990206 sat. 大藪春彦賞
という文学賞ができたみたいで、第一回受賞は馳星周の「漂流街」
僕はこのお話、とっても好きだったので、ちょっとうれしいよ。本人が、「大藪春彦」賞を取ってうれしいかどうかはおいといて、ね。
もし、この賞が一昨年にできていたら、きっと楡秀平がとったんだろうなあ、っていうくらい、楡は大藪春彦に似せようとしていて。僕は大藪春彦は結構好きなんだけど、でもさすがに比較的最近のは、ちょっと古いなあ、っていうかんじがあった。
ところがね、楡が大藪に似てるっていうのが、その古さ。一匹狼の徒手空拳でおっきな相手に立ち向かうっていうのはいいけど、ウエットスーツで海からでてくる絵は、ちょっと時代錯誤だよなあ。ニフティを小道具に使っても、なんか古典的だし。おまけに仕事の合間に狩猟はないだろう、っていうくらいの大薮フリークぶり。
何回もいうけど、大藪は好きなんだけどね。でも、汚れた英雄はいいけど、アスファルトの虎はちょっとなあ。
あ、馳星周だよね。
僕は馳を、「不夜城」「漂流街」「夜光虫」「鎮魂歌」という順で読んだのだけれども、漂流街が一番だね。というか、順を追ってうまくなる。ちなみに発表順は、不夜城、鎮魂歌、夜光虫、漂流街。
ハードボイルドな犯罪小説って、日本ではチャンドラーが有名だけれども、もう一つ、ハメットの流れがある。
つまり、誇りに生きる主人公がいて、結局正義が勝つのがチャンドラー。
そして、誇りに生きる主人公だけれども、現実が勝つのがハメット。
ちょっと違うかな? 日本では、前者が大沢在昌の新宿鮫で、後者が船戸与一。非情さ、ハードさという点では後者が好きなんだ、僕は。
でも、馳星周は、ちょっと違うんだ。
彼の主人公は、まず、誇りがない。美学がない。主人公八にはいつくばっても、他人の靴の底をなめても生き延びることだけを考えてる。それでも不夜城までは、映画が最初だからかもしれないけれど、美学があった。そして、夜光虫までは、赦しがあった。
でも、漂流街には、なんにもないんだ。美学もない、そして誰も、赦されない。
みんな、だましてだまされて、そしてかっとなって状況に流されただけ。
そこでは純真無垢な子供の歌声と女が飲んでくれるのが等価で、どちらも、、、
おっと、これ以上は読んでね。
決して損は、しないよ。
友人へのメイルなんだけれども、あれから何日かたって、何回か聴いたDISCOVERY。
きっと刻々と感想が変わっていくからね。
いまんとこいいのは、
I'll be。
simple
かな。
homepageにも書いてるけど、イノセントワールドくらいまでの、汚れを知らない彼らが、深海、ボレロで、「汚れちまった悲しみに(中原中也ね、念のため)」を地でいくようにのたうち回っるのがすきだったから、休んで、どうなるのかな、っておもってた。
あんなに苦しんで、のたうち回ったのを「なかったこと」にして、前みたいなさわやか一直線ものをやるんなら、もうそれまでだな、って。
だから、ニシエヒガシエがすきだった。
苦しんで、のたうち回ったあげくの出口が「あそこ」だったなら、長くは続かないだろうけど、なんかでかいことやってくれそうだから。
終わりなき旅は、すごいすきだけど、形式的には名もなき詩と花でつくった黄金の形式美からは一歩もでてないよね。どんどん転調してBサビで泣かす、っていう。(ほんまか?)
次の光〜、は、買わなかった。
レコード屋できいた時、昔の曲流してるのかと思ったから。編曲はともかく、曲は、アトミックハートにあってもまったくおかしくないよね。
と言うわけで、結構複雑な思いでまってたアルバム。
ひとことでいえば。
「なんて無防備なんだ。」
とくに最初にあげた二曲。
あれだけのたうち回ってた時でも、あんなに入念に化粧をして、素顔なんて絶対見せなかったのに、
おいおい今度は出かけるときもすっぴんかよ、ってかんじ。
もし、その素顔のしたに、蛇皮のパンツはいてにやって笑う桜井がいたなら、このアルバムもお気に入りになることでしょう。
まだよくわかんないや。
反則だよね、っていったのは、そういうことでした。
990204 thu. いつのまにか
あんなにあった体重が、ほとんどもとにもどってる。
まあ、よくあるいてるもんな、ずっと。
どのくらい歩いているかっていうと、半年で靴がすり切れるくらい。えっ、普通だって? そんなことないんだけどなあ。
歩くって楽しいよね。
とくに、おんなじ時間に、おんなじ道を歩くのって。
たとえばちょっと太い歩道に、クルマよけのポールが二本ずつ、点々と立っていて。その道がちょっとだけ曲がってるから、二本の角度も、ほんのちょっとずつずれていて。
そうするとね。
朝、影の長い時間にそこを歩くとね。おもしろいんだよ。今日は、この二本の影がぴったり重なってる。きのうは確か、その一本前がかさなってたな、って。
つまりね、お日さまの顔を出す位置がちょっとずつずれると、二本のポールの影の重なり具合が毎日ちょっとずつ違ってくるの。今日はあのポールだから、あさってくらいはこれかな、って。そういう季節の移り変わり、ほかじゃあちょっと、味わえないよ。
でもって、すこしやせて。きつかったジーンズも、普通にはけるようになった。
でも、さむいね。
990203 wed. There's something about MARY
むかし、ボビーに首ったけ、っていう映画があったね。片岡義男原作で、野村宏伸が声優デビューしたアニメーション。
確かテレビで見たはずなんだけど、なんにも覚えてない、そんな映画。
で、
今回は、メリーに首ったけ。
いいなあ、キャメロン・ディアズ。ほんと、もう首ったけ。
もうその一言の為だけに存在する、ちょっとグローイングアップがかった正当派アイドル映画。
特撮もなんにもないけど、とりあえず今年のNo.1です。(まだアルマゲドンしか見てないけど)
日本にいないかなあ、こういう映画とれるアイドル。まあ、ノーブラに白いタンクトップっていうのはちょっと日本では無理としても、回りが全部ストーカーになっちゃうほどの魅力を、無理なく見せられる女の子。
イメージ的には、コイズミ今日子が、松竹で影のある女なんかやんないで、なんてったってアイドルのまま30歳を過ぎたらそんな感じだったんだろうなあ。
つまり、ぼくはね。
あれだけイノセントだった彼が、それを公言していた彼が、のたうち回って苦しみながら汚れていく過程が、そしてそれから立ち上ってくるしたたかさが、すきだったのかもしれないね。
さっぱりとお風呂に入って、汚れを落とした彼は、もしかしたらまたイノセンスに回帰しようとしてるのかもしれないけれど、元の位置に戻ったらそれまでだね、ぼくは。
でも、そのイノセンスの毛穴から、したたかにうねるヘビの紅い舌が見えてくるのなら、すり切れるまできくよ、また。
990201 mon. 西と東の間で(みぎとひだりのはざまで)
結構有名な話だけれども、駅でエスカレーターに乗るとき、立ち止まる人は右側に止まるよね、ふつう。急いで歩く人は、左側。
えっ、て。
ああ、大阪の話ね、これ。
大阪の人って、結構よそを意識してるから、これが大阪ローカルのルールだってことを知ってる。だから、東京から来たビジネスマンが左側にでんと構えてカバンを置いて立ってても、そんなに文句は言わないんだ(キタはね)。大阪駅周辺はビジネスマンが多いから、結構混乱するんだけれども、基本は、右に立つ。
ところがね、このルール、扉一枚隔てると、通じなくなるんだ。
その扉ってね。新大阪駅の、新幹線の改札。
時間帯によるんだろうけれども、新幹線の改札を一歩中にはいると、そこはもう、大阪じゃないんだ。もちろん右に止まる人もいるけれども、左に止まる人が半分以上いて、右に止まってる人はなんか居心地悪げ。
この居心地悪げっていうのが、大阪の人の、ローカルなんだっていう自覚と、東京もんがなんぼのもんじゃいっていう意気込みと、シャイなところをあらわしていて、とってもいいんだなあ。
けっこう好きなんだ。しんおおさかえき。