多和田奈津子著作のページ


1972年神奈川県横浜市生、東洋英和女学院短期大学保育科卒。95年から朝日新聞社東京本社出版局に契約社員として勤務。在職中、悪性リンパ腫を発病。97年秋〜98年初夏までガン治療。

 


         

●「へこんでも−25歳ナツコの明るいガン闘病記−」● ★★




2002年04月
新潮社刊
(1400円+税)

 

2002/05/05

 

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「癌」「闘病記」というと、どうしても暗く、沈鬱な気分が広がります。しかし、本書は副題にあるとおり、25歳のOLらしい、明るさ、若さを存分に感じる闘病記です。

では、著者であるナツコさんが、病気に対して楽観的であったのかと言えば、そんなことは決してありません。
誰にしても、癌という言葉を聞いただけで脚が震え慄くような気持ちを感じるでしょう。それはナツコさんにしても、少しも変わりません。まして彼女は、16歳の時に甲状腺ガンを経験しているし、今回の癌は“悪性リンパ腫”というまた別の癌。また、妙齢の女性にとって癌宣告は、殊更衝撃が大きい筈です。
しかし、彼女の良さは、常に前向きであること。良くなる可能性と、良くならない可能性の両方あることを聞かされれば、率が少なくたって、良くなる方を信じる。そして、治療法についても常に積極的に参加していくという姿勢。
健気さというより、彼女のもつバイタリティーの見事さに感心することしきりです。だからこそ、病院設備、治療中の様子、副作用の苦しさ等描く中にも、現代っ娘らしいユーモアが常に跳びはねているのです。
病院の医師・看護婦、彼女が病友と呼んだイチキちゃん、家族、皆が彼女を応援しているように感じます。それは、彼女が病気に対して闘うという前向きな姿勢を、明快に示しているからこそでしょう。
ナツコさんへ絶えずエールを贈りたくなる、そんな闘病記です。お薦め。

25歳・秋/二度目のガン宣告/順調だった放射線治療/新しい治療に挑戦/病友・イチキちゃん/無菌室の世界/29歳・冬

※がん闘病記 → 絵門ゆう子「がんでも私は不思議に元気」(新潮社)

 


     

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