酒井あゆみ著作のページ


1971年福島県生。18歳で上京して親族の歯科医で助手として働き始めるが、キャバクラのバイトがバレて追い出され、風俗の世界入り。ファッションヘルス、性感マッサージ、ソープランド、ホテトル、SM倶楽部等“風俗のフルコース”やAV女優、愛人業などを経験。20歳の時に客と一緒に「AVプロダクション」を設立。94年23歳で風俗業を引退し、AV系モデルのマネジメント業。22歳の時に作家の取材コーディネートをしたことをきっかけに出版社編集者から勧められ、「東京夜の懸け込み寺」にて作家デビュー。著書多数。
 
1.
撮影現場にきた女たち

2.
ラブレスセックス

 


   

1.

●「撮影現場にきた女たち」● ★☆


撮影現場にきた女たち画像

2005年12月
二見書房刊

(1500円+税)

 

2006/05/14

  

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昔は後ろ暗いところのある商売であった筈なのに、いつの間にか明るいイメージになって社会にそう容認されてしまった商売の筆頭が、サラ金業界とAV業界ではないかと思うのです。
とくに「AV女優」という存在。やたら「女優」という名で呼ばれるうちに、いつしかフツーの「女優」との境界線が低くなってしまった気がします。
さて、AV女優となった彼女たちはそもそも何を意図していたのか、その点に興味を覚え、図書館から借出して読んだ一冊。

著者の酒井さんが実際にマネージメントの仕事をしていた頃に経験した、21人のAV女優たちの現場記録だそうです。
風俗産業というのはとかく社会の縮図という面を持っているようですが、それはAV業界についても言えるようです。
まさに経緯、動機は様々ですが、今はこの程度のお金でこんなビデオの出演してしまうの?と思うところあり。また、AV業界の中でスターになる為にはやはりそれだけの容姿を備えていないといけないらしく、応募してくる当人たちが思う程ただ裸になるだけでは価値は生じないらしい。
高利借金故の「金融流れ」は古来からの理由でしょうけれど、援助交際の延長にあるかのような傾向は社会のひとつの変化とも思えます。
お金より体験自体が目的になっているケースも抱え込んでいるのは、この業界のいかにも社会の縮図と言えるところでしょう。
どの業界でも裏側に相応の面白さがあるのは、そこに人間ドラマがある故ですが、その中でもAV業界は人間性がかなり剥き出しにされる現場だと感じます。

佐々木あずさ(25歳)
/自宅を平気で撮影現場に使わせる一流銀行勤務のAV女優
前田麻里(27歳)
/グラビア撮影より本番が楽チンで気持ちいいと言う二十代女
渡辺マリ(29歳)
/三重四重の整形手術で単体女優に化けた上昇志向オンナ
紺野和歌子(45歳)
/AV出演を旦那への復讐と言いきるハイソ主婦
岡本悦子(35歳)
/バブル時代の感覚そのまんまに生きる元援交ギャル
沖山園子(34歳)
/セックス依存症の女と汁男優たちの幸福な共生関係
松宮千佳(28歳)
/なんでもOK!「金融流れ」の優等生AV女優
備前佐紀江(19歳)
/実年齢19歳、裸の見かけ40歳の「するめパイ」女子大生
金沢涼子(27歳)
/ホッテントット級の特大ラビアが原因で立ちポーズをとれない女
原田理沙(27歳)
/海外での華々しい経験を自慢したがる自称帰国子女のDカップ
柳田真知子(33歳)
/ベッドシーンで「話が違います」連発の一部上場企業の受付嬢
近藤奈々子(23歳)
/20歳の遅い初体験以降「性の暴走族」となった音大生
工藤かなえ(21歳)
/第二の桜沢菜々子を目指す青森からのおのぼりAV女優
吉岡亜里沙(19歳)
/マイナー雑誌のグラビアヌードで親バレし、泣きを見たエッチが趣味の女子大生
上原香織(20歳)
/20歳で裸になる魅力にハマッてしまったアイドル系の国立大生
木島成美(28歳)
/マネジメント会社を始め、「責任取り出演」でヘトヘトの成美
野本聖子(25歳)
/白塗り病にとりつかれロリータ仕事が来なくなった童顔娘
岩淵彩子(34歳)・池田早苗(23歳)
/メークルームでタチ役と大ゲンカを始めたポッチャリ系女優の豹変
佐藤夏樹(28歳)・鈴木瞳(28歳)
/堕落と充実・・・二人の人生を分けたのは、経歴でも演技でもなかった

        

2.

「ラブレスセックス」 ★★


ラブレスセックス画像

2012年12月
新潮社刊

(1400円+税)

  

2013/01/27

  

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ラブレスセックス”、つまり愛の介在しないセックスということ。
元風俗嬢の酒井さんが、ラブレスセックスの担い手である様々な風俗嬢等々にインタビューしたルポタージュ13篇。

いわゆる“風俗”、表社会には現れることのない裏社会の出来事と片づければいいという見方もあるかもしれませんが、もはや現代社会において無視できない世情ではないでしょうか。
単なる観察者ではない、“風俗のフルコース”を経験した著者だからこそ気づく面があるのではないか。そこに酒井さんの著書に関心を惹かれる理由があります。

どんな風俗があるのか。新聞や雑誌等のニュースを見ていれば必然的に耳に入っていますが、こうした風俗も登場しているのかと少々驚く部分もあり。
ひとつひとつのルポについて考えるとキリがありませんが、全体を通して思うことは、素人とプロの境がますます曖昧になっているのではないかということ。
一時女子高生たちの
援助交際が話題になりましたが、話題性がなくなったからといって実態が無くなった訳ではないでしょう。むしろ年齢を重ねた女性、ごく普通の主婦にまで広がっている実相が注視されるべきと感じます。
するかしないか自分に選択の自由がある、相手と気が合ったかどうか、というセリフが相次いで登場します。疑似恋愛と言うことか、単なる言い訳か。お金が介在している以上売春・援助交際と何ら変わらないと、著者は厳しく指摘しています。
売春については「女性最古の職業」という言葉があります。その是非はともかくとして、職業であれば当然ながら(営業)努力もある筈。ところがそんな努力をまるでする気もなく、平然と開き直っている風俗嬢がいる。彼女たちは必然的に大した稼ぎも得ておらず、“
下流風俗嬢”となる。
彼女たちに自分を客観的に見る姿勢はなく、自分中心で相手を見ようとする姿勢がない。つまりコミュニケーション不足・下手ということ。それは風俗業界というより現代日本社会全体に言えることですが、それがそのまま風俗業界にも反映されているという点が興味深い。

どんな業界であろうと自分の職業に対するプロ意識はあって当たり前。それが風俗業界においても欠落している女性たちが登場してきていて、いわゆる風俗嬢の世界にも二極化の傾向があると言う。
それらの面をあぶり出している点で、本書は意味ある現代社会ルポタージュの一冊と思います。

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