縮刷版2002年4月下旬号


【4月30日】 ゴールデンウィーク期間中のおそらくは唯一の人と喋る機会になりそーな「SFセミナー」での夜の部のスケジュールが発表に。気にしていなかったら慶應大学の非常勤講師になってたりした東浩紀さんがやって来ては「オタク第3世代は、本当に動物化しているのか?」について小一時間どころか一晩中は問い詰められそーな企画があって見物に行きたい気持ちも膨らんでるけど、他方「ほしのこえをきけ〜『ほしのこえ』上映会」なんて企画があって監督の新海誠さんの名前がゲストにあって、重なったら果たしてどっちに行ってしまうか迷いそー。だからスケジュール調整の人には重ねないでねと遠くから念波を送っておこー。ついでにだったら「2002年春のSFアニメまつり」も重ならないことを切望。「HAPPY☆LESSON」のエンディングの素晴らしさと「あずまんが大王」のオープニングのすさまじさを語って欲しいのだよ。

 さてその「あずまんが大王」、強烈なシーンであればあるほど内的にある種のタイミングが出来てしまっている関係で、おそらくは全エピソードの中でもトップにランキングされるだろーインパクトを誇る古文の木村教諭の「女子高生とか好きだから」のセリフのトーンや間合いにちょい、違和感を覚えてうーむと眉間に皺を寄せてしまたけど、だっただどーゆートーンで言われたらよかったのかを説明したくても出来ない辺りが、想像と現実とのすり合わせの難しさ。そのあたりも踏まえつつ最大公約数でもって演じたのがあの激しく叫ぶ訳でもなくかといって淡々ともしていない、微妙な強さと間合いを持った「女子高生とか好きだから」になったんだと理解しておくことにしよー。

 ついでに言うなら妙な余韻とか残さず続けざまに次のエピソードへと移っていったタイミングは生理的にオッケーだったりして、以後繰り広げられるスクール水着のオンパレードと、見た目のほのぼのさとは対称的な外道描写(溺れるちよちゃん、ストーカーすれすれの木村、水泳の授業で焼き肉をかける教師等々)のギャップにゲタゲタと声に出さずに笑いながら、更けゆく夜を楽しむことができた。来週はいよいよ恐怖の別荘エピソード。ゆかり車の果たしてどんな描写が飛び出すか。神楽の部活焼けはちゃんと描かれるのか。智ちゃんのチョップはさくれつするか。よみはやっぱり太っているのか。楽しみ100倍乞います期待。木村の声は実に木村らしかったけど、「ちよ父」の声は誰がやったら「ちよ父」らしーんだろ。かないみかさん、では絶対に違うからなー。

 「SFマガジン」で連作を読んだ辺りではこれじゃーちょっぴり物足りない、折角の「ファーストコンタクト」なんでもっとたっぷり描き込んで欲しいって思った記憶があるけれど、単行本になった「太陽の簒奪者」(野尻抱介、早川書房、1500円)はいろいろと細工もあってかその辺りが全然気にならなくって、合理的でシンプルな中に奥深さも持たせたベストな描きっぷりになっている、よーに思ったけれど当方、最近あまり分厚い、たとえば上下2巻に別れててそれぞれが文庫で600ページもあって仔細に渡って状況説明背後関係が描き込まれている大長編を読み通すだけの知力体力が尽きているんで、この辺りで丁度良いって思ってしまったのかもしれないんで、そこは人それぞれに判断するのが吉だろー。

 個人的にはこれくらいの分量で描いてくれていた方が、SFのそれも小難しそーなシリアスな宇宙開発物ファーストコンタクト物をSF大長編に耐性のあんまりない人が手に取って、楽しめておまけにいろいろと考えさせられて、次の何かも読んでみたいって思いそーな気もしてて、良い仕事をされておられると感心感嘆している次第。「SFマガジン」2002年6月号に掲載された著作リストにある最近の年1冊とゆー刊行点数の少なさも、質から見れば仕方がないことなのかもしれれない。とはいえ同じ号の「SFマガジン」には年収がどうとか書いてたりする訳で、だとしたらここはせめて半年に1冊の新作を読ませて下さい、それなら年収だって倍になって、年後半に出るらしー「ギャラクシーエンジェル」のパソコン用ゲームを3バージョンともまとめて買えるだけの原資が出来ますよ、って囁いて頑張りをお願いすることにしよー。もっとも「ミルフィーユ」バージョンと「ミント」バージョンだけで「ヴァニラ」バージョンはないんだけど。

 「集英社スーパーダッシュ文庫」から嬉野秋彦さん「アウゴエイデス1 神話覚醒」(集英社、571円)を読む、同じく「スーパーダッシュ文庫」でこの前完結した「フェアリーランドクロニクル」から続く相変わらずの嬉野節炸裂で読んで楽しく目にも嬉しい話に仕上がっていて、これは続き物だけど続きにいったいどんな展開が待ち受けているのかが気にかかる。遺跡に潜ってお宝をみつけては買い取らせる仕事で稼いでいる美女の姉妹、といっても美女の姉は実は美男の兄で、趣味からかそれとも本当に妹に女らしさとはなにかを身を持って教えるためにか、完璧なまでの女装をしては何故か剛剣を振り回して、日々の糧となるお宝の発掘に勤しんでいる。

 そんな2人が発見した遺跡。苦労の果てにもちろんお宝も得たけれど、それとは別にとんでもないものをもらってしまった所から、物語は大きく動き始めることになる。謎だらけの前時代神智学探求協会の目的とか、今後明らかになるにつれて話は複雑さを増し主役2人の運命も起伏に富んだものとなりそー。ガサツながらも真正に美少女のアキラももちろん良いけれど、見た目美女のクロディーヌがまた美人で心揺さぶられること仕切り。イラストを見ると胸なんてとてつもなく巨大だったりするんだけど、いったいぜんたい中に何、いれてたりするんだろー。やっぱ秘密兵器だったりするのかな、危機が来ると火を噴いて飛んでいくってゆー感じの。


【4月29日】 ゴールデンウィークの頭のこの2日間にいったい、どれくらいの会話を人間と(ぬいぐるみ相手じゃね)したかを振り返る。「大人1枚」でしょ、「これお願い」でしょ、「いりません」でしょ、「A定食」でしょ、ほかにえっと、えっとえーっと……何の脚色もなくマジに10言も喋ってないよーで、コミュニケーションの極端に乏しい我が人生に今さらながらに嘆息する。今日も今日とて朝からあちらこちらを散策したけど交わした言葉はやっぱり10に満たなかったよーで、それでもそれなりに楽しめてしまうあたりが我が傍観者的性格を如実に現しているんだろー、とかなんとか。単なる引っ込み思案とも言いますが。

 それはそれとしてまず赴いたのが「品川プリンスホテル」に新しくできたとゆー「エグゼクティブタワー」。目当てはもちろん「IMAXシアター」、なんてきらびやかなものじゃなくってホテルのどっかで行われているとゆー「アニメフェスタ ようこそ夢のキャラクターパーティーへ!」ってイベントで、行く前はてっきりホールみたいな場所があってそこで開かれているんだろーと思ったら、これが普通だったら企業なり、政治家なりのパーティーとか結婚式の披露宴とかが行われていそーな宴会場。そこを仕切って半分をステージにして日々イベントを繰り広げ、半分は空気で膨らませた大きな遊具を置いたりショップを置いてグッズを並べたりするプレイゾーンにして親子連れに遊んでもらうとゆー内容で、絨毯が敷かれてシャンデリアなんかが絢爛とした室内に並ぶ風船遊具とゆーギャップにしばし戸惑う。

 親子ペアで2000円とゆー入場料で例えば1日に500組の親子が訪れたとして100万円で、それが連休でもちゃんとした休日だけに集まったとして7日間で700万円、プラスアルファがあったとしても1000万円。それで果たしてペイできるのかはホテルマンじゃないから分からないけど、この不景気にパーティーとかする企業もないだろーしましてやゴールデンウィーク期間中なんで企業も政治家も活動を停止中。空けておくくらいなら親子連れを集めてついでにランチとセットのプランとか、あわよくば宿泊プランとかとセットで売ればそれなりに回転率とか上げられる、って目算もあるのかも。あるいは子供心にヒーローショーの舞台となった「プリンスホテル」にシンパシーを持たせて将来の「西武ライオンズ」ファンなり苗場志賀へと通うスキーファンの育成に務めているのかも。深慮遠謀は得意そーだし、あのグループは。

 残念にも、って言うと失礼だけどステージショーは今日は「マギー司郎/ウルトラヒーローショー」がメインみたいで見るに値せず、って感じでのぞかず退散、ダーク大和さんか伊藤一葉さんだったら見に行ったのに、いや復活マジックでも使ったのかと思って、良かったもんなあ、大和師匠の「うさぎちゃん」のマジックはいつ見ても。「SFセミナー」明けの5月3日には「水木一郎ショー/デジモンフロンティアショー」があって4日は「美少女戦士セーラームーンショー」、6日には「堀江美都子ショー/おジャ魔女どれみドッカーン! ショー」があるんで気が向いたら見て見よー、水木さん堀江さんの歳とかとは無関係に変わらない表情&歌声はある意味とてつもないマジックだし。

 品川から浜松町へと戻って浅草橋の「文具会館」とかと並びたつオンリーイベントの殿堂っぽい雰囲気が週末ごとに立ちのぼる「都立産業貿易センター」で「あずまんがえくすぷれすSUPER」を見物、入っていきなり本部の席で卑怯にもハートにズンと来る品物を見つけて700円払って買ってしまう。「SFセミナー」で動物化について語る人に被ってもらえたらちょっと嬉しいかも(被るものなのか)。ふと見ると我が家にも1つある「実物大ちよ父ぬいぐるみ」が椅子にデンとすわって会場内を監視していたけれど、「1匹」って張り紙がしてあったのに突っ込む来場者だかスタッフだかがいてそーか「1匹」と言ってはいけないんだな、何せ「お父さん」なんだからと心のノートに注意事項として刻み込む。でも「1人」と呼ぶのもなあ、「人」には見えないもんなあ、「動物」にも見えないけど。「1父」?

 「ちよ父」関係は結構人気みたいであちらこちらのブースで例えばクッションとか、大小さまざまな縫いぐるみとか売られていて揃えるとそれこそ「100父」くらいになりそーだったけど、夢見が悪くなりそーなんで「これを着ないと大変なコトに」と書かれたTシャツを1枚買うに留める、しかしこれをどこで着ろと(どこでも着るだろ)。中身本物の小学生っぽい「美浜ちよ」のコスプレやら天然な感じが雰囲気出ていた「おーさか」のコスプレとかを遠巻きにしつつ何故か準備が始まっていたパン喰い競争の様子をながめつつ、30分ほどふらついてから退散、モノが「あずまんが大王」だけあって作品と似通ったホノボノとした空気の漂う、美少女系とかに割とありそーな熱気と殺気のあんまりない、良い感じのオンリーだったんで次もあったらまた行って、買わずに済ませた色違いの被り物を今度は揃えて買い込もー。

 殺気はあるいは有明に集まっていたかもしれないけれど、そっちはパスして「みどりの日」ってことで縁もあって無料開放していた恩賜公園をぐるりと散策、池の鯉が歩く人影を見るだに水際へと寄ってきて大口をあげてバシャバシャと水を立てる様に、普段からふんだんに人から餌をもらってるんだなー、ってな想像をする。狭い場所に先を争って頭を突っ込んで来てはこちらに大口を開けて見せる10数匹の鯉の迫力は怖いくらい。ピラニアに牛だって骨にされちゃう訳だよな。そんな激しい鯉をは違って真ん中の島には亀が何十匹も溜まっては岩の上で文字どおりの甲羅干しの真っ最中。遠目に見るにつけおそらくは日本に昔からいた石亀の類だろーと思ったけれど、動かない中に島から離れて近づいてきた亀のちょっぴり西洋風な感じにあるいは、海外から持ち込まれた亀を公園へと持ち込んで放した奴も紛れ込んでいるのかもしれない。しかし野生の(動物園水族館じゃない、って意味で)亀なんて久々に見た記憶が。実家の側のドブを歩いていたのを捕まえて「名古屋市農業センター」の池に放したのはもう25年は昔の話、だったかなー。恩返しにはまだ来やがらねーが。

 「集英社スーパーダッシュ」の新刊から残りを拾い読み。林日出夫さんの「アルティメットウォーズ」はテロの果てに極限までの不景気へと陥った荒んだ世界で人々の関心を一身に集めている殺人オッケーのゲーム「アルティメットウォーズ」のプレイヤーとして活躍している少年と、ホームレスに近い暮らしを続ける少女との出会いを描いたストーリー。とはいえ軸になるのは快速を活かして得点王として君臨する少年の生い立ちで、謎多い出生の背後にあったある出来事、そして少年の活躍ぶりにカケが成り立たなくなると危惧したオーナーによる陰謀といったエピソードを挟みながら、最後のバトルへと物語は進んでいく。よくある話、って言えば言えるけど1巻物として盛り上げピタリと締めてみせる潔さに好感。しかしいったいどんなスポーツなんだろーか、「アルティメットウォーズ」って。


【4月28日】 「くだん書房」で内田善美さんがよく売れるのは内田善美さんをよく買う人間がよく行ってるってことだろーけど、内田善美さんをよく買う人間が目立ってしまうのはその内田善美さんを買う人間の他に目立つ客がいないって可能性もある訳で、いいかげん内田善美さんを買い尽くしたその人間がいかなくなっても果たして内田善美さんに限らず本はちゃんと売れていくのだろーか、ってな心配も僭越ながらふと浮かんでしまったりする。「空の色ににている」も「ひぐらしの森」も「かすみ草にゆれる汽車」ももう持ってるんだよなー。まあ土曜日は他に1人2人お客さんもいたよーだし、見て80年代テイストの個人的には懐かしい商品もちゃんと揃って来ているんで、あとは場所さえちゃんと広まれば、ちゃんと商売になっていくんだろー。とり・みきさんとか揃え直そーかな。大野安之さんも集めたいな。旧版の「ゆめのかよいじ」とか。

 その大野さん、押井守さんとタッグを組んで発表した「西武新宿戦線異状なし」が角川書店から復刊、前の版ももちろん持っているけど今回はボーナストラックも入って重量感もたっぷりで、大塚ギチさんの凝った装丁ともあいまって密度の高い1冊に仕上がっていて、寝転がって読むとマジで手首が痛くなる。落として角を足にあてたらマジで骨、折れるかも。中身はといえば一頃の”押井テイスト”大爆発って奴で自衛隊がクーデーターを起こしたか革命勢力(そんなのどこにいたんだ)が騒乱を起こしたかして内戦状態になった挙げ句に出来てしまった首都圏の解放区に、赤い夢を求めて越境したミリタリーおたくの少年が、独立第3戦闘工作連隊第58戦車回収小隊、といーながらもその実カントクとゆーオヤジにトメってゆーインテリの力持ち、トッつぁんとゆー爺さんとゆースクラップを拾っては金目のものを横流しして喰ってるメンバーに入れられて、憤りながらも流された日々を送っている、ってのがまず前段。

 そんな彼らにある日、接触して来た若い女性のエラいさんが1人。かずかずの悪行をバラされたくなければ言うことを聞けと言って横田だかどこかにある何かを回収するように命じる。そこから始まる珍でもない道中は、シリアスな戦闘描写があれば女性将校だかとのあんまり甘くもないやりとりがあったりして、迫力満点色気もそれなりに。政治の現実を知り大人への幻滅も抱きつつ成長していく少年の物語もそこに紛れ込むけれど、やっぱり白眉は戦車戦に市街戦にヘリコプターを使った空中戦があの独特の、大野さんならではの質感量感スピード感あふれた線で描かれていて目にもすさまじいものを見せてくれる。

 押井さん原案のおっさん臭さ漂う男キャラとは対称的な美女キャラ美少女キャラが同じ世界に混在する感じがなかなか。したたかそーなケイが時に妖艶になったと思ったら、所沢球場で敵に囲まれ「ゲームセット」と妙に少女した顔で叫んでみせたりするあたりも見ていて楽しい。今度は女性キャラいっぱいの話を読みたいところだけど大野さん、今いったいどんな仕事をしてるんだろ。

 押井さんの方はといえば秋葉原の海洋堂なんかが入っている「ラジオ会館」の8階で開かれている「プロダクションI.G」のイベントでゴールデンウィーク期間中のトークショーとサイン会を開く予定。整理券は近く配られるよーだけど、確か平日の開催だったよーだからなー、一体誰が見に来るんだろ。イベント自体は「攻殻機動隊」なんかのセルとか「人狼」の原画だかが展示されてて、タダってことを差し引いてもアニメのファン的に見てそれなりに楽しい仕上がりにはなっているんだけど、奥でてぐすねを引いて10万円近くする版画を売りつけよーと待っているお姉さんお兄さんがいたりして、甘い言葉に惹かれた挙げ句にタダより高いものはないって事になりかねないんで入るのは強い意志なりまるっきりの無関心が必要かも。

 そりゃ欲しければアニメのシーンをピックアップして仕上げたシルクスクリーンなのかプリントなのか詳細未定な版画に10万円だって出して構わないんだろーけれど、キャラクターグッズとして買うにはそれほど魅力のある品物ではないし、限定10部ですべてに直筆サインがはいるってんならまだしも、その辺りがちょっと分からないしそもそもサインったって誰のを入れるべきものなのか、アニメーターなのか監督なのか原画マンなのか刷師なのか判然としないアニメ版画だけに、将来値うちが出るともちょっと思えない。個人的にはちょっと遠慮したいシロモノだけど、見ると「売約済」の赤札が結構吊り下がっていたから欲しい人も結構いたよーで、それはそれで善哉善哉、入ったお金で「プロダクションI.G」には次の傑作を作って頂きたいもの、ですね。間でタップリとサヤ抜く商社とかいねーだろーな?

 ぶらり回って「石丸ソフトワン」で北村龍平監督作品「VERSUS」のDVDを購入、何か売れてるみたいでレジに持っていったら在庫は店頭のみって言われた。それとももとも数が少なかったんだろーか。中身の方はもうすでに3度、イベントとか劇場で見ているんで帰って即座に見入るってことはないけれど(それより「ほしのこえ」だってまだ見てない、いや怖くって)、おまけの映像の方はあの迫力の殺陣がどーやって撮られたのかってメイキングを見て、スピード感にあふれたバトルが実際にスピード感たっぷりな中で撮られていたんだってことを確認して、演った役者さんたちの役者魂に感じ入る、なるほど皆さんスリムになる訳だよ。必殺処刑コップが取り調べの席でもやっぱり必殺処刑コップだったりした短編も入って4700円。安い、かな。


【4月27日】 「ゴールデンウィーク」に突入、したけど一人で勝手に出向くイベント以外はとりたてて浮いた話の一切ないのは日頃の行いの悪さ付き合いの乏しさ故、か。カレンダーもイベント以外は真っ白だし。そんなこんなでやっっぱり一人でとぼとぼと、JR総武線と地下鉄東西線と地下鉄日比谷線と東急東横線と市営バスを乗り継いで、はるばる「川崎市民ミュージアム」へと「ペヨトル・イン・西部講堂2002」にも登場する森村泰昌さんの展覧会「森村泰昌写真展 女優家Mの物語[M式ジオラマ(25m)付き]」を見物に行く。遠さでは佐倉の「川村記念美術館」にはかなわないけど、乗り物を乗り継ぐ手間が多い分、余計に遠く感じるんで早々は行かない美術館だけど、森村とあっちゃーやっぱり行かない訳にはいかない。

 で、内容はと言えば迫力だったら前に「横浜美術館」で見た個展の方がカラー写真とか多かった分、濃かった印象があるし質だったらこれは「原美術館」だったかな、レンブラントといった泰西名画に入り込む作品が「らしく」て良かったって感じがあって、女優になってみました写真のモノクロばかりを集めて70点くらい集めた部屋はわざわざ見に行かなくっても、朝日新聞社刊「女優家Mの物語」でも読んでいれば腹8分かも。どう化けてるか、って辺りがメインになってる作品なんで、リアルなプリントの写真集で見るのとは違った質感奥行きを楽しむ一般の写真展とか、物量なり大きさなりで常に見る側を圧倒する荒木経惟さんの写真展ほどには現場へと足を運ぶ意味が薄いかも。

 ただしかし、今回の個展はどちらかといえばそーした「女優」した写真はおまけみたいなもので、メインとなっているのは最初の部屋にある、湾曲したガラスケース内の実に25メートルにも渡って転じされた「泰昌変身コレクション」の数々。貸してくれるカセットレコーダーから流れる作家本人の解説によれば、自分の部屋を撮った写真を飾ったゾーンから左へとプラスチックの暖簾を潜ってきらびやかな「女優」の世界へと向かう森村さんの遍歴が、変身に使った数々のギミックに衣装なんかでもって綴られていて、バックに掲げられた写真なんかと対比させながら、これをこーしてあーなったのか、なんてことを実感できる。

 とにもかくにもよくぞ集めた、って感じで例えば被り物とか胸飾りなんかはタイに行った時に買ったものみたいだし、巨大な花輪は開店祝いなんかに寄せられる花輪の材料を集めて作ったものだとか。オードリー・ヘップバーンにビビアン・リーにライザ・ミネリにエリザベス・テイラーなんかに扮したシリーズを並べたゾーンなんかは、そこで使われた衣装もさることながら女優を目指した時に買っただろー靴が実に100足も並べられていて、それぞれが「ラガーフェルド」だったり「シャルル・ジョルダン」だったり他にも有名ブランドの靴がズラリで、芸術のためにはやっぱりここまでしなければいけないんだろーか、一体幾らかけたんだろーか、これで作品から得られたお金に見合ってるんだろーか、ってな疑問と感嘆を同時に抱く。イメルダには及ばないけどコレクションではアート界でトップかも、男女問わず。

 最後の部屋でこのジオラマを使ったフィルム「夢の部屋」が上映されていて、ズラリ並べられた衣装を左右にカメラが映していく間に次第に中身が加わっていって、それぞれが仏像チックなポーズや動きを見せてるよーになっていく、そんな映像を部屋の中央で見ていた作家本人が、衣服を脱ぎ捨てウィンドーへと向かって手を差し伸べ、体を這わせていく描写はおそらくは変身への願望なり、内的な欲求の解放なり、こことは違う場所への飛翔なんかを現していて、見ているうちに引き込まれ、ふたたび戻ってジオラマを見た時に、同じよーにウィンドーへと手を差し伸べ、中へと入り込みたくなって来る。ジオラマには市民ミュージアムが所蔵している動物の剥製とか、古い家具とかも使われていたりして、半円のガラスケースとこーした品物があって始めて成立した展示ってゆーかインスタレーションって言えそーで、その意味でもはるばる現地へと足を運んだ甲斐はあったかも。7月7日まで。

 とって返して渋谷でセガが新しく立ち上げた「ダーツバー」とやらの内覧会を見物。セガといっても運営主体はアミューズメント施設をやってるセガ・アミューズメントでプロデュースしたのが「クレイジータクシー」なんかを作ってる開発子会社のヒットメーカー。その内装はといえば、カウンターを挟んで左右にある部屋にそれぞれ数台づつ、アメリカ製のエレクトリックダーツの台が並べられていて、お金を入れれば遊べるよーになっている。エレクトリックダーツってのは、的事態がセンサーみたいなものになっていて、矢(って言うのかな)が刺さった場所から自動的に点数が計算されるよーになってる機器のこと。実は見たのは始めてなんだけど、面倒だと思っていた点数計算がリアルタイムで行われていくその様に、その昔に愛知県幡豆郡幸田町まで行って、全国に先がけて入った点数計算までも全自動でやった時のよーな感慨を抱いた。

 ゲームの種類もいろいろあるよーだけど、その都度ちゃんと計算をして本体上のモニターに点数とかを表示するよーになっているんで、プレーヤーはとにかくただただ投げれば良いだけでとってもラク。あと面白かったのは、的がメッシュ状になってて矢は針状の部分がゴムだか柔らかいプラスチックだかで出来ていて、投げるとメッシュの隙間に先端が入り込むよーになっていたこと。これなら投げても人に突き刺さることはなくって、人がガヤガヤとしている場所でも遊んで危なくないし、的だって穴だらけになることもなくって(ってゆーか元から穴だらけ)合理的。最初はちゃんと刺さるなろーかと思ってしまったけど、投げるとこれが綺麗にスパスパ刺さってダーツをやってるって感覚を味わえる。

 折角なんで点数を積み上げていくプレーを1回やったけど、何しろ始めてなんで狙った所にはまったく飛ばず、男子だったらここまでいかなければいけない、ってゆー500点には及ばない438点でゲームオーバー。真ん中に2度刺さったのは偶然も偶然で、カウンターに流れていた映像で見たプロのプレーを見るにつけ、その狙った場所に確実に刺していく凄さに人間、極めればどこまでも極められるものだと感じ入る。その昔流行った「プールバー」はお洒落っぽさが前面に出てしまった挙げ句にトレンドの波に飲まれて流行りの衰退とともに廃れてしまったけど、ビリヤードに比べて省スペースで素人でもそれなりに楽しめるオートダーツはゲームに感覚が似ている分、広く長く流行るかも。場内ではダーツの関連グッズも売ってるんで、通って腕前が上がってきたら「マイ矢」とか持って通ってみては如何。イベントに1人で行っては一言も喋らずに返ってくる”徘徊系ひきこもり”な当方にはちょっと縁遠い店だけど。道玄坂あたりで午後1時から翌朝5時まで営業中。


【4月26日】 なんて行ってたら手前ミソながらも産経新聞、例の「個人情報保護法案」の国会審議入りを堂々の朝刊トップで報じてちゃんと危機感たっぷりな所を見せてくれていて、こーゆー部分での勘所の良さは流石に「モノを言う新聞」だけのことはあると感心する。あとは「東京新聞」がトップだったかな。不思議だったのは朝日新聞でトップが何と中古ゲームソフトの合法判決についての記事。中身自体は社会面に掲載の映像ソフトへの影響も含めて全然たいしたものじゃなくって、これだったら片手で15分もあれば書けるなー、なんてことを思ってもみたりする。1週間をこの仕事だけにかけられるっぽい余裕は羨ましいけれど。

 それにしてもどーしてこれが、他のパレスチナとか辻元とか、もちろん「個人情報保護法案」とかを差し置いてトップになったのかってゆー事情を考えると、それそこは”市民”の新聞だけあって、資本が叩かれ消費者がトクをする記事には極めてセンシティブになっているんだろーか、ってなことに思い至る。その割には別に中古ゲームソフトの販売に万歳を三唱するよーなユーザーの姿なり声も紹介していないのが微妙。あるいは消費者運動大好きなデスクが勇んで売り込んではみたものの、手前の業種にも返ってくるかもしれない内容に大キャンペーンも晴れず当たり障りのない所で落ちつかせたのかもしれないなー。ちなみに産経新聞は2面で差し障りのない内容で展開。コメントが渡辺浩弐さんだったのはそれはそれで不思議だったけど。

掃除をしないと夢に出てやるぞ  「3月末に開かれた『キャラクターエンターテインメントコンベンション』で『あずまんが大王』の「ちよ父」の等身大縫いぐるみを見て速攻で予約してしまう。全長95センチ。床上50センチまで本で埋まった我が部屋のどこに置けというのだろう」(「SFマガジン」2002年6月号254ページ)。とゆー訳で置いてみる。置けないこともなかたけれどしかしやっぱりデカかった。

 背後に見えるのはその巨大さで実はLDプレーヤーが中に仕込んであるんじゃないかとまで言われた「Xbox」とか、その小ささに実は「Xbox」はこれを4つ束ねて箱で覆っただけなんじゃないかと言われた「ニンテンドーゲームキューブ」とか、買ったけどまだ段ボールすら開けてない「ナディア」の限定版ボックスとか、ほかいろいろなDVDにLDにゲームに「ぷちこのいっぱいたべておおきくなるにゅセット」だったりするけれど、自己主張の激しいそれらのどれをも差し置いても「ちよ父」にはサイズでもインパクトでも適わなかったりして、改めてそのすさまじいばかりの存在感に圧倒される。出したまんまだと夜とか夢に出てきて「よくもこんな汚い部屋に」とか言われそーなんで、しばらくは段ボールに入れて寝かして玄関に頃がしておこー。「SFセミナー」にはどーしよー、東浩紀さん触りたい? それとも「ミントのみみ」の方が良い?

 謎の勢力によって侵略されている地球が防衛軍を結成してこれに挑む、って話では例えば改稿なった「戦闘妖精・雪風」があり「E.G.コンバット」があり近いところだと「ガンパレード・マーチ」なんかもあってそれぞれに、見えない敵コミュニケーション不可能な敵と戦う恐怖だったり圧倒的な強さを誇る敵に挑む緊張感だったり仲間たちが次々と死んでいく苦しさだったりを、味わうと同時に感動を得たりして来た訳だし、女性が戦闘機に乗るって話だったら例えば「僕はイーグル」とか、見たことがないけどアニメーションの「青空少女隊」なんかがあったりもした。従って今、そーした話を繰り出すんだったらそれこそ超絶リアルな設定なり、突出したキャラクター描写なりをもって読む側を圧倒して欲しいって気にもなるけれど、ここに登場した高嶋規之さんの「オービタル・レディ」(集英社スーパーダッシュ文庫、571円)はそーした欲求に対していささか悩ましい部分があって、読み始めて悩み読み進めて悩み読み終えて悩みまくって今もやっぱり悩んでいる。

 何でも異星人が侵略して来たとかで、日本が中心になって地球防衛軍なんてものを設置して、侵略して来る敵と戦っているんだとか。で、主人公はその地球防衛軍に入る訓練をしている女性ってゆーか少女で、腕は悪くないけど猪突猛進なところがあっていろいろ壁にぶちあっては、その度に適切なアドバイスなんかをもらって立ち直り、どーにか卒業して配属になって少尉とやらに任官したらしー。聞くとその侵略者、宇宙にいきなりワープアウトしてくる技術を持っているからおそらくは地球よりははるかに進んだ文明を持っているんだと想像できるんだけど、不思議と地球1つ落とすのに手間取っていて、仕方がなかったのか地球人に化けるとか、地球人で宇宙人にシンパシーを感じている奴等を洗脳するなり協力してもらうなりして、破壊工作とかしながらじわりじわりと魔の手を広げているらしー。

 おびただしい犠牲を払いながらも半世紀もの間、宇宙人との闘いを繰り広げているってことはすなわち人々の意識だって組織だって相当に鍛えられて、宇宙人にシンパシーを感じている奴等なんて治安維持法どころか国家反逆罪なんてものを作って一網打尽にしてたって不思議はないのに、敵もさるものってゆーか、何故か堂々と(でもないけど)新宿は歌舞伎街に中国マフィアの「蛇頭」よろしくアジトを構えていたりして、戦時下ってことで常に厳重に警備されていて不思議はない防衛軍の基地に吶喊しては、その機能を麻痺させてしまう”大活躍”を見せてしまう。今のパレスチナとか見ればもう、戦時下にある地域がどれだけ日々緊張感に溢れた中で生活しているかが分かるけど、イスラエル軍以上におそらくは圧倒的な戦力を持っているだろー宇宙からの侵略者にさらされている割には、世界にいまひとつ緊張感が乏しいよーな気がする。

 もっともプロフィールを読むと好きなのは特撮ヒーロー物の世界で、見る映画も「宇宙戦争」に「地球防衛軍」だそーだから、そーした作品に描かれる、侵略はされているんだけど街はなべて事もなし、ってな感じの空気を入れた話として読めば、超エリートでもない直情径行型のヒロインがエースになったり戦時下にある国の首相が薄ら間抜けだったりしていて構わないんだろー。半世紀の間まるで適わなかった侵略者の撃退が、続く巻で主人公の少女の活躍でもって成されたってもちろんオッケー、だってヒロインなんだから、ね。ただ、願うならそーした”お約束”ぶりともーちょっと、出して読む側に”お約束”の世界なんだってことを分からせて頂ければ、リアルじゃねーとかシリアスじゃねーとかいった感情を抱かずに済むんだけど。


【4月25日】 もはや100年も昔に没した人間を甦らせては鞭打つに等しい所業かも、とか思ってしったくらに間延びしてしまった感があって、それはそれで場合によっては熱しやすく醒めやすい日本人の悪い部分を現してしまっているかもしれないんで問題ではあるんだけど、事ここに及んで辻元清美元議員を国会の場で追究したことろで、世の中的には”巨悪”どころか”虚悪”すらも追究できなかったりするし実際、どの質問者も泣かせはしたけど怒らせ口を滑らせすべてを語らせるには至らなかったりした訳で、分かってはいたけど事前にも事後にもまるでニュースとして価値のない、参考人招致になってしまった。

 にも関わらずメディアは夕刊でこの問題をトップで取りあげ大騒ぎをしているし、夜のニュースもほとんどすべてがこれをトップに持ってきて、あらかじめ決められていたスケジュールを消化するかのごとく、質疑のシーンを流して泣くシーンを流して国会停滞の問題をあげつらってついでに、同じ問題ですったもんだしている田中眞紀子議員と自民党とのあれやこれやを流して一丁上がり、ってな感じのニュースに仕立て上げていた。けど今、メディアがやらなくっちゃいけないことは今日審議入りした「メディア規制3法」のひとつの「個人情報保護法案」を潰すために徹底的に戦うことであり、また昨日審議入りしてしまった「人権擁護法案」を廃案に追い込むために徹底的にその問題点を指摘すること、だろー。

 その意味から言うなら、今日はそれこそどのメディアも、トップで流し堂々の論陣を張ってこれほどまでにメディアは問題意識を持っているんだってことを国の人たちに、知ってもらう意志表示をすることのよーな気がする。何を置いても、とはもちろんいかず例えば重大事故なり事件があればそっちが優先になるのは当然だけど、相手が中身の乏しい辻元元議員の参考人招致なら「個人情報保護法案」審議入りがトップに来たって不思議はない。そうならなかったことにどこかメディアの真剣さ、自分たちは除外されるんだってゆー安心感があるか或いは事の重大性が、あまり浸透していないよーな気がするんだけどどーなんだろー。これから毎日でもどんな審議が行われ、誰が何を言ったかを報じていく覚悟があるのかな、あって欲しいな。

 真剣味、って部分で考えるなら日本テレビのよーに、「個人情報保護法」が成立してしまったら一体どんな問題が起こるのか、ってシミュレーションで、政治家が企業から未公開株をもらったことを告発する情報を得て報道したメディアに規制がかかる、ってな例を挙げてていたりして、視聴者にイメージをしてもらおーって努力は感じられたけど、但しこれってしばらく前に朝日新聞が掲載したシミュレーションとまるで同じもの、だったりする。

 なるほど「リクルート事件」を事件化した朝日新聞らしーシミュレーションとその時は思ったけれど、同時に未公開株をもらった所でそれに対する見返りがあって始めて事件となったりする訳で、倫理的な部分で釈然としないものがあるけど大上段から「大犯罪」と斬って捨てるには難しい。実際、その後で朝日新聞は政治家からの「未公開株をもらうことが果たして巨悪といえるのか」とゆーなごもっともな指摘を掲載しててもいた。にも関わらず日本テレビのシミュレーションは、ただ未公開株をもらいました、ってな例を挙げたに留まっていて、何がどー事件なのかが伝わってこない劣化コピーのよーなシミュレーションをもってして、真剣に廃案にするために戦ってますって果たして言えるのか、判断にちょっと悩む。とは言え今は足とか引っ張り合ってる場合じゃなくって、一致団結して3法だから3点突破をしていく活動に集中すべき時なんで、日本テレビにもどーせだったらあらゆるメディアで開陳されているシミュレーションを逐一すべて、集めて報じてくれると世に情報がひろまって、運動にとってプラスになるかもしれない。気にせず頑張って頂きたい。

 そーゆーお前は「メディア3法案」にきっちり取り組んでいたのかってゆーと、永田町平河町麹町は散策してたけど目当てはまったく別のもの。懸案だった「中古ゲームソフト裁判」にいよいよ最高裁判所の判決が下るってんで最高裁へと勇んで向かったは良いものの、すでに満席とかで一昨日来やがれとばかりに追い返されたんで、時間は早かったけどまずは「テレビゲームソフトウェア流通協会」すなわち、中古ゲームソフトの販売は著作権法に違反はしてないって主張をして戦って勝訴した側の会見をのぞき、続いてメーカー側からゲタを預けられる形で裁判にのぞんで結果として敗訴したコンピュータソフトウェア著作権協会の会見を聞いて、それぞれの主張に納得しつつもだからこそ今後いろいろ難しいことになっていくんだろーな、ってな感想を抱く。

 ハードで9割ソフトで8割とかゆー仕切りの高さが、新品ソフト販売店の経営をなかなか立ち行かせなくなってるってショップ側の主張はもっともで、たとえ卵よりも鶏が先で中古があるから仕切りを高くしないとやっていないってメーカー側が言ったとしても、そこで中古をやめたら死ぬかもしれないショップが先にやめるのは苦しい所だったりするんで、ここはいわゆるビジネス的な観点で、話し合いなり対策なり対応が持たれてしかるべきかなー、とか思ってみたりする。あとショップ側が仮に中古がメーカーの経営に何らかの影響を与えているなら、中古売上の幾らかを還元しても良いって言い続けて来たことは実際で、今回の判決後もスタンスとして変わってないんだとしたらやっぱり話し合いは持たれるべきだろー。

 ただしこれらはあくまでゲームショップとゲームメーカーのビジネスを共にどう成り立たせるか、ってゆー商売上の争いであって、おそらくは裁判にのぞんだメーカー側にも共通する意識だったりして、神学論争をしている暇があるなら共に共存できる道でも探っていて欲しいと思うけど、それとはまた別の次元で、中古の著作物が大量に出回ることによって起こる新品への甚大な影響について、考えなくっちゃいけない時期に来ていることもまた、紛れもない事実だったりする。なるほど一度販売されたパッケージソフトには頒布権は及ばなくなるってゆー判断は、頒布権が何で生まれたのかを考えたなら妥当な判断かもしれないけれど、だからといって情報に対する対価を最初の1回ですべてまかなえってことになった時、その最初の1回が篦棒な高さになる可能性があるし、次の1回を賄うだけのリターンが得られない可能性もある。

 フリーダムな精神はそれは耳障りが良くって、認められた中古ソフト売買なんだからその権利をユーザーが堂々と行使して何が悪い、って言ってつまりは法律的には問題でなくなったんだけど、情報を与えられたら別の情報でもって対価とするなり、賞賛でもって満足を返すなりといったお金とは違った精神が行き交うことがフリーダムな世界にあったとして、ただ声高に「何が悪い」と主張する人がいたとして、悪くはないけれどでもなあ、ってことにならないとも限らない。権利が与えられるんだったらそれに伴い責任も負うのがギブアンドテイクって奴だとしたら、中古ソフト、ってゆーかあらゆる情報の場合にユーザーは、どーゆー形で情報の作り手にお返しが出来るんだろーか、って考えた方が良いってことになる。

 情報に対する対価をどう考えるのか、ってのは教育に依る部分も結構あるだけに、一朝一夕に変わるとはとても思えないけれど、しかしやっぱり把握していかないと、ITとやらで立国を目指すことなんで無理も無理ってことになりかねないだけに、メーカーのエゴもユーザーのエゴも超えたところで、どうあるべきか何が足りないかってな話が進められることになるんだろー。ハードとかソフトに打たれたIDか何かですべての著作物とユーザーが管理されてしまう世の中の息苦しさ、規制がもたらす進化スピードの減衰ってのを想定すると、つまりすでに実働可能な所まで来ている技術が実用化されてしまうことにはやっぱり反対して行きたい。

 それには何が必要か。メーカーが激しく自己主張ばかりしないこと、ショップが中古販売を錦の御旗に掲げて権利者を刺激し過ぎないこと、そんな協調的な雰囲気の中から「JASRAC」みたいな著作権を集中管理していく仕組みを練り上げること、ってな辺りになるんだろー。現在の3部作は終わったけれど闘いはまだ続くのか。それともコンテンツはすべてネット配信へと一気に移行となるのか。ネットにはならないだろーけど、いずれ遠からず実用化される技術だったりするんで予断は許されない。ここから始まった次の3部作品はさてはて、どんんな内容になってどんな結論へと至るんだろーか。先はまだまだ長そーだなー。


【4月24日】 むろんナンバーワンは「黄金右脚」こと柳下毅一郎さんを筆頭とする日本ブルースリーファンクラブ、じゃない「映画秘宝」の面々が、その感動を極限まで突き詰めた結果を肉体によって表現し、まま相手へとぶつけた「映画秘宝」所収のインタビューが日本一どころか銀河一であることに一切の異論はないけれど、それさえなければこれも結構良いセンをいってるんじゃないかと思った「SPA!」2002年4月30日・5月7日合併特大号所収の「エッジな人々」は、その名も”たけ焼薮竹”な馳星周さんが迫った周星馳監督インタビュー。間もなく公開される「少林サッカー」の面白さだけじゃなくって周監督がこれから世界的にメジャーになっていくだろー可能性なんかにも言及してあって楽しめる。「日本ではまだ有名じゃない」なんてご謙遜、国民の9割が公開を待ってますってば。

 とにかくもー絶賛の嵐で、早く見たいけどきっと大混雑しそーな予感もあってすぐに見られるかどーか心配。「エンタテインメントEXPO2002」の会場で流されていた予告編は、前に柳下さんのお誕生会で「少林足球」ってタイトルで流されていた時よりも長くて内容なんかに踏み込んであって、たとえばドーピングによって鍛え上げられた集団のシュートに真っ向挑んだ、ブルース・リーばりなトラックスーツのゴールキーパー「魔の手」のトラックスーツを吹き飛ばされてもゴールを死守する、その迫力たっぷりの映像に、参考にしたってゆー「キャプテン翼」よりもやっぱり死人続々な「アストロ球団」の「ビクトリー球団編」なんかを思い出し、だったらいっそ本当に「アストロ球団」をあのCGあのワイヤーアクションで映像化してもらいたいもんだと思ったけれど、笑いのカケラも「アストロ球団」にはないからやっぱり香港映画には向かないかも。ホームラン性の打球をキャッチさせるために球八が球七を真上に投げ上げるシーンを真上から撮った映像なんて見てみたいなー。いっそ実写版「ドカベン」の続編って手もあるぞ、周監督が里中で馳さんも岩鬼とかで登場。殿馬はナイナイ岡村に出てもらおー、無問題。

 これもさえ認めなければいけないことは分かっている。これもさえ認めなければ大前提としての「表現の自由」を主張できず従って、「表現の自由」に枷をはめようとしている「個人情報保護法案」なり「人権擁護法案」なり、はたまた「青少年有害環境対策基本法案」なりに面前と「ノー」を突きつけるだけの自信を内的に持ち得られなくなることは認識している。まず自由。つまりは表現されるまでを縛る法などあってはならない。その上で、表現されたものに対して現行法での例えば名誉毀損なり、プライバシーの侵害といった枠組みでもって批判が入り抗議が起こり、表現した側と、表現された側で話し合いなり裁判がもたれた挙げ句にその表現が是であったか否であったかが判断されるのが、形としては望ましいんじゃないかと思っている。救済が速やかになされ、名誉が速やかに回復され、傷つけられた心が癒されるだけの物理的精神的な補償が速やかに行われることが前提だが。

 だから非難はできない。けれどもモヤモヤとした気持ちがつきまとって離れない。「週刊文春」5月2日・9日ゴールデンウィーク特大号。自由民主党の山崎拓幹事長にまつわる「元愛人の赤裸々手記 愛人同行で外遊も!」と見出に打たれた記事が例えば前回までの、田中康夫・長野県知事が「プロヒューモ事件」に匹敵すると言う特定の信条を持った人物との好ましからざる接触を非難する記事だったら、むしろ歴史的なスクープだと賛意を送れたかもしれないものが、今回掲載された記事は国益とはまるで無関係に、公的な立場にあっても裸になれば1人の男性でしかない人物の、道徳的には好ましからざるプレイであっても法律的には何ら咎められることのない行為を綴ったものでしかないだけに、人間として下心をくすぐられる興味を抱けても、心よりの拍手喝采を贈るにはどこか釈然としないものがある。

 事実かどうかは知らない。それはこれから「週刊文春」と、山崎幹事長が争って行けば良い話であって、虚偽なら週刊誌側は山崎幹事長の名誉が速やかに名回復されるよう、務め今後そうした事態が起こらないよう注意を払いながらも、「表現の自由」に挑み続けてくれれば良い。それでもしかし、今というこの時、メディアの行き過ぎが規制したがる側にとって口実となりやすい時期にあって、たとえ絶対の自信があったとしても、また報じるに値する内容だと判断しても、否そうした価値判断を抜きにして表現するまでの自由にのっとって行われたものであっても、結果として規制したがる側を利するものになりかねたい所があって怖い。

 もしかするとそうした自主規制のマインドが蔓延することを牽制する意味から、「表現の自由」のスピリッツを最大最高に発揮してみせた、一種の鼓舞かもしれない。法律を作らないまでもいつでも作れるんだとちらつかせる権力に向かったレジスタンスなのかもしれない。ただ、結果として「表現の自由」が規制される事態になってしまっては元の木阿弥どころか元以前の暗黒がそこに大口を開けて待っている。だからやめておけば良かったんだ、とは重ねるけれどやっぱり言えない。今だけ談合したところでそれは談合でしかない。自主的な枠組みなんてものは風潮によってすぐに流されてしまうもの。いずれ同じ行き過ぎを繰り返しては規制を企む側に口実を与え続ける。

 けれどもやっぱり賛同は贈れない。政治とか、運動とかタイミングとは無縁に生理的な感覚が記事の内容を受け付けない。単純に、鈴木疑惑、田中疑惑で突っ走るライバル誌に追いつくために持ち出して来ただけものだとしたら何か寂しい。且つ、それが付け入らせる隙になってしまう可能性があることが残念でならない。かといってやっぱり載せてはいけなかったとは言えない。言ったら「表現の自由」が嘘になる。とは言いつつも載せて欲しくなかったという気持ちもある。それは「表現の自由」への圧力だろうか。分からない。何が正解なんだろうか。分からない。分からないけれどもその日はひたひたと迫っている。「人権擁護法案」が国会の遡上に乗り、やがて「個人情報保護法案」も乗ってくる。やれることは何だろう。どうしたらメディアのぼったくりと思われず、すべての人たちにそれらの法案が問題なんだという理解が得られるのだろう。分からない。分からない。分からない。

 まずは小手調べって奴? 「週刊新潮」にいよいよ登場の三浦しをんさん「人生激場」はいきなり歳をサバ読むし(21歳だってぇぇぇぇぇ)、話はオヤジの仁丹だしと爆裂妄想の類にはまだそれほど至っておらず、ごくごく普通の健康な女性21歳(嘘)が日頃見て聞いて感じていることをちょっとご披露差し上げましたおほほほほ、的な所に踏みとどまっていて従前からの三浦しをん読者としては「こんなもんじゃない」って思いを抱かざるを得ない。かといって「週刊新潮」の主読者であるオヤジが読んで「こりゃ一本とられたよ」って思えるかってーとなかなかに曖昧で、宙ぶらりんになっているよーな感じを抱いてしまう。

 読むと他の新連載が山田美保子さんだったり、窓際OLで肩書きの斎藤由香さんだったりと、女性の共感に働きかけるよーな面子が勢揃いで、そんな新しく獲得したい読者が読んでシンパシーを抱くコラムとして、三浦さんも位置付けられている感じがあって、どちらかといえば昔ながらのオヤジ雑誌の読者の立場で読んだ当方に違和感を覚えさせたのかもしれない。露悪的な部分も含めて男女問わず強引にねじ伏せた「週刊文春」の林真理子さんの域へと果たして達していくのか、それとも「あるあるあるある」的なシンパシーを抱く読者に絞って攻めてそっち方面にファンを掘っていくのか興味のある所。ともあれ第1回目ってことでまずはその門出を祝福し、今後の大健闘を祈ってケーキに蝋燭を立てて差し上げよう。でホントは何本なの?


【4月23日】 何が書かれてあるのかサッパリ分からなくって、それが日本語で書かれてあっても日本語だって頭にまるで映らなくって、結局どんな特集が繰り広げられたのかを今に至るまでまったく覚えていなかったりする、前号までの超絶ハイブロウハイパフォーマンスハイタッチな博報堂発行の「広告」が今号から一転。「特集 こども力」なんて「moe」とかあの辺の、若い女性に若作りしたい男性に子供が読んでも大丈夫な内容になっていて、そこに至るにいったい何が編集部に起こったのかと勘ぐりたくもなったけど、ハイセンスハイクオリティだったシリーズの直前はそれこそ「特集 おたく力」なんて感じがしばらく続いていたから、あるいは期をみてガラリを内容も体裁までをも変えていくのが、時代と寝るより時代を切り開く広告会社の出す雑誌の常、だったりするのかも。

とゆー訳で読んでみた「広告」Vol.352こと2002年5月6月合併号 は、「こども力」と銘打ち表紙に「ぐりとぐら」を配しながらもトップにいきなりアートディレクターで「キリン極生」なんかを担当した佐藤可土和さんとそしてソフト・オン・デマンド社長の高橋がなりさんを見開きで並べてかたや広告、こなたアダルトビデオを「子供力でつくりました」なんて言わせてチャイルディッシュなスピリッツが持ち得る突破力浸透力の凄さを紹介してる。と思ったら「ぐりとぐら」の文と絵の二人へのインタビューがあり、絵本の紹介があり著名人に聞いた想い出の絵本のコラムがあり、子供が熱中した玩具の歴史がありといった具合になかなかの充実ぶり。「spoon.」に「mammoth」って一部にはそれなりに知られた稚気にあふれたハイセンス雑誌の編集長へのインタビューもあって、社会的企業的メディア的ジャンル的な部分から「こども力」の存在を浮かび上がらせようとしている。

 博報堂の社員に聞いて同じことを5歳児にも聞いた対比なんかは、すれちまってよごれちまった大人の現実に踏みつぶされそうになっている息苦しさ貧乏くささせせこましさの漂う答え(「100万円あったら?」「住宅ローンに叩き込む」「マイブームは?」「犬」)に対して5歳児の放つ答えの大きさ清々しさ純朴さ(「将来なりたいものは?」「忍者」「行ってみたいところは?」「ホテル。広いから」)の何と胸打たれることか。まあ「たからものは?」に「遊戯王カード」と答えたり「100万円あったら?」に「ゲームたくさん買う」と答えたりと、夢の近さも気になるけれど(「月に行きたい」とかとは言わないんだねえ、それとも100万円では行けないと分かっているのかな)、「総理大臣になったら?」と聞かれて「クジラとか助ける」なんて言う子もいたりしてちょっぴり微笑ましい。自虐的でイカニモだけどそれなりに楽しめる企画、です。

 自虐的とゆーなら「こども力」とは別のレギュラーっぽい企画「電通vs博報堂」が焦眉。何かお題を出してそれに電通と博報堂とゆー日本を2分する、と一般的には思われている広告代理店のプランナーかマーケッターかデザイナーか誰かが答えるって寸法の企画なんだけど、自前の雑誌であるにも関わらずタイトルで上に電通下に博報堂を持って来るあたりがいくらサイズが違うとはいえ自嘲っぽい。かたや1兆5000億円こなた7300億円では倍も違うから仕方がないと言え ば言えるけど、ちょっとなんだか。かといってサイズで下の博報堂を上に持っていっても嫌らしいから難しいところ。ちなみい1回目のバトルのお題は「今提案したい『阪神タイガースブランド』論」。その勝者は? 読んだあなたが判断してください、個人的には阪神なんてどーなったって関係ねーんで。

 出てまだそれほど時間が経っている訳じゃないし、日本全国的にまだまだ有名って訳じゃないけれど、一部にそれでも熱烈なファンがいるからなんだろーかそれともこれが「古い校舎の見せる夢」って奴なんだろーか、紺野キタさんの「ひみつの階段1」がポプラ社から「ひみつの階段」シリーズだけを収録する形で復刊され始めて、出た直後からあちらこちらで宣伝しまくった甲斐もちょっぴりだけどあったかな、って嬉しさに身悶えする、まあこっちの宣伝なんて太平洋にスコップで砂をかけるくらいの力しかなかっただろーけど。即売会とかある度になるたけ紺野さんが所属している「サリー・ガーデンズ」の新刊を買うよーにしてるから、シリーズっぽい作品もだいたいは読んでいたりするんだけど、復刊されたポプラ社版はそれとは違ってまったくの描き下ろしが1本入ってて、長さもたっぷりあって読んで読みごたえがあって復刊の効能に感じ入る。

 その新作「Diary ダイアリー」は姉のよーに慕っていた女性が結婚することになった時に感じる少女らしー疎外されたよーな置いていかれるよーな感情が書き溜めても出せない手紙って形で表現されていて、相手を慮る気持ちとそれから拒絶されるかもしれない自分への憐憫めいた気持ちの入り交じった空気が伝わってきて、過剰な自意識になかなか相手のフトコロへと踏み込めずに迷う自分の性格との重なり具合を思ってジンとなる。小さくて細い体型が災いして(大きくて太い人には羨ましすぎる災いだけど)ご飯を少ししたよそってもらえず、かといって親切でやってくれてるだろー相手に大盛りにしてくれと言い出せない描写も主人公の性格を微妙に裏付けてたりする感じ。決別を付けた主人公の少女が最後の最後に大盛り一丁と言って特盛りにしてもらったエピソード、嬉しいけれど決別をつけられる若さ、決別を導いた友人の存在がちょっぴり羨ましくもある。もう1編の商業誌初収録の「See You」は滋バァファン(いるのか?)注目。時の経つのは素敵なこと、だなあ。


【4月22日】 こうと決めたら梃子でも動かないのがメディアの論調って奴なのか、小泉総理大臣が靖国神社に突如参拝した後で、メディアから発せられた毎度おなじみの「公人ですか私人ですか」とゆー問いに「内閣総理大臣小泉純一郎として参拝しました」って答えた映像を流したすぐ後で、NHKのニュースがいった「公人か私人かは明言を避けました」って言葉に爆笑。そりゃ確かに言葉として「公人」とも「私人」とも答えてはいないけれど、「内閣総理大臣」ってゆー公職中の公職でもって参拝したってことを踏まえれば、それは公人以外の何者でもない訳で、にも関わらず「明言を避けた」って言った真意がどこにあるのかを、原稿を書いた記者とかそれを通したデスクに聞いてみたくなった。

 考えられるのは公私は明言しないもの、ってゆー前提が局にはあってそれからはずれた言動はなかったものにしてしまう、いつもながらのフィルターが入ったのかもしれないけれど、あるいは公私のケジメを断定することで小泉さんが窮地に陥るといけないと、忖度してあーいった表現になったのかもしれない。まさか「内閣総理大臣」と答えたそのことは、文字面では「公」でも「私」でもないから「公私の明言を避けた」と愚直にも解釈したかんだろーか。だとすればNHK、流石は日本語の護持に務める国家的放送局だとここに拍手を贈ろー。小泉総理におかれましては自分の意志を解釈も無解釈もなく流布してもらうため、次に聞かれた時には相手がNHKならちゃんと聞かれたとーりに答えましょー。

 従って「HAPPY☆LESSON」は正しいアニメーションだと確定したので以後、僕の前で「ハピレス」のワルクチを言う時には面と向かって「もはや出尽くし感のある萌え設定を見え見えのアレンジで持ってきては意味不明な展開も強引に押し切って無理矢理見ている人を納得させよーとしている世紀末アニメ」と、なじってやって下さい「うぇーん」と泣きながら走り去りますから。まあそーした意見が出ても仕方のないところは累々あるけれど、今朝方千葉テレビで放映されたテレビ版の第3話はギャグてんこ盛りで間延びした感じもなければ途中、しっとりとさせられる場面もあって見ていて割に楽しめたって意味で、次につながる成果はあったとゆー認識に至っていたりする。

 そして何よりエンディングに流れる中川亜紀子さんの「夢の都 TOKYO LIFE」がテンポも良ければ唄い方も絶妙で、且つバックにながれる主要メンバーのSDキャラのてんでばらばらなんだけど、それぞれに特徴を踏まえた動きが目に楽しく心に気持ちよく、これだけでも存分に聴きまた見る価値があるってことが冒頭の、正しいアニメって確定につながっていたりする。お気楽と言わば言え。けどホント聴いてて気持ち良いんだよね、このエンディング。来月にもマキシで発売だそーで買うのはもー確定として、エンディングだけを見たいがためにDVDも揃って買ってしまいそう。1巻だけ買えば十分って気もしないでもないけれど、あるいははノンクレジットは2巻以降のどれかにしか入れません、なんて策略をKSSが繰り出して来ないとも限らないだけに用心肝心。金が……飛ぶなあこの夏も。

 ついでに正しいドラマと断言にはまだ間があるけれど少しづつながら近づいていたりするのが「鋼鉄天使くるみPure」。誰がどー逆立ちしても全然「くるみ」っぽいとは思えない、かもしれない彼女だけど、引きこもり少年が外部から与えられた不確定要因によってかき混ぜられ、目覚めていくドラマだと位置付けるならあの、何も考えてなさそーに天然で純真で無垢なくるみちゃんのキャラは必要不可欠なもの。それだけに巧さ故に作為とか下心とかが透けて見えてしまうよーな演技ではいけなったりする訳で、その意味で言うなら実写版「鋼鉄天使くるみPure」のくるみちゃんは、実に的確な演技によって現出させられているって言えないこともない。

 さらに昨晩放映分では、2人だけでややもすれば赤面も避けられない状態に陥っていた関係に、酔っぱらってバス停をひっこぬいては乱入して来た傍若無人な美女ってゆー、さらに別の要因が唐突ながらも爆裂的に加わって、ちょっとばかり動きが出てきたりして、先への興味がわき起こる。特撮でもメカじゃないからオープニングに出てきた女性はちゃんと出てくるって予想されるから、そんな美少女たちの登場なんかを待ち望みつつ、次はいったいどんな突拍子もない展開が訪れるのかを、期待を抱きつつ見て行くことにしよー。しかしいったい何者なんだろ、あのバス停酒乱女性は。まさか本編とは無関係?

 まあ、あれだけ大活躍をしてしまった以上はもはや無関係とは言えないんだろーけど、5月からNHKのBS2だかでスタートするアニメーション「王ドロボウ JING」の第1話の冒頭に登場するガイコッツなキャラクターは、正真正銘に無関係だったりするみたいでちょっと仰天。そんな凝った演出に、監督のわたなべひろしさんのスレっからしたアニメファンじゃなく、真正面からギャグを受け止め笑いこけるだろー子供たちを相手にしたそー、ってな監督の意識を見たりする。でもちょっぴりハイブロウ過ぎるかな、ゆうきまさみさんとか好きそーな間合いのギャグだしな。

 さて「王ドロボウJING」、SPE・ビジュアルワークスがプレスとか販売店とかを集めて開いた試写会で見せてもらったんだけど、落ちてきた男が地面に人間の形の穴を穿ちながらもぐっていったり虫歯に虫がいたりってなベタな描写を織りまぜつつも、「王ドロボウ」が狙ったお宝をゲットする物語を、見ている人の心を感動させるよーなエピソードを盛り込みつつ描いてみせてくれていて、動きはそこそこながらも「ロスユニ」みたく崩れることなんて皆無な絵ともども、ニマニマしながら見ていられた。エンディングは中嶋敦子さんの絵が美麗で繊細。BSなんで見られないけど一般向けの要素が強そーな作品なんで、いずれ地上波へと落ちて来るだろーことを期待して、放映を待とー。


【4月21日】 そーいや「東京国際ブックフェア」であの、世界でも最大級の印刷会社と自他ともに認める大日本印刷のブースに何故か、萌え萌えだったりやをいだったりな同人誌が展示してあって、何だろーと近づいてみるとこれが何と大日本印刷さま様さまがこれらの同人誌の印刷を請け負ってやがったことが判明。まあ子会社で西洋の美術家とか東洋の博物館の収蔵品のイメージデータをライセンス販売してたりする「DNPアーカイブ・コム」ってところのビジネスだったんだけど、マイナーな印刷会社が年に2度の大仕事で1年分の収益を稼いでいたりするらしー仕事に、天下のDNPブランドがなぐり込むたあ世の中よくよく不景気なのか、それとも逆に同人誌の景気がとてつもなくって大日本印刷としても見て見ぬフリは出来ないと判断したのか、時間があったらちょっと担当者に聞いてみたくなった。

 耳とんがり系で振り袖を着たいかにもな美少女が「はじめまして。」ってコメント付きで微笑んでいる絵柄のチラシに「おまたせしました真打ち登場! 印刷のスペシャリスト、まかせて安心」ってコピーが入っているのを読む限りにおいて、DNPが印刷のスペシャリストで本家で真打ちだって自覚を持った上で、同人誌の印刷に乗り出したことは明かで、他のこれまで同人誌印刷で稼いでいたところにはとりあえず「黒船来る」的な印象を持たれそー。問題はサービス内容で、この辺りは同人誌を実際に作って来た人に値段とか納期とかいったサービス面の違いを聞いてみたいところ。A5版44ページ50冊でクリアPP加工のアートポスト180Kg4Cの表紙がついて7万2100円ってのは安いのかそれとも高いのか。データ入稿につていはそこはデジタルで鳴る会社だけあっていろいろな出力アプリケーションに対応してるっぽいけど、これも専門家(同人誌の)の評判を待ちたいところ。

 場所がこれまた天下の大銀座、4丁目10番16号って牛の像が入り口に置いてあってアイスクリームが美味しいと評判の「畜産会館」のすぐそばに店を構えていることはなるほど便利ではあるし、加えて「池袋まで21分、秋葉原まで11分で遊んじゃおー」ってコピーをそこに入れていたりするあたりに、同人誌を作りたがる人の属性にある程度の関心をもっているっぽこともそれとなく伺える。銀座で遊ぼう六本木はすぐそば築地まで10分月島でもんじゃを食べよー、とかってな案内じゃー同人誌のとりわけ主要な顧客層を占めるだろー漫画の人たちは、あんまり関心をもってくれないだろーし(やや偏見、ってーか個人的な認識)。置いてあった同人誌を見ても印刷所として「大日本印刷」とも「DNPアーカイブ・コム」とも入っていなかったのは入れない方針なのかそれとも入れないよー作り手が求めたのかこちらが単に見落としたのか。希望すれば「印刷・大日本印刷」って入れてもらえるとしたらそれはそれで何だかちょっと凄いんだけど、どーなんだろ。

 雨の降りしきる中を会社に行ってちょい、仕事してから抜け出して銀座の「ソニービル」で昨日から開催されてた「プロダクションI.G」による創立15周年記念イベントのうちの「BLOOD」関連トークショーを見物する。出演は作画監督の黄瀬和哉さんとキャラクターデザインの寺田克也さんにそれから監督の北久保弘之さんとゆー、2人は揃っても3人は滅多に揃わないとゆー豪華っぷり。だけあってすぐにチケットも品切れになるかと思ったのに、割に最近まで残っていたのはメンバーからか醸し出される汗と熱量に、女性ファンの方々がちょい二の足を踏んでしまったからなんだろーかと想像する。会場、女性とか少なかったし。

 それでも始まる頃には満員に近くなった場内に、登場した我らが北久保監督は、ちょうど1年くらい前に「文化庁メディア芸術祭」で見た時よりも髪がばっさりと短く(といっても元が長すぎたんで普通の河村隆一くらいの長さはあるけど)なっていて、健康度も上がっているよーに見えたけど、でもやっぱり左手の多分人差し指を包帯で巻いていたから完璧とはちょっと言えなかったみたい。トークで寺田さん黄瀬さんから「次やりたいけどそれにはまず北久保さんの健康を」ってな話が出ていたくらいだし。それでも、北久保さん自身は健康になったってことを強調してたから、今ふたたびなあの高密度にして濃密な世界を見られる機会が来るのかな、スポンサーさん白川さんには是非にとお願いしたいところ。明日の某アニメの発表には顔、のぞかせるのかな。

 トークではそもそもどーしてキャラデが寺田さんになったかって辺りから入って、北久保さんは作画監督が黄瀬さんで作れることになったって社長の人に言われて黄瀬さんだったらあの、「どうしてこんなに絵がうまいのだ」と夢枕獏さんを感嘆させた(獏さんがうまいかは知らない)寺田さんの絵でも再現して動かしてくれるってことで頼んだって話を披露。この辺の経緯は、どこかで聞いたか何かで読んだか記憶があるけど制作の人は初めて聞いたっぽいことを行っていたからあるいはデジャヴュかもしれない。あと寺田さんにお願いするにあたって電話をしたのが押井守さん本人で、電話を受けたちょうどその時寺田さんは「攻殻機動隊」のビデオを見ていたそーで、世の中の不思議さにちょっと旨踊らせる。きっと驚いただろーなー、「ぴたテン」見てると沢城みゆきさんから「ぷちこだにゅ」って電話はかかって来るよーなものだし(違う)。

 黄瀬さんでもあの寺田さんの感じを出した絵を描くのはそれなりに大変だったみたいで、何枚も書いてはその中から感じをつかんでいったとか。それでもやっぱり未だ納得のいかない部分もあるよーで、いずれはリベンジってことも言ってるらしーって話が紹介されたから、本当に何か再び動く寺田絵が見られる日が来るのかも。寺田さんは自分の絵はもとより立体に描いているから、動いて驚きってことはなかったよーだけど、今回はどこかお客さんぽかったんで次があるならもっとずぶずぶに、アニメに関わりたいってなことを言っていたんでこれまた期待。最後は抽選会があって3人の描いたイラスト入りの色紙が景品として上がったけれど当然ながらあたるはずもなく、もらっていく人の背中を羨ましさいっぱいに見つめる。

 黄瀬さんはちゃんと綺麗な小夜ちゃんを描いてたみたいだけど、寺田さんは真ん中からちょいずらして顔の下が色紙の縁にかかるよーなレイアウトで男の顔を描いて寺田ファンには嬉しい1枚だったかも。北久保さんは自画像入り。遠くて分からなかったけど、「正装」ってことでその日も着ていた「クラブパンターニ」のTシャツがちゃんと描かれていたよーで、「読み泣き」ファン「パンターニ」ファンそして北久保ファンには家宝の1枚だったかも。15周年絡みで「I.G」のイベントは以後もまだまだあちらこちらで続くみたいで、とりあえずは来週末に秋葉原で絵画展みたいなものがあるとか。いわゆる版画とか売るみたいで不安ではあるけれど、グッズもあるよーなんでそっちにちょっと期待。「自爆ちゃんぬいぐるみ」とかあれば最高なんだけど、ヒモを引っ張ると爆発するギミック入りの奴。

 返ると東京創元社から何故か田中芳樹さんの「マヴァール年代記 全」(創元推理文庫、1000円)が届いてて多謝。しかし何故に田中さんのそれも「マヴァール」が創元から出るんだろ、これって角川書店からノベルズも文庫も愛蔵版までも出ていたんじゃなかったっけ、ってな疑問が起こる、ってゆーと嘘っぽくなるけどそこは大人の事情って奴で飲み込むとして、しかしやっぱりここんとこ、大塚英志さんの「サイコ」が講談社ノベルズから出たりといろいろ動きがあるみたいで、文化を育む出版社の収益を求める行動がもたらす行き違いかそれとも単に現場での感性のすれ違いか何かが、起こり始めているんだろーかと想像なんかしてしまう。ちなみに文庫は600ページ近くがって1000円なんで結構お買い得な感じ。表紙も山田章博さんでグッとファンタジーっぽさが増してます。あとがきでの「ハリポタ」支持の文も右同、ってゆーか耳痛。学ばねば。


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