酒井充子
(あつこ)著作のページ


1969年山口県生、慶應義塾大学法学部政治学科卒。会社勤務を経て96年北海道新聞社入社。98年初めて台湾へ。2000年からドキュメンタリー映画、劇映画の制作、宣伝に関わる一方で台湾取材を開始。01年から重症心身障害者施設の生活を3年間にわたって追ったドキュメンタリー映画「わたしの季節」に取材スタッフとして参加。その時のスタッフが再集結し、初監督作品「台湾人生」を完成させた。

 


   

「台湾人生」 ★★☆




2010年04月
文芸春秋刊
(1571円+税)

2018年01月
光文社文庫化



2010/05/07



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日清戦争の後、日本は清から台湾の割譲を受け、台湾を約50年に亘って実効支配した。
日本統治下のその時代に育った“日本語世代”の台湾の人々は、日本人として育てられ、自分は日本人であるという意識の下、日本人として戦争でも戦った。
それなのに、戦後自分たちは日本政府に見捨てられ、戦時中は敵として戦った中国人に抑圧される、という悲惨な目に遭ったという。

戦前から日本が統治していた台湾は、戦時中の他の日本殖民地と違って日本人に対し好意的であるという傾向は昔から耳にしていましたし、また実際に訪れてみて実感したところですが、日本および中国に対しここまで強い思いを抱いていたのかと、改めて愕然とする思いです。
日本政府に聞いてもらえず、国民党政府には話せない。そうした言いたいことが沢山あるのだろうなぁと、つくづく感じます。
以前家族で台湾旅行した時、私が多少台湾事情に通じていたと知ると、熱心にあれこれ説明しようとしてくれた初老の男性ガイドのことを思い出します。
きっとあの男性ガイドも、ずっと抱えてきた思いを私に語りたかったのではないかと、今にして思います。

そうした台湾の“日本語世代”の人たちから、その苦難の人生を日本語で語ってもらったドキュメンタリー映画「台湾人生」の、本書は書籍版とのこと。
百聞は一見に如かずと言いますが、百読は実際に本人から聞くことに如かず、です。
台湾と日本の深い関係を知るにとどまらず、日本、そして日本人を外から見ることの大切さ、を知ることにも通じる、意義ある一冊。お薦めです。

解けない数学/日本人として、台湾人として/九份のバス停から/忘れえぬ恩師/台湾原住民の誇り/茶畑に囲まれて/出会いを重ねて

   
    


     

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