崎山克彦著作のページ


1935年福岡県生、慶應義塾大学卒。講談社、講談社インターナショナル取締役、マグロウヒル出版社社長等、サラリーマン生活30年。87年フィリピン・セブ島の沖合10kmに浮かぶ周囲2kmの小島・カオハガン島を購入、91年退職して移住。現在島民 400名と共に、小さなホテルを運営しながら暮らす。NGO「南の島から」代表。

 


             

●「ゆっくり生きる」● ★☆

 

 
2002年9月
新潮社刊

(1300円+税)

 

2002/10/11

気持ち好さそうな風の音、目を開けると新鮮な新緑、そしてその先に広がる美しい海、カオハガン島における、そんな毎朝の風景から本エッセイは始まります。
著者である崎山さんが暮すカオハガン島は、オランゴ環礁の一角にある小さな島。環礁内の海に出れば魚はいつでも捕れるし、それ故島民の暮らしは自給自足に近く、ゆったりしたもの。
カオハガン島の暮らしを語ったエッセイ本は既に何冊も刊行されているようです。その中で本書は、島民の暮らしを見ながら、ゆっくり生きるとはどんなことか、更に言えば現代人の生活は今後どのように進むべきか、について語っていると言えます。

南方の、自然から得られる糧に恵まれた場所だからこそ、のんびり生きることもできるのでしょう。また、サラリーマン生活を完遂して持ちえた心の余裕があるからこそ、ゆっくり生きることもできよう、と感じます。
ただ、崎山さんが島の所有者になってから、宿泊施設を作ったり、島民にカオガハン・キルト作りという産業を広めたり、島民の子供たちに奨学金制度を作ったりと、「今のカオハガンはとても暮らしやすくなった」という島民の声が印象的。自然のまま=すべて良い、ということではないのでしょう。
その一方で、電気が通じたり、TVが広まったりと、先進国の辿った道をカオハガンも辿らないか、という懸念があるのも事実。
なお、本書をゆっくり読まず一気に読んでしまったのは、私自身の救われない性と言えましょうか。

うつくしい大宇宙。創造主の善意に沿った暮らし/少年のころのロビンソン・クルーソーの夢を追って/カシオが「ガン」になった/子どもたちの夢を育てたい/毎日をゆっくりと生きる島の人たち/大自然の中の自然な身体/自然と共生するローカルな小産業を育てたい/便利な暮らし、豊かさとは何だろう

  


  

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