縮刷版2003年1月上旬号


【1月10日】 かけられてバスローブかタオルが関の山なふにゃふにゃとした取っ手くらいしかない浴室の、いったいどこに紐をかけたのかとか、激情型な人だったら突き合っていた女性と口論になった場合相手に肉体言語を持って一矢報いるもので、同じ警察沙汰でも切った切られたといった修羅場になって不思議はないのに、なぜか引き籠もって挙げ句に自爆してしまったのは分からないとか、謀略ものスパイもの推理もの土曜ワイドものが好きならいろいろ疑ってみたくなるくらいに「PRIDE」運営団体のトップの自殺は不思議で奇妙な事件だった。

 もっとも振り返って考えてみれば、そーした小説やドラマで描かれるくらいに陳腐な謀略シチュエーションでもある訳で、そんなことを真面目に仕掛けるなんてことはプロだったらとてもじゃないけど恥ずかしくって出来はしないだろーから、やっぱり謀略なんかに長けてないごくごく一般の人が、頭に血をのぼらせた挙げ句に自爆したんだと見ておくのがここは現実的なのかも。とか思わせて自分たちの犯行をかわそーとプロがさらに1枚上を行ったってことも考えられたりするから、やっぱり真相は藪の中、ともあれ名古屋でお世話になった栄電社(現エイデン)に縁のある人の死には、深く頭を垂れてそのご冥福をお祈りしたい。南無阿弥陀仏大奈舞都。

 日本でコーラをはじめて飲んだ人が薬臭いと思わず吐き出したらしいことは想像できるし、それよりはるか以前にコーヒーが入って来た時に飲んだ人が、強烈な苦さと焦げ臭に顔をしかめただろうことも想像に難くないけれど、さまざまな味覚が世の中にあふれてそれぞれに対する耐性も出来ている(青汁にだって出来てるんだから)現代の人間であるにも関わらず、お茶のそれも日本人にとってなじみ深い緑茶に対して薬臭いとか、焦げ臭いとかいった感想が半端に思えるくらいに強烈な感想を抱ける神秘的、かつ圧倒的な飲料体験が、この東京でできるとはちょっと予想もしていなかったよ、ああ驚いた。

お茶が緑でなぜ悪い  神谷町にある「御殿山ヒルズ」の1階にたぶん年末あたりにオープンした「KOOTS GREEN TEA」ってショップは、その名のとおりに緑茶を中心にしてさまざまにアレンジメントされたお茶を飲ませる店で、分かりやすく例えるならば濃いめのコーヒーにクリームやらシナモンやら何やらを加えて”お高級”に見せた「スターバックスコーヒー」の緑茶版。じっさいに木目調(あくまでも”調”を基本にした内装とか、緑色のトレードマークとかが「スターバックス」と重なっていて、てっきり「スターバックス」を運営している会社が新しいフランチャイズを始めたものだと思ったらこれが違ってて2度驚く。

 運営しているのは「スターバックス」のコーヒーチェーン的なライバルともいえる「TULLY’S COFFEE」を展開しているフードエックス・グローブって会社で、それが見た目「スターバックス」中身が緑茶なお店を展開して問題にならないんだろーか、前に確かドトールがやっぱり似た雰囲気の「エクセルシオールカフェ」を展開し始めた時に、意匠がどうとかってあれこれ揉めたんじゃなかったっけ、って思ったけれど同じコーヒーならまだしも緑茶なんだから間違われることはないし、よしんば間違えて入ってもメニューを見れば気づくだろーから問題なし、ってことなのかもしれない。それにしてもよく似たマーク、だなあ。

 珍しいものにはチャンレジ、ってのが元祖ながらも開店休業中の”出没家”(22回も書いてたのか)のポリシー、なんでポケットの小銭をチャラつかせて入ってメニューを見せてもらって、悩んだあげくにいかにもアレンジされたお茶っぽさ漂う「抹茶カプチーノ」って奴をもらってカップのキャップに開いた穴からひと口、すすって抱いた感想は!(以下次号)。いえ続きません、言います、不思議です、愕然です、衝撃的です、驚異的です、戦慄的です、圧倒的です、とにかく吃驚仰天です。スチームミルクの泡泡とした感じが舌に触れたと思ったら、すぐさま超濃い目に淹れられた抹茶がぬるりと口中に飛び込んできては、その苦さを舌へと突き刺しそのまま喉をイガイガとなでながら胃袋へと降りていく。

 やがて遅れて泡の方も入ってきてはプチプチとした感じに舌の上やら歯茎やらをいっぱいにしてははじけてミルクへと戻り、残っていた抹茶に被さるよーにしてぬるぬるとした感触に口中を染め上げる。風味豊か過ぎる抹茶に、たっぷりのスチームミルクを注いで仕上げた、抹茶の強烈な渋みとスチームミルクの生温さが並立して奏でる現代音楽的な響きは、コーヒーにミルクやシナモンやフレーバーを注いだ程度では決して出ないだろー。コーラ? 青汁? ドクターペッパー? 味としてありふれてる。強いていうなら抹茶をホットミルクで溶いて飲んだ感じか(まんまやねん)。

 ほかにも「抹茶アメリカーノ」とか「クロミツラテ」とか「抹茶ラテ」とかなかなかに神秘を感じさせるメニューも揃った「KOOTS GREEN TEA」。パーティーとか記者発表とかで「ホテルオークラ」に行く機会があったら途中にある店へと是非に立ち寄って、その驚くべき斬新さを堪能してみるのが良いだろー。チキンな人はおとなしく「本日の煎茶」とか「抹茶ストレート」でも飲んでなさい。浜名湖あたりにあるサービスエリアの給茶器だとたしか無料なお茶がここでは「本日の煎茶」でショート250円、トール290円と「ドトール」のコーヒーより高級なお値段で頂ける。抹茶ストレート250円。ショート追加は50円。壁紙で木目調に仕上げたくつろげる店内で籐椅子に座り「こにぎり」をつまみながら煎茶に抹茶を頂く至福の時間を過ごし、鋭気を取り戻したあなたは出がけにバリスターならぬ「ティーシェルジェ」(=日本茶に関する知識・技術・もてなしの心を兼ね備えたKOOTS GREEN TEAのお茶のスペシャリスト)に向かって叫ぶのだ。「グッジョブ!(結構なお手前でした)」。ところで「抹茶スピナー」って何が入っているんだろ?


【1月9日】 17分の6じゃなくって6分の17、つまりは6歳の体に17歳の記憶が詰まってるって設定だったら趣味的に激しい関心を持ってられたんだろーにと、炉で理が紺な人間的に残念な思いを抱きつつ、タイマーセットしたのはフジテレビで放映の始まった「L/R Licensed by Royal」の方。でもって朝から再生して見てみて、およそ予想していた雰囲気と内容にとりあえずは続けて見てもオッケーな作品と認定。こっちをメインに録画していき起きていられた時だけは「ななか 6/17」も見てあげよることにする。

 鼻つぶつぶな運転手が「ある時は片目の運転手」って感じのいかにもさで笑えるし、凄腕のエージェントが側にいる割には仕掛けにあっさりと騙されてしまう所も都合が良すぎるけど、背筋をただして伏線を追い状況を読みネットをあさって情報を集めてもなお分からない緊張感にせき立てられる一方で、まーそーだろーなと思い見ていてやっぱりそーだとうなずける気楽さもまた悪くない。顔の埋まるくらいに抱負な量感だったものがシャワーのシーンではなぜか、つまんで引っ張った程度の高さになっていて、あれっと思ったそれがそのまま伏線になっていたりしたのもまあ、分かりやすくて良かったです。

 「人魚の足」ってお宝にひっかけたラストのセリフの決まってなさとか、合い言葉で喋るシーンのわざとらしさ、セリフに被る音楽の煩さとか気にすれば気になる所も山ほどあるけど、敵キャラとして登場するチャイナドレスの姉ちゃんの見かけ倒しであってもプロポーションの良さには目を癒されたし、オープニングに登場する裸じゃないけどエプロン姿で踊る少女やらいろいろなキャラクターの活躍も楽しみ。頭脳担当のジャック・ヘフナーよりは肉体駆使のロウ・リッケンバッカーの活躍ぶりに興味。顔べりべりとはがす奴だからあれが本当の姿とは限らなかったりして、肉襦袢の中に実は6歳の女の子が入っていたりとか。

 リアル「まおちゃん」登場、じゃないけど今ならギリギリ実写で「まおちゃん」を演じてもらえそーな気がした「ナンバー」567号登場のフィギュアスケート選手・浅田真央ちゃん12歳。ほかに4回転の安藤美姫さんや鈴木明子さん、太田由希奈さんと並んでの登場なんだけど他が160センチ前後ある中でひとり、141センチの身長で小さくまとまっている上に顔も斜めからながら「まおちゃん」ばりに可愛らしく、この娘が例の衣装で手にバトンとか持ち3回転を3回つなげるコンビネーションジャンプを見せながら「防衛するであります」と唱えた日には、日本中がはせ参じては志願兵として国防に身も心も捧げることになるだろー。最近の娘は成長が早いからコスプレさせるなら早めに。無理なら変わりに大地真央さんに演じてもらうであります。

芥川賞と直木賞の候補が決定、勝手に上げるなら芥川賞は大道珠貴さんの「しょっぱいドライブ」が取るんじゃなかろーか、ここんとこ各新聞の文化面の時評でやけに取り上げられまくってたし。都立高校3年生の島本理生さんはなあ、話題集めかなあ、高校生っても19歳だし。直木賞はいずれ劣らぬ強豪揃いで予想する人は頭を抱えること必至。個人的には京極夏彦さんの「覘き小平次」(京極夏彦、中央公論新社、1900円)に狙いどおりに取って欲しいところだけど、今回が何回目のノミネートになるかってな奥田英朗さん「マドンナ」(講談社)も捨てがたいし、「このミステリーがすごい!」で1位だった横山秀夫さん「半落ち」(講談社)も強力候補。残る石田衣良さん「骨音」(文藝春秋)に角田光代さん「空中庭園」(文藝春秋)に松井今朝子さん「似せ者」(講談社)と知らない作家が1人もいない今回は、誰がとっても不思議じゃないって思える。理想は京極&奥田の2人だけどさてどーなるか、発表は16日。

 「このミス」といえば「このミステリーがすごい!」大賞の授賞式が六本木で開かれたんで仕事と偽って潜り込んで晩ご飯にありつこーかと思ったけれど、スタートした表彰式が宝島社の出版局長さんの、かつて飯田橋にあった書店「深夜プラスワン」に集った読書会のメンバーが、偉くなったら何かを生み出そうと誓い合ったことが20年を経て実現して感無量って挨拶から始まって、共催している三菱商事の人の「『このミス』はすでに確立したブランドだ」って聞くになかなかに微妙なセリフも混じった挨拶とか、NECの人の「BIGLOBEを使って250万人に宣伝しちゃいます」って聞くと凄いけど果たしてどこまで効果があるのか見物のピーアール作戦の宣言とかが続いてさらに、受賞した人たちへの表彰式に選考委員となった大森望さん香山二三郎さん吉野仁さんとそして茶木則雄さんも登壇しての選評&フォトセッションと続いてメモにカメラ取りに忙しく、とてもじゃないが晩ご飯をかきこむ余裕がない。

 それでも挨拶が終われば後は勝手な時間。大新聞の文化部の大記者さんたちに混じって受賞者のコメントを聞くなんて身分からしておこがましいと自認して、近寄らず来ているミステリーの重鎮も遠目にご尊顔を拝するに留めて、黙ったままでひたすらに壁の花を努めつつ、時折ヒット・アンド・アウェー的にテーブルへと近づいては、皿を取り食事を載せてかき込むことを何度か繰り返して、必要な分まで胃袋を埋めるとあとは観察の時間。本とかで名前は聞いたことがある人がいるなあ面白いなあと内心で素人みたいな反応をしつつ、「編集会議」の編集長さんとか来ている姿を遠目で眺めつつ、この人が今も「週刊文春」の編集長だったら果たして北朝鮮に対してどんな記事を出して来ただろーかと想像する。変わらないかな今の「文春」とも「週刊新潮」とも「週刊朝日」とも。


【1月8日】 ミノルタとコニカ合併を抜かれた新聞としては次のネタを探して抜き返したくなるのが心情だけど、早々にネタが転がっているはずもないんで勝手に妄想。同じデジカメ業界つながりってことで、ニコンとオリンパス光学工業が合併して、社名を「オリコン」ではまずいってことで「ニコリンパ」にしたとしら、この不景気の時代にビッグニュースだと顔もほころぶんじゃないかと思ったけれど、デジカメのメディアではコンパクトフラッシュとスマートメディアの両陣営の代表格、合併したら整理が面倒だろーから多分やらないだろーとトバしてニュースにすることは諦める。でもちょっと微笑ましいと思うんだけど、「ニコリンパ」。ニコスも混ぜて「ニコニコリン」ってのも良いなあ。

 正月に放映されてた「ベストヒットUSA」は「ブリッジストーンサウンドハイウェーイ!」な番組だけあって提供もブリジストンだったけど、ル・マンか何かの車が走ってた昔の「REGNO」か何かのCMに代わって今年放映されたタイヤCMにはあの、「サッカー猿人オリー」ことオリバー・カーン兄貴が登場していて、それも可愛い女の子とそして美人&グラマラスな女性といっしょの登場で、もしかして娘さんと奥さんなのか、だとしたら娘は父親に似なくて良かったなあ、とか思ったけれど、今週発売の「サッカーマガジン」に掲載されているカーン兄貴の人生相談によると、本当の娘さんではないそーでひと安心、この愛らしい顔が10年後、だんだんと父親に似て来たとしたら、どう慰めていいのか分からなかったから。ちなみにカーン選手には実生活でも娘さんがいるとか。もしかして似ているのか。適齢期になった時に結婚の申し込みに行く男は生きて帰れるのか。20年後が楽しみ。

 仕事のために昔(半年前)に買って読んだ本を台所で掘ったついでにこの2年ばかり姿が見えなくなっていた「ウルヴァリン」のワークブーツを掘り出して、折角なんで福袋に入っていたジャック&ウルフスキンのカーゴパンツに合わせて履こうと思ったけれど、上に積み重なった本の重さからかつま先が潰れてしまっていてジ・エンド、ソールと違って張り替えればオッケーって訳でもなく、かといって煮て食べるには皮が分厚すぎるんで、哀れ廃品回収行きを決定する。そーなると途端に困るのがカーゴパンツ用の靴。クラークスのデザートではハードさが足りないしスニーカーも雰囲気的に合う「エアジョーダン」がこれまた台所で2年ばかり行方不明になっていてこちらは未だに発見できず。仕方がないんでここは1足、ヘビーデューティーな靴でも買うかと銀座の「ABC−MART」へと出向き、逡巡した結果ここは「いずれはクラウン」じゃないけれど、若き日に「POPEYE」を読んでいつかは買おうと憧れつつも、当時は高くて手が出ず八事にあったショップで買った「トム・マッキャン」で我慢し、大人になって変えるよーになってからは、流行りものは嫌だと天の邪鬼にも二の足を踏んで敬遠していた「レッドウィング」を、この歳ではもう関係ないからと買ってしまえと情に流され決心する。

 こでいう「POPEYE」ってのは今のシブヤ系な雑誌ではなく80年代末期のデカ襟オデコ靴とかDCブランドとか全盛だった頃の雑誌でもない80年前後のアイビー&アウトドアなアメリカ譲りのファッション情報がテンコ盛りだった頃の「POPEYE」。そこで靴といったら「レッドウィング」が頂点として君臨していて、これにパンツは「リーバイス501」、シャツは「オシュコシュ」のダンガリー、ジャケットは「Jプレス」の紺ブレザーかヘリンボーンのツイード(もちろんハリスツイード)っていったところを合わせれば、アーバンなアウトドアファッション野郎として銀座もどこでも闊歩できると信じてた。上にシェラデザインのマウンテンパーカーでも羽織ればなおアーバンアウトドア。エディバウアーのオーバーナイトラゲッジでも肩かさ下げればなお良し、か。今時いねーよなー、こんな奴(いるんだよ結構)。

 しかし時の流れは速過ぎて、「Jプレス」は確かオンワードだかに買われてしまって昔ほどのありがたみはなく、「オシュコシュ」はダンガリーでも安い方の部類だと知ってしまって、今はあんまり着たくない。何より「レッドウィング」のワークブーツ自体が80年前後とはラインアップが様変わりしていて、「アイリッシュセッター」と呼ばれたブーツから「アイリッシュセッター」の名前が取れてしまい、他の「ゴリラ」とも「チペワ」とも違う特徴だった「オロ・ラセット」と呼ばれる独特の赤茶けた色が、ごくごく普通の茶色に変わってしまっている。「POPEYE」から刷り込まれた「レッドウィング」のテイストのものもあることはあるけれど、これは日本別注だそーで、オリジナリティをこそ追求する80年代的「POPEYE」っ子としては、ちょっと買うに躊躇するものになっていた。

 こーなると迷うのがカタログ至上のマニュアル人間。型番としてのオリジナリティを追求して昔からある「RW−875」って奴を買うかそれとも、赤茶の色こそがオリジナリティだってことで日本別注の「RW−8875」を買うか、いっそ藤原ヒロシさんが「POPEYE」誌上で活躍し始めた頃から流行ってきた、黒いセッターの底が白いクレープの奴にするか、見比べつつ手に持ちつつ呻吟すること15分、結局は値段が「8875」は定価のまんまだったのに対して。米国から輸入だからか8000ばかり安くなってる「875」の方を、内心は背に腹は代えられないからと思いつつも、外面的にはやっぱりオリジナリティだよねって言い訳をする気持ちで購入する。20年越しの夢かなう、って奴? 安い夢だねえ。安い人間だからいいんだけどね。


【1月7日】 新作アニメがいろいろと始まっていて見たりみなかったりビデオに撮ったりとらなかったり。秋の「灰羽連盟」の時みたく心底から是非にも見ておかねば、って感じで迫ってくる作品のそれほどないのが軟弱化している要因だろーけど、そんな中では明日からスタートの「L/R Licensed by Royal」にとりあえず期待したいけど、内容とか設定はともかくもコンビ芸ではルパン&次元が強烈に刷り込まれている頭に、小粋な野郎どものアクションが2人組がどこまで迫ってくれるかが悩ましい。千葉テレビでちょろっだけ見た「らいむいろ戦奇譚」って「サクラ大戦」の明治版ってもしかして「聖少女艦隊バージンフリート」の親戚か何かっすか?

 その千葉テレビは何故か「熱血電波倶楽部」の「陸上防衛隊まおちゃん」「朝霧の巫女」の放映までスタート、深夜でおまけに途中から「灰羽連盟」と重なってしまって悔しくも見られなかった可愛い宇宙人、じゃなくってまおちゃんに再び見えられるかと思うと嬉しくって夜も眠れない、でも真夜中には寝ます、午後10時以降。改めて見直した「まおちゃん」は戦車とジェット機と潜水艦の3DCGか何かでの造形が素晴らしくって、それより何より「まおちゃん」の健気さに胸打たれまくりで、どーしてこれまで見ておかなかったのかと悔やむ。でもDVDボックスはなあ、箱デカ過ぎるんだよなあ、家に置いておけないんだよなー、もって会社に通う? それありかも。「朝霧の巫女」は出だしまずまずって印象で、これがどーして「緋袴戦隊ミコレンジャー」になってしまうのかが分からない。謎。「THE ビッグオー」は前見てないから知らないけど、何でロジャー・スミスが浮浪者で舞台挨拶で「ぼくはここにいてもいいんだ」なんだ?

 コニカがミノルタと合併してミノニカだかコニルタだかになるって話が経済新聞的には注目なんだろーけど、世間的ってゆーか国民的にはやっぱり「藤本美貴、モーニング娘入り」の方がニュースとしては衝撃的で折角ピン立ちしかかって来たのに何でまた集団の中に混ぜ込んでしまうのかが分からず悩む。ピン立ちっていっても所詮はあややこと松浦亜弥さんのカーボンコピー、ホットパンツで売ろーとしたもののかなわずミニスカート化してあややに近づけて盛り上げていった感じがあっただけに、それが逆に災いしたのかもしれない。けど「合格」ってゆーのはつまりあややは合格できなかった、ミキティーに追い抜かれたってことなのか。それより最初っからピン立ちしていたのに未だ合格できない平家みちよさんの立場はどーなるのか。先輩って立場もあるから無理なら逆に「モーニング娘。」を平家みちよ入りさせて「平家みちよ。」にするってのはどーだ。ところで「モー娘。」っていまいったい何人だ。保田圭ちゃんてまだ「モー娘。」なのか。

 気が付かないうちにカネタツ金子達仁さんの連載が終わって重鎮・加茂周さんに連載が代わっていた「週刊朝日」のサッカーコラム。日産の監督時代に天皇杯の決勝でこの試合を限りに引退することになるヤンマーの釜本邦茂選手が、日産の勝利で終わった試合のあとで引退宣言をせずに黙って会場を後にして、1カ月経ってから引退を表明したってエピソードを紹介していて、自分の引退が日産の優勝という慶事を超えて騒がれることのないよう配慮した、ってことらしくって、エキセントリックに見えるけど釜本さんもあれでなかなか人情家だなあ、と感じたけどそれはそれとして加茂さんは、決勝に出てくるチームはともに「ファイナリスト」であって讃えられるべき立場にあって、そこでの勝敗に天国と地獄のような差はないんだと書いている。

 そこで思い出したのが今年の元旦の天皇杯決勝。負けた鹿島アントラーズがサポーター席に近づいた時に、親指を下に向けてブーイングしている人の姿が結構な数見うけられた。もちろん拍手している人の方が圧倒的に多かったんだけど、熱烈なファンにとっては決勝まで出ても負ければそれはゼロと同じことなんだろー。もらえる賞金の額とかプレーヤーの年俸とかの部分に影響する以上は、勝つか負けるかで差はあるし、「ワールドカップ」のよーな大舞台なら得られる栄誉も勝つと負けるとでは格段に違う。けどそれは選手やチームにとっての問題であって、支えるファンや観客としてはそこまで連れて来てもらったことへの感謝も必要だ、ってことなのかも。

 出たばかりの「週刊サッカーマガジン」でも冒頭のコラムで編集長の伊東武彦さんがカップ戦の決勝進出者は「ファイナリスト」と呼ばれ栄誉に浴するもので、だからレフリーも敗戦チームもともにロイヤルボックスで表彰されるのだと書いている。にも関わらず元旦の天皇杯では、どちらとは明言してないけど「試合後のセレモニーで一部サポーターが取った態度は残念でならない」と嘆いている。わざわざに書くってことはつまり、伊東さんの目にも余る行為があったってことなんだろーけど、そこは大人で「負けもサッカー。それを知っている者が、品位のある拍手を送ることができると信じたい」と今後の成長を促している。ちょっと勝ちすぎたんだよね、だから負けに慣れてなかったんだよね、17連敗とかしたチームは負ける悲哀を知ってて品位ある拍手が送れたんだよね、ってことなのか。ちなみに高校サッカーは決勝に国見と市立船橋が進出、どっちが負けてもブーイングはなしに。地元の市立船橋も含めてどっちにも思い入れはないからブーイングしよーがないんだけど。


【1月6日】 ライミ砂漠の南にいるらしー妖精のタォピィが頑張ってくれた御陰でとっとと仕事も片づき読書をば。「日本ファンタジーノベル大賞」で優秀賞を取った小山歩さんの「戒」は1国の道化となって生きた男の葛藤と逡巡と開き直りの日々を描いたなかなかの傑作。中国の古代を模したよーな統治の形を持った再って国に国王の乳兄弟として育ったのが戒とゆー男。将軍家の息子で正妻の子ではなかったものの英知と才気を買われて家督を譲られよーとしたものの、故あって王の舞舞いすなわち道化となって笑われながらも国を影から支えよーとする道を選ぶ。

 これが英明な国王だったら再の道化ぶりを自らを立てよーとした仮面と見て影に彼を支えよーとするところなんだけど、暗愚ではないにしても平凡で純朴な王は再が自分の側にいてくれることだけを望み戒がその才能を本当に発揮することを認めようとしない。それでも戒は王に自分を軍師にすればこんな道化でもつとまるならと各地から優れた人材が集まってくると進言しては軍師の座におさまり、ちょっとだけ才能を発揮するポジションに近づくものの今度はこれまで道化として振る舞ってきたことが周囲の理解を阻んでしまい、結局は道化のまま道化ならではの技を使って故国を守り続ける。

 正直ここまで自分の国にこだわらなくっても良いじゃんって思ったけれど、そこがかぶき者のこだわりってゆーか、英明過ぎるが故の気の回し過ぎってゆーか、逃れられずうだうだと立場を引き続けるところに人間のとりわけプライドの高い人たちの、本意を踏み外してでも突き進んでいってしまう理由を見る。疑似中国を舞台にした虚構のドラマを描く中で人間の生きる困難さを浮かび上がらせる腕前が圧巻。第一回目の大賞を獲得した酒見賢一さんの「後宮小説」とか「陋巷に在り」とか好きなら読んで結構楽しめそー。酒見さんみたく大成してくれるかな、後が続かないのが「ファンタジーノベル大賞」だし。

 冒頭で持ち出される、戒が自分をまず軍師にしろって言ったものの所詮は猿だから国に災いを成し、ために殺害された故事を称して「戒より始めよ」ってゆーよーになったって伝説はちょっと違う気も。だって猿のくせに軍師面した戒を見習ってはいけないっよって意味だとるなら、そこから出来る故事成語は「戒より始めるべからず」になるんじゃなかろーか。まあ本筋とは関係ないし物語上の史実じゃ「戒より始めて良いじゃん」になっているから気にしなくっても感動の害にはならない。天才と愚者の紙一重な男の生涯をかけた道化っぷりに、泣くかどーかはともかく感銘を受けることは確実、堪能せよ。

 日本レコード協会の賀詞交換会に潜り込んでご飯とか拾う。冒頭で協会のいちばん偉い人が挨拶をして、コピー問題がレコードの売上げ減少に結びついているんだって話して一面的にはそーゆーこともあるんだろーなと同情はしたけれど、CCCDを導入してもなお止まないコピー問題にこれはもー、プロテクト云々って技術のいたちごっこを続ける以前に、コピーがもたらす害をとくとくと理解させて理性でおさえるよーにしないと、つまりは教育を施しコピーすることで何が起こるかってゆー事態への想像力を喚起させる以外に解決の道はないよーな気もして来た。新刊は必ず図書館で借りて新古書は必ずブックオフで買う生活がもらたるす態への想像力を養わせることにも繋がるかな。本はクローンが作れない分、実害もそんなには大きくはないよーな気もするけれど。

 気になったのは会長の人がDVDのプロテクト機能を使えるDVDをメディアにした音楽ソフトに関心を示したことで、それがDVDオーディオのことを指していた可能性もあるけれど、受け取った側としてはDVDビデオを音楽だけに使おうってことのよーに感じて気になる。現実問題、音楽CDもDVDプレーヤーやDVDも見られるゲーム機で再生しているからDVDビデオに変わってもあんまり気にならないんだけど、CDってメディアを使い続けることを前提にして、CCCDを導入してはさまざまな風評を乗り越えて来た先行企業が、梯子をはずされたって思わないか心配になる。椎名誠がFMでぼそぼそとCDの素晴らしさをちょっとだけ伝える番組をやっていた頃から20年。MDもDVDオーディオもSACDも退けて来たCDにも転機到来か。でもやっぱりネットからとってHDに蓄積に代わるんだろーな。


座って半畳寝て1畳、引っ越したい 【1月5日】 ぐっすりと眠って起きたら7枚分の原稿が出来ていた、まだ草稿だけど、小人さんがあらわれて描いてくれたに違いない、でも油虫だったかもしれない、こないだ靴の中で動いてたし、靴下越しに蠢いているのが感じられてなかなかだった、断末魔って奴だ。それはそれとしていよいよ仕事をする場所が限られて来て大変。仕事はベッドの上に胡座をかいてベッドの外にある箱を机代わりにパソコンを打っていたりする。ベッドだったらどうして床との間に段差がないかといえばそこはすでに埋まってしまっているからで、それが部屋を流れ出して玄関まで続いているのが今の我が家とゆーことになる。扉を開けると30センチくらいの地層が見えるって寸法、容積が減って暖房が効きやすくなった、なんてことはありません。

 「ギャラクシーエンジェル」はテーマソングの歌い手がひとりになってて一瞬、ミント役の沢城みゆきさんかと思ったらとんでもなくって大ベテランの堀江美都子さんプラスこおろぎ……じゃなくってエンジェル隊03って取り合わせで、ふーん2クール目でちょっとは目先を変えて来たのかなあ、これでコンサートの持ち駒が1人増えたなあ、なんて程度に思っていたら甘かった、こいつら本気だよ、冗談ひとつつくのも。つまりはおそらくはAパートに持ってきた魔女っ娘魔法使いネタとの連動企画で、魔女っ娘魔法使いものといったらなララベル堀江をテーマソングと挿入歌に配することでまるごと1本のパロディにしてしまおうと策謀した感じ。前シリーズの合体ロボットものに続く大ネタだね。

 ロボに魔女と来たら次はえっと何だろう、萌え系、癒し系じゃあインパクト弱いしなあ、タイムボカン系? でもってテーマソングは山本正之さん? 小麦に先越されちゃったけどガッチャマン系ってのもいいかも、テーマはもちろん子門真人さんってことで。Bパートはなあ、オチはともかくフリがツチノコ原人に重なるなあ。シリーズってことをまるで考えていないオチもまあ今に始まったものじゃないけど、それでも度重なるとちょっと辟易としてくる。まあ少年少女に分かりやすい馬鹿馬鹿しさってことで時間帯的にもこれでいいのか。もしも仮に「デ・ジ・キャラット」とかこの時間に来たら持ち前のシュールさはやっぱり消えてしまうんだろーな。けど1年前まで癒しと切なさに悶え打ち切りを怒ってたコメッターが山といたことを思えば少々ヌルくなってもちゃんと「GA」しているこれが放映され続けていることをむしろ奇蹟と讃えねば。

 せっかく1日が浮いたんでスポーツでも見よーと家を出る。とりあえずは高校サッカーの市立船橋でも見ようかなって思って途中で野球のマスターリーグもやってたっけと思いつき、いやいやそれよりは代々木体育館でのバスケットボールの日本選手権が旬だろーと考えながら、大手町の駅で都営三田線で水道橋に向かうか営団千代田線で神宮前に向かうか半蔵門線で駒沢大学方面へと乗り継ぐかを迷った挙げ句、半蔵門線で青山一丁目へと行き銀座線に乗り換えて外苑前で降りてラグビーの社会人を見ることにする。一昨年あたりからスポーツの現場を踏んでみよーとラクロスからレスリングから相撲から女子サッカーから新体操からいろいろとのぞいていたけれど、実はラグビーはこれが始めてだったりして、さぞやスクールウォーズに熱血な野郎どもが怒声を上げているだろーと思ったら、これがまるで静かで拍子抜け。去年いちばん行ったサッカーの試合が常にチャントやエールでいっぱいだったから、なおさら静かに聞こえたのかもしれない。現場って重要。

 試合は全日本社会人ラグビーの予選プーC組の「リコーvsNEC戦」。全勝どうしの対決はリコーもNECも一進一退って感じだったけどNECが3点のリードを保った後半の25分過ぎからリコー陣内のいちばん深いところで何度も何度もモールを作って攻め立てる。1メートルですら進のに困難なラグビーって競技の凄さを目の当たりにできたって感じで面白かった。ペナルティのボールをちょんと蹴ってラインアウトにしては投げ込まれるボールをちゃんととってモールを作る繰り返しって、攻撃方法として正当なのか妥当なのか邪道なのかは分からないけれど、リードを保ちつつ陣地も維持しつつ時間も潰しつつ攻撃し続けるってことはそれで正しいやり方なのかもリコーもよく防いだけれど最後はペナルティートライになって(どーゆー技なんだろ?)ゴールも決めて10点差。全勝でプールを抜けて決勝トーナメントに駒を進めた。さすがは死のプールの1位と2位の試合、迫力ありました。

 始めて入ったけと「秩父宮ラグビー場」、メインとバックはそれなりなスケールでスタンドがあってゴール裏も片方は椅子席になっていて、専用競技場としてはサッカーの「国立西が丘競技場」よりもよほどしっかりした感じ。とはいえサッカーには専用競技場として「埼玉スタジアム2002」ってゆー超巨大な施設があるし他にも「豊田スタジアム」とかあるんだけど、ラグビーは秩父宮が専用の最高峰でその上は陸上兼用と事情は同じ、ってゆーか横浜国際や大阪の長居や宮城でラグビーの試合が開かれるって話もきかないんで、上は国立霞ヶ丘競技場がオンリーってことにってしまう。これじゃー日本でワールドカップを開いて世界レベルの凄みを見せつけた上で、サッカーみたくファンを増やしてプロリーグを盛り上げレベルも上げる、なんてことはなかなかに縁遠そー。

 そーいった一足飛びを狙うよりは今年だかから始まるトップリーグをちゃんと盛り上げ客を増やしていけば良いんだろーけれど、見られる場所が少なく試合もそんなに数のないトップリーグ、知らないうちに始まって気づかないうちに終わって濃いファンだけが盛り上がってまた来年、なんて可能性もあったりしそーで悩ましい。まあラグビーってのは別にワールドカップで日本代表が勝たなくっても企業お抱えのチームがちゃんと試合をして、そこそこに頑張っていさえすれば見る人も満足してるっぽいところがあるよーに見受けられるんで、秩父宮が満員になって決勝は国立が満員になって関係者大満足、って状況がこれからも続くことになるんだろー。それともトップリーグの導入で激変が期待されているのかな。折角1試合でも見たことだしこれからも機会を見て観察していこー。


【1月4日】 やらなければいけない原稿からひたすらに逃避するかのよーにDVDで「ジオブリーダーズ」のOVAを見てしまって4時間近くをつぶす。すでに何度も見返したもので、だったら買ってまだ見てない「AKIRA」とか「人狼」とか見れば良かろーものなのに、そこは漫画と同じで”再読性”の妙に高い「ジオブリーダーズ」、散りばめられた謎ってゆーか漫画とも絡む伏線を拾い直したり、挟み込まれる美少女キャラクターのボーナスカットを眺めたりしたくなってしまうのだ。「ナディア」なんて運送用の段ボールすら開けてない。

 LDも持っているのにボックスに入れるスペースが用意されていたからと、DVDで買い直した「ちび猫奪還」では第1話の胸まる出しでデパートの中をうろつく化け猫の姿に見入り、第2話の水着で格闘する栄子ちゃんに惚れ直す。最初からDVDで買った「乱戦突破」では第2話だかの成沢の先っぽまでしっかり見せる入浴シーンを喜び、第4話のすっぽんぽんの栄子ちゃんを繰り返し再生しては画面を止めて数分間眺めたりして堪能する。いつ見ても何度でも見ても良いものです。お話の方は核ミサイルロデオとか墜落衛星トライガンとか現実離れし過ぎなクライマックス描写がやっぱり気になるけれど、まあお祭りみたいなものだしコアな部分の筋はしっかりしてるんで良しとしよー。続編とかはもー作られないのかな。動く栄子ちゃんもっと見たい。

 逃避は続く。最終回を見逃して以降、沸き立つさまざまな評判に続きを買うべきかを迷っている「ウィッチハンター・ロビン」の1巻2巻を連続鑑賞、妙な出で立ちのロビンのビジュアルの良さ、喋るセリフのぞんざいさ、オープニングでの亜門をながめての悶えっぷりに改めて官能を覚えたんでここはどんな結末だろーと、ロビンちゃんが出ている以上は買い続けるんだと決心する。あの老眼鏡風なフレームじゃないセルフレームのロイド眼鏡かアラレちゃん眼鏡かハリポタ眼鏡をかけたロビンの顔っていったいどんなだろ。ざあますオバさん風トンボ眼鏡は似合いそうも……あるのかな。

 逃げてばっかりいるのもまずいと、まずは部屋のどこかにあるはずの本の発掘からスタート。土石流と化して隣の部屋の隅まで流れてしまっていたものもあれば、地中深く潜って半ば化石と化していたものもあったりと大変だったけど、どーにかこーにかリストに入りそーな作品を堀集める。中には前に似たことに使うために買い直した本も混じってて、頂いた分とか新たに見つかった分も含めて同じ本が3冊とか揃ってしまっていて、改めて整理整頓差の大切さに気づく。ってゆーか昔から気づいてはいたんだけど、これが実行できないんだわ。

 巻が抜けてしまっていたものとかは近所の古本屋に新刊本屋を回って、必要最小限まで揃えて来る。バッファーも含めて底の深いカゴにいっぱい分は集まって、さあとは書くだけってところでやっぱり逃避性向が出てしまって今度は「あずまんだ大王」のDVDの2年生分から2枚目のディスクを引っ張り出して、文化祭に体育祭にお花見といった傑作群を見返す。「文化祭」のペンギンちよちゃん可愛い過ぎ。体育祭のあとで体重計に乗るよみの見えそーで絶対に見せない作画の配慮ぶりに涙。原作漫画にはない花見のエピソードは毀誉褒貶あるけど僕は好きだなあ、よみの部屋に上がり込んでは部活に入らなかったことを考え直す智の言葉とか、帰宅部だった人間にはとても強烈だし。あの頃に戻りたい。髪も体型も含めて。原稿? まるで進んでませんってば。

掘り返していろいろ発見。圧巻はもう一昨年になるモデルガンのイベントで押井守さんからもらったサインは踏みつぶされてしわしわになって発見されたこと、っても押井さんだから美麗なラムちゃんとか描けるはずもなくって、犬だか猫だか分からない妙な丸い顔の生き物がちょろりと描かれ下に言われなければ絶対に分からないサインが入れられた色紙なんで、しわしわな状態を見てもあんまりガッカリ感とか浮かばない。あちらこちらでいろいろサインをもらい過ぎて鈍感になってしまっている可能性もあるのかな、だとしたら反省、でも見返しても押井さんのサインにマスターピース化させるだけの色気が感じられないんだよなー、いつか自分がサインとかやることになったとして(ならないけど)、やっぱりラムちゃんとか描かないといけないのかな。


【1月3日】 ずっと自宅に居るにも関わらず電話は鳴らないメールも届かない年賀状すらほとんど贈られて来ないとゆー、本当に都会なのかとにわかに信じがたい隔絶された状況の中をひとり半ばひきこもりとなって仕事に向けた積み残し分の読書なんかを粛々とこなす3が日、わたしはまだ生きてます。まずは富樫倫太郎さんのスーパー超絶伝奇「MUSASHI!」の第2巻「二十六聖人殉教」(光文社、943円)を一気読みしてその面白さにうなりまくる。

 1巻をかけて父親の無二斎をうち倒しとりついていた怪物を払った後に故郷を出た弁之助改め宮本武蔵は最愛の少女の命を取り戻すべく四人の騎士を探す旅へと出立する。手がかりとなるのは蜘蛛塚から蘇った大蜘蛛の告げたルドビコとアントニオという2人の名前。それが誰なのかも知らないまま、助けた傀儡師の少年モモカに少女キム、武蔵を慕う松吉と連れだって移動を始めたその矢先、人買いの所から逃げ出してきたルチアという名の少女と会い、その後いろいろとあった挙げ句にルドビコとアントニオがキリスト教徒で、遠からず長崎で処刑されるということを知り、助けへと走る。

 いよいよ明らかになって来た、日本を拠点に暗黒の世界を作り出そうと企む四人の騎士の正体に、けれども武蔵は未だ気づいておらず自分がどうして白き魔導士の証ともいえる十字架を持っているのかも分からないまま、さらなる飛躍へと向かっていったクライマックスが次になおいっそうの奇想天外な話が訪れるだろう可能性を予感させる。釜ゆでの刑から実は逃れていた石川五右衛門による豊臣秀吉暗殺のエピソードも間に挟み、忍者として一流だった五右衛門すら凌駕する能力を持った少年、児雷也との邂逅も含めて増える超個性的なキャラクターたちの活躍も楽しみ。個人的には五右衛門の敵にあたる凄腕の忍者で兄の大猿にそっくりな妹の小猿のさらなる登場に期待。悪辣で残忍な美人って大好き。

 続けて如月天音さんの「外法陰陽師」(学研M文庫)の既刊3巻を2時間半くらいで一気通読、これもやっぱり面白くってひきこもり気味な暮らしに沈みかかっていた気持ちが引き締められる。かつて唐の国で大暴れして国が衰退する原因になりながらも罪一等を免じられたのか平安の日本へと逃れ、今は漢耿星(あやのこうせい)と名乗り陰陽寮には属さない外法使いの陰陽師として都の片隅に住んでいる男が主人公。分愛想で滅多なことでは他人に感心を見せない彼だったが、時折やって来る藤原行成という貴族とはどこか気持ちが通じ合ったのか、それとも行成の純粋さに惹かれるところがあったのか、話を聞くだけでなく行成が危険に陥りそうになれば助けてやるだけの甲斐性を見せる。

 目下の行成の懸案は関白・藤原道隆が呪詛によって命を落とし掛けていることで、駆りに道隆が死んだ場合に後を継ぐ可能性のある息子の伊周、弟の道兼のどちらにも問題があると見ていた行成は、耿星に呪詛を返してくれと頼む。最初はうだうだしていた耿星もそのうちに巻き込まれる形となって腰をあげたところから、やがて藤原一族による権力争いと、そして都の陰陽師たちのとりわけ安倍晴明に敵愾心を燃やす蘆屋清高の企みの渦中へと入り込み、その眠っていた超絶とゆーか人外の力を炸裂させる。

 権謀術数の渦巻く宮廷や貴族たちの、権力を思い肉親を思うが故に見せるすさまじいばかりの情念のぶつかり合いも読んでなかなかに面白いし勉強になる。女装して宮廷に潜入した挙げ句にその姿を女性と思いこんで見初めてしまった行成の純情一直線な様も楽しいし、なかなか動こうとしない耿星を相手に怠け者と誹って尻をけ飛ばす9歳の童子姿の姫さまも可愛くって格好良い。耿星の正体を気取りながらもそれをどうするでもなく、離れず付かずしながら成り行きを見守る安倍晴明の狡猾さも、美貌の天才陰陽師ってなイメージばかりがもてはやされがちな中にあってかえって新鮮に映る。

 そして何より超能力バトル。3巻が3巻ともにクライマックスで、蟲を使い人間を変化させて貴族たちをおびやかす清高の技と、思うにまかせない自分の力に苛立ちながらも最後には圧倒的なパワーを発揮する耿星との激しくも凄まじいバトルシーンが繰り広げられては、いったいどうなるものかと手に汗を握らされる。清高の企みは3巻でとりあえずは一段落がついたよーだけど、いろいろと残された謎も多く引き継がれた課題もあって、これからどんな展開になるのかに興味津々。ちょうど同じ時代を扱った富樫倫太郎さん「陰陽寮」(徳間書店)なんかと読み比べてみたいところ。キャラクターの弾けっぷりでは「外法陰陽師」に軍配、かな。

 ひきこもってばかりいても体が鈍るんで外へ。カレン・ロバートを見に高校サッカーの市立船橋高校が登場する千葉へ行こうとも思ったけれど、朝からちらつき始めた雪に下手すると風邪ひいて残りの2日を台無しにしかねないと考え直し、暖房が効いて暴風も完璧なインドアでの大会を見に行く。その「ライスボウル」はアメリカンフットボールの社会人代表と学生代表とが日本一をかけて戦う試合で見るのは去年についで2回目。去年は下手に指定席なんか買ってチアリーダーから遠い場所に座らされ、おまけに社会人側なんかを指定して関西学院大学の素晴らしくも大量動員のチアリーダーを遠く眺める羽目に陥った反省から、自由席を買って学生の方へと行こうと思ったけれど、似たことを考える人も多いのかあるいはOB現役の動員がかかったのが、特等席はほぼ埋め尽くされた状態で、仕方なく社会人の方へと陣取って、試合が始まりチアリーダーが踊り始めるのを待ち焦がれる。

ゆれるゆれる谷間がゆれる  なるほど人数では学生代表の立命館大学のチアリーダーの方が勝っていたし動きもキビキビとして訓練されていた感じがしたけど、今年の社会人代表は去年のアサヒ飲料とは違って浮ついたことでは学生にも負けないリクルートのシーガルズ。いきおいチアリーダーも茶髪にグラマラスなボディを持った女性がいかにもアメリカンフットボールの応援ってなダンスを披露してくれて、その成熟した動きやコールに試合そっちのけで双眼鏡を向ける。いやちゃんと試合の方も観察してたんだけど、押しているはずなのにどこかでミスをしてしまって突き放せないリクルートの試合ぶりに、気持ちがチアリーダーへと向かってしまったんだよね。

 それでも前半は同点で折り返したハーフタイムショーの後、定位置に見えなくなったチアリーダーにもしやと思ったらどんぴしゃり、スタンドへと上がってきたチアリーダーたちが目の前でぶりぶりと踊り出したものだからもう視線は揺れる上やらはち切れそうな下に釘付けになって、試合なんかまるで目に入らない。これが慣れたカメラ小僧だったらチャンスとばかりにシャッターを切り続けるところなんだろーけれど、奥手で見栄っ張りな正確が災いして真正面からカメラを向けられず、試合を見ているフリをしながら手探りでシャッターを切る動作を何度か繰り返してはみたものの、そこは素人の悲しさか、手ぶれかもしくは見切れの写真ばかりになってしまって、見返しながら後悔の念に苛まれる。シャッターチャンスは1度きり。蹴られても殴られても撮らねばならぬ。この教訓、生かすぞ何かの大会で。

 さて試合の方はといえば、同点からフィールドゴールのチャンスをシーガルズが得る場面があったんだけど、この好機に何を思ったのか応援のリーダー役だった男性がウェーブなんかをコールしたものだから応援席は1点集注してコールすべきところを上下に体をゆすって大歓声。ザワつくスタンドに気をとられたそのせいなのかは分からないけど、決まって不思議のない距離のフィールドゴールを外したシーガルズに次の得点のチャンスは訪れず、逆にミスから続々と立命館大学パンサーズにタッチダウンを決められてしまい、終わってみれば大量リードでもって敗退してしまった。社会人が学生に負けるのは去年と同様。どこかタイミングのあわないクォーター・バックのパスとか見ているとそれも当然かなあ、って気もしたけれど、それでも前半の勢いを維持できていたら、あのフィールドゴールが決まっていたらと考えると残念な気がしないでもない。第3クォーターまでは良い試合を見られたし、何よりチアリーダーを目の前で堪能できたから良しとしよー。来年も出てくれれば見に行くよ、でもって同じ席でしっかり写真も撮らせてもらうよ。頑張れリクルート、やってる仕事は好かんけど。


【1月2日】 「天皇杯」の観戦で横に座ったカップルがモロ名古屋弁を話しているのを耳にしてそのイントネーションの独特さに改めて故郷の言語の異質さを思う。関西弁とか広島弁とか九州弁が街とかテレビで聞こえてきてもそんなに不思議な印象を持たないんだけど、名古屋弁だと妙に気になるのは郷里への愛着の裏返しなのかそれともリズム的に人をハッとさせる何かが名古屋弁には潜んでいるからなのか。ちなみに三河弁はさらに耳に響きます、「じゃん」「だら」「りん」とか。

 それにしても微妙なカップルだったなあ、歳の頃は横目で見た女性の方のお肌の具合から想像するに30歳前後ってところ。割にショートの髪型で化粧っ気は少なく寒さからか時々ノーズ・ウォーターが鼻孔から滲んで来たりして、そんな格好を見せて平気ってことは夫婦なんだろーかと思ったけれど、会話の感じが友達かあるいは同僚って雰囲気。サッカーのルールとか選手のアクシデントを受けてけり出したボールを戻す風習とかを男性が女性に説明していたけど夫婦だったら家で散々っぱら聞かされていて、現場で今さら説明されて喜ぶなんてことはしないだろー。いずれにしても艶っぽい雰囲気はなかったような。名古屋から来たか東京駐在なのかも不明だったけど、覚えのある人は胸に手をあててドキドキしてください、座席はアウェー側SS席メインスタンドE列35番36番ね。

 今年もやって来ました「ブリッジストーンサウンドハーイウェー!」な小林克也さん司会による特別版「ベストヒットUSA」。もはや血肉を化した感すらある80年代ポップスが懐かしいビデオクリップと一緒に紹介される内容に、20年から昔のまだ未来に夢を持っていたあの頃、そんな夢をかなえる努力なんてまるでしないでのんべんだらりと読書にテレビ鑑賞に昼寝に浸っていた日々を思い出して戻りたくなる、って今とたいして変わらない日々じゃん、だったら別に戻らなくっても良いのか。

 のっけから「ホール&オーツ」の「プリアベート・アイズ」が狭い画面でバックバンドと並んで唄う2人の姿とともに流れ始めて大歓喜。「プライベエライズ!」って歌詞の後の手拍子を「パン」と歌に合わせて入れてしまったのは僕だけではないはずだ。未だ健在な彼らに対して後半に登場した「ワム」はさっさと分裂してジョージ・マイケルがけが独り立ち、したは良いんだけど最近もちゃんとやっているんだろーか。小林さんによれば80年代ベストで登場したアーティストの実に8割くらいがメジャーのレーベルと契約がないそーな。厳しいねえ。

 白眉はビデオクリップとともに紹介された「BAND AID」による「Do They Know It’s Christmas?」。スター総出演によるチャリティーものってゆーとこの後にアメリカで結成された「USA for AFRICA」の「We Are the World」の方が有名過ぎるぐらいに有名だし散々っぱら放映されたこともあって、ブルース・スプリングスティーンのがなり声とかシンディ・ローパーの雄叫びとかマイケル・ジャクソンのマイコーぶり(何だそれ)とかが耳にこびりついてたりするんだけど、メンバーだけなら「BAND AID」だって負けてなくってボー・ジョージにサイモン・ルボン、ボノにスティングにデビド・ボウイにジョージマイケルが唄いそのバックでフィル・コリンズがドンドコドコドコってな太鼓を打ち鳴らしてたりする音楽は、いかにもな盛り上げっぷりが耳につく「We Are the World」より心地良く感じる。

 けど今に伝わるくらいに世界を席巻したのは「USA for AFRICA」だったりするのは、産業ロックとショービジネスの国アメリカならではのパワフルさってことなのか。流れた両方のクリップを比べても、あざといばかりの盛り上げっぷり、揃えたメンバーの当時としての今時っぷり、同じスタジオでの録音風景を見せるにしてもライブ感がまだある「BAND AID」に比べて作品として作り込まれた感じの「USA for AFRICA」の、クリップの商品としての完成度がやはり目に響く。両方まとめてDVDで見直してみたいもの、出ないかなあ、「ホール&オーツ」のクリップ集もついでに。

 恒例でもないけど開店と同時に近所の「船橋西武」で福袋漁り、しよーとしたら午前10時の開店時間より前にオープンしていたみたいでちょっと焦る。9階のスポーツ売り場へとエスカレーターを掛け上がって目指す「ジャック&ウルフスキン」へと駆けつけたらまだLサイズの福袋が何袋かまだ残っていたんで幾つか確保し、手の感触と隙間からのぞく色艶なんかを見て1つを選び購入する。開けると出てきたのはカーゴパンツにハイネックのインナーにフリースのジップアップのアウターにこれもフリースのカバーオール、そして小型のディ・パックと去年買ったものとはあんまり重ならない商品構成で、これは勝ったとほくそ笑む。昔はDCブランドの福袋にむらがったものだけど、アウトドアへと目が向くのは人間がルーズになってルーズな服装で良いと思い始めた現れか。けど「ユニクロ」では我慢が出来ないプライドだけはあるとゆー。始末に負えない中年野郎、ここに誕生す。

 前厄にはまだ2年、間があるみたいなんだけど初詣でもしておくかと船橋から隣の隣にあって未だに行ったことがなかった「日蓮宗大本山法華経寺」とその奥にある「中山鬼子母神」に参拝する。寺の奥には昭和6年だかに当時の科学技術の粋を集めて建設された、日蓮聖人直筆らしー「立正安国論」やら何やらが収納された建物(鐘を伏せたよーなドーム型のインド風建物で象とかが乗っている)なんかもあって面白い。「中山鬼子母神」の方や厄除けの祈願に集まった人でごった替えしてて、お堂でお祓いを受けている人たちの背後に立ってその御利益のちょっとばかりを頂いて帰る。ひいたおみくじは「吉」。引っ越しはOKってことだからそろそろ考えよーかな。年長者に頼って言うことを聞いて生きろってあったんで偉い方々にはよろしくお導きをお願いします。


【1月1日】 とかいいつつ去年の話、鬼は笑わない。ボブ・サップの登場を今か今かと待ちながらザッピングして見た「紅白歌合戦」の中島みゆきさんなんだけどてっきり、あの黒4ダムの寒風吹きすさぶ上に立って唄うのかと思っていたらトンネルの中でまず拍子抜け。それ以上に天井の低いトンネルの中ではロングで撮って会場の広さを見せてスケール感を出すのが不可能だったのか、全身と顔のアップに外の風景が重なる程度の画面で、歌の壮烈さ、歌声の深遠さ、近くにあるはずの黒4ダムの雄大さからは遠くかけ離れた、妙にちんまりした画面になってしまっているよーな印象を受けた。昔やってた「ザ・ベストテン」の中継でだってこれくらいの演出は出来そう、ってゆーかまんま「ザ・ベストテン」を見ているよーな気さえした、横に追っかけマンの松宮アナがいないだけで。

 これだったらいっそNHKホールの舞台の上に黒4ダムでも作ってしまったら良かったのに、歌姫はその壁をぶちぬいてご登場って寸法。けどそれじゃあダム決壊になってしまるから「プロジェクトX的」には失敗か。洞窟の中でショボく撮るしか出来ないんだったら、それこそ「サンケイスポーツ」が辛口コラムで書いていたよーに「東京タワー」の展望台の屋根に立って絶景を見下ろしつつ唄えば荘厳壮麗だったかもしれない。そこに迫り来るゴジラ(顔は松井秀喜選手)が1頭、対峙する歌姫は声をいっそう張り上げて、ボイスパワーでモスラを召還し、かくして2大怪獣大晦日の決戦は「東京タワー」をへし降り愛宕に出来たツインタワーも粉砕して明け方まで繰り広げられると。あかんがな。

 しかしやっぱり「紅白」で最高だったのはあれだね、鳥羽一郎さん、歌も歌だったけどバックを固める宇崎竜堂さんがとにかく格好良くって、角の塗装が剥げ欠けたフェンダーのテレキャスターを腕ぶん回しながら弾き、鳥羽さんの唸る声に重ねてあの独特の節回しに独特の声質で合いの手を入れ歌声を重ねた瞬間に起こる、演歌とロックの絶妙な融合が耳に何とも心地よくって、ついつい身を乗り出して画面に見入ってしまった。脇でトランペットを吹くクワマン桑野信義さんも実に颯爽としていて鳴る音も高らかでこれまた絶妙。「2人のビッグショー」を見ている感じもしたけれど、こーゆー他ではなかなかあり得ないコラボレーションを実現して見せてくれるところに、「紅白」ってゆーかNHKの存在価値はまだ存分にあえるんだろー。竜堂さんのコンサート見たくなったなあ。「獅子の時代」の挿入歌とかまた聴きたいなあ。

見よ、この雲にも届こうかという本の高みを。よく活きていられたなあ、エケッコー様のご加護かなあ(スーパードールの御陰かも)  「朝ナマ」とか見ても堂々巡りで結論の出ない嘲り合いに終始しそーな気もしたんで見ずに寝て明け方、目が覚めて微睡んでいた所にガサゴソと音がして、瞬間脳天に予感が端って腕を頭の上で組んだところに本が崩れ落ちてきて九死に一生を得る。大げさだねえ、と思う人もいるだろーけど何しろ落ちてきた本が半端じゃない。「定本 佐藤春夫全集」が15冊に「澁澤竜彦翻訳全集」が5冊に途中まで買って中断していて早く揃えなきゃと思いつつ買いきれないでいる「三島由紀夫全集」が5冊にあと、買ったは良いけど読んでいないクロウリーの「リトル・ビッグ」が2冊とゆー、知っている人ならその重量たるや如何ばかりかと気づく本の山が脳天を直撃して来た訳で、腕のガード越しにも受けた衝撃はすさまじく、また積み上がった山の下から抜け出すのにも結構な腹筋を擁したことを考えれば、もしこれが熟睡していた上に落ちていたとしたら、おそらくは3日3晩は意識を失い栄えある「天皇杯」に行くこともなく三が日を終えてしまっていただろー。そーならないよー覚醒したってことはつまりまだまだ自分には運があるってことかそれとも生きて辱めを受けろってことなのか。ともあれ拾ったこの命、今年も無駄遣いさせて頂きます。

  とゆー訳で「天皇杯」。「鹿島アントラーズvs京都パープルサンガ」なんて開幕前は誰も予想していなかったカードであるにも関わらず、1時間半ほど前から場内に入る行列が出来る人気ぶりにに伝統の一戦の重みなんかを感じる。アントラーズはゴール裏をほとんどすべて真っ赤に染め上げる動員力で、にも関わらずピタリと合致した応援のコールはビッグな大会慣れした感じ。けどFIFAのフェアプレー賞を贈られたことに対する岡野俊一郎前サッカー協会長の挨拶の時にもコールを続けて、川淵三郎キャプテンからユニセフへと寄付されている時にスタンドに巨大なフラッグを広げて唄うのは、ちょっと場の空気を読めていないよーな気が。パープルサンガの方はその間ずーっと黙ってセレモニーを眺めててちょっと好感、もともとアウェーに席を取ってて心情的にもパープルサンガに傾いてたんで、アントラーズの”オレサマ”な感じになおいっそうの敵愾心が燃えて来る。

このフリーキックからパク・チソンの同点弾が誕生。試合を面白くしたキックにお年玉をあげよう  とはいえそこは試合巧者のアントラーズ、サイドに振って攻め上がり中に折り返してシュートをする形がしっかり出来ている上に、中盤でボールをほとんど奪われることがなく、パープルサンガの攻撃をことごとく跳ね返しては攻め上がるパワフルさでもってじりじりと押し込んでいく展開に。前線で活発に動く柳沢選手とエウレル選手の働きもあって、前半のうちにアントラーズが1点をリードするとゆー最悪の状況になってしまった。きっと後はアントラーズがしっかり守って逃げ切ってしまう、内容の乏しいつまらない試合になるんだろーなーとあきらめた後半早々、フリーキックからこの試合限りに日本を離れるパープルサンガのパク・チソンがヘッドで放り込んで同点になって、一気に場内がわき始めた。

 もっともここで再びアントラーズが日本代表を山と輩出しているポテンシャルを発揮して、攻め込み点を取ってリードした挙げ句に守りを固めてつまらない試合になってしまうと思っていたけど、そこはフォワードならぬ「オフサイド」がポジションの柳沢選手、ことごとくパープルサンガにフリーキックを献上する素晴らしい働きを見せてくれた。さらには中央突破のワンツーから黒部のシュートが見事決まって逆転すると、さしものアントラーズも動揺したのか焦りから中盤でミスが出まくって、逆にパープルサンガの怒濤の攻めを喰らう羽目になる。

 終了間際にはゴールキーパーの曽ヶ端選手が相手のドリブルを手でひっかっけて1発レッドから退場になってしまって万事休す。やがて訪れた試合終了の瞬間、関西で始めてのタイトルがパープルサンガにもたらされた。素晴らしい。感動した。おめでとう。こんな素晴らしい試合を、すべての得点シーンが演じられたサイドのペナルティライン付近最前線で見られたってことに、使い果たしたと思っていたけどまだまだ運が残っているのかもしれないと思ったり。チケットがあるのに行けなかった人で京都に縁のある人にとっては、ちょっとばかり悔いが残ったかも。

 とにかくパスがよく回り、ボールが常に前へと向かうスピード感のある試合で、いつゴールシーンが訪れても不思議のない迫力に、気を抜くことなくずっと見入っていられた。これもひとえに相手がアントラーズであっても臆さず、攻撃サッカーを続けたパープルサンガが決勝に来てこそのもの、ってゆーかこーゆー試合をして来たからこそパープルサンガは決勝に出られたんだろー。勝ちまくってもつまらないサッカーをするチームは見習うこと。でも攻撃サッカーで大敗と紙一重だからなあ。ともあれ「天皇杯」が天皇を東京に貸し出している京都に一足早く戻ることになって、次は京都への天皇帰参、なんてことにはならないのかな。


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