“のだめカンタービレ 最終楽章” ★★
前編後編
(2009年、2010年日本映画)

総監督:武内英樹
監督:川村泰祐
原作:二ノ宮知子
脚本:衛藤凛
出演:上野樹里、玉木宏、瑛太、水川あさみ、小出恵介、ウエンツ瑛士、ベッキー、福士誠治、山田優、伊武雅刀、竹中直人

 

前編

のだめカンタービレ in ヨーロッパ」の最後で、「これでもう終わりなのか。さらなる成長の姿をやはり見たいものだと思う」と書きましたが、それに応えてくれたかのような「最終楽章」編。
プロの指揮者としての演奏活動に踏み出した千秋真一と、パリのコンセルヴァトワール(音楽学校)で依然勉強中の野田恵(通称:のだめ)のその後が描かれます。
これまでのTV版同様、最初の2時間が千秋真一中心、後半の2時間がのだめ中心という訳で、前編・後編2部構成の、まずは前編。

映画版となって画面が大きくなったことを活かし、パリという街の眺望が撮られていて、これが魅力。パリという街、やはり華やぎがあります。陽春の頃、またあちこちと散策してみたいなぁという気持ちをかき立てられます。
その一方、本前編については、満足度いまいち。
プラティニ国際音楽コンクールでの優勝実績を買われ、千秋の常任指揮者の口が転がり込みますが、シュトレーゼマンもかつて指揮者を勤めたというその“ルー・マルレ・オーケストラ”、長い歴史はあるものの、内紛でごそっと団員が抜け、今は資金不足と練習不足のおかげで惨憺たる有り様。なんでこんな交響楽団の常任指揮者に?と、千秋愕然とすることしきり。
そこから千秋の初心に返っての奮闘が始まる、というストーリィ。

ただ、これまでの千秋の実績からすれば、この程度の試練は最早、それ程感動するストーリィにはなり得ません。
このドラマ、やはり主役は千秋よりのだめ、と言うべきなのでしょう。
前編の最後で、のだめはこれまで以上のショックに見舞われます。のだめの真価が問われるのは後編で。
「最終楽章」の評価は、後編を待った方が良さそうです。

2009.12.19

  
後編

恒例どおり、後編はのだめを主としたストーリィ。
一人前の指揮者として活躍し出した真一にどんどん先に行かれてしまった観のあるのだめ、置いてきぼりになるのではと焦る思いを禁じえないのだめが描かれます。
しかし、課題曲を未だこなし切れていないのだめに対し、オクレール先生はコンクールへの出場を禁じるばかり。
さて、のだめは一体どうしたらいいのか、真一の後を追うだけではダメなのか、何をめざしてのだめはこのパリにいるのか・・・・。

パリに舞台を移してから、大きなヤマはありません。とくに「最終楽章」の「後編」はそうで、小さなヤマが幾つも連なってストーリィが語られるという風。
しかし、のだめが本当に本格的なピアニストとしての足を踏み出すための前章としてはむしろその方が相応しいように感じられます。
本作品については、この一作だけをとってどうこういうのではなく、長く続いた「のだめカンタービレ」の最後を締めくくるストーリィとして受け留め、評すべきでしょう。
その点、ファンとしてはこの最終章、物語の決着の付け方として、十分得心、満足です。
とくにドラマがこれで終わるという結末の付け方ではなく、まだまだドラマはこれからも続く、真一とのだめが進むべき音楽の道はまだ緒に就いたばかり、という結末の付け方が良い。

物語はこの後もずっと続く訳ですが、いつまで追ってもキリはないこと、主人公たちも観客も一旦この辺りで区切りをつけよう、これから後の彼らの成長を心から祈りたい、というのが観終えた後の思いです。

2010.04.29

 
   


  

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