津野海太郎(かいたろう)作のページ


1938年福岡県生、早稲田大学文学部卒。晶文社取締役、「季刊・本とコンピュータ」総合編集長、和光大学教授・図書館長を歴任。評論家、文筆家。「滑稽な巨人−坪内逍遥の夢」にて新田次郎文学賞、「ジェローム・ロビンスが死んだ」にて芸術選奨文部科学大臣賞を受賞。

 


 

「花森安治伝−日本の暮しをかえた男− ★★

 

 
2013年11月
新潮社刊

(1900円+税)

   

2013/12/27

  

amazon.co.jp

戦後、女性向けの生活総合雑誌「暮しの手帖」を創刊した名物編集長=花森安治の評伝。

と言っても「暮しの手帖」という雑誌に、花森安治という名前、私には今一つピンと来なかったというのが正直なところです。まぁ「暮しの手帖」の表紙を見せられれば、そんな雑誌も確かあったなぁというぐらいの記憶はありますが。
戦後なんの基盤もないところから、
大橋鎮子という若い女性編集者のアイデアを基に大橋姉妹と花森安治が会社を新たに立ち上げるところから始まり、ついには発行部数が百万部に及ぶ国民的雑誌にまで育て上げたというのですから、大したものです。さらにその中身と言えば、徹底的な商品テスト、さらに一流料理人の手による日常的な料理のレシピ等々と革新的な試みを実行していったというのですから、その経緯を辿るだけでも興味深々、面白くて堪らないものがあります。
さらに30年間その独裁的な編集長の地位にあったという花森安治という人物自身、恐い顔をしながら長髪にパーマをかけて後ろをカールさせ、女性的な髪形をしていたというのですから興味は尽きません。

花森安治という人物、女性のような髪形だけでなく、そもそも行動が突飛で愉快なうえにマルチ人間、そしてどこか愛嬌があって人気者だったらしいと語られても、すぐ納得できるところがあります。戦前から戦後、そして突然の死去まで、この花森安治という人物の人生は小説以上の面白さがあります。戦後日本の生活を振り返ってみるという意味でもお薦め。

序 :「暮しの手帖」が生まれた頃
第一部:1.編集者になるんや/2.神戸と松江/3.帝国大学新聞の時代
第二部:4.化粧品で世界を変える/5.北満出征/6.ぜいたくは敵だ!/7.「聖戦」最後の日々
第三部:8.どん底からの再出発/9.女装伝説/10.逆コースにさからって
第四部:11.商品テストと研究室/12.攻めの編集術/13.日本人の暮らしへの眼/14.弁慶立ち往生

     


 

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