寺尾紗穂著作のページ


1981年東京都生、東京大学大学院総合文化研究科超越文化科学専攻比較文学比較文化コース修士課程修了。2006年「愛し、日々」にてシンガーソングライターとしてデビュー。音楽活動の傍ら、ノンフィクションやエッセイを執筆。

 


   

「あのころのパラオをさがして−日本統治下の南洋を生きた人々− ★★
 SKEL A BELAU RA NGARA MONG


あのころのパラオをさがして

2017年08月
集英社刊
(1700円+税)



2017/09/01



amazon.co.jp

南太平洋の諸島、パラオ。太平洋戦争当時に日本軍が占領し、一部の地では激戦(ペリリュー島)も行われたことは漠然と知っていましたが、余りよくは知らないというのが正直なところ。
パラオについて少しでも知るには格好だろうと、本書を手に取った次第です。
しかし、第一次大戦終結のパリ講和会議によって、パラオがドイツの植民地支配を脱し、日本の委任統治領になったこと。現パラオ共和国の中央にあるコロール島に日本の<
南洋庁>が置かれていたことについては、恥ずかしながら全く知りませんでした。

著者の寺尾さんとしては、サイパンを題材にした2015年刊行の「南洋と私」に続き、同じ南洋群島であるパラオを実際に訪ねて、現地の老人たち等々に日本統治時代のパラオについて取材したルポ、という一冊。

総じて、日本に対して好意を抱いている人が多いようです。しかし、その一方で日本移民、沖縄人・朝鮮人・現地民との差別、戦況悪化の折には現地民が作った農産物を取り上げる、パラオ人虐殺計画なるものも立案されていた、という事実は歴然としてあったようです。
それにもかかわらず、日本統治時代の良い部分を忘れず、日本に好意を以てくれていることに対しては、泣きたいくらい感謝する気持ちになります。

いつか、南洋のリゾート地としてではなく、かつて日本が統治した時代の面影を残すパラオを訪ねてみたいという気持ちになりました。

※なお、
「山月記」の中島敦が、現地島民用の国語教科書を作る役人として南洋庁に赴任していた時期があったそうです。

まえがき/01.七十五年後の南洋へ/02.マリヤンを知るひと−パラオ放送局・山口さん/03.オフレコ−ニーナ・アントニオさん/04.マルキヨク、不思議な符号−アイライさん/05.二人の日本人−Morikawaと軍医/06.デレベエシール−パラオの日本語歌謡/07.パラオ再訪−ナビゲーター・ケルヴィンとの出会い/08.それぞれのパラオで−北原尾・工藤さん/09.少年兵だった−環野・久保さん/あとがき

         


     

to Top Page     to エッセィ等 Index