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1963年東京都生、ライター。著書に「映画監督になる15の方法」「轟夕起夫の映画あれば火祭り」等あり。

 


     

●「好き勝手 夏木陽介−スタアの時代−」● ★★


好き勝手夏木陽介画像

2010年10月
講談社刊

(1900円+税)



2010
/11/14



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夏木陽介という俳優の名前を聞いて胸をときめかせる人はどのくらいいるでしょうか。
少なくとも、その一人が私である。
夏木陽介と言えば、私にとってはTVドラマ
「青春とはなんだ」「太陽野郎」、そして青春ドラマのヒーロー、それが全て。
私の場合、上記2作の存在が大き過ぎて、夏木陽介のイメージ=その2作のヒーロー像という訳なのですが、夏木陽介という俳優を語る時、それはむしろ誤りらしい。
本書は、それを知らしめてくれた一冊。

第一部は、夏木の証言を入り混ぜての戦後芸能史そのものと言って良い内容。
夏木陽介、中原淳一にスカウトされてモデル、そして俳優。芸名の名付け親も中原で、
「夏の太陽の下で青い若木よ、大きく伸びよ、伸びよ」という意味を込めたものとのこと。
私は全く知らなかったのですが、東宝のニューフェイスとしてデビュー、現代劇・時代劇に拘わらず主役・準主役として数多くの東宝映画に出演。したがって、その足跡を辿ることは戦後の日本映画の隆盛史そのものを辿ることに他なりません。
第二部は、夏木へのインタビュー形式により、TVドラマ「青春とはなんだ」から。ちょうど同作品が、映画からTVドラマへ主流が変わっていく端境期にあったらしい。それ以降、「太陽野郎」
「東京バイパス指令」「Gメン75」とTVドラマでの活躍が続く。

そうした映画・TVドラマ史を越えて興味を引かれるのは、題名に「好き勝手」とあるように、夏木陽介のやんちゃぶり、喧嘩っ早いところ、車・乗馬好きなところはまさに地であったというところ。
また、知られていない数々のエピソードも興味深い。元々、何故「これが青春だ」でも主役を演じなかったのか、「Gメン75」では何故小田切警視が登場しなくなったのか等々、ファンとしては謎と感じていた事は多いのですが、それらの裏事情も明かされます。 
いずれにせよ、ファンなればこそ貴重にして楽しめる一冊。

スタアの時代/好き勝手

※夏木陽介:俳優、本名:阿久沢有。1936年東京都生、明治大学経営学部卒。同大学在学中、中原淳一にモデルとしてスカウトされる。58年東宝専属となり、東宝映画「青春白書・大人には分からない」にて主演スクリーンデビュー。TVドラマ「青春とはなんだ」「Gメン75」にて人気を博す。パリ・ダカールラリー参戦等、車好き。独身。2018年01月腎細胞がんにて死去。享年81歳。

   


  

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