コンテンツちえくらべ・キノトロープ編

 今月半ば、インターネット上に「仮想ゲームセンター」が立ち上がる。その名「GEI−CEN」。マルチディアコンテンツの制作を手掛けるキノトロープが、自社で運営するサーバーに落ち物ゲームやルーレット、ポーカーなどの「ゲームコンテンツ」を置いて、ユーザーに無料で遊んでもらおうというものだ。

 「面白いものを作ったら人が来る、ということを示したかった」と、キノトロープ創設者の一人、生田昌弘氏は話す。現在ある企業ホームページの多くが、事業概要や製品の紹介、代表者のメッセージを載せただけの内容で、更新も数カ月に一度あるかないか。それでいて企業は「利用者が少ない」と、インターネットの効用を疑う。

 「どうすればリピーターを稼げるかを考える」(生田氏)。その方策を、「ゲームコンテンツ」という形で実現して見せ、企業からのホームページ制作受注につなげていく。キノトロープが費用を自社で負担してまでも、「GEI−CEN」を制作・公開する意味がそこにある。

 フォトグラファーの生田氏とデザイナーの河合彰彦氏が「渋谷のCD−ROMショップで意気投合して」(河合氏)始めたのが、マルチメディアスタジオの「キノトロープ」。当初はCD−ROMタイトルの制作が主な仕事で、出版社スコラの「CD−ROMスコラ」や、日産自動車のモーターショー用マルチメディアタイトルなどを手掛けた。昨年三月には有限会社へとステップアップをげ、インターネット関連ビジネスにも参入した。

 「システムのプランニングからコンテンツの設計まで、すべてを任せてもらわなければ、ホームページの制作は引き受けない」(生田氏)という姿勢は、是が非でも仕事を取りたいベンチャー企業の中にあって異彩を放つ。しかしそれは、必ずクライアントにもユーザーにも満足してもらえるホームページを制作できるという、自信の現れでもある。

 事実、社員数十一人の会社ながら「日本におけるウェブの先行企業」(河合氏)として、数々の新しい技術を生み出している。ネットワーク上に散在するショッピングのページから、欲しい品物を順に選んで最後にまとめて決済する「ユニバーサル・ショッピング・カート」、企業とユーザーのミュニケーションを促進する掲示板システム「キノボーズ」。ホームページを「生きた」(生田氏)存在にするための数々のモジュール群が自社内で開発され、幾つかのページに搭載されて、確実にリピーターを稼いでいる。

 三年で年商二億の会社にまで発展し、「これからが回収段階」と河合氏は話す。もちろん先行メリットを生かすだけでなく、変化の激しいインターネットビジネスの世界で生き残っていくために、更なる技術開発にも取り組んでいく。

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