縮刷版2002年12月中旬号


【12月20日】 なるほど「ワンダフルライフ」(是枝裕和、早川書房、560円)ってのがあったなあ、死後にいっとき人が留まる場所があって、振り返って生前の一番の思い出を見つけて、それを映画にしてもらうことによって次の場所へと旅立っていく話。思い出を見つけられなかった人、思い出を選ぶことを拒否した人は旅立てず旅立たずに留まってお世話係をするって点が、巣立てないでいる灰羽に似ているところもあるけれど、一応は全員に旅立つ資格があるって部分は、街の人と灰羽とで立場に決定的な違いがある「灰羽連盟」の設定とは差異があって、むしろ仏教で言うところの「中有」「中陰」に、「ワンダフルライフ」の世界の方が概念として近いよーな気がする、現実世界と重なっていて、小田エリカ演じるところのお世話係が現実世界を誰に気取られることなく彷徨う描写なんかも入っていたし。

 後に「ピンポン」で主役の窪塚洋介を喰って人気を獲得したARATAの始めての映画出演作だったんだけど、興行的には今ひとつだったから知らない人の方が多いのかもしれない「ワンダフルライフ」。寺島進さんとか谷啓さんとか脇を固めている人たちが結構凄いし小田エリカの地なのか演技なのか分からないキレっぷりもなかなかだし、派手さがなく静謐な絵作りは「灰羽連盟」なんかにも通じるところがあるから気になる人は借りるなり買って見ておいて損はないでしょー。ロケの現場になった古い建物がどことこなう「オールドホーム」しているのもマル。そーいえば「食糧ビル」も崩れかけた感じとか薄暗い地下の感じとかが「オールドホーム」していたなあ、やっぱ残して惜しかったなあ、でもって実写版「灰羽連盟」とか撮って欲しかった、「モーニング娘。」出演で、もちろんレキはカオリン飯田香織さんだ(でもってクウは加護亜依ちゃんだ)。

 それにしてもまさかこんな激しくて感動的なエンディングになるとは、第1話を見た時にはちょっと想像していなかったなあ、なんてことをいよいよ発売されたDVDの「灰羽連盟 COG.1」を見て思い返す。暖かい日差しが差し込むなかで目覚めたラッカがレキとかの助力を得ながら「いろんなことがあったけど私は元気です」的に成長していく話になるかって予想したんだよなー、あの爽やかな雰囲気から。それがだんだんとレキの内面に踏み込む話になって最後は完全にレキが主役でそれを逆にラッカが赦し癒し導く話になってしまうとは。同人誌の内容がどーなっているのかは知らないけれど、どーゆー思考からこーいった内容へと深化していったのか知りたいところ、なのでアニメーション誌の方には脚本の安倍吉俊さんへのインタビューをお願いします、終わってしまった作品は紹介しづらいのが情報誌だったりするんだけど、そこを是非に、でなければムックで1万字インタビューだ。

 さらにサウンドトラックで「ハネノネ」も購入、ジャケットのイラストがレキになっているあたりに作品におけるレキの立場の重さなんかを感じてしまう。エンディングの「Blue Flow」が短いテレビバージョンしか入ってなくって、マキシの方もやっぱり買っておこーと決心する。商売うまいねパイオニアLDCもランティスも。ラストの「Alies Grises」が涙もの、あの衝撃と感動のクライマックスが目にうかんで思い出し泣きしてしまう。全体にニューエイジミュージックっぽい雰囲気でジョージ・ウィンストンや溝口肇さんが好きな人間にはサントラってことを意識しないで堪能できる。どこで使われていたのか記憶にないジャズな曲が入っていてドラムが村上”PONTA”秀一さんだったりして、アニメのサントラにこんなにメジャーな人が、なんて意外に思ったけれど大谷幸さんがやってるってこと自体が意外なことだから良いのか。溝口さんだって「エスガフローネ」や「ぼくの地球を守って」をやってたし。

 ついでに「ウィッチハンターロビンの第2巻。とりあえずマイケルの素性が明らかになってそれからロビンが眼鏡っ娘にさせられる話が入ってて、それぞれに起承転結をつけながらもちょっとづつだけ謎が明らかになっていく展開が、シリーズ物としての素性の良さを感じさせる。早朝に電話でたたき起こされてすぐに2度寝に入ったロビンちゃんちょっと可愛いかも。今シーズンはどーやらこれと「灰羽」が購入DVDの核になりそーで、あとは「攻殻機動隊」が当落線上、「ギャラクシーエンジェル」はテレビで楽しむ作品、ってことで。「キングゲイナー」はなあ、見たいけど今さら見てもって感じだし、ってーかいきなり回収だし。「ブラックホーク・ダウン」といー「惑星ソラリス」といー、間違い多発のDVDビデオ、それほどまでに忙しいってことなのかな、それとも作るのがやっぱりまだまだ難しいってことなのかな。

 秋口ぎぐるさんの「ロンドンストーリー 第一部 メイベルと人狼」(ファミ通文庫、640円)を読んだけど直前の「バレッツ&バンディッツ」(富士見ファンタジア文庫)に比べるとうーん、判断にちょっと迷うところがあってそれは1巻では完結してないって所もあるけれど、出てくるキャラクターの設定になかなかに心を入れにくい部分があって、読んでてうーむと唸りたくなるから、なのかもしれない。まずは主役らしー少年のティム。彼には実は秘密があって人に捕まっちゃーまずい立場なんだけど、それが知らないとはいえ自分から虎口へと飛び込んでいく無鉄砲なキャラだったりしてうーむとなる。

 そんなティムを探していた貴族の娘のロネットも優柔不断さが目につくキャラで人を虐待するのはダメとかいいつつ人さらいを平気でやってしまってうーむ、放浪民のナジャって娘はロネットに敵対しているらしーんだけどそもそもの出自が今ひとつ判然としておらずうーむ、手に武器をはめて人狼とか錬金術師と戦うジュディって少女がホムンクルスの秘密を追う動機がこれまた判然とせずうーむ、といった具合に出てくる人たちの行動が今ひとつストレートな思考からズレてる感じがして、うーむうーむの連発になってしまう。とにかく出て来るキャラが多すぎて、誰が敵で誰が見方で何を目的にしてそれはどんな動機付けによるもので、ってあたりが見えにくいこともあって、手探り感の中で読み進んでいる感じがあって戸惑う。新聞記者のヴィッキーってキャラにも、男にはあんまりふれられたくないって言うあたりに何か秘密がありそーだけど、これはまあ脱いだら凄いとかそんな感じだって想像が働くんで、先に期待が持てる。このヴィッキーとそれからイラストおデザイン的に最高なナジャをフックに読み次いでいくことにしよー。ヒロインらしーメイベルにもーちょっと存在感が欲しいなあ。


【12月19日】 目覚めてビデオで「灰羽連盟」のラスト2話。「過ぎ越しの祭り」でわだかまりが消え誰も彼もが幸せになれそうな中に、それでも漂い始めた暗雲が最終話で一気に広がり嵐となって吹き荒れて恐怖に心が竦む。純粋に、心からラッカのことを心配していたよーに見えていたレキがラッカに向かって「傷つかないで済むように、心を閉ざして親切に振る舞えば、みんなあたしを良い灰羽だと言う」「あたしの心の中はこんなにも暗く汚れているのに」と吐露する場面、無償の愛なんてきれい事が存在することの困難さを突きつけられた気がしてそして、きれい事を言ってる自分の内面にある妬みや嫉みの心をのぞかれ暴かれた思いがして目を画面から離せなくなる。

 もちろんそーした幸せな者たちへの憎しみや嫉妬がレキの言動のすべてではなかっただろーことも分かるし、浮かばれない我が身を慰めるにはとことんまで我が身を卑下し落ちる所まで落とすしかないんだってゆー心理も分かるだけに胸が痛む。「裏切られるのはもう嫌なんだ」「怖かったんだ」「心から助けを求めて誰も返事をしてくれなかったら。ほんとうにひとりぼっちだったとしたら」とゆー思いを引きずり、とことんまでレキがプライドにとらわれ諦めに浸っていたらどんな結末になっていたかを考えると、今でも戦慄に身震いが走る。

 幸いにしてレキは自分の心情に素直になれたしラッカも自分を信じられた。素直になかなかなれない人間が躓き転び落ちていく未来と、救われ赦され癒される未来の分岐点で、レキもラッカも正しい未来を選んで進んでいけたのを見た時はもう、嬉しさに涙が滲んで仕方がなかった。レキが礫ではない別のレキだったことが示される場面の、部屋いっぱいに描かれた荒涼した風景は衝撃的で、それが指し示す灰羽たちの存在の厳しさにも心が重くなったけど、それでもひたむきに頑張れば、得られる何かがあるんだということがメッセージとして伝わって来て嬉しくなった。良い終わり方だった。良い終わり方で本当に良かった。

 結局のところあの街がどこにあって壁で囲われているのは何故で灰羽ではない一般の人たちはそんなところで暮らしていて疑問に思わないのはどうしてなんだろー、とゆー疑問は疑問として残ったままになってしまったけど、仏教用語で言うところの「中有」「中陰」の類を街になぞらえ、成仏までの49日を惑う魂を灰羽と思う中で、街の人は厳しい状況の置かれた魂の”巣立ち”を助ける一種のエージェントみたいなものと思えばそれほど気にならない。ラッカを主役に困惑から目覚め仲間たちの助けで癒され恢復し巣立つまでの軌跡をつづるアニメーションと理解していたら、実はレキが赦され癒されるまでを描くアニメだったんだと、最終回を見て第1話を見返して妙に納得してしまう。最初から出ていたのもそーいやレキだったし。

 「lain」の衝撃とはまた違うテイストでアニメの持つ力の凄さを見せてくれた「灰羽連盟」。完璧なまでの物語でもって癒され赦される可能性も感じさせてくれたって部分で、今世紀最高のアニメだと言い切っても言い足りない。明後日頃から発売されるDVDの売れ行きもきっとそーした人気の程を証明して、くれるとは思うけど放映された時間帯が時間帯だし地域も限られていて、万人に知られている可能性は小さいのがネック。マスに知ってもらえてDVDもじゃかすか売れて次の素晴らしい作品につながる軍資金も得られるよーな回路はないんだろーか。東京都のアニメ賞を是非にでもとってもらって、その名がちょっとでも遠くに届くことを今から祈ろう。

 もしかしたら発売されてるかもとのぞいた秋葉原ではまだ未入荷だったんで、「ゲーマーズ」で「フロムゲーマーズ」だけもらってペラペラと読んでいって、「小野憲史のゲーム雑記」なんてコーナーが始まっていたのを見つけて仰天する。ゲームソフトを取り上げてレビューするこのコーナーで、栄えある1回目に選ばれていたソフトがよりにもよってブロッコリーの「でじこミュニケーション」。ブロッコリーが展開する「ゲーマーズ」のチラシなんだから、ブロッコリーが作ったソフトが誉めてあって当たり前だろーし、実際に誉めてあるんだけど、それを書いたのがまがりなりにも「ゲーム批評」で編集長をやって、「メーカーにおもねらない公正なレビュー」を旨とする考え方の持ち主だと思われている人だったりするからややこしい。

 誉めてあって当然と一般に認識されている媒体だからといって、どちらかといえば公正さに足を置いた立場の人が、おもねってメーカーに都合の良いレビューを書けるはずがないし、書いたなんて思いたくない。誉めれば魂を売ったと言われかねない状況で、そう言われる可能性も重々承知で、それでも「打てば響くような展開が小気味よい」「開発陣のスキルの高さを感じさせる」「市場の評価が低い点が残念だ」と誉めている以上は、おもねったとゆーよりはむしろ心底より「でじこミュニケーション」を面白いと感じたんだと、理解すべきなんだろー。ってゆーか実際面白かったからねー、「でじこミュニケーション」、はやいとこ追加データをもらってこなくっちゃ。それはともかくもスタートしたレビューがどこまで続き何が取り上げられるのか、「げまげま」の次くらいに楽しみなコーナーとして注目して行こー。ところで小野さんは「とてもすごい店長」から上に行けたのかな。

 巻末で10月の終わりに「横浜アリーナ」で開かれた超ロングランなコンサートが1月23日に早くもDVDとしてリリースされるって案内があって心に「買うぞ」って決心が湧く。相変わらずの多層的な商品ラインアップで下から「デ・ジ・キャラット エディション」「P・K・O エディション」「エンジェル隊エディション」が別々で各2000円のライブCD、2枚組6800円のDVD、CDが3種類とライブDVDがセットになった3000本限定スペシャルパック(メモリアルリーフレット入り特製ボックス付き)って感じになっていて、迷いは微塵もなしに「スペシャルパック」を買うんだって気持ちが全身を支配する。こーゆーのがいるからブロッコリーも商売が成り立つんだろーなー。ともあれ楽しみ、応援セットを買って着込んでテレビに向かって絶叫だー(喧しい)。


【12月18日】 西荻窪で哲学者や詩人(兼コスプレイヤー=たぶん智)や精神科医や漫画評論家や漫画ライターや多摩美大講師(予定)やエロ漫画家やエロ漫画問題活動家やミステリー評論家やファンタジー評論家やプログレッシブロック評論家(兼英文学者)やエッジなイラストレーターや大阪ファンや編集者や編集者や編集者やユヤたんなんかがごちゃごちゃになった宴会で雑談しながらいつか猫が月へ船が行ったりするコバルト文庫の白い背の奴があちらこちらに埋まってるのを見たり「ザ・漫画肉」を食べたり「水色時代」が「スターボウ」で「フィジカル」だったりするの聴いたりして時間を過ごした後に1時間ちょいかけて帰宅して日記付けて寝ておきたら朝だった。年末の時間はこーして駆け足で過ぎて行くのである。ワインにシャンパンにビールが飛び交っていたけど持ち込んだ日本酒の1升瓶は空いたのかな、「龍力」って兵庫のあれは新酒なので冷やでお早めに。

 朝っぱらから年末進行の仕事をあちらこちらでこなして疲れる。1行も原稿を書いてないのに明日付けの新聞の面1枚の半分以上が僕の原稿だったりするのは何故なんだ、誰か仕事をしていないか仕事をする人がほかに1人もいないかのきっとどちらかに違いないけど、言って改善するものでもなくむしろ状況はどんどんと悪くなるばかりなんでもはや気にもならない。田町にある社会を裏から動かす会社のエレベーターホールにフラク・ステラの大きな作品が飾ってあるのを発見してしばらく眺めていたけれど、社会を裏で動かす会社の人たちにとっては見飽きた作品なのか誰もながめている人がおらず気恥ずかしくなる、今さらステラなんて遅れてるのかな、それともステラなんて眼中にないのかな、脳中になかったりするのかな。

 まあ見ても紙切れがベタベタと張られた上にど派手な色が塗られた作品なんで、印象派がエコール・ド・パリみたく見て瞭然な有名所とはとても思えないってこともあるのかも。市ヶ谷にある世界屈指の印刷会社のロビーにもそーいえばステラのこちらはタペストリーが壁からかけてあったけど、派手なカラーリングがぐちゃぐちゃに入り交じったデザインは誰がどー見ても大きな足ふきマットで、それが何で壁にかけてあるのか謎に思っている人も多いのかも。いっそ本当に足ふきマットにしてしまえば、会社の気っ風の良さも外に伝わるんだろーけれど、それだとマジで単なる足ふきマットと思い、それにしては形も不規則で色遣いも出鱈目だなーと思われかねないから難しいところ。いっそ横に値段でも書いておくか、足ふきマットの坪単価推定ウン10万円ウン100万円とかって。

 イルハン・マンシズの写真集が出ていたけれど荷物になるんで買わずに雑誌なんかをペラペラ。「サイゾー」最新号の「山形道場」の欄外にレッシグ教授の本人だか奥さんだかが「デジコTシャツ」を着てるってあるけど「デ・ジ・キャラット」は「でじこ」なんで「デジコ」はあるいはいわゆるライツがフリーダムな奴なのかも、鈴のかわりにカウベルがついてて喋る言葉の語尾が「みょ」だったりする。「ダカーポ」506号は巻末付近に「スカパー!」の見所を紹介する人として堺三保さんが登場しているけれど頭が黒くておまけに短くツンツンともしてなくって、どことなくアラマタさんぽさを覚える。本当に最近の写真なんだろーか。すぐ前のページに登場のとり・みきさんはもみあげが伸びてあごひげも生えたテクノ系ミュージシャン顔でこれまた意外。人って顔って変わるものなんだなー。僕だって10年前と大違いだけど、とくに額の面積が。

 あちらこちらに出没する割には未だ立ち寄ったことのない寄席だけど、この本を読んだらちょっとどころかマジに行ってみたくなって来た。柳家小さんさんの孫でバレエダンサーの小林十市さんの弟にあたる柳家花緑さんが落語の見方楽しみ方をあちらこちらの部分から丁寧に解説した「柳家花緑と落語へ行こう」(旬報社)を仕事で読んだんだけど、冒頭から「浅草鈴本演芸場」や「新宿末広亭」といった寄席がどういう仕組みになってて値段がどのくらいでどこを見ると面白いかがイラストで丁寧に紹介されていたり、「寿限無」や「芝浜」といった作品がどんな内容なのかがあらすじで記されていたり、落語家で知っておくべき35人がプロフィール入りで紹介されていたり、物故した名人の例えば古今亭志ん生さんや三遊亭円生さんや柳家小さんさんといった人たちのどんなCDを聴いたらいいかが紹介されていたりして、寄席に行くにもCDを聴くにもどんな噺を選ぶにも、どこから入ったらいいかがそれとなく分かって気持ちにとっかかりが出来る。

 そーしたガイドとしても分かりやすい上に4つある落語の団体の「落語協会」は春風亭小朝さんで「落語芸術家協会」は三遊亭小遊三で「三遊亭円楽一門」は円楽さん、そして「立川流」は立川談志さんにそれぞれ花緑さんが体当たりして、いっしょになって下さいそして僕が作った理想の番組を実現してくださいってな嘆願をしている部分に、花緑さんの落語のために何をすべきか、何がなされるべきかを真剣に考えている様が伺える。もっともいろいろあっての分裂だっただけに花緑さんがお願いしてもすんなりまとまらないのは当然で、談志さんは「やりゃあいいじゃないか」と言いつつも「オレが居る」とひとり天才がいることで引っ張られ底上げされることへの確信を吐露しているし、小朝さんは「ちょっと早い、あなたは今もっと、自分のために走るべき」と諭しまずは花録さんが抜きん出た存在になることを促している。

 円楽さんは「よくぞここまで考えてくれた」「全面的に賛成します」と言葉だけならとっても前向きだけど社交辞令なのか微妙なところ。むしろ「何派でも上手けりゃいいんだよ」ってあたりに本音が出てたりするのかも。小遊三の「道は遠いね」ってあたりが客観性も含めたリアリティのある見解なんだろーけれど、でもやっぱり見てみたいよね、「余一会」での木久蔵文珍文治春団治歌丸米朝と続いて「仲入り」後に小三治円歌馬風円楽小遊三が上がり最後に談志さんがトリを務める”夢の寄席”。落語に行かない僕でも知ってる名前がズラリ並んでるもんなー。


【12月17日】 とゆー訳で「ときわ書房本店」に行って「世界初! 返金保証付き! 『四日間の奇蹟』朝倉卓弥先生サイン会」の予約をしたら予約番号20番でほかにも電話での予約も10人20人あるみたいで、来週の実施に向けてまずまずの人数が集まって来ていることを知る。都心部だったまだしも東京の真ん中から30分で新宿からだと1時間もかかるよーな場所に皆さんよく集まるものだと、”世界初”のインパクトの大きさに今さらながらに感心する。中身については会社に流れてきていた見本の冒頭をペラペラっと読んでサヴァンな話っぽい感じにちょっと身構えてしまって続きが読めないでいるんだけど、これほどまでに大々的に売り出してしまえる自信が作者にも出版社にも書評の人にもあるってことを鑑みるに、読んで間違いのない作品なんだろー。前金にしないで読んで価値があると思えば支払う投げ銭式にしたらさらに根性、見せられたかも。本屋さんがそれでは大変だけど。

 SME・ビジュアルワークスから来た音楽CDのリリース予定のチラシを読んで吹く。いわゆるトリビュート物って奴なのかな、「愛のメモリー」の松崎しげるさんが1960年代70年代にヒットしたアニメーションの主題歌を唄ったアルバムなんだけど、「がんばれ! 赤胴鈴之介」や「鉄腕アトム」や「ガッチャマンの歌」にマジって「ひみつのアッコちゃん」ってのがあって、顔は見えないからともかくあの声でどーやってこの歌を唄っているのか妙に興味をそそられる。あるいはアッコはアッコでも、和田アキ子さんの”秘密”を高らかなに唄い上げた曲が入っていたりしるのかな、「リーブ21」のCMを持っていかれたこともあるし。

 東宝ビデオからは「アーリーレインズ」ってOVAの案内が。西部劇の世界を舞台に女の子のガンマンとか酒場の歌姫とか大富豪の令嬢とかってな6人の美少女がくんずほぐれつの大冒険を繰り広げる内容、って聞いて伊藤明弘さんの「ベル☆スタア強盗団」なんかをふと思い出しつつ、ミニスカートをはいた保安官の娘とかアイパッチした二挺拳銃の女ガンパーソンとかってなありがちなキャラクターに80年代黎明期OVAっぽいテイストも感じつつ、どんなものが出来てくるのかと来年2月14日のレンタル開始に気も急かされる。とはいえ作っているのはOLMで監督は「劇場版ポケットモンスター」の浅田裕二さんとゆー人だから、出てくるものも漫画映画としてはそれなりにそれなりなものになっているんじゃなかろーか。伊藤さん的なリアルでスタイリッシュで荒唐無稽さも持つガンアクションが期待できるかは分からないけど、とりあえずは川上とも子さん演じるミニスカ保安官期待しよー、むろん見えるかって点に。

「Yahoo!BB」のモデム配り隊が「サンケイビル」の地下1階にも遂に登場、ってもすでに都下のあちらこちらに出没してはサンタクロースの格好なんかをして、2カ月無料とゆー甘い言葉にキャンペーンギャルの媚態でもってモデムお持ち帰り作戦をアピールしてたりするから、大手町への登場も今さらって気がしないでもない。それにしてもいったいどれくらいの広範囲で出没しているかは知りたいところで、経験だと「京葉高速鉄道」と「京成本線」が重なる東葉勝田台駅でも見かけたし、「京成」だったらはるばる遠い「佐倉」の駅の改札前にもサンタの格好をして叫んでいるギャルを先々週に見たばかり。あそこで果たして「ADSL」が利用できるのかは謎だけど、ともあれじわじわとその勢力を拡大していることは確かで、遠からず印旛沼から霞ヶ浦を超えて鹿島灘すら通り過ぎ、東北北海道国後択捉アリューシャン列島を渡って遙かアラスカの地で、氷原にピッタリなサンタの格好で「ADSLモデム」を配っている姿を見かけることになるんだろー。北極点到達も近い?

 まるで天野嘉孝って表紙絵と「破壊神リリス」ってゆー副題に面白いに違いないと思い買ってみた小沢章友さんの「荒野狼 破壊神リリス」(徳間書店、819円)を読んで唸る。99匹の羊に混じって1匹だけいる狼よ目覚めよとチクタクマンじゃなく神が言い、羊の群に身をやつしていた狼が目覚めて魔物とバトルを始める設定にモロ、内面に眠る抑圧されたパワーを「虎」に例え従順でおとなしい羊に混じって皮をかぶって爪を研ぐ精神を「狼」に例えた平井和正さんのモチーフを感じてしまったんだよねえ。それにしては平井さんにあった情念が主人公には足りない気もするけれど。これで名前が龍一じゃなかったら途中で沈黙のうちに目をつぶりたくなったかも。

 まあ、いつの時代もこんな自分は実は本当の自分じゃないんだって思いたい人間の心理はなくならないもので、活躍できる非日常を求める気持ちがこーゆー本を好むのも分からないでもなく、だからこそ書かれ本として売られることになったんだろー。それにしては眠る虎、皮の下の狼の目覚めがあっさりし過ぎな上に敵とのバトルもすっきりし過ぎで盛り上がりもなければ危機一髪もなく、エンディングもあって当然な帰結だったりして、もうちょっと奥深くてドロドロとしたバトルを期待していた目には、どことなく物足りなさが残る。表紙の絵も小澤るしあさんとゆー聞かない人。ノベルズならではの敷居の低さで手に取れ難しいことを考えないで1時間くらいで読み通して、ちょっとしたカタルシスをエクスタシーを味わえる娯楽のコンビニエンスと思えばなかなかの良品。けどやっぱりもーちょっとだけ迫真のバトルと情念のほとばしりを読んで浸りまくりたい気も、続くんならその辺を是非に。


【12月16日】 許さーん、と怒髪が天を衝いてしまった人がおそらくは300万人くらいいただろーと想像する「聖の青春」作者の大崎善生さんと女流棋士の高橋和さん婚約のニュース。他に未婚の女流棋士がたくさんたくさんいたりする中で、よりによって一番の美少女(という歳でもないけれど)をかっさらって行くとはおっさんちょっとやりすぎじゃないかと、大崎さんに向かって1万時間くらい問い詰めたくなる。いくら「将棋世界」の編集長として同じ業界に長くいて、最近では作家としても大活躍している大崎さんだからって、20歳近くも歳の離れた人をかっさらっていったこの婚約、未婚の女流棋士たちは間を飛ばされたって怒り未婚の男性棋士も横取りされたと嘆き悲しむんじゃなかろーか。

 たとえ同じ業界の人が祝福したって全世界1000万人の和ちゃんファンは許さないし、あるいはファンはファンならではのおおらかな心で許しても僕は絶対に認めないので、今後大崎さんの本を書店でみかけたら、上に別の誰かの本を重ねて見えなくしたり棚差しの本をひっくりかえしたりしてイジワルをしまくることにしよー。でも「聖の青春」だけは万人に読んで欲しいから前だしして平台に積むけどね。それにしても林葉直子さん以来と言われた美少女棋士も既婚となって一体何を楽しみに女流将棋界を見ていけばいいのだろう。かくなる上は大崎さんに習って先物買いに勤しむか、島井咲緒里さんとか鈴木環那さんとか坂東香菜子さんとか眼鏡っ娘な上田初美さんとかがどー発展していくのかを観察して。

プレミアリーグのゴール裏では考えられない華やかさ、ってか日本でもヴェルディくらいか  「国立西が丘競技場」では東京ベルディ1969の応援団がいるゴール裏で立ちっ放しで「天皇杯」の対大宮アルティージャ戦を見たんだけど、昔みたいにカズも武田もラモスも北沢も都並も藤吉もいなければ前園も石塚もいなくなってしまって超有名選手が誰もいないにもかかわらず、他のどこのチームなんかより女性のファンがたくさんいて、フェンスにかぶりついて応援している姿があってちょっと驚く。もしかすると選手が世間的に有名かどーかはもはや無関係に、「ジャニーズJr」を応援するよーな感じで茶髪に無精ひげだったりつるつるお肌だったりするイケメンなスポーツ選手を愛で眺めるスタイルが、ヴェルディのファンのとくに女性の間には確立されていたりするのかもしれない。「天皇杯」ではさっさと負けて、シーズンでもここしばらく優勝から遠ざかっているのに、選手の人たちがいつも日溜まりの猫よろしくゆるーりとしていられるのも、こーした熱烈なファンが支えているからなのかも。

 家から徒歩3分の所にある本屋で”世界初”とか銘打って”気に入らなかったら返金しますサイン会”が開かれるって案内が掲示されていて気になる。賞金1000万円の大盤振る舞いで話題になり、受賞した作品を選考委員が誰も彼も絶賛していることでも話題になっている「このミステリーがすごい大賞」 の大賞金賞を受賞した朝倉卓弥さんの「四日間の軌跡」を買って読んで値段ほどの価値がないと思った人には代金を返しちゃいますってゆー内容。「本の雑誌」なんかにもすでに告知が出ていて確か船橋市に在住している茶木則雄さんが仕掛けたイベントで、批評家の人がここまで推すからにはきっと凄い作品なんだろーとゆー気がして来る。まさか読んで不満な人への返金を茶木さんがポケットマネーから支払うんじゃないとは思うけど、名を掛けて本を誉めるその姿勢にはちょっと感じるものがある。のでここは予約してサインをもらって読んで返しに行って受け取った返金で茶木さんの「帰りたくない」を買って差し上げたら……喜ぶのかな。


【12月15日】 バケモノが出そーなペンションとバケモノしか住んでいないマンションの、どっちが好みかと聞かれればどっちも本当なら嫌だけど、坂田靖子さんの手にかかればどっちもお気楽に楽しく不思議で暖かい場所になってしまうから面白い。白泉社文庫から出た「ライラ・ペンション/ノーベル・マンション」(白泉社、630円)は、違った2つのシリーズが1冊に入ったお得なコミックス、ってたぶん各シリーズごとだと1冊にするにはちょっと短くって、ほかに短編とか探して来ないといけなかっただろーから、厚めになってもまとめるのが最良の選択だったかも、まあ厚いったって400ページって所だし。

 前半分の「ライラ・ペンション」は両親が海外に行ってしまった少女が、口やかましい叔母のやっかいになるのを嫌って一戸建ての家を借りたらこれがなかなかな物件。床はギシギシ扉はガタガタのまるでホラーはウスだったけど、3000円とゆー格安の家賃に惹かれて結局同級生たち2人といっしょに部屋をシェアして暮らすことになる。あとはとりたててホラーなエピソードとかは出てこないで、むしろ3人3様な女子高生たちのセーシュンな物語が繰り広げられる。トシちゃんとかスティーブ・ウィンウッドとか出てくる音楽の描写が80年代してて懐かしい、ポスターなんて「なめネコ」だもんなあ。今は割にコミカルなキャラが多い坂田さんだけど、「ライラ・ペンション」は割に初期の雰囲気に近い細面でシリアスな表情も見せてくれるキャラになってて懐かしくもあり、逆に目新しくもある。3人娘だと下宿経験のある大人っぽさ漂うコウさんに惚れ。

 いっぽう「ノーベル・マンション」は、牛とか頭に角のある男とか奇妙な輩が暮らすマンションになぜか入居してしまったデザイン事務所つとめの青年が、ドタバタとした暮らしに驚き戸惑いながらもやがて馴染んで最後には愛着すら感じてしまうよーになる話で、「伊平次とわらわ」ほか奇妙な生き物とと暮らす羽目になる人間の戸惑いと優しさを描く”坂田調”が存分に出ていて楽しめる、不思議世界のシュールさもたっぷりだし。マンションが崩れてしまった後で地下1階に残った不思議な少女と巨大な物の怪との暮らしを描いた「B1」はさらに”坂田調”、嫌だったはずの物の怪たちとの暮らしが知らず楽しくなってしまった青年が、消えてしまった少女を心配する姿に妙に同感してしまう。非日常に慣れると人間、当たり前の日常がツマラなくなるのです、W杯また来ないかなー。

 なんていくら願ってもW杯は戻って来ないんで代わりといっては何だけど、とりあえずはサッカーが見られる「天皇杯」を見物に国立西が丘競技場へと出向く。カードは「東京ベルディ1969vs大宮アルティージャ」。下馬評なんてするまでもなくJ1チームのベルディがJ2大宮を一蹴して次にコマを進めるんだろーと思ったらこれがどうした。試合が始まってもエンジンがかからないのか中盤でダラダラとボールが漂っているベルディに対してアルティージャはボールをとったら左右に振って前線へと流してクロスを入れてシュートで終わる、素早くて素晴らしい攻撃を何度も何度も見せていて、これはヤバいなーと思った前半も半ば過ぎ、やっぱりサイドからのセンタリングが飛び込んできた選手の足下にピタリを収まりシュート、ゴールと結びつく華麗な攻撃。後半にもシュートがこぼれたところを再びミドル気味に叩き込んで2点をリードする”番狂わせ”を見せる。

 っても所属しているディビジョンが違うから”番狂わせ”って言われるだけで、試合を見ていればアルティージャが堂々の”横綱相撲”を取ったと感じて当然の内容。中盤でのキープがまるで出来ずさっさとサイドに振ればいいのに、見えないのか見たくないのかベルディの中盤はパスを出さず前に突っかけようとして奪われ攻められる繰り返し。サイドに出してもそこには1人しかおらず、誰も前に走ってないし後ろにフォローが来ないから、そこを起点に前に出せもしなければクロスを入れてシュートにつなげるプレーもできず、2人で寄ってくるアルティージャのディフェンスの壁をドリブルとフェイントで抜けよーなんて、ストイコビッチでもなければ無茶なプレーを繰り返しては、これまた跳ね返されるプレーを繰り返す。

 ディフェンスのロペス選手をトップに挙げてサイドから早めに放り込むパワープレーが出た後半こそいい形を何度も作ったけれど、ここで決められなかったのが最後まで響いて無得点。前半からこれをやっていてばと思ったけど、その分ディフェンスが手薄になっただろーから逆にもっと点差が開いてしまったかもしれないんで、エジムンドに帰られてしまった段階で、「天皇杯」の初戦負けもある程度は決まってしまっていたのかもしれない。

 三浦淳宏選手がいて前園真聖選手がいて石塚啓次選手がいて永井秀樹選手がいて北沢豪選手もいたりした、名前だけなら綺羅星のごとく輝く選手が中盤に揃い踏みだったはずのチームなのに、実質今期の最終戦となったこの試合に出たのは今期限りな永井選手だけで動けたのも最初のうちだけ。トップも今期限りで放出らしー”和製ロナウド”とかつて呼ばれた矢野隼人選手では期待したよーにもなかなかに厳しいものがある。ロナウドっても坊主だった高校時代の相性が今に残っているだけのことで、短めながらも伸びた頭を金色っぽくした矢野選手にはもはやロナウドの面影はなく、一瞬を切り裂く凄み怖さが漂わない。それもボールがトップになかなか入らないからのことで、ポスト役としてフォワードを活かせるチームに入るとかすれば化ける可能性も有るのかお、まだ22歳なんで一花咲かせて頂きたいところ、地元に帰って地元に帰った小倉とグランパスエイトのツートップを……務められるかな、存在感だけならウェズレイ、バスティッチに負けないんだけどなあ。

 ガファリを見るのも疲れそーなんで両国国技館はパスして近所の西武百貨店で「ジャック・ウルフスキン」の手袋を正月のスポーツ観戦用に購入して帰宅、手のひら側についているスリップ留めのゴムのつぶつぶが例の足跡形になってて妙に可愛らしい。「天皇杯」は名古屋グランパスエイトも清水エスパルスも湘南ベルマーレもジュビロ磐田もとりあえずは残っているよーで、同志社大学が早々と消えてしまって1月2日の国立を寂しく感じてる人みたいにはまだならなくて良さそー。眠い目で「ギャラクシーエンジェル」をビデオ鑑賞、お話はまあこんなもんだろーけどセリフの掛け合いが素晴らしくって音響の勝利と感心する。先週今週と真っ当なギャグアニメが続いたんでここはひとつシュールかシリアスなのを1本、見てみたいところ。でなければメアリーさん虐めとか。ショタは出なくてもメアリーさんにはもっともっと出て欲しいのに一蓮托生なのは残念、その辺を勘案した話を是非に、てもう遅いんだろーけど。


【12月14日】 秩父宮でラグビーとか見ようと思ったけど気力体力金力に衰えの目立つ中を寒風に立つのも厳しいんで家で静養、しててもつまらないんで近所の「ダイソー」に行って100円漫画の棚から石ノ森章太郎さんの「八百八町裏表 化粧師」4冊をまとめて買ってきて読む。これでたったの400円たあ世の中果たして間違っているのか正しいのか。これまで呼んだことのない話でちらっと読んだ限りだと化粧の得意な兄ちゃんが、女性の恋とかいろいろな悩みにメイクで答えるってな話かと理解したけど読み通したらこれが大違い、立派にビジネス漫画でありました、化粧品業界とか広告業界とかを舞台にした、ただし時代は江戸時代だけど。

 式亭小三馬は化粧品屋の若旦那、といっても先代三馬は滑稽本洒落本の作家として遠く全国に名を知られながらもすでに亡く、小三馬は化粧品を売ったり女性に化粧を施す商売を切り盛りしてはなかなかの商いをあげていた。というのも彼には顔だけではなく世の中にまで化粧を施す、すなわち広告宣伝の才覚があって、有名所の花魁を毎年ポスターにして配ったり、品物に付加価値をつけて売ったりしては世の中の評判を取っていた。今ではそんな評判を聞いてか他の店の宣伝をプ請け負ったり何かのブームを創出したり、果ては政に関わることすら担当するプロデューサーとして幕府の重鎮にも重宝がられる始末。時々は大手の邪魔も入るけど、そこは持ち前の才覚と努力と仲間たちの強力で、華麗に巧みに切り抜けていく。江戸の人たち相手にただの水を売って100両を200両にするなんてちょっと凄い、って現に今の僕たちはただの水に何百円も払ってたりするんだから、小三馬も生きていたらあれこれ商売のし甲斐もあっただろーなー。

 「日本経済入門」から「HOTEL」といったビジネス絡みの漫画を結構書いててそれが晩年の飯の種になっていたっぽい石ノ森章太郎さんから想像するならこの「化粧師」もそんな流れの中で描かれた話だったりするんだろー。いつ頃どこに掲載されてたか「HOTEL」ほど記憶にないのはビジネスマン向け漫画誌を毛嫌いしていた時代に連載されたからなのかもしれないけれど、糸井重里さんの「おいしい生活」って言葉がコピーの代表めいて出てくるあたりから想像するに80年代も半ばの、コピーライターとか、プロデューサーってのがお洒落で格好良く思われた時代に描かれた話なのかも。とはいえそこは石ノ森、単純に格好良く生きてるように見えて裏では努力もすれば汚いこともする、ビジネスの厳しさめいたものも描いてあって面白い。単純過ぎる話もあるけどそこはそれ、漫画ならではの分かりやすさってことで。この内容で4巻目には自伝漫画もちょっと入って4冊で400円。良い時代なのかそれとも不思議な時代なのか。

 そうそう何でもこの「化粧師」は椎名詰平の主演で映画化もされていたみたいでDVDも出ているとか。明るさとしたたかさを持った小三馬の雰囲気を真面目で暗そーな椎名詰平がどう変えているのかそれとも自分が変わっているのかのみ興味があるけど、ほかに出演で管野美穂さんとか「ほんまもん」な池脇千鶴さん「バトルロワイアル」柴咲コウさんと豪華な女優人が脇を固めていたりするのにも興味。内容的にはどちらかといえば女性の生き方を化粧が手助けするっぽい話で、舞台も大正になっててお上のご意向に従いつつもしたたかに切り抜けてみせる小粋さがあった原作とは、ニュアンスも違って来てそーだけど、見た訳じゃないんでその辺がどーなっているかは不明。あるいはじわじわと迫るファシズムな世に「化粧」で挑む男の粋な生き様が描かれていたりするのかな。買うなり借りて見よー。

 サッカーネタがワールドカップ・フランス大会のそれもチケットが買えなかった騒動で、漫画が単行本になるまでにかかる時の大きさなんかを思いしみじみとしてしまったとり・みきさんの「膨張する事件」(筑摩書房、1100円)。来ている湯のフォームも肩とかに炎の文様が入った襟付きのバージョンで、襟なしが大流行している昨今のユニフォームに慣れさせられた目にはなかなかにオールドファッションに見えてしまう。サッカーネタはほかにジョホールバルでの決戦とか、Jリーグの横浜フリューゲルス消滅話とか幾つかあって、とり・みきさんのサッカー好きな雰囲気が伝わって来るけどあの6月の喧騒に絡んだ漫画は果たして書いてたのかな、見てなかったんで読みたいんだけど、やっぱり単行本が出るには4年とか待たなくっちゃいけないのかな。

 事件にお題をとった漫画のほには、末期にちょっとだけすれ違ったことのある今は亡き「EYE−COM」って雑誌の「仰天新聞」に掲載されてた4コマと、それを引き継いだ「週刊アスキー」の「仰天新報」に掲載の4コマが載っているのを見て懐かしくなる、って「週アス」の連載は今でも続いているのか。「日経クリック」連載の「@くん」も含めて掲載媒体が媒体なんでパソコンネタが多いけど、そこはどちらかといえば唐沢なをきさんが得意とする分野なんで、ビル・ゲイツとかアップルとかウインドウズとかいった固有名詞のアイデンティティに深く斬り込む唐沢さん的アプローチとはちょっと違う、状況をとらえて想像を加えておかしく見せる技でもって楽しませてくれる。手塚治虫リスペクトな「火の鳥」は「SFジャパン」に載ってた奴。何故そこにホシヅルが?


【12月13日】 13日の金曜日、だけど冬なんであんまり怖くない、キャンプとか行かないし。録画しておいた「灰羽連盟」をやっと見て、物語がだんだんとレキの葛藤と贖罪の物語になって行くのに胸苦しさを覚えて真夜中に泣きそーになる。生まれた時から「罪憑き」で疎まれ嫌われていた中を友達とか得て大きくなって精神も育ちきったかと思っていたら、これがなかなかに未だ闇を抱えたチルドレンアダルト。独りの時には地が出るのか暗い表情になり、悩み苦しみ畏れ迷った挙げ句にどうにもイケナイ方向へと足を踏み出してしまって今週の2話が終了する。あー気になる。

 先週までやたらに悲惨な目に遭ってたラッカが罪も烏といっしょに取り去られ、連盟の話師の爺さんと仲良く、って訳ではないけど他のどの灰羽よりも親しげになって寺院掃除の仕事を与えられて一所懸命前向きに、頑張るところを見せているだけにレキの巣立てずかといって今のまま止まれもしない、その狭間で逡巡と葛藤を繰り返すレキの如何ともしがたさにいたたまれなくなる。いったいどーなっちゃんだろ。「罪憑き」にまるで救いのもたらされない展開はそれで罪だらけな身には結構厳しいものがあるんで、残る2話のうちに何らかの打開策を指し示して光明を見せて欲しいもの。それとも誰より脳天気なヒカリの巣立ちが先に着て、明るく生きればすべて良し、ってな実例でも見せてくれるのかな。眼鏡っ娘の癖して存在感、薄いぞヒカリ。

 ところで夏の「コミケ」で勿論買ったし当時は飛ぶよーにはあんまり売れてなかった(みんくるに負けてたかも)番組プロモーション用DVD「灰羽連盟 COG.00」が冬の「コミケ」で企業ブースで再発とか。日記によるとネットオークションとかでどれりゃー(ものすごいの意)値段で取引されとるのを見たスタッフの怒り憤りなんかが爆発した挙げ句に、んなもん定価で売ったるわい、ってな血気がアメリカに振り向けよーとしていた余り分の幾本かを「冬コミ」に投入させるに至ったらしー。オークションでいったい幾らになってるのか知らないけど、これで下がると番組のファンとしては嬉しいし、すでに買って持ってる身としては「売れたかも」って下心が殺がれて複雑。しかし今回限りとなるとここで買ってそれを即座にオークションに”転売”る人とか出て来そー。スタッフのそれは本意じゃないだろーから、どんな現象が起こりそれにどー対処するのか成り行きを見て行こー。保存用を1本所望したいけどきっと大行列だろーなー。番組大人気だし。

 存在感出しまくり眼鏡っ娘登場、おまけにメイドだぜわっしょい。伊藤明弘さんが大絶賛するだけあってガンアクションもハードボイドドな展開もピカいちな広江礼威さん「ブラック・ラグーン」(小学館、533円)の3話目に出てくるメイドのロベルタちゃん、見た目はまるで委員長面した眼鏡のお下げな癖していったん戦闘モードに入るとターミネーターも吃驚の不死身ぶりを発揮して、雇い主の坊ちゃんをさらった一味に徹底的な鉛玉の洗礼を浴びせまくる。あのトランクに傘をどーやってコロンビアからタイへと持ち込んだのかは聞かないけれど、火力に加えて鍛え抜かれた戦闘力があればあるいは「まほろさん」とだって「くるみ」相手だって勝てる……とは思えんか、「まほろさん」はともかく「くるみ」は脳天気な分だけ強力だぞー。

  ついでにこっちは本家・伊藤明弘さんの「ワイルダネス2」(小学館、533円)。脱ぎまくりちょっとだけ揉まれる恵那の肉体美にカンドーしました、あと恵那の名古屋弁とか。第1巻のクライマックスで繰り広げられたエノラによる圧倒的なガンアクションに動きで比類するものがなかった代わりに暗黒街のボスを相手に正面から堂々と挑む堀田の精神的肉体的な強靱さと、とそんな堀田をビジネスライクにいなすゴールドスミスの飄々とした凄みががっぷりと組んだシークエンスが読んで知的精神的に刺激される。こーゆー格好言い邂逅、漫画はもちろん映画でだって見られなくなって久しいからなー。ってか多分今、実写でこーゆーのをやってキマる崇高な存在感を持つ役者がいねー、いても健さんくらいで歳が合わねー。漫画の内だって表現できてしまう自由度に乾杯。そんな自由度を縦横無尽に使いまくる伊藤さんに喝采。

 頭ふるとか拳振り上げるとか蛇革のパンツはくとかいった”お作法”を知っているなり歴史を完璧に知って聞かれれば誰の何て曲で言われればそのアルバムが即座に出てくるくらいの知識物量を誇っているなりしないと”ロック通”とは言われないと思いこんでいただけに、鈴木惣一郎さんの「ワールド・スタンダード・ロック」(ソフトマジック)を読んで歴史的評論家的じゃない、著者にとってフェイバリットなロックを60年代から2000年代までズラリと並べて熱く明るく語った内容に、「ボクはロックを語っていいんだ」と勇気付けられる。森田童子がロックって言われるとちょい引くけどでも、白井貴子さん浜田麻里さんをいかにもで並べるよりは”俺ロック”っぽくって良いのかも。

 クイーンが好きポリスが好きアース・ウィンド&ファイアが好きはっぴいえんどが好きYMOが好きホール&オーツが好きマイケル・マクドナルドのドゥービー・ブラザーズが好きジャパンが好きプリンスが好きドナルド・ヘイゲンが好きでも「ロック好き」だと言って良かったんですね。世代が半ば重なっていることもあって並べられたアルバム、アーティストとも見て聴いて育ったものが多くって、それを全肯定されている気がして懐かしくも嬉しい気持ちにさせられる。ラップがぜんぜん入ってないのが最高、あれわかんないんだよね。エイジアやデュラン・デュランやメン・アット・ワークやカルチャークラブやU2やフォリナーがないのは気にかかる。アル・ヤンコビックはなくてもいいのか。


【12月12日】 公開も迫った超人学園映画「火山高」の世界が楽しめるオンラインゲームが出来るって話なんかをつらつら書く。韓国じゃあもうすでに結構な人数が遊んでいるゲームらしーんだけど、英語じゃなくってハングルだったんで見ても分からず日本じゃあまだそんなにプレーしている人がいなかったとか。出来たのは去年の夏頃とか。映画が流行ったんでメディアミックスの一環として作ったものらしーけど、日本だとゲームでメディアミックスってゆーとコンシューマーでもPCでもなくオンラインってあたりが韓国らしー。

 横スクロールっぽい画面を上下左右に移動しながら「かめはめ波」みたいなのを発射して敵キャラを弱らせ倒す内容で、オンラインゲームだけどデータはローカルで持っているから動きもエフェクトもなかなかなクオリティ。声は韓国人の声優さんが充てているけどうめき声叫び声の類なんで聞いても違和感がないどころか、映画ではソン・ミナちゃんが演じてた剣道部長の呻き声の苦しく可愛い艶っぽさにはホント、そそられる。試したいけど最初に六十メガバイト程度あるゲームのデータをダウンロードしなくちゃいけないのが難。どっかが付録のCD−ROMに入れて配ってくれないかなー。

 録画したけど「灰羽連盟」はまだ見られず。って訳でもなくって読んだ「サッカー批評」の最新17号は、巻末で永井洋一さんと湯浅健二さんが対談していてトルシェ監督についてあれこれ話してる。結果としてのベスト16入りは評価しながらも、どちらかと言えば永井さんが徹底批判派で湯浅さんは心情理解派と立場は違ってて、すでに立ち上がってる2006年を目指す代表への影響力なんかにも、見方に差異があって面白い。

 永井さんは戦術におしこめ過ぎで次にはつながらない派で湯浅さんは戦術があって始めてそこからの脱却があると理解させたんでつながる派。僕としては後者に心情的には賛成したいけど、同じメンバーだったら伝わってもジーコ監督の選んだメンバーに”目覚めた”守備陣が入っていないこととか、次の世代があんまり燃えてないこととかあって、折角の脱却が生きて行かない気がしてる。まあ4年(実質は2年とか)先のことなんで、放任しているよーで目覚めを待ってるんだとジーコへのこちらも心情理解に務めて、メディアが「自由万歳」と叫ぶ影でジーコの発破が爆発する時を待って判断しよー。 それにしても湯浅さんの中村俊輔選手への言い様がなかなかに激辛。「サッカーは、やらなければ絶対にミスは目立たないんだから」と湯浅さんが言って永井さんが「ボールが逃げていればいい」と返した所に「中村俊輔みたいなもんだよね(笑)」と突っ込む湯浅さん。カッコ笑いと入ってはいるけどそのニュアンスには戦わない中村俊輔選手のプレーぶりへの苛立ちや疑念めいた感情が伺える。

 それがさらにはっきり出たのが「いかなければミスは目立たないんだ。中村俊輔を見ていて、自分から積極的に仕事を探しているとは感じられない」という湯浅さんの言葉。「確実にそこにボールが来るのがわかっていながら、彼は5メートルダッシュしない。それは、僕にとって許せないことなんだ」って、そこまで言うなんてよほど中村選手のことが気になるっていうか、苦手にしてるんだなってことが分かる。昔からそー思ってたのか、トルシェの心情理解に務めてどーして中村選手を選ばれなかったかを考えてそーゆー考えに至ったのかは分からないけれど、プロフェッショナルな目がそー捉え、永井さんも同意している以上はやっぱりそーゆー傾向があるのかも。今度いつ試合を見られるか分からないけど、レッジーナの放映があったらその辺を注意して見てみよー。レッジーナで5メートルダッシュするプレーが必要かって言われると難しいんだけど。

 浅草へと行ったついでにコンビニでガシャ。どこよりも早く新作が売られている店があってそこで「セーラームーン」の第3段が出てたんで、持ってた100円玉の数だけ5回回して5種類をゲットしたけど、いちばん欲しかった水野亜美ちゃんの水着のフィギュアだけが手に入らず、なるほどこれが運の出涸らしってものかと理解する。今回は亜美ちゃんのほかにログドレスのプリンセス・セレニティに巫女さん姿の火野レイちゃんにセーラー服姿の木野まことちゃんに眼鏡を手に持ったセーラーV、それからミストレス9の全6種類。いわゆるセーラー戦士から離れた姿を採ったもので、大人しいけどまこちゃんレイちゃんとも服がしっかり造形されてて流石はバンダイのHGと感心する。それにしても心残りは亜美ちゃん未ゲット。明日にでもまた100円玉持ってかけつけるか、でもって5回回して全部ミストレス9とゆー”凶運”に恵まれるんだ。


【12月11日】 珍しく起きていられたんで生で久々に見た「ウィッチハンターロビン」はやっぱり暗かった。物語は別に陰鬱じゃないしむしろアクションとか銃撃戦とかあって画面は賑やかなんだけど、途中を見てない関係で出てくる人名や事件や固有名詞がストレートに頭の中に響いてこないのと、盛り上げよーって意図をむしろ除外しているんじゃないかと思える展開の中で、前半ではや瞼が重くなって来てしまう。それでも最後まで見て何やら話が大きく動いているっぽいことだけは分かったんで、残る数話は頑張って見通して、ちゃぶ台返しにならずDVDも最後まで買いたくなるよーなエンディングになっていることを期待しよー。個性的なキャラだけに難しいのか人物の顔が妙にノペッと見えるのは僕だけか。オープニング映像のロビンが妙に艶めかしいだけに本編での表情の少なさが気になってしまうのかも。堂島は無理に関西弁を使ってる東京モンに聞こえるなあ。

 表紙のデザインに「りぼん」だかのコミックスかと瞬間思いつつも何故か男子向けの島の中にあってヘンだなあと近寄って確認して納得、なるほどステッキを手にしたフリルの少女が微笑む「魔法少女物」っぽい表紙絵ではあるけれど、よくよく見ると背景で燃えているのは国会議事堂で、ついた紹介文も「マジカル血煙コミック」だなんて余計な言葉がついている。ひっくり返してさらに納得、大技「アルゼンチンバックブリーカー」を決める少女を背景に「食物連鎖の頂点から草食動物を見くだすような氷の瞳」だなんて文字が踊っているこのマンガが、「りぼん」「花とゆめ」の類に収まっているはずがない。そう、「大魔法峠」(大和田秀樹、角川書店、540円)はパッと見でかかると肩すかしだなんって甘い技なんかじゃない、激しい肉体言語の大技を脳天からつま先に至るまで喰らいまくる、超絶にして抱腹の魔法少女コミックだったのだ。

 田中ぷにえは天空の聖魔法王国から転校して来た女の子。可愛い顔と愛想でもって学校中の男子から注目を集めてしまった彼女を当然、他の女生徒がちが面白く思うはずもなく、学校を仕切る姉御が喧嘩をふっかけたもののそこは野菜を時代に操るぷにえちゃんの魔法で撃退されてしまった。そんな姉御に差しのべっれた謎の男からによる救いの手。魔法を無力にするという邪神の像を受け取り再びぷにえに挑んだ姉御だったけど、ものの見事に魔法を封じられながらもぷにえは自らの能力をフルに発揮してこのピンチをしのぐのだった。その能力とは? それは読んでのお楽しみ、って裏表紙なんかも当然に大いに参考になったりするけれど、とにもかくにも可愛くてほのぼのとした魔法少女物だと入れ込んでいた心が粉砕され、新しく別の殺伐として痛快無比の感情が全身を覆い、ふつふつと煮えたぎる感情の中に気持ちを叩き込む。最凶の美少女コミック、買いです。プリンセス三角締めとか喰らいてー。

 今市子さんの「百鬼夜行抄」(朝日ソノラマ、762円)もいよいよ10巻の大台乗り。さぞや人気があるんだろーと思うし実際に面白いんだけど、似た巻数を重ねている岡野玲子さんの「陰陽師」が賞とかとって映画にもなって(夢枕獏さん原作の方だろーけど岡野さんのコミックの人気もあっての映画化だろーし)一般化しつつあるのに比べると、まだまだ全然足のつま先にも知名度では及んでない感じがあって、勿体ないなあとちょっぴり残念な想いを抱く。美形は美形だけど性格があんまり前向きじゃない律ではやっぱり女性層のファンが獲得できないのかな。お話の方は櫛にこもった想いを晴らしたり封印から逃げ出した妖怪変化を相手に戦おうとする話だったりとどれも秀逸。あんまり恐ろしくならないのも作家の人徳かキャラクターたちの脳天気さがあるからなんだろーけれど、憤死した一家の怨念が今へと続き人を闇へと誘うエピソードはなかなかに怖くって、今晩夢を見たくなくなった。次が出るのはいつのことになるのか分からないけれど、そろそろもっとメジャーになって例えばドラマ化とか、映画化されたりすると面白いかも。律って誰が似合うだろ。青嵐入りの父親はうーん、大杉蓮さんなんて合ってそー、手づかみで物とか食いそーだし。


"裏"日本工業新聞へ戻る
リウイチのホームページへ戻る