“愛を読む人” ★★★
The Reader
(2009年アメリカ映画)

監督:スティーヴン・ダルドリー
原作:ベルンハルト・シュリンク
脚本:
デヴィッド・ヘア
出演:ケイト・ウィンスレット、レイフ・ファインズ、デヴィッド・クロス

 

ベルンハルト・シュリンクの名作「朗読者」の映画化。
原作も素晴らしかったのですが、この映画も素晴らしかった。圧倒されてもう何も言うべき言葉はない、という一言です。
ヒロインというべき薄幸の女性ハンナ・シュミットを演じるケイト・ウィンスレットの演技が圧巻ですが、マイケル役のレイフ・ファインズ、青年時代のマイケルを演じるデヴィッド・クロスも好演。

ただ何も言わないとこの頁は始まらないので、以下続き。

この映画で圧倒されるのは、ハンナ・シュミットという女性の生き方に尽きます。
常に自分自身に正直であり、裏表なく生きようとし、その延長戦上に自尊心を高く保持している女性。
前者は法廷で自分の不利になるにもかかわらず事実ありのままに語ろうとする態度に感じられますし、後者はずっと守ってきた自分の秘密を守り続けるために敢えて不利な証言を認めようとする態度に、そして20年を経て出所を控えた直前の行動にも現れています。
人間にとって何が大切なのか。所詮程度の違いというべき豊かさでなく、いつかは迎えなくてはならない死でなく、自尊心こそが一番大事なのである、というメッセージが画面からビシビシと伝わってくる気がしました。

そんな彼女の生き方をマイケルはどこまで理解することができたのか。結局ハンナに何も問えないまま中途半端に過ごしてしまったことが、マイケルが人と濃い関係を結ぶことのできなかった原因ではなかったのか。

映画は素晴らしかったのですが、その一方で耳を塞ぎ目を覆いたくなるのが「愛を読む人」という邦題。原作のテーマを毀しているとしか思えないのです。
この邦題によって、本映画が伝えようとしている大切なテーマが誤解されることのないよう、祈るばかりです。

2009.06.21

    
 → 原作:「朗読者

              


  

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