縮刷版2004年9月中旬号


【9月20日】 上野へと出て東京芸大にある美術館で興福寺展だかを見物。お経とか絵画とかいろいろあったけどやっぱり運慶はじめ鎌倉時代の名工たちの手による彫刻群が圧巻。横に並んだ十二神将(の一部)も良いけど四体がほとんど背中合わせで立った四天王の迫力がとにかく凄くって、周囲を何回か歩きながら今地震でこれが倒れてきたらきっととっても痛いだろうな、なんてこともちょっぴり想いつつルネサンスの彫刻のよーに人物としてリアルに見えるんだけど東洋ならではの様式美も備えた彫刻の素晴らしさに感動する。

 時々日展だとかの彫刻部門を見るけど「青春の光」とか「朝の少女」とかいったメルヘンにまみれたタイトルのありきたりな立像はあっても、かつての仏教彫刻のような迫力とか様式美を持っているものはまるでなし。アートと宗教じゃあカテゴリーが違うって言えば言えるけどでも、数百年も昔の作品がその量感質感で与えてくれるよーな感銘を、アートな彫刻があんまり与えよーとしてくれていないのは不思議とゆーか謎とゆーか。まあ日本画だって琳派の頃と今とじゃまるで違ってるから、明治維新を経てガラリ変わった認識の上で、芸術も工芸的な匠の世界から内省を探求する方向へと移り変わっていったのかも。でもって工芸的な匠の世界は漫画やアニメやフィギュアといった分野に受け継がれている、って言うのはサブカルっぽくなるから止めだ。

 いろいろと読書。まずは富士見ファンタジア大賞で準入選となったいわなぎ一葉さんの『約束の柱、落日の女王』(富士見書房、580円)から。傾きかけた王国で危機感を覚えて悶々としながらも一人では如何ともし難く、その鬱憤を内に向けては権力をかさに着て、お付きの者たちに無理難題を吹きかける暴君となりかかっていた女王クリムエラの前に、1人の見かけない男が現れたことがきっかけで、情勢が大きく動き始める。

 出自こそ不明ながらも高貴な雰囲気を醸し知性もあれば武力も上々という逸材の登場に、クリムエラはカルロと名乗った彼を側近として取り立て、その意見を採り入れては王国に迫る危機へと立ち向かう。暗殺や裏切りの危険と背中合わせで長く仕える臣下たちすら信じられなくなっていたクリムと、周囲に誰ひとりとして知人もおらずむしろ敵ばかりという中をその才覚でのしあがるカルロという、ともに孤独だった2人はいつしか惹かれ有るようになる。けれどもカルロにはクリムと運命を共にはできない秘密があった。それは……?

 とまあ、読んでなかなかなに重層的で重たいストーリーに、それぞれが強い意志を持ち信念を持って生きているキャラクターたちの内面にまで迫った造型ぶりはなかなかな腕前。期限を切られた時間の中で”その時”へと向かってテンポアップしていく展開はとにかくスリリングで、この先いったいどーなってしまうのか、本当にそーなってしまうのかって好奇心に駆られてページを繰る手も早くなる。なおかつエンディングに繰り広げられるドラマの何と哀しくて美しいことか。時間の残酷に地団駄を踏みたくなるけれど、それでもほの見えた時間の優しさに光明を見出し心休まる。傑作。恐るべき新鋭の登場に喝采。ってか新鋭なのかこの人は。

 それから鈴木大輔さん「ご愁傷さま二ノ宮くん」(富士見書房、580円)。こちらはファンタジア大賞の佳作。姉と2人で暮らす二ノ宮少年の家にある日とってもハンサムな男性とそれから美少女の妹がやって来て同居することになったと言う。どーやら謎な仕事をしている姉の差し金らしーが理由は不明。逆らうことなどできず招き入れた少女・真由は兄の美樹彦曰く人見知りが激しいそーなのに、何故かいろいろ媚態を見せては二ノ宮少年に働きかける。実は真由、というより美樹肥彦と真由の兄妹はともに「生命元素関連因子欠損症」、すなわち生命エネルギーを自分で作り出すことができない先天性の症候を持ち、異性を誘ってはその体から生命エネルギーを吸収して生きる”淫魔”だった。

 って訳で女性をたらしては生命エネルギーを頂いて歩く美樹彦兄とは違い、未だ男性と接することのできない(その理由もいろいろあってこれからの展開で語られそー)真由と同じ屋根に住むことになった二ノ宮少年との、くっつくかくっつかないかってな瀬戸際エピソードでもって展開していくストーリー。実は二ノ宮少年に気がありならがもそーとは言えない高飛車お嬢様による妨害工作なんかも絡んで、話はドタバタとしたうちに進んでいく。アニメや漫画に良くあるいわゆる同居物、押し掛け女房物のバリエーションのひとつってことになる。

 吸血鬼やらロリっ娘悪魔やら、果ては撲殺天使やらと同居物にもバリエーションが増えているけど奥手の淫魔ってのは珍しく、また謎ありまくりな二ノ宮少年の姉と真由の兄の突出しまくった振る舞いも楽しいけれど、撲殺天使の破天荒さ荒唐無稽さに較べると割にベタな同居物って感じで目先の敵となる高飛車お嬢様も役者不足の感があってメリハリが不足気味って気もしないでもない。突出したキャラを突っ込み面白さ爆発のエピソードを積み重ねて行ってひたすらに笑わせる撲殺天使方式で行くのか、くっつきそーでくっつかない中を横やりがはいり別離の可能性も出ながら最後はやっぱり元の鞘ってベタな展開に萌えさせるのか、次巻での塩梅に注目。

 連休だってのに誰からも遊びに誘われもせず、かといって誰かを遊びに誘い出すこともしないまま、ひとり出かけひとり読書の隠遁生活。会社は会社で収益の未だ回復途上にあるってゆー状況で値下げとゆー大英断を下し、またスタッフ面の手当の行われない中を新たに日曜日も発行するとゆー大決断を下し、それを大々的に紙面で告知したにもかかわらず、大型掲示板の関連スレッドは既存のものはスレッド整理の都合もあって過去ログ行きとなり、その後に出来たものもわずか数日で一桁のレスしかつかないままやはり過去ログ行きとゆー事態に、クリムエラの王国にも匹敵する存亡の危機を覚え立ちすくむ。

 もとより産業専門紙って性格上、決して世間に広く知られた存在とは言えなかったけど、3月のリニューアル後はテレビCMも打ち中吊り広告も下げてそれなりに世間にPRして来たつもりが、実はまるで伝わっておらず存在そのものが認知されていなかったとゆーことに、改めて気付かされてしばし愕然とする。そんな状況を知ってか知らずか、値下げを起死回生の手段と認め経済紙って性格から大半の読者となっている企業が休みとなる休日に新聞を出して果たしてどこまで世間に旋風を巻き起こせるのか。それそも起こせないままスレッドと同様に過去ログ倉庫へと追いやられるのか。まさしく正念場って感じ。せめて冬のボーナスまではと祈祷。現物支給だけはやめとくれ。


【9月19日】 理屈よりも欲得とか既得権益とか、そんなものが幅を利かせる政治と背中合わせの法務官僚の世界に何十年もいて今さら「理屈で割り切れない世界だった」と球界のことを謗る根来泰周日本プロフェッショナル野球組織コミッショナー。今回の一連のプロ野球再編激では一環して経営側の味方をする、というより事実プロ野球の経営者なんだから味方をして当然とも言える読売新聞のインタビューに応じて自説を開陳してござるニンニン。

 「球団が疲弊し、相当損害を被るところが出てくる。そんなストを起こして、選手の方に良いことになるという議論に、僕は賛成できない」って言うけど球団が疲弊したのは今日昨日にストを起こしたからではない。球団が疲弊せざるを得なかった一連の仮定、たとえば自分が今喋っているメディアが抱える球団のオーナーがして来たこととなんかをまるで埒外において、選手のストにのみ”球団疲弊”の責任をおっ被せる論旨はおそらく誰の共感も招かない。

話しがこじれた理由として理屈で割り切れない世界だったってことの他に、「オリックスとの統合構想が早い段階で漏れてしまった近鉄の情報管理の甘さ」を挙げているのも論外。だったらたとえば9月8日のオーナー会議でいきなりポンと話が出て、了承されたらいったい何が起こったというのか。今季はのり切れたとしてもシーズンオフにもめ事が持ち越され、来シーズンそのものが消えてしまったかもしれない。決算発表とか株主総会とかを控えて重要な経営事項として遠からず明かされることでもあった訳で、1日1週間、それが早まったからといって混乱が長引く要因として挙げるのはてんで的を外してる。

 それを言うなら結局は破談となった福岡ダイエーホークスと千葉ロッテマリーンズの合併を、確定もしれいない段階で見込みだけで喋ってしまった西武ライオンズの堤義明オーナーへの批判をなぜしない・混乱の理由として挙げた「オリックスと近鉄の統合が1リーグ論に結びつけられてしまった」ことはすべて、7月のオーナー会議で堤オーナーが言った「もうひとつの合併がある」という断言から発している。

 立場ある人の責任ある発言と認めるならば1リーグ論が既定の事実と化していると見て当然。ありもしなかった1リーグ論に選手が反発して独り相撲を取ったわけでは決してない。それともその高い場所にいてコミッショナーには、1リーグ制移行への動きが見えなかったというのか。見えなかったんだろうな。見えたらここまで話しが混乱する前に事態の収拾へと動いているよ。混乱した理由。「コミッショナーには権限などないのです。私には何も出来なかったのです」と言えば良いのに。言えないか。

 もっとも現実問題、新規参入が来季か再来季かが争点になっている今の論議について考えると、作って参入させるくらいの手続きだったら来季からだって可能。ただそのチームが例えば仙台に本拠地を置いてライブドアが作ろうとしている球団だとして、見込んでいる毎試合2万3000人とやらを集められるかってゆーととてつもない疑問符が出る。優勝争いをしている中日ドラゴンズがナゴヤドームを常には満杯に出来ないのが野球。かつて絶大な人気を誇った東京ヴェルディ1969の試合がホームで満杯にならないよーになってしまうのがスポーツ。地道な準備に絶え間ない努力があってはじめて観客は来てくれるもので、それを話題性があるから、今までプロ野球のチームがなかったから来てくれるって言うのは他の球団、他のスポーツチームの努力を蔑ろにする言葉だろー。

 来季から参入が認められるかどうかが参入の大前提。再来季からなら解らないって言ったライブドアの態度も不明瞭。1年間努力して、3万人だって集められるくらいの感触を得てから参入すればそれだけ長く、深く愛されるチームになってプロ野球全体の発展とやらに貢献できる。試合も出来ない球団に何万人が集まるかなんて予想不可能。関心も薄れてしまうんで今、入って走りながら鍛えていくって考え方もなるほど道理ではあるけれど、1周遅れでトラックを走られるランナーなんて大会運営で迷惑千万な存在。そんなチームを迎えて試合、既存の球団だってしたくはないだろー。

 だから戦力の均衡が必要だ、ってのは論理としては自然な流れ。それなくしては来季だけじゃなく将来も見通した改革なんて出来やしないのに、プロ野球界もメディアも企業も新規参入が果たされるか、それとも1リーグ10チーム制になることが1つのゴールのように見ているから気にかかる。誰もが絶対に無理だって思った、サッカーの100年構想だって10年経ってそれとなく、達成されそうな気分が出てきている訳でだったらプロ野球も、「全国に芝生の球場を」「プロ野球100チーム化」とかいった内容の100年構想とかぶちあげて、向かうべきビジョンを打ち出してそれには何が必要かをそれこそ根来コミッショナーの言う球団、選手にファンの三位一体で考える機運を作らないと、来年再来年とまた同じことが繰り返されそー。球団は疲弊し選手は疲れファンは離れ、新聞は売り上げが落ちて僕らは路頭に迷うんだ。

 パンツが見えたら嬉しいかと聞かれれば嬉しいに決まっている訳でだから、1巻と2巻がまとめて登場した大島司さんのサッカーじゃないテニス漫画「ステイゴールド」(講談社、390円)は絶対的に正しい漫画でたとえ、それがパンツではなくスコートであると指摘されてもお構いなし、絵で見ればそれがスコートかどうかはわからないしだいたいが一種記号と化している存在であるところのパンチラとはすなわち、スカートなる衣装の下に履かれた三角形の布が見える瞬間であるとの真理に立てば、それがスコートであろうと毛糸であろうと金属製であろうと見えて喜ぶのが正しい態度なのである。

 ましては相手は増村美冬という性格いささかキツ目の美少女。1巻で1コマ2巻で3コマ程度しか見せてくれなくたってそれで買うには十分すぎる理由がある。もちろんかつて赤い弾丸と呼ばれながらも肘を壊してサッカーに転向していた主人公の佳山大介が高校に入って弱小テニス部を立て直して大活躍し、飲んだくれていたコーチまでもがかつての輝きを取り戻していくスポーツ漫画にありがちだけどありがちだから故に人気の高いストーリーも面白い。

 問題はありがちな対戦相手のインフレーションに漫画が耐えられるのかって所だけどそこはそれ、必殺の増村美冬のスコートチラがあればファンは嬉しいし僕も喜ぶんでそこは妙な自粛などせずのんべんだらりと続いて行って欲しいもの。それにしても女子テニス部主将の菖蒲屋友美といー尖り眼鏡の女子テニス部監督といーキツ目の女性に恵まれた「ステイゴールド」。踏んづけられたい嗜好の強い人にはキャラクター的にも読んで嬉しい漫画かも。

 パンツを投げつけられれば嬉しいかと聞かれれば嬉しいに決まっている訳でだから、第3巻まで来た桜坂洋さん「よくわかる現代魔法 ゴーストスクリプト・フォー・ウォーズ」(集英社スーパーダッシュ文庫、540円)は超絶対的に正しい小説で、ましてやそれがハーフの美少女クリスティーナ弓子がスカートめくりをされたことに腹を立て、その場で脱ぎ下ろした正真正銘の生パンツってことで受け取った男の子は狂喜乱舞して良いはずなのに、何故か泣き出してしまうから小学生って解らない。見たかったんじゃないのか。

 そんな訳でいきなりノーパン状態で登場したまだ小学生の弓子をめぐるエピソードとなった「よくわかる現代魔法」は過去に起こった事件に6年後からたらい魔法使いの森下こよみが時空を越えて参加しては、相変わらずのはちゃはちゃを繰り広げるってストーリー。中に弓子が魔法使いとして自立していく物語が織り込まれていて弓子ファンは表紙絵ともども楽しめる。超合理的な性格と言葉遣いが不思議にも楽しい嘉穂ちゃんファンには登場が少なく残念かも。こよみは相変わらずたらい、出しまくってます。「ガーベージ・コッレクター」のような大きな展開はないけれど一休みしつつ次への期待も持たせてくれる最新刊。続く展開がますます楽しみ。


【9月18日】 なるほどご先祖様が忍者なら遁走は得意中の得意ってことか根来周泰日本プロ野球組織コミッショナー。春に大阪近鉄バファローズがネーミングライツを持ち出した時は就いていなかったか就いていたかって時だったからまだしも、すでにしてその事を持ってパリーグの球団運営がのっぴきならない状況に陥っていたことは認識して当然だったはず。でもって初夏にいよいよバファローズとオリックス・ブルーウェーブの合併が決まって選手達からかつてない反発の声がわき起こり、いずれ問題化するだろーことは確実になったにもかかわらず、このコミッショナーが事態の収拾はおろか情報の把握に務めたって雰囲気はない。

 間に海外旅行まで挟んで7月8月のまるまる2月を無為に過ごした挙げ句に9月になってよーやく、意見とやらを出してきたけどそれだって選手会の代表を呼んで懇々と話すとかいったものじゃなく、ただ文章で相手が絶対にのめそうもない線を無理矢理出して来ただけのこと。でもってそれが呑まれず拒否されストライキに突入となったら受け入れられなかったと辞任してしまうんだからもう、球界の裁判官どころかご意見番としての役目すら果たしていない。

 これで退職金までもらったら非難されるどころか末代まで祟られるぜ。むしろ給料を返上するくらいのことをしないと人間として表を歩けなくなる、って想ったらとっとと別の団体のトップになりあそばされた様子。脚を切られよーと這ってでも帰って主君に情報を伝える忍者に恥って言葉はないらしー。さてもどうなることやらプロ野球。見なくても困らないけどせめて中日ドラゴンズの優勝くらいは認定してあげて。

 2人の人間で蟹ってゆーと「究極超人あーる」でR・田中一郎ととさか先輩がキングアラジンだかに対抗して2人で蟹の仮装をしよーとしていた場面が真っ先に浮かぶ人間の年齢はきっと35歳から45歳。なるほど1960年生まれの綾辻行人さんが「暗黒館の殺人」(講談社ノベルズ、上下各1500円)の中でシャム双生児の美少女に自分たちのことを蟹と言わせたのはそーゆー背景があったのかって、ひとり勝手に納得しているけれど本当の所は知りません。

 さてえっとかれこれ10年ぶりくらい? 「館」シリーズの最新刊はこれまでがどちらかと言えば館の奇矯さが話のメインにばーんと来て、そんな不思議な館ならではの殺人事件が起こって不思議な館に住む人ならではの事情が明らかになるってパターンが多かったって歪んだ記憶があるけれど、この「暗黒館」は館そのものは巨大で奇妙ではあっても奇矯という程ではなく、仕掛けも他にある屋敷が斜めとかピラミッドだとかいった奇天烈を前にすれば極めて真っ当、伊賀上野にある忍者屋敷ほどの奇抜さも備えておらず、館そのものを楽しみしている人は肩すかしを食らいそー。

 一方で盛り込まれたドラマの重厚さは2冊で1200ページって分量を満たして溢れるくらいに錯綜して練り混まれ、繰り出されるさまざまな謎また謎を追って次へ次へとページを繰らされる。そして読後感。果たして本当なのかってゆー伝奇的な設定の新本格推理的な文脈での是非を伝奇的な物語を読んで育った人間ならではの寛容さで受け入れれば、そこには永遠への憧れと恐怖とゆー、クレオパトラから始皇帝から営々と続いてきた命ある存在である人間ならではの心理で真理が迫って来る。

 大団円の果てに明示された新しい可能性が果たしてこれからの展開に影響を及ぼすのか。それとも明示によって閉じた円環を裁ち切り、続編の呪縛から読者も自身も解放してしまったのか。お話する機会があれば聞きたいけれどお話する機会なんてないからなあ、雲の上の人過ぎて。まあぼつぼつと8年後あたりに出るかもしれないかもしれないと、薄い可能性に望みとゆーよりは心をひっかけておく感じで待ち受けておこー。出たらラッキー。それが例え「十二国記」の続編であっても。

 プロ野球の「中日ドラゴンズvs読売巨人軍」が中止になったんで裏番組の「東京ヴェルディ1969vs名古屋グランパスエイト」を見に味の素スタジアムへと行く。かつてプラチナチケットと呼ばれたヴェルディ戦。どこで試合をしても超満員の人が詰めかけ大騒ぎになっていたけど某ナベツネさんが当時のチェアマンと主導権争いをして敗れ去った果てに経営権を関連会社にポイ。でもって時代を支えたスターを次々と放出していった現在、たとえホームであっても満杯の観客が訪れることはないくらいに、ヴェルディの人気は凋落している。

 同じ味スタに本拠を置く「FC東京」が2階席までぎっしりと人が入ってゴール裏から声援を送る状況との差の実に大きいこと。「東京ダービー」を見ればそれは瞭然で、かたや地元の企業が地元への定着を狙って地道にファン組織を盛り上げて来たチーム、こなた正力松太郎さんの意志もあって作られた当初はともかくJリーグバブルの中で商売の種として親会社に厚遇されながらもファン作りって意味では親会社のホームタウン移転画策なんかもあって後手後手に回ってしまったチームって違いが、今の観客動員の差となってくっきりと現れている。

 にも関わらず今もって地域密着を声高にアピールして来ている節のまるで見えない緑の軍団。過去の栄光と全国に名を広めようとした正力松太郎さんから連なる意ある綿々の頑張りによって獲得されたファンが今はそれなりにいるけれど、そんな状況にあぐらをかいてワンマンマンが尊大な態度を見せ続けていることに、ファンはそろそろ嫌気を感じてきているはず。地域密着こそがこれからの球団経営に必要と選手も経営も一体となって改善に向かうチームが増える中で、リーグ切っての不人気球団へと転落する可能性だって決して皆無じゃない。あのヴェルディの惨状を見ればあながち夢物語じゃないんだけど、この後に及んで「億万長者のスト」と揶揄するやんちゃぶり、だからなー。親会社もろとも沈みかねんぞ巨人軍。


【9月17日】 「なでしこジャパン」はしゃーないさ。ちょっとだけ知られるよーになったとは言っても全国的にはまだまだマイナーだったサッカー女子日本代表。なんで愛称でも何でも付けて世間の人からちょっとでも話題にしてもらえる機会を増やそうって意気込み、理解できる。でもねえ。スタートしてもう10年以上が経つ「L・リーグ」。それ自体が日本女子サッカーリーグの略称ならがも愛称として定着していた言葉を、いくら今がブームだからって「なでしこリーグ」にしてしまうとは、日本サッカー協会、いったい何を考えているのやら。分かりません。

 ってか10年耐えられる言葉なのか「なでしこリーグ」。先に有る程度の先入観が生じる言葉って年月が経つに連れて陳腐化して、かっこうわるいものに思われ廃れていくものって気がしてならない。逆にスタート時にはただの記号でも、そこにいろいろな要素が加わることによって権威なり価値なりがついて永遠の言葉になるってこともある。「メジャーリーグ」なんて言葉自体はとてつもなく単純なんだけど、100年を超える歴史、そこで活躍して来た選手たちの姿が「メジャーリーグ」って言葉にとてつもなく重い価値、深い意味を与えている。

 代理店主導で作られたってこともあって最初に聞いた時はとっても珍妙だった「Jリーグ」って言葉も、スタートから10年でよーやくそれなりに意味と価値を持つよーになった。この間に果たした関係者の頑張りってのは選手もチームもリーグも協会も、並大抵のものではなかっただろー。これが明日から例えば「ますらおリーグ」になりますって、言われて果たして納得できるか? 出来るわけがないだろー。いやでもちょっと格好良いかもな。「ますらおリーグ」。益荒男って相撲取が11人対11人で戦うリーグってイメージが湧いて(湧きません)。

 「Jリーグ」よりも始まったのが速い「L・リーグ」はだからなおのこと重い言葉だし、この間にリーグの発展維持に務めてきた関係者が寄せる思いも強いはず。なおかつ「なでしこジャパン」たちの活躍でもって注目が戻ってきている時期だけに、「L・リーグ」って言葉をこれからますます意味を持ち価値のあるものにしていく絶好のチャンスと今を、捉えて悪いことはない。それがいきなり「なでしこリーグ」。「なでしこジャパン」からの一見さんをそのまま引っ張る言葉としての働きは存分に期待できるけど、「JよりLだ」と頑張って来た選手たち、関係者たち、そしてファンたちの思いはどこに行ってしまうのか。

 まあ「なでしこリーグ」は愛称であって略称としての「L・リーグ」は使われるからそんなに目くじらを立てることではないのかもしれないけれど、でもちょっぴりブームを受けて”頭に乗ってる”っぽい構図が見えて、果たしてブームが終わった時に大きな揺り戻しが来やしないかとちょっと心配。どうせやるなら「なでしこ」を10年100年の言葉にし、試合ごとに「ナデシコ・オブ・ザ・マッチ」として表彰し、最優秀選手はMVPじゃなく「なでしこ様」とか「なでしこ姫」、新人王は「新なでしこ」と呼んで讃えるくらいの覚悟を、協会の人リーグ事務局の人には示してほしいもの。期待しよう、我らが酒井與惠選手が「なでしこ様」と呼ばれ讃えられ十二単をまとい「よみうりランド」を練り歩く姿を。

 ふと気が付くとエイベックスがCCCDからの”撤退”を発表していて仰天。率先して導入を行いのみならず他のメーカーにも働きかけては業界あげてCCCDの定着を図ってきた会社がエイベックスだからなあ。音がいまいちだって書くとそれだけでとてつもないプレッシャーをかけて来る会社だった程で、それが率先しての撤退を表明ってことはつまり、何かがあったってことなんだろー。一連の騒動を経て依田巽さんの影響力が下がって来たってことなのかなあ。気になるのはもう1つの勢力として「レーベルゲート」を導入しているソニーの動向。1回だけならコピー可能な仕組みではあるけれど、それで済まないのがMP3なり「iPod」なりの携帯オーディオ時代。旗振り役が一足早く降りて売り上げでも伸ばそうものならあるいはソニーも同じ土俵へと、降りて来たりするのかも。要注目。


【9月16日】 清涼院流水さんの「とくまでやる」(徳間デュアル文庫、619円)を今さらながらに読む。「徳間でやる」ことになった清涼院さんが「出有得馬(であるとくま)」という名の青年を主役に学園と、街とを舞台に起こる連続自殺事件の謎に読者を「解くまでやる」よう引きずり込んだって話でつまり、やっぱりそーしたアナグラムだか何だかが、事態に大きくからんでくる清涼院さんならではの展開になっていて、ここまで突き抜けるとなるほど文に寄るショウ、すなわち”文SHOW”と自称するのも解る気がする。

 出有がアルバイトをするレンタルビデオ店の近くにある学園で平日に女生徒が連続して自殺し、週末は出有と同窓で同級の山本と共通の知人が自殺していく話しを見開き2ぺージが1日になる書き方で積み重ねていく芸達者ぶり。それでいて形式に寄らず記号的にもしないで、登場人物たちがそれぞれに抱えた悩みとか、性格とかをちゃんと書いてキャラクターに関心を抱けるようにしてあって、奇抜で奇妙な奇想だけではないキャラ萌え的な楽しみも出来るよーになっている。今まで読んだ流水大説では1番読みやすく分かりやすいかも。なおかつ面白さでもトップかも。

 とは言えそこは流水大説、人の生き死にが記号的で10人死のうと100人死のうとそこに悲しみとか怒りの情感は抱きにくくなっていて、ノベルズよりも手に取る年齢の下がる文庫で果たしてって思えなくもないけれど、訳の分からないまま死んでいく人の世界に5万どころか50万500万はいる状況、日本でだって政府とゆー加害者によって3万人が自殺という他殺に追い込まれている現実に生きている少年少女にとって、物語の中の記号的設定的な死の方がまだ物語を成り立たせ、全体として放つメッセージの要因として意味を持たされている分、ましに映るって可能性もあるのかも。

 かといって死の悲惨さを描き込み過ぎると逆に主となる読者層に刺激が強すぎるかもしれないケースが、第3回スーパーダッシュ小説新人賞を受賞した片山憲太郎さんの「電波的な彼女」(集英社、629円)。設定的にはまあ簡単で、学校でもトップクラスのワルの少年をなぜだか前世からの因縁といって学園でもトップクラスの秀才の少女がストーキングし始めたところに持ち上がるいくつかの殺人事件。犯人は少年を護るといった少女なのかそれとも別の誰かなのか、といった展開で聞けばありがちな話に見えてこれがなかなかに入り組んでいて、奇想という程ではないけれど意外な展開になるほどとそーだったのかと驚かされる。

 殺人の描写暴力の描写はなかかなに凄絶。命乞いをしようと切り刻まれ殴られ命を奪われる少女が描かれ彼女がどんな死体になったかが描かれ、バットでもって手足を折られ頭を殴られナイフで腹をえぐられる、ってな絵にしたら、アニメーションにしたら迫力満点な描写が数々あって記号的に100人死なれるよりも読む人の心に恐怖以外の何かを芽生えさせそう。切り刻む快楽とか殴り倒す醍醐味とか。肝心の電波的な彼女の何故にここまで電波的なのかが今ひとつ解りにくかったけど、電波に理由なんてないし恋心に論理的な説明なんて無理ってことでそーゆーものだと理解をしておこー。勧善懲悪やらラブコメやらに飽き、かといって「ファウスト」「メフィスト」のメタ的世界へと一足飛びに行くのはって人向けな話か。

 早ければ3月にもオープン戦が始まるから期間は5カ月。まるで下地も前宣伝もない場所にいきな野球のチームを作って降臨しては、地元の皆さん見に来てくださいって言っても果たしてどれだけの人が「おらが街の球団」だって意識して、見に行こうって気になるんだろー。サッカーの「ベガルタ仙台」だってチームが出来てから幾年月、地道に活動したからこそJ1で平均2万1785人って人を集められるようになった訳だし、札幌に移転した日本ハムファイターズだって去年からの活動と、新庄選手のようなキャラクターを呼ぶことによってどうにか、それなりの観客動員数を達成している。

 だいたいが50年とか運営していた大阪近鉄バファローズが、仙台に較べて人工も遙かに多い大阪を本拠地に置きながら、平均で2万500人の観客しか動員できていなかったの訳で、たとえ仙台とゆーこれまでプロ野球のなかった(ロッテが一時期準フランチャイズにしていた時期はあったけど)地域だからといって、来年から毎試合2万3000人って人が集まるのかどーなのか。1試合2試合なら満杯にはなっても本拠地でやる主催試合の70試合? それほどには達しなくっても50試合だかを毎試合、去年の西武ライオンズなみに2万3000人の観客で埋めるのって言うのは簡単でも実現するのはなかなか大変そー。

 プロ野球参入のために運営会社を作って日本プロ野球組織に加盟を申請したってゆーライブドア。会見で堀江貴文社長はデータマイニングでファンの1人ひとりに最適なアピール方法を行えるってIT業界の人ならではのセールストークも発していたけど、それよりやっぱり有効なのは仙台から宮城県から東北から含めた地域の小学生から大人から高齢者まで含めて情報を行き渡らせ、なおかつ野球に関心を持ってもらうことでそれにはJリーグの新潟が10年かけてやったよーに、地域を周りチケットも配りスタジアムへと足を運んでもらうよー促していく足を使った活動が必要になって来そう。そこまでやる、やり続ける覚悟ってのを見せてくれないと、知事に誘われましたからやって来ましたってゆー落下傘球団として外様扱いされたままになってしまう。バファローズ買収の時は大阪に本社を移転したって良いって言っていたんだから、今回も仙台に本社を移転するくらいのことを言ってみらだどうよ。新幹線で2時間は大阪と変わらないぜ。


【9月15日】 微妙過ぎ。「ホームエンターテインメント産業展」は一応はビデオとかCDとかいったものを全般に取り扱う展示会ってことで始まったみたいなんだけど、メインの映像ソフト業界とか音楽業界とかの参加をあんまり得られなかったのか、半分くらいはレンタルビデオ店とか複合カフェの店に必要な什器なり、商品管理システムなり万引き予防装置といったものを並べて、そーゆー店を経営している人に見て貰う内容になってて普通の人にはまるで役に立たない。まあ一般向けの公開はしていないから良いんだけど。

 残る半分はアダルトビデオのメーカーで去年は例のソフト・オン・デマンドが巨大なブースを並べてビキニのおねいさんを出演させて目立ってた。今年はSODはあんまり大きなブースを構えておらず代わっていくつかのソフトメーカーが大きめの合同ブースを構えてそこで、サイン会とか展示会とかやっててなかなかに見目麗しかったけど、一般にはちょっと記事にはしづらい内容。「スカトロ」とかって堂々とブースに書かれてもなあ。いやそれも立派にエンターテインメントなんだけど。

 万引き防止の仕組みがすき込まれたラベルを普通のラベラーで商品に張れる時代になっていたのんはちょっと驚き。ものはついでと西館(にし・やかた)で開催されている「自動認識総合展」も見物。こっちは本当にRFIDとかICカードとかバーコードとかいった自動認識関連機器や装置やサービスが、わんさと展示されたイベントでセキュリティと個人情報について考えていいる人は、その前提となる技術が現在どのくらいに来ているのかを確認したり体験する上でなかなかに役立つイベントかも。

 面白かったのは指紋でもなく虹彩でもない、手の甲の静脈パターンを記録しておき照合するシステムで、聞くと3年くらい前から市場投入は始まっていたそーだけど個人認証なり情報管理への関心が高まる中でそれなりに話題になって来ているとか。指紋よりは認証の率は下がるけど虹彩とはさほど変わらず実用面では全然オッケーとのこと。照合もコンマ何秒とかって超スピーディーで、利用にあたって入り口が渋滞するとかって心配もなさそー。

 指紋を管理されるとか、目に光を当てられるとかいったイメージが利用者にネガティブな指紋認証に虹彩認証と比べると、手の甲を機器に押し当てるだけなんで利用への抵抗感も少なさそー。それにしてもそんなに人によってパターンが違うのか静脈は。手の甲だけじゃなくって尻とかでも識別できるのかな。おら猿のお尻が赤いよーにお知りって血管集まってるじゃん。部屋に出入りするたびに尻を出して機械にあてるのが恥ずかしくなければ実用化だってされるのかも。

 楽天がプロ野球参入を表明したって話をご大層な記事へとでっちあげる日々。とりあえずはインターネットのポータル事業と連携を計る上でひとつの有力なコンテンツとしてスポーツを位置づけているんだってことを書いたけど、傍目から見れば先にサッカーJ1チームのヴィッセル神戸を買収してみたものの、後出しじゃんけんよろしくライブドアがプロ野球への参入を発表したものだから、本当は野球を始めたかった三木谷浩史さんもここは後れてはならじと急ぎ、参入を決めたって感じに取られそう。

 イルハン・マンスズ選手を獲得してはみたものの、ケガを押しての出場はできず活躍もできないままモチベーションを落としてイルハン選手は帰国。数億円とかをぶん投げてしまった経緯があってJリーグ経営はまだまだ端緒に付いたばかり、決してスポーツチーム運営のノウハウを得たとは言えずまた、スポーツチーム運営哲学の神髄を得たとも言えない。むしろスポーツを純粋にビジネスのパーツを見ている節があって、例のビアンコネーロのユニフォームを来年からクリムゾンレッドに変えるとぶち上げては、サポーターたちの反発を食らっている。

 まあイタリアのセリエAにだって日本でのマーケティングを最優先して選手を揃えるチームもない訳じゃないから商売っ気ってのはあって悪いものじゃないんだけど、それでもチーム名に自社の名前を入れるなんて言ったら激しく非難されることは必死だろーしそもそも無理。いわんやチームのユニフォームを変えるなんて言い出したら熱狂的なティフォージたちに取り囲まれて命すら脅かされる恐れだってある。チームってのがまずあって、それを所有する名誉があり、その恩恵としてちょっとばかりチームを利用する商売が許される、って言ったところじゃなかろーか。

 翻って楽天の場合、神戸でチームを維持したい、あぶれる選手を救いたいってゆーボランティア的精神の発露は評価されそーではあるけれど、だったらどーして今このタイミングで、ライブドアがあれこれ言われながらも頑張った数ヶ月を経てプロ野球参入を言い出したのかが分からない。行き詰まった議論に一石を投じる役割を狙って同じIT仲間としてナイトよろしく登場した? なんて見方も出来そうだけどそこまで”友情家”かどーか知らないからなあ、三木谷さんって人のこと。

 そーいった後出しじゃんけんだの火事場泥棒だのスポーツ功利主義者だのと非難されるリスクを認知した上でなお、このタイミングで言い出したってことはつまりそれだけ本気なんだって言って言えないこともないから、後はどんな言葉でもって事情を説明するのかを待つことにしよー。それともこのタイミングで言い出してもなお得られるメリットの方がでかいってこと? そんな美味しいプロ野球経営なら水天宮のあの会社とか、出てきたって不思議じゃないかも。関連会社が神戸にスタジアムを名前だけではあるけど持ってるんだから。


【9月14日】 オープンした「OAZO」に行く。オアゾ、ってオゾンとアマゾンの合体した言葉みたいで、緑が生い茂ってトカゲがうろうろしてそーな、そんなぬとぬとした場所を想像してしまったけど、語源は「オアシス」らしーから、緑とか茂っているイメージはあながち外れてはいないかも。オアシスだからって泉も椰子の木もないけれど。

 あるのは飲食店とそれから巨大な「丸善」で「丸善」は日本橋にあった頃から巨大ではあったけれど見かけの割には使えない本屋でもっぱら洋書の写真集(ジョック・スタージスとかデビッド・ハミルトンとかヘルムート・ニュートンとか)を立ち読みするために通っていたよーなものだけど、丸の内に本店を移してなおいっそう巨大になってなおかつ、本も前より種類が豊富と使える本屋になっていた。

 何しろ早川書房の「Jコレクション」がほぼ前冊揃ってて、なおかつ棚に表紙をこちらに向けた形で並べられてるゴージャスぶり。表紙絵の選定に苦労した塩澤浩快編集長の苦労が報われる陳列方法になっている。しかしこーして並べてみるとてんでばらばら、だねえ。それが面白いんだけど。あと隅の一角、とはいっても小さな本屋さんがまるまる入るスペースに文庫と漫画がぎっしり。漫画はメジャーからマイナーからやおいからだいたいが揃ってて、これまで神保町まで買い出しに出ていたのが丸の内で済むよーになったのがちょっと嬉しい。でもやっぱりコミック高岡に行くんだけど。エロ買いに。

 ヤングアダルト文庫は電撃スニーカーファンタジアコバルトがメイン。デュアルは3冊でMF文庫は10冊くらいでファミ通文庫はあったっけ? やや偏りがあってまんべんなく新刊を見たい身にはとっと不自由かも。ただ新しい本屋だけあって全国からかきあつめたか倉庫から掘り起こしたか、古いカタログも絶版になっていない限りは集めてあって本屋の店頭ではみかけなくなった分を掘り起こしに行くには便利かも。足の速い漫画文庫もカタログ、結構揃っていたし。

 人のよく歩く1階がビジネス書に資格関係の参考書って配置がいかにも丸の内大手町的発想で鬱陶しいけど、決して安い賃料ではなさそーだから商売として仕方がない。東京駅の丸の内北口を出て降りて新大手町ビルとか、アーバンネット大手町ビルとかに向かう人にはそれこそ絶妙の配置、って言えるかな。大手町界隈の某シンクタンクに勤務しているバロウズ翻訳の人には果たして向いているのかどーなのか。新大手町ビルの中にある小さい本屋さんの未来が心配。

 文具関係はハイパーにゴージャスなフロアに配置されてて日本橋本店の地下の売ってるものは高いのに、そーは見えない雰囲気が一変していて嬉しいけれどもちょっと寂しい。うろうろ回って万年筆とか眺めて時間を潰すことがやりにくい。奥の窓際にあるギャラリーでは森山大道さんの展覧会。2年くらい前に復刻された「プロヴォーク」とかが入ったボックスが出ていて欲しかったけど10万円は。「装甲騎兵ボトムズ」のDVDボックスと較べてしまう。でも初版の「プロヴォーク」は3冊で65万円とかしてたから得は得なんだけど。買っちゃうか。

 夜が午後9時まえ営業なのは仕事帰りに寄れて嬉しいところ。だけどレジは昼間以上に長蛇。オープン直後だから仕方がないけどちょっとなあ。そんなにオープン記念の「万年筆物語メモ」が欲しいか。とりあえず吉野朔実さんの文庫でよーやく刊行成った「いたいけな瞳」を2巻までと、今市子さんの「幻月楼奇譚」(徳間書店、533円)を購入。味噌屋の若旦那が行く先々で出会う奇妙な事件を、幇間の青年といっしょに解決していくとゆーストーリー。

 「Charaコミックス」らしく若旦那と幇間がボーイズラブラブな関係にあると思いきや、そこは今市子さんだけあって幇間は嫌がり若旦那も強引ではなくあるいは、雑誌に相応しいよー無理矢理そんな関係を出したっぽい所もありそーな気がするけど問題は、そーした情交部分の希薄さではなくそれぞれの短編に出てくるキャラの、誰が敵で味方が複雑怪奇に入り組んでいて、一読ではなかなか理解し辛いところ。キャラが誰も似てるってのも理解を難くする要因か。今市子さんに慣れててもそーなんだから初見の人にはキツいかも。

 妖怪物っぽいけどそう見せかけた推理物、のよーに見えて実はやっぱり怪奇物、みたいな所も初読ではいずれこいつが犯人だって明らかになる、すべてが明かされるって思い込んで読むと肩すかしを食らう感じも初読でキツさを覚えた理由か。まあ2読3読していくうちに幇間の与三郎って人間の性格もつかめ、若旦那のとことん唐変木なところも分かって全体の流れを理解できるよーになるんで、1冊を30分で読み流しておわりたくない人には良い本でしょー。キャラの顔では芸者の琴春のきょろっとした顔が好み。

 朝青龍と黒海の対戦した大相撲秋場所の結びの1番に国際化の形を見るて喜ぶべきか日本男児の弱体化を悩む日々。宅間守死刑囚の執行に実は裏でチェチェンゲリラの小学校突入事件に伴う要求として身柄のチェチェンへの引き渡しが行われていて遠からず名を変え顔も変えて洗われるんじゃないかと妄想してみたりする日々。 そーいえば連合赤軍は死刑判決が出た今もなお存命な確定囚がいるなあと思い出す日々。あさま山荘が1972年だから32年か。再読が流行っているみたいなんで大塚英志さん「彼女たちの連合赤軍」でも読み返すか。


【9月13日】 うわははははカリスマを出すんだカリスマを出すんだって言っているからてっきり”時代の最先端を行く寵児あるいは時代を超越して讃えられる有名人のミュージシャンデザイナーモデルエディタークリエーター建築家作家漫画家アニメータードライバーライダージャーナリストアスリートetc……”をどばばばばんとフィーチャーしてはその知名度そのビジュアルでもって世間に強いインパクトを与えて起死回生を図るもんだと思ってた。

 ところがどうしたカリスマはカリスマでもカリスマ店員カリスマ美容師カリスマ主婦カリスマ土方カリスマサラリーマンだったとは驚いたとゆーかひっくり返ったとゆーかそんな市井のちょっとだけ知られてはいても世の大半が見知らぬ人たちの苦労話だか自慢話を君たち日曜の朝から読みたいかいどうなのかい僕はまるで興味がありませんそんなの平日にサイドでやるネタですよ偉い人にはそれがわからんのですよはっきりという気にいらんな明日から来なくて良いよだったら来ません。

 巨大な渡辺明5段の顔がチラ見えて久々に「週刊将棋」の9月15日号を買ったら竜王戦の挑戦者に決定したとかで、早くから朝日新聞あたりが大山康晴15世名人の再来だなんて書き立て持ち上げて来た中で、評判に溺れず自分に奢らず順調に成長して来ているとの印象。4歳5歳の頃から”天才卓球少女”ともてはやされて台に頭が出るか出ないかって姿で球を打ち返す姿を曲芸師よろしく紹介されて来たにも関わらず、これまた奢らず批判にも耐え順調に成長を重ねてきた福原愛選手にも似た真の”天才”をそこに見る。カリスマってーのはこーゆーのを言うんだぜ。

 何しろ生まれが昭和59年つまりは1984年で昭和40年に生まれて来年40歳になるって人が、大学に進学した年に生まれてそれからわずかに20年。社会に出て来年40歳になる人が社会人となった時期に全盛だったバブルに浮かれたのもつかの間、バブル崩壊で下がる給料キツくなる仕事に加えて、苦節30年にしてよーやく手にした地位にしがみつくため上の指令は絶対で下は見えない平目になって、無茶な指令を上からもらっては下にスルーしなおかつ歓心を買おうと余計な事まで付け加える全共闘崩れ全共闘遅れども上役たちの足拭きマットにされて大変だってゆー、そんな年月を重ねてきた期間を渡辺5段は、ひたすらに研鑽を重ね将棋の実力を磨くことに全力を傾けて来たってことになる。いや素晴らしい。

 挑戦者を決める決勝トーナメントで敗った相手も森鶏二9段はともかく(ってゆーか復調したのか森9段)谷川浩司棋王に屋敷伸之9段森下卓9段と、段位も段位なら現時点での実力も最前線の綿々ばかり。そんな彼らを退け勝ち上がって来たってところに実力の程も伺える。相手は羽生善治2冠王から竜王・名人を相次ぎ奪取し現在の棋界最高位に君臨する森内俊之竜王・名人だけど果たして渡辺9段、何勝くらいできるのか。予選と違って7番勝負は時間も長いし前夜祭に打ち上げとイベントもいっぱいで慣れないとペースを乱される。そんな状況を20歳の若さで乗り越えられるかどーなのか、って何、渡辺5段って結婚していて子供もいるの? 羽生2冠王だって結婚してちょい棋力を乱したのに渡辺5段の変わらないこの勝ちっぷり。これなら竜王戦だってひょうひょうとこなしてしまいそー。まずは10月19日の第1戦に注目だ。

 結婚と言えば女流棋士の世界でも0か1を争う(つまりは比類なしってこと?)”美人棋士”と言われた高橋和さんを「聖の青春」の大崎善生さんにかっさらわれて肩をがっくしと落とす未婚者続出だったところに将来期待の超新星が。島根出身の里見香奈さんがこのたび女流育成会で2回目の昇級点をとって目出度く女流2級へと上がり女流棋士となったんだけどその年齢が12歳と6カ月。1992年生まれってゆーから世間がバブル崩壊の荒波に揉まれ始めた辺りでの生誕で、以来続いた不況だリストラだって暗い空気をものともしないで遠く島根にあって夜行バスで出雲と東京を往復しては研鑽を積み、歴代4番目の記録でもって女流ながらもプロ棋士になった。

 その面もちはまだ中学生? だけあって幼いけれどいずれ強さに相応しい凛然とした光輝を放って僕たちを喜ばせてくれるだろーと信じたい。あと昇級を決めた試合で対戦したこちらも12歳の山口恵梨子さんも「週刊将棋」の写真だとストレートな長い髪でタータンチェックのスカートの下で足をそろえて正座する後ろ姿がなかなかに見目麗しく、ふりむけば里見さんにも同じページの上でこちらは実力も兼ね備えた美貌を放つ矢内理恵子4段にもおそらくは負けていないだろー容貌を、持っているよーに妄想してしまっているんだけどこれは果たして正しいのかどーなのか。写真だけにこっちを向いてと言えないし。ああ気になる。


【9月12日】 増えすぎたキャラクターの錯綜する関係をそろそろまとめるのも大変になって来たんじゃないかって想像したくなる成田良悟さんの「バッカーノ!」シリーズ。最新作の「バッカーノ!1933(上)」(電撃文庫、570円)もマフィアのグループが2つの少年ギャングの一味があって別にテロリストが組織する妖怪の一味がいて、それらがそれぞれに用心棒とかを抱えているんでもー誰が1番強いのか大会いま開幕って感じで目一杯のバトルを楽しめる。

 悪魔はともかく不死人の勢揃いぶりに喧嘩が成り立たなくなっている気もあって喧嘩はあっても慟哭の展開へと、流れにくくなっているのが気にかかるし錯綜する関係をまとめあげるのも苦労しそーだけけどそこは必殺のキャラクター、どんな場面にも居合わせ誰とだって仲良く楽しく過ごせてしまえるアイザックとミリアがいれば大丈夫。「最高だね」「最も高いね」って感じにすべてを楽しく明るくまとめあげては次へと物語を発展させていってくれるだろー。とりあえず下巻で本気出したヴィーノはどんな圧倒的な魔人ぶりを見せてくれるのか、キル・ビル娘なマリアちゃんがどんな成長を見せてくれるのかに期待。

   今のこのプロ野球再編問題について考える上で最も適切と思われる書物を買ってきて読み返す。おもしろかったなあ、この頃の川原泉さんは。ってつまりは読んだのは名作「メイプル戦記」で、協約か何かが変わって女性でも男性でも問わずプロ野球の選手になれるってことになって北海道のスイート製菓って会社が、だったら女性だけの球団を作ってしまおうとして実際に作ってしまったのがスイート・メプルス。監督には「甲子園の空に笑え」の広岡監督を招聘し、選手も独自に集めてセントラル・リーグに加盟し1年間の戦いへと打って出る。

 興味深いのはメイプルスが加盟したリーグが7球団と奇数になったってことで開幕戦に1つあぶれる描写はあってもそれが悲壮感なく描かれてあって別に奇数だって問題なし、むしろ途中に合間を挟んで戦えるから戦力の劣ったチームでもやりくりがしやすくなるんじゃないかって思わされる。何しろメイプルズは主力級のピッチャーが3人しかいないし内野外野のレギュラーは各ポジションに1人づつ。それでも1年間を戦ってしまうんだから凄いよね。まあ漫画だからってこともあるけど奇数がどうとかって理由から2リーグ制を無理矢理1リーグ制に移行させよーって企みに、切り返す材料をここから探れそー。

 あと一風変わった球団が出来ることによって得られる球界活性の多大な効果。女性ばかりの球団が1つあればそれだけでルーティンっぽくなってる試合に大きな山場が出来るし、そこに漫画に出てくる夫婦の対決とか、球界きってのスターとニューハーフに別れてしまった元高校野球のバッテリーのドラマとかってエピソードのよーなドラマが乗っかれば、なおのこと楽しいシーズンを送ることができる。もちろんメイプルズが他の男性チームに匹敵するだけの強さを持っているってことが前提で、それがないと単なる色物球団によるやられショーになってしまうから用心が必要だけど。

 現実問題そんな女性ばかりの球団の登場はおよそ不可能とは思われるけどアイラ・ボーダー選手だったっけ、それなりな実力を持ったピッチャーもいたし世界をあたればそれなりな実力を持った選手もいるはずで、そんな選手を発掘して来ては1人2人を入れるだけで興味は存分に惹き付けられる。もちろん実力が伴っていなくちゃ意味ないけど。あと例えば主力をアジア各国から持ってきて、ついでに欧州のサッカーじゃないけれどアジア諸国出身は外国人枠とは考えない仕組みでも作ってアジアからの観光客が試合を見て代えるよーツアーに組み込むとかすれば観客問題もクリアになる。中国と台湾の選手が同じチームで呉越同舟、なんて面白いじゃん傍目には。

 日本人でいくならそれこそ「モルツ球団」か「マスターリーグ」じゃないけれど、かつての一線級に再登板願うって手もある。球界が全体に盛り上がりたいって意欲があるならどんなことだって可能。だけどそーなりそーもないのは球界ではなく球団が盛り上がって宣伝につながれば良いってゆー、オーナーなり経営者の考え方が今なおそして未来永劫、強くあるからなんだろー。「メイプル戦記」に出てくる西部の鼓ってオーナーは最初はイヤな奴だったけど最後はニューハーフの神尾瑠璃子投手を立派と認めて花束を贈り応援する。

 そんな粋な人ばかりだったら球界ももっと楽しくなるんだけど。ってかそれより以前にこんな惨状にはならなかったか。まあお話に出てきた札幌ドームが現実に出来ていたりする訳だし、女性ばかりのプロ野球チームだって決して出ないとは限らない。ってことで出よスイート製菓、作れよスイート・メイプルス。いっそコンサドーレ札幌を全員女子にしてしまう?

ゆったりのんびりと絵を買おう10年後には億万長者だそんな馬鹿な  9月だってーのに残る暑さをかき分け「GEISAI6」へ。午前10時過ぎのオープン直後に行っても1万人とかの大行列がないのは入場する身には嬉しいけれど受付前に誰も並んでいない光景にこれで大丈夫なのかって気もしてくる。けど「ワンフェス」の上でやってた「トイフェス」も11時過とは言え行列とは縁遠かったからまったりとした雰囲気の中でじっくりと、出品してあるものを眺めて歩くにはこれくらいの混み具合(空き具合)が良いのかも。いや良いのかな。

 妙に人だかりが出来ているところがあって食玩でも売っているのかと見たら違って「類・ヴィトン」だった。ってゆーか村上さんがデザインを加えたモノグラムがシルクスクリーンだかでプリントされてそれが額に入れられた”作品”が大小白黒色違いで4種類、飾られていてそれを買おうって人がわんさと群がっていた。なんだたかだかヴィトンの包み紙じゃないか、って言い切れれば良いんだけどこれだけの賑わいを見るともしかしたら価値のあるものなんじゃないかって思えてくるから人間って現金。本物の村上モノグラムなバッグを持つのが1番格好良いんだけどね。

 同じコーナーのすぐ横でカイカイキキが誇る2人のアーティスト、ミスターとタカノ綾さんの新作がそれぞれ1点づつ、売られていて値段を見てタカノさんが23万円でうわお、と思いその場を後にしてしばらくして戻ってきたら早速買っている人がいて2度うわお。23万円が目の前で売れていく瞬間を見るのはこれでなかなかに面白い。どんな人が買ったのかをしばし観察、見た目普通の男性であるいは秋葉原のゲームショップの店頭に限定テレカをもらうために並んでても違和感のない、かもしれない風体に見えたけどよくよく見れば違ったのかも。

 タカノさんの作品は数年前だと数千円とか1万円とかで買えたんだよなあ、あの時に10点くらいまとめ買いしておけば良かったなあ、なんて思っても後の祭りって奴で、そこは当人から頂いた当方の似顔絵の入った漫画本とか、限定の自家製DVDとかを持っていることを自慢の糧として生きて行こう。しかし1枚の絵で23万円なら「SFマガジン」の連載は一体ぜんたい幾らの価値になることやら。100万円、とか。だったらそれで全員の原稿料が出てしまうかも。かくもアーティストとしてすごい人が連載している「SFマガジン」をみんな読もう。

 23万円は出せないけれど1万円くらいなら出せるってことで場内を物色。会場が東館(ひがし・やかた)のホール1つ分ってことでゆったりとしていて置いてある作品も全体に真剣にアートしようって人が増えて来ているよーでなかなかに好印象。早速前回の「GEISAI5」でも見かけて買おうと思いつつ声を掛けられなかったyoshさんって人のブースに行って新作のキッチンシリーズを眺めて楽しむ。

 ふわふわとしてぽむぽむとしてなかなかな雰囲気のある作品。サンリオなんかのキャラクターになってそんなに違和感のないキャラクターも入ってて、いずれ玩具メーカーあたりとのコラボでいろいろな方面に展開されそーだけど、純粋に絵としても楽しめます。まな板シリーズが1つ売れてて対抗に1番大きなのをゲット。これが10年後には……と考えるのは不純だけど23万円タカノ綾さん作品の話を聞くとついつい思いがそっちに流れてしまう。人間って強欲です。

 少女の不思議なテイストを持ったイラストが独特な大畑伸太郎さんは電話ボックスで電話をかけてる少女の姿を電話ボックスのような直方体の面に描いた立体作品。前と横があって後ろはどーなっていると見たら壁がなく荷物が放り込んであった。後ろには回らないでください。でも相変わらずに良い雰囲気。この絵を表紙に何か物語をつむぎたくなる人、いそーだなー。いなけりゃ僕がやろう、そのうちに。


【9月11日】 あれからそうか3年か。底の抜けた世界は小学生が人質にして恥じない組織も出れば、国民の危機に自己責任なんて言葉を被せて頬被りする政権もあったりして何かと世知辛い。世界からテロは消えずむしろ目立たなくてもそこいらじゅうで起こっては確実に、人の心に憎悪の念を芽生えさせ、それを病原菌のよーに世界中へと伝播させている。憎しみに覆われた世界はやがて疑心から生まれた暗鬼によって蝕まれ混乱のうちに融解していくんだろー。すべてが消え去った地平に存在するのは無。ある意味それも安寧と平等か。それでなければ人間は安寧と平等をその手に収められないのか。嗚呼。

 悪化する世界情勢に歩調を合わせるかのごとく悪化する某社情勢。なるほど売り上げがどんどんと落ち込む中でこれを食べれば信頼性とは引き替えに、一時的には元気を取り戻せるってゆー麻薬的な効果を持った毒饅頭に、手を出そうとしたって気持ちは了解はできないが理解はできる。でもそれが祟って瀬戸際まで言ったところをこれではいけないと立ち上がった従業員の期待に応えるかのごとく、降臨して来た新たなる経営陣が以前に手を出した挙げ句に自家中毒を招いた毒饅頭に、再び手を出そうとしているから分からない。

 ましてや降臨してきた経営陣にはその毒饅頭がどれくらい毒饅頭なのかを知っていて当然の立場な人、毒饅頭が毒饅頭であることを世に向けて喧伝していくべき立場にあった人だってところが唖然とするとゆーか笑えないとゆーか。あるいは毒饅頭だってことを知らないのかもしれないけれど、そーだとしたらそんな程度の人にしかるべき立場を任せていた某社の親会社も某社以上に緩いとこがありまくっているのかも。もっとも毒饅頭を振って毒はおしつけ中間で利だけはしっかりもらおうって感じがあるだけしたたかなのかも。知らず毒を喰わされた子会社はやがて全身が痺れて悶死するとゆーのに。

 ともあれ今の立場なら仕方がないと某社の経営陣がその毒饅頭に手を出せば、なるほど元気が得られても同時に一生の不覚が残ることは確実で、仮に半年後なり1年後に元いた場所へと戻ったとしても、その身に染みた毒素は絶対に消えることはない。それで社会正義なんて喧伝する立場に返り咲けると思ったら大間違いだし返り咲かせるはずがない。なのに返り咲けたとしたら? もはや総体として融解が進んでるってことだ。世界が壊れるのが早いか某社とのそ親会社がとろけるのが先か。いずれにしても未来は暗いなあ。

 はっきり言えば一切の意味がなかった日本プロ野球選手会によるストライキ権発動騒動。前提として掲げた「合併の撤回」が確約されず可能性としては撤回なんてこれから幾ら話合おうとも9割9分、あり得ないにも関わらず何やら可能性がありそうだなんてニュアンスを得られたなんて、労使双方に了解をしてストライキのこの週末の実施を取りやめてしまうんだからどうしよーもない。新規参入の要件が緩和されそーだからって来年からすぐに1球団が立ち上がって参加してくる訳ではないし、経営改善に必須のドラフト制度の完全ウェーバー実施が今秋のドラフトから導入される訳でもない。

 実行委員会だとかオーナー会議だとかいった、本来だったらそーゆー将来への展望を話し合ってしかるべきはずだった場は大阪近鉄バファローズとオリックスブルーウェーブの合併があるかないか、選手会と話し合うべきかどーかなんてことだけが話し合われる場となってしまった。結果この時期に決まっていることは球団数が減ることだけ。交流試合が実施されるかどーかは不明だし放映権料の一括管理なんて実行は100%不可能。ストなどやろーとらるまいと、来季も今年と同じ条件でなおかつ1球団少なくなって試合数も減るって状況下を、パリーグの球団は戦わなくっちゃいけない。

 収入はますます減って行き詰まった球団が合併をするとかしないかって以前に、倒産なり破綻して退場へと追い込まれる。約束違反? だってない袖は振れないじゃん。そー言われて対抗できるほどの拘束力をNPB(日本プロ野球機構)とプロ野球選手会の間に11日かわされた合意が持っているとは思えない。倒産するなってゆー拘束なんてそもそもできない。いったいプロ野球はそこまでの中期的な視座にたって今回の一件を考えているのかどーなのか。考えていたら選手は試合が出来て嬉しいとか、言ってる場合じゃないんだけどなー、とくにパリーグの選手は。

試合があってアルバイトも仕事があってお金が稼げて嬉しい嬉しい美人が見られて僕も嬉しい  とはいえ一連の騒動は、プロ野球ってゆーエンターテインメントがこの世の中には存在していて、それは結構面白いもんだってことを喧伝するには大いに役立った模様。「千葉マリンスタジアム」で幸いにして開催されることになった「千葉ロッテマリーンズvs北海道日本ハムファイターズ」の試合は到着するとすでに場外には出店も出て来場する人たちで大にぎわい。2002年の秋に西武ライオンズの優勝が同じ球場で決まりそーだった時も、これほどの来場者数はなかったよーに記憶しているだけに意外で仕方がない。3位と4位とゆーパリーグで今季から導入されたプレーオフへの進出をぎりぎりで争っている2球団の試合ってこともあったんだろーけど、やっぱりプロ野球への興味がこの1カ月くらいでぐらぐらとかきたてられたことも大きいんじゃなかろーか。

 もとより千葉ロッテマリーンズの応援団は12球団でも屈指の団結力と動員力を持つ球団。土曜日ってこともあってか千葉マリンスタジアムのライト側外野席はいつも以上に白い応援団でぎっしりで、その勢いは1塁側内野自由席にまで及んでいてサッカーのサポーターにも似たコール中心の応援を繰り広げては選手たちを鼓舞し、試合を見に来た一見さんなりあんまりそれほどファンでもない人を惹き付ける。テレビじゃ絶対に感じられない雰囲気を味わったことで、明日も期待あさっても来週も来年もずっと来てみたいって思う人が出たらしめたもの。原因は千葉ロッテマリーンズもそこにプレーヤーとして参加する可能性のあったプロ野球の再編ってゆー、ファンにはあんまり嬉しくないことだったかもしれないけれど、そこから派生して生まれた新たなファンと深化するファンたちに、ロッテのオーナーも売却を考え直してくれたんではなかろーか。それは甘いか。甘いよなー、ロッテだし。

 しかしホント、満員に近い千葉マリンスタジアムなんて一体何時以来なんだろー。元が東京の球団だし新庄剛士選手ってゆー世界的に愛されたプレーヤーも所属する球団だけあって北海道日本ハムファイターズのファンもそれなりに来ていたのか、三塁側の外野席も内野席も2階まで含めてそれなりな入りだったのは嬉しいやら面白いやら。試合もそんな観客に答えて1点を争う好ゲームが繰り広げられた。まず新庄のタイムリーで1点が入り、そこからさらに1点をとられ一方で1点を返すぎりぎりの攻防。リリーフの投手は力投し、かといって味方打線が爆発する気配もなく、果たしてどーなるかってゆー緊張感にスタジアムが包まれる。
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 勿体なくも恐れ多くも、途中で帰ってしまって見られなかったけど最後の最後で千葉マリンスタジアムに相応しいフィナーレも用意されていたみたいで、この日にこの試合をこの場所で、繰り広げた効果はいずれ必ず絶対に、出て来るはず。ストライキの延期は正直格好悪かったけど、この試合が行われたことで帳消しにしてあげても良い気になって来た。明日も行きたいけどそれは無理なんで、ここに広く試合の存在を喧伝しては来年も再来年もその次の年も、揺れるオーナー代行とやらの移り気な心を牽制して千葉にプロ野球の火が灯り続けることへの一助としよー。明日は「GEISAI」。


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