大谷英之・淳子著作のページ


大谷英之:1931年大分県湯布院生、東京写真大学卒。54年ニッポン放送入社、64年フジテレビ入社。会社に勤める傍ら個展を開催。

大谷淳子:大谷英之氏の夫人、1937年広島県生。57年に英之氏と結婚。

 


  

●「ありがとう大五郎」● ★★☆
 (写真=大谷英之、文=大谷淳子)

  

 
1993年12月
山と渓谷社刊

1997年3月
新潮文庫
(362円+税)

   

1997/04/27

1977年、英之氏がカメラマンとして奇形の猿を追っていたとき、大分県の高崎山で仮死状態で発見された重度障害の子猿を家へ連れ帰ったことから、このドラマは始まったのです。
両足が脚の付け根からなく、両手も肘の先まで。とても長く生きまいと思われた大五郎でしたが、大谷一家の暖かい世話で2年4ヵ月彼は生き長らえました。

大学受験生の長女聖子、7歳の次女一世、4歳の末っ子の真穂
大五郎はこの一家の中で末っ子として生きたのです。猿というより、人間の感性を持ってだという。
しかし、一方で彼の世話は非常な苦労を伴ったといいます。妻・淳子の後を常に追い、排泄をそこら中にし、真穂とは母親の愛情の取り合いをしたという。
そんな重度の障害を持ちながら、大五郎は寝返りを覚え、短い肘を使って這うことを覚え、ついには立つこともできたという。
娘達はそんな大五郎の姿を目にすることによって、常に努力することの大切さ、素晴らしさを学んだという。
しかし、現実にはそんな夢みたいなことだけで済んだわけではない。甘えたい盛りの真穂にとって辛いことも多かったという。元々病弱な妻は、大五郎の死後入院することになったとも言う。
ただ願うばかりは、大谷家の娘三人が、それぞれ大五郎との短い共同生活の中で何かしら大切なことを得ていてほしいと願うばかりです。

単なる読者である私でさえ、本書によって障害者を特別扱いしないこと、障害者の努力をあるがままに評価し応援することの重要さを学びました。
今後の社会での障害者問題を考えるに先立ち、読んでおきたい一冊です。

   


 

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