縮刷版2005年12月下旬号


【12月31日】 年末なんでHDDレコーダーに溜まったアニメをDVD−RAMへと移す作業を黙々と。操作を間違える可能性が滅多やたらと高いんで1発勝負のDVD−Rはあんまり使えない。あとパッケージで買い揃えたら再使用する可能性もあるし。んでもって移しながら「パラダイスキス」の最終話を鑑賞、最後までまるでクオリティの落ちない絵にはただただ感嘆、同じアニプレックスが製作に噛んでで「銀盤カレイドスコープ」との違いにただただ落涙、「かみちゅ」もちゃんと作ってあったのになあ、この差はとこから出たのかなあ。

 途中をすっとばしてたんで観たのは初となるジョージの父親は声が岩城滉一さんで顔の雰囲気も合ってれば声のダルげな二枚目ぶりもピッタリ。けどでもわざわざ岩城さんにする理由ってのはなあ、あの程度の出演回数だったらその辺の年輩の役者さんでも良かったんじゃないかなあ。そんなところにも「銀盤」とはかかってる金の差を感じるなあ。話はジョージが英国に行ってイザベラがくっついて行ってキャロラインはジョージと分かれてトランクルームに置いてあったジョージの服を目の当たりにして泣き噎び、10年経ってそれからってゆー展開。これは原作のまんまかな。けどしっかりちゃんと落ちて痛快爽快カタルシス。いい話だったかも。「銀盤」も落ちだけはしっかりしていたからそこだけは一緒か。けどなあ。でもなあ。

 家だと寒くて布団に入ったまんま眠り続けてしまうんで無理に起き出し荷物をまとめて電車に乗って地下鉄でひたすらに原稿読み。うーん類型典型の山に君らこれで世間をあっと言わせたい気はあるんか、売れてるパターンを混ぜてなぞれば良いと思ってるんちゃうんかと思い悩み惑う。そうこうするうちに新宿へと到着。紀伊國屋書店の1階にある加賀屋で時折買ってた5000円の福袋を3年ぶりくらいに買う。前は安いジッポの他にいろいろポーチやら何やらが入っているのが普通で、当たれば銀製のジッポが入っているってパターンだったのが今年は必ずジッポが2つは入っているってゆー触れ込み。それだけでも5000円分の価値になる。

 けどでも安い無印のジッポ2つでは持っていたって面白くないんだけど、買った袋を開けて取り出すと1つは昔のピースのポスターが表面にデザインされた6000円するジッポでそれだけで超過。加えて2002年の日韓ワールドカップの時に作られた、ジュール・リメ杯が表面に張り付けられたスターリングシルバーの限定ジッポが入ってた。これ1つで5000円は軽く超える逸品で、なおかつサッカー物ってところが個人的にポイント高し。使い込むとカップの金色が鈍色になって地の銀がくすんで来ていい味になりそーだけど最近、あんまり煙草を吸ってないんで変わりに白金懐炉だかジッポの懐炉を買ってそれの着火用に使うか。

 小川だの吉田だの曙だのクロコップだの何だのと年の瀬に山ほどの格闘家が登場しては寒空の中を素っ裸で汗出して戦い明日の新聞の1面を飾ろうと頑張っているけれど、そんな頑張りを軽く成層圏の彼方へと吹き飛ばすニュースが登場。田村でもって金メダルを獲得し谷になっても金メダルを奪取してみせた世界屈指の柔道家、谷亮子さんが暮れも迫った12月31日に男の子を出産したそーで、この五輪での実績では吉田も小川も軽く凌駕する選手の慶事を差し置いて、吉田だの小川といった輩が新聞の1面を飾っては烏滸がましいってことになりそー。その母親から受け継ぐ遺伝子をもってすればおそらくは25年の後の大晦日のマットを、席巻するだけの格闘家へと育っているんじゃなかろーか。その遺伝子をあるいは女児が受け継いでいたらと思うとホッとした人も多い。かな。いや世界の女子柔道家たちが、だよ。

 スキマスイッチ紅白出演中、サンボマスターはどこかでライブ? スキマスイッチ全世界の人たちにそのアフロを披露中、サンボマスター日本の男たちの心の中でその情念が沸騰中。ってわけで実は初めてテレビで唄っている姿を見たスキマスイッチだけど唄うのが「全力少年」って陽気なんだけどそれほど「スキマ」っぽい感じのしない曲だったのは正直に残念。本当だったら「奏」を唄って欲しかった。あれこそがスキマの魅力を大きく伝えられる曲だから。

 同じ紅白で「気志團」がPRIDEとK−1の会場から小川吉田曙オロゴンといった面々を引っ張り出してはにらみ合わせたり蛙の如くにはいつくばらせたりして話題を取ったのと比べると、演出的にも宇宙飛行士の野口さんに「全力です」ってふらせてから入るベタっぷりで観ているこっちが赤面して来る展開は実に拙劣。これだったら出なくても良かったかもしれないなあ。けどまあとりあえずはちょっとだけでもメジャーになれたのは嬉しいこと。続く来年からの活動で良い歌をどんどん作っていっては天白川の名を世界に伝えていって下さいな。


【12月30日】 とりあえず「コミックマーケット」。部屋の中の冷え込みが嘘のよーにほの暖かい気候で、西館(にし・やかた)屋上のコスプレイヤーさんたちもきっとお喜びのことだっただろー中をとりあえず企業ブースへと行き、本当だったら今日あたりには店頭にDVDの第1巻が並んでいたはずの「銀盤カレイドスコープ」を提供しているアニプレックスのブースへと行って、エンディングテーマのCDを買って唄っている人とのツーショット券をもらったけど、そんな時間までは会場にいなかったんでトークの場でいったいどんな釈明がアニプレックスからあったかは不明。まあいろいろあったってことだな。ともあれ延期の果てに売り出される”完全版”に期待。いっそだったら「ガンドレス」よろしく”放映版”って奴もいっしょのディスクに入れたらどうよ。1枚2話だったら余ったスペースに入っちゃう訳だし。

 んでもって東館(ひがし・やかた)へと回って入ったら人影の向こうに東浩紀さんがいたんで観察。フリーペーパーを頂き混雑する隣のブースをよくよく観たらそこは”しろはた”こと”電波男”こと本田透さんと「アニメ会」の合同ブースで横に動物化の提唱者を置き動物化の実践者が動物的な書物を売ってはそれに動物が群がるとゆー構図が出来上がっていてコミケっぽい。なおかつその向かいは「ヴェネチアビエンナーレ」の建築展でもって「OTAKU」な展示を行った森川嘉一郎さんが、展覧会の記録を図面と日記でもってまとめた冊子を自ら販売しているブースで、提唱された動物化を実践する動物たちを通路越しに眺めたその目が次にいったどんな動物たちをアートの形へと結実させるのかがやや楽しみ。つか何か凄い三角形だったよなあ。

 回って読売新聞文化部の名物記者であるとことろの福田淳さんが出してるブースを眺めて新刊を黙々と購入しロトさん氷川竜介氏のブースでもっぱら「mixi」のかき込みをまとめた冊子を黙々と購入し岡田斗司夫さんのブースでこちらはかつて「TVブロス」に連載されていたコラムを全部まとめたものとそれから「マンガ夜話日記」って題された御蔵出し系の2冊をともに購入して本日のお買い物も終了。ネットとか雑誌とかなんかで1度出したものを再編集なりまとめるなりして出すってのが何だろう、昨今のコミケのこーいった分野における隆盛な感じ。

 まあみなさんそれぞれに本業があってなかなか大変だったりする訳で、雑誌もネットも万人が観られる訳じゃないし本にまとまったって全部がまとまる訳じゃないって所があって、同人誌とゆー形もひとつのパッケージとして成立するんだろー。ってことは僕も駄文をまとめれば一攫千金も夢じゃない? いやいやみなさんそれなりに指向性があるからこそまとまっても通読できる訳だしまとめる価値もあるってことで、無指向性の気分屋な文章ではまとまらないしまとまったところで誰の関心も呼びません。なので当分は「コミケ」は行って眺めて歩いて帰るだけの参加で気持ちを留めておきましょー。

 その足で「ゆりかもめ」に乗り「汐留駅」から「都営大江戸線」に乗って国立競技場へと出向き高校サッカーのオープニングゲームを観戦。山梨県代表の県立甲府東高校と奈良県代表の一条高校の試合はパスワークなんかを見ると甲府東も悪くはないんだけど如何せんゴールキーパーが高校生のレベルにすら来ていなくって置いて蹴ればゴールラインに届かず持って蹴ればそのままゴールエリアと飛び出してしまってハンドをとられフリーキックを打たれる始末。1度ならまだしもそのハンドを2度も犯して2度ともゴールを割られてしまった姿に甲府東の監督は何故に彼をそこまで使うのかって疑義も浮かぶ。可愛そうだよ正直。

 もう1点も飛び込んで抑えたボールをファンブルしてしまった所を決められたやっぱりミスからの失点。この3点がなければあるいは甲府東の見事だったり切実だったりする攻めによる2得点が効いて試合にだって勝てたのかもしれなかっただけに、それでも使い続けた監督の意図が気になった。けどでもそーした人材でも他の選手よりは適正があるんだと判断してのおそらくは起用。県立高校だけあって入ってくる生徒は選べないし、練習時間だって1日に1時間半ではゴールキーパーにまで手が回らない。おそらくはキーパーを始めたのも高校に入ってからで、それでオープニングゲームなんて重圧の中で戦ったんだから良くやったと健闘をたたえるのが筋だろー。

 おまけにそんなキーパーを擁しながらも、韮崎高校とか強豪ひしめく山梨県予選を勝ち抜いて来たんだから、フィールドプレーヤーに余程の逸材が揃っていたんだろーし、実際に攻撃面でその片鱗は見せていた。それだけに……って悔やむのはやっぱり筋じゃない。何も勝利がすべてじゃない、やれることを精いっぱいやって散るのが部活動。その潔さって奴を見せてもらったんだとここは受け止め、同級生同窓生の方々には新学期に入ってからキーパーの人をハンドボーラーなんて呼ばないよーにお願い申し上げます。何にせよ自分で投げたボールを自分のゴールに放り込んでしまうJ1のキーパーよりは真っ当なんだから。

 偉大なりロリータ。壮絶なりゴシック。その愛らしくも強靱な容姿と魂を持って世界を闊歩するゴスロリ少女の生き様って奴を大槻ケンヂが短編にして著した「大槻ケンヂ短編集 ゴスロリ幻想劇場」(インデックスコミュニケーションズ)は収録された写真のゴスっぷりも去ることながら描かれるゴスロリ少女たちの姿にとにかく感銘。分厚い底をした靴でもって敵を踏み抜き手に填めたリングで相手を壊し身につけたチェーンで刃物を防ぐゴスロリ少女の実に利に適った戦いぶりを描いた短編を読めば誰もが思うだろー。たとえ細身で弱々しく儚げに見えてもゴスロリ少女にだけはちょっかいは出すまいって。かつてのゴスっ娘で今は中年の母親と今は禿頭だけどかつてはロック少年だった父親を普段は毛嫌いしていた少女が母の病を知り父の過去を知って心濡らす短編はこっちまで泣けて来る。見た目で人は判断できないってことで。


【12月29日】 日本寒過ぎ。北海道とか礼文とか国後択捉あたりは更に寒いんだろうけどそれだけ寒さに対する暖房装置なんかも準備も万全。対して我が家は電気毛布に電気ストーブくらいが暖を取るための数少ない装置で、ここから立ち上る熱は体の表面の一部は暖めても部屋全体を摂氏18度にまるで近づけてもくれない。大量の本が部屋を狭くはしていても、小さい電気ストーブと薄っぺらな電気毛布ではやっぱり足りないのだ。せめてもう少し床に余裕があってオイルヒーターとか置けたらなあ。つかエアコン直せればなあ。修理の人を入れる余裕すらないのだ我が家には。

 あんまり寒いんで服を着込んで電車に乗って総武線でしばしの暖。だけど程なく到着した信濃町から向かった「国立霞ヶ丘競技場」でもってサッカー天皇杯の準決勝「大宮アルティージャvs浦和レッドダイヤモンズ」を見ていたら、太陽が沈みスタジアムが薄暗くなっていくのと平行して気温もぐんぐんと下がって家で凍えている以上の寒さが尻を差す。当たり前だよ外だから。そんな気温とは対照的に試合は凍えてからが本番だった模様で1対1から始まった後半に浦和が得点を重ね大宮を振りきり元日の決勝へと駒を進め、確か準決勝で敗れて出られなかった去年の雪辱に臨む。

 こうなると気になるのが同じく元日に行われる予定の女子サッカーの「全日本女子サッカー選手権大会」決勝で、おそらくはホーム側には日テレ・ベレーザが割り当てられることになるんだろーけどそちらには国内屈指のサポーター集団を擁する浦和レッズが陣取る関係でおそらくは前夜、いやいや浦和のことだから今夜あたりから席取り合戦が始まり徹夜の行列が発生しそー。でもって当日は女子サッカーの決勝の時点から大勢の浦和サポーターがゴール裏を埋め尽くす。

 そんな中に混じってベレーザのサポーターが最前列で旗を振ったり、応援用のダンマクを張ったりするのは不可能。去年は東京ヴェルディ1969とのアベック応援を背中に戦ったベレーザも、今年は逆に背中からブーイングを受けながら戦う可愛そうな事態も発生しそー。それが女子サッカーの興隆を願い決勝を天皇杯と同日に同会場でやると決めた日本サッカー協会の望んでいたこととは、正直思いたくないんだけど結果としてそーなりそーな見通しがある以上は主催者には是非に、その当たりへの配慮って奴をお願いしたいところだけどそんな配慮が出来る環境じゃないよなあ、浦和レッズが出てくる天皇杯なんだから。席に余裕なんて作れないし。後座にしよーぜ後座に。でもって無料で誰でも入場オッケーに。

 パン屋で働く少女が出会った少女は正義の味方で機械の体でメガネを外すと返信して迫る敵と戦つってゆー、聞けば過去に数ありそーな設定を持った栗原かずささんの「V−MAX ヴァーシャ・マックス 正義を貫く物語」(富士見ファンタジア文庫、560円)は読み通してもそーした設定から予想できる展開を大きくは逸脱することなく進んでいくから気持ちとしては安心して読めるけど驚きを味わいたい人にはちょっぴり心残りが生まれるかも。けどでも今時にギャグとして正義を貫こうとしてすべる変身ヒーローはいても、徹底して正義を貫こうとする美少女変身ヒロインなんて滅多にいないから、その意味では目新しさを味わえるかも。外すと変身しちゃうんで眼鏡をかけたまんま入浴するヴァーシャの切なげな表情とスレンダーな肢体のイラストはなかなか。

 体に飼っている魔獣を使って敵と戦う力を持った少年が出会った少女には秘密があって彼女を助けて世界を支配する敵と戦羽目となる。そんな少年に敗れては迫るライバルがいて少年と少女が出会った存在との別離があって、少年には命の限界が設定されてそれでも再会の可能性延命の可能性を探って未来に向かい足を踏み出すってゆー、これも聞けばどこかにあったりするものを集めて来た感じもしないでもないけれど、諸星崇さんの「白王烈紀 天の獣に王なる翼を」(富士見ファンタジア文庫、580円)は体に宿した魔獣と宿主の人間との関係に緊張があったり、宿主が力を得るために肉体を犠牲にする辛さがあって気持ちを引きつけられる。あと主人公の少年が2つ3つと獣を抱えた理由にもいろいろありそーで、設定された限界を超えて挑む旅路の向こうにそーした謎との対峙もあっていろいろ驚かせてもらえそー。とりあえずはしばらくはつき合ってみるか。


【12月28日】 人的ネットワークの乏しさ故に忘年会の類の一切存在しない年末を、エアコンの壊れた部屋に籠もり電気ストーブと電気毛布で暖を取りつつ、それでもかじかむ指をこすりがら本を読んだり輸入したプロペシアを囓ったりミノキシジルを擦り込んで、来年こそは日の当たる場所へと出向き銀座で新宿で渋谷で快楽にまみれる日々をおくれるものと期待を繋いではいるものの、初めて半年でようやく結果の出る薬剤で喫緊に状況が改善するはずもない上に、来年はいよいよ男にとっての本厄が到来してはきっと身を痛め財布を削り心を抉ってくるに違いなく、そんな不安にも苛まれながらひとり部屋にこもって原稿を読み本の山を崩し時折バーボンを啜ってメンチカツを囓る年末を送ることになるんだろー。ああ歳末。

 そんな歳末にひとつ取材。ニッポン放送が知らないうちに始めていたアイジョッキーって「iPod」で音楽をシャッフル再生する技術を活用して、音楽と音楽の間に短いディスクジョッキー的なコメントを挟み込んで再生しては、「iPod」での視聴スタイルをさらにラジオに近づけてしまおうってサービスの新しい音源の録音があったんで、有楽町にあるニッポン放送へと出向いては、見目麗しい方の喋る51種類もの声を間近に聞いて心潤わせる。声を仕事にしている人ってやっぱり凄い。

 しかしなるほど聞けば聞くほどグッドなコンテンツ。シャッフルだから必ずしも曲と曲の間に喋りが入るとは限らないんだけど、それでも数曲の再生後に30秒とかの短いセリフなりポエムなりコメントなりがはいってから次の曲が流れ出すのを聞いていると、ただでさえ自分だけのラジオ局に思えてしまっている「iPod」のシャッフル再生が、よりラジオ的なものに聞こえてくるらしー。開発済みのソフトを使えば曲と曲の間にセリフを入れられるよーにも出来るとかで、これだとよりラジオ的な雰囲気を醸し出すことができる。

 パソコンで言うなら起動音とか背景画像とかを自分でカスタマイズして楽しむアクセサリーソフト的な位置づけでパッケージとして売るから、番宣的なポッドキャスティングによる音源配信に比べてビジネスモデルも作りやすい。あとはアイディア次第って奴で、今日収録されたものなんかは根強いファンの購入なんかも期待できそー。これだったら例えば枡野浩一さんが短歌を朗読して吹き込んでおいたものを売って、曲と曲の合間に短歌が再生されるのを楽しんだり、短歌でなくても日めくりてきな格言その他を吹き込んで売ったりってコンテンツも生まれそう。その昔に椎名誠さんがCDの宣伝番組に出ていた時にぼそぼそと喋ってそれから音楽に行ったのを聞いて育った耳だけに、椎名さんの1分くらいのトークを50分とか吹き込んでもらって、それを曲と曲の合間に聞いてみたいなって気もしてる。どこか企画しないかな。

 「平成COMPLEX」が冒頭で輝く「ヤングキングアワーズ」の2006年2月号は、その他の作品が軒並み佳境へと入って毎号毎号の緊張感が甚だしく、手に取り読んで緊張感に浸りまた読み返してこの先どこへ行くのかと、迷い悩みながら更にもう1度読み返すものだからなかなか他の本へと目が進まない。

 伊藤明弘さんの「ジオブリーダーズ」は、どこぞへと連れ去られた菊島雄佳社長が目覚めてそこはヤバいと気づいて逃げ出そうとするものの体が動かず七転八倒しながら廊下を進んだ果てに誰かと出会って以下次号。それが誰なのかがもう気になって仕方がない。逃げる途中で絞り出す声が「田波くんたすけて」ってのが泣けるなあ。あんな頼りなさげに見える男でも頼りたくなるのが女心て奴なのかなあ。

 んで「トライガンマキシマム」はリヴィオとエレンディラとの続く戦いにそろそろ決着の予感。強靱にして凶悪な別人格との統合によって恐れに立ち向かう勇気とエレンディラの目にも留まらない速度に対応できる戦闘力を合わせ持てるよーになったリヴィオだけど敵もさる者、それでは倒せず体を粉砕されかかったリヴィオがもてる力を振り絞って伸ばした手の先にエレンディラを捉えていざ、砕けるかそれともって場面で以下次号となって果たして勝ったのはどちらなのかが気になって気になって仕方ない。

 一方でヴァッシュとナイブズとの戦いも佳境を迎えているんだけどそれはエレンディラとリヴィオの戦いにあと数号で決着がついてから後、十数号にわたって繰り広げら得ることになるんだろー。ってことは「トライガンマキシマム」が最終的な完結を迎えるのって2010年頃になるのかな。だったら最後までつき合えそー。こちらもそちらも生きてさえいれば。

 大石まさるさんの「LETTERS2」はタッチがどことなく鶴田謙二さん風で起動エレベーター上のステーションと月の間に分かれて暮らす男女の恋愛話ってシチュエーションもどことなく鶴田さん的だけど、キャラクターの躍動感は大石まさるさん風なだけに読んで不思議な感覚にとらわれる。こーゆー作品も描けるんだなあ、大石さん。ヒロインの大女ぶりが目にまぶしい。胸とかとくに。

 それでいうなら「エクセルサーガ」は偽エクセルにハイヤットにエルガーラの3人がエレベーターに閉じこめられた場面を上から見下ろしたカットなんかが6つの山を見下ろす感じで迫力。そんな3人に囲まれともにエレベーターに閉じこめられた男性がいたとしたら、きっと激しい感情を覚えつつ天へと召されたことだろー。頬に感じる熱を喜び迫る質量の圧力にうなされながら。

 「ジグザグノベル」のスタート2人の意外過ぎる頑張りぶりに老舗のトクマノベルズが去年あたりから出してきた「Edeg」レーベルは果たして耐えられるのか太刀打ちしていけるのかなんて悩ましい気持ちも浮かぶ昨今。西魚リツコさんって人の作品「カメリア・カタルシス 魔女と犬」(徳間書店)は犬ごとどっかのお屋敷に拾われた感じの青年が屋敷に閉じこめられては美少女たちから虐げられる展開となって、それはそれで耽美な話へと向かうのかと思ったら別に”魔女”なんて魔法だか超常的な能力を使う女性が現れ青年が閉じこめられた家の秘密を暴き出す。

 その何とゆーかSFチックとゆーか梨木香歩さん「沼地のある森を抜けて」的な展開は展開として興味深いんだけど、そーゆー謎に迫る”魔女”の存在のどーして科学者ではいけないんだろう的疑問なんかも浮かんだりして、位置づけとしてどこに収めたらいいのかを迷う。ドメスティックにバイオレントな設定は意外感もあって驚かされて、このあたりを軸に魔女とかいった設定は抜いて旧家ならではの因業みたいな展開へと、持っていったら「Edge」の付かない一般向けの伝奇ノベルズとして、読まれそれなりに親しまれたかもしれない。個人的にはそれでも美人で明晰で居丈高なキャラクターってのが好きなんでそんな彼女がいてこその話は嫌いじゃないんだけど、そーゆー趣味嗜好の人だけに読ませるにはちょっと勿体ない。続編とかも可能っぽいんでそのあたりでより伝奇色を強めていきつつ”魔女”の活躍なんかも見せてくれたら読むかも。


【12月27日】 既存勢力が版図を広げる一方で新興勢力が参入乱入して来る状況に、果たしてそれでクオリティを確保できるのかと眉をひそめつつ心訝らせつつ、その登場を待ったライトノベルの新レーベル「ジグザグノベル」だったけど、既に刊行された麻田奈梨さん「幸福眼少女」の失礼ながらも意外に楽しく且つまとまっていたことに驚き、これはあるいはもしかしてって期待も上積みされて臨んだ諸口正巳さん「スコーピオン」(発行・リーフ、発売・星雲社、950円)が更に面白くってこれは侮れないと思い改め背筋を正す。ピシッ!

 どこにでもいるような少年が突然非日常的な戦闘に巻き込まれ、それが縁で悪と戦う正義の組織に入り仲間たちと語らい時には反発しながらも日々の戦いを繰り広げ成長していく、ってフォーマット自体はありふれていてもう沢山って気分すら抱いてしまうものだけど、この「スコーピオン」が戦う相手は一種の都市伝説。そしてそうした都市伝説の主たちを狩る面々も一般人で力を持った者ばかりではなく、都市伝説の主であったり宗教的な熱狂から生まれた一種の神様であったりして、そんな彼らがどうして生まれたのか、そして何を思っているのかを描くことによって都市伝説を生み出しすがりたいと心の内に外に願う人間たちの弱さを感じさせる。

 異なる時間軸にそれぞれ都市伝説を狩る組織があって時々は交流していたところがあらゆる時代を飲み込む最強の都市伝説が現れ「スコーピオン」の主人公達を苦しめる、ってゆー感じに進んでいく物語は、さまざまな都市伝説との対峙なり新たな出会いなかを描いた完結型のエピソードを並べつつ連作風に進んでいくため読みやすい。美少女の欠片も登場しなくって若気のいたりを発散させまくりなガキやらヤクザの下っ端やら、顔面のひきつった恐怖映画の主人公やら刀を振り回す中年やらと男臭さに溢れたキャラクターばかりだけど、それだからこそ放たれるハードボイルドでクールなイメージって奴もある。あるいは一般向けのノベルズなんかで出た方が届く範囲も広がったかもしれないけれど、まずはちょっとした小手調べ。新たなレーベルだからこそ現れ得た新たな才能の片鱗をこれで見せつけ、次なるステップへと進んでいって欲しいもの。しかし本当に意外な収穫だったよ「ジグザグノベル」。凄い編集の人でもいるのかなあ。

 おおこれは! もはや前世紀となってしまった2000年の頭だかに本屋っで手に取り、読んで今立つこの世紀末の喧騒に溢れ揺れていた世界への懐疑と、描かれていた厳しくとも真面目そうな時代への、そこはかとない憧れを抱き惹かれた小だまたけしさんの「平成イリュージョン」(メディアワークス、850円→宙出版、750円)という漫画があった。

 その可愛らしいキャラクターたちの絵柄と、対するような硬派なSF的設定の不思議にして絶妙なマッチ具合に、今後の活躍を大いに期待したいものだと思っていたものの、新世紀に入ってあまり表立った活動を目にすることがなくなって、それでも新装版という形で今再び世に出た単行本の巻末に、何やら新たな活動を示唆する言葉が載せられていたけれど、そこにあった夏になっても未だ見えない展開に、どうしたものかと戸惑っていた折りもおり、2005年も終わりに迫ったこの時期に、驚くべき形での大復活を遂げてくれました。

 「ジオブリーダーズ」「ヘルシング」「トライガンマキシマム」「エクセルサーガ」「朝霧の巫女とアニメ化も果たされた看板作品を多数抱え、今なお「アニメがお仕事」「ウチら陽気なシンデレラ」「ナポレオン 獅子の時代」等々の超絶人気連載作品を山と掲せている「ヤングキングアワーズ」2006年2月号の誌上にて、その名も「平成COMPLEX」とゆータイトルで始まった漫画こそが小だまたけしさんの最新作。一時はとん挫した月刊誌連載の壁を超え、ここに見事に商業誌連載を果たしての登場となった。

 嬉しいことにこの作品、個人的に大傑作と認める「平成イリュージョン」の設定を基本にしつつも、新たな解釈を加えて構成し直した上に、キャラクターの絵柄もあれからほぼ6年が経って上がった技量を加えてより可愛らしく、且つ安定的なものとしてあって、読めば6年近い心の隙間が途端に埋められ懐かしさに滂沱しつつも、時を重ね一段と不安定感を増しているこの世界に対して抱き続ける不安感を、埋めて意識を別の世界へと向けさせそこから、今のこの世界への懐疑なり同意を思わせてくれる画期的な作品になるかもしれないと、読んでまずは感じた次第。

 場所は廣島で主人公はちょっぴりドジな所もある若い女性の憲兵で、容姿端麗頭脳明晰な先輩女性憲兵に憧れつつも日々の職務に励んでいたある日、大連から「今日(いま)のらくろ」とその活躍ぶり昇進ぶりを讃えられる憲兵が日本へと帰って来て主人公の女性憲兵と出会いを果たす。そして起こるさまざまな事件を、女性の憲兵と今日のらくろとが解決していくって展開になりそうだって想像は付くけれど、そこで問題になるのが漫画の時代設定。憲兵で廣島なら太平洋戦争の途中? と思われるのが当然だけど今日のらくろを大連から運んできたのはジェットの輸送機。そして喋られる言葉には外来語も混じり、何より女性が男性と同等の立場で憲兵隊に入って中には分隊長をしている者もいる。

 そして港には記念館となった戦艦大和の偉容。「平成COMPLEX」というタイトルが示すようにそこは今とは別の歴史を進んだ平成6年の世界。その世界を当然と思い抱いて日々を暮らす人たちが、別の可能性を持っていた世界の有様を思い抱いて悩み憧れたりする様をおそらくは描きながら今のこの世界の持っている良さであったり悪い部分を浮かび上がらせてくれるのだろう。もっともそれは「イリュージョン」というタイトルで描かれていた作品のテーマであって、「COMPLEX」と変わった新解釈の作品では、この間に起こった世界の激動に意識の激変なんかを織り込んだ、さらに新たなテーマが打ち出されることになるのかも。いずれにしても期待の新連載が加わって「ヤングキングアワーズ」はますます充実の運び。あとはちゃんとOVA版「ヘルシング」が出れば完璧か。


【12月26日】 終わってみれば順当に村主章枝荒川静香安藤美姫の3人で決着したトリノ五輪のフィギュアスケート女子代表。最初っからこの3人以外にあり得ないって感じにテレビのCMなんかにも起用され、直前には安藤選手のトヨタ入りなんて話題もあって企業はこの3人を後押ししてますって雰囲気がありありだっただけに、あれやこれやと憶測を呼びそーな決着だって言えば言えそーだけど、年齢制限で出られない浅田真央選手を除外すれば御三家はまさしくこの3人。今年に入って台頭して来た中野友香里選手が第4コーナーを回り直線で追い込んだものの届かなかっただけって主張されれば誰もが納得してしまいそー。

 ただ波で言うならここんところ低落傾向が続く安藤美姫選手が、2月の本番までに立て直して来るかってゆーと不透明。むしろだったら勢いのある中野選手で突っ走った方がメダルなり入賞なりに近いって意見もスポーツ的にはあって不思議はないんだけど、そうしたベクトルよりも平均を重んじてしまうところに日本の甘さってやつがほの見える。これが浅田真央選手を最後までトリノへと送り込めなかった現実に繋がったんだろー。しかし今になって非公式には打診していたって明かす日本スケート協会。だけどだったら何で先のグランプリファイナル」でISUの会長は、日本から一切の働きかけがないって会見で言ったんだろー? あれはどう聞いても陳情を示唆したものに聞こえたんだけど。うーむスポーツ政治って難しい。

 それより更に難しいのがアニメーションの世界って奴? ようやくやっと見た「銀盤カレイドスコープ」の最終回は作画が崩れているかどうかゆー以前の動く動かないって問題が如実に立ち起こってて何があったんだと見るなり叫びだしたくなったけど、想像するなら大変なスケジュールがそこにはあったんだと理解しここは大人として静かに目を閉じ耳より声優さんたちの熱演を聴いて瞼の裏に僕だけの「銀盤カレイドスコープ」を描き出す。そこではちゃんとリアも迫力の演技をしているし、タズサも場内を熱中させた演技をちゃんと繰り広げていたよ。そしてピートとの別れを越えてタズサも脚を踏み出したよ。なんつって言い訳しても現実は変わらない。ここはやっぱり何が起こったのかを突き詰め二度目3度目の悲劇が起こらないよーに願うしかない。っていったいこれが何十回目の悲劇なのかは聴かぬが華。

 任天堂が新しいCMを作ったってんで恵比寿まで出向いて岩田聡社長の「ニンテンドーDSが日本で500万台越えたでイェイッ!」ってなことを喋って事実上の勝利宣言。数は聞いてないけど「プレイステーションポータブル」がおおよそ国内で200万とかそんなもんだと推定しても倍くらいの数が出ているってことになるみたい。値段が違うって言えばそれまでだけど、出ているソフトの内容が「PSP」は旧来の延長でそーした層にアピールしている一方で、「DS」は30歳40歳なんてシニアの層にソフトもハードも売れまくっててそれが数の違いとなって現れているんだろー。敬老の日前後に再び売れるよーになるソフトなんて過去20年のゲームソフトの歴史を探したってないよなあ。

 そんな会見を見て選ばれた記者連中が壇上で「DS」を体験する様を苦笑しつつ見た後に、真打ちともいえるCMタレントが登場。案内ではシークレットだった人が果たして誰なのかを想像して宇多田ヒカルさんでも出てきたら良いなあって思っていたらこれがびっくり。新しいCMは「もっと脳を鍛えるDSトレーニング」でそこに登場して「脳を鍛える」クイズを説いて自分の脳年齢を計っていたのはあの松嶋菜々子さんで、なるほどだからこんなに大勢のテレビ局がやって来ているんだとまず納得。そして登場したご本人は手足が細くて長くてモデルみたいで、顔もテレビのCMでよく見る松嶋さんで年末に来て寂しいクリスマスを過ごした哀しみが、これで一度に吹き飛んで心穏やかになって来る。

 はっきり言えば超絶美人ってタイプではない松嶋さん。だけどどこか親しみのもてる顔立ちで、笑顔も人をほっとさせる所があって眺めているだけで心癒される。なるほどそれが彼女の人気の秘密か。そんな松嶋さんがCMで体験した「もっと脳を鍛えるDSトレーニング」で測定した脳年齢は何と52歳。お肌の年齢だけなら20歳代って言ってもきっと通じる松嶋さんだけどその真逆を脳は言ってしまっているらしー。「脚本とか読んでセリフを覚えているから自信があったんだけど」って言っていたけど、そーした記憶力と脳の柔らかさってのは別物ってことなんだろー。ちなみに今も続けてどーにか27歳くらいまで若返った松嶋さん。目指すは20歳代前半だそーでそーなった暁には、名実ともに”才色兼備”と呼ばれ讃えられることになるのだ。頑張れ菜多子。

 そして「たけくまメモ」に掲載されてたクイズに答えて間に合わなかったけど面識があるってことで呼ばれていった「ひみつ会」は月島の公園に集まり近所にある竹熊健太郎さんの知人のマンションに50人くらいが集まってホリエモンに関するウワサを聞いたり竹熊さんのアニメや漫画に関するトークを聞いたり、古い漫画の復刻で知られる編集の人がコレクションしている得体の知れない新宗教の教祖が唄った音楽を聴いたり、アングラ演劇の音楽をやって広く知られているJ.A.シーザーさんの音楽を聴いたりと不思議な時間を過ごす。

 何しろ50人が1つの部屋に入っても余裕のあるくらいのリビングを持って、なおかつ別に家族が暮らす部屋の多々ある超絶高級マンション。巨大なプラズマテレビが備えられハードディスクレコーダーが設置され壁が本で埋め尽くされても、床がしっかり隅々まで見える広さがあって床なんてもう3年は見ていない我が家との違いに打ちのめされる。90年代後半のあの時期に何かをしていれば自分もそんな暮らしが出来たかも、なんて思うと悔いも生まれるけれどそうならずに借金背負って路頭ってパターンもあっただろーし、その可能性が高いだろーから、別に大過なく今を生きていることに満足しておこー。それにしてもそんな超絶お金持ちな人のマンションに上がり込んで、していることは漫画にアニメにアングラ音楽の話。まるで似合わないけれど、そんなことをする会場を提供してみたくなるくらいに、竹熊さんの大勢を引きつける魅力なり、何かをやってのけようとするパワーが凄いってことなんだろー。とりあえず1周年をおめでとう。2周年目は1000人規模でのオフ会を是非に。出来れば暖かい時期に。


【12月25日】 所詮は虚勢であった。全日本レスリング選手権大会に行って世界が誇る女子レスリングの最高峰の戦いぶりを目の当たりにした所で、それは決してクリスマス的と言えないしフィギュアスケートの誰もが注目する女子ではなく、フジテレビからは今まさに実施中のフリープログラムの生中継を拒否され、真夜中にひっそりと放映された男子のショートプログラムを実地に見物したところでやはりクリスマス的とは言えない。なぜならそこには華がない。クリスマスという日に相応しい煌めくよーな輝きがない。

 ならば「bjリーグ」はどうか。なるほどチアリーダーの勢揃いして乱舞する様は華もあれば輝きもあって心満たされる。けれども周囲を見渡せば美男美女が並びコートで行われている試合に歓声を送っている姿があちらこちらのぽつりぽつり。終了後にお台場の、あるいは都心部のレストランへと移動し食事しそれからすべきことするだろー彼ら彼女たちの素晴らしき日々の前座とも言えるイベントに、ひとり真剣に浸って果たしてクリスマス的な喜びを味わっていると言えるだろーか。否。断じて否。会場前で2人交互に飛び跳ね「モテたい」と唄う「ライス兄弟」ほどにもその素晴らしき時を享受していない。

緑に映える赤と緑のぶつかり合いこそがクリスマスだそうなのだ!  反省した。悔い改めた。クリスマスならクリスマスに相応し場所に行くべきだと。クリスマスに相応しいイベントを見るべきだと。そして出かけた「国立西が丘サッカー場」はまさにクリスマスというべき饗宴が繰り広げられていた。緑のピッチの上に立つは緑の軍団「日テレ・ベレーザ」に赤い魂「浦和レッドダイヤモンズレディース」。柊の実であり葉である色彩が、白い雲もたなびく空の下に広がった緑のフィールドの上を、乙女たちが全力で走り回り激しくぶつかり合う「全日本女子サッカー選手権大会」の準決勝こそが、クリスマスの当日に見るに相応しいイベントなのである。断じてそうなのであると強く心を洗脳する。でなきゃやってられねえよ。

 そんなこんなでクリスマスの3日間をスポーツ観戦して過ごす不惑男の出没記もこれが最終日。船橋からはご近所の「中山競馬場」をすっ飛ばして訪れた「西が丘」は風もそれほど吹かず底冷えはしても凍える程でなくってちょっとした防寒装備だけで試合を見ることができた。午前の11時からが「ベレーザvs浦和レッズレディース」で、午後1時10分からが「岡山湯郷BellevsTASAKIペルーレ」とゆーカードのまずは「クリスマスダービー」は、ベレーザが最初っから中盤を圧倒的なパスワークでもって支配しサイドから中地舞選手が真冬にトレードマークの半袖シャツで駆け上がってはクロスを入れる波状攻撃で浦和を攻め立てる。

 守る「なでしこジャパン」の守護神、山郷のぞみ選手の果敢な飛び出しに安定したハイボールのキャッチで前半こそ0対0で折り返すものの後半も攻め立てたベレーザがゴール前の混戦から永里憂季選手によるゴールが決まってまず1点。どうにか中盤でボールを回せるよーになった浦和も攻めるけど前線へとボールが入らずシュートを余り打てずドリブル突破からフリーキックを奪い高橋彩子選手の飛び道具で得点する技も使えない。そして逆に攻めたベレーザがゴール前で得たPKをしっかり決めて2対0。以後は惜しい攻めを2度ばかり浦和が見せながらも得点には繋がらず、昨年に続いてベレーザが見事に決勝進出を決めた。

顔はロナウジーニョで脚はロベルトカルロス、テクニックはカカか山本絵美!  仮に浦和が買っていれば29日の試合結果次第だけど兄貴分の浦和レッドダイヤモンズと同じ元日の「国立霞ヶ丘競技場」で方や天皇杯の決勝、こなた全日本女子サッカー選手権大会の決勝を戦うとゆー、去年のベレーザ&東京ヴェルディ1969と同じシチュエーションを獲得出来たんだけどこれは残念。あるいは先負友引とばかりに浦和レッズの方も準決勝を敗れでもしないかって心配になるけど今の調子から行けばきっと大丈夫なんだろー。だとすると同じ応援サイドを女子はベレーザ、男子は浦和レッズが取らなくちゃいけないとゆーねじれ減少が来年1月1日は発生する畏れも。同日開催はなるほど女子サッカーの宣伝に大きな効果があるけれど、普段から応援している女子サッカーのサポーターが排除されかねない事態も起こる可能性があるのはやっぱり居心地が悪い。その当たり、日本サッカー協会には何とかしてもらいたいものだよなあ。前座ではなく後座の方が女子サッカーのサポーター的には有り難いかもなあ。今年はどっちだったっけ?

 続く第2試合はやっぱりTASAKIペルーレが圧倒的な攻撃力を見せて湯郷bellleを圧倒。前半しか見なかったけど開始3分で1点を奪いそれから2点目も奪ってBelleを突き放す。怪我をしてアテネ五輪に確か出ていなかった山本絵美選手、ってゆーか和製女子版ロナウジーニョとして知られる彼女がTASAKIで完全復活を遂げていて頼もしい限り。脚なんて太股の前側の筋肉が大きく盛り上がってて、走れる蹴れるって所を存分に見せてくれた。これなら来年から確か始まる気がした女子のワールドカップ予選も存分な戦力で戦えそー。

 だから怪我をしないでおくれよレギュラー候補の面々は。特にやっぱり沢穂希選手。ベレーザにあって1段違うプレーを見せてくれている貴女が僕たちにはまだまだ必要なんです。そしてやっぱり酒井與惠選手。中盤の底を駆け回っては左右に前線にボールをさばく視野の広さは世界でも一級。準決勝でもその凄さを見せつけてくれたけど、年齢も年齢なんで引退なんて考えちゃってくれそーなのが心配。まあそこは若い宮間あや選手の台頭もあるし若手も続々と育って来ているからとりあえずは安心か。可愛いことで有名らしー浦和レッズレディースの法師人美佳選手も試合の後半途中から出てちっちゃいけれど端っこいところを見せてくれててその速度とガッツに期待が膨らむ。でもやっぱり小さかったなあ。一寸しかないもんなあ(それはないない)。

 あーそうそうクリスマスの朝に見るのが果たして妥当だったかは微妙ながらも変わらず放映された「交響詩篇エウレカセブン」はこれまで頑なに顔を隠していたレントンの姉ちゃんとやらが顔出しで登場。したけど別に隠しておく必要ないじゃんこれなら最初っから普通に出しておけばいいじゃん。あるいは音無響子の旦那さんみたく最後まで一切出さないでおくとかって手もあったけど、それだと1人分のキャラクター展開が不可能になるから仕方がないのかもしれない。

 そんな彼女の役目ってのが父親のアドロックが残したデータを解析してはコーラリアンの生態に近づくことだたみたいだけど、どーして消えたのかどこに消えたのかって話は今回もなくって役割的に未だ謎。あるいはこれからのボダラク絡みの話の中で女神様然として登場するのかもしれないけれど、ある意味キーパーソン的な役割を持たされていた割りには単純にして簡潔な登場とそして退場ぶりは、キャラクターの出し入れの微妙さが常に付きまとっている「エウレカセブン」らしーと言えばらしーかも。あとエピソード的には「エウレカはじめてのおけしょう」ってのがあって下手な化粧を見られ子どもに怯えられて毛布にくるまりうくくと落ち込むエウレカ何だか可愛らしい。そんなエウレカを見ていたずらされたのと訪ねるレントンの朴念仁ぶりも相変わらず。ここで察しの良くなった所を見せればレントンのいろいろあった果ての成長ぶりが伺えて見ている方も安心できるのになー。やっぱりどこまでも「エウレカセブン」だ。

 スポーツばかりだと脳が筋肉になってしまうんで知識も入れようと紀伊國屋ホールで開催された東浩紀さん北田暁大さん山本一郎(切込隊長)さん斎藤環さんの4人によるトークセッションを見物に行く。最前列中央なんて演劇コンサートの類だったら大喜びしたくなる位置だけどトークショーでは舞台が目線の上になって首がなかなかに大変。これが女性のパネラーだったら組み替える脚への注目も向くんだけど男性ばかりでは如何ともしがたく勢い関心は話される内容へと向かう。

 結論から先に言うなら話は「東浩紀は何をしたいのか」って所に帰着した模様で切込隊長は「バッジつけたいの?」と直裁的なことを聴いて、すべてが抱え込んでいる閉塞感の打破に東さんが何かをすべきじゃんってな感じに煽りをくれてたし、会場にいた宮台慎司さんは「期待して来たけど若い批評家が抱えている閉塞感を目の当たりにした感じで気持ちは暗い」ってなことを言ってやっぱり東さんを煽ってた。答えて東さんは自分と同世代くらいの人文系アカデミシャンが体得している極力自分の意見を出さずに客観的な場から分析をして提示することを重んじるスタンスからはなかなか抜けられないんだけど、やっぱりこの如何ともしがたい状況をどうにかするために北田さんと何か雑誌を作るんだって意志を披露した。

 これに即座に切込隊長がブーイングをくれていたのは何だろう、そんな雑誌を作ったところで届く範囲なんて「論座」「諸君」の域を抜けずどこまでいっても同じことの繰り返しになるんじゃないかって疑問だったのかどうかは分からないけど、個人的にもやっぱり雑誌メディアが持つ力の限界みたいなものを感じて、それで果たして戦えるのかって懐疑も浮かんだ。すでにあるそれなりに届く範囲も広い雑誌が帰られないものを、新しい雑誌で変えられる訳がない。ただそんなことは2人とも先刻承知の上での雑誌刊行ってことだとするなら、届く範囲も含めて戦略的なことをいろいろ考えているんだろー。それが何かは出てからのお楽しみって奴か。

 初めて本人を見た切込隊長はしゃべりのトーンも落ち着いているし内容もきわめてクレバー。与えられた設問に対してしっかりと答えを話して聞かせてくれて、ネットなんかで文章として書かれる内容の明快さとはまた違った、明晰さって奴を伺わせてくれた。やっぱり初めての北田さんは声がもんたよしのりだったけど顎の構造が似ているから声も似るってことなのか。あとポロセーターだかの襟その下に来ているシャツの襟を重ねて上に着ているジャケットの上に出していたのが印象的。メガネも凝ってた。どこのだろう。斎藤さんはいつ見ても若いなあ。最年長にして髪がとってもしっかりしていて羨ましいことこの上ない。東さんは頭が茶色になっていた。そんな感じに2時間半のトークは終了。W桜は元気そう。僕は眠いんでそのまま帰る。フィギュア女子フリーは誰が勝ったんだ?


【12月24日】 クリスマスイブに相応しいのかどーなのかまでは知らないけれど、今をトキメク男性女性の作家が2人でいろいろ選んだ本を並べて売る「ドドド書店」ってのが「ジュンク堂池袋店」にオープンしたってんで、放たれるハッピーウェーブの恩恵にあずかろーとはるばる池袋まで出向いては、ライトノベル棚の端にしつらえられたコーナーへと詣でたら、真っ先に目に飛び込んできたのが「左巻キラストリゾート」だったのは僕の心の歪みのせいか。つか「左巻キ」はコーナーとは関係なくってすぐ横の棚に並べられているだけなんだけど、背表紙のピンク色とかがW桜のコーナーにこそ相応しい1冊と、思いこんでしまったからなんだろー。まさか狙って並べた、とか。

 本来的にはさまざまなシチュエーションをお題として出されてそれに相応しい本を答えていくって企画なんだけど、多彩過ぎて1度見ただけでは全部はとても覚えられない。幾つか記憶に残った本を挙げれば最近出ている「メガネ男子」とか、しばらく前に奥菜恵さんの主演で舞台化されてあれこれ話題になった松尾スズキさんの「キレイ」とかが並んでいたよーな。あとは本多勝一さんの「日本語の作文技術」だったっけ、これは昔に朝日文庫のバージョンを読んだことがあるけど、本多さんの情念渦巻く昨今のエッセイ類からは考えられないくらいに理路整然として明快に、日本語をどう書くかが紹介されていて今に至るまで個人的なお気に入りの1冊だったりする。そうか読んでいたのか桜……庭さんの方だったっけ? それとも桜坂さん? ともかく多すぎる本と桜庭桜坂の入り交じった展示は1度行っただけでは分からないので機会を見つけてまた行こう。しかしよくぞ企画した。あとは見て「ラララ書店」店長の萩尾望都さんが何を言うかだな。「あら私の本はないのねえ」、とか?

 分けてもらったハッピーを胸に電車を乗り継ぎ「国際展示場駅」へと向かう途中のりんかい線を「東京テレポート駅」で降りていくカップルのやたらと多いのにハッピーをすり減らしつつもどうにか到着した「国際展示場駅」から徒歩5分の「有明コロシアム」にて「bjリーグ」を見物する。日本リーグのプロ化を叫んでも入れられなかったチームが脱退しつつクラブチームの参加を入れて新しく立ち上げた日本初のプロバスケットボールリーグがこの「bjリーグ」で、すでに開幕から何ヶ月も経っているけど全国に散らばったチームが首都圏で試合をするのは月に何度かしかなくって、開幕戦で使った「有明コロシアム」に舞い戻って来るのも久々なんでこれは見ておかねばならないと、クリスマスイブの予定をすべてキャンセルして……真っ白だった予定がこれで埋まると幸いに覚えて駆けつけた次第。やっててよかった「bjリーグ」。

紫の巨人達がぶつかり合う、それがアパッチ魂  アメリカのNBAなんかを真似てエンターテインメントをうたい文句に楽しめるバスケットボールを見せてくれるって触れ込みの「bjリーグ」。それだけに到着した「有明コロシアム」の前はブースが出て屋台が出てパフォーマーが出てストリートバスケのコーナーも出来てとちょっとした遊びの空間になっていて、早めに来てもそれなりに時間を過ごして試合までの気分を盛り上げられるよーになっている。ただ12月でも屈指の寒さにぶつかった関係で、寒風が吹きすさぶ中ではなかなかまんじりともしておられず、オフィシャルグッズのブースで試合を行うホームチーム「東京アパッチ」のタオルマフラーを買ってそれからちょっぴり広場を散策する。

 「一世風靡セピア」を思い出させる肉体派のパフォーマンス手段がいてなかなかに格好良かったけれど、それよりも目についてしまったのが入り口付近に経って何やら演じていた、「ライス兄弟」って学生服姿の坊主頭をした2人組。その「大川興業」的な非モテ系の顔立ち雰囲気でもって、ジャンプを繰り返しながら非モテな哀しみを唄った歌は、「モテたい」なんてタイトルからしてクリスマスイブに聴くに相応しい曲で、聴く程に「そうだよたった1人にモテれば他には何もいらないんだよ。でも誰からもモテないんだよ。どうしてなんだろう?」って苦悩が心を苛み気分をドロドロにする。お金はないけど顔も変だけどいちおう僕だって人間なんだよ。少なくとも「ライス兄弟」よりは真っ当だよ。どうしてなんだろう? どうしてクリスマスイブに「ライス兄弟」の路上ライブを1人で見物してなきゃいけないんだろう? ああ悩ましい。答えはきっと来年も出ない。

 しかし30歳を越えてよくやる「ライス兄弟」。これは唄ってなかったけど「やっときゃよかった」なんて実にグッドな一曲で、「不良がみんな、マジメに、なっていくのに、マジメだった僕が、大人になれないよ」って歌詞が何とも切ない。でもって分かる。ほんと、やれるときにやりたいことはやっておいた方が良いんだよ。クリスマスイブにいちゃいちゃしたけりゃすればいいんだよ。したくなければしなくていいんだよ。って訳で僕はなんにもしてないよ。うーん負け惜しみ。ってな訳で「ライス兄弟」は「bjリーグ」がある時は「有明コロシアム」前でライブをしているそーなので、遠く立川駅前の定例ライブを見に行く気にはなれない人でもバスケットボールを見るついでに如何。近くでは25日に結構だそーです。非モテの神髄をそこに見よ。

間近に見られるチア目当てでも最初は良いのだ、それで引きつけ試合そのもののの虜にすれば  さて試合はといえばコービー・ブライアントのお父さんが監督を務めるホームの「東京アパッチ」が、大勢のチアリーダーの声援なんかもあって最初は押し気味に試合を進め第4クオーターの途中までリードしていたんだけど、何故かそこから得点が奪えず最後は逆転を喫しそのまま逃げ切られて残念にも敗戦。相手の「仙台89ers」は出だしこそゴールが決まらずリバウンドも取られていたんだけど、終盤にかけて3ポイントをしっかり決めたのとあとフリースローは確実にほとんどを決めて来たのが、逆にもらったフリースローをことごとく外したアパッチとの差となって最後に出てきた感じ。

 なるほどランとか早いしゴールしたを走り抜けつつパスしてダンクって技も見られてそれだけだったらNBA的な気分も味わえるけど、細かいところでミスが多々あったりするしシュートもリングをかすらず大きく外れるものがあったりして、NBA的なものを期待して見に行った人にはいささか悩みを与えそーな感じ。日本リーグのチームで活躍していたって人も少ない「bjリーグ」の選手達だけに、高度な技術の上に築かれたパワフルでスピーディーなNBAとはやっぱり差があって当然か。外国人選手はそれでも独立リーグでNBA予備軍が集うABA経験者が何人かいて皆なかなかに巧。スタミナはないけどテクニックはあってパワーも十分な彼らの姿を目の当たりに出来るって点で、「bjリーグ」を見に行く価値はそれなりにありそー。

 何より雰囲気を盛り上げようって意気込みを持って運営に当たっている人たちと、そんな人たちの支援に答えようと精一杯に頑張る選手たちの心意気だけは感動物。今は及ばなくても人が見に来て資金が周り、国も認めて日本リーグだけじゃないんだと入団する若い有望選手たちが増えて来れば、試合も高度化して雰囲気だけじゃなく試合そのものも含めたNBA的なエンターテインメントを、きっと与えてくれるよーになるだろー。その時まで長い目で発展を見守って行きたいけれど、一方で日本リーグのプロ化も着々と進んでいるからなー。理念として企業スポーツではなく地域密着のエンターテインメントを提供してくれる「bjリーグ」を応援したいだけど。それにはやっぱり日本リーグに負けないプレーを見せてくれることが肝心か。


【12月23日】 つーか何かクリスマス前っぽいんだけどそんなのとは無縁の暮らしを続けて不惑も超えた2005年。何かをすることもどこかに呼ばれることもなさそーなんで、ひとり荷物をまとめて原宿へと向かい代々木の第2体育館で今日が最終日を迎える「天皇杯レスリング日本選手権」を見物に行く。もっぱら女子。すでに山本聖子選手や伊調妹のメダルが決まってはいるけど、今日も吉田沙保里選手に伊調馨選手とそして浜口京子選手の登場とゆー、メニュー的にはなかなか充実した最終日。男子もグレコローマンの競技を中心に大会が繰り広げられてて細身ながらも手足に筋肉を貼らせた軽量級の選手から、全身を筋肉で膨らませた重量級の選手までがアリーナに作られたサークルでバトルを繰り広げていて、遠目にもみなぎるパワーが伝わって熱い熱い。

 選手たちは試合の合間は控え室なんてものじゃなくってスタンドに陣取る同じ学校の選手たちとかコーチなんかと一緒に時間を過ごすものだから、そこいらじゅうをのっしのっしと選手が歩いててここでメンチを切ってケンカをおっぱじめた所で、すぐさまタックルをかまされ首をきめられ足をすくわれ担ぎ上げられひっくり返され10人20人の選手たちからフォールを食らってしまいそー。そこが単なる格闘技のファンだけが集まるイベントとは違うところなのかも。ずいぶんと前に見た大会ではまだ山本美憂選手と結婚していたエンセン井上選手がいて、側に当時はまだそれほど有名じゃなかった”神の子”こと山本”KID”徳郁選手が付き従ってたくらいだし。未来の総合格闘家も出ている選手にはいたかもなあ。

 そんな合間に出てくる女子選手たちだけどやっぱり実力の差が激しい。吉田沙保里選手なんかは1回戦を立ちどころにフォールにしていたし、別の選手も見た目レスリングをはじめたばっかりって選手をものの数秒でタックルで倒してそのままフォールに斬って取ってた。1回戦はたぶんシードで準決勝から登場して来た浜口京子選手も秒殺ってほどではなかったけれど、力で倒してそのままフォールへ。別の準決勝の試合に出てきた選手の体格や技の切れ味との差は歴然であと5年は浜口選手の天下が続きそう。このあたりで凄い選手を他に出してこないと、逆に浜口選手引退後の重量級のチャンピオン誕生が不安になって来る。浜口選手だってアテネでは金メダルを取れなかった訳だし。出てこないかなあ、「桃魂ユーマ」(秋田書店、533円)みたいなの。

あるいは霊長類牝最強かも浜口京子  しかしやっぱり凄い応援ぶりだよ浜口京子選手。浅草だかのジムの周囲に集う大勢の人たちが、毎度まいどに集まっては太鼓ドンドンと声援ワーワーと応援するのが京子流、だったけどそれは今回も引き継がれていて他の男子選手が同輩の野太い声を受けて戦う一方で浜口選手はおばちゃんおじちゃん子どもに爺婆といった拾い世代が集まって、同じTシャツを着て声援を贈る。その光景は明らかに会場から浮いているけど、競技としては決してメジャーとは言えない女子レスリングが人気知名度で男子すら上回るほどになった理由の一つに、こーした応援団があって頑張った浜口選手がいたこがある。協会だって今さら止めてとは言えないだろーし止めたら味も素っ気もなくなってしまう。浜口選手が現役を続ける限りは集まり大声援を贈って浜口選手のみならず、女子レスリング全体を応援していってくださいな。なればこそ浜口選手の後ってのが余計に気にかかるなあ。

 る途中に大手町の地下鉄千代田線ホームで見かけた、イタリア代表のエンブレムを着けたニットキャップを被りアディダスのシューズバッグを持ってアシックスのコートを下げた長身細身の長髪兄ちゃんがいててっきり原宿あたりに行くかと思ったら浜口選手の応援団に混じっていて驚き。こーゆー層をも虜にしているのか京子さん。それとも親父の代からのプロレスファンか。とりあえずそんな応援を見て吉田選手伊調選手の試合も見られたんで会場を出て、折角だからと隣の第1体育館で開幕した「第74回全日本フィギュアスケート選手権大会」を見物する。

 3日間の日程だと普通は前2日で競技をやって最終日がエキシビションって感じになるけど、そこは「全日本選手権」、初日は男子のショートプログラムがメインで女子は2日目のSP、3日目にフリーといった感じに1日に競技が集中しないよープログラムが組まれてる。おかげで当日券売り場に行列はなく、スケートリンクの短い端に沿って作られたアリーナS席3000円なりががすぐに買えてしまい前から6列目とゆー間近な場所で、男子のショートプログラムを見ることが出来た。

 こっちだって高橋大輔選手と織田信成選手の2人が1枚しかないトリノ五輪行きの切符をかけて戦っている訳で、女子よりも狭き門を巡る戦いってことで注目されてしかるべき、なのに会場はアリーナ席がそれなりに埋まった程度でスタンド席はガラガラ状態。優雅さでは女子に負けてもスピードと高さと迫力では遙かに上の男子なだけに勿体ない気分にまみれる。まあ個人的も安藤美姫選手浅田真央選手を見たかった気持ちはたっぷりあったけど、たった3000円で日本の男子の最高峰を間近に見られるなら安い安い安すぎる。良い経験になりました。

 そんな男子の競技が始まる前に3組だけのアイスダンスのコンパルソリが行われたけど正直見ても差が不明。世界的な水準に達しているのかも分からない。それよりさらに分からないのはシンクロって競技でそんなものがフィギュアスケートにあったのかと改めて知ったくらいに驚きの競技で、リンク上に現れた12人だの16人といった集団が、水泳のシンクロよろしく並んで滑り分散して周り重なり模様を描いては離れていったりしてなかなかに迫力があって面白い。

 これもジュニア1組にシニア2組しか登場しておらず世界の水準がどの程度かも分からなかったんだけど、想像するにトップチームは並んで滑る時はピンと糸が張ったよーにまっすぐになり、スピンの時は全員の速度も足の高さも揃って華麗にして綺麗なイメージが、そこに描かれるんだろー。見てみたい、世界のシンクロ。とりあえずは女子が中心みたいだってど、1つのチームには男子が3人混じっていたから別にいても悪いものではないみたい。だったらいっそ男子ばかりのフィギュアシンクロってのを作り16人がいっせいに4回転を飛んだら迫力も相当なものになりそーだけど、リンクは確実に壊れるね。どっかの高校あたりで男子生徒がシンクロフィギュアに挑む様を描いた「フィギュアボーイズ」なんてドラマを、作ったら人気が出るか二番煎じと言われるか。後者だな。

 んでもって始まった男子SPは2番手に登場の高橋大輔選手が流石の演技。背はそんなにないのにスピードがあってそれからステップが超絶的に巧くって、壁際を走る時にも細かなステップを入れてて、けれどもスピードは落ちずに駆け抜ける当たりに他の選手たちとの激しすぎる格差って奴を見る。何故か京都大学なんて超絶学歴を持った神崎範之選手なんて人がその後に出てきてそれなりな演技をしたけれど、得点は高橋選手に遠く及ばない。ちなみに京大生はもう1人いたけど京大ってそーゆーフィギュアの特待生なんて受け入れてたんだっけ? 最近は国立大学もいろいろやっているから分からない。

 他は高橋選手の半分に届けばせいぜいってところで、流石はトリノ五輪代表だなんて言うだけじゃなくってメダルの可能性すら伺わせる才能だってことを目の当たりにさせられる。だからこそなおのこと織田信成選手とたった1つしかない枠を争わせるのが不憫。もっと早くに現れ活躍していれば、せめて2つは枠が取れたのになあ。本田武史選手の衰えと、若手の台頭との間に生まれた何年かのギャップって奴が響いているんだなあ。メディアもこれを機会に男子をもっと取り上げ若い才能を呼び込まないと、次のオリンピックはさらに大変なことになってるかも。

 そして登場の織田信成選手はまるで王子様って扮装でお殿様のイメージの真逆を行っていたけど流れ出した音楽に合わせて滑り始めるとこれがもう立派に完璧に王子様。キレのいいステップに高いジャンプをばしばしと決め得意にしている高速スピンで場内を湧かせまくる。結果は堂々の1位獲得。高橋大輔選手だって決して悪い点数ではなかったけど、その上を行く得点はジャンプの決まり具合とそれからスピンなんかがみせたキレの良さが、高橋選手のステップワークの印象を上回っていたからなのかも。2番目に滑ったってことも高橋選手には災いしたのかな。まあ差はそれほどないんで挽回は可能で、それだけに明日のフリーの出来がトリノ行きを大きく左右しそー。見に行ける人は幸運。その目でしかと見よ、真央ちゃんの可愛らしさを。いくら頑張っても高橋&織田が新聞の1面と飾ることはないのだよ。


【12月22日】 集まっているから家族なんだけどいつか離ればなれになるから家族でもありそれでもそれぞれを信じて心で繋がっているからこその家族だったりするんだろう。桑島由一さんの「神様家族7 新型握手」(MF文庫J、580円)は神山家のメメちゃんの旅立ちからいきなり幕を開け、ぽわんとしつつも団結する時は愛で固まっていた家族に訪れた、それぞれが自分の世界を新しい家族を作り世界を築き上げる長い旅へと向かって歩き出す物語へと趣を変えて、どこか悲しげでシリアスな、けれども切実で避けられないテーマが繰り広げられる。

 異なる世界で起こる青年と少女との交流に、人間となって試練を受けている佐間太郎とテンコの2人の旅路がシンクロして起こるドラマの行く末。羽を着けて飛ぶ猫たちのふわふわとしてもこともことして楽しげなビジョンを経て描かれる佐間太郎と父親の神様との会話のその先。またひとり旅だった後に訪れた佐間太郎の”その時”の、実にあっさりとした訪れ方に、劇的なことなんて必要なくって世界にはいろんなことが突然に起こって、それを粛々と受け入れていくのが人生って奴なんだと思わされる。

 「お前にはこっちにの世界に家族がいる。いつだってお前を温かく迎えてくれる人たちがいる。それを忘れちゃいけない。辛いときに助けてくれる神様がいる。いつだってそうだ。それは永遠にそうなんだ」とのパパさんの言葉が示す真理。後戻りは出来ないけれどそれでも進んでいかなくちゃいけない人生の、辛かったり厳しかったり大変だったりする路を、後ろで支えてくれている存在があるんだという、そのことを心に刻んで歩いていこう。メメと美佐と佐間太郎テンコの路はどこまでも交わらないかもしれない。けれども根源では繋がっているし、心では繋がっているんだと信じ歩みを進めよう。その先に新しい世界があって、そこに新しい”家族”が生まれ育ち無数の歩みを創り出す。

 つー感じで相変わらずに深遠さを秘めた物語をさて、どこまでアニメーションの世界で表現できるんだろうと心配しつつ続けて同じレーベルから月森草平さん「魔法鍵師カルナの冒険3」(MF文庫J、580円)は、大陸一の鍵師と評判のミラを学院時代にお嬢様を慕っていたヴェルナが現れミラとその弟子カルナといっしょに、大切な品物「流転の粉」を探そうとする物語の合間に挟まられる、ミラと学園時代に仲がよくってその彼女が変わってしまった責任を感じ今も自分を苛むミラの、想いを裏切るかのように悪意と反感を持ってミラに接していたエクセラの、心情が日記を通して吐露もされて構造に一段の奥深さが出る。何がエクセラを変えたのか。否、エクセラは最初からそうだったのか。先に描かれるだろう再開の物語に注目だ。

 だんだんとこちらは概要が見えてきた「舞−乙HiME」は尾久晶と鴇羽巧海の再登場から巧海の姉、舞衣の存在が明かされ彼女こそがガルデローゼの学園長として仕切るナツキのライバルであり今は行方をくらましていることが分かり、乙女システムの台頭によって安定した世界に入り始めたヒビを押し広げて世界を混沌へと導きかねない存在になっていることが、分かって来たけどそれよりもやっぱり目には晶くんのさらしで縛られながrまおしっかりと、谷間を作る房の量感ばかりが飛び込み心を貫くのであった。ああ良い夜だ。扮装を解いた時とか忍者衣装になった時の晶の体型がちゃんと女の子体型になっていたのも素晴らしい。それを将軍の服を着ていてもちゃんと見抜いたシズルは流石。これぞその筋の者の鋭すぎる直感って奴か。


【12月21日】 膿んだ心を引きずり仕事に行くのも億劫となってもはや限界。かといって年末のこの繁忙期に仕事を抜けるのは悪いと気を奮い立たせて会社へと通って義理を果たし、それから年が開けた1月2月をめどに辞表を叩きつけたいと思っていても、その時に怖い上司を相手に辞表を出せるか悩んでいる紳士淑女に朗報だ。臆している貴方を後ろから声と踊りによって応援してくれる”福袋”を、このお正月に手に入れておけば、例え相手がむくつけき大男であってもヤクザ紛いのパンチ野郎でも、面と向かってその面へと辞表を叩きつけられるだろー。

 その”福袋”とは東武百貨店船橋店が現在予約を受け付け中の「チアパフォーマー『M・Splash!!』ダンスパフォーマンス福袋」。千葉ロッテマリーンズのチアリーダーとして普段は千葉マリンスタジアムで飛んだりはねたりしている美女達の中から、6人くらいがどんな場所にでもやって来て、「応援」とか「祝福」のダンスパフォーマンスを繰り広げてくれる。価格はたったの1万円。ただし当選は1人様で来年1月2日の正午まで「船橋東武」1階の案内所にて応募用紙を配布しているので希望者はその旨を書いて応募すること。

 公序良俗に反することとか企業の宣伝とかには貸し出してくれないんでそーゆー目的での応募は負荷なんだけど、結婚式と同様に人生を決定づける離職の場面ならきっと彼女たちも精いっぱいの踊りを踊って勇気づけてくれるだろー。あとは何だろう、ありきたりなら結婚式だろーけどここは意外性を誘って告別式の場に招いて死者が喜んで涅槃へと旅立てるよう応援してもらうってあたりか。中旬あたりだったら直木賞だか芥川賞を受賞した作家が、東京會舘だかの受賞記者会見の場に来てもらって祝福してもらうってのもありかなあ。候補になっておられる方々は船橋まで来て応募してみては如何。ってかもうだいたい決まってるの?

 「銀盤カレイドスコープ」とかのアニプレックス作品を見ている合間に流れるCMで太股に差したナイフを抜いて投げる冴子の色っぽさに眼をやられつつも耳に聞こえる「フェンス・オブ・ディフェンス」の「SARA」とか小比類巻かほるさんの主題歌とか、「TM NETWORK」で最大の知名度を誇る曲となった「GET WILD」に惹かれて出たら買おうと決意していた「CITY HUNTER」の主題歌コンプリートベストがいよいよ発売。早速手に入れ「iTunes」へと落としてパソコンで曲を開きまうはちゃんと収録されていた岡村ちゃんこと岡村靖幸さんの「Super Girl」を聴く。ああそうだよこの曲あったよ。

 主題歌では小比類巻さんがやっぱり初期ってことで強く心に残っているけど大沢誉志幸さんの「ゴーゴーヘブン」も聴けば思い出す一品。あとは「PSY.S」の「Angel Night 天使のいる場所」かなあ。大沢にサイズにTMといった当たりは、80年代後半のシティポップスってゆーかニューミュージックってゆーかJ・POP誕生以前の日本音楽全盛期に、いろいろ借りて聞き込んでいたところにアニメに起用されて驚きつつも嬉しくなったアーティストばかりなんで今聴いても懐かしい。

 番組も中盤に入りテレビスペシャルとか劇場版なんてものが出回り始めると、「AURA」なんて「イカ天」系が入ってきたり荻野目洋子さんが参加したりして耳に聞き覚えのないものばかり。でもそれはそれで新鮮。「HUMMING BIRD」なんて参加していたなんて放映当時は知らなかったよ。彼らって確か「マクロス7」の「ファイヤーボンバー」でもあったんだっけ。聴けばその声に思い出すかもしれない。他に鈴木聖美さんとか高橋真梨子さんとかアン・ルイスさんとかKONTAとか多彩な面々。今にして思えば後にソニーが「るろうに剣心」あたりから使い出し「機動戦士ガンダムSEED」や「鋼の錬金術師」あたりで頂点を見つつある、それなりに有名なアーティストをアニメの主題歌にクール代わりでどんどんと起用していって、売り出しながら後でコンピュレーションを作る戦略の走りみたいなものだったのかも。当時はそんな意識はなかったんだろーけど。ともあれ80年代が蘇る1枚。DVDボックスも何か欲しくなって来た。記憶に強烈に刷り込まれ、機会あるごとに気持ちをくすぐるアニメってだから怖い。

 遂に登場。ってゆーか流石は太田克史編集長。超絶分厚い「ファウスト VOL.6 SIDE−A」に続いて登場のとてつもなく分厚い「ファウスト VOL.6 SIDE−B」に滝本竜彦さんや三浦しをんさんを見出し送り出した出版エージェント「ボイルドエッグズ」を率いる、ってゆーか多分まだ1人しかいないから率いつつ率いられてるハイパーエージェントの村上達朗さんが登場してはスーパーエディターJ(ジェイ)こと太田編集長と熱き対談をば繰り広げている。最初に宇山日出臣さんとか引っ張り出して同じ会社の大先輩を自前の会社に登場させてみせた鮮やかさにも驚いたけど、世にわんさといる自薦他薦なハイパースペシャルウルトラエディターを差し置いて、地道に活動を続ける村上さんを堂々フィーチャーしてみせたのもなるほどなかなかな手腕と感心。だって普通の人はタッキーは知ってても村上さんとかボイルドエッグズは知らないし、多分興味もないだろーから。

 けどでも編集している当人が興味を抱けばすべてをそこにぶつける熱さがウリの若き編集マスターJ(ジェイ)は、その職務に興味を抱きまた以前に村上さんが編集した「アップル」とゆー本へのリスペクトも抱いてインタビューを刊行し、互いに感じ悩んで打開に挑んでいる昨今の出版の状況から、編集者として次代を担う作家を生み出す苦労と楽しさなんかを話してる。そこには滝本さんを見出した際のやりとりなんかもあって、「ネガティブハッピーチェーンソーエッヂ」があの形式へとどうやって落ち着いていったのか、そこにはどんな削りや付け足しがあったのかってのが明かされているから、物書きを目刺し頑張っている人には大いに参考になりそー。思い込みだけでなく客観性も大事にしないと人を震わせる話は書けないってこと、なのかな。

 「ライトノベルがやりたい人ではなくって、儲かっていそうなものをやりたい人が参入してきているような気もしてしまいますね」と村上さん。もちろん売れそうなジャンルに売れそうな作家を集めてとりあえずかっぱいでやれって、って新規参入のすべてがそう考えている訳ではなくって、現場の編集者と作品を送り出す作家のレベルでは、ライトノベルを書きたい、そして大勢の読者を楽しませたいとゆー情熱があるんだと思うし、それがなければ作品は集まらないし店頭に並んでも読者の目には留まらない。出す以上は中身もしっかりしたものが出てくるんだと信じたい。

 けどしばらくは勢いで売れてもいずれ市場が縮む時は必ず来る。そうなったときに購買は大手老舗のブランドへと集まるもので、作品が良くても新興レーベルでは厳しい状況が訪れる。そうなった時に、それでも出したい出すべきだと考えている会社だったら引かず頑張り通すだろー。問題は現場はそうでも会社が「儲かっていそうなものをやりたい」会社だった場合で、誘われ編集に絡んだ人も招かれ作品を寄せた作家もまとめて”消費”されてしまう可能性がただただ心配だ。そうならないためにはどうするか。編集レベルで”消費”を避けようとしても産業レベルで”消費”され尽くしてしまう状況に編集者や作家はどう立ち向かうべきなのか、ってあたりの答えを村上さんと太田さんの対談から、汲み取り見出すことも出来るかも。あらゆる本に関わる人は作者も読者も枕元において熟読。

 村上さんを撮影したのはなるほど毎度の小林紀晴さんか、時代を突っ走るフォトグラファーに撮影してもらえるなんてちょっと羨ましいかも。あと対談で太田さん、「かわいい女の子を描けさえすれば、今は誰でもデビューできるでしょう。僕だって、三ヶ月くらいみっちり練習したらデビューできそうだもん」とはよく言った。次号には是非に太田編集長の手になる”萌え美少女イラスト”を練習の上に披露してもらえれば楽しいかも。けど海外発行に向けて飛び回っている忙しさでは練習は無理か。韓国台湾米国等々で「ファウスト」出版とは。「文学界」でも「群像」でもなく「ファウスト」が世界に切り込む文芸誌になるとは、これも時代かそれとも先達たちがあまりに無策だったのか。


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