縮刷版2004年7月中旬号


【7月20日】 寝汗の凄さに脱水状態が起こりかけてたんでごそごそ起き出し夜中にコンビニへと出向いて飲み物を仕込む。アイソトニック系のドリンクに目を最初は奪われたけどそんな中にあってひときわ暑苦しい顔がパッケージに刻まれた紙パックを発見。ホンジャマカでまいうーな石塚さんが描かれた、その名も「なつかしい味 石茶ん」は中身こそ麦茶なんだけど何故か砂糖が溶かされていて飲むとまるで砂糖水。これのどこが懐かしんだろ、家では麦茶に砂糖なんて入れて飲んだことなんてないぞって思ったけれど風の話で地方によっては、農家なんかが麦茶に砂糖を入れて飲んでたそーで体力が要求される仕事では糖分をそーやって摂っていたのかもしれない。麦茶に砂糖は入れましたか。うんにゃ塩入れたって家もあるのかな。

 読子さーん、セーラー服ですよー、って何だ? 待望の「R.O.D」第10巻は記念すべき号であるにも関わらず、「外伝」と銘打たれて中国で起こっていたジェントルメンとお祖母ちゃんの闘いは脇へと置かれてどこかの田舎にある学院を舞台に、読子・リードマンが大活躍ってゆーかいつもどおりってゆーか、とにかく本をめぐってあれやこれやをしでかす話になってて、最近は怪物が続々な本編で影が薄くなってはいたけれど、実は凄い本読みだった読子・リードマンの読子・リードマンらしさが存分に発揮されててやっぱりタダモノではなかったんだと思い知らされた。25歳でセーラー服が着られてしまう心境の鋼のよーな強さかあるいは牛のよーな鈍さもタダモノじゃないけれど。

 何でもその学院では互いに本を読んだらそれを交換して、相手が読んだ本について質問をしていくバトルが繰り広げられているそーで、そんなバトルの頂点に立つ耽美なのかそれとも単なる阿呆なのか、どっちかではなくどっちもなのかは分からないけどとにかく凄いキャラが現れそのカリスマ性で読子の前に立ちふさがる。何しろ名前が國屋紀伊。謎の言葉を隠したアナグラムになってる(謎でもなにでもないやい)そのネーミングからするに、本をめぐる激しいバトルが繰り広げられたんだろーことが伺える。読子・リードマンより強そーな名前。さて勝負の行方はと言えば、それは読んでもらってのお楽しみ。ついでに冒頭から作者が暴走する地口が表層へど出て本編を包み込む構成の開き直りかそれとも計算高さか、不明ながらもそれはそれで凄い構成にも感動しよー。しかしやっぱり25歳でセーラー服は販促かも。見たいけど。

 30年前に出会ったらきっと僕は足元へと跪き、愛の言葉を散々っぱらつぶやいては薔薇の花束を贈ってその歓心を買おうとした、かもしれないけれどしなかったかもしれないと、今なお遠目にはその輝きを失っていなかった阿川佐和子さんを見て考える。最近でも船橋西武の壁に巨大な顔が掲出されてて小さい顔に豊かな表情が心を突き刺してくれたんだけど、映画業界が7月から始めた「映画館に行こう!」キャンペーンの映画大使とやらに阿川さんが筑紫哲也さんともども任命された会見に、現れ目の前で喋ってくれた阿川さんの見目麗しさを見て、30年前だったらって思いを改めて強く抱く。30年後でも綺麗なら良いじゃんってそれはまさしくそーだし良いなと思わないでもない。ただなあ、300ミリのズームを駆使して撮った写真の捉えた目尻はまさしく”今”の阿川さん、なんだよなあ。「蒼穹のファフナー」のキャラの目の下にある飾りとは違うんだよなあ。あれは飾りなのか?

 まるで見ていなかった「亜細亜杯二〇〇四」あるいは「ASIA2004」の我らが日本代表とオマーン代表の試合はニュースとかのダイジェストで見るにつけ、確変なった川口能活選手がナイスなセーブを連発してくれたおかげて3点4点とられてても不思議じゃなかったところを0点に抑えて逆に0点でもおかしくなかったところを中村俊輔選手の技がたまたま決まって1点が入ってそのまま試合終了。コンディション不足とか状態が悪かったって言い訳の用意もあるんだろーけど隣の国へ行っただけでコンディションを整えられない代表が彼方のオマーンへと出向いて日本並みのコンディションでいられるかとゆーと微妙。且つとりたててギチギチに固めて来ている訳でもなさそーな(攻撃が効いていたから)相手を真正面からは崩し切れなかった組織なく個人のみの戦術が、ガチガチに固めて一気のカウンターを狙っていくるだろーこれからの相手に通用するとは思えないだけに身も引き締まる。次の試合によってはやっぱり高らかに叫ぶべき、かもなあ、たとえベスト4に入っても。

 会ったのは去年の10月31日に開かれた「日本SF作家クラブ」の40周年を記念するパーティーでの1度。それなりにがっちりした体と歳相応の風貌に耽美なイラスト&ストーリーとのギャップを覚えつつもアベル・ナイトロードに現れる飄々としたキャラクターとややもすれば重なる軽妙さを見てなるほどこれは「トリニティブラッド」の作者であっても不思議はないと感じたものだった。その時にブロッコリーの木谷高明社長から来年に社運をかけて取り組む「熱風海陸ブシロード」で世界観設定と監修をお願いしたって話も聞いてなるほど、歴史に堪能な知識と筆をもってして綴られる物語はこれまでとは違ったものになって来年のアニメ界を騒がしてくれると期待を抱き、ご本人にも頑張ってくださいと伝えたと記憶している。それからわずかに8か月。

 体調を悪くされたと「ザ・スニーカー」の最新号にあって心配しつつも復帰したとゆー記事もあってまずは安心、クライマックスに向けて盛り上がる「トリニティブラッド」で吸血鬼物に見える裏側に仕込まれた科学の力が招いた滅亡の縁から立ち直った人類が、紆余曲折の果てに2つの勢力に分かれて闘うに至った未来、贖罪の十字架を背負って闘う男の向かう先とそして世界の行方がどうなるのかに興味を抱かされた。しかし。もう続きを読めないのだ。ブロッコリーが挑む「ブシロード」の成功を当人が知ることも永久にないのだ。吉田直さん。死去。先週から伝えは聞いていたけれど、角川書店が葬儀を終えた20日に正式発表。1度の邂逅では他人も同様の関係でしかないけれど、その緻密に練られた世界観の上で繰り広げられる絢爛とした闘いの描写に感動を覚え、若手の注目作の1つに「トリニティブラッド」を挙げた身としてやはり残念でまた無念な気持ちが胸を覆う。どうなるのだろうという懸念もあるけれどそれを言っては心残りを誘い成仏を阻害する。今はただごくろうさまと言って送ろう。享年34歳。黙祷。


【7月19日】 蒸気少年の映画でも見ようかと起き出し向かった幕張本郷の駅でチケットを売っているのを見てしまって方針転換。幕張メッセで絶賛だか好評だか開催中の「驚異の大恐竜展」へと足を向けて中に入って場内をうろつきながら家族と訪れている女の子とか見て回る。違った恐竜の骨格とか化石とかを見て回る。一昨年に開かれた恐竜の標本とかがどがっと出展されたイベントに比べるとこぢんまりしてるって印象を最初は持って2500円って料金にこれじゃあ見合わないかもって心配したけどこれがどうして、結構あちらこちらへと引っ張り回されるようなレイアウトになってて見終わるまでにじっくり見なくても1時間以上はかかかるよーになってて料金なりには楽しめた。

 恐竜って言ったら去年に代々木で開かれた、某工業新聞が何を思ってたしかけた恐竜のイベントがあってこれが料金の高さ宣伝の至らなさ(世界最大規模のメディアコングロマリットでも末端のマイナーメディアでは全体までは動かせなかった)もあって惨敗に終わり、募ったファンドは10%しか償還できず今なお禍根を遺しているみたいだけど(某工業新聞で仕切ってた人はどこに行ったんだろ?)、それに比べれば出足もまずまずみたいてなるほど、教育的な素材にエンターテインメント性を持たせて一種のエデュテインメント・アトラクションとして恐竜を見せようとしても、テーマパーク内にあるならまだしもそれ単独で乗っては来ず、1カ所にずらずらと数を並べて勝負した方が乗って来るんだってことを改めて感じさせられる。あと1時間を連れ回すイベントが日本人に馴染んではいなかったことも。着想は良かったんだけどなあ、「ジュラシック・パーク・インスティテュート・ツアー」。

恐竜がいっぱい子供がいっぱい。恐竜好きで子供好きには最高のイベントかも。この1割でもJPITに来てくれたら……哀。  「驚異の大恐竜展」の方はと言えば、入ると小さい奴から並んで途中に中国での発掘現場を再現したディスプレーなんかがあってこーやって恐竜は掘られてるんだってことが分かるよーになっている。まあこれも一種のエデュテインメントなんだけどそーした説明は脇において親子連れは恐竜をバックに写真を撮り、カップルも骨を見てきゃっきゃきゃっきゃと騒いで携帯で写真を撮っていたりして、そんな自在性がただひたすら連れ回されるだけだった「ジュラシック・パーク・インスティテュート・ツアー」とは違って来る人に、気安さを覚えさせ観光地で遊んだよーな楽しさを感じさせるのかもしれない。「ジュラシック・パーク・インスティテュート・ツアー」は逆に世界へと人を引っ張り込むイベントだったんだけど、それなら「アレグリア」みたく徹底して世界へと引き吊り込む必要があったんだろーものが、来る人は観光気分で見せる側は照れがあってかみ合わない中を気まずい重いだけが漂うアトラクションになってしまったってことが、失敗の原因だったのかも。

 「大恐竜展」では巨大な首長竜だかの骨格とかティラノサウルスレックスの骨格だとかをあれこれ見物。もちろん全部複製でいってしまえば偽物なんだけどそれでも眺めて恐竜を見た気になるってのは日本人が、巨大な生き物のがいたってことを確認できればそれでオッケーであって、別に何億年もの時を経たものがそこにあるんだって興奮を味わいたいとは思っていないからなのか。これだったら「モナリザ」だって複製でも悦んで見に着そうだけどそこはなかなかそうならない辺りが難しい。所々に本物も混じっていて大腿骨だか何かの化石にさわれるコーナーがあって折角だからと触って撮影。さすがは恐竜、骨がまるで石みたいだったよ(化石だからな)。土産物コーナーは去年見たよーな品々が名前だけ変えて並んでいる感じ。「驚異の大恐竜展に行って来ました」クッキーだか饅頭だかはイベントの度に見るような。去年山と作られたグッズに菓子類が今どーなっているのかに興味。包みだけ取り替えて並べてる、ってことはないと思うけど、1年前だし、でも恐竜だって何億年ぶりだからなあ、1年前の菓子だって大丈夫だよなあ、うーん。

 日本テレビ放送網が「なんだろう」なら読売新聞本体は「どれどれ」か。とすれば読売テレビがキャラクターを作ったら「おやおや」になって報知新聞だったら「まあまあ」と、まあそんな辺りで応募すれば賞金はゲット出来るんじゃなかろーかって予測を立てる。読売テレビも報知新聞も募集なんてしてないけどね。しかし何とゆーか新聞を開いて「どれどれ」だなんて当たり前過ぎるくらいに当たり前で、意外性も何もないネーミング。まだ緑の豚をして「なんだろう」と強引につけた日本テレビ放送網の方にセンス的な爆発を感じるなあ。

 けど「なでしこジャパン」もそーだったけど意外性があり過ぎるものを採用して、ネーミングの主体からかけはなれてしまうよりは地味でもネーミングの主体をしっかりフォローしているものの方に世の中、流れるものだったりするんだろー。ヤタガールズじゃあ「ヤタ」が分からないって言われるんだよね、きっと。「どれどれ」では他にどんなネーミングがあったのかにも興味。「ワンマン」とか「ネツベナ」とかって名前、きっとあったと思うんだけど。意外性なさ過ぎで落ちたなかな。主体を直裁的に現しているからなあ。「どくさいくん」とか。まあ「ネツベナ」は別にして「ワンマン」あたりは今時のメディアならどこでだって使えそうなネーミングだからいずれ他が使って来るでしょう。

 富士見ナポレオン文庫と一部に評判の豪屋大介さん「レベル17」シリーズの第2作「復讐のサマータイム」「(富士見ファンタジア文庫、720円)が登場。のっけから年上未亡人とのぐりぐりっとしたシーンがあったりと今回も黒江徹くん、銃もそれに似たあれも散々にぶっ放してくれているけど世界がその足元に跪く神とも言える存在に、ますます近づいて来てしまって僕(しもべ)の女性チーム「エンジェル」に男性チーム「ノバ」の両方をそれなりに従えさらには世界的な組織にまで近づいてしまってこれから何をするにも世界征服しか残ってないじゃんて見通しに期待を持ちつつ調和を覚えて悩む。

 これが「ウルフガイ」だと犬神明、簡単には死ななくっても痛めつけられ過ぎれば死ぬことだってありえる肉体をふりしぼりながら、CIAが中国情報部であってもひるまず戦いこれを粉砕。立ちふさがる女性エージェントはフェロモンも多少は使うけど大半は才覚と舌鋒とそして肉体でもって落としていく姿がカタルシスと憧れを感じさせてくれたんだけど、たいして訓練がされてなくても銃器は扱え体術は駆使でき、おまけに女性に限らず男性も含めてちょっと”匂い”をかがせればすべて下僕に出来てしまう存在に、どんな感情を移入して読んでいけば良いのか迷う。そりゃ羨ましいけどさ。羨ましいけどそこに哀しみが覚えない。憐れさはちょっと覚えるかな。

 あとはどーやって世界の王へと黒江徹がなり上がっていくのか、大統領を昇天させ書記長をトモダチにし首相をハズにしてナポレオンならぬルビーかその辺の酸っぱい描写を交えながら進んでいくことになるのかそれとも、もう少し穏便に裏から世界を支配する一族の未亡人なり娘なりを誑し込んでは権力と金をつかんでいくのか分からないけど、絶対的に強すぎる存在が戦う以上はその戦闘シーンにスリルはなさそーで、どこまで超然としているかって段取りの楽しさが読み所になりそー。あとはどこまでハードなエロスを読ませてくれるのか、って所か。「東京ドーム」みたいなところで中央に立ってフェロモン放って集まった5万人を順応させ、そこから全員を相手にイタす世界最大のエロティック描写に挑戦、なんてこともあるのかな。それでも最後までヤり切る男だろーけど、黒江徹は。あやかりたいなあ。

 冲方丁さん「カオスレギオン04 天路哀憧篇」(富士見ファンタジア、680円)を読む。分厚いなあ。でも面白い。前巻から出てきたレオニスのところからの刺客その2、氷吸血鬼のアキレスがいよいよドラクロワとも連携してジークを攻め、そんなジークには途中で拾った空だって飛べる紋章を持った少女キリが絡んでノヴィアも含めたクルーにちょっとした波乱があって、レオニスはちょっぴりおかしくなって”影法師”トールとの間がガタついたもののそれらがすべてラストではどうにか片づき、いよいよ最後の決戦、はすでに無印「カオスレギオン」でやっているんでラス前の大盛り上がりへと突入しそうで楽しみ。エンディングに涙。


【7月18日】 「日本漫画映画の全貌」を見終わったその足で東京駅北口へと向かうバスに乗り込み永代橋で降りて「小山登美夫ギャラリー」で開催されている「Mr.展」を見る。なんだこの小ぎれいな作品群は。ミスターって言ったらオタクになりきれない村上隆さんがそれでもオタク的なイコンなりモチーフは日本の特質だと感じてエッセンスを抜き出し海外向けに見栄え良くアレンジしコテンクストも加えてセールスプロモーションしていたのと比べて、精神の根元からオタクになろうと努力し葛藤し続ける、そのもだえ悩む様をへたくそな美少女キャラって形でレシートの裏でも新聞の表でも構わず描きなぐっていくスタイルが良かったはず。

 なのに展示してあるのは上手く描こうとした街並みやら風景やら人物に小さく美少女がはめ込まれている絵画だったり、整然と並べられたカラフルなドットのところどころに美少女の顔が描かれている絵画だったりと見ていてなるほどアーティスティックなモチーフに潜むサブカルチックてオタキッシュなイコンってってゆー、外国人が見ても分かりやすい作品には仕上がっているんだけどその分あの、どろどろとして得体の知れない迫力がまるで喪われてしまっていて見ていてまるで面白みを感じない。カルロス・ゴーンの頭から美少女が生えてるからなんだってんだ。東京ビッグサイトのはしっこに美少女が腰掛けていているからどーしたってんだ。踏みつけられたカルロス・ゴーンが美少女のパンツを見上げ、巨大化した美少女がビッグサイトの上にしゃがんでおまる代わりに放尿する。そんな絵がミスターじゃなかったのか。

 竹の壁紙をバックにお人形の首が幾つも連なって吊らせた作品のなるほど顔は日本アニメーションが出来損なったミスターならではのものかもしれない。でもそれが色違いで幾つもぶら下がったからって何だと言うんだ。全部を自分でひとつひとつ刻み込んだものでもないそれらからミスターが放った精液の匂いは漂わない。柱から突き出た3つの巨大な首の目玉が美少女になっているからってどうだって言うんだ。すでに村上隆さんが「マイ・ロンサム・カウボーイ」でやったアニメチックな目玉表現の延長に美少女キャラを被せてみた程度のインパクトしか放たれない。

 なるほど小ぎれいになった作品群は小ぎれいになったギャラリーに品良くおさまり内外からのバイヤーにニッポンの不思議を見せているのかもしれない。海外のギャラリーにおさまってニッポンから渡来したOTAKUを訪れる人たちに見せるのかもしれない。でもそれってミスターのやりたかったことなの? レシートの裏の1枚1枚に小田部洋一さんリスペクトな美少女を描き込んでは懊悩を晴らそうとあがいていたミスターのたどり着きたかった地平なの? 分からない。

 分からないけどそうなんだとしたら個人的にはもう結構、これからは頑張って外国人も学芸員も納得の世界を小ぎれいな空間に散りばめていって下さいとしか言えない。でももし違うんだったら。カルロス・ゴーンを100万円近くで売ってリッチな気持ちのどこかに満たされない眠り潜み暴れる懊悩がまだ残っているんだったら。永代橋からバスで業平橋行きへと乗って東京都現代美術館前で降りて「日本漫画映画の全貌」をじっくり見て欲しい。憧れの小田部洋一さん宮崎駿さん小松原一男さん描く真にして実のアニメ美少女たちに再会して、そっちの地平へと歩を向けまだまだ遙か彼方にある終着点へと向かい懊悩を形に刻んでいって欲しいもの。同じ時期、間近で2つの展覧会が開かれているのは偶然じゃない。天意だ。

 圧力さえ覚える暑さの中を起き出し大宮サッカー場で開かれた女子サッカー「埼玉レイナスFCvs大原学園JaSRAFC」の試合をこっちは刺す勢いさえ覚える日差しの中で見る。試合は日テレ・ベレーザが1点しか取れずに苦しんだはずの大原学園を相手に前半で4点、後半も4点を積み上げレイナスの圧勝。崩して叩き込むってよりは相手キーパーのハイボールへの対処の甘さを衝く感じに遠目からガンガンと打ってはゴールネットを揺する得点方法で、このあたりミドルがちゃんと枠に飛ぶ技術面なのかメンタル面なのか、分からないけどともかくレイナスのしっかりと鍛え上げられた様を感じる。まさに炎天下のピッチなのにレイナスの面々、バテるどころか最後までちゃんと走っていたのもきっと、昨年から積み上げて来ただろー体力面の成果があったから。前節にTASAKIペルーレを破ったのも案外にフロックじゃなく、この勢いが後期も続くよーなら今季のL1リーグで台風の目になり挙げ句に優勝したって不思議じゃない。

 同じ大宮サッカー場で去年あたりに見たレイナスの試合はボールをぐるりと囲んだ狭い範囲にフィールドの20人が集まる、コンパクトと言えば聞こえは良いけど単にわーわーなだけとも取れるサッカーをしていて窮屈だったけど、今日みた試合はセンターバックがボールを持つと両翼がワイドに展開しては前へと向かう意識を見せ、そこからパス交換なりドリブルで前へと上がって詰まれば中へ、そしてバックへと下げ反対側のサイドへと降るダイナミックなボール運びが行われていてちょっと吃驚。地味だけど地道に陣地を獲得して行き可能ならば中央突破だってするし無理ならサイドを有効に使う戦術的なサッカーが出来るよーになったからこそ、あのベレーザを相手に引き分け続いてペルーレに勝てたんだろー。田口禎則監督の仕込みかそれともコーチが良かったのか。ともあれ注目必至。安藤梢選手はやっぱり凄いなあ。

サングラス男はどこにでも現れる。大宮でもさいたまスタジアムでも平塚でも。カーニバル以外の場所に。徒歩で。  お目当ては代表の山郷のぞみ選手だったんだろーけどシュートまで持ち込まれるケースがほとんどなくってそのプレーぶりを日本女子代表の上田栄治監督、たぶん見られなかったんじゃなかろーか。灼熱の屋根もないスタンドの最上段からサングラス姿でじっとピッチを見下ろしていたのはちょっと意外で、すでに代表が発表されてこれから新しい人を選ぶ必要もないにも関わらず、ちゃんと試合を見に来るその律儀さ、真面目さに頭が下がる。自分で状況を確かめよーとすらせず呼び付けて状況を聞く某代表監督との違いがどがんと際だつ。

 おまけに上田監督、試合終了後はスタジアム前から車で東京まですいーってんじゃなく、徒歩で氷川神社の参道を抜けアルディージャ通りを行きロフトの横を抜け、大宮駅まで行ったのには驚いた。駅では自分で切符を買って電車に乗り込んで行ったしなあ。某日本代表監督がキーパーの状況を確認したいからと豊田スタジアムまで行き終了後に豊田駅まで歩いてそこから豊田新線に乗って名古屋駅まで向かう姿、想像できません。同じ日本代表監督にしてこの違い。感動を与えているのはどっちの代表ですか、って言ってあげたいけれど稼いでるのはどっちだって返されそーだからなあ。男子代表だからってデフォルトで行くの、こーゆー仕打ちを見ると本心から辞めたくなって来た。

 帰り際に近所の西武百貨店の「ISSEY MIYAKE」で見たことのある絵を発見。すでに六本木ヒルズの店なんかでは展開されてたタカノ綾さんとのコラボレーション商品がいよいよ街のショップにも登場して来たみたいで例のタカノ風な少女が描かれた傘とかキャリングケースとか、ポーチとかトートバックとかが並べられてて一体何事かって気分になる。「SFマガジン」に描いている人が「ISSEY MIYAKE」でも描いてるってゆーこの分裂した現実。連載に起用した塩澤快浩編集長も凄いしデザインに採用した「ISSEY MIYAKE」デザイナーの滝澤直己さんも凄い。そのどっちにもまるでスタンスを変えないで同じテイストの絵を贈り続けるタカノ綾さんが1番やっぱり凄いんだろーけど。値段は傘が2万円でトートバックが3万2000円でブーツが4万円でスーツケースが6万5000円と「ISSEY MIYAKE」的で手が出ない。ショーツ1万円なら買えるかな。問題はサイズが合うかだけど(違うだろ)。


【7月17日】 東京都現代美術館で始まってた「日本漫画映画の全貌」へ。日本テレビ主催ってことでまたぞろ新作「ハウルの動く城」の大々的なプロモーションとあと、日本のアニメーションと言えばな手塚治虫さん宮崎駿さんあたりを軸にいろいろ展示して見た人の郷愁を誘いついでにキャラクタービジネスなんかに結びつける、氏家齊一郎さんが館長を務める美術館らしー”儲ける”展覧会になっているんだろーと斜に構えて行ったらさにあらず。それはもう完璧に真っ当に日本のアニメ、というより「漫画映画」の黎明期から最近までを偉人著名人に頼る”列伝”ではなく歴史に忠実に並べて紹介する”本紀”と言うべき内容で恐れ入る。

 まずは軽くフランスの「ファントーシュ」で誘って展示室では冒頭から政岡憲三さんっていう、戦前戦後に活躍した”動画”の命名者にして日本アニメーションの”父”と言うべき人物の偉績を大々的に収集しては紹介。噂には聞く数々の傑作群は「くもとちゅうりっぷ」から「桜(春の幻想)」から「すて猫トラちゃん」まで絵と映像によって紹介されててその映像の美しくってなおかつ楽しい”漫画映画”ぶりに驚かされることしきり。よくテレビアニメの元祖として手塚さんの「鉄腕アトム」が上げられるけどあのテレビ向けに効率化されまくった映像表現に比べてよりディズニーの動画に近く動き唄うキャラクター群に、日本には”手塚以前”が歴然としてあるんだってことを強く激しく意識させられる。

 ってゆーかこの展覧会。手塚色が意識的なのか”本紀”としては当然なのかは分からないけど展示の流れからはほぼ完全に除外されててアニメと言えば「鉄腕アトム」に「鉄人28号」あたりを思い浮かべる人にはあれっ? って気分を抱かせるかもしれない。逆にアニメといったら宮崎駿さんっと思う最近の人には後半にかけて登場の頻度が増す宮崎さんの仕事になるほどと納得するかもしれないけれど、そんな宮崎さんですら森康二(やすじ)さんを超えては紹介されてはおらず大塚康生さん小田部洋一さん奥山玲子っといったアニメーター陣と並ぶ形で目立たず職人的な位置づけて名前が並べられているあたりにも、クローズアップとフレームアップによって”偉人”を作らない企画者の正史を作るんだって意識が感じられる。

 それにしてもすごい森やすじさん。「太陽の王子ホルス」や「どうぶつ宝島」といった作品群は今をときめく宮崎駿監督が関わっていたってことで、今に連なる宮崎色の”ルーツ”みたいな位置づけでもって記憶が上書きされてしまっている部分がところどころあるけれど、そうではなくその根幹でその色を発揮していたのが森さんで、そこから宮崎さんなり小田部さんなり小松原一男さん高畑勲さんといったクリエーターが育ったんだろー。東映アニメーションのマークにもなっている「長靴をはいた猫」の「ペロ」をデザインしたのがこの森さん。何だかかよくわからない日本テレビ放送網の「なんだろう」や、今度の読売新聞のマーク(仮称なべつねくん)に比べると親しみが涌いてなおかつ何をしているかがわかるマークって気がするなあ。でもだからといって「カオナシ」を出して来られたら困るから手慰み的オリジナルのキャラで我慢するしかないのかな、両社。

 もっとも当時から宮崎さんの活躍ぶりは凄いものがあったみたいで手にされてる「ホルス」の氷マンモスと岩男モーグの戦いを描いた原画からは、巨大なものどうしが戦うパワフルさを描く筆力が伝わって来るし、「どうぶつ宝島」の戦闘場面を描いたストーリーボードではアップに引きに煽りとカメラを縦横無尽に動かしつつ所々に小ネタも挟みながら大量の水兵が入り乱れ動き回るモブシーンの細かさ、マストの上でジムとキャシーが迫る水兵を相手にポカスカやるアクションのスリルと面白さなんかも驚くばかり。どれも今の宮崎作品に欠かせないものだけど、早い段階からそーした面で才能を発揮してたってことなんだろー。雀百まで踊り忘れず。

 もっともホルスが船出する場面の小田部洋一さんの原画のダイナミックさや奥山玲子さんが描いた「長靴をはいた猫」の本編と変わらないストーリーボードからは当時、多彩な才能が集まっていたんだってことを証明していてそこから1人、宮崎さんが抜け出て今の”大家”へと至った理由には絵を描く才能の他に内部的外部的な何か要因があったのか、興味が及ぶ。ひとつには「未来少年コナン」ってゆーテレビのそれもNHKで放映されたアニメーションでの仕事ぶりもあるんだろーけど個人的には「ルパン三世 カリオストロの城」での仕事が当時勃興したアニメ雑誌で特集されてマニアに名前を刷り込み定着させたこと、その上で「風の谷のナウシカ」なり「天空の城ラピュタ」といった作品でもって作家性を見せてくれたことなんかが大きかったりする。

 後半以降の展示はだからもう大喜びの連続で、「カリオストロの城」の雑誌なんかで目にしていたイメージボードに描かれたクラリスの”可憐”さにはもうくらくら。展示室の真ん中におかれた「FIAT500」のそれも完全「カリ城」仕様(灰皿に吸い殻がぎっしり!)の車に乗って運転席から「まーくるぞー」って叫びたい衝動に背中むずむず。壁に掲げられたナウシカの凛とした表情に跪いてすがりたい気分にもさせられて20年前、これらを見ていつかアニメの仕事をするんだって願っていた日々を思い出しつつ今の如何ともし難いくらいにどろ沼な周囲の状況を見て立ちすくむ。どこで間違えたんだろーか。最初っから間違えていたんだろーか。

 そんな青春とやらの蹉跌も味わわされつつ見終わった展示会はアニメのギミックなんかを作り並べるイベントなんかよりもはるかに充実していて面白く、かつ歴史的にも文化的にも意義のあるものに仕上がっていて拍手喝采。カタログは迫力の原画にストーリーボードが満載で買って損なし、ってゆーかアニメ好きなら買わなきゃならない逸品。見返せばヒルダクラリスは言うまでもなく小松原一男さん描く「風の谷のナウシカ」のナウシカとか、森やすじさん描く「どうぶつ宝島」のキャシーちゃんとか個人的な趣味をど真ん中からアニメ美少女も満載で、そっちの趣味からも愛でられる1冊に仕上がっている。氷川竜介さんや唐沢俊一さんらのコラムも入って2500円は超お買い得。行ったら是非に。本屋でだって売れるだろーけど、置いてくれる本屋はあるかな、青山ブックセンターとか(もうない)。

 そうだ村山聖9段の逝去も8月8日だったなあ。お台場にテレビ局が俺様な日だと大騒ぎする日だけど同じグループに居ても(といっても給料は倍違うけど)この日ばかりは騒ぐ気持ちにはなれないなあ。7月15日もそんな1日になるんだろうか。本屋を歩いていたら漫画版の2巻も出ていて帯に「アニメ化」の字も躍って出版社の期待の大きさが現れていて、それだけにやっぱり残念無念な気持ちが膨らんで仕方がない。今は雌伏のキャラクターショップが来年の躍進を賭けてたメディアミックス作品の行方もやっぱり気になる。「東京キャラクターショー」ではどんな扱いになっているんだろ。そこでどんな指針が示されるんだろ。見てみよう聞いてみよう。


  【7月16日】 基本的にメディアが扱う倒産情報は帝国データバンクか東京商工リサーチが流す「倒産速報」が基本でこれが例えば日本銀行に詰めてる金融記者あたりに配布されてそこから一報として○○って会社が地方裁判所に自己破産なり会社更生法の適用なりを申請して事実上「倒産」したって形の記事を掲載することになる。だから企業が裁判所にそーした破産なり会社更生法といった形式での「倒産」の申請をして、それを裁判所に詰めてる帝国データバンクとか東京商工リサーチの情報員がキャッチしてペーパーにしないとメディアは当該企業が「倒産」したって記事は書かないし書きづらいし書けないものだったりする。

 話題の青山ブックセンター”倒産”って話については朝日新聞の記事なんかを読むと取引先の栗田出版販売が自己破産を申請したってあって当該企業が自ら申請した訳ではなくって、それがどーゆーことなのかは分からないけどあるいは取次が納品した本の代金回収が滞っててこれはマズいと思った取次が早めに”倒産”させて債権を確保したいって思ったのかもしれないけれど、ともかく当該企業が申請していない以上は帝国データバンクも東京商工リサーチも倒産の速報を出せないでいてそれが、メディアによって扱いがあったりなかったりする差に出ているのかもしれない。

 どっちにしたって取引してもられない以上は本屋さんに生きる望みはない訳で、遠からず自らの申請でもって”倒産”を明かすことになるんだろー。それともうちがだったら取引してあげるって取次が現れるのかな。いっそ取次がそのまま経営を引き継ぐとか。あの渋くて先鋭的な本を集めて売るノウハウは、あれだけ広い場所がいるかはともかく地味に狭い範囲で活用する分には結構有効だって思うんだけど。ともあれイベントとかサイン会とか結構あってそれが個人的にヒットして、良い本屋だって感じていただけに残念至極。大森望さんと豊崎由美さんが登場した4月1日の「文学賞メッタ斬り」対談が最後になってしまったなあ。文学賞を斬ってる間に本屋が切られてたってオチ。あるいは豊崎さんが通った後には何も生えない説。しかしどーするんだろ「文学フリマ」。変更みたいだけど中止にはしないでくれると嬉しい限り。

 無断転載はもってのほかとして引用すら無断は禁止ってスタンスはちょっと悩ましいなあって思わせてくれた某女性作家のページの日記で読んだ情報にしばし呆然。テイクオフ2秒前の期待感がたっぷりに膨らみ爆発寸前だった状況にあっただけに残念としか言いようがない。むしろ悔しいと言った方が感情として正しいかもしれないけれど、だからといってどうしようもないのがただただ辛い。あれは一体どうなってしまうのか。あれはちゃんと始まるのか。考えるだけで悩ましくそれがなおのこと「これからだったのに」って慚愧と悔恨の念を呼ぶ。あの時交わした言葉が最初で最後だったんだなあ。去年の初夏にこれからの人で選んだ10本のうちの1本に入れておけたのが今となってはせめてものたむけになれたかどうだったか。1984年8月8日といい夏にまた1つ悲しい日が出来てしまった。

 上野の「国立科学博物館」で17日から始まる「テレビゲームとデジタル科学展」の内覧会。ミュージアムでのゲームの展示ってゆーと前に水戸芸術館までわざわざ出かけて見た展示会がまずあって、それから去年に東京都写真美術館で見た展示会があったりするんだけど水戸芸のがテレビゲームをあれこれ展示しながらも部分部分で巨大なゲームを使って遊べたり、展示してあるものもコインをもらえば遊べたりして結構楽しくまた、写美のもテレビゲームのソフトがわんさと並べられてその中に万人が見知ったもがあったり、僕だけしか知らないよってな感じなものが混じっていたりして、懐かしさと同時代的に楽しんで来た同志的な感情そして自分だけが知っているって優越感を喚起させたりして、なおかつ主要な家庭用ゲーム機がプレイラブルな状態に置かれていて来た人を楽しませていたのと比べると、今ひとつ物足りない気がしてしまう。

 なるほどゲーム機は業務用では主要なハード、家庭用にいたってはほとんどのハードが展示され並べられて「こんなのあったなあ」って懐かしさを喚起させる。けどそーいった展示してあるゲーム機は「ENIAC」(ゲーム機じゃないぞ)から「Xbox」に至るまで遊べるゲーム機はほとんどなく、インベーダーすら遊べない状態でただ飾られているだけ。唯一遊べるのは最後の「プレイステーション2」の「デジモン」新作とそれから「アイトーイプレイ」のみで、つまりは新作のプロモーションだけでそれだったら秋葉原のゲームショップへと行って店頭でデモ機に触っていた方が、子供にとっては楽しいイベントかもしれない。よく集めたなあ、って感嘆はするけれど。ひーとびとーのヒットビット、まで展示してあったのには驚いた。あと「ニンテンドーDS」、ではなく2枚液晶のゲームアンドウォッチ。

 試みとして面白かったのは展示室の上からマトリックス上にアンテナを配置してその下を小型のコンピュータでブルートゥースの昨日を盛ってて加速度センサーとか内蔵したものを持って歩いて、いろいろ中のデータを成長させたり新しいデータを取り込んでいく「ユビキタス・ゲーミング」って奴で今時「デジタルモンスター」を使った内容が子供にとってどれだけ面白いものかどーかは別にして、部屋全体をPRGの空間にしてしまうって着想はそれ単独でも面白く、また仕組み自体を敷衍させて携帯電話なりPDAにユビキタス・コンピュータの機能を持たせて街中をグリッドのアンテナで覆っている場所動いた距離等々の情報を携帯電話なりPDAから吸い上げ逆に情報を返してやるよーな、「いつでもどこでもコンピューティング」の使える様を、見せてビジネスの参考にしてもらうイベントにもなっている。

 仕組みとしては個々人にID付きのICタグを持たせて位置とか把握しセンターサーバーに蓄積させつつ携帯電話を介して情報を返しても似たゲームは出来そーだけど、リアルタイムに情報をやりとりするんだったらやっぱり持つのはコンピュータそのものの方が良い訳で、そーした使う上でも使い勝手なんかも含めて実験と実体験が出来るイベントにはなっている、かもしれない。とはいえやっぱり「デジモン」なんで大人が遊ぶのは難しそー。どんなもんかと試しにやって来ては子供に交じって背広姿で手にユビキタス・コンピュータを持って歩く背広姿のサラリーマンとか、いたら心から賛辞を贈ります。背広じゃなくてもおじさんが1人挑戦するんでもやっぱりその勇気は讃えます。恥ずかしかったら混んでない時間帯なり夏休み明けなりにゴーだ。


【7月15日】 夏風邪気味で扇風機を切って眠ったため寝汗がびっしょりでプールみたいになったベッドから起きて「SFマガジン」向け。午前4時からかかって午前7時には上げてちょっとだけ眠ってから浅草で開かれていたトミーの新商品展示会を見る。入って初っぱなはアメリカーンにポップなカラーのクッキーだかキャンディーだかの缶が並べられて中から妙な生き物がにょごにょごっと出てくる商品がずらり。見て即座に「レッドスネークカモン」と想った僕は歳が知れる部類らしい。若い人には通じずむしろ「ガチャピン」あたりが浮かぶとか。パンチョ猪狩も遠くになりにけり。

 だからといって別に下から母ちゃんが腕を伸ばしている訳じゃなくって仕込まれたモーターでもって人形がせり上がる仕組み。動作させるには缶のふたをノックする必要があって1回叩くと出てきてあれこれおしゃべりして、何回か叩くと占いを言ってくれたり時間を教えてくれたりするとかしないとか。って聞くと思い出すのは「ファービー」でそーいえば日本で手掛けていたのはトミーでまたぞろアメリカのタイガーだかハズブロだかから商品を引っ張ってきたのかと思って聞いたら答えはノー。アメリカーンな雰囲気をしてても開発やデザインは日本でなるほど、だから「ファービー」ほど色彩も形状も一種日本人には理解し難いものにはなっていなかったのかと納得する。紫に赤の水玉とか、緑に黄色の縞模様とかアメリカ人って平気で使うからなあ。目の色素が違うと見える色も違うのかどうなのか。謎。

 ちなみにこの商品「チャッタ」は毎週火曜日夜のえっと10時だったっけ、そのくらいからフジテレビで放映されてるドラマ「君が想い出になる前に」の中で8月の発売に先行して登場してるとか。「たれぱんだ」がドラマに使われ人気が出たとか「ジェンガ」がドラマの中で遊ばれ話題になったとかってのはあるけれど、発売前の玩具がドラマにそこはかとなく登場しては前評判をゲットしようとするってケースはあんまり聞いたことがなく、どんな展開を見せるのかがちょっと楽しみ。ってかどーゆードラマで誰が登場しているのかも知らないんでどーいったシチュエーションでこの「チャッタ」が使われているのかも分からない。ドラマウォッチャーの人は知っているのかな。でもってどんな印象を持っているのかな。

 浅草の駅で「R25」の第3号をゲット。伊藤剛さんが「ファミリー4コマまんが業界に『萌え』化の並みが進行中」ってコラムを書いててその名も「もえよん」なんて雑誌が出ているのを知って死ぬ。なんだこりゃ。「ぷにぷに萌えたい四駒コミック」だそーだけど1作品に何本かがあってそれが何作品も続く4コマ漫画誌で萌え萌え漫画を読まされた日にはいったいどれだけの萌え駒を目にするんだろーかとちょっと戦慄。いくら好きでも食傷気味にならないかって心配だけどまあ、トレンドとして可愛いキャラが増えててそれにやや萌えな属性が付随しているんだと思えば目にしてゲップが出る程までにはいかないのかも。むしろ女性層が可愛いじゃんとか思って買うよーになるのかな。「COMICぎゅっと」ってタイトルもちょっと凄いなあ。

 「スポーツ・ヤア!」の97号はライブドアの堀江貴文さんが登場して玉木正之さんと対談。近鉄バファローズの収支がどうなっているかだけじゃなくって福岡ダイエーホークスの収支構造がどうなっているかもチェックして聞かれて答えている辺りに単なる「ちょっと名乗りを上げてみました」的な軽いノリじゃない、割に本気にプロ野球の経営をしてみたいってゆー意志をが見えて来る。「古田さんいは、いっちゃ悪いけど、ちょっと地味な印象があって(笑)。もしかすると、ここで化けるか化けないかの瀬戸際かもしrないですね」って言っているけど心配無用に化け初めてて、共闘が渦となって球界に新しい波を起こし始めてる。その最初の一石を投じて今も水際で脚をバタバタさせ続けている堀江さんをとりあえず見直しました。

 「メインスポンサーが親会社になって球団を所有するという形態は健全じゃないですよ。自立した球団を僕らの経営ノウハウで『支援』する。そういう前例ができれば、自立する球団が次々と出て来ると思います」って言葉は将来へのビジョンを持っていることの証。可能かどーか、収支が合うかどーかは別にして、こうまであれこれ考えてくれているなら1度くらいは任せてみても面白いかもしれない。けどやっぱり無理なんだろーな。オリックスも宮内オーナーが以前の革新性から転じて保守的になっている理由を玉木さんが一言「いじめられたんですよ、誰かに」と断じているのには笑い。一国一城を作り育てたオーナーでも、「週刊新潮」が言ってる「サラリーマン上がりのオーナー」に適わないんだよなあ、何故か今の球界は。

 直木賞芥川賞発表。文藝春秋社のスリーペアは何だろー、芥川賞に関しては河出書房新社と集英社にベストセラーをかっさらわれた前回からの揺り戻しって奴なのか。けどモブ・ノリオさんがいくらミュージシャンの経歴を持った話題性のある人でも、5万部がせいぜいで50万部100万部はいかないと思うんだけど。売るばっかりが能じゃないってゆー選考委員自体の揺り戻しがあって結果として文春の作品に行ったのかな。直木賞は中堅2人の受賞で良い落としどころ。東野圭吾さんがまたしても取れなかったのはやっぱり誰か絶対的に反対する人がいるからなんだろーか。北方謙三さんは多分プッシュしてたと思うんだけどコワモテでも選考委員としては若輩ではやっぱり勝てなかったか。とはいえ奥田英朗さんの受賞は喜ばしい限りで、これがベストとは言わないしだいいちシリーズもので取って良いのかって気もするけれど面白いから良いか。晴れて直木賞作家になったってことで初単行本の「B型陳情団」が再刊されると良いな。未読の人は読むと奧ちゃんの凄さが分かるコラム集なんだよな。


【7月14日】 違った遠藤ヤットにパスを出したのは鈴木隆之選手だったよーで横浜国際競技場の2階席の後ろの方だと背番号が2ケタまでは見えてもそれが10番か11番か判然とせずあーした魔術的な技を見せるのはてっきり中村俊輔選手だと思ってしまったよ間違えた。鈴木選手には早急に髪を銀色に戻すことを要求します。あるいは俊輔選手に前みたいなキノコ頭にしてもらうとか。サントス選手は遠目にもカラーが分かるんで良しとして、できればその他の選手は髪を白黒抹茶小豆珈琲柚桜の色に塗り分けて頂きたいもの。僕は桜が好きだったなあ。青柳ういろう。ぽぽぽいのぽい。

 それにしても5万人は超えていたとはいっても決して満員ではなかった横浜国際。2階席のたぶんカテゴリー3あたりがぶっちりと抜けてる感じがあってそれからカテゴリー1もところどころに抜けがあって、買ったけどこれなかったのか来たくなくなったのかはともかく前ほど手に入れたなら是が非でも観る、観るためには是が非でも手に入れるってチケットでは日本代表、なくなっているような感じがする。男女の五輪予選にフル代表のワールドカップ予選とあと「EURO2004」とか「コパ・アメリカ」って真剣勝負が目白押しな中だといわゆる花相撲では客が呼べないってことなのかな。本場所は満員御礼でも大相撲トーナメントでは満席にならない、ってことか。ってか大相撲トーナメントって満席になってたっけ。

 起き出してタカラの新商品展示会。に行ったらなぜか八谷和彦さんが。いよいよ「メーヴェ」を玩具メーカーの巨大資本で飛ばすことになった、って訳ではなくって95年とか6年って大昔からアイディアだけはあったけど実現はしなかった、自動車にしっぽを取り付けるプロジェクトがタカラの子会社になった自動車用品メーカーのワコーで実現することになってそのお披露目をしてたみたい。自動車にしっぽって何? 静電気を地面に逃がすアースみたいなもの? って思う人も多そうだけど八谷さんの企画した「サンクステイル」は正真正銘クルマのしっぽ。クルマの屋根とかに取り付けておいて中からリモコンを操作すると、尽きだした棒みたいな角みたいなものが左右に揺れるよーになっていて、例えば後ろの人に合図を送りたい時とか、周りにいる人に挨拶したいときには運転席からリモコンで、しっぽを動かすと犬が尾を振って飼い主とかに嬉しい気持ちを表しているようなメッセージを送ることができる。らしい。

 クルマはそれ事態が一種の鎧みたいなもので、周囲に威圧感を与えることがあっても親しまれるってことは少なかった。けどこの「サンクステイル」はクルマを鎧から動物に近い着ぐるみへと代え周囲に威圧感を与えるんじゃなく周囲から親近感を持たれるよーな存在へと代えてくれる。「視聴覚交換マシーン」とか「ポストペット」でコミュニケーションの可能性についてあれこれと考えて来た八谷さんだけど、人の延長としてのクルマとクルマなりクルマと周囲の環境とのコミュニケーション促進を、しっぽひとつで実現したって言えそー。しっぽにはカバーもあって犬とかライオンのしっぽみたいにできるとか。狐のよーなフカフカとしたしっぽとか、柴犬のよーにふわっとしてくるりと丸まったしっぽを付けたら周囲は何て思うかな。「Qカー」だとベストなマッチングだった「サンクステイル」をたとえばフェラーリにつけたらどんな空気が生まれるかな。フェラーリ持ちメルセデス持ちには試してもらいたいもの。4980円。秋とかに発売。

 あとは「王立科学博物館」の新作とか1万5000円で歩いたり物を掴んだりするリモコンのロボットとかマイナスイオンを出す電球型蛍光灯とかいろいろ観る物たっぷりの展示会。科学な人も行くとそれなりにネタになりそう。好きな夢の見られる「夢見工房」も夏の発売が迫って展示に拍車もかかってたし。あとサンリオとの共同開発商品でお姫様をモチーフにした人形が大受け。高飛車そーな目つきをしているんだけど妙にかわいらしくって愛らしい。女性層が夢を仮託するアイテムとして受けて行きそう。そんな新商品群にあってひときわハートをキャッチ(死語だね)したのはミュシャの食玩、かな。平面で描かれたあの絢爛として美麗なミュシャの絵を、そのまんまのイメージでもって立体像にした作品で海洋堂ならではの3Dアイが注ぎ込まれて立体なのにまんまミュシャってゆーフィギュアに仕上がっている。

 あの微妙な色彩もちゃんと再現されていて、塗った職人も大変ならぬらせた海洋堂も大変なもの。とてつもなく小さい顔の表情がちゃんとサラ・ベルナールしているのは驚きで、この技術力をもってすればあるいはダリの細密にして惑乱の世界を立体にすることだって、アンリ・ルソーの深淵にして土着的な世界を立体にすることだって可能かも。「眠れるジプシー女」のフィギュア、良いねえ。燃えるキリンに溶けた時計のフィギュア、最高。パーツパーツに分かれていて、組み合わせると巨大な「ゲルニカ」になるフィギュアってのもありかな。分割フィギュアと言えば別のコーナーで「戦艦大和」を輪切りに分割したフィギュアあって集めるとそれなりなサイズの「大和」になるってのも展示中。中に何が入っているのかが分かるよーになっているから第一主砲だけダブったとか、艦橋がいつまでたっても手に入らないってことはないので安心。第三艦橋はありません。

 あと2日、発売が遅かったら「舞城王太郎芥川賞受賞後第一作掲載雑誌」なんて惹句でもって「ファウスト VOL.3」、ライトノベルとかミステリーとかのファンじゃない、一般的大人的おっさん的な意味での”世間”とやらの大注目を浴びた可能性だってあったかも。まあ1回で頂けるほと芥川賞の世界は甘くなく、覆面作家を意図しているかどーかはともかく”気取って”いるよーに思われがちな舞城さんが今の段階で芥川賞を取れるともあんまり思えないだけに関係ないか。けど案外に取ったりして。そうなったらそうなったで候補作になった「好き好き大好き超愛してる」の7月刊行の単行本にカップリングで入る「ドリルホール・イン・マイ・ブレイン」は「ファウスト」掲載だった訳でやっぱり注目は集めそー。全部どころかほとんど読んでないけど「ファウストvol.3」、原田宇陀児さんの「サウスベリィの下で」のイラストの女性の唇にキュン。宇山日出臣インタビュー。おもしろい。これをこの分量この内容でやれるのは「創元推理」でも「イン・ポケット」でも「本格推理」でもなく「ファウスト」だけ、だよねやっぱり。


【7月13日】 上下2巻組の小説を読んでレビューを書くってのはそれが週刊のペースで3作品来るうちの1つに入ると結構大変だったりするけれど、かといって上巻だけ読んで書くってのもなかなかに微妙なところで途中までで盛り上がった話が結末にどうなるかを知っているのと知っていないのとでは推す筆に差も出ようってもの。もっともクライマックスが感動的だったらおおいに誉める所が最後にぐだぐだになって終わっていたら貶すに貶せず曖昧な言葉でお茶を濁して逃げることになりかねないんで、上巻だけで読んで期待感を胸に秘めつつその気持ちをぶつけるって辺りが妥当なのかも。

 ってことで上下ともに出ているにも関わらず上巻だけ回ってきた麻生幾さん「CO」(産経新聞社、1600円)を課題図書としてぺらりぺらり。静岡県警にノンキャリアとして入った警察官でも抜擢されて警察庁から在外公館へと出て警備官になりつつその実一種のスパイとして現地の情報担当者と接触したりパイプを作ったり情報提供者を開拓したりすることもあるんだって知ったけどそこは哀しいかなノンキャリアだけあって警察庁内に渦巻く権力闘争派閥抗争にキャリアノンキャリアの差別意識から主人公の名村という警察官は海外で実績を上げながらも国に連れ戻され県警では外国での経験のまるで行かせない部署へと放り込まれて幾年月。死に体となって1日を何もしないで呆然と過ごす日々が続いていた。

 そこに巻き起こるテロの危機。アルカイダだか何かが日本へと潜入してはとんでもないテロを起こそうとしていると知りつつもそれが一体誰によるものなのか、まるで海外に情報網を持たず育てて来なかった警察庁には掴めず仕方なく静岡で死んでいた名村を呼び戻してはかつて情報提供者になってもらいながら本庁の妬み嫉みもあって切り捨てられてしまった女性の情報提供者との関係を掘り起こし、日本を襲おうとしている未曾有のテロへと立ち向かう。その行方がどうなっているのか上巻を読んだだけでは当然ながら分からず、テロの実態に名村の活躍とそしてその後も含めてこれは下巻も絶対に読まねばと確信を抱く。果たしてそんな期待に応えられる内容なのかどーなのか。ちょっと興味。それにしてもキャリアとノンキャリアの諍い激しい警察も警察なら縄張りを荒らすなと海外での警察の動きに釘を刺す外務省も外務省。省益あって国益ないってのがよく分かる。日本はやっぱりとんでもないことになってしまうんだろーな。あるいはすでになっているとか。

布施に松崎と来て次は達郎、が来れば良いな  はるばると「横浜国際競技場」にてキリンカップサッカー「日本代表vsセルビア・モンテネグロ代表」を見物。試合開始の直前になっても埋まりきらない席に横国が遠すぎるのは平日とゆー日程が悪いのか、相手がセルビア・モンテネグロでいまいちなのか中田英寿選手が出ていないのが響いているのか、理由は分からないけれどジーコ監督の就任直後にやった平日の国立霞ヶ丘競技場でのウルグアイ戦が即ソールド・アウトだった状況、その後のナイジェリア戦でも国立が満杯になったことと比べると、レコバとかスター選手の不在やら場所の近さを割り引いても、目立った空席はやっぱり代表カードが決してドル箱ではなくなりつつある状況を現しているって言えそー。ゴール裏ですら余裕があったもんなあ、2階だけど。

 とか思いながら待った国歌斉唱はいったい誰が唄うんだって関心を一身にあつめて我らが松崎しげるさんが登場。5月だかの「ワールドカップ1次予選」での対インド戦で「目の前で唄って欲しい歌手ベスト3」のうちの1人、「君は薔薇より美しい」を是非に目の前で唄って欲しい布施明さんが登場して歓喜にうち震えたのに続いて「愛のメモリー」をこれまた是非に目の前で唄って欲しい、ってゆーかすでに前に唄ってもらえて大感激だった松崎しげるさんの登場に、こんなところでなけなしの幸運を使ってしまって良いのかと不安がむらむら浮かんで来る。最後の1人は「ライド・オン・タイム」を目の前で唄って欲しい山下達郎さんだけどこればっかりは永久に無理そーなんで幸運がピークを超えて一生分を一気に消化してしまうよーな事態にはならないで済みそー。とか油断しているといきなり登場したりとか。30日の日本女子代表とカナダ女子代表の試合に竹内まりやさんとペアで出てきて達郎さんが「君が代」唄ってくれたらもう一生、パチンコでフィーバー来なくても良い。もともとパチンコやらないし。

 そんな松崎しげるさんの松崎しげるさんらしー「君が代」のあとに始まった試合はとりあえず攻め手を日本代表が多く見せてセルビア・モンテネグロのゴールに迫るものの割れず。逆に途中からはセルビア・モンテネグロのちょんちょんと回すパスが決まりだし、囲まれても突破していくテクニックも発揮されるよーになって幾度となく良いチャンスを作り出すもののシュートが弱かったり正面に行ってしまってゴールマウスを守る川口良活選手のキーピングの餌食に。とはいえ狭いディフェンダーの間を通してゴールマウスに入れて来るテクニックと思い切りの良さはセルビア・モンテネグロ、なかなかで今のメンバーに下の世代も入ってきたあたりで結構、欧州に旋風を巻き起こしてくれそーな予感。ミロシェビッチとか3人に囲まれたって突破していくもんなあ。潰れるのが仕事なフォワードはいても突破していくフォワードは日本代表にはいないもんなあ。それがやっぱり地力の差、って奴なんだろーか。

 とか言ってると地力にどちらかと言えば劣っている日本代表が中村俊輔選手の怪しいスルーを受けて突進した遠藤保仁選手がキーパーもかわして決めて1点選手。あとはともにゴール前へと迫りつつもラインを割れず無得点が続いて結局、1対0でセルビア・モンテネグロが敗れ去ってジーコの日本代表に初のタイトルがもたらされた。「ASIA2004(アジアカップ)」直前でのタイトル獲得は本番に向けて意気を高める良いきっかけになりそーだけど、本気の韓国代表に中国代表にイラン代表を相手に使える技でもないんで中村選手にマークがつけられプレッシャーをかけられた時にどーやって攻撃を組み立てていくのか、「ASIA2004」ではじっくりと見せてもらおー。今日は合格点。でも明日は?


【7月12日】 スポーツ紙はやっぱり新庄選手のホームスチールを含む大活躍が1面トップで、ついでにパ・リーグを盛り上げ1リーグ制への移行を目論むオーナー陣への反発反抗を含んだニュアンスの記事がいっぱい。何もなければ巨大な相手に気力も縮んで鈍る筆もパ・リーグの活躍って大義名分があれば堂々と書けるってことになるんだろーけど、ペナントレースが始まって動きが滞って来た時に、新聞の売り上げに直結するセ・リーグの人気球団の動きを脇に置いてパ・リーグの球団合併問題をキャンペーン気味に報道し続けるだけの座った腰をスポーツ紙が持っているかは微妙な所。けど流され1リーグになりプロ野球人気がシュリンクした時に実害を被るのはスポーツ紙だってことを、経営する人も編集する人も認識しておいた方が良いだろう。トップの超人気球団だけ応援してれば売れるって? 野球を見放したファンにそんな神通力は通じません。

奥様ボランチはチームでは澤選手と同じトップ下。実力伯仲なはずなのに軽くいなされ吹き飛ばされていたのには驚き。きっと宮本選手が疲れていただけなんだ、でないと海外の凄い相手にはかなわないかもしれないぞ  さすがに1面トップはなかったみたいだけれど中のサッカーのページでは五輪代表を脇に置いて澤穂希選手の復帰ゴールを各紙とも大報道。去年に仙台で開催された女子サッカーの日本代表の試合を報道していたメディアなんてまるでなかったのに、1年でこーも様相が変わってしまうとはやっぱり驚くより他にない。急激に盛り上がる人気があるってことは逆に急激に盛り下がる人気もあるってことでその辺はサッカーも野球も心しておかなくっちゃいけないだろー。今日の今日までチケットが余ってるサッカー日本代表の試合があるってことをサッカー協会の偉い人はもっと深刻に考えるべき、だろー。中村俊輔選手のお膝元でやってこれだもんなー。ストイコビッチ会長がこの試合だけ復帰するなんてことになった方がお客さん、入ったかもなあ。十分に出来ちゃったりするんだろーけど、今のゆるゆる日本代表が相手なら。トップにミロシェビッチも入ってることだし。

 おっと女子サッカー。写真はどれも澤選手のシュートシーンが使われていたみたいだけど近賀ゆかり選手の短いクロスを横滑りしながら叩き込んだそのシュートも確かに凄かった一方で、フィールドで見せた縦横無尽なプレーぶりがとにかく凄かったのが見ていて強く目に残った。とりわけ伊賀フットボールクラブくノ一の中心選手で日本代表では澤選手とも同じチームに入る宮本ともみ選手と澤選手が、フィールド上で見せた競り合いのシーンで、澤選手が上背で上の宮本選手をはじき飛ばしてボールをキープし、突進していったのには恐れ入ったし驚いた。全体にちょっと重めな感じがした宮本選手だったけど代表じゃあボランチとして相手攻撃の目を積み反撃へとつなげる役割を担ってる。そんな選手をはじき飛ばすパワーにテクニックを澤選手は持ってるってことでアメリカでの経験かそれとも持って生まれた才能かは分からないけど、ともあれ心強い選手の復帰に日本代表は大歓喜、日テレ・ベレーザも喜悦の内にあるんじゃなかろーか。来週は遠征で見に行けないけど再来週はTASAKIペルーレとの天王山にゴーだ。風神として川上直子選手も山本絵美選手も軽く吹き飛ばしそーだなー。

 山本絵美選手と言えばロナウジーニョ選手が所属してりるバルセロナに今年の冬の移籍で移って大活躍して2位キープに大いに貢献したダービッツ選手がインテルへ移籍。着ていて格好良さではトップクラスのユニフォームを持つチームに好きな選手が移籍してくれて去年は作らなかったレプリカを今年は作ろうって気になって来た。チェルシーからベロン選手も移籍して来てどっちにしたら良いのか迷いそう。できればダービッツ選手には背番号1ケタで値段を安くあげて欲しいもの。一昨年のデザインで作ったレプリカを作ったエムレ・ベロゾグル選手はまだいるのかな。監督がころころ替わった渦中にいなくなってしまったけどイルハン選手と同様に、ってか「EURO2004」に出られなかったトルコ代表と同様にフェードアウトしてしまったのかな。2年前は世界が注目したトルコ代表も調子に乗って気を抜くとすぐにこーなるって実例に、世界の代表チームは強く学ぶべき。調子に乗ってもないのに沈滞してしまった我らが代表チームは別のことを学ぼう。「EURO2004」でベスト4に入ってもオランダは監督が辞めたこととか。

 イセカタワキカツって誰よ? と訝ったのは瞬間で「式神宅配便の二宮少年」(富士見ミステリー文庫、540円)ってタイトルからすぐに瀧川武司さんがファンタジア長編小説大賞に応募して特別賞を受賞した作品だと確認。結構前のことでおそらくはそのままお蔵入りって想われていたらしー作品だけどこーして晴れて出てみると、読んでなかなかに面白くって奥深くってこれをデビュー前に考え出していたんだとしたら今の活躍ぶりも当然と納得。しかしどーしてここまで出すのを引っ張ったんだろー。それよりどーしてミステリー文庫からの刊行になったんだろー。「作者自体がミステリー」だなんて言ったって舞城王太郎さんと違いバレバレなのに。やっぱりファンタジア文庫とは相容れない何かがあるんだろーか。「カンフーファイター」ですら刊行可能なファンタジア文庫にマッチしない何かが。うーむ。

 主人公は二宮少年で学生で実は式神宅配便と営む四季状先生の教え子で地脈に沿って式神を走らせあるいは自分が走って荷物を届ける仕事をいよいよ本格的に始めようとする年齢。ヤクザの襲名だかに必要なお酒を届ける仕事を怪我の先生に代わってする羽目になって、走り始めたところに現れたのは先生のライバルという北川是也。易しそうに見えてなかなかに悪辣で二宮少年を騙し荷物運びを邪魔しあまつさえ二宮少年をさらってしまおうと企むけれど果たせずどーにか荷物を届けた二宮少年は晴れて見習い的な立場を卒業して一人前の宅配便になる。

 純真で真っ直ぐな二宮少年の可愛らしさとそんな少年を応援する同業者なり取引先の人たちの暖かさが気持ち良いストーリーだけど後半にそんな暖かさを踏みつけるよーな冷酷無比の展開があって気持ちが沈む。単なるちょっかいを超えて命を弄ぶ言動は許せないしそんんな言動をする人間が罰を受けるのも当然とは言え、そーゆー人間が改悛もせずただ舞台を去って行ってしまうのは、やり直せないことが人生にはあるんだってつきつけられるよーで哀しくなる。決して代替できない哀しみにほんの少しだけ光明を見出すエンディングはベストと呼ぶには哀しいけれどベターではあるんで納得。ライバルが消えてしまってこれでは続きも出ないのかもしれないけれど読んで剽軽な文体と、人の純真さに触れて心温められる物語はなかなかなんで是非に続きを読みたいところ。期待して良いのかな。やっぱり無理なのかな。


【7月11日】 誰もお祝いもしてくれない数え不惑の夜をひとり発泡酒で祝う。人付き合いはしておくもんだと後悔。まあ良いそれも人生だとのたうち回りつつ迎えた朝、暑くなりそうな中をむりむりと起き出して西が丘サッカー場で開かれる「Lリーグ」の第5節「日テレ・ベレーザvs伊賀フットボールクラブくノ一」の試合を見物に行く。到着すると観客の方はまだそれ程いない中、テレビカメラが軽く5台は入っていて、日本女子代表のエースで4月の対北朝鮮戦で怪我をして戦線を離脱していた澤穂希選手が、この試合で復帰する所を撮ろうとベレーザの練習を取り囲んでいた。ワールドカップへの出場が決まったか決まる直前だったかの去年の今頃だって、これほどまでのテレビカメラは来ていなかったと記憶していて、たった1年での変わり様に日本人の五輪好きな性格を見た想い。もしも五輪に出ていなかったら、たとえ澤選手が出ていてもきっと、サッカー専門誌くらいしか来てなかったんだろーなー。

西が丘のLの試合でかくも沢山のテレビカメラを見ようとは。来年は何台残っているのかに興味。オッズは0台が1・4倍。  もちろんそーした日本人の期待に応えて五輪行きを決めた選手たちが偉いのは言うまでもないことだけど、そーした期待が一段落を迎える五輪の終了後に、一体どーなってしまうんだろうって心配もまたこれありで、9月以降も女子サッカーのとりわけLリーグに関心がちゃんと留められるような施策を、日本サッカー協会の人たちには是非にお願いしたいところ。そんなもの無くたって僕は通い続けるつもりだし、来て見てハマった人もきっと大勢いることだろうけど、やっぱりメディアに取り上げられ続けている方が、選手たちにも励みになるしその分プレーの質だって上がる。ひいてはさらなる強化につながるってことで何とぞサポーターには支持を、協会には支援を、そしてメディアには興味に偏らないスポーツとしての報道をお願いします。五輪だけに踊るメディアなんてスポーツの発展にかえって害毒です、どことは言わないけど。

 さて始まった試合は、読み上げられたスターティングメンバーにこそ入っていなかったもののリザーブで登録された澤穂希選手が何時、ピッチへと送り込まれるかに注目が集まっていたよーだけど、なかなかどーしてそれより以前からベレーザが主導権を握って攻める攻める。キレがだんだんと戻って来た小林弥生選手もくるくるとターンしてかわしボールを運ぶマルセイユターン、ってゆーか読売ランドターンってゆーべきファンタジスタな技を見せてくれたし、サイドでは近賀ゆかり選手がスピードとテクニックで相手を翻弄。トップでは先発した永里優季選手に荒川恵理子選手のトップを下から大野忍選手が支えて押し上げサイドへと降っては放り込み、こぼれたところを酒井與恵選手がミドルで脅かす展開に、先週までの点の取れないベレーザとはひと味違った印象を覚える。

すごいすごいすごすぎる。出場即ゴール。このすごさが選手を代えればベレーザの女王返り咲きは確実だね。  とは言え相手も代表歴を持つ選手を幾人も抱えるくノ一だけあって容易には得点を許さず、前半はミドルからの近賀選手のシュートが決まって得た1点のリードで折り返し。このまま最少得点でもって逃げ切ることになるのかと心配した後半、荒川選手の放ったシュートかのか放り込みなのか分からないボールが転々としてキーパーの横を転がりゴールイン。2点リードとなったところでいよいよ久々の日本復帰となる澤選手が永里選手に替わって送り込まれた途端にベレーザ、攻めのペースが一気に速まり追加点の匂いが漂い始める。そして後半30分頃、横滑りしながら放った澤選手のシュートが見事に決まって3点目。集まったメディアも大喜びなら来ていた日本女子代表の上田栄治監督も安堵喜悦な復活劇にこれが選挙もオールスターもない週だったら、スポーツ新聞の1面だって飾ったかもしれないと想像する。去年まではやっぱり考えられなかったなあ。

 心配された天候は時折雨がぶつぶつと降り雷もごろごろと鳴る不安定な状態だったけど、そんな中を送り込まれていきなり大活躍する澤選手はさしづめ雷神様といったところか。ライジング・サワ。その勢いを是非にアテネでも見せてやって下さいな。怪我だけが心配。復帰した澤選手にはサポーターからも早速コールがついたよーでゴール裏に集まった10数人がウェーブを一斉にするよーに前屈から手を上に伸ばした格好で体を起こしながら「さ〜わ〜、さ〜わ〜」と、まるでお祈りするかのよーなコールをしていて競技場は祭りな感じ。なるほどだからメシア的なパワーが発揮されたのか。これがたとえば柳沢敦選手と同じ音程で「ほま〜れさ〜わ〜(ドンドンドドドン)ほま〜れさ〜わ〜(ドンドンドドドン)」なんてコールだったら、トルネードにゴールどフリーからのパスなんてプレーへと流れてしまうからなー。ただ勢いを見せつけて欲しい時にはケチャ的な激しいコールもやって頂きたい気も。応援がどう進んでいくのかにも興味を抱きつつこれからもLリーグをウォッチして行こう。

 なるほどミサンガ付けて全員が試合にのぞんだか。ってことは選手達も相当本気でオーナー連中と戦う気でいるってことなんだろープロ野球オールスターでのひとコマ。ただそーなると今度はオーナー連中からの”手を噛む飼い犬”に対する苛烈な躾も始まりそーで、その走狗としてどこのメディアがペンとゆー暴力をとばし始めるかが今はちょっとした注目点。もちろん真正面からオーナー連中の暴言を伝えてはかえって選手たちに同情が集まるから、ここは政敵の足を引っ張る政治家のリークにメディアが乗っかるのと同じ戦略が、逆にメディアの戦略を政治が補佐する形で行われそうな予感。

 手っ取り早いのは選手会側のリーダー、古田選手を貶める情報を引っ張り出して来ることで例えば申告漏れが見つかったとか、所得隠しがあったとかって話を国税あたりから出させてイメージを失墜させるとか、交通違反があったとかって話を警察から出させて信頼性を殺ぐとかいった情報操作で、選手会側よりもオーナー側にあるメディアが口火を切って来そー。あるいは無関係に見えて底でつながっている雑誌メディアが動くか。そーなった時でもワイドショー的な感性でもって好悪を付けるんじゃなく、問題の本質はどこにあってどうなることが最善なのかを考えそれに向かって動いているかを見極めること。って言うと12球団体制の維持、2リーグ制の意地が最善か、ってことにまで話が及んでしまって堂々巡りに陥ってしまいそうだけど、とりあえず今はそこをラインに考えたい。メディアには理性を。オーナーには自省を。

 9インチって20センチくらいだっけ、そんな長い爪をしていると背中を掻くには便利でも缶ジュースのプルトップを引っ張るには不便だろーけど幸いにしてくげよしゆきさん「ナインインチネイル」(ファミ通文庫、640円)の世界では、長い爪でおまけに色つきなのは魔術師の証明、なので魔術を使えば缶ジュースの蓋だって簡単に開けられるんで爪の長さなんか関係ないみたい。ところがそんな9インチの爪を持っていた希代の魔術師から爪がなくなってしまったからまあ大変。その魔術師は会われ大学教授の座を追われ、妻たちにも去られて私立探偵に身をやつしては造花作りの内職に精を出していたのでありました。

 物語はそんな魔術師の日々を描いたスラップスティックストーリー、かと想ったら違って悲惨に見える日々なのにまるで落ち込んでいる風のない魔術師を父に持つトラビスが、いろいろ悩み危険にも遭いながらちょっとづつ成長していくストーリー。スクーターが大好きでいつか自分でもスクーターを持つんだと願いつつスクーターの修理工場でバイトをしているトラビスのことを好きだという少女がいて、けれどもトラビスは別の人のことが好きでおまけにその人は自分ではなく自分の父親と曰く因縁ありまくりだったりするからややこしい。

 そんな所に父親の知識を狙って敵が現れトラビスを好きという少女をさらいトラビスたちを脅迫して来て持ち上がったひと騒動。魔術師の世界における役割とか、一夫多妻が認められている理由とか説明がなく物語の前提としてぶん投げられていて戸惑うけれど、そんなもんだと思って読めば良いだけのことなんで気にしない。むしろ戻ってきた9インチの爪をめぐってこれから起こるかもしれない騒動と、それからトラビスと彼が想う女性との進展なのか停滞なのか後退なのか断絶なのか、分からないけど動きのあった関係がどうなったのかを知りたいんで作者の人には是非に続編をお願いしたい。「……穏亜はけっこう丸わかりだったりするものだぞ。気をつけたほうがいい」「……何が?」「男が、自分の体のどこを見ているか、だ」。(114ページ)。ガーン!

 とりあえず「スキカル」は手に入れたし「ジレットマッハシンスリー」ではないシックの4枚刃も買いサクセスのシェービングジェルも揃えたけれど誰からもつるつるを見たい見せろ見てやるぜってリクエストもなくつるつるにしたら脳天にキスの雨を降らしてあげるわって乙女のラブコールも届かず宙ぶらりん。テストとばかりに襟足ともみあげだけを揃えついでに髯を剃ってみたけれど、そこから先へと進める勇気が出ないままどうしたものかと鏡の前でのたうち回っているチキン野郎だったりする今日この頃。ウイークデイに入ると外に出る機会が減り沿った頭を日で焼き色を顔に近づける作業も出来なくなるんで次なるチャンスを土曜日あたりに設定して、しっかりと充電に励むとしよー。人間って弱い生き物です。


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