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1957年岡山県生、東京大学大学院情報学環教授、史料編纂所教授。日本近世史専攻。92年「江戸お留守居役の日記」にて第40回日本エッセイストクラブ賞を受賞。2020年腎盂癌により死去、享年63歳。

 


     

●「江戸お留守居役の日記−寛永期の萩藩邸−」● ★★☆ 
  
                    日本エッセイストクラブ賞




1991年07月
講談社刊

1994年11月
講談社文庫

(620円+税)

2003年10月
講談社学術文庫

 

1995/01/07

 

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三代将軍家光の時代、萩=毛利藩にて初めての江戸留守居役に登用された福間彦右衛門「公議所日乗」の記録を元にした書。
江戸時代の実録として興味深いものがありましたし、実際、面白かった。
時代小説も、実際の記録をこうしてとりまとめた書と併せて読むと、さらに面白さが増すというものです。

福間彦右衛門、萩から初めて江戸へ出てきた翌年、42歳の働き盛りでお留守居役に任命され、以来20年間に亘って同役を務めた。その間一度も帰郷することなく、藩主の勧めで国許の妻とは別に江戸での妻を娶り、子供ももうけています。
非役になった後も江戸にそのまま在住して現役留守居役の相談役を務め、完全に職を退いた時には一代限りとはいえ寄組格を与えられたというのですから大出世、大したものです。
如何に彦右衛門の留守居役としての功績が大きかったかということですが、逆に言えば、留守居役の働きぶりが大きく藩政に影響した、ということも言えそうです。

実際、本書を読んで様々な事件の処理のことを知ると、如実にそう感じます。
様々な事件、幕府との折衝、また幕府への働きかけに関する段取り。それら全ての責任を、留守居役一人で背負っていたことがよく判ります。
後年には、だからこそ留守居役同士が組合を作り、藩主も制御できないような吉原での饗応を繰り広げたりすることもあったそうですが、まだ彦右衛門当時は、涙ぐましいほど実直で身を粉にした働きぶりです。
面白いと同時に興味尽きない一冊、お薦めです。

お留守居役と幕閣・旗本/支藩との対立/萩藩の江戸屋敷/他藩との交渉/町人と江戸藩邸/御家のために/二つの代替わり

   


  

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