゆー重要なファクターをまんま取り入れたイベントへと昇華して、この8月3日に公衆の面前へと登場する。

 その場所は「後楽園ホール」。ジャイアント馬場が、ジャンボ鶴田が、アントニオ猪木が、長州力が立って戦ったプロレスの聖地でもって「kami−robo」が戦うことになる訳で、例えて言うならエポック社の「サッカーゲーム」をイングランドにあるサッカーの聖地、ウェブリースタジアムへと持ち込んでピッチの中央で対戦するよーな素晴らしくも凄まじい展開に27年間をひたすら「kami−robo」を作り続けて来た安居さんも、激しい喜びを感じてるんじゃなかろーか。当時に激しい不安も覚えているんじゃなかろーか。

 もとはと言えば一人遊びの産物だった「kami−robo」を、後楽園ホールに集う数千人の前で行うってことが招く感情やいかに。全長15センチ程度のロボットを、ちょこちょこと戦わせている光景が大スクリーンに映し出されえそれを集まった人がじっと見入る。普通の神経では操るどころかリングにだって恐れ多くて立てないんだろーけど、そこは思いを込めてひたすらに「kami−robo」を作り続けた安居さん、臆さず震えずその思いのたけを手に持つロボットたちに込め、戦わせてくれるんじゃなかろーか。これは行かねば。ちなみに会場には新崎人生さんほかみちのくプロレスの面々も登場してエキシビションマッチを行ってくれるそーでこれもこれで注目。成功したらやっぱり次は武道館、そしてドーム公演だよなあ。5万人を前に戦う「kami−robo」たち。ちょっと楽しい。

 大地丙太郎監督の「少女隊」好き、わけても安原麗子さん好きは今に始まったことじゃないけれど、「十兵衛ちゃん」のオープニングに「少女隊」を使い声優に安原さんを起用し「風まかせ 月影蘭」では主役に抜擢し「アニメ制作進行くろみちゃん」でも声優に起用して来てそして今度は舞台への起用となると大地さん、やっぱり相当に安原さんにイレ込んでるだろーな。マーベラス音楽出版とネルケプランニングが先週の「スクール・ランブル」の舞台化に続いて今度はアニメの監督を使った舞台制作に参入。その第1弾が大地監督を演出に迎え安原さんを主役に据えてチャンバラ演劇で評判の「BQMAP」に舞台面での演出協力とそして役者を仰いで作り出す「風まかせ けやき十四」 で、発表会には着物姿の安原さんが登場して「フォーエバー」を唄ってはくれなかった残念。

 思えば20年近くをデビューからこっち、見てきたアイドルなんだけどさすがに重ねた年限は長いのか、登場した安原さんはスタイルこそ細身でスリムなんだけど表情なんかはそれなりにそれなりで、それはそれで好ましかったけれどもかつてを知る目にはなかなかに感慨深いものがあったかもしれない。でも綺麗は綺麗だったなあ。舞台はあと「十兵衛ちゃん2 シベリア柳生の逆襲」で柳生喜多歩郎を超格好よく演じた前田剛さんが素顔で登場。アニメでファンになった人はその尊顔を拝しに行こう。「十兵衛ちゃん2」で殺陣の参考演技を担当した高瀬郁子さんも出るよ。安原さんに負けず劣らず綺麗だよ。ちなみにマーベラスではこの後もアニメ監督を演出に迎えた舞台を作っていくそーで、大地さんに続いて誰が登場するのかがとりあえず楽しみ。幾原邦彦さんで「少女革命ウテナ」を今一度、ってのも古いんで誰か話題の監督による話題の舞台ってのを提供してやって頂きたい。庵野秀明さんならどんな舞台を作るかなあ、とか。


【6月12日】 仕事が押してて、ってゆーか半月前から分かっていた期限の直前まで動かなかったツケが回って、お茶の水の「VELOCE」に籠もってジグジグと原稿を打っていた間に臨海で行われたナビスコカップの「ジェフユナイテッド市原・千葉vsFC東京」の試合は、チャンピオンズリーグ決勝のリヴァプールみたいな大逆転劇だった模様で現地で見なかったことを激しく後悔。近所の総菜屋さんにいる立石さんの息子さんも登場した模様で、リーグでは櫛野亮選手がレギュラーを張っててなかなか登場できないけれど長く頑張っている立石智紀選手を、大敗さえしなければ本番に進めるってこともあってか起用したオシム監督の粋な采配を間近に見られなかったことも残念だけど、そんな”温情”が前半は温さを招いたみたいで2点を奪われてしまう。

 そこでオシム監督、ハーフタイムに「うぬぼれたプレーをしている。サッカーは何が起こるかわからない」と檄を飛ばしたその甲斐もあって後半に怒濤の攻めで3点を奪い返して大逆転。本当だったら代表にぶっこ抜かれてたって不思議のない阿部勇樹選手佐藤勇人選手坂本將貴選手巻誠一郎選手斎藤大輔選手が揃っている強さはあるけれど、一方で水野晃樹選手水本裕貴選手とマリオ・ハース選手の主力3人がいなかった訳で、にもかかわらず変わらないプレーを見せられたのはそれだけ普段からの仕込みが良かったんだろーと理解。これでしばらくジェフ千葉の試合が見られなくなる訳でその間にワールドユースで水野水本両選手にはクインシー選手級の超弩級なプレーを目の当たりにして成長して、日本のサイドで捏ね回すよーな代表選手を包みはじき飛ばして見る影もなくさせるよーなプレーを見せてくれるよーになって頂こう。それでもやっぱりどちらもフル代表には呼ばれないんだけど。

 そんな試合後にフル代表について答えたオシム監督のコメントが実に意味深。外国の言葉を日本語に訳していることに加えて伝える側、伝えられる側にそれぞれのバイアスがあって勝手な解釈をそこに入れてしまいそーで難しいんだけど、額面から解釈するならやっぱりこれってどちらかといえばマイナス方向への評価なんじゃなかろーか。「正直に答えれば、しっかりとした結果のためのサッカーをしたと思います。そういう意味では素晴らしかったと思います」って言葉は状況への認識の表明。ワールドカップ出場という目的のために戦い結果を得たことを認めない訳にはいかない。ただ気になるのが「結果を出したわけですけど、メンバーの構成を見れば、例えば完全にガチガチに守るようなメンバーではありません」と続けている部分。結果はともかく内容についてはどうだろう、ってニュアンスを読みとろうと思えば読みとれる。

 「要は有名な選手、経験のある選手、そしてチームとしてちゃんとボールを動かせる選手をピッチに立たせながら、しかも確実な結果を出した」。攻めれば圧倒できる選手を揃えているにも関わらず、確実に勝つためのサッカーをしてしまったとゆー現実を踏まえて「ものすごく賢かった」とつなげる言葉は、一方では大舞台を戦う時のひとつの選択肢として間違ってはいないと認めつつ、一方でチームの実力を見極めているのか、ポテンシャルを引き出そうとしているのか、っていった見方もできないことはないんだって、教えてくれているよーな気がする。

 それ故に「日本のサッカーがこれから発展していく、また大きな機会を得たと思います。ポジティブに考えて、これからワールドカップまでの1年間、またそれからの数年に対して、これからすごく発展できるシチュエーションを得たと思います」って言葉は重く受け止める必要がありそーで、せっかく得たチャンスを同じよーに「確実な結果」のための「賢い」やり方で潰し続けるんだとしたら、やっぱりA代表には新しい指導者を求めるべきって気がしてくる。「日本の選手というのはヨーロッパの選手が持っていない、素晴らしい資質も持っていますよ。それは私が言う必要はありません。そういうものを日本人はもうすでに見せています」って言葉を今噛みしめるか、1年後の7月に振り返るかで残り10年の日本のサッカーってものも変わって来ると思うんだけど、そんなオシムの言葉は果たして文京区のビルにある彼の人の耳に届いているんだろーか。届いてないなら誰か届けて欲しいなあ。届いたって聞かなさそーだけど。

 蒸し暑さの中を眠り起きて録画と同時にテレビが着いた「交響詩篇エウレカセブン」をそのまま鑑賞。うーん別にレントンが事情を知らないが故の我が儘ぶりを発揮しれホランドを怒らせ殴られる展開は構わない。レントンの周りを察する能力のなさに辟易とはするけれど、たかだか14歳のガキにそんな分別を求めるのも大人気のない話でレントンがそこからどうして殴られなければいけなかったのかを考え、ホランドもどうして殴ってしまったのかを自問するよーな展開があればそれはそれで大人も子供も納得できる。いたずらに暴力を振るう大人への反発にもならず無分別さを振り回すだけの子供への憤りに終わることもない。

 気になったのは街を破壊し住民を虐殺したエウレカをレントンがあっさり認めてしまったこと。だって今、目の前で大勢の人たちが軍の爆撃を受けようとしていることにとっても憤っているレントンがだよ、過去にそれ以上の破壊を繰り返して爆撃だったら避難できても虐殺からは逃げられなかった大勢の人たちを、その手で屠ったエウレカへの怒りをどうして抑えることが出来るんだよ。それ変じゃん。それとも目の前で行われていない虐殺よりも、目の前で始まっている爆撃の方がレントンにとっては罪として重たいことなんだろーか。

 戦争反対、人殺しはいけないこと。そんなメッセージを伝えたいからこーゆー展開にしたんだとしても、こんなにアンバランスな人命の取扱方じゃあ、子供だって納得しないんじゃなかろーか。ってかこれで納得してしまう子供がいる方が心配だ。自分も戦争に荷担しているんだよ、って聞かされて愕然とするかと思ったらスルーだったのも疑問。一応は過去の罪に縛られ動けないエウレカを煽り、ニルヴァーシュを動かし軍をそれも人死にを出さないように撃退してみせたよーだけど、だったらこれからもそんな博愛の戦い方をし続けるんだとしたら結構面倒くさいことになりそー。それとも罪もない人を殺す軍の人は殺しても罪にならないというラインを引いて見せるのだろーか。それもそれで殺伐とした印象。さてどんな塩梅を見せてくれるのか。作っている人たちの手腕を見守ろう。

 眼鏡っ娘だ可憐な眼鏡っ娘の登場だ近寄りたい跪きたい頬ずりしたいっておいこりゃなんだ蔓だ花びらだ彼女はいったい何なんだ。吸血鬼。そうです彼女は花が血を浴びて生まれた植物系の吸血鬼。成田良悟の「ヴぁんぷ2」(電撃文庫、570円)に登場のセリムちゃんは表紙のエナミカツミさん描くイラストからして超絶的な可愛らしさを持っているけどだからといって見かけ通りじゃないのが「ヴぁんぷ」の世界。そんなセリムちゃんを大好きになるヴァル君もセリム以上に数奇な生まれを持っていて、それ故に自分はどこから来たのかって悩みを持っててそんな悩みある故にヴァル君の存在はとてつもなくって、彼をめぐって一波乱が起こりそうってところで話は終わってて続く夜編への期待が膨らむ。早く書いてよ成田さん。ゴシックウェアのテレジアちゃんに鎧姿ですごい技を使うルーディくんのグールのカップルの力の秘密なんかも気になるなあ。


【6月11日】 ワールドユース日本代表がジオン軍だったらきっと「オランダの7番は化け物かっ!」って叫んだだろーし連邦軍だったら「通常の3倍のスピードで迫れる選手なんてクインシーしかいない」と怖れおののき死を覚悟したんじゃなかろーか。午前3時過ぎから始まったU−20ワールドユースのオランダ代表対日本代表の試合はしょっぱなからオランダが怒濤の攻めを見せてポゼッションを制圧。加えて左のサイドをカール・ルイスかカルビン・スミスかモーリス・グリーンかティム・モンゴメリとしか思えないくらいに腕を高速で振って突進するクインシー選手が、当たる日本の若い選手を蹴散らし直進してはゴール前へと迫り横パスから2点目をバベルに叩き込まれて万事休すの予感に震える。この突破を見ると同じ左サイドを任されている日本のA代表の例の御方がますます地蔵に見えて来るなあ。

 けどさすがにシャア1人では連邦軍も倒せなかったように前半40分から登場したカレン・ロバートが前戦からプレスをかけ、後半途中から入った水野晃樹選手も頑張りフリーキックから平山相太選手に飛び込ませて1点。続いてカレン・ロバート選手が絶妙のトラップからフリーを作り出すも上に上げてしまってゴールを奪えず、森本貴幸選手が入りシュートを放ってキーパーの手からこぼれさせてもそこに飛び込んだカレン選手が1歩及ばず得点できず。かくして2対1のスコアでオランダに破れてしまったものの最初の20分間をのぞけばあとの70分間は、それなりな戦い方を見せられたってことで続くベナンにオーストラリアとの試合を連勝して、勝ち点6で決勝トーナメントへと進む可能性なんかも見えた気になった。

 けど何が起こるのか分からないのがサッカーって奴だからなあ。次は後半に良かった水野選手カレン選手を使いつつ本田圭佑選手からのスルーパスも出るように、中盤をすっ飛ばして上空をボールが行き交うよーな試合運びにはしないで頂きたいと大熊清監督には遠い日本から念波を送ろう。でもきっとあの巨大な声にかき消されて届かないんだ。アウェーでオレンジ色に染まるスタジアムでもでっかく響いていたもんな、必殺の大熊声って。うまくグループを抜ければ次にオランダと当たるのってやっぱり決勝? そこで7番ともども撃破だ。A代表の経験もあるマドゥロ選手にバベル選手クインシー選手の3連星によるジェットストリームアタックをかけられたらちょっと分からないけど、そのときは「ジャパンの白い奴」に頭を踏み越え返り討ちにして頂こう。無理かなあ。無理かもなあ。

 「ルカ 楽園の囚われ人」に続く電撃大賞受賞者の七飯宏隆さんの小説は「座敷童にできること」(電撃文庫、590円)ってタイトルが現すように日本に伝統の妖怪の一種、座敷童が主人公。人間の側に寄り添いつつ見える人にだけその姿を見せながら人間を護り続けて幾星霜。けれども最近はすっかり勢力を殺がれてしまった座敷童たちの中で、ただ独り、力を保ち続けていた座敷童の少女・未麟が新しい家主となった少年と、うまくやれるかどうかってラブコメチックな導入部から、物語は座敷童に挑むワラシモドキとの激しい闘いへと進んでいく。

 家主の少年を仲間に引き入れようと、徹底した医学万能主義者の青年に魔術を信奉する女性に超常現象を探る少女の3人組が迫る展開のドタバタとした雰囲気は悪くないけれど、彼ら彼女たちを裏で操る存在が明らかになっていく展開がどうにも当たり前すぎて愕きという点ではちょっと寂しい気がしないでもない。3人がおかしいのはもとからの性格生い立ちによるもので、むしろ意外なところに意外な犯人が潜んでいてそれを家主の少年と座敷童の未麟と、医学に魔術に超能力といっったそれぞれの特質を活かした3人組が挑み解決していくって話だったら痛快無比なカタルシスを得られたって気がしないでもない。

 あるいは座敷童がその時々の家主と交流を持っては忘れ去られていくという、寂しい存在であるとうことをもうちょっと出しつつ、それでも一期一会の中でそれぞれが精一杯に相手を尊び助け合いながら前を向いて生きる姿ってのを見せてくれれば、読んで強い勇気を喚起されたかもしれない。まあそういった部分はないわけじゃないんで読めば何とはなしに理解できないこともない。

 たがみよしひささんの古い短編漫画とか、ドラマにもなった「ユタと不思議な仲間たち」とかに描かれる曲がり家の座敷童が、その発祥において持つ悲しくて残酷な運命なんかがあんまり漂っていないのは21世紀の作品だからってことなのか。「ぺとぺとさん」がいて「お稲荷さん」がいるなら「座敷童」だって割にストレートな発想の産物なのかもしれないけれど、伝承にはそれぞれに持つ歴史ってものがある訳でその辺り、続編なんかがあるんだったら是非に取り入れこの本で初めて座敷童を知る人に、ちょっとでも良いから意義を伝えて欲しいもの。それが座敷童にならざるを得なかった子供たちへのせめてもの敬意ってものだから。


日刊リウイチへ戻る
リウイチのホームページへ戻る