晶文社<就職しないで生きるには21>シリーズの内の一冊。
大学卒業後、派遣社員やバイトばかりで正社員として働いたこともなく、編集経験もまるで無かったというにもかかわらず、著者の島田さんは、仲の良かった従兄の死をきっかけに、その従兄とその叔母夫婦へ贈りたい本を作るため、出版社を立ち上げたのだそうです。
その出版社の名前は「夏葉社」、吉祥寺のマンション一室を借りて設立、社員は島田さん一人のみ。自分の貯金だけでは足りず、両親から借金してのスタートだったとか。
経験もない、金もない、採算が取れるかどうかも判らない。きちんと会社勤めをしたことがある人なら、おそらくやろうともしなかったことではないでしょうか。
島田さん、どうもよく考える前に気持ちだけで行動してしまうタイプの方らしい。だからこそ、出版のことなど何も判らないままに会社をまず設立してしまう、ということができたのでしょう。でも、実際に出版社としての実績を残したのですから凄い。
読んで感動した本を、自分の手で再刊したいという島田さんの強い思いに敬服するばかりです。私も本、読書、書店は大好きですが、そこまで思ったことはありませんでしたから。
本が好き、書店が好き、良い本は読み継がれて欲しい、広く読まれて欲しい、出版社起業の前に島田さんの胸にあったのは、そうした思いでしょう。本書を読むと、そんな島田さんの思いがひたひたと胸に伝わってくる気がします。
本好き、そして書店好きの方に是非お薦めしたい逸品です。
※なお、夏葉社が初めて出版(再刊)したのがマラマッド「レンブラントの帽子」とのこと。私が高校〜大学生の頃ユダヤ系作家が流行りましたが、私はその中で特にマラマッドが好きでした。それだけにとても嬉しい気持ちです。
はじめに/ひとりで出版社をはじめる/よろこびとかなしみの日々/おわりに
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