縮刷版2003年9月下旬号


【9月30日】 デル姉がデル姉がデル姉がデル姉がデル姉がぁぁぁぁぁぁぁ。って叫んだのは深夜も午前の1時40分とかそんなもんだったっけ、まさに天上天下唯我独尊を地で行く傲岸不遜な女王さまっぷりにかつてのハマーン・カーン様を見て、お姉さま好きの血がざわざわと騒いだのも束の間、予想だにしなかった方法でもって場面から身を退かされることになってしまった、「LASTEXILE」最終話の展開に無念さから涙をにじませたデル姉さま同様に、流れる涙を手の甲でぬぐいながら流れていくスレンダーな肢体に瞠目する。

 ディーオのぞんざい極まりない扱われっぷりも含めて出し過ぎたキャラクターに収拾をつけられなかった印象もたっぷりで、最小限のところでお約束だけどお約束だからこそ感動し感涙にむせんだ「住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー」の方が着地は満点だったって結論に至る。ただし挑んだ試技の難度で言うなら途中の冒険に作家性の発露を見た「コスモス荘」に対して世界観の構築でもって頑張ろうとした意欲が「LASTEXILE」には結構見られ、設定された世界への興味をかきたてられて可能性があるならDVDなり小説なりでの補完を得て、どんな世界でいったい何が起こっていたのかを探求したい気持ちになっている。買ってなかったけど文庫、読んでみるかな。ラスト付近で誰かさんと誰かさんがチュッチュしていた麦畑ってのがどこなのにかも興味。ええっ! モランがモランがモランがモランがモランがぁぁぁぁぁぁ! でもアリスティアの白いワンピース姿の可愛さにはかないません。

 田波さんが田波さんが田波さんが田波さんが田波さんがぁぁぁぁぁ、ってしつこいけれど叫んでしまった「ヤングキングアワーズ」の2003年11月号。表紙に堂々とその姿をさらしているだけに留まらず、本編でも瑞穂区中根の野々村医院、ではないな、建物の形が全然違う、いったいモデルはどこなんだろー、なんて想像させられた病院のベッドで復活を遂げては本当だったらその際に看病疲れでベッドに突っ伏していたかった桜木高見ちゃんをガッカリさせていて、相変わらずのタイミングの悪さ甲斐性のなさを発揮している。けどまあとりあえずは有り難う、彼がいないと話、シリアスに進まないからね。

 それにしてもなぜに病院が化け猫どもに襲われ囲まれているのかってのが微妙で、日常生活ではこれまで狙われていなかった田波ほか神楽総合警備の面々にも、いよいよ危険がしのびよって来たってことだったりするのかな。そんなシリアスな環境でも田波以外の面々のお天気ぶりが健在なのも嬉しいところで、ナースの扮装をしては社長キックでガラス窓を割って飛び込んでくる菊島雄佳にこちらもナースながら巨乳ぶりで社長を凌駕している姫萩夕にスレンダーなボディを白衣で包んだ女医姿の蘭堂栄子と両手どころか全身に華の病院暮らしに田波に変わって入院したい、って気にさせられる。とはいえ風雲はますます急を告げそーな予感で死にかかった田波を置いて話はどこへと進むのか、箏井に一言で運転を拒否される入江のこれから共々楽しみ。連載200回がどんな感じになっているのか待ち遠しい。相変わらず「こんな会社辞めてやるぅぅ」って叫んでいるのかな、僕みたく。

 その会社をサッカーチームに例えるならば、全国区で活躍できるチームが集まった1部リーグの下にある、地域に密着していたりプレースタイルに個性を持っているチームが集まる2部に所属しているチームで、決してメジャーではないものの、しっかりとした地盤を持って有名ではないもののそれなりに仕事をこなす選手を抱え、2部でも中堅に位置して上がりもせず、かといって下がりもしない経営を数十年に渡って保ってきた。そのまま堅実さの上に少しばかりの投資をすれば、1部入りすら伺うことも決して夢ではなく、選手も若手からベテランまでは程良く揃って未来に明るい可能性を見ていた。

 ところが、そうした堅実経営を支えてきたクラブの会長が突然死去してしまったのが転落の始まりだった。そのチームにはオランダで言うならエクセルシオールに対するフェイエノールト、ベルギーだったらゾルダーに対するゲンクの関係のように、1部に所属する親会社的なチームがあってそこから会長が送り込まれて来るのが通例で、会長の突然の死去を受けて新しい会長が選任されてやって来た。聞くところによると1部のチームでは選手としてダークホース的な活躍もし、マネジメントに移ってからもイベントにPRにそれなりの才を見せ、1部に所属するチームを盛り上げてはいたのだけれど、全国区的な支持を持ちそれなりな規模を持ったチームだからこそ成果を挙げた施策も、地域に特化し独特のプレースタイルで人気を集めていたチームで成果を挙げるとは限らない。メジャーになろう、なって自分の株を上げよーと派手な宣伝を行い、華麗なプレーでメジャーへの道を進もうとしたことが裏目に出て、従来からの熱狂的なティフォージを失う羽目となり、安定していた経営にもほころびが出始める。

 折しも景気は低迷基調でスポンサー収入も低下の一途。観客動員が下がり資金が足りなくなって来たチームに対して会長がすべきは、いち早い従来路線への復帰だったにも関わらず、会長がとったのは選手たちへのよりいっそう派手なパフォーマンスの強要で、フォワードだったら毎試合ごとのバイシクルシュートの披露、中盤だったら相手が1分たりとも振れられないような華麗なパス回し、ウィンガーだったら5人を抜いて突っ走るドリブルとベッカムばりのどんぴしゃのクロス、ゴールキーパーだったらすべての1体1の阻止といった具合に、一丸となって試合に勝つより個々の選手の見栄えの良い、ほとんどサーカスと言っても良いパフォーマンスでもって観客を集めようとしたのだった。

 しかし根が生真面目な選手たちに、華麗なパフォーマンスなど求めるのが土台無理で、サーカスにしてはみすぼらしさばかりが目に付く内容に観客はなお一層離れるばかり。一方でパフォーマンスを強要された選手たちも、慣れない仕事に体を壊し、心を痛め意ある者から引退するなり他チーム他リーグへと移籍してしまい、結果観客も残らずパフォーマンスの中身が空っぽになってしまう虻蜂取らずの状況へと陥って最近まで来てしまった。もはや試合に必要な11人のメンバーすら揃えられず、それこそ7人とか8人といった陣容でもって他チームと戦うことを強いられているチームが、2部にいるだけでも奇蹟でいずれ遠からず3部落ちか、あるいは解散といった事態も想定されるくらいに末期的な状況となっている。にも関わらず、依然として居座り続ける会長が打ち出したのが、さらなるパフォーマンスの強要だったからたまらない。

 それはもはやパフォーマンスと呼ぶのもはばかれるくらいに無茶な要求で、フォワードにはゴールキーパーを1キロメートル吹き飛ばすくらいの勢いでシュートを打てと言い、ゴールキーパーにはそんな感じに凄まじい敵方のシュートを小指の先で止めた上で相手ゴールまで跳ね返せと言い、ディフェンスは鉄の体となって敵の攻撃を跳ね返しミッドフィルダーは空を飛びながらパス交換をして相手ゴール前までボールを運べという、ほとんど「少林サッカー」と言えそーなプレーを毎試合見せろと言っているに等しかったりする。出来たら10万人だって観客を集められるだろーけど、人間がやる現実のプレーでそんな奇蹟は起きはしない。

 あまつさえ会長は、悪化する経営の建て直しに、遂に選手たちの報酬にまで手を付けこれをカットしよーと言い出したから選手たちの怒りも頂点へと達し、口々に会長の無能を訴え、見せろと要求するパフォーマンスの無謀さを説き、考え直すよー求め、そんな無理難題をこの後に及んでふっかけて来る会長の能力を疑って、辞任を面前と要求するくらいに激しい反旗を翻した。が、それで聞くならとっくの昔に聞いているのが普通の人間。普通でなかった会長は、選手たちの当然過ぎる反発に怒りの原因を、監督やマネージャやフロントの管理不行き届きであり、会長の意志が選手たち末端まで伝わっていない現れだと認識して、今でさえ毎週のよーに開かれている幹部の会議をさらに密にし、また選手たちも入れたミーティングの回数を増やして、会長の素晴らしい考えを浸透させようとした。もはや処置無し。なす術もない。

 そんなこんなで現状は、会長の提案を選手が上部チームも含めて一体となっている選手組合とともに阻止し、阻止できないならできないで会長の即刻の退任と無理難題をこなし続けるのではなく、かつて大勢のティフォージが支持した当時のチームへと戻ろうと訴えているのだけれど、相手は親会社の経営陣も首に鈴をつけられないくらいに暴走と肥大の進んだ会長。加えて親会社的なチームも近年は1部で決してトップクラスを維持できておらず、2部落ちの可能性すらささやかれる中で、関係は深いといっても数字的な支配率ではマイナーに入る立場を盾にして、2部のチームへの支援も示唆も一切を行わず、無茶な再建策でもそれで数字が取れるならと内容への文句は付けずに成り行きを見守る、とゆーより見捨てよーとしている状況。かくして暴走を続ける2部チームの会長の下、その言動に逆らえないフロントに監督にマネージャといった幹部、立場的にいかんともしがたい選手たちとともにチームは崩壊寸前の際まで、否事実上の崩壊にまで至ってしまっている。

 暴走が止まらず止められる立場にある者もいない会長を仰いだチームが、そのままで再び2部の中堅として輝きを取り戻すことは100%ありえず、また仮に会長が責任を突きつけられて退いたとしても弱体化してメンバーすら揃わないチームに「少林サッカー」をさせ続けて立ち直るはずがない。仮に立ち直る方策があるとしたらそれは、チェルシーを買ったアブラモビッチのよーなスポンサーが現れチームを買い、フロントに監督を入れ替え選手も買うなり育てるなりした上で一旦の3部落ちも覚悟しつつ堅実な試合を復活させ、時間をかけて2部復帰から1部を伺うまでに持っていくこと、だろー。

 とは言えこれにも問題があって、それは1部の親チームとの関係で、現状ではスタジアムも1部チームから借り用具係も運営スタッフも1部チームにおんぶしている状況が、会長が変わっても続くとは限らずその場合、別にスタジアムを建てスタッフを雇う必要がある。投資も莫大になり、その割に即効性も期待できない投資に果たして乗るところがあるのか、とゆーのが課題でその辺り、投資はかかるもののそれでもサッカーチームを持ってステイタスを得たいと考えるスポンサーの登場を待つか、あるはいっそ解散してしまうかといった重大にして重要な分岐点に、チームは来ているのではないだろーか。

 果たしてチームは生き残れるのか。それとも綺麗さっぱり消えてなくなり選手も晴れて移籍なり引退の道を歩むのか。マスコミ的には格好の話題だろーけど、2部のチームってことでメジャーなメディアが取り上げるにはネタがマイナー過ぎるのか、現時点ではどこにも取り上げられた形跡は無し。とことんマイナーは辛いよって感じだったりする。ところで「仮に」とゆーことでサッカーチームに例えたけれど、ここに紹介されているのはあくまでもひとつの企業の現在置かれている状態で、どこかのサッカーチームについてのことではないので悪しからず。ひとつの企業とはどこの企業かって質問は悪いけれど却下だ。


【9月29日】 それから秋穂有輝さん「開演! 仙娘とネコのプレリュード」(富士見ファンタジア文庫、560円)なんかもつらりつらり。「第15回ファンタジア長編小説大賞」の佳作って奴で内容は題名からも想像できるよーに仙人みたいな技を使うリィファって娘がネコといっても中身は魔物か魔人らしーノワールを従え悪魔だか何かの力を使って世の中を混乱させてる法王を戦うって話。精霊話のひびき遊さん「天華無敵!」といーカード・タオとやらを使う符道士が主役の雨木シュンスケさん「マテリアルナイト 少女は巨人と踊る」といー、今回のファンタジア長編小説大賞はスピリチュアルなものが大流行だったよーで。選考に坊主か仙人でもいたのかな。

 さて「仙娘とネコ」のリィファは見た目はともかく仙人なんで相当な年齢になってるんだけど「ババア」と呼ばれると怒髪天を衝いて怒り狂う、なんてキャラクター設定があったりする割に、その設定が「トミ子」と呼ばれてクライマックスに暴れまくった国広富之さんみたいな使われて方じゃなく、気付けの部分くらいしか活かされてなかったりするのが拍子抜けって感じだし、ノワールとローラって魔女の対立とかヴァイスと聖騎士団の対立とか軸がいろいろある割に1本のドラマとしては細すぎるし向いてる方向もバラバラで、たどりながら気持ちを盛り上げ感動へと至る主軸をつかみにくいのが気にかかる。
BR>  原因となったいたずら娘を窘(たしな)め笑ってエンディング、ってくらいに力を持った仙娘ならそれなりのパワーなり鷹揚さでもって人間どもの繰り広げる事件など些事と割り切って、鼻であしらいながら傍若無人に進んでいくドラマもアリかな、なんて思ったけれどそれも割にある話なんでここは巻を重ねる中でリィファの立ち位置とか性格とかを固めつつ、世界の中でどんな役割を果たさせるのかなんてテーマも繰り出しつつ、彼女に関わる人間たちの幸不幸のドラマを描いていってくれたら面白いかも。それにしても真面目で強い剣士のクラース、ヒーローであって不思議はないのにまるで目立ってなかったなあ。誰かと恋愛関係にでもさせておけばそれも軸となったのに。それだと軸が増えすぎるか。

 端で見ればなるほど”お嬢様サッカー”って言われても不思議はないくらいに、ボールを蹴る力は弱々しく相手に当たるパワーにも乏しかったかもしれない女子サッカーの日本代表だったけど、それは決してメンタルな部分が”お嬢様”だったからじゃなく内心には満面の闘士を秘め、試合でそれを発揮しつつも体格的な差を考慮して、得意としているスピードとテクニックで乗り切ろーとしたものの相手のパワープレーがそれを許さず、結果として持ち味を出せないまま終わってしまっただけのこと、子どもではあっても決して”お嬢様”なんかではないと思うし、女子サッカーが置かれている、傍目には”お嬢様”に見えるひ弱さを強化できない事情を日々の取材から熟知していれば、とてもじゃないけど”お嬢様”なんて叱咤とゆーより揶揄に近いニュアンスの記事なんか書けないだろー。

 にも関わらず読売新聞の9月29日付朝刊は、カナダ相手に奮闘むなしく敗れた日本女子代表のサッカーを”お嬢様サッカー”と読んで非難していて、その筋の外しっぷりに憤りをやるせなさを覚えて歯がみする。なにより読売新聞ってのが気に入らないところで、グループにかつて読売サッカークラブって日本でも有数のクラブチームを持ち、女子のチームも擁してぶいぶい言わせていたのも昔の話、景気が悪くなってサッカーへの動員が減ったと見るや、主導権を日本テレビへと譲り渡してしまったのが他でもない読売新聞だった訳で、変転とし不安定さを増す経営状況の中で男子はそれでもプロとして活動を継続しつつも、女子は完全アマチュアの状況へと追いやられ、選手は筋力強化も体力アップもままらないなか日々の仕事に精を出した後で練習にのぞむ状況を続けている、つまりは”お嬢様サッカー”にならざるを得ない環境を強いられているにも関わらず、そんな事態に決して無関係とは言えない会社の人間が、”お嬢様サッカー”と意識はともかく字面では揶揄しているよーにしか取れないことを書いて省みない状況を、認めて良いものかと悩む。

 そんなに”お嬢様サッカー”が気に入らないなら、運営母体は移った今もまんざら無関係でもない日本代表選手を大勢有する緑のチームに対して、もらっている超高額の給料の半分でも贈って選手にアルバイトの時間を減らしてもらい、その分を筋力トレーニングにあててもらうとかすれば、ご希望に添える”お嬢様サッカー”なんてしない勇猛果敢にアメリカ人にでもカナダ人にでも立ち向かっていける、強靱な肉体を精神力を持った日本女子代表チームが出来るだろー。稲城にあるグラウンドへと足を伸ばして、どんな環境で試合をしているのか(使い回したのか蓋の取れかかったエヴィアンの水滴型ボトルに水を入れて凍らせたのを補給用の水分としてライン際に置いて回ったり、とか)を1度でも見れば、”お嬢様”なんて言ってられないと思うだろー。

 足繁くLリーグへと通い、どんな環境で試合をしているのかをつぶさに見て、状況を熟知した上でそれでも”お嬢様サッカー”と言っているのだとしたらなおのこと認めがたい。叱咤し激励したい気持ちはなるほど素晴らしいし大切にしなければいけないけれど、そーした叱咤激励に必要なのは侮蔑的な言葉だけではなく、具体的な強化への方策と、それに資する言葉だ。文京区の豪華な建物に入り浸って偉い人たちとサシで話せるくらいの人なのだとしたら、その立場を”お嬢様サッカー”からの脱却に役立つ方策が実行へと向かうよー、是非に尽力して頂きたいもの。伏してお願いしますです。

 表紙の絵柄とか裏表紙の地面から突き出た尻の絵とかが目に入って上月まんまるさんって人の「成年マーク」が入った「アスファルトの体温」(シーズ情報出版、952円)を 買って読む。ファンタジーっぽかったりSFっぽかったり青春っぽかったりする舞台設定で唐突だったりシュールだったりする展開で女の子がヤられてしまうエピソードがいろいろ入ってて、雰囲気としてその昔に食い入るよーに読んだ森山塔さんなんかを思い出す。裏表紙になってる「まんぐり畑でつかまえて」のシュールなシチュエーションとエンディングの感じなんか特にそれっぽい。とはいえ絵柄にバラ付きがあるし話も全然森山さんぽくはないものもあるんで、こっちの思い入れが過剰なだけかもしれないんで、気になる人は読んでどんなもんか感じて下さいな。ちなみに本家の山本直樹さんも「堀田」(太田出版、952円)が発売中、やっぱり本家だけあってすっげえ所まで来ています。どこまで行ってしまうんだろ。


【9月28日】 たられば。って言うと寂しくなるけどでも、やっぱり言いたい「小林弥生選手のシュートが決まっていれば」「大谷未央選手のヘディングがオフサイドじゃなかったら」サッカーの日本女子代表はカナダに勝つか引き分けて、ベスト8に入って上位者のトーナメントに駒を進めていたって。けどそーならないのがサッカーって奴で澤穂希選手のあざやかなゴールで1点を選手しさあこれで逃げ切るぞって思ったのもつかの間、小林選手のシュートが2人のディフェンダーを目に見たってこともあってかファーにギリギリのコースを狙って打ったらしーシュートが外れてこれはヤバいと思った次の瞬間同点に。以後リードされて追いつけずオフサイドもあって追加点を奪えず逆に逃げ切られ、フリーキックからの大谷選手のシュートもキーパーが超絶セーブで1点差に迫れて1対3のスコアで敗戦が決まり、そのままグループリーグでの敗退も決まってしまった。

 惜しいシーンの連続とか総計すると決してひけを取ってたよーには思わないんだけど、でもやっぱりどこかにカナダ選手とは越えられないよーな差があったよーに見えて、それを埋めていかないと世界には迫れないのかな、って気もしてる。単純に言えば体力あるいは筋力って奴でたとえばゴールラインとかで回すパスの1つとってもキック力が足りないのか、妙に遅くて不安定でゆらゆらとしている間に敵に詰められ慌ててけり出すとかっさらわれて相手の攻撃につなげられてしまう。走る速度に展開力は負けてないし所々日本が上の部分もあっただけに、基礎的な部分で鍛えていかないと最後の最後で疲れからミスになって失点、ってパターンを繰り返してしまうよーな感じがしてる。

 鉄壁を誇ったはずの大部由美選手もカナダ戦ではピッチの具合もあったのか、妙にパスやクリアが弱々しいよーに見えたんだよなー。けど他に代えられる程の人材がいないって層の薄さも問題で、そーした選手層の底上げとそして基礎体力の向上って課題を得て示せたって意味で今回の「女子ワールドカップ米国大会」の意義はあったって前向きに捉えておこー。問題が山と見つかっても改善する気のさらさらない男子代表監督とは違って、女子代表監督はやればやってくれそーな感じだし。あとはやっぱり協会側の協力で、目前に迫ってきたアテネ五輪に向けてフィジカル強化のためのプログラムなり人材を、すべてのLリーグチームに送り込んで鍛えてやってはくれまいか。新しいビルの誰も望んでいないミュージアムの家賃だけでそれくらい、出来ちゃいそーな気がするんだよな。突っ込めメディア。無理だろーなー。

 ともあれこれで今回の「FIFA女子ワールドカップUSA2003」は終わってしまったんだけど女子サッカーは終わりなく続く、ってことでとりあえずは10月19日から開幕する「Lリーグ」の年間優勝をかけた上位リーグの争いに注目。東西に分かれて対戦することのなかった小林選手とか酒井與恵選手のいる日テレ・ベレーザと、大谷未央選手のいる田崎ペルーレFCの激突もあるんで真夜中に早朝の中継で興味を抱いた人は是非に、日程をチェックしては近い場所なら出かけて見物してやって下さいな。人が増えて露出が増えて関心が高まることが底上げの遠回りだけど唯一に近い道なのです。

 ところで関係ないけど今回の「FIFA女子ワールドカップ2003」で女子日本代表の着ていたユニフォームって男子代表が着ているのと違って見えるんだけど変わったのかな、肩から袖へと流れる3本線を挟むよーに赤い線が入ってるんだよね、Vネックの襟元もラインがまっすぐじゃなく段になってるし、同じアディダスのカナダもそれは同様に。仙台で開かれた「日・韓・豪3カ国対抗国際序した位階2003」では男子と同じのだったから、女子向けにアディダスが別にあつらえたのかな。売り出す予定があるなら欲しいなあ、背番号は5番で「SAKAI」でお願い。目立ってないけど澤選手、小林選手への供給で頑張ってた姿を僕は忘れない。めーわく?

 仙台行きは当にあきらめ2時間ほど寝て起きて昨日とは別の仕事を半分くらいこなしてから電車に揺られて「味の素スタジアム」で開催された「東京ヴェルディ1969vs名古屋グランパスエイト」の試合を見物する。勝てば首位が決まる試合だけあって集まったサポーターも多く緑がホームのスタジアムの半分くらいを赤く染めることができて出足は良好、試合も早々に得点が重なり追いつかれても引き離しては前半で2対4と2点のリードを持って折り返し、これは後半も相当にやってくれるかと思ったのもつかの間、前の試合に前々の試合でもそーだったっけ、グランパスが患っている10人病が出て酒井友之選手が退場してしまって数的不利の状況に陥ってしまう。

「押されてますけどグランパス」「そうっすか」「出たら流れをかえられます?」「どうっすかね」、とか無骨なインタビューをまた聞けるのか、石塚啓次選手  前半の流れで一気に押し切ろーとフレッシュな人材を投入するべく控えのメンバーがアップを開始。中に先だって川崎フロンターレから移籍して来た元ヴェルディの石塚啓次選手が圧倒的な存在感を全身から放ちはなら激しい勢いでアップをしていて、同じく元ヴェルディのネルシーニョ監督の手で対ヴェルディに投入されたらこれはニュースだと期待した途端の酒井選手の退場で、戦法の見直しを迫られたのか結局アップしていたメンバーから投入されたのは吉村圭司選手のみ。そうこうしているうちに2点差を追いつかれ、その後も怒濤の攻撃を浴びたものを楢崎正剛選手の神業的なセーブでかわしてカウンターへとつなげたもののウェズレイ選手のフリーキックはバーを叩き、ロスタイムでのウェズレイ選手のゴール前でフリーになったシーンもキックを狙いすぎたかキーパーにキャッチされて万事休す。4対4と華々しくも勝ち点では1に過ぎない結果に終わり、首位の座を横浜F・マリノスに明け渡してしまった。

 パナディッチ選手は鬼神とゆーか大仏のよーに大活躍をして怒濤の攻めをはねかえしていたんだけど、そんなプレスをものともせずに打ち込まれたボールを反転しつつ足を振り抜きゴールへと突き刺したエムボマ選手の凄さにはただただ脱帽、カメルーンからスポーツ大臣だかが見に来ていたのが発憤させたのかもしれないなー。日本はジーコ監督は見に来ていたのかな。ともあれ1点はもらって上位に踏みとどまったグランパスが次に相手にするのは柏レイソル。場所も「日立柏サッカー場」ってことで家から近いこともあるし見物に行こうかそれとも”首位決戦”を見に「横浜国際陸上競技場」へと「横浜F・マリノスvsジェフユナイテッド市原」を見に行くべきか迷いどころ。けどまあ、しばらく来なくなるってこともあるし石塚選手の復活もありそーだし、ここは柏へと足を向けることにしよーかな。

   さくさくとひびき遊さん「天華無敵!」(富士見ファンタジア文庫、580円)。「第15回ファンタジア長編小説大賞」で準入選ってことはそれなりな内容だろうって期待をして読んだけどまあ期待にはそれないに応えていたって感じか。双子の少女の妹・白華は巫女だった母親譲りの精霊を使う能力でもって巫女のトップの座にあって、姉の天華も信精帝國のお姫様って立場にありながら、遺跡を探して歩く探求者だった父親に憧れ帝國を飛び出し遺跡の探求者として世界を渡り歩いている。そんな彼女が忍び込んだ遺跡に、帝國でいっしょに学んだ幼なじみの少年で、剣の腕前を認められて剣聖の称号を得たばかりのアルバルドがやって来ていたからもう大変。遺跡を荒らす悪人として成敗したいけど、帝國のお姫様であり幼なじみとして捕まえ連れ戻したい気持ちもあって迷っていたところを逃げ出されてしまう。

 天華は天華で逃走中に空を行く古代遺跡の精機龍を見つけて父を越えるにはこれを捕まえなくっちゃと大はしゃぎ。機械のよーな古い遺跡を排除すべき立場の長にある白華と、遺跡を見つけては金にかえる天華の姉妹の今も続いている交流に、アルバルドとその愉快な仲間たちによるちょっかいも入ってくずほぐれつのドタバタ劇がここに幕を開ける。精霊に機械、遺跡探求者、幼なじみと並んだパーツは聞けば過去の作品から類似を浮かべられそーだけど、組み合わせの巧さと語り口の楽しさ、そして底抜けの明るさでもってぐいぐいと最後まで引っ張っていってくれる。この辺りが栄えある受賞に輝いた理由かな。クールな本の精霊・Gの格好良さも良いけれど、アルバルドさまに惚れちゃってる飛空艇乗りのココロちゃんの性格もなかなか。ヘンな奴らの活躍をまた見られると嬉しいかも。きっと見られると思うけど。


【9月27日】 ごめんやっぱり泣いてくれ……って言おーかどーか迷ったけれど甲乙付けがたいってことで「住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー」「LASTEXILE」と並んで今年のベストアニメの暫定1位を共に分け合ったってことにしておこー。暫定なのは月曜日夜の「LASTEXILE」の最終回がやっぱり不安ってことで物語的には大丈夫なんだろーけどほら、頑張れGONZOってことでラストに大穴が来るってゆーか開かないとも限らないんで確認してからどっちもどっちだったってことを宣言しよー。だから頑張れGONZO。ゴンゾー・ハヤテは頑張らなくても構いません。

 しかしやっぱりってゆーか落ち着くところに落ちた「コスモス荘」最終話。オープニング抜きでスタートした冒頭にゴミ捨て場で目を剥き朽ちかかっていた栗華さんが映し出されてヤバって思ったもののそこはお約束への布石ってことで、敵に囲まれ熱血アルファ波も妨害されてピンチに陥っていた我らがドッコイダーを助けに駆け付ける面々と、ともに真犯人の居場所へと向かう途中で襲い掛かってくる敵に1人、また1人と倒れていくコスモス荘の仲間たち。さらには最後の最後でドッコイダーにも究極の敵が襲い掛かろーとしたその時、ギチギチの展開で目一杯になっているにもかかわらずしっかりとバンクを使ってお尻プリプリな変身シーンを入れて僕らのネルロイドガールが現れては、タッグを組んで最後の敵へと挑みかかる。

 とまあそんなありきたりと言えばありきたりながらもありきたりだからこそ感動のツボに刺さりまくる展開の果てに、訪れた「スターウォーズ」的なエンディングとそして再びの終わらない非日常は、けれどもこれまでのボケかましながら正体に気付かず生きていた時とは違う中身を持っていて、仮に続編があったとしても今までとはちょっぴり違った展開にしないと無理かもなー、なんて心配しつつそれでも続編を期待してしまう。まあそこはタンポポが使った記憶消去銃でプシュっとやれば元どおりってこともあるし、できれば今度は脇道枝道へと流れまくって作家性を発揮しまくった話をそこそこにして、本編に登場するスイートピーだか何だかな最終兵器とのバトルとか、それより前のスペシャルに出てきた海辺でウミガメの産卵を観察しながら見せるヒヤシンスの優しさを描いたエピソードなんかを、是非にアニメ化して欲しいもの。適うなら僕はDVDを最後までちゃんと買い抜きます。

 仕事をちょっとだけこなしてから電車を乗り継ぎ「さいたまアリーナ」へと回って「SPEED」の復活ライブの初日を見物に行く。何故かとれてしまった「e+」のチケットは取れた理由も分かるくらいの究極的な座席番号で、覚悟はしていたけれどいざ座るとアリーナ席を眼下に見下ろす4階席あたりのそれもサイドで、斜め上から遠く舞台を見下ろす感じに真っ当に見られるんだろーか、こんな席で盛り上がれるんだろーかと心配も募る。けどそれは廻りに座っている人たちも同じ条件で、双眼鏡を目にあて出番を今かと待ち、登場すれば立ち上がって拍手にペンライトに時々はジャンプとアリーナに負けない声援を贈っていて、どこであっても見られれば良い、同じ空間を共有できれば嬉しいってファンって人たちの凄さ素晴らしさを間近に感じて嬉しくなる。

 登場してまず唄ったのは今回の復活の理由になってる「セーブ・ザ・チルドレン」とかゆー運動のテーマソングめいたものになってる「Be May Love」で、以後「Go Go Heaven」とか「Steady」とか知られた曲をガンガンやって耳慣れた感じに気持ちもグングンと高揚して来る。途中にhiroのソロが入り絵里子のソロに仁絵のソロもあって、解散した後もちゃんとそれぞれが別々に活動していたことを反映させたステージ構成になっていたのが上手いとゆーか面白いとゆーか。ピンで立てば1番美人の上原多香子が「SPEED」だとバックダンサー&コーラスに成り下がりかねないってのが前々からの危惧だったけど、ソロを経たことでそれぞれにちゃんと持ちネタが出来ておまけじゃなくってステージでパフォーマンスできるよーになったって印象を受けた。もっとも多香子のソロアクトは4人中4番目で、もしもなかったら1人スネるかなー、なんて心配してしまったのも事実だったりする。バラードじゃなく激しい歌を踊りもつけてちゃんとやって、多香子も立派に「SPEED」だったってことを感じさせてくれました。いや最初っから「SPEED」だったんだけど。

 何でも11月27日にアルバムが出るそーでベスト盤じゃなくあれこれ有名どころのアーティストの楽曲を「SPEED」が演るって内容みたいで、その1つとして「ゴスペラーズ」にお願いして作ってもらった曲をステージで披露してくれた。でもあんまりコーラスじゃなかったな。それより驚きは川瀬……じゃなくってトミー・フェブラリーとして作った曲が入ることで、まんまトミー・フェブラリーって感じのビートで聞いてて気持ちが良くなる上に、ステージ上で流れたPVでは4人が何とチアリーダーの格好をしてツインテールに髪を縛って足もミニスカートからにょっきりのぞかせ、手にボンボンを持って腰ふりふりなダンスを披露してくれていて、そのとてつもない可愛さに、これがそのままDVDになったとしたら1万円でだって買うぞって気にさせられた。多香子が死ぬほど可愛いんだよ。でも流れるのってステージだけってことになるかもしれなくって、だとしたらもー1回ライブに行かなくっちゃって気が今はしてる。行くか武道館。

 デビュー曲の「Body&Soul」とかヒット曲「White Love」も含めて2時間20分ほどを駆け抜けた「SPEED」の復活ライブは、やっぱり「SPEED」って凄かったんだなあ、ってことを強く思わされたパフォーマンスで、入れ替わり立ち替わりの大集団で迫る「モーニング娘。」の演劇集団的な楽しみ方とはやぱり違う、アーティストとしての真っ当な歌に踊りに触れられる楽しみを与えてくれて、なおかつアイドル性もたっぷり持った、今時に希有なグループなんだってことを確認する。昔もそーだし今も敵なしって感じ。今後の活動がどーなるのかって知らないけれど、ツアーの終了をもって散会ってことにはしないで恒久的ではなくても数年に1回くらいのペースで集まっては、目にも素晴らしいパフォーマンスを是非に見せてもらいたい。歳を重ねれば重ねるほど味のあるパフォーマンスと凄い歌を見せられそーなんだけど、「MAX」みたいに。

 折角だからと「SPEED」のコンサートパンフレットを仕込んでから電車で新宿へと向かい「ロフトプラスワン」へロケット話を聞きに行く。今時そんなマイナーな話をどれだけの人が聞きに来るのかと思ったら、今時それが最先端の話だったらしく会場は満杯で、世の中にはロケットが大好きな人がかくも大勢隠れ住んでいたんだってことを目の当たりにする。なるほどだから「王立科学博物館」はあんなにも莫迦売れしてるんだな。ステージでは松浦晋也さんとかあさりよしとおさんが座って当たり前だけどロケット話。スペースシャトルの発射台をバックにした笹本裕一さんの写真を映しながら種子島にいる笹本さんの声を電話で流す特派員みたいな演出に爆笑する。科学系のイベントってことでもしかしたら堺三保さんとか来ていたら、快気祝いに「SPEED」のパンフレットを差し上げよーかと思ったけれど来場されてなかったよーで持ち帰る。もしかして「さいたまアリーナ」に来てたのかな。


【9月26日】 早朝から幕張メッセ。秋だけになったりしてもはやトータルで何回目か勘定できない「東京ゲームショウ2003」の取材に行ったんだけど、例年だったらメッセの通路を派手な広告(「罰箱」とか「中古撲滅」とかって書かれたポスターとか垂れ幕とか)が埋め尽くしていかにも「(自称)世界最大規模のゲームイベント」って気分にさせてくれるものが、今回はメインスポンサーってのがどこへ行ったかいてもシンプルさを追求したのか通路を埋めるポスターはなく、わずかに外にアルゼだかサミーだかの新作ソフトの幟とそれから韓国はエヌ・シー・ソフトが繰り出す「リネージュ2」の看板が出ていた程度で、景気の悪さがこんな所にも出ているのかなーと、働けど楽にならない我が暮らしなんかを思いながらそっと手を見る。結婚線がない。

 出店規模こそ111社で過去最高だって主催者の人は言ってたけれど、外にかかっている看板がゲーム業界とは別のがま口を持った会社とそして、景気の良さでは日本のゲーム業界を上回ってる韓国のオンラインゲーム業界ってあたりに”過去最高”の秘密もあるみたい。中に入ると居並ぶブースのそこかしこに、韓国発のソフトをひっさげた日本法人とか日本での代理店とかがずらりずらーりと居並んでいて、大手の家庭用ゲーム機メーカーとか、メガパブリッシャーのブースに入って減った中堅・中小ソフトメーカーの穴を埋めていたよーに見受けられた。その延長でオンラインゲームをプレーできるパソコンを並べたインテルのブースとか、オンラインゲームと並んで進境著しい携帯電話向けゲームのブースとかが場所を取っていて、3年前にはパソコン用オンラインゲームなんて「ゲームショウ」ではカケラも見なかった時代から、業界も様変わりしまくってるんだな、ってことを教えられる。

 危機感は業界のとくに日本のソフト会社にはあるよーで、基調講演として行われた任天堂の岩田聡社長の講演には場内に入りきれない程の人波が。話したことは7月の終わりだかに開かれた経営方針説明会と同様でシューティングゲームしかり、格闘ゲームしかりでエキスパートのためにどんどん難しくしていった結果、素人が付いてこれなくなって売り上げがしぼんでしまったってゆー状況が業界全体に起こっているんで、業界としては間口が広くって奥の深いゲームを作ったり、昔ゲームを嗜んだ人が戻ってプレーしてくれるよーなゲームを作らなきゃ、って内容で聞けばなるほど簡単だけど、新しいアイディアなんて早々生まれない現況で、どこまで実行できるのかって来場者のほとんどが頭を悩ませていたみたい。

 そこはさすがに任天堂だけあって言いっぱなしでは終わらせないで、ちゃんとひとつの答えを用意してくるから偉いもの。残念ながらスクウェア・エニックスのオンラインゲーム戦略の発表を聞きに途中で抜けてしまったから見られなかったけど、「ゲームボーイアドバンス」に取り付ける新しい「ポケットモンスター」のカートリッジだかに通信機能を付けワイヤレスで対戦したり交換したり、中継局を介してセンターサーバーからデータをもらえるよーにして、ユーザー間のコミュニケーションを促進していくって発表を行って、単なるゲストかと思って話を聞きに来ていたメディアを驚かせた。その昔「ゲームボーイカラー」をPHSにつなげて携帯ゲーム機でオンラインサービスをやろーとして失敗した任天堂だけに、どこまで計算が働いているのかは分からないけれど、その時の轍を踏まないって決心してかかっているんだとしたら、相当なものが期待出来そーでとりあえず楽しみ。でも電車で向かい合った見知らぬ人と「ポケモン」の交換をするよーになるとは思えないんだけどなー。

 発表の梯子で場内をろくすっぽ見て回る時間がなく、新作ソフトや話題のソフトについては未チェック多数でどっかのサイトなんかを見て補完する必要がありそー。コンパニオンについては朝のテープカットで居並んだ姿を見ているんで、とりあえずはNCソフトがスタイルで抜群だったってことをここに強調しておこー。凄いです。素晴らしいです完璧です。朝のテープカットに来た1人は胸にポッチが浮き出ていたりして指でつついてみたくなったけど、やると犯罪なんで心の中で「ポチっとな」ってやるにとどめる。もちろん両指で両胸に、だけど。元気もレーシング風でなかなか。マイクロソフトも相変わらずになかなか。あとNTTドコモもスタイルでなかなか。ゲームはなくても目には嬉しい「東京ゲームショウ2003」であった。これで持ち帰れさえすれば……家におけないよ狭くって。がっくり。

 経済記者なんてものをやっていると変わった経営者、不思議な経営者、奇妙な経営者の話には事欠かないんだけど最近聞いた経営者は、変わっているってレベルを超えて不思議さに満ちあふれた経営者で、そーゆー人がこの競争激しい時代にどーして生き残っているんだろーと首をかしげる。変わり所が山ほどあって何から伝えれば良いのか難しいんだけれど、1点挙げるとしたらすでに数年前から奇矯な振る舞いの目立ったその経営者が繰り出す施策のことごとくが大外れで、業績はピーク時の半分程度に落ち込み従業員も嫌気からバタバタと止めたりしてこれもピーク時の半分くらいにまで減って、事業運営すらままならない状態にあるとゆー。

 普通だったそんなにしてしまった責任を感じて自分で腹を括るものんなんだけど、当の経営者、肝っ玉が太いとゆーかそーなってしまった責任が自分にあるどころか、嵐の吹き荒れたよーな大不況の中で、本来だったら壊滅的な打撃を受けていた収益が手前の施策によってちょっとの打撃で済んだなって言ってのけるから凄いもの。なおかつ過去の路線に沿うどころかそれを一段とスケールアップした施策を繰り出しては、達成しろと言明するから受けた側としてはたまらない。無理無茶無謀な計画を、それでも達成するフリを見せないごご機嫌を損ねて飛ばされると感じてひたすらに言うことを聞き続ける、それが商品の劣化につながり崩壊の時期を早める可能性が多分にあると知っていても。

 その経営者が凄いのはそれだけじゃなくって、さすがに見かねた従業員の人たちが経営の酷さを逐一書いてまとめあげ、面前と向かって退任をお願いしたものの当の社長は出した計画の無理無茶無謀さが問題になっているんだってことをまるで理解しよーとはせず、そーした計画を立てた真意が十分には末端にまで行き渡っていないことが問題なんだと言って逃れよーとする。違うって、問題は意志疎通が不十分だからじゃなくって意志そのものが不毛だから反対してるんだって。にも関わらずの言い抜けに、もはやその経営者、常識的な判断を出来ないくらいに混乱してるんじゃないかって思えてくる。これで意志疎通の円滑化をよりいっそう図るために会議を毎日にするとかって、言い出したら大笑い海水浴場なんだけど。言ってる? そりゃ大変。

 手前の無能は棚に上げ、無茶で達成不能な計画を掲げてはその達成に必要だからと社員の賞与をかっぱぎたい意志もあるよーで、かくも凄まじい経営者を冠に仰いで一体どーすりゃいいの、って社員の人に聞かれれば、もはや内部で如何ともしがたいんだったら、外圧を使って揺さぶりをかけるのが常套だって答えたくなるけれど、その経営者の営む会社ってのが割に知られた会社の兄弟会社的位置づけにあって、業界的な認知度はまんざらではないにも関わらず、一般的な知名度って点だとまだまだ遠く及ばないってところで、そんなマイナーな企業を記事にする余裕も興味もないってことが、外圧として揺さぶりをかけてくれそーな週刊誌やら月刊誌といったメディアを、未だに振り向かせられないまま現在に至らしめている、みたい。なのでまあ、無茶な計画で突っ走った結果必然として訪れる破局に向けて、身辺を荒い貯金を使わず朝昼晩をおにぎり3個で過ごしながら、Xデーを待ちなさいと他人事のよーに言っておこー。ソーセージはつけちゃダメ?


【9月25日】 涼宮ハルヒの無意識無自覚なうちに宇宙を手玉に取ってる女王さまっぷりは世に多数の信者を生み出したよだーけど、岩田洋季さん「護くんに女神の祝福を」(電撃文庫、590円)のヒロイン・鷹栖絢子の絶対的に無敵なパワーとそれに反比例するかのよーな純情ぶりもこれまた圧巻で、その強さその可愛さに近寄ってギュッと抱きしめたら投げられ叩き付けられ地面へと頭をめり込まされ、最後にギュッと踏みつけられたけど見上げて2本の足の付け根にのぞく真っ赤な三角がなおいっそう僕達を、鷹栖絢子さまのファンへと、否、下僕へと立場をのめり込ませていくのです。

 何でも世界中に偏在する粒子だか分子だか分からないけどとにかく凄いエネルギー源になる「ビアトリス」が何故か使えるよーになった少年・吉村護がそーしたビアトリス使いを集め養成しては世に送り出す大学の付属高校へと転校した、その日に桜の木の下たたずむ少女をみかけてその美しさにしばし見入っていると、見とがめた少女が近づいて来ては何かご用とピリピリした雰囲気で聞くものだから迷った護はとりあえず笑って頭を下げ、辞去しよーとしたら追いすがった彼女が名前を聞くものだから答えてさらに彼女の頭に散った桜の花びらをとってあげたのがもののきっかけ。クラスに入って放課になってクラスメートと談笑していると、そこに朝の桜の少女がずんずんと入ってきては護に真っ赤な顔で手を突いた机を粉々にしながら「私と付き合いなさい」と告げたことから、護のとんでもない学園生活が始まった。

 何でも世界で3指に入るビアトリス使いだった彼女こと鷹栖絢子は幼いころから明晰な頭脳と圧倒的なパワーで日本を救い世界を震撼させて来たんだけど、その評判が徒となってか言い寄る男はまるでなく、本人にも興味がなかったのかこれまで恋愛経験ゼロって日々を送ってきた。物語はそんな純情乙女が護を相手にした時に見せるどぎまぎした様子のおかしさと、一方で悪人たちや自分をからかう生徒会の面々(の特に絡んでくる副会長の周藤汐音)を相手に繰り出す圧倒的なパワーの凄さの連続技が読んでいてのけぞるよーに楽しく、さて次はどんな醜態をさらしてくれるのかと興味いっぱいに先へ先へと読んでいける。

 案外にショボい事件に苦労しあまつさえピンチになってしまう辺りがスーパーヒロインにあるまじき失態と思えないこともないけれど、まあ恋にボケてたり相手を労ろうって気持ちがあったりすると迷いも弱さも生まれるもの。いわば”人間らしく”なったってことで、そんなヒロインが”最愛の”護といっしょにどう変わり、またどう強くなっていくのかを楽しみながら読んで行きたい気持ちでいっぱい、なので是非に続編と岩田さんにはお願いし、イラストの佐藤利幸さんにも真っ赤な三角を今度は口絵カラーで、いやさ表紙でバーンとお願いします。しかし何で赤?

 何かと話題沸騰の加藤あいさんが「愛知万博」関連で霞ヶ関とかあちこち訪問するって話に勇んで経済産業省へとかけつけたくなったけれどそこはインテルが全国大学生活協同組合連合会なんてところと組んでセントリーノがどーとかいったテクノロジーの組み込まれたパソコンを、いたいけな新入生へと売り込むって記者会見を行うってんで「赤坂プリンスホテル」へと回る羽目とはって、距離にして500メートルとかそんなもんの官邸で我らが加藤あいさんが、喧噪からか妙にやつれて凄みの出てきた美貌にまみえる機会を逸する。残念至極。だけどきっと「愛知万博」が開かれる再来年まではあちらこちらに出てくるだろーから見る機会もまたあるだろーと期待してその時を待とう。岡田有希子さん堀江しのぶさんと続く愛知出身アイドルの悲劇に遭わなければだけど。

 それにしても生協なんてゲマインシャフトだかゲゼルシャフトだかコミュニティだか知らないけれどともかくも米帝あたりとは対峙してそーな団体がこともあろーにインテルなんぞと組んで無線LANの技術とか搭載したノートパソコンを売りまくろーなんて考えていたとは意外とゆーか何とゆーか。とは言えそんな米帝のジッポライターの校章入りを生協で買った記憶もあったりする訳で、パソコンもジッポライターと同様に学生にとって日常的なツールと化していて、生協が間に入って売りまくっても目くじらをたてる時代でもないんだろー。でもって学生は知らずインテルとセットのビル・ゲイツ様の軍門に下ると。洗脳はじわじわと始まっているのです。

大会が開催される前から存在そのものが消えてた「ワールドカップ日韓大会」のえっと既にして名前も出てこない3体のキャラよりは真っ当かも  一方で東京大学が1000台以上の「iマック」を情報教育の授業向けに導入するなんて話があって、それはそれでアップル好きとして嬉しいことなんだけど、「iマック」でパソコンの動かし方を覚えた東大生が4年経って社会に出るとき面接で「パソコンは使えるか」「はい、アップルですけど」「帰れ」ってことになってボロボロと就職試験に落ちたらそれはそれで面白いかも。日本に唯一最後に残っているブランド大学「東大」だからそれはないとは思うけど、会社に入って短大出たてのOLに「パソコンも使えないのかい、このノロマ」ってしばかれたりして。それはそれでちょっと良いかも。それにしても異論は数あれ世にツールのデファクトとして定着しつつあるウィンドウズを袖にしてまで「iマック」を導入する真意は何なんだろ。決定権者がアップルに深く馴染んでたってことなのかな、コンピューター廻りでうごめく教員陣ってアップル好きそーだし。

 新橋で自在に変形可能なDVD(星形でも服の形でもキャラクターの形だってオッケー)の発表会見を聞いてから銀座へと歩いていく途中でなにやら緑色の得体の知れない物体が歩いているのを発見して近寄ると加藤あいさん、じゃなくって加藤あいさんが宣伝していた「愛知万博」のマスコットキャラクターのモリゾーとかゆーのでなるほど、「松坂屋」の前ってことで愛知県が「ソウルオリンピック」の屈辱以来、諄々とため込んできた”名古屋飛ばし”の怨念を一気に晴らすこれが好機と捉え愛知資本が頑張っているんだなー、なんてことを思い浮かべて近寄り心で頑張ってと言う、コンパニオンのお姉さんに。「モリゾー」? 知らないよこんなムックの出来損ない。でもなあ、見ているうちにちょっぴり可愛くなって来るから不思議なんだよなあ、人間ってこーしたムクムクしたのに弱いのかなあ、最近はNHKの「どーもくん」だって可愛く見えるもんなあ。

 前の話がどーだったのか既に記憶から欠落してしまっているけど面白かったって印象はうっすら残っている砦葉月さんの「シンフォニアグリーン」の続編「千年樹の町」(電撃文庫、690円)が登場、森が町そのものを作る重要な存在となっている世界を舞台に千年保つ街を作れる樹の種を持って植える場所を探して歩いている領樹の守族の少年エンが、たどり着いた砂漠の町でプラントハンターの少女とかその弟子(若いのに弟子がいる)とかと交流しながら、一生をそこで過ごすことになる千年樹の終の棲家を得るまでの心理的な迷いと決断を描いていて、人生ってものへの心構えを感じさせてくれる。すべてが樹に依っているのかと思いきや、独立して生きることも決して不可能じゃないってあたりが示され、樹とともに生きる人たちのいわゆる人間とは違う部分のあることもほのめかされてて、世界が最初っから樹との共生を前提にしていたんじゃない可能性が伺われて、だとしたらどーゆー成り立ちだったのか、って興味も浮かぶ。異世界ファンタジーを超えて壮大なSF的な物語だったりするのかも。シリーズを一旦お休みって作者の後書きが残念だけど一旦だからそのうちの再会を信じて世界が解き明かされるその時を待とう。


【9月24日】 とめどなく板東真紅郎さん「海の上はいつも晴れ」(メディアファクトリー、580円)はイラストが独特。パステル調って言われそうな色遣いにミュシャとか持ち出されそーなアールヌーボーっぽい画面構成でおっきな目をした頭身のちゃんとあるキャラクターがポーズを取ってるDKさんのイラストは帯で隠すのがもったいないくらいだし口絵も折るのがもったいないくらい。細身のくせに胸とかお尻とか出るとこ出過ぎな女性キャラクターが最高。機本伸司さんの「神様のパズル」も良かったけどこっちは挿し絵もいっぱいあって楽しめます。「新造人間キャシャーン」もやっているのか。どんな感じになるんだろ。「日米で映画・アニメのキャラクター設定などに幅広く活躍」ってどれがそーなんだろ。

 本編はふとした弾みで異世界に飛ばされた少年のてんやわんや、ってまあ聞けば伝統的な滑り出しだけど、飛ばされた先でそのままの格好で動き回るんじゃなく、容姿がまるでそっくりな海賊の美少女になりかわった上でその海賊の美少女が呪いでもって変えられてしまった鳥を侍らせ、お姫様に支え敵を相手にしつつ元いた世界に還る方法を探して歩くってあたりが独自かも。あと名誉ってのが重んじられてて世界に生きている人っちの存在そのものが名誉に支えられているよーな所もあって、その辺りが鍵となって物語の展開にも、ひ弱だった少年の成長にも絡んで来そー。冒険はしばらく続きそーでDKさんのイラストも含めて先に期待。夢落ちとかにはするんじゃないぞ。

 異世界行き、って意味では重なる杉原智則さん「ワーズ・ワースの放課後」(電撃文庫、570円)は学校で授業を受けていた中学生の少年がふと気が付くとそこは異世界ファンタジーの世界で自分は王子さまなんだけどその世界で暮らしてきた記憶は失っていて、ってか代わりに中学生の意識が入っていて訳の分からないまま配下の人とかお后候補とかといっしょになって世界を脅かす存在に対峙する羽目になっている。ただいつまでもそこにいる訳じゃなくって大半は現実世界の方に意識があって、そこでは幼なじみの少女とそれからこれも古い友人の少年との、三角関係的な間柄に悩みもだえているって寸法で、ともに本気出して何かをせず慎重さと臆病さが同居する性格を引っ張ってうだうだしているうちに、起こるさまざまな出来事に直面していろいろ自分で考えるよーになっていく、って感じで進んでいく。

 少年を軸にどーして世界が重なり合うのか、ってあたりの説明がその分不足していて読んでいてもどかしさを覚えるけれど、何かをきっかけにした少年の成長、ってあたりを主眼にして世界を現世なり異世界なりと動かし少年の気持ちを揺さぶろうとしている話と読めば、理由はとりあえず後回しでも良いのかも。ただ異世界の方は見る人の気持ちが存在を支えるよーな作用があってその結果、異世界から紛れ込んできた人間もいれば異世界から紛れ込んできた戦車みたいな武器もあって、そーした精神的なファクターをどう扱うかが絡む展開は、名誉が展開を左右する「海の上はいつも晴れ」と同様に物語の上に新しいビジョンを見せてくれるかもしれない。まずは前編ってことで続きでの解決編(になるのかな)に期待。夢落ちだったら投げる。いやちゃんと少年の成長が描かれていればそれで良いんだけど。

 いつか書こうと思いつつ絶対に書かないだろー「300万部小説」はそれとして、こっちはもーちょっと現実味を帯びてやってみたいと思っているギター演奏だけど、カタログを見てはオベーションのエレアコが良いとかやっぱりエレキでテレキャスターだとか、騒音を機にしてヤマハのサイレントギターが良いとか迷ってはいても現実的には本に埋もれてどんどんと狭くなる部屋にきがねして、未だ買えず当然ながら弾くこともできずに今へと至ってしまっている。あとやっぱりフレットを押さえるなんて芸当をこの歳で出来るかってゆー不安もあって、だったらヤマハが出してきたフレットの弦を押さえるんじゃなくボタンを押すだけでコードを出せる「EZ−EG」にすれば良いんじゃないかと考えたものの、これだって大きさはギター並にデカくってやっぱり買うのに躊躇してしまう。

 そんな貴方に、ってゆーかつまりは僕にもしかしたら最適じゃないか、って思える商品が知育玩具のピープルから発売になるってんで会見へ。その名もそのまま「持ったときから、弾ける、唄える。」ってなってる製品は、形はギターなんだけどネックは短くコンパクトで、遠目には「ぞうさんギター」かマンドリンって感じでコンパクト性は十分。演奏に関してはさらにお気楽極楽で、カセットを入れてスタートを押して流れ出てくる音楽に合わせて6本ある弦をじゃらんと弾くと、音楽のコードにぴったりの和音がべろんと流れてギターを弾いてる気分にさせてくれるし一緒に唄だって唄いたくなる。カセットは「モーニング娘。」から「中島みゆき」から演歌からフォークソングからロック、アメリカンポップスまで多種多様で、本体1台にカセット何本かを持って出かけて取り出せば、その場で”弾き語りカラオケ”を楽しめる。松戸の駅前とかで弾き語ったら目立てること請け負いです。

 だってそれじゃーカセットに入ってる曲しか出来ないじゃん、って人にはオリジナル演奏機能が利用可能。ちゃんとコードを鳴らして自作の曲もカセットに入ってない曲も演奏できるんだけどここで注目がそのコードを鳴らすしくみ。ギターは弦を押さえなくったいけないし、「EZ−EG」だってボタンを難しい指遣いして押さえなきゃコードは出ないんだけどそこは名前からして「持ったときから、弾ける、唄える。」新製品。左手で押さえるのは「C」だの「D」だの「A」だのと書かれたボタン1個でこれに「シャープ」「フラット」を付け加えるボタンを合わせて押せばたいていのコードが出せるとゆーから吃驚仰天。あの死ぬほど辛い「F」だってボタン1個ってんだから挫折なんてしよーがない。音色に関してはヤマハが「EZ−EG」なんかでも使っているものがそのまま応用されているんで厚みも万全。問題はアウトプットが付属のスピーカーだけで、ヘッドホン端子もついてないんだけどそこはピックアップでも買ってスピーカーの横にとりつけて、アンプにつなげば雑踏でも目立つだけの音を出せる。1万7800円とカセット1本2000円で明日からあなたもストリートミュージシャン。誰かやんない?

 脳に秘密あり。ってことで未だ全容の解明されない脳の変化がもたらす人間の進化を描いたSFってのは過去にも数えれば山ほどあるから新奇性って感じをそれほどは抱かなかったけど、集英社の「2003年度ロマン大賞」を受賞した杉江久美子さんの「グリーン・イリュージョンズ」(集英社、514円)は中学生くらいから読める文庫のパッケージに、脳とか進化とかクローンとかいったSFチックな設定をちらりほらりと覗かせそーした分野へと興味を抱かせる窓口になりそーな内容を持っていて、かつて眉村卓さんとか光瀬龍さんとか福島正実さんのジュブナイルSFを読んでSFってジャンルにズブズブと入り込んでいったのと、同じ事態を読んだ人たちに巻き起こして欲しいしそーなる可能性があるんじゃないかって期待を抱かせる。まあ誘導する人とかがいればだけど。

 近未来、人には見えない不思議なものが見える少年がそれまでは違和感こそ抱かれながらも普通に生きていたものが、ある日突然周囲の人から襲われるよーになってしまい、同級生の少女からも襲われる事態に逃亡を図ってどーにか通っていた研究所へと逃げ込み、自分がそれまでの人類とは違う「新世代」であるんだと教えられ、かつ同じ「新世代」が世界中で次々に殺されていることを教えられる何が起こっているのか追求していくうちに、かつて行われた謎の実験が現在に様々な影響を及ぼしていることを知る。スペクタクル気味のクライマックスに差し込む光明と悲劇的ながらも可能性として示唆された救い読後にほっとした気持ちを感じさせてくれる。コバルトでは異色っぽいけどキャラとか雰囲気に流されない、土台のしっかりとした世界と物語を描けそーな才能。すくすく育ってざくざく女子中学生を読者に獲得してSFへと人を送り込んでくれたら嬉しいかも。SF大会でお近づきになれるかもしれないし(なれねーよ)。


【9月23日】 ゴメンやっぱり泣いてくれタンポポちゃんエーデルワイスたん栗華さんヒヤシンスさま。今年でいっちゃん素晴らしいアニメーションと心惹かれる女性キャラクターに9月19日の時点で「住めば都のコスモス荘 すっとこ大戦ドッコイダー」のコスモス荘住人にして宇宙A級犯罪者どもが君臨していたんだけど、「LASTEXILE」の第25話「クワイエット・ムーブ」でクラウス・ヴァルカの今までの女性遍歴をたどるかのよーに居並び登場してはグランドストリームまでのヴァンシップ・リレーでナビを勤めた美少女キャラクターたちの可憐さ可愛さと、常に画面センターに立っては居丈高なポージングを取り天使の表情と悪鬼の心で世界を蹂躙するマエストロ・デルフィーネ様のハマーン・カーン様に匹敵するダークヒロインぶりに、やっぱりこっちを今年ナンバーワンに位置づけたいって気持ちがむくむくと浮かんで来てしまった。21世紀ベストにだって確実に入りそー。でもやっぱりトップは「灰羽連盟」だ。オサレ部門なら「L/R」だ。「ナースウィッチ小麦ちゃんマジKARTE」はオープニングが大好きだ、手拍子んとこ。

 帰還したノルキアから「シルヴァーナ」へと連絡を取って大人(バストと読む)の魅力でいたいけな少年を手玉に取ったソフィアさんからグランドストリームへと来いって言われたクラウスが、まずは指定された第一中継地点へ向かうとそこには駅伝のよーに乗り継ぐ次のヴァンシップが係留され、後部座席には薄幸(別に何か描写があった訳じゃないけどでも幸、薄そーなんだよね、タチアナをクラウスに取られたりして)の美少女アリスティアがいっそうなめまかしくなった姿態をピチピチのスーツに包んで待ち受けていてまず感動。続いてそのヴァンシップへと乗り換えたクラウスを前に後ろにはアリスがアルヴィスをだっこして次の中継地点へと向かうとそこにはすっかり年相応に可愛らしくなったタチアナがはにかんだ表情を浮かべうつむき加減で待っていてグッと来る。

 しばらく会ってなかったアルに「怒ってる?」って言われてタチアナ可愛そう、なんて思ったもののそこは子どもならではの残酷さと受け流し、襲い掛かるギルドの星形を相手にすると途端に依然のクールな美貌を取り戻してはクラウスにてきぱきと支持を出すタチアナの気丈さに改めて惚れ直してさあ、いよいよラストのリレーってところで当然のよーに待ち受けているラヴィ・ヘッドとの再会シーンの、いろいろあったけど私たちやっぱり繋がってるのね的高揚感とそれからすっかり手直しされたクラウス&ラヴィにとってはオリジナルとも言えるヴァンシップが、ハンガーに鎮座し発進を今かと待ち受けているシーンのはまりっぷりに、ここまで重ねてきた冒険と戦いと愛別離苦のさまざまなドラマがぎゅっと1点に集約しては一気にはじける感覚を覚えて涙が出そーになった。

 おまけにラストに向けてさらなる波乱かそれとも……って要素をちらりと見せて引きへとつなげるシナリオ&演出の憎らしさ。いよいよ迫った「エグザイル」とそれを操るデル姉との決戦が、レプカ操る「ギガント」に挑んだコナンの痛快さとかドレイク・ルフトのオーラシップ「ウィル・ウィプス」に突っ込んでいくショウ・ザマにマーベル・フローズンの悲壮さに、連なる感動のフィナーレを見せてくれることをひたすらに願おー。白色彗星に特攻かけるヤマトにはなって欲しくないなあ。なっても女性ヒロインだけは全員無事でついでにデル姉も改心して庶民になってノルキアでディーオと2人、店でも営んでくれれば心暖まるんだけど。でもどんな店? やっぱり女王様?

 ふと調べて「今畝」が「METHODS 押井守『パトレイバー2』演出ノート」の復刊でも直っていなかったことを知る。いくらなんでもマズいんじゃ。重版でも直ってなかったら東京神父様の怒髪が点を衝きかねない。それはそれとして着々と藤原祐さん「ルナティック・ムーン」(電撃文庫、590円)。人間の中に手が蟹鋏になったり足に鱗が生えたりと変わった部位が生じる「変異種」が混じるよーになっていく年月、巨大な塔に純血の人が集まって暮らし一部の純血は管理を嫌って森へと入って暮らしている世界には、ときおり「ケモノ」と呼ばれる怪物が現れ人間たちを襲うよーになっていた。そんな「ケモノ」に対抗するために集められたのが「変異種」の中でも戦闘能力に長けている上に普段は変異の箇所が隠れていていざとゆー時に現れたりする能力を持った「ウェポン」と呼ばれる者たち。中でも「稀存種」と呼ばれる存在はその圧倒的な戦闘能力で「ウェポン」を率いて「ケモノ」を相手に日々戦闘を繰り広げていた。

 そんな世界を舞台に物語りは、塔の真下にあるスラム街に暮らす名前を持たないイルという名字だけで呼ばれる少年が、出生の秘密を知り眠っている力に目覚めていくまでが諄々と語られる。力の覚醒あるいはビルドゥングスロマンって設定だけなら探せば割にありがちな話ではあるけれど、知り合いになった少女のたどる非業の最期とか、地域にボスとして君臨している父親とその娘で少年とは腹違いの姉にあたる少女をめぐっての心理的に奥深い描写とか、いろいろと織り込まれた人間ドラマが話に深みと広がりをもたらして分厚いページを退屈させずに引っ張っていってくれる。表紙になってる腕が棘肌になってる少女の位置づけが今ひとつわかりにくいのと、「稀存種」とゆー類い希な力を持ちながらも数の少ない面々の世界における立場がただの雇われ人なのかそれとも別に遠大な企みがあってその手駒なりになっているのか、見えない辺りが気にかかる。きっとありそーな次巻あたりで明らかになっていくのかな。

 ひょいひょいと葉山透さん「ナインエス」(電撃文庫、670円)。出生の事情から肉体的精神的にとんでもない能力を持って生まれてしまった少女が地下室深くに全身を拘束されて閉じこめられている、ってまるで「エルフェンリート」のにゅうを想像してしまったけど頭に傷を負う前のにゅうみたく残虐極まりない精神は持っていなくって、自身に秘められた天才科学者の遺産を外には決して出さないために、自分の意志もこれありで施設に閉じこめられていた。そんなある時、今は亡き天才科学者が別に作った海上に浮かぶ完全自給が可能なエコスィアにテロリストが進入してはそこにあった超最新のコンピューターをハッキング。世界を危機に落としか入れかねない行動へと乗り出したことで地下深くに拘束されていた少女が解き放たれ、テロリストに対峙するためエコスィアへと送り込まれる。

 超絶美貌に超絶身体能力に超絶頭脳の揃ったヒロインってのがとにかく格好良く、おまけに性格もちょっぴり普通とは違うもののそれなりの思いやりとか持っていて、エコスィアを脱出しては彼女といっしょに奪還へと臨む、これまた出自にいろいろあってなおかつ心にとんでもない秘密を持っている少年の願いも聞き入れ行動するよーにしているあたりに、異常さ奇矯さ殺伐さばかりが強調されたキャラクターが溢れかえってる最近のヤングアダルトの中でも読んでいて気持ちにザラつき感が出ず安心して読んでいける。出自にいろいろとある少年の妹で世界を2分するくらいの家のナンバー2の少女の優しさと頑固さと冷酷さが混じった造型もなかなか。世界にごまんと遺された天才科学者の遺産はまだまだあちらこちらで暴走しそーで、そんな事態に「ナインエス」でどばどばと繰り出されたキャラクターたちが再び結集しては挑む話なんか、読めたらとっても嬉しいかも。これまた分厚いけどテンポの良さ、キャラの立ちっぷりで一気呵成。良い本です。

 ジーンズ&タートルセーター最強、ってことを確認した鶴田謙二さん「フォゲットミーナット」(講談社、857円)。祖父の遺言で探偵稼業をついで祖父の家から盗み出された絵を見つけたら遺産をがっぽりもらえることになってる伊万里マリエルが、水の漂うベネチアで探偵稼業に勤しみライバルの怪盗相手に頑張る連作がよーやくまとまった1冊で、情緒あふれるベネチアの街の描写やくるくると変わるマリエルの表情、しっかりと組まれ落ちてる話の面白さでもトップクラスに入る漫画だけど、でもやっぱり目はお尻のラインにそってピッタリとはりついたジーンズとか、タートルネックセーターの胸元を内側からこんもりと盛り上げる小山へと向かってしまってその姿態にむしゃぶりつきたくなる。きっと柔らかいんだろーなー。

 下着姿でゴロゴロとしているあけっぴろげな感じももちろん最高で、女体をどー描きどんなポーズをさせれば読者が喜ぶか、ってあたりを見事に衝いてくる鶴田謙二さんの絵描きとしての凄さに改めて感動し感涙にむせぶ。飲んだくれの浮浪者に化けてもひげ面の老人に化けても胸だけはしばらずまんま谷間に小山を見せるマリエルの、その考えってのが分からないけどビジュアル的な倒錯ぶりはなかなかで、目に良い、ってのとはちょっと違った微妙な感慨を与えてくれる。やるなあ鶴田さん。エマノン的なやんちゃっぷりが出ているマリエルの顔も良いけど彼女を訪ねてきてはそのまま祖父の屋敷のメイドになったナナちゃんのショートな髪型と目元の黒子がポイントな顔も好み。ショートでも面がやや細身なマリエルの妹でプロ野球のピッチャーなんて役所の真鈴も良いねえ、両膝のフライングニーパットを喰らっても抱きつきにいったキャッチャー谷髯の気持ちも分かる。そのまま倒れて上に真鈴が尻からドスン。きっと至福の時だったでしょー、一瞬だけど。


【9月22日】 でもってすずきあきらさん「AZUCHI 剣の左京」(朝日ソノラマ文庫、552円)。のけぞる表紙の忍者風少女がキュートでグッド、胸ないけどそれがまた。物語は織田信長が本能寺で明智光秀に討たれないまま中国を蹴散らし小田原を攻め四国を占領しては最後に残った九州を平定しよーとしている時点から始まって、実在したらしー信長の11男の織田長次を主軸にこれまた実在した9男の信貞のプロフィールなんかも織り交ぜ造型した左京亮ってのを主人公に、本能寺で生き延びた信長がどー日本を変えていきそれがどんな意味を持つのかってのを、左京亮が見た目線と左京亮が感じた印象から語らせていく。

 明智光秀の養子出されて幾年月。大人になって初陣した左京亮は、陣中にあった信長に面会した際にムラムラと覚えた反抗心から信長へと飛びかかったものの妨げられて斬首の危機に。そこを徳川家康の機転で命拾いし蟄居・謹慎の身となり、安土城へと移送されて明日にも切腹の沙汰を待ちながら、持ち前の旺盛な好奇心から城内をめぐって美少女と恋に落ち、城下を回っては友情を育み南蛮渡来の新しい品々、民衆の心に触れて成長し、やがて忍び寄る闇の勢力にも、信長譲りのパワーと機転で挑んでいく。

 歴史パラメータの変動が及ぼす影響を子細にシミュレートしては余さず描写していく一方で、繰り広げられる人間ドラマが後退していってしまうこともある歴史改変ものだけど、そこはヤングアダルト文庫だけあって左京亮の成長に主軸がおかれてドラマが進んでいくなかで、日本が信長によってどう統治されたかをおおよその形で描いてあるだけなんでわかりやすい。大名たちをやがて疎み始末しよーと企む信長の発想の短絡ぶりとか、同じく大陸へと攻め込もうとする強引ぶりとか、信長だったらやったかどーか微妙な政策もあるけどそこはそれ、主人公の左京亮をより明晰な人物として描くドラマの為と心得れば納得もできる。大陸出兵を諫める左京亮の言葉は単純だけど真理を突いててなかなか。今へと続く日本とアジアの関係を考えさせられます。闇の勢力をとりあえず退け現実とは違った明日へと船出したエンディングから100年後、200年後の日本がどーなったのかを知りたいところ。でもやっぱり100年遅れで徳川が幕府を開いてそーだな、出てくる中で1番頭、良さそーだし。

 ずんずんと竹岡葉月さん「なかないでストレイシープ」(集英社コバルト文庫、495円)を読み終える。父との折り合いが悪くて飛び出した青年が女性と知り合い結婚して娘が生まれたものの青年は早死にして遺された女性は苦労して娘を育てたもののこれまた事故で逝去。遺され途方に暮れていたところに現れたのは美貌で切れ者の青年で、曰く少女は貴族の孫娘で跡継ぎとして迎えたいのでニューヨークを出て英国のお屋敷まで来てくれってゆー、川原泉さん「笑う大天使」の史緒さんのエピソードみたいな出だしで始まった物語は、数年経って貴族の暮らしにそれなりに馴染んだものの今度は持ち込まれる見合いの話に辟易としながら送っている日常に、突如起こった騒動でもって進んでいく。

 貴族ながらも庶民育ちのセリアは貴族の義務とかいったものとはとんと疎い暮らしぶりで、使用人に混じって庭を駆け回り近所にも平気で出かける始末。そんなある日、セリアが漕いでいた自転車でぶつかって記憶喪失になってしまい、介抱するために屋敷へと招き入れた青年にセリアの気持ちが揺れ動く。挙げ句に家名に及ぶ大事が起こってしまうんだけど、興味深いのはこーゆー話によくある「庶民vs貴族」って単純な図式にはなっていない点。貴族には貴族の事情ってものがあってそれを守ろう、維持しようとする意識が結果として庶民的な感情にそぐわない事態を引き起こしてしまうんだってゆー指摘があって、その上で貴族が守るべき名誉なり果たすべき義務といったもの根元を、育ちから慣例といったものにとらわれないセリアの視点で見つめ直して、庶民も貴族もともに前へと進んでいこうって開かれたエンディングになっていて心に心地よい。SFでもファンタジーでもない新機軸。スピードも凄いけど中身も伴っているのがさらに凄い。けど「フラクタル・チャイルド」シリーズの続きも読みたいなあ。

 なおも佐々原史緒さん「バトル・オブ・CA3」(エンターブレイン、640円)を一気一気。こんなときどんな顔すればいいのか分からないと言って笑うと良いと思うよと言われた綾波レイの笑顔がテレビの本編でも総集編じみた劇場版でもそれなりな顔(ってか劇場版は極上の笑顔)になっていたけど笑い方をろくすっぽ知らない人間が、笑えと言われてはいそうですかと笑えるかってゆーと大いに疑問があって、現実はいったいどーやって笑うんだろー、そもそも笑うってどーゆーことなんだろーと思考した上で笑うとは口の端を上に上げることかと結論づけて挑んだあげくにただ「いー」と口の形がなってるだけの、はためには引きつっているよーにしか見えない顔になるんじゃないのか、ってことが新しく赴任して来たマネージャーからサービスは完璧だけど笑顔が足りないと指摘されたイゾルデがコンラッドに実地で訓練してもらってもなお不気味な顔しかできなかった事実から伺える。

 話はそんなクールビューティーのイゾルデが頑張って笑顔を取り戻す、なんて話じゃなくって地球人が作った宇宙船のカソリック号に見た目はまんま樹木ってゆー宇宙人が乗り合わせることになってコンラッドもイゾルデも含めてカソリック号の面々が苦労をして世話をして、起こる事件を解決していく展開がメインで、その中にキャビンアテンダントって仕事は何なんだろー、ってな基本とも言えるテーマが盛り込まれている。まんま樹木なのに自分の意志をちゃんと持ってて翻訳を通せばヒューマノイドとだってコミュニケーション可能で地力で動こーと思えば動けたりする、奏でる音楽は全宇宙を感動させるラグラッタ人ってのがなかなか。生物学とか考えた時に存在し得るのか、ってあたりに疑問も出るけどそこは実在性と問うより存在し得ると仮定した場合におこる諸々を空想する楽しさを優先して物語りを盛り上げる、古き良きSFの系譜と思えば気にならない。エンディングで示唆された出来事は気になるけど。急展開を見せるのかな。

 思えば10年以上も昔に同じ場所でエニックスが株式を店頭公開しつつ「少年ガンガン」って雑誌を創刊するって話を聞いて、エニックスの看板だった「ドラゴンクエスト」関連の漫画がメインのよーだけどどこまでそれで引っ張るのか、それで果たして大丈夫なのかって質問をした記憶があるけれど、10年ちょっとが過ぎて現れたエニックスとも「ガンガン」とも縁やゆかりも結構深いマッグガーデンの社長の人が示した雑誌「コミックブレイド」には「ドラゴンクエスト」はもとよりゲームってものの匂いが表だってはまるでなく、純粋に面白かったり格好良かったり可愛かったりする漫画が新しい名前とともにギッシリと紹介されていて、頑張れば下地がなくても出版社は興せて新しい作家とジャンルは育て作り上げられるんだってことが証明されて既得権益がどーのと迷っている漫画出版希望の人に、ひとつの成功例を示したって言えるのかも。目論見書にずらりと株主として並んだ漫画家さんの名前を見るにつけ、経営と作家がともに手を携えて業界を切り開いていくって可能性がここに実地で示されてるんだってことも伺える。大資本下で下請けっぽく働き流行とともに切り捨てられる漫画家稼業への、新しくって正しい道があるのかな。面白い漫画のために是非に成功して欲しい試みだし、後に続く会社があったらなお喜ばしい。


【9月21日】 本気なの? って思ったのは「FIFA女子サッカーワールドカップUSA2003」のオープニングゲームに出てきたノルウェーとフランスの大会に臨む態度じゃなくって、大会をSARSでやむなく中止した中国から引き継いで主催した米国のスタンス。オープニングの会場となった「リンカーン・フィナンシャル・フィールド」に、くっきりと残ってしまっているアメリカンフットボール用のラインとか、サッカー用に拡張してあるためはっきりとは判別しづらいサイドラインが目に鬱陶しくって、サッカーのためだけに、って環境をどーして用意してあげられないんだろうって残念な気持ちになって来る。

 もっとも急遽日程を放り込んだからグラウンドをサッカー向けに手直しする間もなかったってことも考えられるし、見る方には鬱陶しくってもプレーする側にとって大事なのは芝生の状態に運営面でのサポートで、そこは世界をリードしていこうって意気に燃える国なんで、しっかりと行われているだろーと想像することは可能。開催そのものがピンチに立たされた時にサッと手を挙げ引き取った懐の深さには、むしろ感謝すべきなのかもしれない。日本はどーして手を挙げなかったんだろー。去年のワールドカップで大もうけしたお金の幾ばくかで開催できたのに。

 試合はと見ると女子サッカーに伝統のある北欧と男子では圧倒的なサッカー国のフランスだけあってボールはよく回るしシュートはちゃんと枠に飛んで迫力たっぷり。足下から足下へとボールを転がし合うだけのどっかの男子代表よりも動きがあって技も確かで、見ていたって楽しいのにどーしてこれが男子の興行に人気で毛ほども及ばないのかが分からない。願うなら今回の大会が去年から続くワールドカップの余韻の中で関心を集め中継で見た人がその面白さに気付き、日本でのLリーグへの盛り上がりへとつながってもらいたいもの。でも見て緊迫ってのはトップチームの試合だけだからなあ、5年後の底上げにつながることも期待。

 雨と寒さに出かける気力も失せて家でひたすらに昼寝と読書。秋口ぎぐるさんの「ロンドンストーリー 第3部 ヴィッキーと彗星」(エンターブレイン、640円)は1巻から妙ななめまかしさを発散していた新聞記者のヴィッキーくんがすでに明らかになりつつあったその正体を表紙と口絵でモロに見せちゃってくれていて、そのスレンダーななかにふくよかさを漂わせる胸元とか引き締まりつつも柔らかさを感じさせる腰からヒップのラインとかに心トキメき果たしてどんな活躍を見せてくれるのかって期待を抱かせる。眼鏡もポイント高いね。

 でもって内容はといえば近づく彗星を撃退する防衛機構を発動する鍵となるホムンクルスを巡って、登場するおのおのが思惑を持って動いてたものがクライマックスへと来て1点へと集約していく展開のなか、想いを寄せた相手を救うためなら自分が犠牲になっても良いって考え行動する少年や少女たちの優しさ健気さとか、気を張って努めて冷酷にふるまっているよーで内心には寂しさが渦巻く少女の哀しさとかが描かれ考えさせる一方で、優しげな雰囲気を醸しだしながらも内心に酷くエゴイスティックな感情を持っていた女性の怖さに触れて身が引き締まる。いよいよ発動した機構の絵では描かれないビジュアル的な迫力には驚愕。そのフリクリ的ビッグオー的なスペクタクルを良く動くアニメーションで見たいなー。

 続いて野村美月さん「BAD DADDY1 パパに内緒で正義の味方」(エンターブレイン、640円)。3時を指した時計をバックに、現れ出たる5人の美少女たちの、短いスカートも気にせずかける言葉が素晴らしい。「甘い暮らしを守るため」「おやつの時間を守るため」「愛と正義のお菓子屋さん」「スイート・パティシエール見参」「死ぬほど食べていただくわ」。以下めいめいが得意のお菓子技を披露しては学校からタイムカプセルを掘り返して奪ったり、スクールバスを襲っては困らせたりとご町内で悪さを繰り返す、悪の組織を相手に挑んでこれを撃退し、最後に1発決める言葉がまた最高。「おやつのあとは歯磨きよ」。おおおおお何という可憐さ。おおおおお何という甘やかさ。実写版「セーラームーン」なんか見ている場合じゃありません、ええありませんともさ。

 そんなヒロインたちが相手にする悪の組織もまた最高。秘密結社「流々舞」星凪町支部ってのが正式名称で率いているのは「戦慄のアルマンド」と呼ばれる超絶美形の司令官。戦闘員からはじめて出世街道をばく進し、29歳にして司令官の地位まで上り詰めた冷酷非情な悪の幹部でありながら、家に帰ればやさしいパパで13歳の娘を溺愛しているんだけど当の娘にとってはそれが我慢ならないよーで、仕事着のマントをフリフリさせては食事の支度をする父、部下を動かし悪事に勤しむ父をどーにかしたいと思っていたところに通っている学校で先輩から誘われ参加したのが「スイート・パティシエール」。かくして少女は正義の味方「ピンク・ミルフィーユ」として父と相剋の戦いを繰り広げることになったのだった。

 ヒロインの円城寺美夢にパパの円城寺勇介を筆頭に、美夢をとりまく「スイート・パティシエール」の面々とーいー、「流々夢」でアルマンドを支えるクールな美女の親衛隊長に世話焼きの司令官秘書にグルメな好々爺の魔獣開発主任といった面々といー、癖ありまくりなキャラクターたちと起伏たっぷりの展開を、流れるよーな文体で描く野村美月さんならではの魅力にあふれた逸品。今はいないヒロインの母親の謎とか気合いも入って星凪町征服へと乗り出したパパの繰り出す手とか先への期待もたっぷりで、早く続きを読みたいところ。書くのが早い美月さんだけにそっちも期待して良いのかな。でも「フォー・マイ・ダーリン」は続きが出ないしなあ。どっちでも良いから是非に。

 澤穂希の決定力が大久保嘉人以上と思う人の数。を数えたくなった「FIFA女子ワールドカップ2003USA大会」での「日本代表vsアルゼンチン代表」での2ゴール目は、サイドから入ったクロスを右のアウトサイドでちょこんと合わせてゴールへと叩き込む技ありまくりなシュートで、突っ込んでくるスピードといー確実にゴールを決めるテクニックといー、男子の代表の試合ではもう何年も見られないすっげえゴールシーンが見られて歓喜にうち震える。1点目のトラップしてズドン、って当たり前のシュートすら見られなくなって久しいんで、シュート練習なんかに時間を割く某代表監督にはそれより明日にもリーグがなくなるかもしれない米女子サッカーリーグにフォワード陣を放り込んでは澤選手とかのプレーを見させて修羅場の中でプレーする強さとテクニックを学ばせては如何。大久保選手だったら髪伸ばせばそれなりな美少女に見え……見え……るかな。


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