復活のシュー


 壮絶な、レースだったね。
 
 おととしまで5年連続のチャンピオン、シューマッハと、去年のチャンピオン、ルノーのアロンソ。
 一方はライバルは4人くらいいるけれど、シューマッハを蹴落としてチャンピオンの座を守りたいね、と公言する史上最年少のチャンピオン。
 かたや去年は屈辱の一勝を恵んでもらった元皇帝。ポールポジションの最多記録を作った今回の予選。どうしても、迫り来る決断の時の、影の長さを測るレースになるよね。
 
 レースはね。
 第一スティント。
 ガソリン少なくしてポールを取ったシューと、ちょっと重いアロンソ。ペースは互角だけれども、チームメイトのマッサを壁にして差を広げるシュー。マッサが先に給油して、追い上げるアロンソ。しかしシューもがんばって給油後、数周後に入ったアロンソはシューの10秒以上後ろで復帰。
 
 第二スティント。
 アロンソ速い。シューより周2秒速い。62周のレースの32周目に追いついてテールトゥノーズ。だけれどもここはイモラ。抜けないサーキット。
 抜けないことに業を煮やしたアロンソ。何を血迷ったか、先にピットイン。周2秒速いのに。ガソリン多く積んでるのに。
 次の周にシューが入り、出てきたところはアロンソの前。ラップは速いアロンソ。ブロックするシューマッハ。残り25周のテールトゥノーズ。
 
 第三スティント。
 両者の差はコンマ4秒。先にミスした方が負け。一度抜かれたら挽回できないシュー。突っ込みきれないアロンソ。
 ラスト5周。焦ったアロンソが縁石にはじかれて膨らんだ。2秒のロス。致命的なミス。
 そして、シューのゴール。
 
 もちろん最大の見所は、2回目の給油のタイミングなんだけど。ラップ2秒差のあるマシンを、30周に渡ってブロックし続けたシューマッハ。しかもノーミス。
 「抜けない、抜けない。ここはモナコ、モンテカルロ。絶対に抜けない」
 あの、セナ対マンセルの伝説のモナコも、ラスト5周だもんね。
 今回は30周。
 
 歯を食いしばりながら、刻によって残酷に奪い去られるものと戦い続けるシューマッハ。若さを最大の武器に、遠慮無く失速した元王者に食らいつく若きチャンプ。
 今回、最後に抜かれていたら、周囲の目はもちろん、多分本人のモチベーションも枯れ果ててしまう。そんなぎりぎりの勝負に、見事勝利したシューマッハ。
 
 もちろん、イモラでさえこんなぎりぎりの勝負しかできない現実には変わりがないし、これから好転することなどあり得ないんだけれども。
 それでも。そんなことはわかっているけれど。
 見事だったね。シューマッハ。
 久しぶりに、夜中に一人で叫んだり、ガッツポーズしたりしたよ。ありがとう。

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