山口由美著作のページ


神奈川県生、慶應義塾大学法学部卒。旅行作家。業界誌から女性誌まで幅広く活躍。日本旅行作家協会会員。著書に「箱根富士屋ホテル物語」「箱根人の箱根案内」「帝国ホテル・ライト館の謎」「ホテル・クラシック」等あり。

 


 

●「世にもマニアな世界旅行」● ★★




2004年7月
新潮社刊
(1300円+税)

 

2004/08/03

最近は旅行にとんと無縁な生活を送っていますが、元々旅行は私も大好き。題名からしてすぐ惹きつけられました。
「旅とは非日常。日常からの逸脱は、落差が大きければ大きいほど好ましい」というのが、まえがきでの山口さんの言葉。
今や携帯電話が普及し、日本人の海外渡航先の9割以上が通話可能らしいのですが、山口さんの日常的に旅している処は半分も網羅されていないのだとか。その一文からでも山口さんの旅パターンが想像できそう、というものです。

決して、意図して辺境の地へ行く訳でも、ゲテモノ好きという訳でもない。山口さんの好奇心向く処がたまたま一般的観光地でない場所というだけ、職業柄そうした場所へ行く機会に恵まれている、ということもあるようです。しかし、何処へ行ってもその場所にすぐ馴染んでしまい、ヒル人喰いバクテリアの襲撃に会っても動じないという日本人ばなれした山口さんの特質も、欠かせないようです。
したがって、気取りや大袈裟な感じがない分、本書は親近感をもって楽しめます。
近くに見ることのできる熱帯ジャングル砂漠も良し。熱帯雲霧林の中をターザンの如く飛ぶスカイトレックは、如何にもスリル満点で楽しそう。「小さくて体育会系の国」というスロヴェニアの形容は、正鵠を射ていて愉快。
少ないと言いながら何処に行っても日本人はいるし、オーロラ見物、イースター島へと押しかける日本人パワーには呆れるほかありません。マニアな世界旅行と言っても、本書はあくまで身近な旅行記なのです。
なお、ボルネオの山の中にヒルトンホテルがあるというのですから、話は聞いてみるもの読んでみるもの。
最後のPNGでのオチといい、本書は楽しさ満点です!

パブアニューギニア 極楽ツアー/世にも美しき砂の国 ナミビア/ボルネオ 首狩り族のすむ森へ/環境君はコスタリカを目指す/小さくて体育会系の国 スロヴェニア/アラスカ不思議紀行 迷える魂はオーロラを目指す/天空に一番近い島 イースター島/パブアニューギニア 再び

 


   

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