一生ものの言葉




 マイルス・デイビスのcomplete live at plugged nichel 1965という七枚組のCDがあって。
 プラグドニッケルというライブハウスでの二日間、7ステージの録音をそのままCDにしてしまう、というなんとも乱暴な編集なのだけれども、マイルス・デイビスだからね。

 そのCDの、一枚一枚のライナーに、いろんなひとがマイルスへの思い出をつづっていて。そのなかの一人、PONTAのひとことが、いいんだなあ。
 彼は、マイルスの乗ってたフェラーリのドアの取っ手をなめちゃうほどのマイルスフェチなのだけれど。マイルスが、ジョンレノンの追悼イベントで日本に来たとき、ドラマーのPONTAをどうしても探せって。結局彼はツアー中でいけなかったのだけれども。

そしたらPONTA、オレはその一言だけで生きていける。って。

 そういう一生ものの言葉、そうはないよね。

 たとえばなにかいわれて一日中うれしかったとか、ひとつきくらいそれに支えられたとか、そういうのって結構ありそうだけど、その一言を支えに、一生生きていけるっていう言葉、そんなに転がっているもんじゃない。

 もしあるならば、それはしあわせな人だよね。

えっ、ぼく?

あるよ、たぶん。

 たぶん、って、ずいぶん自信のないいい方だけれども、一生って長いしね。それに、それ「だけ」が支えっていう状況も、ありがたいことに来てはいないし。だから、たぶん。

 でも、今まで間違えていなかったんだって、そう思わせてくれる、大事な言葉。
 だから、ぼくは、しあわせなんだな、っていっちゃっていいんだろうなあ。

 でもね。

 ひとつだけ聞きたいんだ、PONTAさん。

 

でも、やっぱりホントは、マイルスの後ろでたたきたかったよね?

 

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