“天国はまだ遠く” ★★☆
(2008年日本映画)

監督:長澤雅彦
原作:瀬尾まいこ
脚本:長澤雅彦、三澤慶子
出演:加藤ローサ、徳井義実、河原さぶ、絵沢萌子、郭智博

 

都会から離れた遠くの場所で睡眠薬を飲んで自殺を、と思っていたら、睡眠薬の効果で32時間熟睡してしまい、すっきりした気分で目覚めたOLが主人公。
泊まったのは京都府宮津の山奥にある、無骨な民宿。
滅多に客が来ることもないその民宿「たむら」に滞在して、民宿の主人=田村青年と触れ合いながら、緑豊かで海も近いこの集落で主人公が心をリフレッシュさせていく姿を描くストーリィ。

いやはや、こんなにも味わい濃くて豊かな作品だったかと、原作に目を通し直しました。原作を最初に読んだときは、主人公の若いOLに対して民宿の主人=田村は“おっさん”というイメージが強かったのですが、30歳、世代的にはそう主人公と変わらなかったんですね。
原作を読んだときの、読み込み不足を実感しました。

主人公の千鶴役を演じた加藤ローサが実に良い。
とぼけた味を見事に出していて、コミカル。そして素朴な可愛らしさを十二分に発揮しています。
また、田村青年役の徳井義実も好演。
2人の自然体であるかのような演技が、観ていてとても気持ち良い。
本映画を観ていると、「
阿弥陀堂だより」を思い出します。
「阿弥陀堂だより」は、ある年齢に達した男女が、緑濃く美しい故郷に戻って再出発していく姿を描いた名品。それに対して本作品は、同じように美しい緑の中にあっても、自分の生き方を模索する若い男女2人の姿を各々に描いていて若々しい。

ハリウッド映画なら絶対ラブ・ストーリィに仕上げたであろうところを、短期間で性急に結論を出そうとしないところも本作品の清新さ。
そう、ラブ・ストーリィが全てでは無いのです。

2009.07.05

      
→ 原作:「
天国はまだ遠く

   


  

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